621. ロック ~わんこの島~
三宅島の噴火によって全島避難を余儀なくされた一家と、離ればなれになった飼い犬との絆を実話を元に描いた作品。「めざましテレビ」の「きょうのわんこ」で取り上げられたエピソードの映画化ということで、あからさまなテレビ局の企画もの以外のなにものでもなく、かなりオーソドックスなファミリー向け動物映画という印象。テレビ局主導の映画ゆえ仕方がないのだが、映画というよりはテレビドラマっぽく、どうせなら映画ではなく連ドラでやったほうがよかったかもしれない。子供目線のナレーションで物語が進んでいくが、その口調が子供らしくないのが少し気になる。(まあこんなものかもしれないが。)佐藤隆太と麻生久美子の両親役はなかなかいいコンビ。倍賞美津子は朝ドラ「梅ちゃん先生」でも主人公の祖母を演じていて、最近はこういう役が板につくようになってきたみたい。エンディングの小田和正の主題歌は良かった。 [DVD(邦画)] 5点(2012-06-26 14:42:15) |
622. トイ・ストーリー3
《ネタバレ》 前作から11年ぶりに作られたシリーズ3作目。冒頭のアンディーが楽しそうにおもちゃで遊ぶシーンは自分もああいう頃があったなと妙な懐かしさに駆られた。そしてそのあと、成長したアンディーがおもちゃで遊ばなくなり、何人かの仲間は既にいなくなっているというのが切ない。自分が遊んでいたおもちゃは今でも物置にしまってあると思うが、どうなっているだろうということを考えてしまった。シリーズ今までの作品は娯楽活劇的な要素が中心であってもドラマ部分にも手を抜かないというつくりだったと思うが、今回はまず「アンディーとおもちゃたちとの別れ」というのがテーマであり、娯楽映画としての要素はもちろん健在だが、前2作よりもドラマ性が高くなっている。ラストシーンはアンディーのおもちゃたちへの思いというものが伝わってきて泣けるし、アンディーと同じくウッディたちもこれから新しい持ち主のもとで新しい人生を歩んでいくという結末が素晴らしく、シリーズ完結編としてはこれ以上ないほどのエンディングだろう。また今までのシリーズをすべて見ているからこそよけいにこみあげてくるものもある。公開当時は前作との間があきすぎだろうとも思ったが、今は成長して大人になった1作目の頃のアンディーと同じような子供に向けられて作られた続編と考えればこの長いスパンも納得できる。このシリーズはどの回から見ても楽しめるが、できれば1作目から順番に見てほしい。そうすればこのシリーズの本当の良さが分かると思う。 [DVD(吹替)] 9点(2012-06-21 15:33:28)(良:2票) |
623. 毎日かあさん
《ネタバレ》 先週見た「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」と同じ話を妻の視点から描いた作品。「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」では仮名になっていた夫婦の名前が実名になっていたり、それを元夫婦である小泉今日子と永瀬正敏が演じる(よく二人ともこの役での共演を快諾したなあ。)というリアリティーを感じさせるつくり。はじまってしばらくはほのぼのとしたファミリー向け映画の様相だが、アルコール依存症の夫・鴨志田が登場してからはやはりディープな展開。アニメ版は見たことないのだが、こんなアルコール依存症ネタを題材にしているとは思えないのでたぶんアニメとはだいぶ違うのではないだろうか。この映画のほうがアニメより原作に忠実なのは西原作品にまったく触れたことがない自分でもなんとなく分かるのだが、子どもも見る時間帯に放送のアニメの実写版としてはネタが暗すぎるように思う。しかし、純粋に一本の映画としてはよく出来ており、親子の川釣りのシーンや雛祭りのシーンなどは映画的である。それでも感動とまではいかないのだが、エンドロールは良かった。小泉今日子の母親役というのを初めてみたが、いい母親という感じはあまりしなかった。永瀬正敏も役柄上仕方がないのかもしれないが、いい父親という感じはあまりしない。祖母役の正司照枝は「カーネーション」の祖母役そのままのイメージ。「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」よりは見やすいが、「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」のほうが自分としては好みかもしれない。 [DVD(邦画)] 6点(2012-06-14 23:15:25)(良:1票) |
624. 酔いがさめたら、うちに帰ろう。
《ネタバレ》 西原理恵子の夫のアルコール依存症闘病記を「サード」の東陽一監督が映画化した作品。こう聞くと重苦しい映画のように思うが、東監督は主人公をあくまで客観的に見つめることで、けっして重くならないようなつくりにしている。アルコール依存症の患者の描写が主人公含め全くリアルでないのもおそらく意図的なものだろう。確かにこれではアルコール依存症の本当の意味での怖さというものは伝わらないかもしれないが、東監督はあえてリアルさを抑えて客観的に描くことでこのだらしない主人公の滑稽さを強調することで観客に主人公に対して同情の余地を与えないという狙いがあったのではないだろうか。アルコール病棟の患者たちの日常は病気に関してはリアリティーがないものの、そのほかは実際の入院患者たちの日常を垣間見ているようである。どことなく「サード」の少年院を思い出してしまうが、ここがドキュメンタリー出身の監督らしいところかもしれない。ただやはり「サード」のほうがこういうドキュメンタリータッチの演出は活かされている気がする。浅野忠信は「風花」でも酒を手放すことのできない男を演じていたが、本作でも酒に溺れる男を違和感なく演じており、「風花」のDVDのメイキング映像において、本当は酒が飲めないふうなコメントをしてたと思うが、それが信じられないほどの演技を見せている。永作博美演じる妻の「一度好きになった人のことをなかなか嫌いにはなれない。」というセリフが印象的だった。ラストの海で戯れる家族とエンディングの忌野清志郎「誇り高く生きよう」が余韻を残す。 [DVD(邦画)] 7点(2012-06-07 13:55:07) |
625. 御用金
フジテレビが初めて映画製作に参加した作品で、監督は当時フジテレビの演出家だった五社英雄。あまりこの監督の映画は見ないのだが、この映画は娯楽時代劇としては普通に面白かった。ただ、ストーリーはけっこう重い話で、見終わってもスカッとしない部分があるのにつくりとしては軽い娯楽映画という感じなのでやや中途半端な印象は否めない。仲代達矢と丹波哲郎、それに神隠しで一人生き残った浅丘ルリ子の心情をもっと掘り下げるとかしていれば、ドラマに深みが出たのではないか。それでも、クライマックスの雪山での仲代と丹波の決闘は見ごたえがあるし、全体的に見ていて退屈はしない。仲代と旧知の浪人役を錦之助が演じているが、最初は三船敏郎がキャスティングされていて、実際に三船で途中まで撮影されていたんだとか。確かに実際見てみると特別出演のわりに仲代との絡みが少なくなく、この役は三船のほうが良かったのではないかと思えてしまう。錦之助は変に三船を意識することなく自分の演技をしているが、やはり三船で見たかったなあ。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2012-06-03 13:01:49) |
626. 吸血髑髏船
「吸血鬼ゴケミドロ」に続く松竹の特撮ホラー映画。この作品はSF路線には行かずにオカルトチックなB級ホラーというつくりになっているが、どうも白黒のせいか「昆虫大戦争」や「吸血鬼ゴケミドロ」よりもB級っぽく見え、話も支離滅裂な感じであまり面白くはないし。ただ、B級ながらも白黒のおかげかホラー映画という雰囲気はよく出ていたと思う。(骸骨とかコウモリとか明らかにちゃちいのだが。)この前年に「007は二度死ぬ」にノンクレジットのチョイ役で出演した松岡きっこが主演で、けっこう美人なんだなとか、その恋人役は去年自らが侵されたガンとの向き合い方で注目されていた入川保則だとかそんなことを考えながら見ていた。これで同時代に作られた松竹の特撮映画は一通り見たことになるのかな。いずれもがんばってはいたのだが、やはり松竹に特撮映画というのはどう考えても畑違いのように感じる。 [DVD(邦画)] 5点(2012-05-30 01:44:55) |
627. 八日目の蝉
《ネタバレ》 特に興味もなかった映画だったのだが、見ているうちにだんだんと引き込まれた。他人の子どもを赤ん坊のときに誘拐して育てながら逃避行を続ける女・希和子(永作博美)を描いた過去と、成長した娘・恵理菜(井上真央)の葛藤を描く現代が交互に出てくるが、二つのパートとも丁寧で秀逸なつくりで、日本映画らしい日本映画になっている。本当は永作博美演じる希和子は憎らしい存在なはずなのに、話がすすむうちにこの二人が愛おしく微笑ましく見え、本当の親子ではないことをつい忘れてしまうほどだった。それだけに希和子が逮捕されるシーンは切ない。赤ん坊を誘拐された家族にとっては一刻も早くわが子に戻ってきてほしいという気持ちは分かる、でも誘拐された赤ん坊にとってはこのまま本当のことを知らずに育てられるほうがしあわせかもしれない、ふとそんなことを考えてしまった。あまり出演作を見ていないせいか現代パートで主人公を演じる井上真央には明るいイメージがあるのだが、暗い過去を持ち、その過去を肯定するまでの主人公をうまく演じており、幅の広さを感じた。ラストの恵理菜の決意も泣ける。暗く重苦しい映画だが、女性の強さや希望といったものを感じられるいい映画だったと思う。また、現代の希和子をあえて出さずに終わったのはいい意味での裏切り。後半の舞台である「二十四の瞳」でお馴染みの小豆島(二十四の瞳映画村が撮影協力としてクレジットされている。)の美しい風景も印象的だ。おそらくここでの生活が二人にとってもっとも幸福な時間だったのではないだろうか。 [DVD(邦画)] 7点(2012-05-24 18:02:04)(良:1票) |
628. 吸血鬼ゴケミドロ
《ネタバレ》 松竹の特撮ホラー映画。「昆虫大戦争」と同じ年の作品で、本作もかなり退屈な代物なのではと思っていたが、墜落したわりに飛行機の乗客生き残り多すぎでみんなピンピンしていたり、「昆虫大戦争」では吹き替え(納谷悟朗)だった外国人キャストのセリフが英語のままだったりする(しかも通じてなかった政治家が最後のほうになるといきなりバッチリ通じていたり・・・)など突っ込みどころ満載の展開ながらも思ったよりははるかに楽しめた。極限状態に置かれた人間模様を描いた前半は「マタンゴ」を思い起こさせるが、この部分は密室劇として普通に面白いし、ホラー要素なくてもこれだけで見ごたえのある映画にはなっていると思う。金子信雄の役柄が実にこの人らしい。宇宙からの侵略者が人間同士の争いに目をつけて攻めてくるのは当時の社会情勢に対する批判がこめられていることは明らかで、ラストが「昆虫大戦争」と同じような感じなのも合わせて考えるとやっぱり当時の時代性が感じられる。ところで、本来は子供向けに作られた映画らしいが、ドロドロの宇宙生物が割れた額から出入りするのは小学生くらいの頃に見てたら絶対にトラウマになりそう。 [DVD(邦画)] 6点(2012-05-23 18:35:17) |
629. 櫻の園(1990)
《ネタバレ》 はじまってしばらくはガールズトークばかりで少し冗長に感じていたが、不思議と退屈することなく、むしろ最後まで面白く見れた。演劇部の生徒役は全員がオーディションで選ばれたらしいけど、全員が初々しく、自分が馴染みのない役者ばかりなためもあってか、すんなりと映画に入っていける。また、中原俊監督の映画を見るのはこれが初めてだったのだが、映像が美しく、若い登場人物たちの描き方も秀逸。実際の女子校とはだいぶ雰囲気が違うのかもしれないが、男である自分でもこの女子校の雰囲気に憧れを抱かせてしまうのはすごいと思う。志水(中島ひろ子)と倉田(白鳥靖代)の同性愛的な関係が出てきたのには驚いたが、この二人が並んで繰り返し写真を撮るシーンはこの映画の中でも非常に美しく印象的で、まさに名シーンだと思う。全体を通して流れる「ショパンの主題による変奏曲」も効果的に使われていて、この曲だからこそこの映画の雰囲気も生きてくるのだと思う。人によっては好き嫌いは分かれるかもしれないが、個人的には見てよかったと思うし、じゅうぶんに佳作といえる映画だろう。あと一つ、上演が中止になるかもというくだりで、先生達にとっては毎年の恒例行事でも3年である自分たちには今年しかないんだと話すシーンは思わずそうだよねと感情移入してしまった。 [DVD(邦画)] 7点(2012-05-17 23:59:59) |
630. 熱泥地 [短縮公開版]
市川崑監督の初期作品。短縮版のせいか唐突に感じる部分が多く、あまり面白いとは言えないが、娯楽映画としてはそこそこ。「黒い十人の女」でも見られたようなシャワーの演出など市川監督らしいタッチは既にこの頃から健在。主演は藤田進。東宝の映画でよく見る俳優であるが、主演作を見るのは「姿三四郎」二部作以来か。ヒロイン役の刀根はる恵がふてぶてしく、「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」のリリーの母親役の印象がある人だが、まるで別人のよう。東野英治郎がやけに若々しいなど出演している俳優を見るだけでも楽しい。ただやはり時間が短すぎて何か物足らない。ラストもやたら唐突でそれで終わりなのかよという感じだし。オリジナル全長版は残っていないのかもしれないが、残っているならいつか見てみたいと思う。 [DVD(邦画)] 6点(2012-05-10 17:51:40) |
631. 復讐するは我にあり
《ネタバレ》 今村昌平監督の代表作の一つで、実在の連続殺人犯を描いた作品。どうも濃そうで今まで敬遠していたが、今回やっと見た。前半の殿山泰司と垂水梧郎を殺すシーンから既に引き込まれた。主演の緒形拳は見事な熱演で主人公を演じていて、リアルすぎて怖い。実際の殺害現場で撮影したという今村監督のこだわったドキュメンタリータッチの演出も映画にリアル感を生んでいる。描かれる人間関係もどろどろとしていて、主人公を含め、主要な登場人物に誰ひとりとして感情移入できないが、わざとそういうふうに描いているようにも思う。今村監督の映画はあまり見ていないのだが、このどろどろとした人間を描くのが今村監督の持ち味というか特徴なのだろう。三國連太郎と倍賞美津子が緒形拳の遺骨を海にまくラストシーンは重々しく、投げた遺骨のストップモーションの繰り返しはこの主人公の執念を表しているようであるが、それがどこか喜劇的な演出であるというのがすごい。難を言えば清川虹子と小川真由美の親子が登場するあたりから少しダラダラ感があったのと、途中から時系列がよく分からなくなるのがマイナスだが、じゅうぶんな力作だと思う。全体的に重々しい映画であるが、川島雄三監督の映画の常連俳優であるフランキー堺が川島監督の助監督だった今村監督の映画に出演しているのはなんだか嬉しい。 [DVD(邦画)] 7点(2012-05-02 15:22:52) |
632. あゝひめゆりの塔
のちに戦争映画の大作を何本か手がけることになる舛田利雄監督によるひめゆり学徒隊をテーマにした反戦映画。主演が吉永小百合と浜田光夫というのが不安ではあったが、「日本海大海戦 海ゆかば」のような中途半端な恋愛要素はなく、ひたすら悲劇的な末路を辿る少女たちの運命が丹念に描かれていて思ったよりはずいぶんいい映画だった。何回かリメイクされている「ひめゆりの塔」とは直接は無関係な映画だが、それでもこういう映画は見終わって何か考えさせられるものがある。白黒作品というのもリアリティーがあってそれのおかげで生々しさもより伝わりやすいものとなっている。でも冒頭の現代のシーンは最初よりもラストに持ってきた方が効果的だったと思うし、吉永小百合は熱演しているが、やはり少し演技力は微妙ではある。しかし、全体を通して神山征二郎監督の「ひめゆりの塔」(唯一自分が見たことのあるひめゆり学徒隊を扱った映画。)と比べると重みが全く違う作品になっている。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-05-01 12:04:52) |
633. 激動の1750日
山一抗争をモデルとした東映のヤクザ映画。中島貞夫監督の映画は初めて見たが、オーソドックスなヤクザ映画という印象。主演の中井貴一は頑張ってヤクザ役を演じているが、どうも似合っていないし、ほかの出演者もなんか物足りない(渡瀬恒彦や岡田茉莉子など印象に残る役者がいないではないけど。)が、まあまあ面白かったかな。同じ監督と原作者の「制覇」のほうが見たいけど、機会に恵まれないのが残念。 [DVD(邦画)] 5点(2012-04-26 12:58:03) |
634. 女の一生(1967)
野村芳太郎監督がモーパッサンの名作文学を映画化した文芸作品。運命に翻弄される女性の波乱の人生を描いていて、それなりに見ごたえはあるものの、やや駆け足気味でドラマとしての深みはあまり感じられない。野村監督の映画での岩下志麻といえば「鬼畜」や「影の車」などで怖い役が多いイメージだが、この映画では若い娘時代から晩年に至るまでの主人公を演じていているのだが、違和感もなく演じきっているし、野村監督の映画でこういう岩下志麻を見るのは新鮮に感じる。しかし、左幸子のほうが演技力は上か。ヒロインの息子を演じる田村正和は若い頃の出演作を見るたび若いなあと思うのだが、独特のしゃべり方は今とまったく変わっていない。その恋人を演じるのが左時枝で、姉との共演シーンもあり、楽しませてくれる。この二人の共演は初めて見たが、齢が離れているゆえか、共演シーンが姉妹であることをまったく意識させておらず、この二人の共演も見どころのひとつとなっている。(この二人が親子役で共演する「かあちゃんと11人の子ども」が見たいなあ。) [DVD(邦画)] 6点(2012-04-19 17:45:50)(良:1票) |
635. 大決戦!超ウルトラ8兄弟
《ネタバレ》 平成ガメラシリーズのように怪獣が実在しないリアルな世界を舞台にしたウルトラマン映画だが、後半はいつもどおりのウルトラマンという感じになってしまっているのが少々勿体ないが、イベントムービーとしてはまあしょうがないか。しかし、「ウルトラマンメビウス」でも思ったが、この映画でもオールドファンを意識した脚本になっている。しかし、昭和のシリーズでの主人公とヒロインが夫婦の設定だったり、アキ(榊原るみ)が重傷を負うところまで再現していたり、当該のシリーズを思わせるようなセリフがあったりと多少やりすぎてしまったという印象は否めないし、1966年に小学生ぐらいだった子供が現代でもやたら若すぎるのは突っ込みどころ以外のなにものでもない。(ついでにいうと、ダイゴ、アスカ、我夢なんて名前の子供はあの時代にはいないだろう。)別の世界ではウルトラマンである登場人物たちにパラレルワールドでの記憶が宿り、変身するというのも強引に感じる。しかし、シリーズに少しでも思い入れがあればそこそこ楽しめるとは思うし、平成三部作(あまり見てないから思い入れはないに等しいのだが。)と昭和の4人が居並ぶ姿はやはり爽快。石坂浩二がナレーターを担当しているのもよくぞ引き受けてくれたという感じである。貶していたわりに最後にフォローを入れてしまったが、結局は自分がこのシリーズが未だに好きだってことだな。 [DVD(邦画)] 5点(2012-04-11 22:29:14) |
636. びっくり五十三次
《ネタバレ》 野村芳太郎監督初期の美空ひばりもの。タイトルから「次郎長三国志」のような時代劇を連想するが、確かに森の石松や清水次郎長は登場するものの、大半は宿の中で話が展開し、タイトルと内容があっていない気がする。野村監督の時代劇は初めて見たが、あくまで美空ひばりや高田浩吉のアイドル映画と言う感じである。中村玉緒が出ているが、大映でデビューしたんじゃないんだなというのが意外だった。飯田蝶子と左卜全のコンビぶりは「若大将」シリーズでもお馴染みなので見ていてなにか安心感がある。ラストの映画館の場内放送を模した演出がユニーク。DVDに収録されているフィルムの保存状態があまりよくなかったのが少し不満だが、実際、リバイバルの映画館で昔の映画を見るとこんな感じなのかなと思う。 [DVD(邦画)] 5点(2012-04-06 00:30:44) |
637. プリンセス トヨトミ
《ネタバレ》 設定だけは魅力的なのに実際に見てみるとやっぱり話題の小説を取りあえず映画化してみたというだけの代物で面白くない。大阪中が口裏合わせをしているという設定に無理を感じる。下の方も書いておられるが、大阪は大阪出身者だけが暮らす街ではないだろうに。クライマックスの中井貴一のセリフも感動させようとしているのかもしれないが、都合のいいことを言っているだけのような気がして説得力なさすぎ。王女を守るという部分がセリフだけで終わってしまっており、なんか設定だけ設定して野放し状態という感じだ。2回出てくる全停止した大阪の街を綾瀬はるかが走るシーンは画的にはシュールで面白かったが、なぜに胸を強調する必要があるのだろう。ただのサービスカットだったのか。あと一つ、茶子を演じる沢木ルカを初めて見たのだが、外見があまりにもボーイッシュすぎてとても王女という感じではなく、オーディションで選んだみたいだが、ミスキャストにしか思えなかった。 [DVD(邦画)] 3点(2012-04-03 22:19:50) |
638. 私をスキーに連れてって
《ネタバレ》 若大将シリーズすべて見終わって、シリーズのファンが多いというホイチョイ・プロダクションの本作を見てみる。確かにスキーを題材にしているのは「アルプスの若大将」の影響が大きいのだろうし、田中邦衛の役名が田沼雄一をもじったような役名だったり、チョイ役で中真千子が出演していたりして製作スタッフが本当に「若大将」シリーズのファンが多いんだなあということが分かる。しかし映画自体は今見るとものすごく時代を感じる代物になっていて、いかにもバブル景気の時代のヒット作という感じ。冒頭のスキーシーンが冗長に感じられるのを筆頭に、いかにスキーシーンをカッコよく撮るかに重点がおかれており、物語としてはあまり面白くないし、主題歌と挿入歌を担当するユーミンの曲も「恋人がサンタクロース」とか好きなんだけど、少しくどく感じてしまった。まあ全体的に見てフジテレビの映画らしい映画といえばそうで、この当時からフジテレビの映画はあまり今と変わり映えしないなあという印象が残った。 [DVD(邦画)] 4点(2012-03-20 02:03:23)(良:2票) |
639. カラフル(2010)
《ネタバレ》 「河童のクゥと夏休み」のあとシンエイ動画を退社した原恵一監督がサンライズでてがけた作品。あまり期待が高かったというわけではないが、ファンタジーという体裁をとりながらも、人生をやり直すことになった主人公の葛藤や、主人公の家族の人間模様がリアルに描かれていて原監督らしい映画になっていると思う。描写もアニメというよりは実写に近く、作風としては原監督のデビュー作「エスパー魔美 星空のダンシングドール」に近いが、やはり原監督は「クレヨンしんちゃん」シリーズのような派手さのある作品よりもこういった作品のほうが得意なのだろう。この映画でも「クレヨンしんちゃん」や「河童のクゥと夏休み」同様に家族が一つのテーマとなっているが、野原一家や上原一家がなんの問題もない普通の家庭として描かれているのに対し、この小林一家は母親が不倫をしていたりと何かと問題を抱えた家族というのが興味深く、何回も出てくる一家での食事シーンも象徴的に感じられる。終盤主人公・真がひろかに向かって言う「人間にはいろんな色があっていい。おかしくて当たり前、いろんな自分がいていいんだ。」という言葉。ぼくもなかなか自分というものを肯定できない人間なので、聞いていて思わずはっとさせられ、とても共感できたし、もっと自分を肯定する勇気と自信を持って生きていきたいと感じた。タイトルからも分かるが、これがこの映画にいちばん込められているメッセージなのだろう。はっきり言って退屈なシーンもなかったわけではないが、見終わって素直に良かったと言える映画だったと思う。 [DVD(邦画)] 8点(2012-03-15 15:07:16)(良:1票) |
640. 帰ってきた若大将
《ネタバレ》 加山雄三のデビュー20周年を記念して作られたシリーズ18作目。このシリーズを見始めたのは植木等の無責任シリーズと同じ田波靖男がすべての回で脚本を手掛けているからという単純な理由だったが、とうとう最後の回まで来てしまい、感慨深いものがある。10年ぶりのシリーズ新作ということで、シリーズ過去作の映像が劇中に登場したり、若大将の部屋に大学時代の写真が飾ってあるのはやはりシリーズ集大成的な作品という意味合いがこめられているのだろう。ただ田能久のシーンは完全に同窓会的な雰囲気でしかなく、りき(飯田蝶子)の法事のシーン以外にもう少し見せ場が欲しかったところ。とはいえこのシーンは今回プロデューサーもつとめた加山雄三のりきへの思い入れが感じられる。(実際の加山雄三もおばあちゃん子だったらしい。)既に黒板五郎の風貌になってしまった青大将(田中邦衛)が相変わらずヒロイン(坂口良子)を口説きまくるのは見ていて痛々しいが、今回はなんと青大将自らがヒロインを若大将に譲るという結末で、最後の最後になって若大将との本当の男の友情を感じさせる終わり方をしているのが嬉しい。これでこのシリーズは本当に終了だが、シリーズの締め方としてはこれまですべての回を見ていれば、シリーズ作品ならではの味が感じられ、加山雄三や田中邦衛のこのシリーズでの長い長い共演で築いたであろう関係がそのまま出ていて、それだけであらためていちばん最後にこの映画を見て本当に良かったと思う。田中邦衛はこの後「北の国から」でも20年以上吉岡秀隆や中嶋朋子と共演していくことになるんだなと思うとつくづく息の長い俳優なんだなと思う。これで若大将シリーズはすべて見てしまったわけだが、すべて見終わった達成感とともに一抹のさびしさがある。 [DVD(邦画)] 6点(2012-03-07 18:10:27) |