661. 雨月物語
《ネタバレ》 約半世紀前にも関わらず、男達の業と欲望、それに忠実に生きた為に身を滅ぼす姿を描いた異色の作品。その魅力は兎に角、京マチ子の怪演につきます。その演技の妖艶なこと、妖艶なこと……。原作「蛇性の婬」の妖怪を見事に演じきっていたと思います。彼女が舞う姿は本当に美しいとしか言いようが無い。その他、溝口健二監督が描き出した美しい純日本の姿は本当に素晴らしく、外国人に日本映画を一本だけ薦めるとしたら本作を推しますね。唯一、惜しむらくは前半のパートがややダレることでしょうか。街に陶器を売りに出てきてから物語が急速に進むのですが、それまでやや退屈に感じてしまいました。 [映画館(邦画)] 9点(2010-11-23 21:52:23) |
662. クリフハンガー
《ネタバレ》 久々のテレビ放映を機に、10年ぶりに観直してみましたが、予想以上に面白い!山岳のプロフェッショナルが山の地形を駆使して、犯人グループと互角以上にやりあうという設定にまずお約束ながらヤラれました。主人公が一時の絶望状態から、犯人グループと闘う事でアイデンティティーを回復させるという流れも実にスムーズ。ジョン・リスゴー演じる悪役も十分に魅力的です(恋人である仲間でもアッサリ殺しちゃうってのは、ベタだけど矢張り良い)。そのお陰で、最後のヘリコプター側面での肉弾戦にもハラハラさせられてしまいました。何より、スタローンが思ったよりも格好良かったです。最近は筋肉俳優が流行りませんが、やっぱり男は筋肉がある方が格好良いと思うなあ。 山が舞台ということで、各キャラクターの位置関係が把握し辛かったのが、やや難点でしょうか。 [地上波(吹替)] 8点(2010-11-23 11:48:46)(良:1票) |
663. エイリアン
《ネタバレ》 本作について素晴らしい点を身も蓋もない言い方で言うと「気持ち悪い」の一言である。それはスプラッターホラー映画の様な、「内臓がデロデロ飛び出して気持ち悪い」とか、「血がビュービュー出て気持ち悪い」とかとは違う、謂わば「ヌメッとした気持ち悪さ」、そういう気持ち話悪さでこの映画は満ちている。それはゆっくりと開くエッグチェンバーであり、顔にへばりつくフェイスハガーであり、腹を突き破って奇声を上げるチェストバスターであり、体液を飛ばしながら暴れるアンドロイドのアッシュであり、言わずもがな成体となったエイリアンである。 その気持ち悪さは性行為の気持ち悪さに通じるものがあると思う。行為自体は勿論ロマンチックなものであるが、とどのつまり粘膜や内臓の触れ合いである。その感触がこの映画に気持ち悪さを感じる根本的な原因であるのだろう。 またエイリアンの造形が男性器のメタファーというのは有名な話だが、そう考えるとこの映画は男性器そのものに襲われるストーリーである。それまでもドラキュラや狼男など、男性性が恐怖の対象として捉えられることは良くあったが、男性性ではなく、もっと直接的に男性器そのものに襲われる恐怖を描いたのだとするとこれは画期的だろう。またエイリアンのデザインに携わったギーガーがとんでもなく良い仕事をしてしまった。だから今観ても矢張り気持ち悪いし、恐ろしい。 個人的にこの映画が好きなのは、映画が始まって暫く誰が中心のキャラクターなのか描かないことだ。結局はリプリーが主人公になる訳だが、彼女の顔は特にアップで映されることなく序盤はずっと進む。つまり誰が死ぬかわからない恐怖感が常にある。主人公がリプリーとなってからは、彼女の女性としての強さに惚れ惚れする。彼女は機械にも強く、船長に対しても毅然と自身の意見をぶつけ、論理的に行動する強い女性だ。これは常に泣いているもう一人の女性乗組員ランバートとの対比から明らかだろう。そんな彼女が男性器のメタファーに対し立ち向かい勝利するのだ。本作は優れたホラー映画であり、女性映画でもあるのだと思う。 [映画館(字幕)] 8点(2010-11-22 02:38:17) |
664. トイ・ストーリー3
《ネタバレ》 なんというか……、ピクサーは凄いとつくづく思いましたね。前二作で描かなかった、いつか訪れる別れをストレートに描いている時点で、ストーリーは完璧。いつもの様々な映画のパロディも絶好調(「BTTF」「ジュラシック・パーク」「スター・ウォーズ」「MI」「フルメタル・ジャケット」他にもあったっけ?)。メキシコのお隣、アメリカらしくバズがスペイン語を喋ったり、バービー人形がヒッピー服を見て異常にテンション上がってるかと思えば、ロッツィに対して自由主義を謳ったり、大人が見るとニヤッと出来るネタも本当にグッド。保育園からの脱出は、作戦会議を含めて上質なスパイ映画もしくは刑務所脱出モノを観ている気分になっていました。映画作りのイロハを知りつくしているとしか思えない内容には脱帽です。本当に面白かった! [DVD(吹替)] 8点(2010-11-22 02:15:19) |
665. 第三の男
個人的には、良く考え抜かれた脚本、演出、構成を楽しむ作品と思っています。流石に巨匠の業と言いましょうか、非常に丁寧に作られています。ハリーが闇の中から登場する名シーンと、終盤の地下水道での逃走劇は、当時のフィルム・ノワールを代表する映像美でしょう。なので、あーだこーだイチャモンは付けられませんが、全体を通すとやや平凡な気もします。 [地上波(字幕)] 7点(2010-11-21 13:13:43) |
666. 最高の人生の見つけ方(2007)
凄く丁寧な作りになっていた為、色々な点が逆に気になりました。個人的にエドワードが最初からイヤな奴に見えなかったのが原因かも知れません。いい歳した二人の爺さんのはしゃぎ振りや、軽口の言い合いは面白かったです。歳を取っても、あんな爺さんになりたいですね。 [地上波(邦画)] 6点(2010-11-14 23:59:03) |
667. ネバー・サレンダー 肉弾凶器
《ネタバレ》 肉弾弾弾弾、肉弾弾!!とにかく派手に爆発してりゃ良いって映画ですね。ロバート・パトリックもこんな映画に出演するまでになっちゃって可哀そう。しかし最近流行らない筋肉俳優のアクション映画が観れたのは素直にうれしかったです。たまにはこういう映画も良い。ただドン・デイヴィスの音楽はこのストーリーにハッキリ言って合って無いと思います。 [地上波(吹替)] 3点(2010-11-04 23:18:00) |
668. SP 野望篇
《ネタバレ》 元のドラマ版は未見です。ここ数カ月、ドラマの映画化作品は観ていなかったので、意外と映画としてマトモだったことに驚きました(近年のドラマの映画化は本当に酷い作品ばかりだったので)。この「SP 野望篇」からはドラマとは違う事をしてやろうという気持ちが伝わってきました。その為に至る所に近年流行ったハリウッド大作、特に「マトリックス リローデッド」「ジェイソンボーンシリーズ」にリスペクトを捧げたのであろうシーンも、何とかして真似ようと頑張っているんだろうなぁと微笑ましい気持ちで観る事が出来ました(トラックの荷台の上での格闘シーンとかカメラワークまで全部同じ)。次回に続く革命篇でも映画作りを頑張っている姿勢だけは何とか維持してほしいと思います。多分観ませんが。 [映画館(邦画)] 5点(2010-11-04 18:25:56) |
669. 怪談新耳袋 怪奇
監督の力量不足のせいか、主演の大根役者さんのせいか、全く面白くなかったです。ホラーとして怖くないのも問題です。鑑賞後に友人と如何に下手くそな映画か話し合う事が面白かったですが。 [映画館(邦画)] 2点(2010-11-04 18:17:21) |
670. アマデウス
どちらかと言えば、サリエリとモーツァルトの奥さんとの確執や、モーツァルトの借金苦を追加しているディレクターズカットをお勧めします。オリジナルも十分に面白いですが。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2010-11-04 17:42:41) |
671. タクシードライバー(1976)
《ネタバレ》 これほど退廃的に描かれたニューヨークを観た事がありませんでした。この映像を観れただけでも満足です。更に孤独を抱えるトラヴィスを演じるロバート・デニーロの演技力の凄いこと!(私を含める)他人と付き合う事にコンプレックスを抱え、しかし他人にも愛されたい人間をこれだけリアルに演じられるのは、ホントに素晴らしいと思います。もしかして、デニーロも元来そういう人なのかも。そして精神的に追い詰められたトラヴィスが引き起こすホテルでのカタストロフィ。その後ニューヨークに溶け込んでるトラヴィスを見るに、人間何かを成し遂げず、過去のトラヴィスの様に世界に不満を垂れ流している間は、本当の大人になれていないという事でしょうか。う~ん、難しい。 [DVD(字幕)] 8点(2010-11-03 18:47:48) |
672. ソウ4
《ネタバレ》 最早、秋の風物詩と化したソウシリーズの4作目。謎解き要素は更に翳を潜め、如何に残虐に、グロテスクに、登場人物を殺すかがポイントになった様ですね。万国ビックリ殺人ショーが好きな人には是非お勧め。私は苦手なので、本作まででソウシリーズは止めしておきます。 [映画館(字幕)] 2点(2010-11-02 02:29:52) |
673. ソウ3
《ネタバレ》 グロ路線に走り始めた三作目。別にそれ自体はいいのですが、上映時間が長すぎる気が……。こういう場面展開が少ない映画は短時間で纏めてナンボだと思いますが。序盤のマシューズ刑事のパートとかホントにいらない。 [映画館(字幕)] 4点(2010-11-02 02:25:39) |
674. ソウ2
《ネタバレ》 脚本にリー・ワネルが絡んでるお陰なのか、本作までは一応観客を真面目に驚かそうとしている話になっています。同時並行に見せかけておいて、実は時間軸がずれていたって展開は、ミステリではお約束ですが、これには全く気付かず(汗)。マンマと騙されてしまいました。 [映画館(字幕)] 7点(2010-11-02 02:23:17) |
675. サイレントヒル
《ネタバレ》 内容は現代版ウィッカーマン+クトゥルフ神話といった感じでしょうか。ゲームは未プレイなので映画としての評価しか出来ませんが、ゲームの映画化としては比較的まともな方だと思います。何より美術とCGへのこだわりが感じられます。そのためか結構楽しめましたし。しかし個々のキャラクター達の行動に説得力が余り無い気がしました。サイレントヒルの連中は頭がおかしいの一言で済ませられるのですが、主人公のローズやベネット巡査まで意味不明な判断を下すのはどういう事なのか。原作通りの構成なので仕方が無いのでしょうが、学校やホテルに行く理由くらいはキチンと説明してほしかったです。メモがあったから行くって、いくらなんでも納得し難い。あと最後、過去に起きたサイレントヒルの真相を、アリッサがゲロしだすのはダメでしょう。それでは何のためにローズの夫を配置したのか分からない。サイレントヒルを彷徨うローズ側と、サイレントヒルの過去を明らかにする夫側の二視点から描いてたんじゃ無かったの!?そうじゃなきゃ夫いらないじゃん。 [DVD(字幕)] 6点(2010-11-02 01:31:36)(良:1票) |
676. 蟹工船(1953)
原作に忠実に。最後まで救いも無く、慈悲も無く、使役される労働者の絶望と怒りを描いています。ただあの原作に忠実なので、やや物語の筋が面白く無いのが個人的にネックでした。音声が非常に悪いのも物語をキチンと把握し辛い事に繋がってしまっていてやや残念です。これは時代の問題なので仕方が無いですが。 [映画館(邦画)] 6点(2010-10-26 23:18:25) |
677. 七人の侍
《ネタバレ》 圧倒的な迫力で見せつけられる七人の侍を含む農民達と野武士との死闘。黒澤明お馴染みの影と光の美しいコントラスト、驟雨や豪雨の魅せ方、ダイナミズム溢れる男達の合戦、要所要所で挟まれる笑い。どれをとっても素晴らしい。娯楽時代劇として本当に完璧に仕上げられています。中でも、菊千代の「こいつは俺だ!俺もこのとおりだったんだ!」と彼の出生元が明らかになる所や最後の散り様、全てが終わった後の勝四郎の慟哭は観ていて本当に辛くなるのと同時に、なんかこう……良く分からんモノが突き上がって来ました。こういう時に文章力が無いのが悲しいですが、こういう良く分からんモノを感じる時に「映画好きで良かったなー」と思えるので文句なしの満点です。 [DVD(邦画)] 10点(2010-10-26 23:13:17) |
678. お熱いのがお好き
《ネタバレ》 マリリン・モンローは勿論素晴らしいのですが、それ以上にジャック・レモン演じるダフネのパートが良い。体カチコチでタンゴを踊るシーンには笑わせられました。序盤、終盤のスラップスティックな展開は極めて普通だったのが少し残念。 [地上波(字幕)] 6点(2010-10-26 13:18:56) |
679. 十三人の刺客(2010)
《ネタバレ》 この映画の最大の魅力は稲垣五郎の怪演に尽きます。しかし他の要素が物足りないという訳ではありません。寧ろ、現代に作られた本格時代劇としては突出した殺陣、リアリズムと言えると思います。数十分に及ぶクライマックスでの殺陣の凄まじさ(特に松方弘樹にの殺陣には惚れ惚れします)、切腹シーンに代表される残酷描写のリアリズム、ここ数年の内にこれだけ気合入れた時代劇があったでしょうか?それでもこの映画の印象は稲垣吾郎が持って行ってしまいます。少なくとも私は見終わった後、只々稲垣五郎演じる斉韶のおぞましさが心に深く染み付きました。忠臣の斬首された頭を蹴鞠のごとく蹴り飛ばしたり、女子供を的に弓技に興じたり、一言では表せない超気持ち悪いあの食事シーンだったり、とにかく稲垣五郎のやることなすこと人非人過ぎて、知らず知らずの内に笑ってしまいました。人って余りに気味の悪いものを見ると笑うものなんですね。普段、清潔感のあるキャラを演じることが多い稲垣五郎だからそここれ程怖い悪役足りえたのでしょうか。映画って面白いですね。 [映画館(邦画)] 8点(2010-10-25 01:26:24)(良:1票) |
680. ナイト&デイ
《ネタバレ》 HIRABAYASHIさんの言うとおり、7点以外考えられなかった映画でした。取り合えず銃でバカバカ撃ち合って、殴り合って、爆発しまくって、スカッとします。でも観終わっても何も残らない 笑。しかしラブコメディとアクションを合わせた映画としては凄く丁寧な作りになっていて、こういうお約束がつまった作品を最後まで飽きさせずに作ってくれるマンゴールド監督は相変わらず良いですね。やや(かなり?)旬を過ぎたキャメロン・ディアスとトム・クルーズも、個人的には好き。昔からヘンな顔を連発するキャメロンは、今でも十分魅力的です。トムは全編に渡る変人の演技が案外に様になっていて、ただのハンサム俳優じゃないんだと再確認。今回の映画がアメリカで当たれば、不人気脱出になったかもしれないのにね。残念! [映画館(字幕)] 7点(2010-10-17 22:38:02)(良:1票) |