601. ブラッド・イン ブラッド・アウト
《ネタバレ》 白と茶と黒、刑務所での三つ巴の抗争、勢力争いが熾烈を極める。メインとなるのは、パコ&クルス兄弟と従兄弟のミクロの三人の男たち。 悪ガキグループのリーダーだったパコが刑事となり、一番まともそうだったミクロが骨の髄までマフィアに染まっていく。幼い弟をドラッグで死なせたことで家族から見放されてすさんだ生活を送るクルスも、最後に家族から許され救われる。かわいがってくれたボスを裏切ったミクロは、メキシコ系マフィアの首領に成り上がっても、この先救われることがあるのだろうか。 仲間に入るには血を流さなければならない――アメリカ人との混血で、見た目は白人、中身はメキシコ人ということで、どこからも爪はじきにされがちな境遇の中で、必死にしがみついたのがメキシカンマフィアとの血の結束。 肉親とのつながりか、組織の仲間とのつながりか。パコ&クルス兄弟とミクロでは、ファミリーとする拠り所は異なるが、ミクロのいうファミリーには危うさが付きまとう。 香港ノワールに通じるようなベタな男臭さと熱さを持った映画。ハリウッドのマフィア映画とはまた違った面白さだ。クールでドライとは反対側にある、むんむんするような蒸し暑さ。 『ゴッドファーザー』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』以来、タイプは違うけれど久々に見応えたっぷりのマフィアものに出会えた。単なる抗争ものではない、濃厚な人間ドラマがある。3時間もの長尺も、2時間ものくらいに感じて退屈しない。 [DVD(吹替)] 9点(2015-04-16 20:40:30) |
602. ウルフ・オブ・ウォールストリート
《ネタバレ》 得意の口八丁で、クズどもとバカにしている客相手にクズ株を売ってボロ儲け、ドラッグでぶっ飛びながらの乱痴気騒ぎ。 すがすがしいくらいの拝金主義者の下衆っぷり。 既婚者なのにセクシーな美女に積極アプローチして、妻とはあっさり離婚。 自らの欲望にひたすら忠実な俗物の超成金セレブ生活。 それはもちろん、詐欺まがいの口車に乗せられて株で大損した犠牲者の上に成り立っている。 ウォール街の風雲児が社員をその気にさせる術は、新興カルト宗教の教祖、自己啓発セミナーのトレーナー、マルチ商法のカリスマ社長に通じるものが。 以前、マルチ商法で成り上がった社長のスピーチを生で聞く機会があったが、雰囲気や盛り上げ方がそっくり。 大っ嫌いなタイプの人種だが、偽善者のいやらしさはないせいか、映画の主人公としてはおもしろい。 調子に乗ってバカをやるところも含めて、ある意味純粋な印象さえある。 結局仲間を売って自分の刑期を大幅に短縮させた主人公。 自分が張本人のクセにとんでもないヤツだが、ここまで徹底できるなら人生としては楽しそう。 それに比べて、職務に忠実にロイを追い続けた捜査官が、暗い顔でうらぶれた人たちと地下鉄に揺られている姿が印象的でせつない。 ロイが恨みを買った誰かに刺されでもしたほうが、因果応報でスッキリとはするのだけれど。 それにしても、司法取引っていうのはいつもおかしな制度だと違和感を感じる。 犯罪や裁判の多い社会ならそうしないと回っていかないのか。 世間では狂気に見えることが、ウォール街の常識だったりする。 当然フィクションもあるだろうけど、同僚の金魚を食べたり、豊胸手術のために丸刈りしたり、数々の実話がエピソードとして使われているようだ。 ジョーダンとドニーが薬の過剰摂取でヘロヘロになってるいがみ合っているシーンは笑える。 深刻な事態もあくまで明るくカラッとテンポもいい。 人物的には日本のホリエモンをちょっと連想させるが、デカプリオとでは顔面偏差値が違いすぎて。 もうちょっとイケメンだったら、事件後も人気者でいられたのだろうか。 スコセッシ映画の中では一番おもしろかった。 齢70に届いたおじいちゃんが作ったとは思えないほど尖っている。 [DVD(吹替)] 8点(2015-04-14 22:57:05)(笑:1票) (良:1票) |
603. ナチュラル
《ネタバレ》 タイトルの意味が何かと思えば、天性の才能ということだった。 ロイを撃ったのが正体のよくわからない女ではスッキリしない。 野球賭博に巻き込まれそうになるも、八百長は拒否するロイ。 八百長が大問題になってファンがガッカリした歴史のあるMLBだけに、それに染まらない天才は理想のヒーローなのだろう。 MLBもレッドフォードも好きだけど、この映画には惹かれない。 作り物よりも現実のMLBのほうが、面白いドラマが転がっている。 [DVD(吹替)] 3点(2015-04-12 00:41:09) |
604. ユナイテッド93
《ネタバレ》 9.11、あの時の衝撃が蘇る。 煙を上げる貿易センタービルに、もう一機が突っ込む信じがたい光景。 航空管制センター、軍などの混乱ぶりがリアルに伝わってくる。 ハイジャックの機内を描くのは、ユナイテッド93便のみ。 乗客がハイジャックに立ち向かったといわれる機だが、どこまでが真実でどこまでが脚色かはわからない。 が、ドキュメンタリー風で迫真性はあった。 なにより、現実に起こったテロの重みが釘付けにさせる。 [DVD(吹替)] 7点(2015-04-12 00:40:15) |
605. 宇宙人ポール
SF名作のパロディが散りばめられたファンタジーコメディ。 SFオタクとおかしな宇宙人の出会いと珍道中。 コメディは笑いのツボが合わなければ厳しいものになるが、残念ながらさっぱりでほとんど笑えず。 同じくサイモン&ニックコンビの『ホット・ファズ』も、高評価に反してまったく肌が合わなかったので、相性が悪いのかも。 キリスト教原理主義に染められたルースが禁忌から解放されるのだけちょっと面白かったけど、パロディがピンと来ないものも多く、ブラックジョークもあまり好みではなかった。 物語としてはうまくまとまっているのに、好きにはなれず。 [DVD(吹替)] 3点(2015-04-09 21:24:29) |
606. 亀は意外と速く泳ぐ
なんともゆるーい脱力系コメディ。 好きだった『時効警察』と小ネタも含めて雰囲気やテイストがよく似ているなと思っていたら、同じ三木聡監督だった。 小ネタのセンスは嫌いじゃないけど真剣に見るにはとりとめがなさすぎて、カウチポテトで見るのがふさわしい。 [DVD(邦画)] 4点(2015-04-09 21:21:47) |
607. リーサル・ウェポン
《ネタバレ》 家族を大事にしているベテランの黒人刑事と、妻を亡くして自殺願望のある特殊部隊あがりの刑事。 いたってオーソドックスなコンビ刑事もの。 30年近く前の映画なので、今見るとさすがにアクションもストーリーもこれといったインパクトもなく刺激に欠ける。 リーサル・ウェポンというわりには、ランボーやジャック・バウアーほどの人間兵器感はない。 ハッピーエンドでまとまりがよく安心して見れる作品だけど、魅力はさほど感じない。 [地上波(吹替)] 4点(2015-04-07 20:39:43) |
608. ナイト ミュージアム
子供向けファンタジーコメディ。 童心に帰れば楽しめるかも。 この手の映画とベン・スティラーはちょっと苦手。 [地上波(吹替)] 3点(2015-04-03 02:11:34) |
609. ボディクライム 誘惑する女
《ネタバレ》 40才に届いたエマニュエル・ベアール。 デビュー当初の躍動感あふれる輝くばかりの美しさはさすがになくなった。 中嶋朋子に似てきた感じ。 それでも小悪魔的なセクシーさはまだ残っている。 真面目な顔でブーメランを飛ばすカイテルって、かなりシュールな画。 カイテルは当時67くらいだけど、筋骨隆々の体は只者ではないオーラがプンプン。 こんなタクシードライバーいる?ってくらい異色キャラの出来上がり。 ブーメラン以外にも、突っ込みどころが幾つも。 マリアが犯人に仕立て上げたロジャーが、実は本当に犯人だったと示唆する指輪。 タクシードライバーなんて山ほどいるだろうに、すごい確率の偶然だし、マリアが指輪を見つける流れも不自然で、うまくストーリーの流れに乗れない。 そもそも、何年も前に見たタクシーのボディの凹みが、そのまま残っていると想定することに無理があるでしょ。 [DVD(字幕)] 3点(2015-04-03 02:10:45) |
610. 野生のエルザ
子供の頃、シートン動物記が大好きだった。 動物ものは人間ドラマ以上に情や義にあふれている。 動物の子供は無条件にかわいい。 ただ、大人になった今この映画を見ると、そういうこと以外のことも気になってくる。 かわいいから飼いたいというのはとても素直な感情だけど、最後まで責任が持てるのかというところまで見ておかないと。 野生動物を飼うということ自体が、自然に逆らう人間本位のことだから。 [地上波(吹替)] 5点(2015-04-03 02:07:29) |
611. ザ・ミッション 非情の掟
《ネタバレ》 男くさいマフィアもの。 ボスを守るために組織に呼び戻された5人の男たち。 黙々と仕事をこなすさまがプロフェッショナルで渋い。 閉店後のショッピングモールでの撃ち合いが、なんともスタイリッシュ。 『レザボア・ドッグス』にも通じる、リアリティはないけど絵になるしびれるシーン。 空手でいうなら実戦フルコンタクトの迫力ではなく、組手の「型」の美しさのようなものを感じる。 ボスの夫人と寝てしまった仲間を掟に従って処刑しなければならない葛藤と緊張感。 ラストは5人の絆が確認できて爽やかな後味。 香港ノワールはいい。 テーマ曲に中毒性あり。 [DVD(吹替)] 7点(2015-04-03 00:28:09) |
612. ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮
《ネタバレ》 王妃とストルーエンセの二人に思い入れが持てないので、ストルーエンセが処刑され、王妃が追放されても心が動かない。 あの時代なら王の目を盗んで不義の子を宿すのは当然処刑される大罪だし、王妃が悲劇のヒロインのようになっているのにも自業自得の面を感じてしまう。 確かに王はエキセントリックで変人&愚人だけど、これだけコケにされてはかわいそうになってくる。 王妃が王太后を責めていたが、王太后としては二人の罪を見逃すわけはなく、逆ギレにしか見えない。 愛もなく結婚されられた相手があんな王なら、他の男に寄り添いたくもなるだろうが、バレればこうなるリスクはわかっていたはず。 ストルーエンセは腐った政治を改革しようとした素晴らしい人権思想家なんだろうけど、不倫を利用した手口が好きになれない。 強引で手段を選ばないやり手によく見られる嫌味が感じられるが、それでも映画では美化されていたほうで、実際はもっと傲慢で傍若無人な鼻持ちならない野心家だったようだ。 むしろ、その辺りを徹底して嫌味な部分を前面に出しながらリアルに映画化したほうが面白かったような気がする。 人に憎まれるアクの強い男を、汚れを削ぎ落として綺麗に描こうとしているようで、そこに違和感を感じてしまうようなところもあったので。 王妃寄りの視点で描かれると、どうしてもそうなってしまうのだろうけど。 全般的にちょっと地味な印象はあるが、細かい心理描写は巧みで見応えがある。 恩赦が出ると言い聞かされて処刑場へ向かう馬車の中で、ストールエンが自分の運命を悟るあたりはお見事。 セリフのやりとりがなくても、ちょっとした仕草や表情だけで十分に伝わってくる。 民衆を解放しようとしたストールエンが、民衆に罵倒される皮肉な最期。 正確な情報がない時代には、民衆を扇動するのは簡単なことだったろう。 誰がつけたのか邦題が重厚な内容に合わず、B級お色気映画のようでいかにも安っぽい。 [DVD(吹替)] 6点(2015-04-03 00:26:31) |
613. 君に届け
《ネタバレ》 あきれるほどベタで臭い青春映画。 でも、それを照れずにやりきっているので、知らず知らず乗せられて楽しんでしまった。 クラスからハブられた女子に、ヤンキー女子の親友ができ、憧れの男子に告白され―― こんな乙女の夢を描いた少女マンガの世界に乗せられるのも、いささかこっ恥ずかしいのだけれど。 三浦春馬のスーパー爽やか笑顔の王子様キャラが、笑えるくらいに決まっている。 少女の理想を体現したかのよう。 このキラキラ感は、いかにも別マに掲載されたコミックが原作という感じ。 惜しいのは、貞子のキャラに多部未華子はかわいすぎる。 かわいさと共にもっと不気味さも出せる女優なら、さらに面白かったのに。 [地上波(邦画)] 6点(2015-03-29 23:49:49) |
614. インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
《ネタバレ》 ボーイズラブ好みの女性向けのようでもあり、ロリコン男性向けのようでもあり、ヴァンパイア劇場で犠牲になる美女が妙にエロかったり、殺人シーンが意外とグロかったり。 ちょっとターゲットがわからない混沌とした雰囲気の映画。 重厚でおどろおどろしかったのに、ラストは軽快でアップテンポなサウンドで締めくくられると、なにやら化かされている気分。 荒削りながらユニーク、悪く言えば一貫性やまとまりがない作品。 豪華キャストであるがゆえに、いろんなスターを立てようとして、ポイントが絞れずに中途半端に散ってしまった感も。 独特の世界観にもあまり入り込めなかった。 [DVD(吹替)] 4点(2015-03-29 23:48:01) |
615. 世界最速のインディアン
《ネタバレ》 スローライフの権化のような田舎の爺様が、バイクのスピードレースで夢を叶える意外性。 ただ、ストーリーはのんびりと緩い。 マイルールで突き進む厄介なおじいさん。 悪気が全然ないだけに余計に始末に終えない。 おじいさんより、優しく接している周りの人がいい。 ルールを柔軟に運営するのはいいけど、安全性や公平性を軽んじるとトラブルになることもある。 事故もなく記録を更新できて、結果オーライではあったけど。 [DVD(吹替)] 3点(2015-03-29 23:46:56)(良:1票) |
616. 弾丸を噛め
《ネタバレ》 馬に乗っての長距離耐久レースがメインの緩い西部劇。 参加者8人にはそれぞれ背負ってきた人生、思惑があって――。 西部劇の殺るか殺られるかのヒリヒリした緊張感を期待して見るなら、のんびりしていて退屈。 しっかり描ききれてないようなところも幾つか。 あれだけ傍若無人だったカーボがあっさり好青年に変身、サムがレースに参加した理由、サムとルークの結びつきなど。 これでは、サムとルークにどこかの小学校の運動会みたいに仲良く一緒にゴールされても、感動しろってのが無理。 一番良かったのが、持病があるのに参加して家族もなく名前も知られずにレース途中で死んでいった老カウボーイの哀愁。 それ以外は心に響かず、豪華キャストなのにもったいない。 人間様には賞金のかかった意義あるレースかもしれないが、馬にとってはただの動物虐待。 馬がセリフをしゃべれて馬目線で描いたほうが共感できそう。 [地上波(吹替)] 3点(2015-03-29 23:45:03) |
617. スターリングラード(2001)
《ネタバレ》 ソ連vsドイツ、狙撃のスペシャリスト同士の対決は、世紀の決闘のような見応えがある。 エド・ハリスとジュード・ロウがいい。 ただ、兵器を用いた近代戦で、こんな一対一の西部劇のような戦いがありえるかというと、はなはだ疑問。 何度か一対一で対峙するシーンがあったが、混沌とした集団戦にそんな余地はないはず。 リアリティはあまり重視せず、エンターテイメントに寄ったマンガ的な作り。 戦争のむごたらしさはちゃんと出ていて、悲劇的な少年の姿もインパクトがある。 戦場のドラマに三角関係も絡ませて、このラブストーリーがメインだったりする。 周りに兵士がいっぱいいる中でのラブシーンが、露出度はそれほど高くないのに何かのプレイのようで妙にエロティックだったのが印象的。 シリアスな内容の中で、ここだけ違う映画みたい。 [地上波(吹替)] 5点(2015-03-28 00:18:22) |
618. アイランド(2005)
《ネタバレ》 最後の楽園「アイランド」が君を待っている。 その言葉だけを頼りにアイランドに行く抽選に当たることを夢見てきたのに、そんな楽園など存在しなかった。 代理出産、臓器移植などに利用される製品として作られたクローン人間。 『クラウドアトラス』にも似たような設定があった。 SFのテーマとしてはそれほど珍しいものではない。 スカーレット・ヨハンソンとユアン・マクレガーのラブロマンスも、よくあるパターンで新鮮味に欠ける。 あくまで都合よくテンポよく、そして迎えるハッピーエンド。 カーアクションだけはすごい迫力で、マイケル・ベイ監督らしい作品。 わかりやすいエンターテイメントもいいけど、もっとブラックテイストで内面をじっくり深く描いたほうが面白かったような。 [地上波(吹替)] 4点(2015-03-28 00:16:19)(良:1票) |
619. ブレイド(1998)
《ネタバレ》 ハンターvsヴァンパイアの闘いを、グロ描写を交えながらアクションものとして描いている。 光線で寝たきりのデブを焼き殺すシーンは必要だったか? あれでは正義であるべき側が、ただのイジメ虐殺っぽくも見える。 正義の旗を掲げるアメリカ軍がイラク人捕虜を虐待したメンタリティを思い出す。 [地上波(吹替)] 3点(2015-03-28 00:14:49) |
620. 美しき諍い女
《ネタバレ》 4時間は長すぎる。 しかも驚くほど地味なので、さらに長く感じる。 いくらベアールが魅惑的で、美しい肢体を晒してがんばったとしても、とてもじゃないけど最後まで持たない。 画家とモデルのリアルな間や空気感を出したかったのだろうが、この半分にまとめていいくらい。 絵画や芸術に関心が高いなら面白く見れるかもしれないが、エイターテイメント性に乏しいのできつい。 芸術家的というか哲学的というか、画家の思考回路や感受しているものがさっぱり理解できない。 フランス映画で時に遭遇する、自分の理解力を超えた難解すぎてお手上げの世界。 集中力も切れて、なんとか理解しようとする気も失せる。 絵のモデルをすることが、この映画を最後まで見ることと同じくらい大変なことはわかった。 [DVD(字幕)] 2点(2015-03-28 00:13:25)(良:1票) |