601. シン・ゴジラ
ゴジラにもエヴァンゲリオンにも何の思い入れもなく(というか殆ど何もしらない)、政権批判作品という噂は聞いていたので政治ドラマとしてどんなもんかという点に期待して鑑賞。まず特撮だが、よく知る町並みがゴジラによって破壊されていく様に気持ちがざわつくといった効果はあるものの、ゴジラの暴れっぷりには少々モノ足りなさはある。政権批判に関しては、思ってたほど批判にもなっていなくて、逆に法治国家である日本の限界(それは昨今のコロナ騒動にも言えるが)を好意的に描いてたように思える。但し登場人物が多くて人間関係が少々わかりにくいのと、ややコメディタッチというわけでもないが全体的に軽い感じで描かれているため登場人物達に苦悩が感じられないし、シリアス感も欠如している。また、政府と軍隊ばかりを描いており、マスコミの動きや大衆のパニック状況が殆ど描かれていない事にもパニック映画として物足りなさはある。 原発事故やコロナ騒動に比べたら、ゴジラ上陸は大変な危機なわけだが、なんの事前通告もなく東京大空襲で10万人が、原爆投下で後遺症も含めて50万が死んだ事を考えると、やはり日米戦争というのは日本史上最大の国難である事は間違いなく、そこでの政治判断はどのように行なわれたのか?をあらためて検証し、国家とは何か?政治とは何か?等々を考察してみたいという気持ちにさせられる作品ではある。 [地上波(邦画)] 6点(2020-05-15 11:38:53)(良:2票) |
602. 超高速!参勤交代 リターンズ
娯楽度は前作より高まっているが、どうせやるならトコトンふざけて、突き抜けて欲しかった。人情話を絡めるから、どうしても中途半端になってしまうんだろうが。 気になったのは松平信祝の描き方で、実在の人物を史実とはかけ離れた形で脚色して描く事には問題があるように思うが、こういう事に配慮のない製作陣には疑問を感じる。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2020-05-12 11:47:15) |
603. 超高速!参勤交代
原作未読だが、311対応の政権批判として書かれたものらしい。その気概は感じるものの、せっかくの題材なのにワイヤー・チャンバラアクションが多くて、内容が薄い。娯楽作品として製作されたのだろうが、もうちょっと重厚な人間ドラマとして描けたのではないだろうか。大人が見るには少々物足りない。かと言って子供が見るかというと疑問であり、中途半端な作品である。 [地上波(邦画)] 5点(2020-05-12 10:18:01) |
604. ファンシイダンス
バブル時代に話題になっていたような記憶はあるのだが、リアルな坊さんがバラエティーで面白オカシク振舞ったり、BARを経営したり、ロックを歌ったり、多方面で活動している30年後の世界から見ると、もはやお寺も「特別な世界」ではなくなっているし、大衆化され消費されてしまっているので、こういう作品は新鮮味がないというか面白味には欠ける。当時人気のあった鈴木保奈美にはそれなりの存在感はあり、その後ぱっとしなかったのは、結婚相手がよくなかったからだろうか?という雑念が沸き起こるという難点もある。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2020-05-10 03:10:06) |
605. くちびるに歌を
閉鎖世界に異端者がやってきて、双方刺激し合いながら、変化を遂げていくというパターン映画のひとつであり、ベタベタな王道系の作品ではある。しかしながら、それぞれの生と死と再生を通じて、「自分とは何か?」「これからどう生きていくのか?」という問いに対して、思春期における存在と時間と30歳の存在と時間を見事に交錯させる事により応答し、そこに音響的な相乗効果も加わり、中々上手い具合に仕上がっている作品だと思う。 [地上波(邦画)] 7点(2020-05-03 19:48:51) |
606. 君の膵臓をたべたい(2018)
原作未読、実写映画鑑賞済み。 アニメだとファンタジックで表現も仰々しいというか大げさになるので、実写の方がリアリティーがあるような気がする。ただし、自己存在と他者との関係性については、アニメの方が表現がストレートで対立軸が明確なので、良くも悪くもわかり易いとは思う。 [地上波(邦画)] 5点(2020-05-03 19:36:08) |
607. 四月は君の嘘
こういうやたら元気のいい若い子ってのに昭和感があり、見ていて少々疲れる。とても病人には思えないし。あと気になったのは学校は湘南にあるのに、渓谷らしき所での飛び込み。これは地理的にかなり違和感がある。いったい舞台はどこなんだ?この度あらためて思ったのは広瀬すずの声は中々特徴的で個性があるなという事かな。広瀬すずが可愛いだけの映画なのでファンは見てもよいのかと。原作は知らないのだが、忠実なのかな?そんなに古い漫画でもないようだが、今時こういうのが流行るとも思えないのだが。 [地上波(邦画)] 3点(2020-03-15 02:43:55) |
608. コーヒーが冷めないうちに
昔に戻って会いたい人に会って、心を入れ替えて、今を生きる。というベタベタな作品で、オムニバスだから個々のストーリーに深みはないし、主役はヘタだし。原作は人気があるらしいが、脚本がダメだったのか。でもまあ、心が全く動かないかというとそうでもないのが、この手の作品が安定的に量産される所以だろうな。 [地上波(邦画)] 4点(2020-03-12 04:28:20) |
609. 翔んで埼玉
これはおバカ映画のテイストではありますが民族(地域)差別をテーマとした作品でしょう。という意味では非常に普遍的なわけです。関東圏の人はそれなりに理解できるかと思いますが、そうでない人は埼玉≒中国と考えればスッキリすると思います。そして千葉≒日本ですね。今や、世界中国化計画が進行している中で、日本(千葉)は戦前思想のアジア主義を復活させて中国(埼玉)と同盟結ぶのか?それとも米英(東京・神奈川)に媚売り続けるのか?それとも第3の道を突き進んで「独立」を果たすのか?そういった米中対立や中国脅威論が台頭する中での日本の行く末を考えさせられる比喩的な作品であるのかと。つまり本作は飛翔する埼玉(中国)ではなく、取り残される千葉(日本)の視点で見るべき作品であると思います。 [地上波(邦画)] 7点(2020-02-10 01:33:16)(良:2票) |
610. 男はつらいよ お帰り 寅さん
《ネタバレ》 シリーズ終盤は寅さんの出番が少なくなると共に失速していったが、代わりにメインとなった満男と泉のその後の話に名場面集を挟み込んだだけの作品で、シリーズの劣化版を見ているようだった。泉は相変わらずの棒読みだし。前宣伝からは過去映像と最新技術を駆使してAI寅さんが現代に蘇り、もっとストーリーに色々と絡んでくるのかと思ったので期待ハズレ。どうせ名場面集にするなら、もっと割り切って寅さんの出番を増やしてほしかった。これなら、昔買ったムックの付録にあった全作予告編142分DVDを見た方が、懐かしさに浸れるような。 観客は殆ど全員高齢者だったが、映画館で見られた事の収穫は、世間の人とは笑いのポイントが違うんだなと感じられたこと。山田洋次は様々な社会問題を挿入しているように思えたが、そういう事が理解できるここにコメントするような人は特別な人間で、一般的に映画を楽しむ人々は全く違う見方をしているのだなと気づかされた。ここ笑うところか?って場面で場内に笑いが起こったのは驚きだった。その他、気になったのは「高木屋」の看板をワザワザ大きく映したこと。これは「とらや」への抗議なんだろうが、今更必要なのか?あとは、小林稔侍の役名が「健」だった事。これは高倉健を意識したものなんだろうな。まあ、最近は「寅さんはKYである」と30代以下の層からは敬遠されているようで(というか大学生ぐらいになると寅さんを知らないという若者はザラにいるし)、「それをいっちゃあおしまいよ!」と言いたくなる寅さんを懐かしがっているのは完全な旧世代なんだろうな。 [映画館(邦画)] 5点(2020-01-12 02:28:51) |
611. 夜は短し歩けよ乙女
原作は未読だが、かなり有名な作品なので観てみた。原作世界をどの程度映像化しているのか不明だが、自分には合わなかった。京都大学が舞台だとは思うんだが、インテリ階級のコダワリがこういう感じで表現されるとキツイな。 [地上波(邦画)] 3点(2020-01-04 23:49:30) |
612. この世界の片隅に(2016)
《ネタバレ》 原作はずいぶん前に読んでいて、実写ドラマも見ていた。アニメ版は人物の「揺らぎ」が気になって少々見にくかったように思う。が、こういうマイルドテイストが現代的にはウケルのかもしれない。戦時中の人々が不幸であったというのは現代人の妄想であって、その時代にはその時代の喜怒哀楽があるという歴史認識を広く提示できた事は本作品の功績であるように思う。客観的視点に立てば、呉は軍の町であって、軍と共に生きている人々という特殊性をどう相対化するべきか?という問題点はあり、これが一般的な庶民の暮らしかというとそうでもないようにも思える。所詮フィクションなのでリアリティーを求めるものではないが、一点気になったのは玉音放送直後に、大韓民国の国旗が掲揚されたシーンである。これは臨時政府の国旗だろうか?呉の山間地域で、しかも8/15の時点で即座に掲揚されるというのはかなりの違和感があり、ここに政治的意図が働いているとしたら作品を汚す残念なシーンである。 <追記>大韓民国の国旗掲揚は原作にもあったようだが、すずの台詞は変更されたようである。細かい点には気がつかなかった。本件については様々な論争があるようなので、興味のある方は検索してみるといいかもしれない。作中における最も問題あるシーンだと思うので。 [地上波(邦画)] 5点(2019-09-12 02:33:42) |
613. 肉弾(1968)
《ネタバレ》 主人公は大学生でどうやらインテリのようなのだが、作品全体がややコメディータッチなので、所謂インテリの苦悩的なものが感じられなかった。結果、簡単に軍国主義に従ってしまったように思えた。中だるみもあり中盤は退屈する。作中で女子看護生がディオゲネスを引用し主人公を揶揄する等の描写はちょっとやりすぎにも思えたが、度が過ぎるとコメディーではなくなってしまうような。ラストは平和との対比にも思えるし、対米追従迎合による資本主義への皮肉にも思えて、単なる反戦映画ではないようにも感じたが。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2019-09-12 02:15:49) |
614. 黒い雨
《ネタバレ》 戦車特攻で病んでしまった青年はどうやら原作にはない映画オリジナルの設定のようであるが、本作品ではキーマンになっている。2人の縁談が持ち上がった時の叔父・叔母の対応。「おいつは病気じゃないか!」という差別意識が、原爆被害者にもあるという描写には唸らされた。ラストで青年は車のエンジン音も気にせず矢須子を抱えて乗り込んでいく。ベタではあるが、ここに愛による人間の再生を感じた。で、コレ白黒だけど平成の作品なんだよねえ。当時は結構話題になったように記憶しているが、すっかり埋もれてしまっているのが残念。毎年放映すべき作品であると思う。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2019-09-12 01:55:17) |
615. ひろしま(1953)
《ネタバレ》 まずは冷静にこの時期に、この映画が製作された背景・経緯を理解するべきだろう。作品中にも出てくるが、朝鮮戦争特需があり、警察予備隊の結成があり、そして日教組が反対の意思表示として製作された非常に政治的作品である事に留意する必要がある。また、本作品は反米的であるとして、お蔵入りになったようであるが、純粋に作品としても出来がよいとは思えない。しかしながら、戦後8年で当事者が多数参加して制作された事を考えると、臨場感というか意気込みや気迫が伝わってくる。それにしても宮島で頭蓋骨が土産物として売られていたというのは本当なんだろうか?今日的感覚では信じられないが。 [地上波(邦画)] 6点(2019-09-12 01:43:43)(良:1票) |
616. 鬼が来た!
これは非常に政治的な映画であり、共産党と国民党と支那派遣軍の3者の関係がわかってない人が見ても、この映画の意図は意味不明だろうし、「鬼」というワードに釣られて、戦争映画にありがちな人間の狂気とか残酷さといった感想しか持てないだろう。問題は、この作品がどの程度のプロパガンダ性があるのかであるが、基本的に中国映画は共産党の思想に反する映画は製作も上映もされないと思っているので、一応はクリアしているのだろう。よって、当然の事ながら根底には「抗日戦争」に勝利したというメッセージが込められているのは間違いない(本作品は国の許可を得ずにカンヌに持ち出され、中国国内では上映禁止となったようだが、その後解禁されたとの事なので、中国共産党の正当性をアピール可能という判断だろう)。 ちなみに冒頭の「私」が誰なのか?が謎になっているようだが、これはその後の展開から共産党と考えるのが妥当だろう。時代は45年なのでもはや日本の敗北は明らかであり、日本の武装解除後の武器装備をめぐる国共の争いが本格化する時期でもある。よって日本軍への協力地域を混乱に陥れる事により共産党の解放区(辺区)拡大の意図があったと考えるべきだろう。ポツダム宣言に言及している人間が皆無なのだが、戦後蔣介石の「以徳報恩」により日本軍は国民党からそれなりによい扱いを受ける。収容所を出て自由にタバコを吸ったり、過酷な捕虜生活になっていないのはそのせいである。ラストの極端な演出はその「以徳報恩」の映像化でもある。日本軍は敗戦が明らかになり、自暴自棄となり中国人民を「祭り的」に虐殺した。そして、日本軍に復讐した中国人民に対し、国民党軍は処刑を言いわたす。これは、それまでの台詞で何度かでてきた「中国人とは違って日本人は約束を守る」の裏返しでもあり、中国は法治国家であるとのメッセージとも取れるし、抵抗を示した中国人民を処刑した国民党軍を非難しているとも取れるので解釈が難しいところでもある。あえて普遍的なテーマを見出すとすれば、法(ルール)と倫理(道義)の関係性だろう。 [DVD(吹替)] 6点(2019-08-11 03:20:11) |
617. 映画 聲の形
子供ってのは残酷で、こういう話は世の中にゴロゴロしているだろうと思う。その後、自責の念に囚われるか否かは自分が被害者にならないと自覚できないものだろう。結果、心を閉ざし、他者や社会を信用できなくなる。この辺にも違和感はない。全体的にはスッキリしないし、それが現実ではあるし、所詮他者なんて理解できないものだ。そういう「どうしようもなさ」をそのままストレートに作品にする事は、ある意味作りが雑であり、ひとつの作品として成立していないので当然モヤモヤは残る。が、他者とは何か?どう付き合って、コミュニケーションすればよいのか?という問題提起をし、それを巡って様々な考察がなされているのであれば、作品としては成功していると言えるのではないだろうか?顔にXを付けるのは少々クドイような気もしたが、この辺はレヴィナスの「顔」を意識しているのであれば、中々哲学的でもあるし、あらためて「顔」とは何か?について考えてみようという気にはなったが。 [地上波(邦画)] 7点(2019-07-29 00:17:57) |
618. 心が叫びたがってるんだ。(2015)
テイストが『夜のピクニック』にちょっと似てるかな。全校イベントに向けて皆で盛り上がって、正直に素直になっていく感じが。 人間は1日に70~80回嘘をつくらしいし、何でも思った事を正直に口に出してたら世の中成立しないだろう。結果、本当の事は言わなくても世の中が成立しているというのはよく考えれば不思議な事ではある。ただし、本当の事を言わなかったがためにすれ違う事があるのも事実ではあるが、ほとんどの人は他人と対立しないように、他人を傷つけないように、当たり障りなく生きてるわけで、だからといって主人公のように何も話さないという事もない。まあ、本当にそういう事が気になる人間なら、通常は引きこもりになって人とは関わらないハズなんだが、主人公の場合はちゃんと高校まで通学しているのは違和感がある。ただし、テーマ的には自己とは何か?他者とは何か?といった問題提起があってよいし、解もなく微妙な感じで終わるのもよいし、どっかの哲学者が言っていた「言うべき事がない人間ほどよくしゃべる」って事なのか?「玉子」を抱えて生きるという事は「沈黙は金」って事なのか?但し、権利の主張のためには声を出して言うべき事は言わなければならないのではないのか?等々色々と考えさせられる作品ではあった。 [地上波(邦画)] 7点(2019-05-04 02:27:05) |
619. 学校をつくろう
《ネタバレ》 知らない事も多かったので歴史の勉強にはなったが、大学サイドが製作にガッツリ関わっているので地味で無難な作品になってしまった。NHKの歴史番組を冗長化したような印象。近代国家建設に向けての青年たちのストーリーとしてみれば、人間ドラマとして素材的には面白くなりそうな気もするが、味付けに失敗した感じで勿体ない。もっと力強くて感動的な話に仕上げる事ができたのではないのかと。専修大学自体が地味で存在感もイマイチな大学なので、もうちょっとブランド戦略をどうにかすれば、ナントカなるような気もしないでもないが。これだけの建学の精神を持ちながら埋没したままであるのは、その後の経営・運営サイドの責任なのではないのかと考えさせられた。 [DVD(邦画)] 5点(2019-04-28 02:36:23) |
620. KANO 1931海の向こうの甲子園
スポ根臭はそんなにないし、静かな感動がないわけではないのだが、ちょっと淡々としすぎていて綺麗に作りすぎている印象。実話ベースは大概盛り上がりに欠けるのでそうなりがちなのは仕方ないが、もうちょっと台湾統治の負の側面というものが描写されていてもよかったと思う。学校内や地域社会での民族的な葛藤もあっただろうし。八田與一は地元の英雄らしいが、この作品に必要だったのか?史実として野球部と関係があったのか否かもよくわからないし、とってつけたような扱いをするものどうなのかと。永瀬の抑えた演技は逆に存在感があり中々よかったように思う。 [地上波(邦画)] 5点(2019-03-02 02:17:34) |