61. 座頭市物語
名匠三隅研次の技。敵役の天知茂の渋さ。そして何より、勝新太郎の謙虚な演技(勝新なのに!)。あ、忘れてはならないのは伊福部昭の荘重な音楽。ひたすら至芸を楽しむのみ! [CS・衛星(邦画)] 9点(2007-06-17 14:54:48) |
62. 座頭市(2003)
《ネタバレ》 最初に見たのは、アイルランドの映画館でした。いや、こう書くとなんか自慢話みたいな感じがしますが、普通に観光旅行で時間潰しに立ち寄っただけの話です。館内は意外と閑散としていました。まあ、こんなものなんだろうな、って感じもしました。私を日本人と見るや、チャンバラが好きで黒澤が好きだとかいうスペインから来たという役者志望の男がいろいろ話し掛けてきて、ちょっとうざったかったです。で、何がいいたいのかっていうと、そのチャンバラ好きを自称する彼が、映画が始まると、やたらと悲鳴に近い叫び声をあげてたんですね。いや、その反応の素直さに、かえって感動しました。確かに、これは、今までのどんなチャンバラ映画とも異なるものでしょう。もっといえば、座頭市という名前すらふさわしいのかどうかとすら思います。勝新太郎が演じ続け、築き上げていったキャラクターとはあまりに違いすぎる。しかし、北野がこの映画でやっている、自分自身の本来の路線と娯楽性とで、どうやったらおりあいがつけられるのかという実験は、成功しているのは間違いないです。 [地上波(邦画)] 8点(2007-06-05 23:15:49) |
63. その男、凶暴につき
北野映画は、デビュー作から完成されていたのだと実感。とにかくすべてにおいて、すでに完成されていたのだな。後の作品は、すべてこの映画のヴァリエーションとすらいえるかもしれない。いや、もちろん、これは、誉め言葉。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-06-05 23:03:56) |
64. ソナチネ(1993)
《ネタバレ》 私もこの映画が北野映画の中で一番の傑作だと思う。映像として、演技として、そして、あけっぴろげなまでの空虚さにおいて。ピストルが響くたびにドキっとしてしまうのだけど、そのあとにとにかく哀しくなる。とにかく圧倒された。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2007-06-05 22:59:49) |
65. 菊次郎の夏
《ネタバレ》 最初は、「これは外れだな」と、正直思った。たけしの映画は好きだけど、これは駄目かと。音楽よすぎて(すでに映画を離れて一人歩きしてるほどだし)映像として音楽に負けてるなと。ところが、(かなり多くの人が不快に感じてらっしゃる)後半に突入するや、一気に引きずり込まれてしまった。母を探すという目的がなくなったときに、残ったのは、ひたすら夏を消費すること。大人も子供も、同じレベルで。ああ、こういう夏、いいなあ、と心から思えてしまった。(私も夏が嫌いなんで。)エンディングが冒頭につながっているが、冒頭であざといなと思った映像なのに、そのリフレインがこんなに心地よく写るなんて。ある意味奇跡的な映画。きっと私は、何度もこの映画を見てしまうんだろうなあ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-06-05 22:51:56)(良:4票) |
66. 眠狂四郎 無頼剣
《ネタバレ》 月だ。この映画のポイントは。最初は三日月の元での橋の上での殺陣。そして、すこし満月に近づいた、最後の屋根の上での天池茂との対決場面。月影の円月殺法。三隅研次の映像美にひたすら酔うのみだ。ああ、この快楽! [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-06-02 22:36:16) |
67. 眠狂四郎 炎情剣
江戸の町の風俗描写的な場面から小道具の使い方の一つ一つまで、ひたすら感心してしまいました。もう何度目かの鑑賞だけど、でも、見るたびに発見がある。一般に、三隅の狂四郎って言うと、『無頼剣』の屋上での天池茂との対決の場面で語られることが多いけど、この映画の冬枯れの寺の境内でのチャンチャンバラバラも、実に美しいこと。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-06-02 22:32:31) |
68. ひかりごけ
《ネタバレ》 正直、ここまで作りこまれた重々しさは、辛い。きつい。画面も暗い。最初に人肉を食らう場面は、こちらが空腹だったせいもあって、ほんとに気持ち悪くなってしまったよ(苦笑)。 でも、最後の裁判の場面は圧巻。この船長の自己主張、わかるなあ。 この映画は、確かに三国錬太郎の映画です。↓のレビュワーさんに同感です。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2007-06-02 22:28:11) |
69. 42丁目のワーニャ
《ネタバレ》 チェーホフっていうのは難しい劇作家だと思う。全世界的に見て、シェイクスピアについで上演回数が多いくせに、滅多に成功した舞台に出会えない。でも、みんなチェーホフを上演したがる。そういう作家だ。思いをうちに抱えていながら、その思いを人に伝えることも出来ず、また、それゆえに、他の人の思いを理解することも出来ない。そういうディスコミュニケーションの世界。そりゃ、表現するのは難しいよ。 で、この映画は、チェーホフに正当に挑んで、成功している。アメリカ人なのに、いや、アメリカ人だからこそ、成功したのか。とにかく俳優たちがうまい。ホント、感心するほど、うまい。でも、特筆すべきは、ジュリアン・ムーアだと思う。エレーナという役どころに必要なのは、こういう美しさだ。存在するだけで人をひきつける。その説得力が大切なんだ。(モスクワでの初演ではチェーホフ夫人が演じたというが、これはかなり違うと思う。)その美しい彼女がひたすらわが身の不幸をかこつ。だからこそ絵になるのだ。 原作で言う第二幕の終幕、エレーナとソーニャの和解の場面の美しさよ。 そしてこの一級品の「舞台」を、「映画」としての一級品に仕上げた、ルイ・マルの生涯最後の力業に心からの敬意を評したい。 [ビデオ(字幕)] 8点(2007-06-02 22:24:29) |
70. DISTANCE/ディスタンス
このゆるさがたまらない。過去と現在の、一件ぶっきらぼうな混合の編集も、慣れればひたすら心地よい。長い。確かに。だけど、一度流れに乗ってしまうと、そんなに苦にならない。よかった。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2007-06-02 22:15:36) |
71. 沙羅双樹
《ネタバレ》 普通に感動した。祭の場面まで笑うことのなかった少年。激しい雨の中の祝祭空間。再生のための豪雨。このあとから少年が、心からの笑顔を見せる。 このレビューの、この映画に対する批判的なレビューにうなずきつつ、しかし、私は、素直にこの感動にこの点数を捧げたい。 俳優の演技についていけない人もいるのもわかるが、これも私はひたすら心地よかった。生瀬さん、もともとが舞台の人だけあって、この手の即興的な撮影でも、ホント、いい味出してます。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2007-06-02 22:12:40) |
72. 眠狂四郎 勝負
《ネタバレ》 真打三隅研次監督登場。もう何度か書いた(かな?)けど、私はこの人の映像美には、ひたすら敬服するのみなのですわ。とにかくタイトルバックからして魅せる。構図もいい。美術(の使い方)もいい。 一般にこの第二作が雷蔵シリーズの狂四郎の路線を決定したと評価されているけど、まだまだこの狂四郎は第一作を引きずってるね。饒舌で、表情豊かで、全体的に「いい人」だし。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-05-27 09:44:43) |
73. 眠狂四郎 殺法帖
《ネタバレ》 第一作ってことで方向が定まっていなくて、シリーズ全体を見渡した視点からは突っ込みどころ満載ですわ。最初に見たときは、「こんなの狂四郎じゃない!」って激しく拒否感情を覚えたものでした。狂四郎、やたらと表情豊かで、大声で笑うし、最後海に向かって叫ぶ(!)し。今見直すと、まあ、仕方ないかなと思えてきた。寛大になったな、自分。田中徳三、与えられた条件の中では最大限、堅実な仕事をしてると思いますよ。 しかし他のレビュワーの方々も指摘されてましたが、城健三郎の少林寺は、やたらといんちき臭くて笑えました。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2007-05-27 09:31:57) |
74. 逃げ去る恋
《ネタバレ》 鼻をかむのに紙ではいやといってティッシュを使わないなんて(いや、確かにあちらではみなハンカチ使いますけど)フランス人って奴は。手近にティッシュがあるならそれでいいじゃないか(苦笑)。 大人に判ってもらえなかったドワネル君は、大人になって女の人たちにもあまり判ってもらえないんだねえ(さらに苦笑)。ってわけで私の中の邦題は『女は判ってくれない』(撃沈)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-05-27 09:14:48) |
75. 恋のエチュード
《ネタバレ》 トリュフォーの中で一番好き。かつてそう思った。今見直して、やはり、これが一番いいとおもう。『突然炎のごとく』と似てる設定で、原作者が同じだからもちろんそうなってもいいんだけど、それにしてもなあ、って思ってみていると、ちゃんと映画の中でその理由が明らかにされる。ナルホドなって感じ。主人公は同性から見て共感できない。むしろ、姉妹のいたわりあい、旧習との葛藤、親との確執(ってほどではないけど)というような諸々の描写が、じわりじわりと染み透ってくる。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2007-05-27 09:06:37) |
76. キューポラのある街
やっぱり、わしは、吉永小百合が苦手かも。当時は、この清楚さがたまらない魅力だったのだろうけど、少なくとも今わしが見ると、どうも、はきだめの中の鶴って感じで、浮いて見えて仕方ない。 とはいいつつも、この映画に関しては、主人公の少女の裏の裏まで描こうとしていて、その部分だけは共感が持てたのだけど。 【追記】この作品、あまり知られてない(というか自分が知らなかっただけ?)続編があるのね。『未成年 続キューポラのある町』。三年後に作られて、物語的にもほんとに三年後を描いている。こちらの方がいろいろな問題が噴出する展開。そのことごとくに根本的な解決が見つからないまま、一気に終わってしまう。でも、問題が生々しくて、迫真さはこちらの方が上。吉永小百合もこちらは、親はたたくわ、反抗するわ、結構激しくて、好感が持てた。野村孝監督。全然知りません。でも、構図も大胆で、テンポもあり、かなりシャープな映像だった。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2007-05-22 21:31:32) |
77. 青い山脈(1963)
《ネタバレ》 今井正-原節子版、実は青春の思い出。といっても、もちろん、後追いです。公開当時は父母の青春時代。でも、この今井版が実は私の原節子初体験だったかも。で、今回の芦川いづみは…なかなかええでないの。というか、わし、この歳で言うのもなんだけど、結構芦川いづみ好きなんよ。本当に好きなのは『陽のあたる坂道』の裕次郎の妹役。足が不自由で劣等感だらけになりそうなところが天真爛漫。でもその分、誰よりも裕次郎の理解者だったりする。いいなあ、あれ。いや、『青い山脈』のレビューだった。映画自体は、実は結構面白かった。今井版ほどじゃないけど。でも、客観的に考えてみると、この映画の騒ぎは、原作が書かれた当時の事情を考えてもPTAで役員会を開くほど大げさなことでもあるまいと思うのだがね。 ホントは7点でもいいのだけど、この映画の吉永小百合だめ。その分マイナス1点。他のレビュワーさんも書いてるけど、イカンと思う。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2007-05-21 22:42:59)(良:1票) |
78. 隣の女
破滅に向かって一直線。フランス映画ってこういう展開が多いかなと思う。それはそれでとても美しい。でも、一歩間違えばただのメロメロ。でもいいじゃん。それで。美しければ。もちろん、映画での話ね。現実にこういう展開、単なる迷惑です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-05-20 23:39:11) |
79. 静かな生活
《ネタバレ》 今のところ、この映画の最高得点になってしまいそうですが、正直な感想です。そんなに悪くはなかったのです。ただ、正直言えば、この映画だけだと障害者の生活を美化してしまう部分があるかなとも危惧を抱きました。そのあたりが、この映画でも(同列には並ばないけど)『レインマン』とかでも、感じてしまう。障害のある人に天才的な能力を発揮する人はいるのは事実。でも、全ての人がそうじゃない。だから、そのあたり、誤解を生んでしまうのではないかと思ったのです。でも、一方で、障害の有無を問わず、天才的な人は、いる。これはそういう、一人の天才とその家族をめぐる物語として、私にはとても面白かったのです。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-05-20 23:34:15)(良:1票) |
80. 突然炎のごとく(1961)
とにかく場面の切り替わりが早くて、若いころ初めて見たときには、まったくついて行けなかった。というか、生意気にもヌーベル・ヴァーグってこんなもん? なんて不届きな感想を抱いてしまったものだった。この年になって三度目の鑑賞。やっぱり、展開早いなあ、と感じた。けど、実は中盤以降の複雑な三角関係の描き方に結構唸ってしまって、そのあたり、自分も年を取ったなあと思う。ただ、若いころのトリュフォーの(いや、ゴダールも)スピードと疾走感ってのは、もちろんとても魅力的だけど、これが初めて出たときの衝撃ってのは、もはや味わえないな、というのも実感。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2007-05-16 21:48:08) |