61. さがす
「岬の兄妹」は観ていないのでこれが初片山慎三作品。やはりポン・ジュノに師事した人だけあってそれっぽさが感じられた。重いテーマながらそれだけが売りにはならず、映画として単純な面白さも重視しているようだった。ミステリアスで時にはシュール、暴力描写含めこの映画の持つパワーに飲み込まれていった。佐藤二朗も嵌まったなー。コメディが多い人だが、そのイメージを無理に覆そうというんではなく、むしろ適度に利用してこの空気感を作った。これは成功だと思う。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-11-05 17:06:25) |
62. 由宇子の天秤
真実を明らかにすることに使命感さえ感じていた主人公が、父の軽率な行動により真実を隠蔽する側に回ってしまう、というお話。人は正直でいたいと思う。しかし大切なものを失う恐怖を前にすると嘘をつき保身に走ってしまう。それが他者の命を危険に晒してでも…という点は共感も同情もしないが、ネット社会で激しさを増す私刑と、その中で生きて生きていかなければならない現代人を善悪は別にして描いた映画であり価値を見出すことができる。社会派映画というと堅苦しく、とっつきにくいイメージを持ってしまうがこれはストーリー展開が巧みで150分を長いと感じさせなかった。信念に基づいて力強く行動してきた由宇子に言わばブーメランが直撃したような状況で、脚本の出来すぎ感を指摘する声もあったようだが、自分にはとても面白かった。そして瀧内公美をはじめとした演者にも拍手を送りたい。由宇子と萌を後部座席から捉えた車内のシーンなんて今思い出しても本当に凄いと思う。河合優実の発見は大きかったなー。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2022-10-24 20:42:19)(良:1票) |
63. ヘルドッグス
<原作未読>雰囲気が洋画に近い。岡田准一、北村一輝、吉原光夫など濃い顔がぞろぞろ出てくるというのも理由の一つだが、元々は海外ロケを予定していたらしく、それに近い場所を探して撮ったためであろう。そして派手に銃をぶっ放すアクションシーンも邦画でなかなか見られない迫力だった。主演の岡田も相変わらず凄いアクションで魅せてくれるが、ヤクザ組織で登りつめていく兼高はファブルとは違いギラギラしていて渋かっこいい。酒向芳、大場泰正など原田組と言える面々にもだんだん愛着が湧いてくるもんだ。唯一、攻めた配役となった坂口健太郎は好青年、良い人感が抜けきらずサイコ役としては物足りない印象もあるが、かわいい弟分として見ればまあまあ。で、やっぱり影のMVPは中島亜梨沙か。ようやるわ。 [映画館(邦画)] 7点(2022-09-20 20:10:15) |
64. サマーフィルムにのって
《ネタバレ》 恐らく多くの映画監督がこれまでの自分の作品に対して、あそこはああすれば良かった的な悔いを残しているはずで、だからこそ主人公ハダシにはそんな思いをしてほしくなかったんだろうなー。彼女は強引なやり方で映画の結末を変える。タイムパラドックス回避のため形としては残せないが、未来へ帰る凛太郎に納得いくものを届けたいという強い思いだ。大好きな時代劇映画を作るため全力で駆け抜けた女子高生。主演・伊藤万理華の好演もあり、エネルギッシュかつ爽やかで楽しい映画に仕上がっている。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-09-13 20:12:53) |
65. ガメラ2 レギオン襲来
《ネタバレ》 前作より本格的になり、迫力だけでなく「エイリアン」等を彷彿とさせる怖さも増した。ついでに気持ち悪さもか。今回の敵はレギオンなるもの。かなり強く、ガメラも苦しい戦いを強いられるが、人間に味方と認められ自衛隊がガメラを援護する。最後の敬礼シーンはグッとくるものがあった。ワンシーンだけだが小林昭二の登場も泣かせるねえ。こういう粋な演出は大好きだ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-08-30 22:08:24) |
66. ガメラ 大怪獣空中決戦
昭和ガメラは未見。平成ガメラは子供の頃に観たような気もするけど、ほとんど覚えてないから今回が事実上初見。この時代だとまだ「特撮」感が満載で味があるもんだなと(意図的にそうした?)。ガメラは目がくりっとして愛らしいし、中山忍もキレイだし、なかなか楽しい映画であった。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2022-08-30 22:06:45) |
67. 1秒先の彼女
素敵な映画だった。まずは女性側ヤン・シャオチーの物語から始まる。モテなかった彼女にイケメン彼氏ができてウキウキ。バレンタインデーが失われることは冒頭で明かされているとはいえ、楽しい雰囲気で映画は進んでいく。そして中盤、男性側ウー・グアタイの物語にスイッチする。こちらは切ない話で、台湾の美しい風景が心に染みる。SFとしての面白さもあるし、ラブストーリーとしても見所があって充実の内容。日本でのリメイクも決まっているようだが、メイン二人の人選は難しいなー。女優の方は美人ではいけないし、かといって魅力無しでもいけない。Patty Leeはそこにバッチリ嵌まった人で、このような絶妙なキャスティングもポイント高し。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-08-29 22:14:34)(良:1票) |
68. キングダム2 遥かなる大地へ
よくぞここまでのものを撮った!と感心しきり。 自分は原作未読だからどの程度再現できているかには言及できないが、日本映画史に残るド迫力の映像だったのは間違いない。正直観る前は一抹の不安もあった。コロナの影響で大規模な中国ロケを断念したうえ、感染対策でエキストラの数も減らした、等の事情をなんとなくは知っていたためだ。しかし杞憂に過ぎなかった。広大な平原で万の軍勢がぶつかり合う… 映像技術の進化によってこのような表現が邦画でも可能になった。亡き黒澤監督にこの映画を見せたらきっと褒めてくれることだろう。そんな映像によって紡がれるのは信が初めて経験する本格的な戦争。数的不利の戦は1と共通だが、2は信が憧れる将軍の凄さ、かっこよさを感じられるのが良いなー。3も必ず映画館で、と思っております。 [映画館(邦画)] 9点(2022-07-15 18:00:53) |
69. そして、バトンは渡された
《ネタバレ》 <原作未読>血の繋がらない親子を描いた作品。森宮さんと呼ばれている壮介は典型的な良い人でほっこりさせられる。一方梨花はどうも掴みきれないところがある不思議な存在。しかし優子の親巡りで謎が解け、梨花の行動に合点がいくと物語はきれいにまとまり、じわりと感動。若干、涙を誘おうとする演出が強めな気はしたが、人の温かさが詰まった素敵な映画であった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-07-10 22:33:14) |
70. キネマの神様
松竹100周年記念作品、託されたのはもちろん『男はつらいよ』シリーズの山田洋次監督。新型コロナウイルスと志村けんの死… 大変な思いで完成させた映画なのは承知だけど、正直に言うと視聴途中でリタイアしかけて、思いとどまって、を何回か繰り返した。展開がだるいのと、山田監督は日本映画黄金期を懐古する作品を以前にも撮っているため、目新しさが殆ど無かった点を挙げておきたいと思う。個人的には菅田将暉と永野芽郁のラブストーリーをもっと見たかったかなと。良かった点としては永野芽郁が年取って宮本信子、野田洋次郎が年取って小林稔侍という違和感のない配役。急遽代役を引き受けた沢田研二もお疲れ様でございました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-07-04 23:31:43) |
71. うみべの女の子
《ネタバレ》 まず言うとすれば「主演の二人が頑張った」。こういうのを体当たりの演技って言うのかな。脱いでなんぼ、みたいな古い感覚は持ち合わせていないが、それでもやっぱり大したもんだと思う。もちろん二人とも現役中学生ではなく、女優さんの方は撮影時22歳ということだが幼さを強調して中学生っぽく見せていたから違和感はほとんどなかった。で、ストーリーに関してだけど、これは正直よく分からない。だけど絶望が一つの恋で180度変わったり、繊細で壊れやすくて、訳わかんなくて、そんな懐かしい気持ちを思い起こさせてくれるのが青春ものの醍醐味なのだろう。悪くはない。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2022-06-22 19:43:02) |
72. オールド
《ネタバレ》 掴みは良かった。謎めいていて少し怖さもありグイグイ引き込まれていく。次に謎解きパート、こちらも知的な人が多いためかサクサク進んで良い感じ。そしていよいよ脱出パートへ… このビーチからなんとか抜け出ようとするが、これが俗に言う無理ゲーだった。最後に一矢報いてはいるが、もう青春時代は戻らないことを思えばこの映画は主人公サイドの敗北と言っていいと思う。その点で後味はあまり良くない。随分年を取ったガイとプリスカの会話などじんとくる場面もあって、人生とか老いとかについて考えさせられるところは一応評価して6点で。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-15 23:42:55) |
73. ヤクザと家族 The Family
随分とヤクザが生きづらい世の中になってるんだなー。もちろんそれは一般社会から見れば喜ばしいことだが、足を洗った人にも容赦ない現代の残酷さを目の当たりにするとやはりつらかった…。ポスターにもある通り、物語は1999年~2019年、つまり20年間ということになるが、明らかにそれ以上の重みを感じるのは日本映画界が1960年代後半から70年代にかけてヤクザ映画に力を入れ、菅原文太、松方弘樹、渡哲也といったスターも生まれ、大衆の支持を得てきたところにあるんじゃなかろうか。ヤクザを肯定はしないが、映画を通して馴染みのあったあのエネルギッシュな時代はもう終わってしまったという寂しさが後半にドンとくる。そういう古き時代を生きたオヤジには渡の舎弟を自称した舘ひろし、これが嵌まった。敵対する組の豊原功補もやや古い型の芝居をしているのが良い感じ。主演の綾野剛は言うに及ばず、北村有起哉、磯村勇斗など脇を固める面々も好演しており質の高さを感じさせる。一つの時代の終焉を描いた力作だ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-05-31 20:08:23) |
74. プロミシング・ヤング・ウーマン
《ネタバレ》 思いっきりネタバレ。大坂の陣で奮戦し、日ノ本一の兵と称された真田幸村は武士として大戦で死ねることに喜びを感じていたと思われる。人にはふさわしい死に場所があるということだが、カサンドラの死に場所はあそこではなかったなぁ。結婚式で動画を流すだけで復讐としては十分なはずだが、自分の命を犠牲にしてアルを殺人犯にする。あんな奴を陥れるために命を捨てる価値はないよって思っちゃうけど、アカデミー賞はこれに対して脚本賞を送っているわけだから世の中分からない。でも確かに前者だけでは「平凡な映画」の烙印を押されたかもしれない… そう考えると映画脚本の塩梅は難しい。とりあえず退屈せず最後まで観ることができたから6点は付けておこうっと。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-23 19:33:34) |
75. シン・ウルトラマン
《ネタバレ》 正直、ウルトラマンはあまり知らなくて、一応予習のつもりでyoutubeに上がってる動画を何本かは見たけど、思い入れとかはない。そんな自分が観ても次から次へと繰り出されるオマージュ砲には胸が躍った。これ、世代ドンピシャの人が観たらたまらないんじゃないかな? 物語は初代の最初の方に当たるのだろう。序盤はウルトラマンの強さにワクワク、中盤は津田健次郎ボイスで怪しさ全開の外星人ザラブが魅力的であった。その後はメフィラスやゾフィーが絡んでやや難解な話となり、失速感無きにしも非ずだったが、ここでも最後は初代のあのやりとり、名言を殆どそのまま再現するという潔さで勝負に出た。参りました、面白かったです。 [映画館(邦画)] 7点(2022-05-13 20:06:15)(良:2票) |
76. ゴジラvsコング
《ネタバレ》 "映画館で観てなんぼ"系の作品なのは承知だけど、それにしても気持ちが乗らなかった。二大怪獣の共演だけどメインは明らかにコングの方。類人猿だけあってその表情には親しみが湧くが、戦いでは2連敗してモヤモヤ…。ゴジラはゴジラで爬虫類色が強くなって魅力半減。聞いたところによると東宝はゴジラ負けを決して許可しないらしく、そこへの当てつけかと勘ぐってしまった。2019年の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」はもっと面白かったと記憶しているが、監督が変わっちゃったんだね。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-05-08 21:35:43) |
77. 死刑にいたる病
<原作未読>惨い… 痛い… もはや直視できないほどだけど、長々続くわけではないから薄目作戦でなんとか乗り切った。ふらっと軽い気持ちで観に行っていい映画ではない。ある程度覚悟が必要だが、その覚悟さえ決まれば見応えはあるし、最後にゾクっとできて満足感は得られると思う。白石演出が冴えている。ただし榛村が心を掴んでいく、雅也が感化されていくみたいな描写はやや不十分で説得力はそこまでではなかったかなと。最後に演者だが、阿部サダヲは自分の中ではまだ"まーちゃん"こと田畑政治がだいぶ残っていて言わばハンデ付きみたいな状態でスタートしたけど終わってみれば「さすがだった」という感想に。これに相対する岡田健史はまだ変な色がついておらず、芝居で余計なことをしない感じがこの役には合っていた。メイン2人が期待に応えてくれたという点でもポイントは高い。 [映画館(邦画)] 7点(2022-05-06 21:30:46)(良:1票) |
78. 女子高生に殺されたい
<原作未読>タイトルの通り"女子高生に殺されたい"願望を持った男の物語。オートアサシノフィリア(自己暗殺性愛)というのは本当にあるようだから失礼になってはいけないが、いわゆる変態を描いた映画の一つに数えられるのは確かだ。単なるM男などでは理解できない領域だし、生徒側も多重人格、超能力(地震予知、動物の心が読める等)とてんこ盛り。監督の意図したところかどうかは分からないが最後の方は笑いも起きていた。それで良かったのかなぁ…。いや、恐らく良かったのだろう。そう割り切って観ればテンポはいいし、面白い映画と言えるかもしれない。そしてなんと言っても女子高生を演じた4人の女優がキラキラしていて眩しかった。これだけでも観た価値があったというもの。それぞれの飛躍を楽しみにしながら今後の映画界・ドラマ界に注目していきたい。 [映画館(邦画)] 6点(2022-04-19 19:43:08)(良:1票) |
79. キャラクター
序盤は硬派な印象を受けたけど、だんだんご都合主義が散見されるようになって、つっこみどころも増えてくる。取っ散らかった作り、無能が過ぎる警察、なげやりとも思える最終決戦。これはなかなか厳しい…。近年、大規模に公開される邦画は殆ど原作付きだ。"あの本の映画化ならひどいことにはならないだろう"という一定の安心感がなければ映画館に足を運ばせることは難しい。そんな時代に菅田将暉、小栗旬といったヒットメーカーを迎えて製作されたオリジナル作品「キャラクター」。興行的に成功したことはひとまずおめでたいが、千数百円出してこれを観た人は原作無し作品への不信を一層強めたのではないだろうか。そう思うと残念でならない。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2022-04-15 21:07:39) |
80. ファーザー
名優アンソニー・ホプキンスの演技を楽しもうと思って観始めたら意外にも(失礼か)ストーリーも面白くて大満足。老い、認知症がテーマながら観る者を一気に引き込むエンタメ性を持ち合わせている。「メメント」を思い出したが、主人公視点だからアンソニー(役名)と同じ混乱を体験できるようになっていて、その構成の巧さに舌を巻いた。そして圧巻のパフォーマンスを見せてくれたアンソニー・ホプキンス。83歳でのアカデミー賞受賞おめでとうございます。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-03-31 19:32:11) |