61. 水の中のナイフ
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 何ですか、この傑作は!水の上のロードムービー?めちゃくちゃスリリングで面白い!ポランスキーってこんな映画を撮る人だったの?当時の彼は弱冠29歳。これが長編デビュー作って非凡すぎる。しかも社会主義下のポーランドでこの自由で清新な作風!ポーランド映画というよりも仏ヌーベルバーグの文脈と言ったほうが正しいかも。 轢き殺す寸前まで意地を張り合った金持ちの男とヒッチハイカーの若者。その後もヨットの上で意地の張り合いが続き、手に火傷を負ったり、マストによじ登ったり、湖に飛び込んだり…。やがて妻の略奪と殺人もどきにまで発展する。 男が若者に語った「バカな意地っぱり船員」の逸話が、最後はブーメランのように男自身にも返ってくる。男どうしの些細な意地の張り合いと見栄の張り合いが無用な破滅をもたらしかねないという寓話。まあ、当時の東西冷戦だって似たようなものだったかもしれませんよね。 [インターネット(字幕)] 9点(2022-09-16 18:58:53) |
62. 黒いオルフェ
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 原作は、ギリシャ神話の設定をブラジルに置き代えたヴィニシウス・ヂ・モライスの戯曲。「平地に富裕層が暮らし、高地に貧民層が暮らす」というリオデジャネイロの都市構造や、その両層が入り乱れるサンバカーニバルの文化を世界に知らしめただけでなく、新しい「ボサノバ」という音楽の誕生も予告した映画。そして、国際的に評価された初の黒人映画なのかもしれません。 仏カンヌと米アカデミーをW受賞していて、(大傑作とは思わないけど)文化史的にはかなり重要な作品だと思います。60年代以降のブラジル文化の国際的なイメージは、よくもわるくもこの映画に縛られたはずです。また、ギリシャ神話を黒人の物語に変換するという発想は、ヴィニシウスのたんなる思つきかもしれませんが、これはマーティン・バナールの 『黒いアテナ』によって学説にまで発展したともいえる(古代ギリシャ人は肌の色が黒かったということ)。 映画の物語は、べつにギリシャ神話をなぞっているわけでもないけど、あきらかに生命賛歌の神話的な雰囲気をまとっていて、その神秘性が最大の魅力になっています。アントニオ・カルロス・ジョビンの音楽は、いわゆる劇伴ではなく、劇中世界の実音として演奏されており、そのことが神話のリアリズムを強めている。フランス産のブラジル映画でありながら、どことなくイタリアのネオリアリズモを思わせるところもある。 ただ、原作者のヴィニシウスも、99年のリメイク作品に関わったカルロス・ヂエギスやカエターノ・ヴェローゾも、本作のことを「元の戯曲とは別物」「ファヴェーラ(貧民街)の実態を描いてない」などと批判していました。つまり、それは「ヨーロッパ側から見たエキゾチックな黒人幻想でしかない」「黒人を社会的な主体としてでなく美的な対象にしているだけ」というポスコロ的な批判なのでしょう。逆にいえば、もともとのヴィニシウスの戯曲は、一種のプロレタリア芸術だったのかもしれません。 わたしは、この映画にちなんで「イザナギとオルペウス神話と小泉八雲の関係」に興味が湧いたのですが、それについては自分のブログにでも書きます。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-09-14 11:35:39) |
63. 大魔神逆襲
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 3作目は森一生。今回はお姫さまじゃなくて子供ですね。べつに子供向けに作ったわけでもないのだろうけど、だいぶ子供騙しの感があります。子供の言葉に大魔神が頷いたりと、あまりに身近な存在になりすぎてるのも拍子抜け。 まあ、山越えのスペクタクルはなかなか良かったし、雪山に現れる大魔神もカッコよかったし、丸太と大砲による攻撃も悪くはなかったけど、前2作に比べて脚本・演出・編集ともに、だいぶユルい。とくに筏を作って川を下るシークエンスはかなりお粗末でした。 [インターネット(邦画)] 6点(2022-08-29 16:53:27) |
64. 洲崎パラダイス 赤信号
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。すばらしい。他には見たことがないような非凡な傑作。 これは「入り口」の物語なのですね。赤線地帯の内側の様子は一コマも出てきません。何もかもが外側のギリギリの地点で繰り広げられる。そのことが、煮え切らない付かず離れずの男女の物語を何ともいえずスリリングにしています。 主人公の二人は突出して魅力的というわけでもないし、物語がそれほど面白いわけでもなく、原作を読んでみようという気にもならないけれど、やはり内と外の境界という絶妙な設定が効いていて、そこを出入りする人々や、その周辺で働く堅気の人々や、土砂を運ぶトラックや、水辺でボート漕ぎに興じる人々や、たわいもなく遊ぶ子供まで、すべてがスリリングに見えてしまって飽きません。 撮影所の技術に裏打ちされているとは思うけれど、まるでヌーベルバーグのようなしなやかさと軽さもあります。川島雄三の技ありの一本。 [インターネット(邦画)] 9点(2022-08-25 03:21:02)(良:1票) |
65. 花筐/HANAGATAMI
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 最晩年にこれだけ瑞々しいアマチュアリズムと実験精神を炸裂させる自由度はなかなかスゴイ。黒澤明のカラー作品のようでもあり、鈴木清順の大正シリーズのようでもあるけれど、書き割りっぽい合成映像を多用した画面やポリフォニックな音響はかなり演劇的であって、むしろ寺山修司の映画を思わせるところがある。 20才の矢作穂香から42才の長塚圭史までを「同年代の若者」とした大胆な試みにも違和感はなく、それぞれのキャラ立ちもしっかりしていて、そこには大林宣彦の俳優起用の巧さをあらためて感じます。音楽の使い方にも彼流の美学が徹底している。 戦争の予感のなかで死んでいく若者たちを描いていますが、反戦色が強いというよりも、むしろ破滅の美学のなかに陶酔しているように見える。そういう傾向も鈴木清順や寺山修司に近似しています。 [インターネット(邦画)] 8点(2022-08-22 02:04:21) |
66. 蒲田行進曲
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。面白くないわけではないけど、好きかと言われると好きではない。 兄貴やら親分やらへの忠誠のなかで生きることしかできない芸能ゴロツキの破滅型の人生を、つかこうへいの在日パワーと深作欣二のヤクザパワーを掛け合わせながら、ひたすら力業で押し切ってる感じで、最終的には安っぽいメロドラマの域を出ない。 つかこうへいの戯曲が、当初の予定とはちがって、松竹ではなく東映の話になってしまったらしいのだけど、なぜ『銀ちゃんのこと』というタイトルのまま東映で映画化しなかったのかが理解できない。まあ、そんなタイトルじゃヒットしなかったのかもしれないけれど。 和田誠のデザインしたタイトルをバックに「蒲田行進曲」を歌ってみたものの、実際には松竹蒲田とは何の関係もないし、桑田佳祐のお洒落な歌を挿入してみたものの、実際には湘南とは何の関係もないし、どこまでいっても東映京都の芸能ゴロの話だというところに不可解なモヤモヤが残ってしまう。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-08-18 21:20:34) |
67. 大魔神
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。素晴らしい!美しい傑作。 大映時代劇の様式的なドラマの文体こそが、特撮部分のリアリティを裏支えしています。「ゴジラ」や「ウルトラマン」のようなサイエンスフィクションの場合、特撮のスペクタクル部分に比べて、ドラマ部分が説明的すぎて弱いのが常だし、その結果としてリアリティを損ねがちだけど、そういう意味では本作の神話的なリアリティのほうが優っている。怪物の15尺(4.5メートル)という大きさにも臨場感と緊迫感があり、巨大すぎてかえってドラマ世界から乖離してリアリティを損ねたりはしていない。鉄鎖を用いて怪物の捕縛を仕掛けたり、枯れ木を乗せた荷車を燃やして火攻めにする戦法なども、よく考証されていると思う。 結末はやや呆気なく、欲をいえば城下の平穏な暮らしが再建されるまでを描いてほしかったけれど、84分であっさり語り終える簡潔な筆致こそが叙事詩的なリアリティにふさわしいのかもしれません。市川雷蔵の「眠狂四郎」や勝新太郎の「座頭市」のような時代劇美学と比べられることもあるでしょうが、わたしはむしろ溝口健二の「雨月物語」や「近松物語」に匹敵するような叙事詩的な説得力を感じました。 [インターネット(邦画)] 9点(2022-08-12 00:11:34)(良:1票) |
68. パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。すこぶる痛快で面白かった。ただし、パガニーニの伝記的な半生を知る目的で観ると、ちょっとアテがはずれますが。 これはあくまでイギリス人の監督がロンドンを舞台にして、英国のロックスターに類型的な破滅型の人生を19世紀のイタリアの音楽家に投影してケン・ラッセルに捧げた、きわめて現代的かつ英国的な英語の映画です(製作はドイツで主演もドイツ人だけど)。主人公に群がる女の子たちにもロック全盛時代のグルーピーの姿が投影されていると思う。 たしかに史実からエピソードを引いたところはあるでしょうが、ここに描かれている話はまったくの創作というべきだし、19世紀のイタリアらしい雰囲気はどこにも感じられないし、パガニーニの音楽に特有の異教的な感覚にも乏しい。 とはいえ、敏腕マネージャーが無名の演奏家の才能を引き出しつつ、社会規範を逆撫でするような悪魔的演出と炎上商法によって全欧的スターにまで育てたのだという解釈は、いわゆる「パガニーニ伝説」を理解する上で合点が行くところもあるし、第4コンチェルトの二楽章を扇情的なテーマ曲に仕立てたアイディアもなかなかだと思います。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-08-03 19:09:05) |
69. ガメラ3 邪神<イリス>覚醒
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 「柳星張」と呼ばれる南の「朱雀(イリス)」を北の「玄武(ガメラ)」が封じているという風水的な設定。それを代々守ってきた旧家が「守部」だったりするのは面白い。イリスの味方をする少女の姓が「比良坂」で、ガメラの味方をする少女の姓が「草薙」ってのは、さしずめ「出雲と大和」(ヤマタノオロチとスサノオ)の関係ですね。 しかし、手塚とおるの台詞によれば「ガメラもイリスも古代文明が作り出した生物兵器」とのことで…。どうりでガメラはUFOみたいに空を飛ぶと思ったし、イリスは造詣がロボットみたいで、ヱヴァンゲリヲンよろしくコックピットに少女を格納したりするし…。つまり、これは怪獣映画というよりもロボット映画なのですね。そういう意味では『シンゴジラ』より『ヱヴァンゲリヲン』の原型といったほうが正しいかもしれません。特撮も、やはり遠景の美しさに対して、近景で見る怪獣の造形があまりにメカニカルで嘘っぽい。唯一、渋谷駅構内でガメラとイリスが倒れ込むクローズアップのショットだけはリアリティがありました。 [インターネット(邦画)] 6点(2022-07-02 01:18:39) |
70. 時をかける少女(2006)
《ネタバレ》 さぞかし現代的にアップデートされてるかと思いきや、そういうわけでもなく、むしろSF的な要素を排して素朴な青春ドラマに回帰したという印象。かけがえのない出会いや人生への愛惜というテーマは基本的に変わっていない。それだけ原作の物語が普遍的だという証なのだろうし、はじめてこの物語に触れる世代にはこの内容でも十分なのでしょう。ただ、年寄り側の立場からいえば、もうすこし驚かせてほしかったというのが正直な感想です。 ひたすらタイムリープを繰り返すだけの展開はやや退屈で、やはり叔母の芳山和子の過去や、彼女が修復していた絵画の謎に踏み込む展開が見たかった。「もう一人の男子」(本作では津田功介)の役割も十分に効果的とは言いがたい。作画についても、物語についても、可もなく不可もなしといった出来。 [地上波(邦画)] 6点(2022-07-02 00:46:06) |
71. 話の話
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。「25日・最初の日」「ケルジェネツの戦い」「キツネとウサギ」「アオサギとツル」「霧の中のハリネズミ」「話の話」の6本。とくに最後に2本には、まるで自分自身の体験だったかのような強烈な既視感。不安や焦りをともなったノスタルジー。もしかしたら昔どこかで観たことがあるのかしらと疑ってしまう。 「話の話」は、一見すると脈絡のないイメージの連なりのようでありながら、何度か見ていると内在している物語が見えてくる。赤ん坊をあやす子守歌。端っこに寝ていたら子供のオオカミが脇腹をつかまえて森へ連れて行ってしまう。そんな子供の狼がいつしか主人公になって、子供の視点から大人たちの世界を巡っていく。 大きな牛と縄跳びをした時間が終わるように、木の上でカラスと林檎を食べた時間も終わってしまう。旅人が海辺を去り、漁師の父が海へ出ていったように、母とベンチで話し込んだ父も見知らぬ場所へ行ってしまう。エンジンを噴き上げる自動車。木の葉を吹き飛ばす列車。戦争で引き裂かれる男女。 現在のアパートに残っているのは、足踏みミシンのブランコと、焼け焦げた木の枯葉と、茎の生えたジャガイモ。風に巻き上げられてくるまったテーブルクロスのように、テーブルから盗み出した詩人の譜面もくるまって赤ん坊に変わる。海岸で詩人と猫が書いていたのが、ほかならぬ自分の子守歌だったのかもしれない。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-07-01 17:26:11) |
72. 殺人遊戯
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。オシャレでユーモアもあって、カッコよくて、安定的に面白い。大野雄二の音楽も相俟って、まるで実写版のルパン三世のようにも見えます。 ただし「蘇える金狼」もそうだったのだけど、なぜ最後に女を殺すんでしょうね。この結末がいただけない。脚本の必然性の有無にかかわらず嫌悪感をもよおします。そのせいで最後のおちゃらけたシーンも後味が悪く見える。村川透×松田優作のコンビによる作品は国際的な評価に値すると思うけれど、こうした「女の扱い」はその足枷になるだろうと推察します。 [インターネット(邦画)] 6点(2022-06-13 21:56:25) |
73. 殺人の追憶
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。非常に嫌な内容だけれど、映画の力量は認めざるをえない。思えば『パラサイト』でも、地下世界の不気味な広がりを観客に想像させたまま終わっていましたが、本作でも、草むらに潜みつづける犯人を想像させたまま未解決に終わっている。 最後に残されるのは強烈な不快感。それは犯罪そのものへの不快感でもあり、デタラメな捜査への不快感でもあり、この物語が悪の所在を示さないことへの不快感でもある。それらが綯交ぜになったまま、観客は何ひとつ解決しない不快感のなかに叩き落とされます。 フィクションのなかで物事が解決してしまう爽快感ではなく、むしろ何ひとつ解決しないリアリティのなかへ突き落とすことが、この非凡な監督の真の狙いなのだと思い知らされました。高評価にふさわしいとは思うものの、あまりにも不快なので7点でご容赦を。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-06-10 02:38:22)(良:1票) |
74. かくも長き不在
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。パルムドール受賞作とのことですが、正直言って面白くありませんでした。アンリ・コルピは編集の専門でもあるというのだけど、意図のよく分からない唐突なカットやカット繋ぎが散見され、はたして映画表現として優れているのかどうか疑問に感じます。抑制された叙述の中で何が描かれるか期待したものの、総じていえば、記憶喪失をネタにした通俗的なメロドラマという印象しか残りません。わたしは成瀬巳喜男が苦手なのですが、自分の価値観と国際的な評価が乖離する点でも、成瀬の映画と似たものを感じます。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-06-09 00:36:20) |
75. サムライ(1967)
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 雰囲気はやたらとカッコいいのですが、はたして脚本が緻密といえるのかどうか。Wikipediaに詳しいストーリーが書いてあって、それを読んだら納得できた部分もあるけど、映画を観ただけではそこまで読み切れません。のみならず、たとえば「いくらアリバイが完璧だとしても、あっさり警察に確保されるってどうなの?」「黒人ピアニストの偽証を疑うなら、警察はまず彼女を捜査すべきでは?」「いくら車だけ乗り換えて地下鉄の構内で尾行を巻いても、同じ場所に出入りしてたら意味ないでしょ」「四方八方から銃を撃ったら周囲の客に流れ弾が当たるのでは?」などのツッコミどころは払拭されません。 主人公は、なにやら鳥と心が通じ合ってる設定のようですが、はげしく鳴きながらバタバタしてる鳥を見ても、たんに「カゴから出たがってるのかなあ」と思うだけでした。手乗りインコだったら、もうちょっと説得力があったかも。 新渡戸稲造の本から一部分だけ引用すると、このように「サムライ=寡黙・無頼な生き方・死を潔く受け入れるダンディズム」みたいな解釈になるのでしょうけれど、これは忠義の武士というより時代劇に出てくる浪人や渡世人のイメージに近い。まあ、新渡戸の理念そのものが彼自身の「創作」だろうと思うので、フランス人の解釈を笑ったところで仕方のないことだけど。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-06-03 08:22:36) |
76. 暗殺のオペラ
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 非凡でした。これまで観たものはイタリア国外を舞台にした作品が多かったので、あまりベルトルッチに「イタリアらしさ」を感じていませんでしたが、本作では存分にイタリアらしさを味わえました。奇天烈なユーモアとバイタリティ。支離滅裂なエロスの匂い。そこはかとない暴力性。なぜかドキュメンタリーのようになる会話。そして画面が美しいので、いちいちそれに目を奪われて困ってしまいます。 密告・裏切り・陰謀が渦巻き、誰もが加害者にならざるをえないファシズム時代の小さな町の過去へ沈潜していく内容ですが、殺人手法はヒッチコックの「知りすぎていた男」みたいでした。まるで日本の夏のように、蚊取線香が出てきたり、やたらとスイカを食べたりするところも興味深かった。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-05-25 05:50:23) |
77. 小さい魔女とワルプルギスの夜
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。たぶん原作のメッセージは「大人たちの善悪の基準に惑わされず、自らの良心に従いなさい」ということなのだろうけど、この映画を観るかぎり、異教の象徴である汚い魔女を退治する勧善懲悪物語のように感じられてしまう。ファンタジースペクタクルとして技術的にはよく出来ているけれど、内容的にいってミヒャエル・エンデのような深みに乏しいし、ドイツらしさもとくには感じられない。音楽がスメタナ風なのは何故なんでしょうか? [インターネット(字幕)] 6点(2022-05-20 06:06:48) |
78. この子の七つのお祝いに
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。 前半は、増村保造らしい明快で力強い演出が好感触だったけど、真相が明らかになっていくほど話のつまらなさに興味が減退しました。犯罪の背景になっているエピソードは、たんに「混み入った事情」という程度のもので、とりたてて心に訴える内容でもなく、社会的なメッセージ性があるわけでもない。本気で近現代史をテーマにするならば、大陸からの引き揚げ者の苦難にもっと焦点を当てるべきでしょう。お人形やら童謡やらの取ってつけたようなホラー演出は、陳腐にすぎて失笑しか出てこない。わざわざ映画化するほどの題材とは思えません。 自分でこの仕事を引き受けて脚本も書いたのだから仕方ないけれど、これが増村保造の遺作であり、なおかつ代表作のように思われているとしたら哀れです。映画作家というよりも、たんなる職業監督としての仕事でしかないように思う。やはり当時は、市川崑や増村保造のような名匠でさえ、角川の凡作のために従事しなければならなかったのでしょうか? [インターネット(邦画)] 6点(2022-05-19 18:51:30) |
79. テリー・ギリアムのドン・キホーテ
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。現代的に解釈した「ドン・キホーテ」の設定を借りて、さながらフェリーニの「8 1/2」みたいなことをやろうとしたんでしょうか? 映画人としての贖罪と同時に、性懲りもない映画愛・映画賛歌をテーマにしているようです。 壮大に突き抜けたホラ話に期待したものの、じつは意外に真面目な内容だったので、やや窮屈に感じないでもありません。凝りに凝った緻密な作品なのは分かるけど、いまひとつ面白みに欠けるのは、きっとテリー・ギリアムのなかに本質的な意味での「ラテンの血」が流れていないからでしょうね。ラテンの作家が醸し出す「滑稽と哀愁」みたいなものが英国人のテリー・ギリアムからは滲み出てこないのです。やはり英国人の真骨頂は達観したブラックユーモアであって、いくらスペイン人の真似をしようと思っても超えられない壁があるのだと感じました。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-05-14 02:41:02) |
80. ボヴァリー夫人(2014)
《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。美しい画面でつづったダイジェスト映像という印象です。原作のあらすじを知るには好都合ですが、物語に没入させるほどの細部の魅力には乏しい。人生の「退屈」というのが大きなテーマなのだけど、この映画自体が「退屈」から逃れられていないように見える。妻を主人公にしていますが、やはり夫の視点を軸にしたほうが物語としては面白くなるような気もします。以前、オリヴェイラの「アブラハム渓谷」も観ましたが、あらためて他の映画と見比べてみたいし、原作にも触れてみたくなりました。音楽はミニマル風で、マイケルナイマンにも似ているけれど、わたしはこちらのほうが好みです。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-05-13 14:33:17) |