761. 危険なプロット
《ネタバレ》 虚と実が交錯しまくる、息詰まるような心理戦の駆け引き。生徒の作文中で述べられている出来事が本当である保証は実はどこにもない、という奥の深さ。思考の奥底に錨が沈んでいくような独特の感覚があります。ただ、途中で、定番的な盛り上げやオチを主人公自ら否定してしまって、これはこの作品自体どこに着地するんだろう、と思っていたら、結局何か無難なところに落ち着いてしまいました。そこがちょっと不満。 [DVD(字幕)] 6点(2021-05-25 01:26:21) |
762. 洲崎パラダイス 赤信号
《ネタバレ》 筋だけみれば、まったくどうということのない話。つまり、「駄目カップルが巻き起こすあれこれ」の一言でまとめられてしまう話。しかしそれを、この作品は、絶妙な脚本と演出で、無限の広がりを持つ別世界にまで高めている。それは、各登場人物の出し入れのトリッキーなほどのタイミングであったり、そこから重ねられる心理の綾だったり、おかみさんや蕎麦屋の娘の的確な設定だったり(そしてもちろん終盤に登場する「彼」も!)、ということである。●途中で男がふらふら出ていく神田の電気店街は、その暑さと熱さがこちらにも伝わってきて、幻想的ですらある。その男の足取りは、オアシスを離れた旅人が砂漠を放浪するもののようにも見えてしまう。●そして実は、どこまでもカメラ内では脇にしかならない、決して焦点が当たらないあの子供2人が、いい味とアクセントを出しているのではないかと思います。 [DVD(邦画)] 7点(2021-05-24 00:50:05) |
763. ダブル・ミッション
《ネタバレ》 とにかく子供の上2人がクソ生意気で、苛々させられて。いや、途中からジャッキーを見直していって、最後は団結して活躍するのは分かってるんですけどね。敵軍のコメディな部分の方がむしろちょこちょこ笑えてしまったのが皮肉でした。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2021-05-23 00:20:51) |
764. シアトル猟奇殺人捜査
とりあえず猟奇的な殺人が起こって、とりあえず刑事が捜査をする・・・というまったくそれだけの内容。ということは、この邦題はあながち間違いではないか。いや、この警察、捜査らしい捜査は何もしてないに等しいから、やっぱりこの邦題は誤りか。というくらいしか考えるべき対象が見当たらないくらい、中身のない作品。 [DVD(字幕)] 1点(2021-05-21 00:38:45) |
765. オーシャンズ8
何よりも、こんな「お遊び100%」の作品にケイト・ブランシェットが出ていることが驚き。演技力の向上や修練という点では何の意味もない作品なはずで、一体何が彼女を動かしたんだろう・・・。もちろん彼女もプロなので、周りに合わせた芝居をしてあげてはいますが、さすがはケイトというのが半分、こんな彼女はあまり見たくなかったというのが半分。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2021-05-19 00:24:37) |
766. 武器なき斗い
《ネタバレ》 特に突出した手段をとるわけではなく、ひたすら地道に同じことを訴え続ける主人公の描写のし方は、この監督ならでは。これくらいの根性がなければ代議士などやるべきではない、という点においては、現在でも参考になります。●ただし、冒頭でいきなりロシア革命を讃美してみせたり、最後には「偉大なる中国の民衆の抵抗により」などと制作側の発想の源流を露呈してしまったりしている部分もあるので、その点は割り引いて鑑賞することが必要。●映画として見た場合は、やはり、「主人公はその治安維持法改正案のどこにどのように反対していたのか」が何も明らかにされていないのは、大きなマイナスと思います。それだったら、主人公が伝えようとしたことを伝えていることにならないし、むしろ制作側がそれを用いて階級闘争を自己目的化させているという疑いを招いてしまいます。●最後のパートカラー、スピルバーグが後にやっていることを、その30年以上前にやっていた作品があったんですねえ。 [DVD(邦画)] 6点(2021-05-17 00:20:19) |
767. ミュージックボックス
《ネタバレ》 何も大げさなことはしないのにどこまでもじわじわと怖さがにじみ出てくる描写は、さすがコスタ=ガヴラス。一つ一つのシーンでの演出のフォーカスが明確に絞られているため、登場人物が作品の枠の中で自然に生きている。検察の証人とやらはもっと突っ込みどころ満載のような気もするが(「目を見ることもできませんでした」という証人には、「だったら顔などはよく見なかったのでは?」くらいは突っ込んでほしい)、まああんなもんでしょ。どこまでも無表情鉄仮面を通す裁判長が、いい味を出して引き締めています。●なんだけどなんだけど、最後の5分で一気に崩れてしまいました。まず、たとえ事件が終わったとしても、依頼者に不利な証拠を弁護人が自ら外に(ましてや検事に)流出させるなんて、その時点で一発アウトです。それから、裁判は終わっているわけなので、いくら新証拠が出てきたとしても、一事不再理の鉄則によって、検察はもはや何もできないのでは?●というわけで、ラストはまったくダメですが、それまでは素晴らしかったのでこの点数。 [DVD(字幕)] 6点(2021-05-15 00:49:26) |
768. あゝ声なき友
《ネタバレ》 復員兵が戦友の遺書を配って歩く話なのだろうな、と思いながら見始めたら、最初の小川真由美との絡みが妙に長い。何だこれは、と思っていたら、それが本筋にすっと絡んでくるトリッキーさ。そして本題の遺書配達では、一番ぞくっとしたのは、倍賞千恵子や市原悦子のパートのように、「結局たどり着けない」部分をきちんと盛り込んでいること。そう、全部が全部たどり着けたら、それはおかしいというか、都合良すぎるよね。それから例えば、いざ配達できても、相手先からは感動とか涙とか感謝のリアクションは全然ない。このトーンの統一も、作品に気品と節度をもたらしています。一方で、最初は進駐軍放出鍋の街頭販売を一緒にやっていながらその後着実に出世していく財津一郎が、いい感じのアクセントになっています。●作品としてのキズは、輪島のパートで主人公が突然正義の味方になってしまう点かなあ。この部分だけ、急にテンションが高くなって浮いています。ここは、真実はあくまでも灰色の向こう側にしておいて、それでも長山藍子はすべてを飲み込んで江原に寄り添っていく、とかの方が心理の綾が出たのではないかと思います。 [DVD(邦画)] 7点(2021-05-12 00:34:33) |
769. ラスト・シューティスト
《ネタバレ》 これはもう「俳優としてのジョン・ウェイン」の壮大な葬式ですね。それだけのために作品が一本作れてしまうところに、彼の偉大さを感じます。作品としては、最後の三重対決から逆算したのがミエミエなのですが、こういうのはそれでいいのです。もっとも、ローレン・バコールは、あまりにも存在感が強烈すぎというか、この主人公とめぐり会っても会わなくても完全に自己完結して何も変わらなそうなので、ウェインとのやりとりにも叙情性が今ひとつ感じられないのですが・・・ [DVD(字幕)] 6点(2021-05-11 00:14:26) |
770. 48時間PART2/帰って来たふたり
前作に引き続いて垂れ込める陰鬱な雰囲気。と思っていたら、両方ともウォルター・ヒル作品だったことに今頃気づきました。ライダーズの容赦ない暴力ぶりはなかなかの敵キャラぶりだったのですが、敵側にサブキャラをいろいろ作りすぎて、つまりは考えすぎて失敗してしまった感じです。そんなことよりも、その強豪敵キャラをどうやって主人公2人組が追い詰めてやっつけるか、のところが重要だと思うのですが。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2021-05-10 00:53:46) |
771. 聖の青春
《ネタバレ》 単に将棋にネタとして乗っかっただけの内容だったら許さんぞと思いながら見始めたのですが、予想外に良い内容でした。村山も羽生もいちいちいろいろそっくりで楽しいんだけど、何といってもMVPはリリー・フランキーの森信雄!単に雰囲気が似ているというだけでなくて、すべてのシーンのすべての芝居が、「村山への師匠愛」というこの人の本質を体現しています。●それから、将棋を指す指の動きの一つ一つはもちろん、対局中の仕草、記録係や立会人の作法、控え室の光景や大盤解説の風景まで、きちんと丁寧に作っているのがよく分かるのです。それと、対局中って(終了後もですが)、当然ながら沈黙が支配する世界になるのですが、それを恐れずに(ヘタな台詞だの何だの入れずに)堂々と撮りきっているのも素晴らしい。●降級時の切れ負けの一局、相手のモデルは田中寅彦ですよね。ほんの一瞬の登場なのに、こういうところも丁寧です。●気になるキズは、クライマックスの対戦中、あの安食堂サシ飲みシーンを回想でそのまま出してしまったこと。ここはそんな回想なしの方がよかったと思うのですが、かりにやるとしても、対戦の風景に台詞だけを断片的にかぶせる、とかでしょ。そうでないと、2人が対局に集中していることにならないよ。●しかしいずれにしても、村山聖という早世の天才の名を後に残した作品としての功績は大きいと思います。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-05-09 00:10:53) |
772. ファンタスティック・プラネット
シンプルであるがゆえに衝撃的な作画、シュールさを突き詰めたかのような各シーンの進行、そして当たり前のようにすべてをひっくり返した世界観。とにかく、強烈なものを見てしまった、という以外の感想が出てこない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-05-08 00:23:36) |
773. 箱根風雲録
《ネタバレ》 このタイトルからは、どんなヒーローが活躍する剣劇系かと勝手に思っていたのですが、まったくそんなことはありません。箱根・芦ノ湖の水を静岡県の裾野まで引く箱根用水を完成した友野与右衛門の話です。しかも監督がこの人ですから、強烈に市民運動系の解釈描写がなされています。時代劇のはずなのに、例えばその2年前の「暴力の街」とものすごく共通する雰囲気を感じるのです。時の幕府からは、町民と農民で工事が完成してしまえばメンツを潰されるとばかりに、次々に妨害が入ります(これってどこまで史実ベースなんだろう・・・)。そうした中でも、前半は何か未整理でごちゃごちゃしていますが、中盤のクライマックス、主人公の妻の山田五十鈴姐の渾身の語りで場の雰囲気が一変してからは、ラストまで怒濤の勢いです。いざ穴が開通する際の掘削の手元の撮り方などは、まるで8年後のベッケル監督の「穴」のようです(!)。主人公が特別な活躍をするわけではなく、ひたすら地道に作業を積み重ねる描写に重きを置く作り方は、今日においても参考になります。 [DVD(邦画)] 6点(2021-05-07 01:01:43) |
774. 蟹工船(1953)
《ネタバレ》 原作が原作なので、ひたすら労働者が理不尽な扱いを受ける光景が延々と展開されるわけです。そこは覚悟の上なので良いのですが、肝心のラストが、原作とはむしろ正反対になってるなー。まあ、あれを映像化しようとしたら二度手間になるのは分かりますが、字幕だけでも何とかならなかったのか?でないと、多喜二がそもそも伝えようとした、労働運動の明日への希望という主題も消えてしまうでしょうに。●ただ、原作発表からまだ25年も経ってないという、まだその空気感が残っていたであろう時代に、それを封じ込めて作品化した歴史的意義は、やはり大きい。 [DVD(邦画)] 6点(2021-05-06 00:11:41) |
775. スペシャリスト(1969)
《ネタバレ》 導入部では、正統派の復讐譚の香りが漂ってきます。主人公もなかなか格好良い描写がされています。そこに次々とサブキャラが重なってきて、期待を高めさせます。ところが後半に至って、それらサブキャラが機能してこないことが判明して、徐々にグダグダになっていきます。それぞれの処理なんか、仕方ないから消していった感が満載ですし、少なくともあのアホ若者4人組は明白に要らなかったんじゃないでしょうか。制作側の気合は入っていたのでしょうが、その気合が変な方向に拡散していった感じでした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-05-05 00:59:24) |
776. 翔んだカップル オリジナル版
どうみてもB級ドタバタラブコメな素材なのに、徹頭徹尾真面目に映画的に撮ろうとしているものだから、違和感ありまくりなのです。登場人物がうじうじ考えすぎに見えてしまいます。青春の躍動感や暴走感といったものが感じられません。石原真理子のセーラー服優等生という今から考えたらびっくりな設定に3点。当時は16歳だったんですね。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2021-05-04 21:26:04) |
777. 不倫する肉体
《ネタバレ》 シングルマザーと妻帯者の男の不倫譚なのですが、前半は、2人が道ならぬ恋に落ちて、さて逢瀬しましょう、というところで延々と微妙な邪魔が入り続ける。よって、不倫どころか、そもそも会うことすらできないのですが、この辺は異様にリアリティがあります。というか、やりようによってはコメディにすらなってしまいます。それで後半はどうするのかと思っていたら、何か突然不条理描写方面に走っていきます。男はなぜかコピー機を購入してしまうし(これの最終的な使い方には唖然)、女はやたらと子供に当たり散らすようになる。最後の最後にやっとこさ待望の(見る側にとっても登場人物にとっても?)邦題のような場面になりますが、確かにここは、無駄なほど溜めに溜めた情念の炸裂のようなものを感じさせます。ですが、振り返ってみれば、その部分に向けた壮大なプロローグをひたすら見せられただけという気がしないでもない。 [DVD(字幕)] 5点(2021-05-01 01:08:02) |
778. ラ・ブーム
まあ何とも、とにかくソフィー・マルソーが若い。初々しい。ひたすらそれを鑑賞するための作品。ストーリーなどはあってなきがごとし。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2021-04-30 01:47:50) |
779. 我輩はカモである
いや、何か、これは凄い。凝縮された熱さ、数秒間のやりとりにネタを詰め込む馬鹿馬鹿しさ。そしてそれを支える制作側の迷いのなさ。アホな内容だからこそ、真剣に考えて作らなければならない、という理念を忠実に体現したものとして、現在まで普遍性を有する作品です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-04-24 00:22:56) |
780. 縛り首の木
《ネタバレ》 主人公は何かそれっぽい過去があるんだけど、作品中でまったく消化されていない。よって、特に前半は主人公が何がしたいのかさっぱり見えません。ヒロインの顔と目の治療のあたりから一応少しずつ盛り上がってきますが、それまでも長いし、治療の部分も妙に長い。そして、いきなり金鉱掘りに行ってしまうというよく分からない展開。変な帽子のオッサンも、結局はストーリー上いいように使われているだけ。で、とっちらかったまま最後まで行ってしまうのですが、最後はそれをさらにグシャグシャに散らかすという、どこまでも迷走しまくりな作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2021-04-23 00:56:42) |