621. プリンセス トヨトミ
《ネタバレ》 設定だけは魅力的なのに実際に見てみるとやっぱり話題の小説を取りあえず映画化してみたというだけの代物で面白くない。大阪中が口裏合わせをしているという設定に無理を感じる。下の方も書いておられるが、大阪は大阪出身者だけが暮らす街ではないだろうに。クライマックスの中井貴一のセリフも感動させようとしているのかもしれないが、都合のいいことを言っているだけのような気がして説得力なさすぎ。王女を守るという部分がセリフだけで終わってしまっており、なんか設定だけ設定して野放し状態という感じだ。2回出てくる全停止した大阪の街を綾瀬はるかが走るシーンは画的にはシュールで面白かったが、なぜに胸を強調する必要があるのだろう。ただのサービスカットだったのか。あと一つ、茶子を演じる沢木ルカを初めて見たのだが、外見があまりにもボーイッシュすぎてとても王女という感じではなく、オーディションで選んだみたいだが、ミスキャストにしか思えなかった。 [DVD(邦画)] 3点(2012-04-03 22:19:50) |
622. 私をスキーに連れてって
《ネタバレ》 若大将シリーズすべて見終わって、シリーズのファンが多いというホイチョイ・プロダクションの本作を見てみる。確かにスキーを題材にしているのは「アルプスの若大将」の影響が大きいのだろうし、田中邦衛の役名が田沼雄一をもじったような役名だったり、チョイ役で中真千子が出演していたりして製作スタッフが本当に「若大将」シリーズのファンが多いんだなあということが分かる。しかし映画自体は今見るとものすごく時代を感じる代物になっていて、いかにもバブル景気の時代のヒット作という感じ。冒頭のスキーシーンが冗長に感じられるのを筆頭に、いかにスキーシーンをカッコよく撮るかに重点がおかれており、物語としてはあまり面白くないし、主題歌と挿入歌を担当するユーミンの曲も「恋人がサンタクロース」とか好きなんだけど、少しくどく感じてしまった。まあ全体的に見てフジテレビの映画らしい映画といえばそうで、この当時からフジテレビの映画はあまり今と変わり映えしないなあという印象が残った。 [DVD(邦画)] 4点(2012-03-20 02:03:23)(良:2票) |
623. カラフル(2010)
《ネタバレ》 「河童のクゥと夏休み」のあとシンエイ動画を退社した原恵一監督がサンライズでてがけた作品。あまり期待が高かったというわけではないが、ファンタジーという体裁をとりながらも、人生をやり直すことになった主人公の葛藤や、主人公の家族の人間模様がリアルに描かれていて原監督らしい映画になっていると思う。描写もアニメというよりは実写に近く、作風としては原監督のデビュー作「エスパー魔美 星空のダンシングドール」に近いが、やはり原監督は「クレヨンしんちゃん」シリーズのような派手さのある作品よりもこういった作品のほうが得意なのだろう。この映画でも「クレヨンしんちゃん」や「河童のクゥと夏休み」同様に家族が一つのテーマとなっているが、野原一家や上原一家がなんの問題もない普通の家庭として描かれているのに対し、この小林一家は母親が不倫をしていたりと何かと問題を抱えた家族というのが興味深く、何回も出てくる一家での食事シーンも象徴的に感じられる。終盤主人公・真がひろかに向かって言う「人間にはいろんな色があっていい。おかしくて当たり前、いろんな自分がいていいんだ。」という言葉。ぼくもなかなか自分というものを肯定できない人間なので、聞いていて思わずはっとさせられ、とても共感できたし、もっと自分を肯定する勇気と自信を持って生きていきたいと感じた。タイトルからも分かるが、これがこの映画にいちばん込められているメッセージなのだろう。はっきり言って退屈なシーンもなかったわけではないが、見終わって素直に良かったと言える映画だったと思う。 [DVD(邦画)] 8点(2012-03-15 15:07:16)(良:1票) |
624. 帰ってきた若大将
《ネタバレ》 加山雄三のデビュー20周年を記念して作られたシリーズ18作目。このシリーズを見始めたのは植木等の無責任シリーズと同じ田波靖男がすべての回で脚本を手掛けているからという単純な理由だったが、とうとう最後の回まで来てしまい、感慨深いものがある。10年ぶりのシリーズ新作ということで、シリーズ過去作の映像が劇中に登場したり、若大将の部屋に大学時代の写真が飾ってあるのはやはりシリーズ集大成的な作品という意味合いがこめられているのだろう。ただ田能久のシーンは完全に同窓会的な雰囲気でしかなく、りき(飯田蝶子)の法事のシーン以外にもう少し見せ場が欲しかったところ。とはいえこのシーンは今回プロデューサーもつとめた加山雄三のりきへの思い入れが感じられる。(実際の加山雄三もおばあちゃん子だったらしい。)既に黒板五郎の風貌になってしまった青大将(田中邦衛)が相変わらずヒロイン(坂口良子)を口説きまくるのは見ていて痛々しいが、今回はなんと青大将自らがヒロインを若大将に譲るという結末で、最後の最後になって若大将との本当の男の友情を感じさせる終わり方をしているのが嬉しい。これでこのシリーズは本当に終了だが、シリーズの締め方としてはこれまですべての回を見ていれば、シリーズ作品ならではの味が感じられ、加山雄三や田中邦衛のこのシリーズでの長い長い共演で築いたであろう関係がそのまま出ていて、それだけであらためていちばん最後にこの映画を見て本当に良かったと思う。田中邦衛はこの後「北の国から」でも20年以上吉岡秀隆や中嶋朋子と共演していくことになるんだなと思うとつくづく息の長い俳優なんだなと思う。これで若大将シリーズはすべて見てしまったわけだが、すべて見終わった達成感とともに一抹のさびしさがある。 [DVD(邦画)] 6点(2012-03-07 18:10:27) |
625. 若大将対青大将
《ネタバレ》 若大将シリーズの(一応の)最終作だが、これ本当に最終作のつもりで作ったのだろうかと思うほど適当なつくりで、岩内克己監督自らが「ブラボー!若大将」のオーディオ・コメンタリーで忘れたい作品と語っていたのがよく分かる映画になってしまっている。トップ・クレジットは大矢茂となっていて、前回登場した太田茂夫に田沼雄一から若大将のニックネームが譲られるのだが、冒頭に青大将の卒業式のシーンが描かれていたり、青大将の実家が登場するなど映画の中心人物として描かれているのは明らかに青大将で、加山雄三は出番が少なく、主人公が誰かすらもよく分からない状態。青大将がヒロイン二人を口説きまくるのだが、いくらなんでもそれがしつこく、演じる田中邦衛もイヤイヤやったんじゃないかと思うほどだ。田能久のメンバーが江口すらも一度も登場することがないのは「男はつらいよ」シリーズでとらやとその周辺の人物が一切登場しないのと同じようでさびしい。この10年後にもう一本作られているとはいえ、一応最終作として作ったなら田能久のメンバーもちゃんと出すべきだったんじゃないかな。 [DVD(邦画)] 3点(2012-02-29 18:29:22) |
626. 阪急電車 片道15分の奇跡
《ネタバレ》 ローカル電車を舞台にそれに乗り合わせた乗客たちの群像劇。思ったより面白かったが、やはり出来としては平凡で、上映時間もやや長いか。西宮に住んでいる妹が「始まってすぐに泣いた」と言っていたが、確かにときどきほろっとくるエピソードはあるものの、感動というまでには至らない。ミサ(戸田恵梨香)と伊藤さん(南果歩)のシーンとか印象には残るし、脚本的にも頑張っているのだが、もうひと押し足らない感じである。中谷美紀は「ケイゾク」や「嫌われ松子の一生」での独特な演技が印象に残っている女優であるが、柴田や松子のキャラが強烈すぎるためか、役としてあまり印象に残らない。逆に宮本信子は品のある白髪の老人役を演じていて、伊丹十三監督の映画での彼女とは違う味のある演技を見せていて印象的だった。ラストシーンの翔子(中谷美紀)とミサの意気投合シーンは唐突に感じるが、できればこの二人のツーショットは「spec」で柴田と当麻として見てみたい。やっぱり無理かな。 [DVD(邦画)] 6点(2012-02-24 23:17:31)(良:1票) |
627. 俺の空だぜ!若大将
《ネタバレ》 今回は若大将の上司が青大将という設定が面白いのだが、脚本自体はかなり適当に作られている印象であまり面白くない。銭湯の立ち退き交渉を描いた前半は若大将が青大将と衝突し会社を辞職したことで有耶無耶なまま終わってしまったような印象だし、そうするなら今回の節子は銭湯の店員という設定でないほうがいいだろう。そんな前半は若大将と伴淳演じる銭湯のおやじとのやりとりが面白く、伴淳の喜劇俳優としてのうまさも出ているが、この前半だけで退場してしまったのは惜しい。シリーズも既に末期となり、次回が一応シリーズとしての最終回ということだが、加山雄三がシリーズを降りた後も主人公を変えてシリーズを続けようとしたのか大矢茂演じる太田茂夫が登場するが、なんだか地味な感じがする。レギュラーである祖母役の飯田蝶子は映画ではこれが遺作みたいだけどまだ元気そうだ。 [DVD(邦画)] 5点(2012-02-23 17:04:36) |
628. ブラボー!若大将
《ネタバレ》 若大将が社会人になって3作目。今回は若大将に最初から恋人(高橋紀子)がいる設定だが、冒頭で若大将がふられるという展開は今までなかったので妙に新鮮に感じるし、今までポジティブ一直線だったシリーズだが、今回は上司との衝突で会社を辞めた若大将の屈折や、田能久の金を使い込んでしまう江口などネガティブな部分が描かれていてこのシリーズらしくないといえばそうだが、逆にそれがリアルに感じられなかなか面白かった。前2作でスポーツを描かなかったのが不評だったのか、若大将が大学のテニス部に顔を出すエピソードが学生編を思い出させており、それによって若大将が元気を取り戻すのはこのシリーズはやっぱりこうじゃなくちゃと思わせる展開で見ていて心地よい。今までとは随分毛色の違う作品になっていて、教訓めいた部分もあるのでシリーズの熱狂的なファンから見れば好き嫌いがはっきりと出るとは思うが、ぼくとしてはこの回はけっこう好きだ。最近いろいろ悩んで落ち込むことが多かったので「悩まないやつなんかいないさ。」という若大将のセリフに元気づけられた。少し甘めだけど8点。 [DVD(邦画)] 8点(2012-02-16 13:12:53)(良:1票) |
629. ニュージーランドの若大将
《ネタバレ》 若大将が社会人となって2作目。本作は前作「フレッシュマン若大将」と同じ自動車会社が舞台で直接の続編のようになっているが、若大将と節子(酒井和歌子)の関係はいつものようにリセットされているので少し不思議な感じ。社会人という設定となった若大将はスポーツをやらなくなり、シリーズの見どころの一つがなくなったことでなんだか地味な印象だが、その代わり社会人となった若大将はすっかり学生気分が抜けており、劇中節子から評されているように仕事熱心なモーレツサラリーマンという感じに描かれてはいるがポジティブなキャラクターは変わらないのが嬉しい。前作に続いて久太郎(有島一郎)が若い女に惚れるエピソードがあるが、今回はうつみ宮土理。この頃ちょうど「ロンパールーム」のお姉さん役を卒業後、本格的に芸能活動を始めた頃だろうか。(古い話だな。)前作同様若い女に夢中の久太郎がかわいらしい。前作で夫婦となった江口と照子(中真千子)が相変わらずアツアツなのがわざとらしく感じる部分もあるが、微笑ましくもある。 [DVD(邦画)] 5点(2012-02-07 17:57:40) |
630. フレッシュマン若大将
《ネタバレ》 前作で大学を卒業し、シリーズも終わったかに見えたが、社会人編として新たにスタートを切った最初の作品。ヒロインが星由里子演じる澄子から酒井和歌子演じる節子に交代し、様々な新しい試みも導入されていて面白かった。節子は澄子に比べると見ていてかなり好感が持てるキャラクターになっているし、いつもは久太郎(有島一郎)が若大将を勘当しているが、今回はめぐみ(草笛光子)にうつつをぬかした久太郎をりき(飯田蝶子)が勘当する展開も面白い。めぐみに惚れた久太郎はいつものがんこ親父ぶりが無くなり、なんだかかわいらしささえ漂う。この映画の公開と同じ年に「男はつらいよ」シリーズが始まっているが、久太郎がめぐみにふられ、失恋する展開はそれを彷彿させるものがある。ふられた久太郎を若大将が慰めるシーンも学生編にはないシーンでこれも新鮮だった。 [DVD(邦画)] 6点(2012-01-31 11:40:14) |
631. 昆虫大戦争
《ネタバレ》 松竹が「宇宙大怪獣ギララ」に続いて製作した特撮SF映画。毒を持った昆虫の大群と人間の戦いを描いた作品ではあるが、反戦メッセージを織り込んでおり、社会性を出そうとしたのかもしれないが、そのせいかどうか知らないが、娯楽映画としてはほとんど面白みがないまま終わってしまった感じで、さあこれからどうなるというところで唐突に終わるので後味も悪い。「昆虫大戦争」という東宝の特撮映画を連想しそうなタイトルなのに、東宝のそれと比べて明らかに地味な内容である。東宝の特撮映画といえば外国人キャストが登場することも多いが、松竹映画である本作も外国人キャストが登場し、セリフは吹き替えになっている。その声優陣の中に東宝で外国人キャストの吹き替えを担当することの多い納谷悟朗が出ていて、やっぱり東宝の特撮映画を意識した映画なのかとそれだけで思えてしまった。 [DVD(邦画)] 3点(2012-01-26 14:25:50) |
632. 快盗ルビイ
《ネタバレ》 「麻雀放浪記」に続く和田誠監督の第2作。「麻雀放浪記」では渋い男たちの世界がモノクロ画面の中にこれでもかと言わんばかりに展開されていたが、この映画は小泉今日子主演のアイドル映画。小泉今日子はさして好きな女優というわけではなく、アイドル時代の出演作を見るのも初めてだったため、ファン以外にはきつい映画かもしれないと思いながら見始めたが、なんともお洒落な映画でなかなか楽しめた。ルビイこと加藤留美を演じる小泉今日子がなんともかわいらしく、それでいて真田広之演じる下の階のダメ男をうまく自分の泥棒計画の相棒にしてしまうという小悪魔的な女を演じており、すごく魅力的だし、元々小悪魔的なイメージの強い人なのだが、そのイメージはおそらくこの映画からできたものなのではと思える部分もある。対する真田広之の三枚目のダメ男も思ったほど悪くなく、この二人のやりとりを見ているだけでもじゅうぶんに楽しめ、主演のふたりが「たとえばフォーエバー」を歌うシーン、窓から二人で星を見ているエンドロールが素敵だ。そのエンドロールでカーテンコールのように出演者がクレジットされる演出もいい。天本英世や名古屋章(二人とも「麻雀放浪記」にも脇で出ていたな。)といったチョイ出のわき役たちも光っている。映画としては特に傑作というわけではないが、サクッと見られる娯楽映画の王道的作品だろう。面白かった。 [DVD(邦画)] 7点(2012-01-21 13:52:41)(良:3票) |
633. 劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段
《ネタバレ》 「忍たま乱太郎」の15年ぶりの劇場版第2作。今回は80分の長編ということであるが、忍術学園の仲間たちが陰謀に立ち向かう姿を描いた内容で、ちょっと子供には背景が分かりづらいであろう話ではあるが、そこはこのアニメらしくあまりシリアスになりすぎず、明るく楽しい雰囲気の映画になっている。サブタイトルは忍術学園全員出動とあるが、明らかにあまり活躍してないキャラがいるのは仕方のないところか。敵味方問わず負傷者を治療するというのがいかにも教育テレビのアニメらしいところだが、その理由が「保険委員だから。」というのが素晴らしい。 [地上波(邦画)] 6点(2012-01-17 13:34:20) |
634. 武士の家計簿
《ネタバレ》 原作となった新書をもとに物語を構築しているらしいが、ただエピソードの羅列に終始している感じで、とりあえず新書から物語をおこし、それを型にはめるのに精いっぱいだったのだろうなあ。そのエピソードの数々も、そろばん侍と呼ばれる主人公(堺雅人)の活躍を描くのではないので、この主人公がそろばんバカ、そろばん侍と呼ばれるほどのすごさは感じられないし、一家の倹約生活もさらりと流して終わってしまい、後半の父と息子の確執を描く親子のドラマにシフトするという至って普通の展開。企画の着眼点は面白いのだから、型通りではなく、もっと設定を膨らましたほうがよかっただろうにと思えてしまう。息子の祝いの席で出される膳に乗った鯛の絵のシーン(予告編等で使われている。)が印象に残り、その絵を持って祝いの出席者たちが縁側を歩くシーンは確かにイキイキとしているが、この一連のシーンがこの映画の中で森田芳光監督らしさがいちばん出ていると思う。主演の堺雅人と仲間由紀恵はまずまず好演しているが、最後の方で晩年を迎えた主人公夫婦を息子が訪ねてくるシーンで、堺雅人が見事に老け役をこなしているのに対して仲間由紀恵の老け役はかなり違和感があった。でも、とくにあたり障りのない人情時代劇として見ればまあまあそれなりか。 [DVD(邦画)] 5点(2012-01-12 14:09:54)(良:1票) |
635. 戦国自衛隊
《ネタバレ》 角川映画初の時代劇。いかにも角川映画の娯楽大作という感じのド派手な映画になっているが、自衛隊の一個小隊がもし突然戦国時代にタイムスリップしたらというシチュエーションだけ思いついて即作ったような印象で、タイムスリップ直後の隊員たちの混乱ぶりはリアルで良かったがあとはもう勢いだけでいってしまったような感じ。それでもアクションシーンはまあ退屈せずに見られるのだが、自衛隊の描き方がただ戦国時代で好き勝手暴れているようにしか見えず、「野性の証明」のレビューでも自衛隊を悪役として描いたことが本作の自衛隊の撮影協力を得られなかった理由ではないかと書いたが、これじゃ撮影に協力なんてしないわなというのが一発で分かる。また青春映画のテイストは監督や脚本家の意向で取り入れられたらしいが、はっきり言って全く効果的でなく、いかにも70年代の青春ドラマのような挿入歌の数々は映画の勢いを明らかに奪っていてどう考えても失敗としか思えないし、SFとしての面白さも皆無に等しくこれではまだ「戦国自衛隊1549」のほうがマシのようにさえ思えてしまう。主たる女性陣にセリフがないのも男の映画というのを強調したかったのかもしれないがなんか違うだろという気がするし、オールスタッフ・キャストがノンクレジットというのも話題作りの一環なんだろうが何もそんな事までして話題作りをしなくてもとしか思えない。(よくみんな許可したな。)とくに期待をしていたわけではないし、取りあえず見ておけくらいにしか思っていなかった映画だが、立派な駄作だと思う。「戦国自衛隊1549」には3点をつけているのだが、本作にも同じく3点を。 [DVD(邦画)] 3点(2012-01-07 11:47:21) |
636. 最後の忠臣蔵
《ネタバレ》 杉田成道監督の「北の国から」以外の作品を見るのは初めてで、だからどうしても「北の国から」のような雰囲気のものになっているのではないかと思ったが、かなり淡々とした時代劇で、「北の国から」とは全く異なった雰囲気の作品になっていて、杉田監督の器用さを感じる。(もし、主題歌や挿入歌にさだまさしを起用していたらそれだけで「北の国から」を連想してしまっていたかも。)赤穂浪士の生き残りを描いた忠臣蔵の後日談ということで、同じ原作者の「四十七人の刺客」(市川崑監督)の続編のような内容で2本セットで見てみるのも面白いかもしれない。ただ、映画としてはそこそこよく出来ていると思うものの、やはり、最後の瀬尾(役所広司)の切腹シーンはくどいし、なにもあんなに直接描かずに観客の想像に任せておいたほうがよかったのではないかと思う。瀬尾が切腹することは映画を見ていても容易に分かるので、ここは観客を信頼して結婚式のシーンで終わるべきだった。それでも映画は見る前の想像よりは面白かったと思う。大石内蔵助を演じていた片岡孝夫は野村芳太郎監督の「配達されない三通の手紙」や「わるいやつら」での印象があるのだが、この映画では随分と貫ろくがつき、演技も渋くなっていてちょっと驚いた。最後にちょこっと出ている田中邦衛は、最近はリアルタイムではほとんど見かけなくなり、DVDなどで若い頃の出演作(若大将シリーズや「仁義なき戦い」シリーズなど。)ばかり見ていたため、なんだか突然老け込んでしまったような感じだった。 [DVD(邦画)] 5点(2011-12-29 13:40:39) |
637. あにいもうと(1953)
《ネタバレ》 成瀬巳喜男監督による文芸作品。タイトル通り兄と妹を描いた物語なのだが、これがけっこうドロドロとしている。それでもこの映画に出てくる兄妹はどこか他人事ではない気がしてしまうのも事実で、兄(森雅之)が妹(京マチ子)を妊娠させた男(船越英二)に暴力を振るうシーンはこの兄の妹に対する素直な思いが伝わってきて感動したし、もしぼくが同じ立場なら相手の男に対して同じことをするのではないかとつい思ってしまった。だから、そのことを巡って起きる終盤の二人の凄まじいケンカのシーンは、兄と妹、双方の気持ちが理解できるような気がする。しかし、ラストのもんがさん(久我美子)に兄に対する思いを打ち明けるシーンがこのドロドロとした兄妹愛を描いた映画のラストとしては実に後味がよく、このシーンがあるからこんなドロドロとした映画を見終わったあとでもさわやかな印象が残り、成瀬監督の余韻の残し方のうまさを感じる。大映作品であるためか京マチ子や船越英二が成瀬作品に出演していているのが珍しいし、ほかの成瀬作品と比べてストレートに感情を表現するシーンが多く、終盤のケンカのシーンの凄まじさもあり、映画としてはなんだか同じく成瀬監督の「あらくれ」に近い印象。兄を演じる森雅之が少しミスキャストのような気がするのが惜しいところだが、それでも成瀬監督らしい人間の描写が素晴らしく、じゅうぶんに佳作といえる映画だと思う。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-12-24 14:44:51)(良:1票) |
638. 破戒(1962)
《ネタバレ》 「炎上」、「ぼんち」に続いて市川崑監督が市川雷蔵を主演に起用し、被差別部落問題を描いた社会派映画。雷蔵は「炎上」でもコンプレックスを抱える主人公を熱演していたが、この映画でも自身が部落の出身であることに苦悩する主人公の小学校教師を演じており、「炎上」同様に雷蔵は時代劇スターとしてではない演技派俳優としてのうまさを発揮していて、初めて見た雷蔵の出演作が「炎上」だったせいかこういう苦悩する若者という役柄は雷蔵にとって現代劇でも時代劇でもはまり役だと思う。映画としても力作で、前年市川監督がテレビドラマでやっていながらもう一度映画でやりたいと思うほど原作に惚れ込んでいたというのがよく分かる。雷蔵演じる主人公 丑松が教え子たちに自分の出自を告白するシーンはとくに演出も演技もかなり力が入っており、思わず丑松に感情移入して感動してしまった。長門裕之演じる丑松の同僚教師もいいし、モノクロ画面をフルに生かした宮川一夫のカメラも美しく見事。しかし、いい映画であることは確かなのだが、ちょっと全体的に力みすぎていてあまりにも重苦しく好きな映画かと言われればちょっと微妙というのが正直なところ。丑松が尊敬する自らも部落出身である部落民解放運動家の猪子を演じる三國連太郎は実際に養父が被差別部落出身であることを公表しており、だからかもしれないが、この猪子という登場人物にはものすごいリアリティーと説得力が感じられる。 [DVD(邦画)] 7点(2011-12-22 13:48:40) |
639. 借りぐらしのアリエッティ
《ネタバレ》 小人の目線から見た人間の世界がリアルに描写されていて、そこはけっこう良かったが、話としては小さくまとまりすぎている感じで、ドラマとしての大きな盛り上がりや深みがなく、劇場アニメというよりはテレビアニメの1エピソードのような印象が強い作品。一応、小人を捕まえることに執着する家政婦が悪役として描かれているが、そのエピソードもはっきり言ってムリヤリ話を盛り上げようとしているようにしか見えないし、終わり方もこれで終わりかよというくらい唐突で、見終わってほとんど何も心に残らない。元々ジブリ作品って昔からそんなに好きというほどでもないので、期待もあまりしないのだが、新人監督育成のための企画とはいえあまりにやっつけ仕事感がする。最近のジブリ作品を見るのはぼくとしては「ルパン三世」のテレビスペシャルと同じくらい惰性に近いものがあるのだが、こうなると作り手の側も惰性で作ってるんじゃないのという気さえする。結局、ジブリは宮崎駿監督のブランド力でもっている、今まで薄々感じていたことだが、今回は特にそういうことを考えてしまった。ジブリは元々宮崎監督と高畑勲監督が映画を作るために設立されたスタジオなので、鈴木敏夫プロデューサーは後進の育成にあまり本気でないのかもしれないが、このままだといずれジブリの将来は危ないと思う。そう考えると劇中の「君たちは滅びゆく種族なんだ。」という翔(神木隆之介)のセリフがジブリ自身の将来を暗示しているように感じられてしまう。 [地上波(邦画)] 5点(2011-12-18 03:17:15)(良:1票) |
640. 江戸川乱歩の陰獣
江戸川乱歩の原作を加藤泰監督が映画化したサスペンス。冒頭から加藤監督らしいクローズアップを使った演出で思わず唸ってしまった。タイトルバックが列車だったり、劇中でも走行中の列車を高架橋の下から凝ったアングルで撮っていたりして「緋牡丹博徒 花札勝負」の冒頭でも列車と線路を使ったシーンだったこともありひょっとして加藤監督は列車好きなんだろうなあと思わずにはいられない。雨の中、あおい輝彦と香山美子が橋の上で話すシーンも味のある演出。話としては前半は本格推理モノで、今まで見た2本の乱歩原作映画(井上梅次監督の「黒蜥蜴」、増村保造監督の「盲獣」)と違って随分とオーソドックスな映画だし、あおい輝彦や若山富三郎の起用で、この頃ブームだった金田一シリーズに便乗した企画なのかと思っていた。(実際、あおい輝彦が袴姿で走るシーンは金田一を意識しているとしか思えない。佐清だし。)サディズムが絡み始める後半から雰囲気が怪しくなり、主人公が女に鞭をふるいながら推理を巡らせるシーンに至っては変態的な感じで、加藤監督はほかの作品ではこういうシーンほとんどやらない印象なんだが、原因はやっぱり原作を書いた乱歩にあるのかもしれない。それにしてもよくあおい輝彦がこういう演技をOKしたな。でもインパクトとしては「黒蜥蜴」や「盲獣」に比べれば弱く感じるし、原作がそうなのかもしれないが、見終わって結局、本格的な推理モノなのか変化球的なモノなのかがどっちつかずの印象であるし、ちょっと2時間ドラマっぽいところもある。しかし、それでも様式美を感じさせる部分もあって、それほど出来の悪い映画という感じはしない。菅井きんと藤岡琢也のやりとりが笑える。 [DVD(邦画)] 6点(2011-12-15 16:04:41) |