581. インテルビスタ
へちょちょさん、ごめんなさい~。ワタクシ、フェリーニは「道」しか観てないのに、これ、観ちゃいました。でもまあ、そういう人間のレビューが一つ位あってもいいじゃな~い(波田陽区風)、と身勝手に解釈してレビュー書かせて頂きやす。よく映画の中で映画(もしくは映画製作)が出てくる作品はありますが、この作品の場合映画の中で映画作ってて、なおかつその映画の中でも映画を作っているという三重構造なもんで、頭がクラクラしちゃいました。でもきっと、フェリーニの作品って頭で理解するモンじゃないんだろーなーと、ぼーっとした頭で考えました。ある程度フェリーニ作品を観ていないと楽しめない作品だとは思いましたが、同時にフェリーニの茶目っ気みたいなものも伝わってきてなかなか良い感じ。これを機会に「甘い生活」「81/2」も観てみたいと思いまする。 5点(2004-06-02 17:34:22) |
582. 風、スローダウン
熱い。クサい。ダサい。しかし、泣ける。初監督作である本作で(蛇足だけど、80年代後半~90年初頭、つまりバブルの頂点の時期は、タレントや有名人など、いわゆる「異業種監督」が次々とデビューした。で、その作品の大半は・・・なものだった、と思う。全部観た訳じゃないから分かんないけど)島田紳介は、ひたすら直球(この作品は総監修が井筒和幸監督なのだけど、仮に井筒さんがこの作品の脚本・監督だったとしたらもう少しヒネりを入れたり、照れ隠し的にギャグを入れたりしてたと思う)。はっきり言ってベタな話ではあるし、特にヒロインの造形なんか「こんな娘実際にはおらんやん、若い男の子の都合の良い幻想やろ」と思わなくはないのだけれど、そんなツッコミをさせない「熱さ」が映画全体にみなぎっていて映画に引き込まれてしまう。やっぱり映画作りって、技術もそりゃ大事なんだろうけど、その作品に対する「想い」も大事なんだなあ、と思わせられた。 8点(2004-06-01 19:17:27)(良:1票) |
583. ほえる犬は噛まない
《ネタバレ》 うーん、困った。僕は結構良い映画だと思ったのだけれど、どこがどう良いか、説明するのは難しいなあ。確かにある種ショッキングでシニカルな作風だけど・・・。大した事も起こらない、退屈な日常の中、ヒロインのヒョンナム(パッケージで鼻にティッシュ詰めてる女の子)は行方不明になった仔犬を探し出すという、いささかヒロイックな使命を自らに課して「日常の打破」を試みる。最終的に別の仔犬は救う事ができたけれど、仕事はクビになり、憧れていたテレビインタビューもカットされてしまう・・・という、「なんだかなあ」な結末だけれど、作り手のヒョンナムに対する視線はあくまで優しい。それは、彼女よりしっかりした親友の女の子(退屈な日常を受け入れている)がラストで失意の彼女を森に連れて行くラストに現れているように思う。この監督は日本のマンガにも造詣が深いそうだけど、観客の予想をうまく外して裏切る展開(切干大根のお婆さんの“遺産”の所とか)はすぎむらしんいちを思い起こさせるし、ギャグのセンスはどこか小林まことっぽい感じがしました。<補足>朝鮮(だけでなく中国なども)には昔から犬を食用にする文化はあったそうです。ただしソウル五輪の際、外国人(というか西洋人だろうな、主に)の目を気にしてか、その手の店は撤去されたとか。この作品はその辺も皮肉っているのではないでしょうか。だからといってペットの犬を捕まえて食べることが普通なんてことは、多分ないと思います。あくまで「映画」ですから、これは。 8点(2004-06-01 19:03:24)(良:2票) |
584. サンダーパンツ!
この作品、多分90%の人にとっては「しょーもない映画」で、9.9%の人には「笑える映画」、で、僕を含む0.01%の人間にとっては「感動作」。「この作品の良さが分からないような人とは友達になれない」などと器量の狭いことを言うつもりはないけれど、もしこの映画で感動して号泣した人がいたら、その人とは末永い付き合いができるような気がする。 8点(2004-06-01 18:36:32)(良:1票) |
585. 忠臣蔵(1958)
実は今まで「忠臣蔵モノ」をちゃんと観た事がなく、たまたま先日BSで放送されていた本作を観ました。正直「主君の仇討ち」という考え方はどうなん?ってな気もしたし、いくら美談化してもやったことって結局テロ(百歩譲って押し込み強盗)なんじゃないの?とか、最初は思ってみてたのだけれど、何だかんだで討ち入りのシーンに胸が高まってしまったのは、やはり日本人だからなのだろうか。なんかそういう安易な結論付けはイヤなのだけれど。ともあれ、討ち入りそのものも良いけれど、その周辺の各エピソードが魅力的。名前は忘れたけど、大石がその名を騙っていた大名(か何か)が、偽者が(敵討ちを果たさんとする)大石であることを知り、「申し訳ありません、私が偽者でした」と言って自分の通行手形を大石に渡す所とか、或いは乱痴気遊びにふける大石を見限った家族が仏壇に供えてある大石の位牌を見て彼の決意に気付く所とか、「以心伝心」な場面が、良いですねえ。 7点(2004-05-29 16:35:38)(良:1票) |
586. ジョン・レノン・ストーリー(ジョン・レノン/青春のビートルズ)
ビートルズのメンバーを描く作品って、難しいんだろうなぁ。何せ世界中にマニアがいるし、中には当事者よりも各エピソードを記憶してるコアなファンとかごろごろいそうだし、なおかつ登場人物の顔が似てなかったり、ほんのちょっとでも事実と違ってたりするとドトウの突っ込みを受けそうだし。そういう意味で、この作品は中々頑張っているんじゃないかな、と思います。特に主人公ジョン・レノン役の人は見た目だけでなく声や話し方もそっくりだったし。ただ、映画作品としてみると、ちょっと小粒でこじんまりした印象。厳しい言い方をすると、色んな伝記やビートルズ本にあるエピソードをうまくつまんでつなげましたって感じでした。やはり、マニアの目を意識して作らざるを得なかったのかな。も少し独自の解釈・切り口があればなあ。例えば僕が脚色するなら(・・・・・・って何さりげなく大それたこと書いてんだ、俺)もう少し労働者階級としてのジョン・レノンを描いたと思うのだけれど・・・。とはいえ、前述の通りジョンはかなり似ているので一見の価値はアリ。 ところで「ビートルズ」になる前のバンド名は確か「シルヴァ・ビートルズ」ではなかったっけ? 6点(2004-05-29 16:22:04) |
587. アメリカの影
あー、オホン。えと、もしもし、スティングさん?御熱弁の所、申し訳ないんですけど、あの、も少し、そこ、詰めてくれます?あ、どもども。すんませんねぇ、ケツ、デカイもんで。はぁどっこら、しょっと、ふぃ~~~。・・・・・・ん?何でそんな目で見るんですかぁ・・・何しに来たって?んなもん、レビューしに来たに決まってるじゃあ~りませんかっ!分かってますよ、「アメリカの影」でしょう?カサヴェテスでしょう?観てますよ,ちゃんと。そりゃあ、ビデオでだけど・・・しょーがないでしょが、ウチの近くには名画座なんて気の利いたモンはないんです!え、何逆ギレしてんだって?いつになったらレビュー始めるんだって?分ぁかってますよ!僕だってこんな小芝居で終わらそうなんて思ってませんよう!・・・・・・というわけで、えー、レビュー、始めさせて頂きます。 即興演出のせいか、奔放なカメラワークのせいか、はたまたチャーリー・ミンガスのジャジーな音楽のせいか、独特の緊張感、スリル、生々しさに溢れていて、凄くセクシーな映画だと思います(せくしーっつっても別にえっちな場面とかはないけど)。そのせいであんまり古い映画って感じがしないんですよね。尚且つ、これは撮り方のせいもあるのかもしれないけれど、役者さんが、特に「まなざし」が印象的。兄ヒューの弟妹を見る時の温かなまなざし、あるいは妹レリアの一見快活だけどどこか冷ややかなまなざし。それに弟ベニーの、まるで減量中のボクサーのような、何かに餓えたようなまなざし。そうしたまなざしが、台詞よりも雄弁に人物の心中を語っていたのが印象的でした。印象的といえば、ベニーがサングラスをかけて背中を丸め、皮ジャンのポケットに手を突っ込んで街を彷徨う姿もやたら心に残ります。短くて一見地味だけど、観れば観るほど味が出てくる、そんな作品です。 8点(2004-05-29 16:07:34)(良:2票) |
588. イマジン/ジョン・レノン
前略、ジョン・レノン様。貴方が死んでから23年とちょっと経ちましたが、世界は相変わらずで、戦争も貧困も差別も国境も無くなっていません。その代わり、と言っては何ですが、貴方の事や貴方の歌は日本の教科書(英語・音楽)にも取り上げられています。そこにある貴方のイメージはまるで「愛と平和の殉教者」といった感じで、まるで神格化された聖人のようです。でも、ビートルズ関連の本や関係者のインタビューなどを読む限り、本当の貴方は女性にもドラッグにもだらしなく、少なくとも私生活面ではとても尊敬されるべき人間ではないと思います(この事に関しては常々「僕は普通の人間だ」と主張していた貴方にも同意して頂けるのではないでしょうか?)。最近貴方のドキュメンタリー映画を久々にビデオで観ました。この作品を観ると、貴方が途方も無い才能を持った音楽家であると同時に、我がままで、淋しがり屋で、甘えん坊な一人の男だった事が分かります。思えば、貴方の、特にソロになってからの歌はいつも「自分の事」ばかり歌っていました。「僕は嫉妬深い男」とか「自分とヨーコだけを信じている、ヨーコを愛している」とか、貴方の歌はいつも赤裸々で、それゆえ僕達聴衆は貴方の歌を「自分の歌」としても聴けるのだと思います。前述した様に、僕は貴方の私生活を見習いたいとは思いませんし、貴方の語っていた言葉が「文字通りの意味」で正しいとも思っていません(今から見ると貴方のやった「ベッド・イン」は正直的外れのように思えます)。はっきり言って貴方から音楽を取ってしまったらただのロクデナシです。しかし僕は、正に貴方が「ロクデナシ」だからこそ、尚且つ自分が「ロクデナシ」であることを隠そうとしなかったからこそ、その「愛と平和」の、とても純粋でシンプルな理念が信じられるのです。少なくともどこかの横暴な大統領の口にする「正義」の何万倍も信じられるのです。映画の最後で貴方の最初の妻が「彼は純粋な人でした。誰をも愛し、愛を素直に表現したのです」と言うのを聞いて僕は少し泣きました。・・・未来の事は分かりませんがどうやら僕は少なくとも今すぐ死ぬ、と言う事はない様です(幸いな事に命も狙われてはいませんし)。なので、当然貴方程の事は出来ませんが、もう少しここで踏ん張ってやっていこうと思います。時々貴方の歌を聴いたり、口ずさんだりしながら。―――草々。 8点(2004-05-27 17:14:02)(良:1票) |
589. グレートウォール(1986)
中国系の監督がインディーズで撮った作品で、作られたのは80年代ですが、世界のグローバル化が進む現代の視点で観ると改めて面白い作品だと思います。中国文化とアメリカ文化、どちらが良い、悪いと決めつけず、自分の考え(文化・習慣)を当然とすることの愚かしさを両方の視点から描いているところに好感が持てました。ラスト、アメリカに帰国したいとこが「僕は中国じゃ米国人でこっちじゃ中国人だ」と言うシーンがあって、そこには漠としたアイデンティティに対する不安が感じられるのですが「不安を不安として受け入れること(つまり強引に白黒つけようとしないところ)」が却って希望を感じさせてくれるような気がしました。帰国子女の人とか海外留学の経験がある人には特に面白い作品なのでは、と思います。<追記>:おお、【ミーハーおばちゃん】さんは公開当時ご覧になったのですか。僕の場合は観たのは最近ですが、公開当時ある人がエッセイに取り上げていたので存在はずっと知ってたんですよ・・・・・・ところで、二人部屋、ですか?・・・至らぬ所もあるかと思いますが、どうぞ良しなに・・・。 7点(2004-05-26 21:09:52)(良:1票) |
590. 罪と罰 ドタマかちわったろかの巻
うーーーん、センスのないタイトル、破綻しまくりのストーリー、低予算ということが言い訳にならないほどの酷い画面、主演は間寛平(しかも役名が「狭間寛」って、おい)、と良いとこが一つもない作品の筈なのに、見終わった後結構満足してしまったのはきっと僕がゲロッパバカだからだと思います。なのであんまし人には勧められません。 6点(2004-05-24 19:08:30) |
591. 名もなきアフリカの地で
「ビヨンド・サイレンス」もそうだったけれど、カロリーネ・リンクの作品は登場人物をある程度突き放して描いているので(例えば、登場人物の嫌な面とかも淡々と映している)、ある意味感情移入しにくいし、いわゆる「泣かせ」の映画にはならない。ただ、そこで描かれる人間たちは単なる善人・悪人と色分けできない陰影・繊細さと魅力がある。「ビヨンド~」が単なる「障害者モノ」でなかったように、第二次大戦下のユダヤ人家族を主人公にした本作も、その歴史的事実よりも「人間」に焦点が置かれていて、結局この人が描きたいのは、極限的状況に置かれた夫婦の姿とか、家族の「絆」とか、そういう「人間(達)」の生み出すドラマなんだなあ、と思う。個人的にはアフリカの地でたくましく成長する少女が「ビヨンド~」の少女の姿と重なって好感が持てた。蛇足だけど、この監督の作品って裸とかベッドシーンとか出てきても、あんましイヤらしくならないのが面白い。 8点(2004-05-22 19:50:53) |
592. エル・ニド
しょぼーん。せっかくアナ・トレント10代の時の出演作を見つけたっていうのに・・・。何か、あらすじ見た時は「シベールの日曜日」みたいな、大人の男と少女のほのぼのとした純愛みたいなやつだと思ってたんですよ。そしたら、肉体関係こそないものの結構ドロドロのお話で(アナが男の亡くなった奥さんの服を「焼き捨てて!」と言ったりする)、期待してたのと全然違う話でした。勝手に期待してたこっちが悪いのかもしんないけど、うーーーーん。また「ミツバチのささやき」を観よう。 4点(2004-05-19 18:17:01) |
593. 晴れ、ときどき殺人
うーむ、はっきり言ってストーリー自体の内容はないよーなもんなんで、アイドル映画を「やらされた(←勝手な想像)」井筒監督がどういう演出をしたか?というのを楽しむ作品かなあ。そういう目で見ると、時々入るしょーもないギャグ(一応、ほめてます)とか、エンドロール中の映像(劇中「風俗なんか行きません!」と力説してた人が嬉しそーな顔して風俗から出てきたりしてる)とか、ちょっと「井筒味」入ってるなあって感じでした。しかし、渡辺典子は可愛いけど、あのレオタードはいかがなものか。 5点(2004-05-19 18:10:39) |
594. バダック
マジッド・マジディ監督の長編デビュー作だそうな。そう思って観てたからか、最初は「人物造型が類型的だなあ」とか「過剰にドラマチックにし過ぎてるなあ」とかナマイキに色々突っ込んでたのだけれど、途中から、なんか、そういうことはどーでも良くなってきた。妹を探すため、荒涼としたイランの地をひた走る主人公。そこには監督の熱い思いが込められていて、それだけで、十分。ラストの曲の「私も鹿のようにに自由になる」という歌詞には泣けた。 8点(2004-05-16 21:58:01) |
595. ビッグ・フィッシュ
映画を語る時、あまりに過剰・大仰な修飾語を使うのはどうかと思うのだが、そこを敢えて言わせて頂くならば、本作はある意味「究極の」ファンタジー映画だ。なぜならこの作品には「ファンタジーとは何か?」という本質的な(かつ、おそらくティム・バートン監督にとっては切実な)事柄が端的に表現されているからだ。ファンタジーとは決して幼稚な妄想でもなければ、脆弱な現実逃避でもない。少なくとも本作の主人公エドワード・ブルームにとってそれは世界観であり生き方であり、すなわち故・ジョー・ストラマーが「パンクは姿勢だ」と発言したのと同じ意味で「姿勢」、すなわち「事実」を超えた「真実」なのだ・・・・・・え、何言ってっか分かんない?うん、実は僕も言ってて良く分かんなくなってきた(笑)。とにかくさあ、良い映画ってことだよ、要は!うんとねえ、前半の回想のシーンがあまりにトンデモなくて目まぐるしいから、そこで引いちゃう人もいっかもしんないけどね、あの辺は余計なことはゴチャゴチャ考えず、画面に出てくるありのままを無心で受け取る事!そしたら分かる!分かったら四の五の言わずに映画館にGO! 10点(2004-05-16 21:14:24)(良:3票) |
596. 避暑地の出来事
んふふ、まるで往年の「吉永小百合・浜田光夫」コンビ、もしくは「モモエ・トモカズ」コンビのロマンス物のようなウブさ。「女の子と過ちを犯したことある?」なんて、4文字言葉(エフユーシーケーとかエスエイチアイティーとか)の氾濫する現代のアメリカ映画じゃ考えられませんのぉ。何か、今観ると自分の親の世代の青春に思いを馳せたりして、なかなか新鮮であります。 6点(2004-05-14 18:43:52) |
597. テキサス
んー、ごめんなさい。確かにコメディに出演してるアラン・ドロンは珍しいし、女優さんも可愛らしかったのですが、いくら昔の作品とはいえ、あそこまでアメリカ先住民(インディアン)を侮辱した描き方をしてるのはちょっといかがなものかと思いました。それさえなければ、もうちょっと良かったのですが・・・。 4点(2004-05-14 18:39:15) |
598. ホテル・ハイビスカス
太陽<てぃーだ>母ちゃんの余貴美子始めとする脇役の面々も良かったけど、何と言っても美恵子役の蔵下穂波ちゃんが素晴らしい。まるで「ロッタちゃん~」のグレテ・ハヴネショルドの様な天真爛漫さと谷岡ヤスジのキャラクターのような強烈さは、見ているだけで頬が緩んでくるし、劇中の「ABCの歌」や「森のくまさん」の替え歌、それに「~だばぁーよ!」という台詞も楽しい。それに、中江監督の作品はいつも沖縄を舞台にしているのでそこばかり注目されがちだけれど、実は「間」の取り方や映像の作り方がさりげなく上手い(とアタクシごときが言うのもナンだが)。【momonga】さんの仰る通り、観れば観るほど味わいの出る作品だと思う。 8点(2004-05-14 18:30:03) |
599. ムツゴロウの結婚記
ムツゴロウ(畑正憲)という人の世間一般の印象というと、やはり「ゆかいな仲間たち」の「動物好きのおじさん」というイメージなのだろうか。中にはそれを「偽善的」「エセエコロジスト」と感じる人もいるかもしれないし、また心ある映画ファンからするとあの「REX」原作者ということでA級戦犯と見なされていたりもするのかもしれない。で、中学の頃彼の著作を読み漁り、結構本気で「大人になったらムツゴロウ王国に行こう!」と思っていた僕からすると、そういう風潮に対しては腹が立つ、とまでは行かないがある種の「歯がゆさ」を感じずにはおれない。彼は単なる「動物好きのおじさん」ではなく、その中に野性・獣性、つまりは「荒ぶる魂」を秘めた人だと、僕は思っている。彼の著作は軽妙なエッセイが多いのだが、その中にも彼独特の「荒々しさ」は込められているし、「REX」の原作「恐竜物語(蛇足だが確か恐竜の名前はレックスではなくレフティだったと記憶している)」だってかなりスケールの大きい物語だったりするのだ・・・ってな事を常々思っていた所、本作のビデオを発見。あまり期待はしていなかったが「ま、話のタネにはなるかな」と思い観たのだが・・・ひょっとすると普通の人が見ればそこそこの「ほのぼの映画」なのかもしれないが、原作を知っている者からすると「REX」級のヒドい代物だった。先述した、原作中の「荒々しさ」を物語る部分がバッサリと切られ(例えば原作では、友達に誘われて参加したデモで機動隊にボコボコにされ「殺意を覚えた」というエピソードもある)、世間的な「ムツゴロウさん」のイメージ、すなわち「動物好きの善人」として描かれているのだ。その描かれ方の薄っぺらさと言ったら!それならばいっそのこと全然原作と違う話にしてしまえばいいものを、まるで言い訳の如く、部分的に原作のエピソードに忠実だったりするのが余計に腹が立つ。ムツゴロウ役が「元祖“いいひと”」井上順だという事から覚悟すべきだったのであろうが、ここまで酷いとは思わなかった。敢えて見所を探すならば、ギラついた所が垣間見える若き日の蟹江敬三位のものか(いっそのこと彼がムツゴロウ役だったらよかったものを)。それにしても畑正憲と映画ってホントに相性が悪い。 1点(2004-05-11 17:54:08) |
600. 突然炎のごとく(1994)
なるほどね。地方の若者の閉塞感ややり切れなさが描かれてる作品だと思います。ただ、標準語を喋る山本太郎はかなり苦しそう。それにしても、何でこんなタイトル付けたんでしょうね?まさか山本太郎と小木茂光が「ジムとジュール」ってこと(笑)?他の井筒作品と比べるとかなり異色(無理してエレポップやってた頃のU2みたい、と言えば、分かる人には分かるかな)。井筒ファンからすると、フランス映画やジャームッシュ作品を意識した作品作りの中に、やっぱり滲み出てしまう井筒センスが、何か可笑しい。スタッフを観てみると助監督の木田紀生という人が共同脚本なので、ひょっとしたら若手の作品を井筒監督が助力して完成させたのかも。思うに、「犬死にせしもの(86)」以降から「岸和田少年愚連隊(96)」を撮るまでの井筒監督は迷いと試行錯誤の時期だったんじゃないかな。「宇宙の法則(90)」もあまり「らしくない」作品だったし。「岸和田~」以降の井筒作品は「もうゲージュツとしての映画はええねん!ワシャ大衆娯楽映画を撮るんじゃい!」と覚悟を決めたような気がします。そういう踏ん切りをつけたきっかけが、ひょっとするとこの作品なんじゃないかな・・・と考えをめぐらせると、作品自体より「井筒作品史」の一本として、面白い作品だなあ、と思います。 5点(2004-05-11 17:27:06) |