581. フラッシュバック(2008)
《ネタバレ》 同名の邦題映画が、四つも登録されている事に吃驚。 自分が観賞したのはダニエル・クレイグ主演の青春映画でしたが、丁寧に作られた品であると感じました。 何といっても、登場人物達がデヴィッド・ボウイのファンであるというだけでも好感を抱いてしまいますね。 全編に亘ってノスタルジーをくすぐる匂いが漂っており、こういったタイプの映画としては、安心させられるものがあります。 基本的なストーリーラインとしては「ニュー・シネマ・パラダイス」との共通点が幾つか窺えました。 俳優として成功したは良いものの、今はもう落ち目と見られている主人公が、親しかった友人の死を知らされて帰郷し、そこで若き日の出来事を回想する事になる……といった形。 つまり、この亡き友との絆、友情こそが映画の骨幹となるだろうと予想していたのですが、中盤から彼の存在がどんどん薄くなってしまい、困惑させられましたね。 結局は主人公とヒロインの恋愛、そして人妻との不倫が中心であったように思えます。 それでも、メロドラマとして面白ければ構わないと頭を切り変えようとしたのですが、どうも上手くいきませんでした。 理由としては、まずヒロインとの仲が、それほど濃密には思えなかった事。 自分と同じ曲を好きな女の子、というだけでも主人公が恋心を抱く気持ちは良く分かります。 一緒にレコードを聴きながら口パクし、ブライアン・フェリーとバックコーラスとになりきっている場面などは、本当に楽しそうで良い場面でした。 ただ、そこから更に深い仲になろうとした矢先に、主人公は人妻の誘惑に負けて彼女との約束をすっぽかしてしまう訳で、観ているこちらとしては「そんなの別れる事になるのが当たり前じゃないか」と気持ちが冷え切ってしまったのです。 そこから復縁する展開になる訳でもなく、更に主人公は不倫をし続けて、遂には不倫相手の娘さんの事故死を招く結果となってしまいます。 ここまできたら、流石に主人公に感情移入する気持ちなどゼロです。 何といっても、子供の死に対して悲しみや罪悪感を抱く描写が決定的に不足していたと思いますし、不倫相手の人妻にしたって、死を聞かされて言い放つ言葉が「亭主に責められる……」って、子供を可哀想に思うのが先じゃないの? 自分の保身を真っ先に考えちゃうの? と大いに興醒め。 若い男との情事を楽しみたい母親から家を追い出され、一人遊びの最中に事故死してしまった幼い女の子が、本当に哀れでしたね。 海岸に流れ着いた機雷による爆死などという、非現実的な出来事だったので、実感が湧かなかったのかも知れませんが、もっと主人公達の「子供の死」に対する苦悩も描いて欲しかったな、と思います。 この後、親友に慰められる事となり、そして冒頭に繋がるのだろう……と思っていたら、それすらも無し。 終盤、実は不倫相手だった彼女も、自分が家を飛び出した後に不遇の死を遂げていたと知って、主人公がショックを受ける展開となる訳ですが、ここまで冒頭の「親友の死」を軽く扱うのであれば、初めから彼女の死を知らされて帰郷する形の方が良かったのではないでしょうか。 結局、ヒロインは残された親友と結婚しており、幸せな家庭を築いていた事も明らかになるのですが、帰郷した主人公と、夫を亡くした彼女が再びくっ付く、なんてエンディングにならなかった事には、ホッと一安心。 故郷を後にして、元の生活に戻っていく主人公の姿に「If There Is Something」の歌詞と、それを一緒に聴いた在りし日の二人の姿が重なり合う演出は、心に響くものがありました。 全体的に「好きな映画である」とは言い難いけれど「好きな場面」は幾つも見つける事が出来る。 そんな作品でした。 [DVD(吹替)] 5点(2016-04-25 16:12:06) |
582. 素敵な人生の終り方
《ネタバレ》 設定からすると、如何にも感動物といった趣きの映画なのに、その内容はコメディという意外性が面白かったですね。 涙を誘うようなシーンもあるにはあるのですが、それよりも笑いの比重が大きかったように思えます。 自分としては、冒頭の悪戯電話を楽しんでいる主人公達に対して今一つ感情移入が出来ず、どこか冷めた目で画面を眺める事になってしまったのが残念。 そして、そんな悪戯電話の件以上に呆気に取られたのが、終盤におけるヒロインの台詞。 「(彼と不倫したのは)病気を使って同情させるからよ」 って、おいおいそこまで言うか、と衝撃的でしたね。 主人公が一途な愛情を抱いている存在なのだから、きっと優しい女性なのだろうな……という思い込みを、木っ端微塵に粉砕された形。 とはいえ、元々家庭がありながら不貞を働いていたカップルなのだし、そのくらいの落としどころが丁度良かったのかも知れませんね。 主人公も彼女も聖人君子ではなく、むしろ駄目な人間なのだというのが、何となく可笑しかったです。 道徳的には正しくなかったとしても、憎めない愛嬌のようなものを感じさせてくれました。 この映画は全編に亘ってそういった肩透かし感が強く「病気で余命僅かな主人公」「元妻との恋の再燃」というテーマを扱っておきながら「主人公の病気はアッサリ治るので、感動的な死など迎えない」「元妻とヨリを戻す事もなく、再び別れる事になる」という、王道の展開を踏まえた上での真逆な結末を迎えているんですよね。 結局、主人公は病気の告知を受けて自分の一生を見つめ直す前の段階と、何も変わっていないように見える。 ただ一つの大きな違いは、心を通わせられる友達が一人出来ただけ……という、静かな変化を描いた結末は、とても好みでした。 アダム・サンドラーと対になる、もう一人の主人公を演じたセス・ローゲンの存在も良かったですね。 彼の目線からすれば「一度は歩みかけたコメディアンとしての成功の道を閉ざされた後に、再び立ち上がって歩み始める」という、大いに青春を感じさせるエンディングにもなっています。 色々と意外な展開で驚きましたが、偶にはこんな風に「王道」「お約束」を逆手に取った作品も悪くない……と、そんな風に感じさせる一品でありました。 [DVD(吹替)] 5点(2016-04-23 16:54:56)(良:1票) |
583. 最後の恋のはじめ方
《ネタバレ》 デート・ドクターという設定が面白かったですね。 女性目線なら、てんで的外れという可能性もあるかも知れませんが、その助言の数々には「なるほど」と思わされる事が多く、説得力を感じながら観賞する事が出来ました。 恋に関しては百戦錬磨で怖いもの知らずと思いきや、実は心に傷を負っている二枚目主人公のヒッチと、根は善良なのに全くモテない肥満気味の依頼人アルバートという組み合わせが、もう見ているだけで楽しい。 この二人がアレコレと苦戦しながら、お金持ち女性のアレグラとの恋を成就させようとしているパートが非常に好みだっただけに、途中からヒッチ本人の女性記者への恋が中心になっていったのは、少し残念でしたね。 勿論後者のラブストーリーも面白かったのですが、前者の内容を芯に据えた映画も観てみたかったな、と感じてしまいました。 それくらい、アルバートとアレグラとの恋模様には魅力があったと思います。 終盤、主人公達の正体が暴露されてしまい「よくも騙したわね!」と女性側がお怒りになるという、ラブコメお約束の展開に突入する訳ですが、ここでヒッチとアルバートの関係性が逆転し「キミは自分が売っている商品が何なのか、まるで理解していない」と、恋を売り物にするヒッチの方が助言を受ける立場になる場面なんか、凄く良かったですね。 ヒッチもヒッチで、秘密を暴いた女性記者サラに「アルバートは良い奴なんだ、あいつの恋を邪魔しないでくれ」という彼を庇う形で怒ってみせるのには、もう参っちゃいます。 こういった何気ない台詞で、主要人物に好感を抱かせてくれるのは本当に嬉しい。 クライマックスにて 「実は助言は全く関係無くて、等身大の彼自身に彼女は恋していたのだ」 と判明する件は、最高に痛快です。 比較的序盤から 「ヒッチは、あくまでも依頼人に恋のキッカケを与えるだけ」 「アルバートは助言通りに行動している訳じゃないのに、結果的に彼女に好かれている」 という事が示唆されていた為、裏切られたという衝撃も無く「あぁ、そうだったのか!」という、自然と笑みが浮かんでくるようなサプライズを味わえました。 その後の主人公カップルの和解に関しても、微笑ましく見守る事が出来て、後味爽やかなハッピーエンドを満喫。 気持ちの良い映画でした。 [DVD(吹替)] 8点(2016-04-21 17:46:01)(良:2票) |
584. 親愛なるきみへ
《ネタバレ》 アクションではなく恋愛物のチャニング・テイタム主演映画は、これが初体験です。 こういった設定の映画では、どうしても主人公がナヨナヨしくて軍人には見えないというパターンが多くなってしまいそうなのですが、本作に関しては心配無用。 見るからに筋肉質で厳つい彼だけど、繊細な心情も丁寧に表現する演技を見せてくれて、違和感なく楽しむ事が出来ました。 さぁ、これからどんなストーリーが展開されるのだろうと期待が膨らむ序盤。 そして、中盤以降は……正直、王道過ぎるというか、何処かで観た事があるような展開に収まってしまったように思えて、残念でした。 遠距離恋愛をテーマとして扱っている以上、それは外せないのかもしれませんが「男が留守にしている間に寂しさに耐えかねて他の男と結ばれてしまう女」なんてものを、まさか終盤で堂々と見せられる事になるとは予想がつかず。 自閉症の父との絆、そして別れに関しても真面目に描かれていたとは思うのですが、それだけに優等生過ぎて面白みに欠けるように感じてしまいました。 一方、冒頭のシーンにて(あぁ、これは死ぬ間際の主人公が過去を回想するという形式なのか)と安易に考えていたところで、それを裏切ってくれる形となったのは気持ち良かったですね。 死の床にある父に向って、主人公が読み上げる手紙。 その文中にある「俺はコインだ」との言葉に象徴されるように、ストーリーの主軸は「コイン」と「父と子の絆」であって、恋愛要素はオマケに過ぎなかったのではないかな、とも思えてきます。 両方の要素を備えているからこそ魅力的なのかも知れませんが、自分の好みとしては、家族を主題にした映画か、恋愛映画なのか、どちらかに絞って描いて欲しかったところ。 色々と気になる点も多かったのですが、最後は主人公の男女が再会してハッピーエンドで〆てくれた辺りなんかは、何だかんだで嬉しかったです。 回り道はしたけれど、収まるべきところに収まったという形で、安心感がありました。 [DVD(吹替)] 5点(2016-04-20 21:44:02) |
585. ムーンライズ・キングダム
《ネタバレ》 どこか見覚えのある作風だなぁ、と思っていたら「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」の監督さんだったのですね。納得。 あちらも出演者が豪華で、かつ自分好みな顔触れだったのですが、こちらの品でもそれが共通しているみたい。 自分としてはエドワード・ノートン目当てで観賞したもので、本当に脇役扱いである事に驚かされました。 作風としては上品でセンスの良い、大人のファンタジーといった趣きですが、意外と性的な表現もあったりする、際どいバランス。 それも直接的でドギツイ代物ではなく、まだ性知識の無い子供でもドキドキしそうな作りになっている事には、感心させられましたね。 狭いテントの中で、半裸の女の子と二人きり生活を送る様を描いてくれたりして、ある種の願望を叶えてくれる映画としても評価出来そうです。 それと、劇中で女の子が初めてピアスを付けるシーンがやたら色っぽく描かれていた気がするのですが、あれはやっぱり「穴を開ける」という事で、性行為の諷喩なのかな? とも思えるのですが、真相や如何に。 そういった意味で、子供同士の恋愛映画としては満足だったのですが、大人側の描写には少し不満もあったりします。 ノートン演じるウォード隊長と、ブルース・ウィリス演じるシャープ警部を、今一つ応援する気持ちになれなかったのですよね。 理由としては、この二人が主人公達の人格を理解し、尊重し、彼らを好きになった上で行動しているというよりも、単に「少年収容所に送るのは可哀想だから」という、同情心ゆえの行いに思えてしまったのが大きいです。 彼らは主人公達に味方してくれる「良い大人」代表なのでしょうし、もう少し両者の心の交流というか、相互理解を示す場面が欲しかったところ。 心中オチも有り得るかと思われた展開の中で、最後はハッピーエンドに着地してくれた事は、素直に嬉しかったです。 まだまだ前途多難な恋路のようだけど、それもまた発展途上である子供達の物語としては相応しい結末かな、と思えました。 劇中の二人にとっても、この子供時代の思い出は、素敵なものとして胸に残りそう。 奇妙な安心感を与えてくれる、独特の映画でした。 [DVD(吹替)] 6点(2016-04-20 14:12:01)(良:1票) |
586. ルームメイト(1992)
《ネタバレ》 思っていた以上にレズビアン的要素が強い内容で、驚かされました。 同性愛とは「自分と違う存在」を愛せないがゆえの、自己愛の延長なのだという説を思い出しますね。 確か中学生くらいの頃、クラスメイトの女子が髪型を変える際に「同じにしても良い?」と友達に訊いたり、筆箱を買う時に「同じの買っても良い?」と確認を取ったりしている場面に遭遇して(女子って変な事するなぁ、特許がある訳でもないんだから、勝手に髪切って勝手に買えば良いのに)なんて思っていたものですが、この映画を観た後では、とてもそんな呑気な考えは浮かんでこなくなります。 それくらい「ルームメイトが同じ髪型になる」シーンには、精神的にゾクリと来るものがありました。 ジェニファー・ジェイソン・リー演じるヘディに関しては、とことん病んだ女性なのですが、恐怖だけでなく同情も感じさせる辺りが、女優さんの上手さなのでしょうね。 ブリジット・フォンダ演じる主人公のアリーに対し、歪んだ形ではあるけれど、確かに愛情を抱いているのが伝わってきました。 相手を縛り付けておきながら、退屈はしないようにとテレビを付けて、リモコンも手元に置いてあげるという彼女なりの優しさ。 それが仇となって計画を狂わせてしまうのが、何とも皮肉です。 愛する相手を殺してしまったと悲しみ、別れのキスを交わすシーンも印象深かったのですが、個人的に感心させられたのが、その後のヘディの行動。 「死体」となったアニーを運ぶ姿には、先程までの悲しみなど全く窺えず、後始末しなければいけない腹立たしさゆえ、忌々しそうに死体を引きずっているように見えたのですよね。 一応、上着で顔を隠すという配慮(?)もありましたが、その後に実はアニーが生きていたと分かった際にも、喜びではなく混乱をきたしている辺りに、異常性が窺えます。 彼女なりの愛情は存在したのだろうけど、それは決して真っ当な形ではないし、報われるようなものではないのだな、と自然と納得させられるものがありました。 その後の主人公アニーの逆転劇に関しては、本来は盛り上がるところなのでしょうが……少々アクロバティック過ぎて、違和感を抱いてしまいましたね。 アクション的な見栄えの良さを重視したのかも知れませんが、別にヘディの腕っぷしが強い訳でもないはずですし、もう少し大人しめの演出でも良かったのではないかな、と思えます。 クライマックスと呼べる部分であるだけに、そこで映画の世界から現実に引き戻される気がしたのは、とても残念。 ラストシーン、たった一人で部屋の中に佇むアニーの姿からは、彼氏のサムだけでなく「友達」のヘディを失ってしまったという悲しみも感じられました。 双子の姉が死んでしまったトラウマゆえに「生きている自分が許せなかった」というヘディに対し、アニーは「死んでしまった彼女を許す」という形になっているのも興味深い。 そしてヘディと同じ道を辿らぬよう「生きている自分も許そうと思う」というアニーの独白で、物語が終わる。 綺麗に纏まった映画です。 [DVD(吹替)] 6点(2016-04-17 20:24:39)(良:2票) |
587. ルームメイト2
《ネタバレ》 続編というよりはリメイクに近い印象を受けました。 1で印象的だった「髪型を同じにしてルームメイトとの同一化を図ろうとする女性」というシークエンスなども、ほぼそのまま再現されていますね。 ただ、長い黒髪を短い茶髪に変えた前作に比べると、今回は髪色を変えた程度の変化に思えて、インパクトは弱かったように感じられます。 「良い子」だと思っていたルームメイトが、卑猥な店で働いているのを見かけて衝撃を受けるシーンなども、今作の女優さんに関しては失礼ながら「そういう店で働いていても驚かないタイプ」という印象を受けたので、意外性という点では不利かと。 序盤は前作とは違う展開だっただけに、新しいストーリーを見せてくれるかと期待していたところだったので、中盤以降は「結局、同じ話になるのかよ!」という落胆を感じてしまった……というのが、正直なところですね。 2から先に観ていれば印象も変わったかも知れませんが、この辺は後発の作品の辛いところ。 結末に関しても大体同じなのですが、彼氏が生き残っているのでハッピーエンド色が強まっている一方、ヒロインは死んだルームメイトに憑りつかれているような描写もあり、一概に後味が良いとは言い切れないものがありました。 相手を殺して一緒に死ぬ事が愛情表現であった彼女に対し、ヒロインは殺すだけで自分も死んであげる事は出来なかったという形で「彼女の愛には応えられない」という事を示した点に関しては、中々味わい深くて好みです。 最後にヒロインが見せた笑顔は、過去を吹っ切ろうという決意の表れにも、殺したルームメイトと同化するのを受け入れたようにも思えましたね。 それまでは予定調和な展開ばかりだった中で、初めて「この後どうなるの?」と身を乗り出した途端に、スタッフロールが始まってしまうというオチ。 何とも残酷な映画でした。 [DVD(吹替)] 5点(2016-04-17 19:38:32) |
588. ストレンジャー・コール
《ネタバレ》 舞台となる家の造形が良いですね。 (こんなところに住んでみたいなぁ……)と、羨望の溜息が漏れちゃいます。 そんな家の内装と、ヒロインを眺めているだけでも楽しい映画……と言いたいところなのですが、そういった気分も、中盤に差し掛かる頃には流石に醒めてしまいました。 その理由としては、まず、犯人が出てくるまでが異様に長い。 勿体ぶって、これでもかこれでもかと引き延ばした割りに、その正体は意外な人物でも何でもなく、初対面のオジサンだったりするのだから、大いに肩透かしです。 喧嘩中の彼氏と、女友達だけでなく、ベビーシッターとして派遣された先の家庭にもメイドやら大学生の息子やらを思わせぶりに配置していたのは、全てミスリードを誘う為だったのでしょうか。 子供達の姿が全く見えないから「実は既に殺されている」「実は最初から存在しなくて夫婦の妄想の産物」なんて展開も予想されるのですが、これまた全部外れ。 もしかして、退屈な留守番を任されるベビーシッターの心境を観客にも理解してもらう為に、意図的に冗長な演出にしたのではあるまいか……とも考えられますが、きっとこの推理も外れなのでしょうね。 何よりもキツかったのは、この映画において最大の衝撃を受けるであろう「実は犯人が屋内にいる」という部分。 これって有名な都市伝説が元ネタなので、観客である自分もとっくに知っていた事なんですよね。 仮に知らなかったとしても、序盤のアラームが鳴った件やガレージが開きっぱなしだった描写やらで「犯人が潜入している」というのは、すぐに気が付いたと思います。 だから当該のシーンで衝撃を受けるヒロインに対しても(えっ? 今更?)という印象を受けてしまい、どうしても感情移入出来ません。 せめて守るべき対象となる子供達との間に絆があれば応援出来たのでしょうが、それも無し。 そもそも子供達の台詞が極端に少なく「守りたい」「この子達には何とか生き延びて欲しい」と思わせるような描写すらも乏しいものだから、困ってしまいます。 ヒロインが恐怖のあまり精神を病んでしまったかのような、後味の悪いバッドエンドなのも、好みとは言えません。 何だか不満点ばかりを並べる形となりましたが、犯人を撃退する「暖炉の装置」に関しては、完全に忘れていたので意表を突かれたし、良かったと思います。 パトカーの中からヒロインを見つめる犯人の眼光にも、ゾクっとさせられるものがあって、印象的。 恐らくは意図的に血を映さず、適度な「怖すぎない怖さ」を提供してくれた事にも、好感が持てます。 それでも「ここを、もっとこうすれば面白くなったんじゃないかな?」という思いが頭を離れない……そんな映画でありました。 [DVD(吹替)] 3点(2016-04-16 17:47:36)(良:1票) |
589. 2ガンズ
《ネタバレ》 デンゼル・ワシントンにはコミカルな印象が無かった為、この映画には驚かされました。 どちらかといえばマーク・ウォールバーグのファンであるだけに、彼よりも笑わせてくれるシーンが多い事には、素直に感服です。 特に好きなのは銀行強盗を終えた後、周りを見回して「あれ? 何で警察が来てないの?」と戸惑う姿ですね。 覆面越しで表情は見えないはずなのに困惑が見て取れて、上手いなぁと感じます。 主人公二人がどちらも「悪の組織に潜入捜査している善人」という設定に関しては、今一つ活かし切れていないようにも思え、残念。 中盤にて互いの正体が分かった時にも「お前、裏切り者だったのか!」って具合にショックを受けて喧嘩になっていますし、それならどちらか片方は元々悪側の人間で、改心する展開でも良かったのではないかと。 ラストの「これで俺ら、ファミリーだ」という台詞に関しても、元々二人は同じような立場、どちらも国家権力側の人間であった訳だから、垣根を越えて分かり合えたというカタルシスが乏しかったですからね。 「3で同時に放そう」の件といい、二人を徹底的に似た者同士として描く為だったのかも知れませんが、もう少し何か「この設定ならではの利点」を感じさせてもらいたかったところ。 上述のように気になった点もあるけれど「そんな細かいこと、ツッコむ方が野暮だぜ!」と思えるような魅力があるのも確かですね。 冒頭の「ドーナツが美味い店」でのやり取りも良いのですが、最後の銃撃戦にて、互いに背中を預けて円を描くように撃ちまくるシーンなんかも、お気に入り。 リラックスして、お気楽モードで楽しめる映画でした。 [DVD(字幕)] 6点(2016-04-16 13:22:52) |
590. ニルヴァーナ
《ネタバレ》 「私達は水槽の金魚さ。水槽を海だと思い込まされている」 「そこも現実っていうゲームの世界じゃないの?」 などなどの台詞に痺れてしまう身としては、観賞中、とても楽しい時間を過ごせました。 現実と虚構の境界線が曖昧になってしまう作風はフィリップ・K・ディックの面影を感じさせる一方で、後代のサイバーパンク映画に与えた影響も大きいように思えますね。 モノクロ世界の中で一部だけカラーを用いて、その存在を際立たせる手法については、幾つかの映画で目にしてきましたが、この作品は、その使い方が凄く好みなんです。 特に、色が流動的に変化する口紅とドレスの演出などは、全体に漂うオリエントな猥雑さと、それに伴う色っぽさを引き立ててくれていましたね。 湯気を浴びただけで、すぐに曇って調子が悪くなってしまうカメラアイなんかも、妙に説得力があるというか「本当にそんな機械が存在しそう」というSFマインドを、大いに刺激してくれます。 主人公を手助けしてくれる仲間のジョイスティック、ヒロイン格のナイマも魅力的なキャラクターで、三人でハッキングを行うシーンには、実にワクワクさせられるものがありました。 はてさて、こんな映画を撮ったのは一体誰なんだ? と調べてみたら「ぼくは怖くない 」と同じ監督さんだと分かって、大いに納得。 あちらも素晴らしい傑作でしたからね。 上述の通り、全体的に好印象の映画なのですが、気になる点としては、もう一人の主人公とも呼ぶべき存在であろうソロが、作中であまり活躍してくれなかった事が挙げられそう。 彼は仮想世界にいる「囚われのお姫様」ポジションであるのだから、現実世界の主人公ジミーの行動原理でさえあれば良いのだ、という解釈も可能でしょう。 ただ、それにしてはラストシーンにて 「私達は勝ったのか?」 「あぁ、勝ったよ」 という小粋なやり取りを交わす件など、まるで二人が共に戦った相棒であるかのように描かれているのが、少し不自然に感じられたのですよね。 それならば、終盤にてソロも「ニルヴァーナ」の消滅に役立つような見せ場が欲しかったな、と思ってしまいます。 ソロと別れを交わした後、ジミーがドアに向かって発砲した後のシークエンスに関しては、色々と解釈の分かれるところでしょうね。 自分としては「ジミーの死後、ナイマの中に挿入された記憶チップという形で、二人は一つになれた」という一種のハッピーエンドなのだと考える次第。 その方が、勝者となった主人公には相応しい顛末かと。 劇中にて印象的に語られていた「降りながら消える雪の一片」が、スタッフロールにて描かれる終わり方なども、とても良いですね。 こういったビジュアルセンスって、凄く好き。 素敵な余韻を与えてくれる映画でした。 [DVD(吹替)] 8点(2016-04-14 12:23:01) |
591. スティーブン・キング/ドランのキャデラック
《ネタバレ》 クリスチャン・スレーター主演という情報を元に観賞してみたら、まさかの悪役。 元々善玉だけでなく悪党も器用に演じきる俳優さんという印象がありましたが、今回もハマっていましたね。 彼が演じた役柄で一番好きなのは「フラッド」の主人公なのですが、この映画のドラン役も、それに次ぐインパクトを与えてくれました。 特に終盤、自慢のキャデラックの中に閉じ込められてしまうシーンでの焦燥感や、息苦しさを伝えてくれる演技なんかは、必見です。 そして、そのキャデラック。 映画のタイトルになっているだけの事はあり、魅力たっぷりなアイテムとして描かれています。 完全防弾、背後を追跡してくる車を観察出来るカメラ、車内用パソコンに、緊急時の酸素吸入器(?)まで付いているという至れり尽くせりっぷり。 劇中では悪役が乗り回している代物であり、主人公にとっての復讐の対象となる車なのですが、妙に男の子心を刺激され、憧れてしまう存在でした。 原作がキングという事もあってか、主人公に妻の亡霊が見える設定もあるのですが、こちらに関しては必然性があったのか、少々疑問。 妻が妊娠していた事を悟らせる効果があったのでしょうが「それって幽霊経由でなくとも良かったのでは?」という疑念を抱いてしまいましたね。 映画後半では主人公とドランとの一騎打ちとなって、妻の幽霊は全く姿を見せませんし、決着が付いた後に、何か一言残して天国へと旅立ってくれる訳でも無し。 よって、幽霊の存在が途中から立ち消えする形となり、何だか宙ぶらりんに感じてしまうのです。 超常現象などを絡めずとも、純粋に復讐譚として楽しめるクオリティがあるじゃないかと思えただけに、そこが気になってしまいました。 映画終盤「主人公が行動を起こさずとも、いずれドランは逮捕される運命だった」と判明する件に関しては、実に皮肉が利いていて良かったと思います。 逮捕のキッカケとなった児童売買についても、ドランは決して乗り気ではなく、むしろ苦悩すら垣間見せていた辺りなんかも、好みのバランス。 主人公側だけでなく、ドラン側にも感情移入させてくれて、両者の対決の行方がどうなるのかに注目させてくれました。 全てが終わった後に、空を見上げて、乾いた高笑いを響かせる主人公。 そこには達成感が多分に含まれていたのでしょうが、それと同時に、復讐の空しさも感じていたのではないかな、と思えます。 独特の後味を与えてくれる映画でした。 [DVD(吹替)] 7点(2016-04-13 16:56:31) |
592. パラノーマン ブライス・ホローの謎
《ネタバレ》 導入部の短い時間の中で、主人公に感情移入させるのが巧いなぁ、と感心。 「幽霊が見えて、話す事が出来る」という能力の持ち主が、周囲からは如何に奇怪な存在に思えるか、という点をテンポ良く説明してみせる親切さが心地良いんですよね。 学校でのイジメも陰鬱になり過ぎない範囲で、同情を誘うように描かれており、この後に彼が周囲に理解され、立場が改善される展開になる事を願わされます。 他にも、変人のように描かれていたお婆ちゃんが「実は幽霊である」という最初の種明かしの時点で、これは自分好みの映画だと直感的に覚る事が出来ましたね。 主人公を見守るお婆ちゃんの霊というと、性格的にも分かり易く優しかったり、あるいは窮地を救ってくれる助っ人的なポジションだったりするのを予想するところなのですが、この映画では本当に孫を見守っているだけで、出番すらも僅かで、直接的に役立ってはくれないんです。 それを作劇として不誠実と感じる向きもあるでしょうが、自分としては何となく、その「すっとぼけ」具合が好ましく思えました。 一番面白かったのは、中盤のゾンビが町を訪れるシークエンス。 目の前にゾンビが迫ってきているのに、自販機で買ったお菓子が出てくるまでは逃げ出す事が出来ずにいる市民の姿なんかが、妙にツボでした。 ただゾンビ映画のテンプレをクレイアニメでなぞるだけでなく、こういった独自のユーモア感覚が全編に散りばめられているから楽しい。 格好良くショットガンを取り出して「頭を吹っ飛ばせーっ!」と叫ぶ金髪のオバちゃんの姿なんかには、こちらのテンションも大いに高まりました。 「ゾンビよりも人間の方が怖い」というのは、これまでにも何度か描かれてきたテーマではありますが、この作品くらいハイテンションに、かつギャグの色も濃密に描いたパターンというのは、初めての体験でしたね。 ゾンビが人間を襲うのではなく、人間がゾンビを襲っているというアベコベな風景を、途中までは笑って観ていられたのに、段々と「魔女狩り」の色合いを帯びてくる集団の姿に、ゾッとさせられるという二段仕掛けの構成も秀逸。 狂気とは笑いにも恐怖にも通じるものなのだなぁ、と実感させられました。 一方で、終盤の展開に関しては少し不満というか、期待していたのとは違う方向性に話が進んだように思えて、残念な気持ちに。 まず、一度は弟を見捨てたはずの主人公の姉が味方になってくれる展開が、どうにも唐突に感じられてしまった事。 そして騒動の根源となっている魔女との対決が、似通った境遇の少年と少女の対話によって解決されるという展開に「えっ? そんな道徳的な話になるの?」と戸惑ってしまった事が大きいですね。 後になって思い出せば、冒頭のお婆ちゃんの台詞「ちゃんと落ち着いて話し合えば、違う結末になる」が伏線になっていたのだと分かるのですが、観ている最中は?マークに頭を占められてしまいました。 個人的好みとしては、中盤までの悪ノリとブラックユーモアに溢れた世界観で突っ走って欲しかったという思いがあるのですが、終盤の感動的なシークエンスによって、この映画に「誰でも安心して楽しめるような優等生的作品」という長所が生まれたのも確かですね。 主人公の友達となってくれるニールや、その兄など、脇を固めるキャラクター陣も魅力的。 ラストシーンの、それまで頑なに息子を否定していた父親が、ようやく幽霊の存在を受け入れて亡き母に語り掛けてくれるという、静かなカタルシスを与えてくれる終わり方も良かったです。 一家揃って仲良くホラー映画を観る姿には、憧れを感じさせるものがありました。 [DVD(吹替)] 7点(2016-04-13 09:47:05) |
593. トランスポーター
《ネタバレ》 これは度胆を抜かれた映画ですね。 「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」でお馴染みの顔だったジェイソン・ステイサム。 彼が主演の映画という事で、軽い気持ちで観賞してみたら、予想を遥かに上回るアクション濃度。 特に終盤の上半身裸になっての格闘シーンは圧巻で 「えっ? この人こんなに強かったの!?」 と、画面の中で躍動する彼の姿に、呆気に取られ、次いで笑みが込み上げてきたのを覚えています。 序盤に繰り広げられるストーリーや、主人公とヒロインの設定に関しては 「あぁ、リュック・ベッソンだなぁ……」 としか思えず、完全に油断していただけに、今作で明かされた「強さ」というステイサムの強烈な個性に、痺れてしまいました。 今は日本でも気軽に購入出来るようになったジュースのオレンジーナを、作中でヒロインに飲ませてあげるシーンなんかも印象深いですね。 ラストも囚われの人々を開放するのと同時に、スパっと切れ味良く終わるのも好印象。 エンディング曲も好みでしたし、気持ちの良い時間を過ごせた一品でした。 [DVD(吹替)] 7点(2016-04-12 08:04:04)(良:1票) |
594. トランスポーター イグニション
《ネタバレ》 てっきりストーリーも第一作をなぞる形かと思っていたので、全く新しいストーリーが繰り広げられる事に吃驚。 とはいえ、脚本はリュック・ベッソンが担当している為か「あぁ、またこの展開か」と思ってしまうくらいに、観ていて安心感がありましたね。 謎のブロンド美女集団なんて如何にもといった感じで、相変わらずだなぁと嬉しくなってしまいます。 主人公フランクに関しては、クールでスタイリッシュな印象。 前シリーズのジェイソン・ステイサムに比べると、紅い唇が印象的なエド・スクラインは黒スーツが良く似合っており、冒頭のアクションにはエレガントさすら漂わせているのが、独特の魅力だと思えます。 一方で、あのスーツ姿とは不釣り合いな野性味、何をやらかすか分からない危なさが薄れているように感じられるという、後発ならではの弱みもあるかと。 それと、やはり目立つのは父親の存在ですね。 「これは孤独なプロフェッショナルという主人公のタイプには似合わない、恐らくは途中で殺されて復讐を誓う展開なのだろうな……」 という安易な予想を裏切ってくれたのは、素直に嬉しい。 序盤から「親父さんの職業に秘密があるな」と勘付かせて、そちらの期待は裏切らずに、元スパイという設定が中盤で判明する辺りなどは、好みのバランスでした。 ところが一転、終盤になると少し期待外れというか、テンションが下がる展開に。 まず、親父さんのキャラクターが目立ち過ぎた結果、主人公フランクの存在感が薄まってしまった事。 そしてストーリーの中核を担うのがヒロインのアンナであると判明し、フランクが単なる「アンナを手助けする相棒ポジション」にしか思えなくなってしまったのには困りました。 一番の難点は、父親が誘拐されてしまう流れを二度続けてやられた事で、これには思わず「またかよ!」と声が出てしまいましたね。 それにラスボスは主人公と因縁のあるキャラクターなのだし、アンナの手助けによって決着が付く展開にするのではなく、実力で気持ち良く勝って欲しかったところです。 恐らくはシリーズ第一作にて、ヒロインが拳銃で主人公の危機を救う結末へのオマージュなのでしょうが、それならラスボスを倒した後、満身創痍で端役に追い詰められた後に救われる展開でも良かったかな、と。 上記のように不満点もあったりするのですが、そういうものだと予め知った上で、割り切って観れば、主人公達の親子関係は微笑ましいものがありましたし、充分に楽しめる内容だと思います。 特に、カーアクションの面白さは折り紙付き。 路上の消火栓を破壊して道路を水浸しにする事によって追っ手を足止めする件や、空港でのジャンプなどは見応えがありました。 今回は「事前に期待した内容とは違っていた」という意味で、今一つ盛り上がれませんでしたが、また時間を置いて再見し、その魅力を確かめてみたくなる。 そんな一品でした。 [DVD(吹替)] 6点(2016-04-12 07:37:21) |
595. 東京島
《ネタバレ》 無人島が舞台で、しかも男達の中に女性が一人だけ、これは絶対に面白いはず! と期待して観た品なのですが…… 「面白くなかった」「期待外れだった」とまでは言わないけれど、物足りないものがありました。 元ネタであろうアナタハン事件に比べると「女を巡って男達が殺し合いする」という殺伐さもあまり感じられず、どこかノンビリした空気が全編に渡って漂っているんですよね。 それが心地良い、お気楽漂流ものとして楽しめる、という側面もあるのでしょうが、自分としては肩透かし。 主人公となる女性が「サバイバル」していると感じさせる場面が、冒頭で蛇を捕まえる部分くらいしかなかったのも残念でした。 ラスト、島を脱出するのを諦めた男達が「王子」を崇めて、平和に暮らしている姿なんかは、皮肉が利いていて良かったですね。 これはこれで一つの幸せの形なのだなぁ、と思わされたりもしました。 それに対し、脱出に成功した主人公の女性は、窪塚洋介演じるワタナベと結ばれた……のかな? だとしたら、何とも少女漫画的な顛末。 「口が悪くて何かと自分に突っかかってくるけど、本当は自分の事が好きだったイケメン」だなんて、如何にもといった感じですからね。 女性として感情移入して観たら、また違った感想になるかも。 ハッピーエンドという意味では文句の付けどころが無いし、観客が求めるものに応えようとした映画ではあった、と思います。 [DVD(邦画)] 4点(2016-04-08 12:26:56) |
596. 秘密(1999)
《ネタバレ》 「これは感動させようとしているの? それともブラックユーモアとして笑わせようとしているの?」 と戸惑ってしまう内容でした。 恐らく、感動させようとしている確率の方が高い気はするのですが、それにしては娘に憑依した妻の行動に納得がいかないのです。 ただ単純に「若返った事を喜んでいる」「夫と再び結ばれる事は無かったけど、若い男と再婚出来たので問題無い」という感情の方が、悲しみよりも大きかったのではないか、と思えてしまってならない。 男性側の目線だからそう感じるだけで、女性側の目線からすると、また違った感動的な側面が見えてくるかも知れません。 けれど、自分としては「あぁ、娘に続いて妻さえも失ってしまった夫が可哀想だなぁ」という思いと「元妻も可哀想かも知れないけど、まぁこの後に幸せになれそうだから、良かったね」という思いが入り交じり、何とも言えない気分に襲われました。 二人の切ない運命に「泣ける」映画としても、皮肉な運命を辿る元夫婦の姿に「笑うしかない」映画としても、どちらでも楽しめる一品、という解釈も可能だとは思います。 ただ、自分としては困惑させられる事が多くて、映画の世界に入り込めず、残念でした。 [DVD(邦画)] 3点(2016-04-08 12:06:41) |
597. 名探偵登場
こういったコメディ映画は、元ネタに対する愛情があってこそだと思っていた自分にとって、むしろ元ネタのミステリー小説群を否定するような内容であった事は、非常に驚きでした。 ラストの主張に全く説得力が無かった、とは言いません。 けれど、そこにはユーモアという以上に悪意を感じてしまって、とても賛同する気持ちにはなれませんでした。 ピーター・フォークが出演している事もあり、観賞前は期待していただけに、それを裏切られたという思いもあります。 豪華な出演者陣は、ただ画面を見ているだけでも楽しい気分にさせられるし、作中のギャグシーンで笑いを誘うものがあったのも確か。 そういった「好き」な部分も簡単に見つけられるだけに、残念な気持ちになる映画でした。 [DVD(字幕)] 3点(2016-04-08 11:45:52)(良:1票) |
598. 模倣犯
《ネタバレ》 森田芳光監督の作品は、好きなものが多いです。 この映画も、監督のセンスを感じさせる場面は幾つかあるのですが、全体的に考えると「面白かった」とは言い難いですね。 原作小説に比べると、犯人であるピースを妙に大物扱いしているというか、感情移入させようと描いているような意図が窺えて、そこに違和感を覚えました。 勿論、それはそれで映画独自の魅力とも言えますし、犯人のプライドを刺激して自白を引き出す件など、原作で(いくらなんでも性格が子供っぽすぎる……)と感じられた反応が、比較的落ち着いたものに変わっている点は好み。 けれど、総じてマイナス面も大きいように感じられて、ラストの爆発シーンや、その後の「子供を託す」オチには流石に唖然。 全編に漂う独特の悪ノリ感、そして時折垣間見せる緊張感の緩急は決して嫌いではないのですが、ギリギリで「好き」と言える領域に踏み込んできてくれない、そんなもどかしさを感じた映画でした。 [DVD(邦画)] 4点(2016-04-08 11:28:15) |
599. 魍魎の匣
原作小説が大好きなので、それが映像化されたというだけでも嬉しかったですね。 内容的に二時間にまとめるのは難しいでしょうから、大幅な改変が行われたのも理解出来ます。 ただ、作品の核の一つとなる「加菜子を突き落としたのは誰なのか?」「何故、突き落としたのか?」という謎が解かれる件に、あまり説得力が無かったように思えました。 勿論、原作でも決定的な動機が無かった事は承知の上です。 それでも、映画を観ただけだと「えっ? 何で突き落としたの?」と戸惑ってしまいそう。 役者さんに関しては、久保竣公を演じた宮藤官九郎のハイテンションな立ち振る舞いに驚かされましたね。 原作よりも「サイケデリックな天才作家」という雰囲気が色濃い感じ。 堤真一、阿部寛に関しては、流石の安定感がありました。 [DVD(邦画)] 4点(2016-04-08 11:07:35) |
600. 野生のエルザ
(これはフィクションなのか? それともドキュメントなのか?) と戸惑ってしまうシーンが多く、最後まで集中する事が出来ませんでした。 こういった題材では、その「線引き」が非常に難しいですし、どちらとも受け取れるような演出にする事がプラスに働く例もあると思いますが、どうも自分には合わなかったみたいです。 それでも、雄大な自然の風景を眺めているだけで楽しい、と思える品だったのは確かですね。 人間と動物の関係性、動物を保護するという事、飼うという事について、色々と考えさせられました。 [DVD(字幕)] 4点(2016-04-08 10:53:31) |