641. ダークサイド(2018)
《ネタバレ》 自らの不注意により幼い娘を事故で亡くしてしまった、レイとマギー夫妻。深い哀しみから逃れるように、彼らは砂漠の片隅にある古びた安モーテルを買い取るのだった。知り合いなど誰も居ない片田舎で再スタートを図るレイとマギー。何もかもを捨てこの安モーテルに越してきた彼らは着々と準備を進め、記念すべき最初の宿泊客を受け入れることに。だが、しばらくすると夫レイはこのモーテルに隠された不穏な事実を知ってしまうのだった――。倉庫の片隅に秘密の通路があり、その先はある客室の鏡の裏へと通じていて、マジックミラーとなったその鏡から部屋の中が全て覗き見できるようになっていたのだ。偶然泊まっていた女性客二人組の淫らな姿態を覗いてしまったレイは、ギクシャクする妻との関係から逃れるように次第にその覗き見行為に嵌まり込んでゆく。だがある日、その女性のうちの一人が砂漠で死体となって発見されたことから、レイはどんどんと危険な罠に絡めとられてゆくのだった……。毎度おなじみニコラス・ケイジ主演で送る、そんな不穏な空気に満ちたエロティック・サスペンス・スリラー。正直、めっちゃつまんなかったんですけど、これ!全編を通して無駄なシーンが圧倒的に多く、終始ちんたらしててもう退屈で退屈で仕方なかったです。ニコケイ、しのごの言ってないでとっととレズカップルのSMプレイ覗きにいけや!!とキレそうになっちゃいました。また脚本のテキトー具合も最悪です。伏線を山ほど張っていながらそのほとんどを回収しないまま終わるというトホホぶり。あの風呂場に忍び込んだ蛇のエピソードとか何の意味があったのでしょう?一番怪しい保安官がやっぱり犯人でしたということの真相も正直、何の捻りもありません。肝心の覗き見シーンもトータル2、3分で終わるし、それも下着姿のおねーちゃんたちがお尻ぺんぺんするぐらいでおっぱいすら出てきません(怒)。ニコラス・ケイジも他の主演作と区別してもらうためなのか髭もじゃにしてる(見ていて暑苦しいったりゃありゃしない!)ぐらいで、やっつけ感が半端ありません。うん、3点!! [DVD(字幕)] 3点(2019-09-26 23:37:58) |
642. かごの中の瞳
《ネタバレ》 過去の不幸な事故によって完全に失明してしまったジーナ。だが、夫の献身的なサポートのおかげで今はタイのバンコクで何不自由なく暮らしている。安定した収入、日常の中でのちょっとした気遣い、そして愛に満ちたセックス――。子供にはまだ恵まれていないものの、夫とともにささやかながら安定した生活を送っていたジーナに、主治医から更なる朗報が告げられる。なんと角膜移植により、右目だけだが視力が戻るかもしれないと言うのだ。藁にも縋る思いでジーナは手術を決断する。術後の結果は良好、ジーナは抗生物質を点眼しながら視力の回復を待つことに。次第に戻って来るカラフルな世界に、ジーナは戸惑いながらも喜びを隠せない。お祝いを兼ね、新婚旅行で行った南スペインへと夫と二人でバカンスに旅立つジーナ。だが、訪れた先で彼女はちょっとしたことから夫に不信感を抱くようになる。次第にギクシャクしてゆく夫婦。タイへと帰ってきた彼女は、プールで出会った心優しい男性に気持ちが揺らぎ始める…。それまで愛に満ちた生活を送っていると信じていた盲目の主婦、彼女が視力を取り戻したことで見えてきた夫への疑心を独創的な映像で描いた心理サスペンス。監督は、丁寧な心理描写に定評のあるベテラン、マーク・フォースター。ということでけっこう期待して今回鑑賞してみました。なのですが、冒頭から何度も繰り返されるシュールで実験的な映像表現が正直かなり鬱陶しいというのが第一印象。この内容でどうしてこのような映像表現をしなければいけなかったのか、はなはだ疑問でした。ストーリーの方もわざと説明を極力排除して主人公の不安な心情を表現しているんだろうけど、とても効果的だとは思えません。この監督ってこっち系(いわゆるデビッド・リンチ系の前衛的作風)のひとでしたっけ?もっとしっかりとした躍動的な物語で見せるストーリテラーな人だと思っていたので、かなりがっかりなんですけど。物語のギアとなるべき、主人公の過去に何が起こったのか?現在どういう状況にあるのか?そして未来をどんな風にしたいのか?という重要な要素がことごとく曖昧なので、全くストーリーに入り込めません。最後のオチも投げっ放しの酷い代物。けっこう好きな監督の作品だっただけに、非常に残念な出来でありました。 [DVD(字幕)] 4点(2019-09-26 23:22:08)(良:1票) |
643. チャイルド・オブ・ゴッド
《ネタバレ》 彼もまた“神の子”だ。あなたと同じように――。アメリカ北部の寂れた田舎町に住む孤独な男、レスラー・バラード。十歳にして父親を自殺で失い母親にも捨てられた彼は、以来天涯孤独な人生を送ってきた。精神的に深刻な問題を抱えた彼は周りの人間とうまくコミュニケーションを取ることが出来ず、自分を守ってくれる古びたライフルだけを片手に、打ち捨てられた山小屋でその日暮らしの孤独な生活を何年も続けている。もちろん村人からは厄介者扱い、保安官からも常に目を付けられていた。そんなある日、山道を歩いていた彼は事故を起こし立ち往生している車を発見する。覗いてみると、車内には一組の男女の死体が横たわっていた。触れてみるとまだ微かに温もりが残っている。初めて感じた女の温もり。思わずレスラーは、その女の死体と性行為をしてしまうのだった。そのことに味をしめた彼は以来、次々と女を殺しその死体を犯し始めるようになる……。長年の孤独な生活から精神に異常をきたしてしまった男、彼が犯すことになる数々の許されざる罪を乾いた空気の中に描くバイオレンス・スリラー。原作は現代アメリカ文学の重鎮、コーマック・マッカーシー。監督は俳優としても活躍するジェームズ・フランコ。『ノー・カントリー』『ザ・ロード』『悪の法則』といった作品で名高いマッカーシーが原作だけあって、この血と暴力に満ちた物語はいかにも彼らしい閉塞感に満ちた重厚なものだった。「倫理観や道徳といったものが完全に壊れてしまい、世にも恐ろしい罪を躊躇なく犯してしまう彼を同じ人間と言っていいのか」といった重々しいテーマを、無駄を削ぎ落したシンプルなストーリーの中に描き出す意図は充分伝わってくる。果たして神は居るのだろうか――。このイカレタ男の視点で最後まで物語を進行させ、観る者の倫理観を激しく揺さぶって来るところなどその踏み越えた姿勢は高く評価されていいだろう。ただ、この原作を映画化するのであれば、もう少しこのテーマに深みを与えても良かったのかもしれない。最後まで、この罪深き“神の子”になんの罰も赦しも与えないところなど、きっと意図してのことなのだろうがどうしても物足りなさが残る。内容が内容だけに決して観ていて気分のいい作品ではないが、人間の生存欲求の根源性や神の不在などを考えるきっかけとして観る価値は充分にある。 [DVD(字幕)] 6点(2019-09-26 22:55:50) |
644. シドニー・ホールの失踪
《ネタバレ》 既存の価値観を真っ向から否定するような挑戦的な内容で、全米ベストセラーとなった青春小説『郊外の悲劇』。デビュー作にして一躍時代の寵児となった作者であるシドニー・ホールは、プレッシャーからかなかなか二作目が書き出せずにいた。そんな折、この小説に影響された青年が自らその命を絶ち、全米中で賛否両論含めた議論が巻き起こるのだった。精神的に追い詰められたシドニーはある日、着の身着のままの姿で失踪してしまう――。以来シドニー・ホールの消息は誰にも分からず次第に人々は彼のことを忘れていった。だが、七年もの月日が過ぎたころ、いくつかの図書館で彼の著作が燃やされるという事件が多発する。老犬を連れ、ふらりと現れた犯人こそが彼なのではないか。疑問を抱いたある人物が彼の調査を開始する。浮かび上がってきたのは、シドニー・ホールという男の深い哀しみに満ちた人生だった……。失踪したベストセラー作家のミステリアスな半生を、三つの時間を行き交いながら綴るヒューマン・ミステリー。描かれるのは作家シドニー・ホールのまだ無名だったハイスクール時代と、やがてベストセラー作家となった彼の栄光とプレッシャーの日々、そして一匹の老犬だけを相棒に全米を放浪する空白の時期という人生のターニング・ポイントとなった三つの時代のエピソード。この三つの時間軸を複雑に行き交いながら同時並行で描くという難しい手法を使っているのですが、ちゃんとそれがいつの時代の話なのか観客に分かるように描き分けているのは巧いと思います。どの時代のお話にもちゃんとそれぞれに明確なテーマと謎が存在し、全体としてある一人の男の人生を重層的に浮かび上がらせることに成功しています。そして、それら三つの時代に様々な姿で立ち現れる美しい女性メロディの存在も煌びやかで大変いい。彼女を演じたエル・ファニングがとてもキュートで、まさに嵌まり役。ただ、物語の終盤、それぞれのエピソードに隠された謎が全て明らかにされるのですが、それらが一本の映画としてうまく纏まっていないのが本作の弱いところ。青春期の初恋と友情、デビュー後の挫折と喪失、失踪後の絶望と再生、これらの要素が有機的に巧く絡み合っていません。なんだか別々の映画を一本に編集しなおしたような印象を受けてしまいました。きちんと整理されたストーリーテリングが抜群に巧かっただけになんとも惜しい。 [DVD(字幕)] 6点(2019-09-25 22:38:13) |
645. 運び屋
《ネタバレ》 90歳にしてアメリカ最大の麻薬密売組織の運び屋となった男を実話を基にして描くクライム・サスペンス。監督・主演を務めるのは、もはやハリウッドの生ける伝説と言っても過言ではない御大、クリント・イーストウッド。名作『グラン・トリノ』で名実ともに俳優業からは引退と思っていましたが、まさかこんな役でカムバックするとは嬉しい驚きですね。沢山の家族に囲まれ枯れた余生を謳歌するような幸せな老人ではなく、ひりひりするような綱渡り生活を続ける麻薬の運び屋役というのがまた彼らしい。ストーリー自体は極めてシンプル。でも、無駄を削ぎ落したその物語はとてもサスペンスフルで最後まで引き込まれて観ることが出来ました。ここらへんは長年の経験がなせるベテランの技なのでしょう。いつ、この爺さんが事故っちゃわないか、いつ警察にバレて窮地に陥ってしまわないか、あるいはいつヘマをして麻薬組織から酷い目に遭わされはしまいかと終始ハラハラしっぱなしでした。その中で、最初は反発し合っていた監視役のチンピラと、何気なく一緒にポークサンドを喰ったことでほのかな友情が芽生えるというエピソードはなかなか微笑ましい。そして終盤、長年連れ添った元妻の危篤を知った主人公が葛藤の末に取った行動には、本当に胸が締め付けられる思いでした。ここには90年がむしゃらに生きてきた老人の生き様がしっかりと詰まっている。ブラットリー・クーパーやアンディ・ガルシアといった、油の乗った俳優たちも彼の前では単なる引き立て役になっていたのも凄いことだと思います。人生の深い哀歓を感じさせる、渋みに満ちた人間ドラマの佳品でありました。 [DVD(字幕)] 8点(2019-09-25 21:52:15) |
646. ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間
《ネタバレ》 大嵐が近づき、大混乱へと陥っているアメリカの大空港。軒並み定期便が欠航してゆく中、明日の結婚式にどうしても出席したいアレックスは、ジャーナリストとしてのコネをフル活用し、小さなセスナ機をチャーターすることに成功する。あとの問題は資金面。彼女は偶然、同じようにどうしても今日中にデンバーへと帰りたいというベンという名の医師に出会う。神経外科医である彼は明日、12歳の子供の手術の予定が控えているのだ。費用を折半し、小さなセスナ機に乗り込んだ二人は、急いで目的地へと向け離陸してもらう。だが、その途中で操縦士が脳梗塞を起こし、セスナ機は呆気なく雪山へと墜落してしまうのだった――。生き残ったのはまだ出会って数時間しか経っていないそんな男女二人と、一匹の犬のみ。無線は壊れ、携帯も圏外。しかも彼らが飛行機に乗り込んだことは誰にも知らせておらず、救助が駆け付けてくる可能性は皆無に等しい。見渡す限りの雪山が続くこの絶望的な状況の中で、それでも彼らは一歩ずつ歩き始めるのだった。生きる希望を失わないために…。そんな過酷な大自然へと突然放り出される男女を演じるのは、ベテランのケイト・ウィンスレットとイドリス・エルバ。映画の大半はほぼこの二人だけで進んでいくのですが、この演技派二人のキャスティングは大成功でしたね。過酷な状況にどんどんと追い詰められてゆく二人を説得力抜群に演じていて、もう観ていて息が詰まるほどでした。野生の肉食動物や猛吹雪など、襲い来る自然の驚異はベタですけどやはり手に汗握っちゃいますね。そんな中、二人と行動を共にする耳垂れ犬がとても健気で、この重い物語のいいアクセントとなっています。ただ、ストーリーは良くも悪くも非常にシンプル。もうタイトルそのままのど直球の内容なので、最後まで新鮮味といったものはほとんどありませんが、それでも丁寧な演出のおかげで僕は最後まで惹き込まれて観ることが出来ました。最初は反発し合っていた二人が幾多の困難を乗り越えていく中で次第に心を許してゆき、婚約者がいるにも関わらず…というのはオーソドックスながらなかなか切なかったですね。どこまでも続く雪山の映像もほれぼれするほどキレイで見応え充分。最後、二人が助かってからの展開がかなり蛇足感が強く、特にラストシーンがメロドラマに寄り過ぎなのが僕的にちょっと不満でしたが、それでも充分見応えのあるサバイバルドラマの佳品でした。うん、お薦めです。 [DVD(字幕)] 7点(2019-09-24 21:42:53) |
647. クロノス・コントロール
《ネタバレ》 いまから100年後の未来社会、高度な人工知能「クロノス」の暴走により、人類は絶滅寸前にまで追い詰められていた。開発者であるエライアス博士は肉体を捨て、バーチャル空間で生きながらえながら、地球の敵である人類との戦いを指揮している。そんな折、森の奥深くに潜み反撃の機会をうかがっていたレジスタンスの前に一人の謎の人物が現れるのだった――。彼の名は、アンドリュー。何故か彼は今から100年前の人類大破滅以前の記憶を有していた。果たして彼は何者なのか?彼と同行することになった女兵士カリアは、更なる驚愕の事実を知ることになる…。強大なロボット軍団を率いる人工知能「クロノス」とレジスタンスとなってゲリラ戦を展開する人類との種の存亡を掛けた戦いを壮大なスケールで描いたディストピアSF。なんですけど、いやー、これがなかなかトホホな出来の典型的なB級映画でした。冒頭こそ、地球規模の大破滅を描いているのですが(そのCGがけっこうショボいのはまあ予算の関係なんで目をつぶりましょう!)、その後の97年後の未来社会の描写が明らかにどっかの森で撮影していてまったく未来感が皆無なのはさすがにあかんでしょ。この絵的にも地味な舞台に出てくる登場人物もかなり地味な男女二人で、この二人がひたすら森の中をとぼとぼ歩くだけという展開が中盤までだらだら続き、もう眠いったらありゃしない。そしてこの二人が次第に惹かれ合っていくという展開もまあベタだし、その描き方もかなり雑なんで観ていてホント腹立ってきます。肉体を捨ててサイバー空間に生きる黒幕エライアスもただひたすらこいつらを見守るだけで、とても人類を滅亡寸前にまで追い詰めたような凶悪な存在には思えません。また、この黒幕を演じているのはジョン・キューザックなのですが、これがかなりやっつけ感が半端ないです。そして最後、まさかの人類地球脱出からの全面宇宙戦争開幕直前でハイおしまい。なんすか、この適当なオチは(笑)。うーん、観るだけ時間の無駄の駄作というほかありません。 [DVD(字幕)] 3点(2019-09-24 21:03:55) |
648. ターミネーター:新起動/ジェニシス
《ネタバレ》 冒頭からあのジョン・コナーが自らの父親となるカイルをタイムワープ装置に送り込み、そこから一作目の時代へと舞台が移行するシーンで摑みはばっちりでした。あの小学生のころから何度も観てきた世界が最新の映像技術で復活か!!と僕のワクワクは頂点に――。でも、本作のピークはそこまででした。そこから何故かもう一人のT‐800が出てきたり、2に登場したリキッドメタルが襲ってきたり、サラ・コナーがすでにムキムキの戦闘おねーちゃんになってたり、開始早々ストーリーがもう無茶苦茶ですやん。「いったいどういうことやねん!」という僕の疑問に、一応パラレル・ワールドやらタイム・パラドックスやらで説明してくれてはいますけど、全く納得できるものではありません。話が進めば進むほど無理が大きくなるので、後半のクライマックスなんてもうグダグダしててさっぱり面白くなかったです。シュワちゃんの名ゼリフ「アイル・ビー・バック」なんて無理やり挿入した感が半端ないですし。また、妙にコメディ要素を突っ込んでくるのもものすごく違和感ありました。結論。『ターミネーター』シリーズの最新作としてはもちろんのこと、普通のSFアクションとして見てもかなりレベルの低い作品でありました。 [DVD(字幕)] 4点(2019-09-24 20:51:55) |
649. 白い肌の異常な夜
《ネタバレ》 南北戦争時代、まるで桃源郷のような女学園へと迷い込んだ北軍兵士の男のそのハーレム生活と破滅を濃厚に描いたサスペンス・ドラマ。ソフィア・コッポラのリメイク版がなかなか良かったので、オリジナルである本作もこの度鑑賞してみました。いやー、噂に違わぬ変な映画でしたね、これ。12歳のいたいけな少女から年増の園長先生まで、まさに男の妄想全開のハーレム状態。え、これって原作はフランス書院か何かですか(笑)。というか、主人公はじめ登場人物全員がおかしな行動を取り続けるので、最後まで居心地が悪いったらありゃしない。特に脚を切り落とすシーンなんて、「え、なんでそーなるの?」って感じでした。そして目覚めた男は居直って堂々の「お前ら全員俺の女だ。いつでも好きな時に抱く」宣言。なんでやねん!挙句、最後は何故かみんな仲直りして一緒にディナー……と思ったら、12歳の女の子による毒キノコであえなく昇天。おのれのキノコのツケはキノコで清算ってことですか…。いったいコレ、ほんとに何を描きたかったんでしょうね(笑)。ソフィア・コッポラのリメイク版は、女性たち目線でストーリーを語り直すことによって全く不自然さを感じさせなかったのはさすがでした。若かりし日のクリント・イーストウッドが何故か出ているこの珍品、興味のある方はぜひどうぞ。 [DVD(字幕)] 7点(2019-09-22 23:10:56)(良:1票) |
650. 死の谷間
《ネタバレ》 核戦争後の荒廃した近未来。数少ない生存者である若い女性アンは、唯一核汚染を免れた小さな谷間で独りぼっちで暮らしていた。大自然に囲まれ、心の拠り所は父が遺していった小さな教会で毎日神に祈りを捧げること。今日も彼女はたった一人、一匹の老犬とともに誰も居ないコンビニから生きてゆくための食糧を調達してくる。そんなある日、唐突にその狭い谷間に防護服を着た黒人の男がやってくる――。誰も居ない世界で孤独に押し潰されそうになりながら暮らしていたアンは、久しぶりに交わす人との会話に喜びを隠せない。彼と一緒に暮らすことになったアンは、自然と心を許してゆくのだった。次第に惹かれ合っていく二人。だが、そこに新たに白人の若い男がやって来たことで、彼らの関係は微妙に壊れ始めてゆく……。絶望的なディストピア世界で揺れ動く男女の心の機微を淡々と描いた心理ドラマ。なんですけど、見事なまでにつまんない作品でしたね、これ。予算の関係なのか、ディストピア映画なのに、こんなに終末感のない映画も珍しい。なんか近場のキャンプ場で撮ったんじゃないかってくらい未来描写が皆無でした。当然ずっと山の中で物語が進行してゆくわけですが、これがただでさえ絵面が変わらないのに、肝心の物語がまあつまんないせいで最後まで観るのが苦痛で仕方なかったです。人類の危機なのに、やってることは終始まどるっこしい三角関係で深みも何もあったものではありません。また、信仰心に篤いヒロイン役をやったマーゴット・ロビーも全然役柄に合っておらずミスキャストもいいところ。最後のオチにいたっては、「こうやって思わせ振りのまま終わらせたら芸術っぽくなるんでしょ」という監督の浅はかな狙いが透けて見えて、もう腹立ってきましたわ。いやー、久しぶりにこんなつまらない映画を観てしまいました。 [DVD(字幕)] 2点(2019-09-20 20:36:00) |
651. ローガン・ラッキー
《ネタバレ》 家族全員が何らかの不幸を抱え込んでいる、自称・呪われた家族、ローガン一家。そんな自らの呪われた人生に一発逆転を図るため、レース会場の地下に隠された金庫の強奪を計画したローガン家の兄弟と彼らの仲間たちの活躍をサスペンスフルに描いたクライム・アクション。監督はこの手の分野を得意とする、『オーシャンズ11』などで有名なスティーブン・ソダーバーグ。主演はチャニング・テイタムをはじめとした若手陣に加え、ダニエル・グレイグやヒラリー・スワンクといったベテランが脇を固めております。まあ事前の予想通りの超ベタベタな内容ではありましたけれど、エンタメ映画としてのツボは押さえられていたので僕はぼちぼち楽しめました。脚本は突っ込みどころ満載ですが、華のある役者たちと終始流れるノリのいい音楽、サクサク進むストーリー展開のおかげで最後までストレスなく観ることが出来ます。まあ三日後には完全に内容を忘れてしまいそうな作品ではありますけど、ヒマつぶしで観る分にはちょうどいいんじゃないですかね。 [DVD(字幕)] 6点(2019-09-15 22:59:47) |
652. ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ
《ネタバレ》 パキスタンからアメリカへと渡ってきた移民の青年、クメイル。故郷とは何もかも違うこの自由な地でコメディアンを志した彼は、シカゴの小劇場で地道な下積み生活を続けていた。そんなある日、いつものように舞台で故郷のパキスタンを揶揄するようなネタを披露していたクメイルに、客席から若い女性が野次を飛ばしてくる。その場は軽くやり過ごしたものの、動揺を隠せないクメイルは舞台の後に彼女に文句を言いに行くのだった。彼女の名は、エミリー。成り行きで何故か一緒に酒を飲むことになった彼らは予想外に意気投合し、そのままクメイルの家で一線を越えてしまう――。一夜限りの関係で終わるはずだった。だが、クメイルはその後、何度も彼女と会い、数か月後にはすっかり彼氏彼女の関係になってしまっていた。そろそろお互いの家族に紹介するタイミング。でもクメイルには一つの悩みの種があった。彼の家族は皆敬虔なイスラム教徒で白人のアメリカ人など到底認めてもらえないだろうということ。そのことが原因で次第にギクシャクしていく二人。そんな折、エミリーが原因不明の謎の難病を発症し昏睡状態へと陥ってしまう…。文化の違いを乗り越えて愛を育もうとする若い恋人たちを襲った突然の悲劇を、実話を基にして描いたラブ・ストーリー。自らの体験を本人自らが演じていることでも話題となった本作、アカデミー脚本賞ノミネートということで今回鑑賞してみました。うーん、正直僕の好みとは合わない作風でしたね、これ。この重たいテーマを最後まで軽くライトに描くという狙いはいいと思うのですが、なんだか物語のテーマがいまいち絞り切れていない印象。難病に犯されてしまった彼女との関係を深く見つめ直す青年の恋物語とパキスタンとアメリカの文化の違いに自我を引き裂かれていく青年の自立の物語が最後までうまく絡み合っていないように感じました。その証拠に、クメイルの家族とエミリーが顔を合わせることは最後までほとんどありません。この両者の葛藤を描いてこそ、このテーマはより活きてくるように思うのですが。本人が自ら演じていることもあり、なんだか終わってみれば結婚式のよくある新郎新婦の馴れ初め再現映像ロング・バージョンのように思ってしまいました。ただ、エミリーの両親を演じたベテラン勢二人はなかなかのいい仕事ぶり。最後まで興味を失わずに観られたのは、この二人の魅力によるところが大きい。 [DVD(字幕)] 5点(2019-09-14 23:51:04) |
653. アンダー・ハー・マウス
《ネタバレ》 屈強な男たちに囲まれ大工として働くダラスは、心と身体の性が一致しないいわゆるトランス・ジェンダー。昼間は大工として力仕事に従事し、夜は女性専門のバーでその日の相手を物色するという刹那的な生き方をしているダラス。その夜、いつものようにバーへと出向いた彼女はその人に出会ってしまうのだった――。雑誌の編集者としてバリバリと働く彼女の名は、ジャスミン。一目見た瞬間から互いに惹かれ合ってゆく二人。だが、ジャスミンにはもうすぐ結婚する婚約者がいた。彼が遠方へと出張する数日の間に、二人は秘密の逢瀬を重ね、次第に愛欲の海へと溺れていく。お互いに期間限定の恋だと分かっているはずだった。だが、ダラスとジャスミンの関係はどんどんと深みに嵌まってゆき、やがて悲劇が彼女たちを襲う……。女同士の燃えるような情熱的な愛を濃密な夜の空気の中に描き出すラブ・ストーリー。映像はとてもキレイだし、全編を覆う退廃的な雰囲気も味があって良かったと思います。何よりダラス役をやった女性の男前ぶりが半端ない!本職はモデルらしいですけど、いやー、彼女を見ているだけで目の保養になりますね。ただ、お話として単純すぎるのが本作の弱点。女と女が出会ってやりまくって、それが婚約者にバレていったん別れたものの、やはり最後は困難を乗り越えて縒りを戻しましたってだけでは、さすがに一本の映画としてちょっと弱すぎます。軸となるエピソードがもう一つか二つ、欲しかったですね。ストーリーがこれだけ単純だと、必然的に二人の性描写が増えるわけですけど、これもちょっとしつこい。最初は官能的で情感に溢れたいいシーンだなぁとほれぼれしながら観ていたのですが、ここまで全編に渡ってやられるとちょっとしんどいですわ。同じく女性同士の官能的な愛を描いた傑作『キャロル』は、その部分が抑制が効いていて非常にバランスが良かったことを再認識してしまいました。うーん、なんだか全体的にあと一歩足りない印象。この退廃的でジャジーな雰囲気は良かっただけに惜しい。あと、これは映画本編と関係がないのですが、日本の配給会社さん、ちょっと画面にぼかし入れすぎです!別にこれはエロを目的としたAVじゃないんですから。 [DVD(字幕)] 6点(2019-09-10 02:08:00) |
654. ザ・インターセクションズ
《ネタバレ》 財産目当ての義父の策略により、実の母親を昏睡状態へとさせられてしまった青年ハーパー。ある夜、酒場で酔い潰れて管を巻いていた彼に、チンピラ風の若い男が声を掛けてくる。「2万ドル払えば、俺がその男の始末をつけてやってもいいぜ」。次の日、これまたヤバそうな見た目のストリッパーとともにやって来た男は、ハーパーにどうするか選択を迫るのだった。これからベガスへ行きその義父を殺っちまうか、それともこのまま何もせずに家でこれまで通りの人生をやり過ごすか――。物語はそこから各々の選択をしたハーパーのドラマが同時進行で並行して描かれてゆく。果たしてどちらの選択をした方が正しかったのか?だが、そんな二人のハーパーの物語は、終盤に明かされる驚きの仕掛けにより一つに収斂されてゆくのだった…。まあアイデア勝負のそんな低予算クライム・サスペンスなのですが、これが正直微妙な出来でした。車でチンピラ・カップルとともにベガスへと向かった彼と、家で義父をベガスへと見送ろうとする彼の物語が、時に画面二分割で交互に描かれるのですが、これがいまいち効果的に使われていないんですよね。どちらの物語も、終始ちんたらしてて一向に面白くならないんですよ、これが。後半、明らかになるその仕掛けの真相も「おー、なるほど。そういうことか!!」という驚きよりも、「なんやねん、それだけのことかーい!」という肩透かし感の方が強かったです。真相が分かってみれば、このいまいち面白くない物語がますます面白くない物語へと変貌するというトホホぶり(笑)。完全にアイデア倒れの凡作でありました。この監督の前作『トライアングル』がなかなか面白かっただけに、残念!! [DVD(字幕)] 4点(2019-09-10 01:20:12) |
655. スイミング・プール
《ネタバレ》 最近少しスランプ気味の人気ミステリー作家、サラ。編集者の勧めで彼女はフランスの片田舎にある小さな村の別荘へと趣き、気分転換を図ることに――。訪れた村の閑静な雰囲気と素朴な村人たちに、サラはどんどんと心が癒されていくのだった。心機一転したサラは、新たなアイデアとプロットが次々と浮かび、再開した執筆は順調に進んでゆく。だがしばらくすると、別荘の持ち主である編集者の手違いから、彼の子供であるジュリーという若い娘が転がり込んでくる。礼儀知らずで自由奔放、さらには毎晩違う男を連れ込んでは情事にふける彼女にサラの平穏だった心は掻き乱されるばかり。ところが、そんな彼女にも誰にも言えない心の闇があることを知ったサラは、それをモデルにして新たな小説執筆を図るのだった。そんな折、二人の関係性を決定的に変えてしまうようなある事件が起こる。流された血は、別荘の敷地内にある大きなスイミングプールへと滲んでゆく…。頑固で保守的なイギリスの中年女性と男好きで自由奔放なフランスの若い女、そんな対照的な二人の女性が起こしたある〝事件〟をミステリアスな空気の中に描き出す心理サスペンス。幾つもの知的仕掛けに満ちたそんな本作、ずっと気になっていたので今回鑑賞してみました。なんですけど、うーん、ちょっと僕の期待していたものとは違った印象でしたね、これ。妄想と現実、小説を書く作者の現実と小説内のフィクションの世界、それらが混然一体となり観るものをいつしか深い迷宮へと迷い込ませたところで、ラストに明らかにされる予想外の事実。観客を更なる迷宮へと誘うようなこの世界観は、好きな人には堪らないと思います。でも、僕はこういう思わせぶりで観客に真相を丸投げするような映画は少々苦手なので、本作も見事に嵌まらなかったです。でも、映像や作品の世界観などは雰囲気もあって良かったとは思うんですけどね。要は好みの問題。僕は本作のいい観客とはなれなかったようです。 [DVD(字幕)] 6点(2019-09-10 00:49:58) |
656. NERVE ナーヴ 世界で一番危険なゲーム
《ネタバレ》 ナーヴ(勇気)――。それはネット上で展開されるアンダーグラウンドな挑戦型リアル・ゲーム。登録したユーザーは、視聴者と挑戦者に分かれ、前者はそれぞれのプレイヤーに無理難題を吹っ掛け、後者はそれらのお題をクリアできればその難易度に見合った賞金を得られるのだ。見知らぬ他人とキス、高級デパートで高価な服を試着といった簡単なお題から挑戦は始まり、下着姿で街の中を歩く、警官の銃を盗むといった過激なものへと徐々にエスカレートしてゆく。貧しい母子家庭に育った女子高生ヴィーは、大学費用を稼ぐために挑戦者となることを決意するのだった。偶然知り合ったイアンという同じくナーヴの挑戦者と協力して資金を稼いでゆくヴィー。だが、どんどんと挑戦は過激さを増していき、やがて目隠しをしてバイクを猛スピードで運転するという犯罪すれすれのものに……。果たしてヴィーは無事にゲームをクリアし賞金をゲットすることは出来るのか?それとも失敗し命を落としてしまうのか?ネット上で盛り上がる超過激なゲーム「ナーヴ」、平凡なティーンエイジャーがその挑戦者となって次第に名声を得ていく姿をスピード感あふれる展開で見せるサスペンス・スリラー。現代的なテーマをあくまで軽くポップに描いたそんな本作、まあ冒頭から摑みはばっちりで、ライトな青春スリラーとしてはまあまあ良く出来ていたと思います。挑戦者としてゲームをクリアしてゆき、どんどんと人気を獲得してゆく主人公を演じたエマ・ロバーツも華があって大変グッド。彼女が下着姿で街を走るというサービスシーンなど、お洒落でスピード感もあって健康的お色気がぴちぴちで非常にナイスでした。詳しくは分かりませんが、きっとこの監督はもともと音楽畑出身なんじゃないですかね。それくらい全編を彩る映像表現がポップ&カラフルでなかなかにセンスがいい。ただ、内容が内容だけに出てくる登場人物がどいつもこいつも感情移入しにくいのが本作の評価の分かれ目。というか、主人公含めどいつもこいつもアホばっかりでさすがに後半ちょっと腹立ってきましたわ。それに拍車を掛けるのが、クライマックスのグダグダ具合。もう展開がご都合主義すぎてさすがに僕も我慢の限界が…。そして最後は誰もがハッピーになってめでたしめでたし…。お前ら、汗水たらしてちゃんと働けっつーの(笑)。5点! [DVD(字幕)] 5点(2019-09-09 22:20:42) |
657. 海底47m
《ネタバレ》 メキシコへとバカンスで訪れた若く美しい二人の姉妹。現地で知り合った男たちに誘われるまま、彼女たちは鮫が目の前で見られるというアクティビティを楽しむことに。船で沖合へとやって来た彼女たちは、その強固な檻の中に入り、凶悪な鮫がうじゃうじゃいるという海中へと沈めてもらうのだった。間近にまで迫って来る強大な鮫の姿に興奮を隠せない二人。だが、その直後にあり得ないような悲劇が二人を襲う。船の上で檻を支えていたワイヤーが折れ、彼女たちを閉じ込めていた檻が暗い海の底へと瞬く間に落ちてしまったのだ。辿り着いたのは、海底47メートル――。そこは凶悪な鮫が縦横無尽に暴れ回り、助けてくれる者は誰も居ない、海上の光すら届かない暗黒の世界だった。ボンベの酸素も残り僅か。果たして彼女たちは無事にまた日の光を見ることが出来るのか?海底に取り残された姉妹の究極の恐怖を、ワンアイデア・ワンシュチュエーションで描いたパニック・スリラー。まあいかにも低予算で撮られたであろうそんな本作、これがなかなか演出のキレが良いエンタメ映画の佳品に仕上がっていたと思います。事前の想像通り、お話の7、8割方は海の中で展開されるのですが、このブルーを基調とした映像がキレイ過ぎず汚過ぎないちょうどいい見やすさでした。カメラワークの専門的なことは分かりませんが、この映像技術はなかなかのものなんじゃないですかね。そんなリアルな海の中に取り残される姉妹も、姉は冷静沈着だが臆病、妹は行動的で活発だが少々無計画と各々のキャラがちゃんと立っているのもポイント高い。そしてもちろん最後までナイスな水着姿なのも大変グッドです(笑)。この手の作品に必ず必要な適度なグロ描写も抑制が効いていて良かったと思います。まあシュチュエーションがこれだけなんで、途中で若干ダレてしまうとこはあるものの僕は最後までそこそこ楽しめました。もっと鮫さんたちに活躍してもらってもよかったような気がしなくもないですが、そこは予算の関係なのかな。ただ、ラストの展開には僕は少々否の立場。努力の末、主人公たちは助かった→と思ったら実は主人公の幻覚でした。バッドエンドか→と思ったらやっぱり救出部隊がやってきて……ってちょっとクドいよ!!そこらへんがイマイチでしたけれど、真夏の熱帯夜にビールでも飲みながら観るには最適な映画でありました。 [DVD(字幕)] 6点(2019-09-05 20:15:21) |
658. タリーと私の秘密の時間
《ネタバレ》 二人の子供の母として日々子育てに追われる中年女性、マーロ。長女はそこまで手はかからないものの長男は情緒障害からか問題行動が多く、一時たりとも目が離せず気が休まる暇がない。そんな折、彼女に予期せぬ妊娠が発覚するのだった――。無事に次女が誕生したものの、肝心の夫はそこまで積極的に育児に関わろとせず、マーロのストレスは頂点に。このままでは身も心もパンクしてしまいかねない。仕方なく、彼女は兄夫婦の勧めで夜間だけ働きに来てくれるベビーシッターを雇うことを決意する。やって来たタリーと名乗る彼女は想定外に若く、最初は戸惑いを隠せないマーロだったが、その見た目と違うタリーの極め細やかな仕事ぶりに彼女は次第に心を許してゆく。子育てやそれまでの恋愛経験、そればかりか現代の夫との性生活にいたるまで何でも話せる関係へと発展してゆく二人。今にも底が抜けそうな橋の上を恐々と歩き続けるようなマーロの生活は、どんどんと潤いに満ちたものになるのだった。だが、彼女たちのそんな濃密な関係はやがてすぐに終わりを迎えることになって…。三人の子供の子育てに翻弄される母親と自由奔放な若いベビーシッター、彼女たちの友情と再生を温かな目線で見つめたヒューマン・ドラマ。監督はこの手のジャンルを得意とするジェイソン・ライトマン。本作の見どころはやはり、主演を務めた人気女優シャーリーズ・セロンのその真に迫った熱演ぶりでしょう。本作の撮影のために30キロも太っただけあって、終わりの見えない子育てに追い詰められた母親を実にリアルに演じていて、もう見ていて息苦しくさえありました。そんな彼女に訪れる心のオアシス。夜間だけのベビーシッターであるタリーがとても魅力的で、彼女がマーロの心の支えとなってゆくのが実に自然に丁寧に描かれていて好感度は高い。「カップケーキも作れない」と嘆くマーロのためにタリーがした行動は本当に微笑ましかったですね。だけど、急にタリーがウェイトレスの制服を着ておかしな行動を取る辺りから徐々に違和感が。「あれ、どういうこと?」と思っていたら、最後に驚きの種明かし。うーん、ちょっとこれはどうなんですかね。ホラーやサスペンスの分野ではよくあるオチなのですが、こういう地味なヒューマンドラマでこのネタは確かに新しいと言えば新しい。でも、さすがにちょっと無理があるような気が。僕は素直に受け入れることが出来ませんでした。でも、それは好みの問題。賛否は各々で判断してもらうとしても、現在、子育てに悩んでいる母親の皆様に是非観てもらいたい作品でありました。 [DVD(字幕)] 6点(2019-09-04 01:26:32) |
659. バトル・オブ・ザ・セクシーズ
《ネタバレ》 男女差別が公然とまかり通っていた時代に、それぞれの立場を代表して一大試合を決行した世界トップクラスのテニス選手の男女。自らの信念を守るために男と女の垣根を越えて戦った彼らの生き様を実話を基にして描いた社会派スポーツ・ドラマ。うーん、なんか個人的に合わない作品でしたね、これ。そう思ってこの監督の過去の作品を調べてみて納得。僕の大嫌いな『リトル・ミス・サンシャイン』の監督の作品だったのですね。この人のまるで道徳の教科書のような枠に嵌まった倫理観が僕は昔からどうにも苦手で、今回も全く受け入れられませんでした。「男女差別は止めましょう」「社会的弱者をいたわりましょう」「お互いの個性を尊重しましょう」みたいな、そんな当たり前の薄っぺらい価値基準をこうまで正々堂々と押し付けてくるこの人たちの作風が、本当に嫌い。これはもう好みの問題なので如何ともしがたい。 [DVD(字幕)] 4点(2019-09-02 14:24:43) |
660. マイノリティ・リポート
《ネタバレ》 スピルバーグ監督&トム・クルーズ主演、フィリップ・K・ディック原作による知的仕掛けに満ちたSFエンタメ作品。ずっと前に観た記憶のある本作なのですが、細部の記憶がすっかり抜け落ちてしまっていたので、今回改めて鑑賞してみました。確かに僕の大好物であるタイム・パラドックスネタで、しかも映像的にもかなり斬新な表現が多く(特にあの人間の網膜を調べて回る蜘蛛型ロボットはナイス造形!)、けっこう面白かった。なのですが、やはり惜しいのは脚本。途中まで、何故自分が殺人を犯してしまうと予知されたのかを巡るサスペンスがかなりよく出来ていたので、真相が明らかにされた後の蛇足感が凄い。あのままバッド・エンドでもいいので、主人公が結局殺人者になって終わる展開でも良かったのでは?でもまあそこまでの当時のCG技術の粋を極めたであろうアクションシーンはかなりの迫力だったし、トム・クルーズも若くて格好良いし、プルコギの神秘的な描写もエキゾチックで大変良いし、ピーター・ストーメアをはじめとする脇役陣もいい仕事をしていたし、単純にエンタメ映画として僕はなかなか楽しめました。 [DVD(字幕)] 7点(2019-09-01 01:15:46) |