701. モンド
《ネタバレ》 何処に居ても誰と居ても、自分が「よそ者(アウトサイダー・はみ出し者)」と感じてしまう種類の人間が居る。人間嫌いでも協調性が無い訳でもないにも関わらず、周囲に溶け込み、馴染む事が出来ない。彼もしくは彼女にとって「居心地の良さ」は居心地の悪いもので、むしろ「居心地の悪さ」に居心地の良さを感じてしまう。そういう人間が一般的な意味で社会の成功者(いわゆる“勝ち組”―何とも嫌な響きの言葉だ)になる事は難しい。本作の主人公モンドはそういう類の人間のファンタジックな具現化である。とある街にフラリとやって来てそのまま居着いてしまう、というシチュエイションは、あたかもミヒャエル・エンデの「モモ」の様だが、エンデの創造した、モモを温かく迎え入れる古き良き街に比べ、モンドがやって来る街はいかにも現代的だ(人々が雑踏を足早に歩いていくシーンで不協和音めいた音楽が流れるのが象徴的)。モンドに優しい態度で接するのは主に浮浪者や大道芸人、ベトナム生まれの老婦人など、マイノリティ(すなわち自己も“よそ者”である者達)だ。いわゆるマジョリティにとって、モンドの存在は目に入らないか、入ったとしても異質な、排除されるべき(もしくは“保護”の名目で収容されるべき)存在に映る。かくして、人々の優しさに触れながらも、いつも「ここではないどこか」を夢想していた少年モンドは街から消えてしまう。そして街の人々は初めて、自分が失ってしまったものに気付くのである。さしずめモンドは「時間どろぼう」が時間を盗み終えてしまった後、遅れてやって来てしまった「モモ」なのかもしれない。 8点(2004-02-19 16:26:45)(良:2票) |
702. ドッキリ・ボーイ/窓拭き大騒動
久々に「トーチソング・トリロジー」を見直そうと、行きつけのビデオ屋へ行った。コメディーの「た」行にて発見。これを「コメディー」に分類するビデオ屋のセンスに少々疑問を感じつつ、何気なく他の作品に目をやって・・・見つけてしまった。これを。こやつを。・・・誇張ではなく、30分は悩んだ・・・いかん、いかんぞ、ぐるぐる。君は、もう、いい大人じゃないか。「わが谷は緑なりき」を借りるつもりが「案山子男」を借りてしまった誰かさんと同じ轍を踏むのか。「他人のふり見て我がふり直せ」というではないか・・・・・・が、結局レンタルしてしまった。気の利いた替え歌が思い浮かばなかったので、とりあえず憂歌団の名曲「おそうじオバチャン」を口ずさみながら速攻帰宅→再生→約九十分後・・・・・・意外と、面白い。内容はほぼ題名から想像される通りではあるし、バカバカしい作品ではあるのだが、下手なコメディーなんぞよりよっぽど笑えるし、幸せな気分にさせてくれる。公開当時はいざ知らず、現在観ると、その性描写もいやらしいというより大らか、いやむしろ朗らかといってもいいかもしれない。何より可笑しいのが全編を通して流れる「♪パパパヤ~」な感じ(ニュアンスが伝わるだろうか?)の音楽。何という能天気さ。平和さ。そして、台詞の端々から感じられる、往年の映画に対するオマージュ(ホントかよ)。さすが、なるせたろうさんオススメの映画だけの事はあるのである。 6点(2004-02-17 17:04:04)(笑:1票) (良:1票) |
703. マニトの靴
うぷぷ、登録済みでしたか。「マカロニ・ウェスタンならぬソーセージ・ウェスタン!」という事でまあ、しょーもない映画ではあります。僕はイマイチ乗れなかったんですけど、好きな人は好きかも。それにしてもこれが本国ドイツで「ノッキン・オン・ザ・ヘブンスドア」等の観客動員記録を抜いたってのはちょっとオドロキ。動員記録って、あんましアテになりませんね。もっとも「踊る大捜査線~」を観たドイツ人もおんなじ事思ってるかもしんないから、まあ、アイコですな。 4点(2004-02-17 16:40:27) |
704. 愚か者の船
(林家こん平風に)アッシにゃあ、むつかしいコト(↓)はよく分かりませんが、面白かったすよ。群像劇って登場人物を把握するのが大変でちょっと苦手なんですけど、ストーリーが進行するに従って、各人物の背景が少しずつ明らかになる過程がとてもスリリングでやんした。しかも1933年という時代設定の中、冒頭に登場する小人症の男や、やや陰のある船医、反ユダヤ主義の好色なジャーナリスト(だっけ?)などなど、ここに書ききれない程の登場人物達が織り成す豊かな人間模様は、まるで深みのある極上ワインを味わうようでごんす(飲んだことないけど)。個人的には、海に落ちた犬を救おうとして命を落とした貧しい彫刻家のエピソードが好きっす。 8点(2004-02-15 22:10:09)(良:2票) |
705. チャーリーズ・エンジェル フルスロットル
うーん、決してこういうおバカ気味の映画は嫌いじゃないのですよ。小ネタの中には面白いのもあったし。ただなあ・・・アクションシーンはド派手な割にあんまりドキドキしなかったし、ストーリーもゴチャゴチャしていて無駄なシーンが多かったような・・・。デミ・ムーアも、何かわざとブサイクに撮ってるみたいだったし。唯一良かったのは何とも楽しげなエンドロールのNG集。あの楽しげな雰囲気が本編でも生かされていれば・・・。 5点(2004-02-11 18:34:28) |
706. Z
ギリシャでの実話を元にした作品で、ギリシャでは上映禁止だったそうです。公開当時の社会的意義は認めるけれど、純粋に映画としてはどうかな?と思う所もありました。どうも警察の人間の描き方が単調な気がして・・・。あの、証言しようとして頭を殴られた男の描かれ方は好きなんですけどね。でもやはりラストシーンは衝撃的。そうか、だから「Z」なのか・・・。 7点(2004-02-11 18:25:49) |
707. 道(1954)
「ラスト・サムライ」が殺戮を肯定する映画でなく、「仁義なき戦い」がヤクザを肯定する映画でなく、「ゴッドファーザー」がマフィアを肯定する映画でなく、「俺たちに明日はない」が強盗殺人を肯定する映画ではなく、「大丈夫日記」が重婚を肯定する映画でなく、「ルパン三世・カリオストロの城」が窃盗を肯定する映画でないというのと同じ意味で、本作は男の身勝手さや暴力を肯定する映画ではないと思います。後半で正気と狂気の間をさまようジェルミソーナの、正気に戻った時の表情の優しさ、美しさが忘れられない。 8点(2004-02-09 15:52:11)(笑:1票) |
708. 木更津キャッツアイ 日本シリーズ
実は【やましんの巻】さんのレビュー(及び点数)を拝見して観に行く気になりました。僕もTVはほとんど未見なのですが、「普通」を全力投球で生きる、というメッセージにはやはり心打たれるものがありました。しかし後半、「謎の島」に漂着するあたりからどうもついて行けなくなってきて・・・。この作品は「映画」というより、「映画の形を借りたイベント」の要素が大きいと思います。それはそれで構わないとは思うのですが、やはりTV版未見の人間に対しても、もうちょっと間口を広げてほしかったなーと思います・・・・・・とはいえ、作中で繰り出されるギャグに対して場内で一番デカい笑い声を立てていたのは、実は僕でした(笑)。いわゆる八十年代ネタが多かったと思うのですが、特に「木更津キャッツアイ」のオリジナルソングを聴いて「これ、ブルーハーツの『人にやさしく』にそっくりだぞ」と思った直後に「これはブルーハーツのパクリだ」と言う台詞が飛び出してきたのはかなりツボにはまってしまいました。よし、じゃあTV版も観てみーよお、と思いビデオ屋に行ったら全てレンタル中。えーん。 6点(2004-02-07 19:28:49) |
709. 馬鹿まるだし
《ネタバレ》 山田洋次の初期の代表作だそうな。正直、喜劇としてはちょっと物足りない所があります。音楽も、何と言うか「♪ほゎんほゎんほゎんほゎんほわわわわ~ん」って感じ(文字でこのニュアンスが伝わるだろうか?)で、何だかなあ、だし。ただ、主人公安五郎を演じるハナ肇(当時三十代)が眼光鋭く、黒光りしたワイルドさがあって意外にも良かったです。加えて安五郎が「ごしんぞさん(=御新造さん。他人の妻に対する敬称だと、後から辞書引いて分かった)」と呼び、密かに慕う夏子(桑野みゆき)が、すごく可憐で、息を呑む美しさ。それに、これは僕の特殊な感じ方だと思いますが、周りから「親分」とおだてられ、都合の良いように利用される安五郎の姿が、何だか「シザーハンズ」のエドワードとダブって思えてしまったのです。特に「ごしんぞさんが頼んだから」という理由でさらわれた娘を助けに行く姿は、まるでキムに頼まれたから泥棒をしたエドワードを彷彿とさせて・・・。また、特に秀逸なのがエンディング。(以下、特にネタばれ部分)事件から十数年後、安五郎の惨めな死の知らせが届くが、彼に命を助けられた娘は彼の名前を聞いても思い出すことが出来なかった・・・というラストは、ニヒリスティックでありながら切なく、衝撃的でありました。原作の方は読んでいないのであくまで憶測ですが、ここの部分は共同脚本の加藤泰によるものではないでしょうか。 6点(2004-02-06 19:23:48)(良:1票) |
710. ラスト サムライ
《ネタバレ》 皆さん仰られてる様に時代考証的なミス・ツッコみ所は満載。でもいいじゃん、別に。映画鑑賞は「間違い探し」じゃないんだし(そういう観方も否定はしないけど)、それを言えば「座頭市物語」だって非現実的だし、「七人の侍」だって史実的間違いはある。要は「何を描こうとしたか」を観客に届けることが出来れば、映画としては成功なんじゃないでしょうか?・・・・・・何ですって、それでも「ツッコみゴコロ」を抑えることが出来ないと仰る?そういう場合はこれを時代劇ではなく、日本に良く似た国を舞台にしたファンタジーだと思えばいいんです!以上(とは言え、流石にニンジャの登場と「総土下座」のシーンにはちょっとビックリしたけど)。さて、本題。本作の主役はやはり、トム・クルーズではなく、やはり渡辺謙であり、真田広之であり、又は役名すら与えられていない侍たちであり、もっと言えば「古き物に殉じて死んでいった者達の魂」なのだと思います。結局最後はトム・クルーズだけが生き残るので一見美味しい役のようだけれど、やはり印象に残るのは華々しく散っていった男たちの姿。トム・クルーズもその辺は承知していて、敢えて「一見美味しいけど実は引き立て役」を引き受けたのでは?と感じるのは深読みのしすぎでしょうか?刀だけでなく肉体全体を使った大迫力の殺陣のシーンも素晴らしかったけれど、あの、背筋をピンと伸ばして馬に乗る武士たちのシーン!涙なしには観られませんでした。これを良い刺激材料として、日本も面白い時代劇を沢山作ってほしいものです。 8点(2004-02-03 17:42:49)(良:5票) |
711. 風が踊る
なんとなく、倉本聰の雰囲気。嫌いじゃないです。 6点(2004-02-03 17:18:57) |
712. たそがれ清兵衛
山田洋次監督に対しては、かつて深夜に放送されていた彼の代表作をちょっとだけ観て「あんまし好きじゃないかも」という印象を持っていて、本作も敢えて手に取る気持ちがなかったのですが、今回のアカデミーノミネートの報に触れ、ついレンタルしてしまいました。最初の内は「時代考証を綿密にやったって事だけど言葉遣いとか、微妙にヘンだぞ?」とか「なんだかありがちなパターンかも。いかにも『古き良き日本人像』を演出してるのがアザトいぞう」とか「うーん、悪いけど真田広之以外はちょっとミスキャストかも」とか色々ツッコみながら観ていたのですが、後半清兵衛に求婚された朋江が他の縁談を受けてしまった事を告白するシーンあたりから一気に引き込まれてしまいました。ラストもちょっと泣けてしまったし。正直山田洋次に対しての先入観は完全に払拭されてはいないけど、真田広之の殺陣も含めた演技はすばらしかったと思います・・・・・・っていうか僕の場合、子役の女の子が可愛い作品は大体気に入ってしまうという弱点があるのですけどね。とりあえず「雨あがる」よりは良かったと思います。 8点(2004-02-03 17:04:26) |
713. 昭和残侠伝 唐獅子牡丹
今回は心ならずも一人の男を斬ってしまった健さん(花田秀次郎)が、残された妻と子供を陰ながら支えるお話。自分が夫(父親)の仇であることを言い出せない健さんの表情がカッコいいし、ヒロインを演じる当時二十代半ばの三田佳子もとても綺麗でビックリ(今までの彼女に対するイメージが「釈明記者会見をする人」「シベ超3に出てる人」だったので)!ただ、最後に池部良が助っ人を申し出るシーンが、前作「昭和残侠伝」とあまりにもソックリだったのがまるでセルフパロディーの様で、申し訳ないけどちょっと笑ってしまった。 6点(2004-02-03 16:38:58) |
714. 家光と彦左と一心太助
彦左は月形龍之介じゃなくて、ずっと悪役を演じていた進藤英太郎だし、それまでイイモン(伊豆守)だった山形勲は悪役だし、何よりお仲(太助の恋人・奥さん)は中原ひとみじゃないし、中村錦之助以外で同一人物キャストは何故か大家の源兵衛さんだけだし・・・と、若干文句を言いたくなるキャスティングではありますが、無茶苦茶面白い!身分の違うそっくりさんが入れ替わる、という話は色々ありますが、本作の中村錦之助が太助・家光の二役を見事に演じ分けています(まあメイクとかのせいもあるんだろうけど)。今回太助はどちらかというと三枚目的な役割であまり前に出てこないのですが、そのかわり太助に扮した家光の優雅な「太助っぷり」がすごく可笑しい。お供の柳生十兵衛(平幹次朗)のクールな困惑ぶり(だって、天下の次期将軍様が、あんなモノを、お口に・・・)も笑えます。また今回は「兄弟の情」テーマになっていて、太助の近所に住む幼い異母兄弟のエピソードなどもあり、まさに「涙あり、笑いあり」の娯楽作品!こういうのどかな作品もたまには良いものですよ。 8点(2004-02-03 16:30:51)(良:3票) |
715. 一心太助 男の中の男一匹
中村錦之助主演「一心太助」シリーズ三作目。今回は太助とお仲がいよいよ結婚!全体としてはちょっとエピソードを短い時間に詰め込みすぎという感じもあるのですが、無実の罪で今にも処刑されんとする魚河岸の取締役を間一髪で救出するクライマックスの描き方はとてもスピーディーで楽しいです。彦左は死んじゃうけど、ま、次作で生き返るしね(月形龍之介じゃないけど)。 7点(2004-02-03 16:15:21)(良:1票) |
716. 一心太助 天下の一大事
中村錦之助の「一心太助」シリーズ二作目。一作目は残念ながら未見なのですが(いきつけのビデオ屋は時代劇、特に中村錦之助主演作品が充実しているのだけれど、このシリーズは何故か一・五作目が欠けている)、いかにも東映時代劇ってな感じの楽しい作品でした。本作は太助と、太助が親分と慕う彦左との情愛が軸になっていて、特に中盤の、お互いを思いやりつつ気持ちがすれ違ってしまう所はジ~ンときます。クライマックスの、テンポ良くたたみかけるような展開の迫力はお見事!ところでこの作品、恋人を取られた男(幸吉)を太助が「よォ、絶望!(←太助が幸吉につけた仇名)クヨクヨすんなよお!」と励ますところがあるのですが、何だか「一寸位の絶望なんか笑い飛ばしちまいな!」という風に感じられました。こういう能天気さは、いいやね。 7点(2004-02-03 16:08:46)(良:1票) |
717. 昭和残侠伝
伝統的な任侠ヤクザ(旧勢力)対新興ヤクザという(ある意味「ラスト・サムライ」にも通じる)黄金パターンの作品ですね。健さんも良いけど、最後の出入りにスッと助太刀を申し出る、池部良演じる風間重吉がカッチョいいのです。ただ、生粋の東映ヤクザ映画ファンでない僕からすると、まとまりすぎてて引っかかる所がないような感じがしたのがちょびっと残念。 6点(2004-02-01 19:57:09) |
718. 地下鉄のザジ
お洒落なナンセンスコメディーですね。ちょっとマルクス兄弟のノリに似てるかな。舞台出身のマルクス兄弟が「体を張ったギャグ」だったのに対し、こっちは映画的手法(編集とか)を使って監督がイタズラを楽しんでる感じ。最初と最後の電車からの線路のシーン(と流れてる音楽)が好きです。 6点(2004-02-01 19:50:36)(良:1票) |
719. 48時間
面白くないことはないけど、ちょっと大味。公開当時は黒人と白人のコンビというのが新鮮だったのかな。 5点(2004-01-30 18:42:44) |
720. ダイ・ハード2
この手の映画をあんまり観ていない(=スレてない)ためか、割と素直に楽しめました。プロットの妙は前作よりアップしてるんじゃないでしょうか?あのどんでん返しは結構驚かされたし。ただ、娯楽作であんなに人を死なせちゃったり(見せしめに落とされた旅客機のことです)、いくら悪ーいテロリストだからって殺した後に歓喜のガッツポーズ→感動の抱擁→ハッピーなエンディングっていうのはちょっと違和感あり。あと、あのアナウンサー、馬鹿過ぎ。 8点(2004-01-28 21:52:25) |