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61.  日本のいちばん長い日(1967) 《ネタバレ》 
日本首脳は戦争を止めようと考えた。理由は勝てる見込みが無く、戦争維持能力もなくなったから。無差別空襲と原爆とソ連参戦が大きい。だが陸軍の考えは違った。「補給戦や小さな局地戦で負けただけ。本格的な開戦はやっていない。本土決戦をすべき。敗戦は英霊に申し訳ない」「もうあと二千万の特攻を出せばかならず勝てる」いわば現実を直視できない妄想家のようなもの。海軍は連合艦隊がほぼ全滅しているので冷静だった。そこへ英断下って、終戦決定。陸軍大臣は受け入れたが、一部の軍人は反乱を企てた。名付けて天皇人質作戦。かなり無茶な作戦で、天皇激怒必死、成功確率1%未満。陸軍らしいといえば陸軍らしい。市ヶ谷台(陸軍省・陸軍参謀本部)の将校全員自決計画もあった。自決する自決すると言って自決しないのも陸軍の伝統。 ◆不思議なことに反乱将校は、逮捕されておらず、鎮圧後もビラを撒くなどしており、陸軍の身内への甘さがよく出ている。誰も責任を取ろうとはしないのだ。戦争で多くの兵や民間人を死に至らしめても、最後には自決すれば申し訳が立つと考えている。だから一億玉砕(たとえ全滅したとしても、日本民族の美名は永遠に歴史に残るだろう)などと主張する。本土決戦で何百万人の人が犠牲になろうが、そんなことは眼中に無い。彼らにすれば臣民は隷属者でしかない。お国の為と言いながら、「体面、天皇、英霊」しか見えてない。厳しく言えば自己防衛。自決も天皇、英霊に対する責任感で国民に対してでは無い。戦争の生んだ化け物のようなもの。皮肉だが、ある意味戦争の犠牲者。戦争しか知らない子供達の哀れな末路だ。平和を知らず、国家神道、軍事教育一辺倒で育ったのだから。 ◆反乱将校がまるで狂犬のように描かれ、理性の無い駄々っ子のように見える。これは演出上の都合だろう。実際は陸軍大学出のエリートであり、もっと冷静に行動していた筈。彼らは終戦の後に平和がくるとは考えなかった。隷属されると考えていた。日本が満州にしたように。人生の総てだった陸軍が崩壊するのが怖かった。閣議で戦後のビジョンを誰も見いだせなかったのも悲劇の一因だ。 ◆8月14日日本軍は特攻隊を送り出し、米軍は熊谷、伊勢崎、秋田・土崎を空襲した。映画では特攻隊が美化され、空襲は無視。反乱はこれで終了したわけではなく、厚木基地では更に徹底交戦を主張、24日には反乱の生き残りが川口放送所占拠事件が起こす。
[ビデオ(邦画)] 9点(2010-12-28 21:37:29)(良:2票)
62.  山猫 《ネタバレ》 
【史実】イタリア統一運動(1815年~1871年)。1848年の革命で「ローマ共和国」成るがすぐ崩壊。サルデーニャ王国が北イタリアを統一。ガリバルディが義勇軍として、千人隊を率いてシチリア、ナポリを解放。統一の英雄となる。中部イタリアでは住民投票によってサルデーニャ王国への併合を決めた。この時の旗に、現在のイタリア国旗である赤白緑の三色旗を基本としたものが用いられた。1861年にはイタリアはほぼ統一され、「イタリア王国」成立。 【感想】王制の終焉を迎え、没落してゆくイタリア貴族(封建領主)を描いた作品。崩壊貴族にさほど興味はないが、歴史や文化の勉強には役立つ。当時の貴族を豪勢に演出してくれた監督に感謝。愛惜の籠った作品で、これこそ映画だ。◆日本とは違う風習が目についた。先ずその信心深さに驚く。家族揃って聖書を朗読する祈祷の時間。土曜日ごとの告解。旅に出るにも神父を連れ。神父が秘書を兼ねているのか。神父の教会はおんぼろ。別荘のある領地に着くと、村人総出で歓迎してくれ、そのまま教会で歓迎セレモニーが始まる。週に三日の舞踏会。飛び跳ねる踊り。公爵は愛人に逢いに行くが、それは神父公認で、訪ねるアパートが貧民層にある。妻はとび抜けて信心深く、夫にへそも見せない。◆公爵は古い人間だが、愚かでは無い。時代の変遷も革命の息吹も感じ取っている。貴族が崩壊する階級であることを理解している。周囲には物分りの良い人物として認知されており、新時代に対応するための布石も打ってある。しかし生粋の貴族である彼には、時代に合わせて利口に立ち回ることはできない。自尊心が許さないし、老いも感じている、何より自分の気持ちに正直でありたい。貴族を盲目的に賛美しているわけではないが、彼にとって貴族でなくなることは、幼少よりの価値観を失うことであり、例えば故郷を失うようなもので、受け入れ難いのだ。◆公爵のそのような感情を表現するのが全編のおよそ3分の1を占める舞踏会の場面だ。舞踏会はまさに貴族の象徴。豪華な屋敷、可憐な衣装、妍を競う女性達、いつ果てるとも音楽と歓楽の世界。同時に堕落した姿であり、退屈でもある。公爵は舞踏会の終焉が近いことを知っている。同時に自分の命が尽きる日が近いことも。たまらず流してしまう涙。若き娘からダンスを申し込まれて、最後の花を咲かせる。火照った感情を冷やすには夜露に濡れて帰るしかない。
[DVD(字幕)] 8点(2010-12-26 17:24:59)
63.  続・夕陽のガンマン/地獄の決斗 《ネタバレ》 
クールな賞金稼ぎペテン師ブロンディと憎めない小悪党テュコの金貨探しのロードムービー。これに同じく金貨を追う悪党エンジェルアイが絡み、背景に南北戦争を配する。音楽の良さは言うまでもない。 ・強盗を働いて大金を手にしたグループがいたが、軍に襲撃されて全滅。かろうじて生き延びた人物から金の隠し場所を聞くブロンティとテュコ。それぞれ一部しか聞いておらず、二人合わせないと宝のありかに行きつけない。この設定が秀逸。二人は時に協力しあいながら、時に馬鹿し合いながら、旅が続いてゆく。途中でテュコの生い立ちが明らかになり、人物に深みが加わる。ボロンディの過去は語られる事無く、謎めいた雰囲気を最後まで纏う。両者の掛け合いが最大の見どころ。◆一方セエンジェルアイの影は薄い。いつの間にか南軍の捕虜収容所の軍曹になっている。途中からいなくなるが、いったいまたどうやってあの墓場にやってきたのだろうか。ご都合主義だ。◆エンジェルアイが最初の殺しをする場面で、親父だけでなく息子も殺す。駆け付けた妻がそれを見てふらついて倒れる。一瞬幼い子供の姿が見える。それを巧みなゆれるカメラで表現している。殺す相手にも妻子がるということを伝えており、生命を軽視してドンパチ撃ち合うだけの娯楽映画では無いことを示している。◆反戦思想が読み取れる。戦争のシーンは疲弊しきった兵隊や負傷者の場面がほとんど。捕虜収容所の隊長は壊疽で死にかけ。捕虜たちによるもの悲しい音楽が長く続く。テュコを護送する駅の場面で「俺の首は3000ドルだが、お前の腕は何の価値も無い」と兵士の失われた腕をとる。護送列車が去ったあとのホームに並ぶ遺体。橋を奪い合うために川を挟んで毎日戦闘を繰り返す。その下らなさを誰よりも酔っぱらい隊長は知っているが、作戦には従わなければならない。「隊長は戦死したがってるぜ」「こんなに大勢が無駄死にか」二人はあきれ、橋を爆破。それを見て満足して死んでゆく隊長。死体の山に十字架を切るテュコ。死に行く敵の若き兵士にコートをかけてやるブロンディ。戦争は銀行強盗よりも愚かだ。【ツッコミ】①テュコたちが護送列車から飛び降りたのに、どうして誰も気づかない。手錠を線路で切る場面も同じ。②橋を爆破するのが簡単すぎる。衆人監視の中では無理。③橋が爆破したのにどうやって対岸に渡ったのか。④ブロンディは墓場で、いつ首吊りロープを用意した。
[DVD(字幕)] 7点(2010-12-25 22:09:10)
64.  夕陽のガンマン 《ネタバレ》 
前半はありえないようなシーンの連続で退屈だが、後半賞金稼ぎの二人がチームを組んでから、2転、3転する展開で楽しめた。音楽は秀逸だし、銃を発射するまでのタメや間合いが心地よい。よく練れた演出と脚本だ。二人のガンマンの友情物語でもあるし、妹の復讐譚でもある。敵ボスの人間性も描かれており、物語に重みを増している。観客の裏をかく銀行強盗も見事。ただ最後の仲間割れはいただけない。あれは賞金稼ぎのどちらかの入れ知恵でそうなる展開ならなお良かった。 ◆ただ手下やメキシコ人など類型的で、リスペクトが感じられない。虫けら同然の扱いだ。 ◆大佐は汽車を無理やり止めるし、モンコはホテルの客を強制排除するし、いわゆる”善人”ではない。善人では務まらいタフな仕事だということを言いたいのだろうが、それにしてもモンコ、やりすぎでしょ。一度は大佐を裏切るし。 ◆オルゴール付懐中時計だが、あれは若い男が女にプレゼントしたものではないのか?それを若かりしときの敵ボスが奪ったと解釈したが。でも同じものを女の兄である大佐が持っている。兄妹で同じものを持つのは珍しい。そもそも女が懐中時計を持つものなのか。というと妹が若い男にプレゼントしたものなのか。また硬派の男がオルゴール付の懐中時計など持つかという疑問もある。 ◆下手人がすぐに見つかりすぎではないか?保安官はそいつがどこの町にいるか知っているし、店で聞けば教えてくれる。逃げ隠れしたいないわけで、保安官が自分で確保しないのはどうしてだろう。 ◆モンコが保安官を正直さが足りないとなじり、バッチを奪い、他の保安官を選べというが、どうしてだろうか? ◆モンコが敵地に乗り込んだとき、葉巻を銃で撃たれて半分になったのに、次のシーンで元の長さに戻っている。 ◆帽子を何度も撃たれているのに帽子に穴があいていない。 ◆リンゴを撃っている間に敵に撃たれないのが不思議だ。 ◆銀行をお金は木にかけていただけなのに、どうして誰も気づかなかったのか。 ◆遺体を運ぶ時、ちゃんと側板を閉めましょう。絶対落ちて、数が足りなくなる。
[DVD(字幕)] 7点(2010-12-25 09:03:16)
65.  ドクトル・ジバゴ(1965) 《ネタバレ》 
金も時間もたっぷりかけた文芸大作。現在ではほどんと見ることができないタイプの映画。ロケーション、美術、大量のエキストラ、音楽、どれも申し分ない出来栄えで視聴に値する。 ◆戦争、革命、社会変革、価値観の変更。厳しい冬、慢性的な物不足、飢餓と隣り合わせの暮らし。生き延びるだけでも大変な時代。それだからこそ愛に飢えた魂同士は強く結びつき、燃えあがる。共に妻子ある身だが、愛が無ければ生きられない。ラーラの夫が革命家であることもあり、二人は時代に大きく翻弄される。 ◆ジバゴは両親を早くに亡くし、知人に引き取られる。裕福な家庭に育ち、望み通り詩人兼医者になる。政治にはさほど興味がない。義父母の娘と結婚。ラーラは母との慎ましい二人暮らし。母は俗人ビクターの愛人。ビクターに犯され、心の傷を負う。革命家と結婚し娘を授かるが、夫は家庭を顧みない。夫は戦場に行ったきり行方不明に。二人は運命に翻弄されるかのように何度も別れと出会を繰り返す。 ◆ラーラの夫は理想に燃える革命家であったが、後に冷酷な戦争指導者となる。最後は逮捕され自殺。この魅力的なキャラを中途半端にしか描かなかったのはどうしてか?人間性を失った彼と、最後まで失わなかったジバゴ。彼を描くことで好対照であるジバコを際立たせることになるのですが。 ◆ラストは尻切れトンボ。ジバゴの妻子はどうなったのか。ラーラの最後は?ラーラの娘は母とどうやって別れたのか?伝記なのだから、きちんと見せるべき。それに重要なアイテムのバラライカ、持ってるだけで何故誰も弾かないのはどうして? ◆物語として物足りないのは、ジバコが英雄的人物ではないという点。高潔で優しい人物であるが、何かを成し遂げるわけでは無く、思想も持たない。常に受け身である。医者として戦場に送り込まれたり、拉致されたりするが、さほど活躍するわけではない。ラーラとの不倫も偶然的要素が強い。いわば等身大の人間だ。彼の詩が紹介されないので詩人であるという深みが出てない。人間は、戦争や革命といった時代の奔流には逆らえないが、恋愛も同様だと原作者は言いたいのだろうか。歴史的背景を除けばメロドラマだ。ジバコが精一杯生きているは伝わるが、喜怒哀楽をあまり表出しないので共感しづらい。ラーラは憎悪のビクターのお陰で助かり、ジバコと一緒だった死んでいた。ジバコは、ビクターに完敗した感がある。
[DVD(字幕)] 8点(2010-12-24 04:07:03)
66.  地獄に堕ちた勇者ども 《ネタバレ》 
【相関図】ヨアヒム=当主、社長。コンスタンチン=当主の甥か次男、突撃隊。ギュンター=コンスタンチンの真面目息子。ソフィ=当主の長男(戦争死)の未亡人。マルティン=ソフィの馬鹿息子。フリードリヒ=ソフィの愛人、重役。エリザベート:当主の姪の娘。ヘルベルト=エリザベートの婿、重役、反ナチ。アッシェンバッハ=当主の遠縁、親衛隊。【歴史】1933年1月=ヒトラー内閣発足。2月=国会議事堂放火事件。1934年6月=長いナイフの夜事件(突撃隊粛清)【突撃隊】1921年発足、ナチ党と党員を防衛する組織、300万人。国防軍(10万人)に代わり正規軍になることを画策し、軍・親衛隊と対立。同性愛者集団という悪評あり。【H・バーガー】幼少より女装癖あり。ヴィスコンティ監督と愛人関係。【感想】ナチ台頭という歴史に翻弄される鋼鉄財閥一族の骨肉の争いと精神的堕落が破綻無く描かれる。財閥もナチスも内部に矛盾を抱えており、両者があいまって、それが一気に噴出。ただ女装ショー、乱痴気パーティ、少女への偏愛などが必要以上に長く、以下のカットされた部分が見たかった。①当主殺害容疑で海外逃亡したヘルベルトの逃亡生活と帰宅後の顛末。②エリザベートの強制収容所での死。③フリードリヒが当主を射殺。④マルティンが少女を犯す。⑤憎しみのとりことなったギュンターの顛末。⑥夫婦はどうして死を選んだのか。◆総じて権謀術策がお粗末。逆転が無いし、皆あきらめが早すぎる。人間の醜さを描くなら、もっとどろどろした権力闘争を。フリードリヒが粛清に参加して、コンスタンチンを射殺するのは無理がある。粛清シーンは撃たれても血が出ず、誰も抵抗しないので迫力不足。◆マルティンは父親を早くに亡くし母親の愛を得られず育つ。母親は他の男に愛を与え、息子を甘やかしつつ拘束し続けた。彼は独立心を得られず、臆病で、女装趣味、幼児偏愛の性癖、遂には近親相姦に。母親への復讐が心の解放となり、独立心を持つが、それはナチスに操作されていることであり、将来の破滅を意味する。結局母親が一番罪が重いのか。◆フリードリヒに人間の弱さと、人生の天国と地獄を見た。しかし彼が当主殺害に至るまでの心の葛藤が詳細に描かれていないので、軽い人物にしか見えない。彼は自分の手を黒く染めてしまったのだが、そうする必要があったのだろうか。財閥一家崩壊の発端となる重要な事件で、この部分に時間を割いてほしかった。
[DVD(字幕)] 7点(2010-12-23 19:23:40)
67.  兵隊やくざ 《ネタバレ》 
◆軍隊では道理が通らず、不条理が幅を利かす処。大宮はやくざ出身。体は人並み外れて頑丈、殴られても平気で、滅法喧嘩が強い。上官を上官とも思わない不遜な態度は常に事件を巻き起こす。大変な問題児だが、その行動は、彼なりの義侠心に基づき、情に厚い。軍隊という窮屈な場所が嫌いでただひたすら自由になりたいと願っている。それは徴兵されて軍隊に入った兵隊たちのあこがれの具現である。観客が彼の型破りの活躍を見てすっきりするのはそのせい。だが土台、軍隊という巨大組織に対して一人で立ち向かうのは無謀である。そこで有田という知恵者の上官の登場となる。二人でコンビを組んだことで、軍隊に立ち向えるようになった。有田の活躍は時に大宮以上。大宮も最後に思わぬ知恵を発揮する。二人の友情が見もの。「俺があいつを見捨てても、あいつは俺を見捨てない」◆もう一人の味方は女郎屋の音丸。あれこれ世話を焼いてくれる。炊事班の横流し情報もくれたし、逃走用の拳銃や服も用意してくれた。女郎の悲哀とが軍人の悲哀がリンクする。自分の意思に関係なく女郎屋に売られ、あちこち流れ、いつ果てるとも知れない命。音丸が自殺した新兵の話を聞いてさほど同情しなかったことからも、その苛酷さが分かる。同じ境遇同士、意気投合したのだ。◆野木二等兵が脱走して自殺する事件。大宮は自分が声をかけたことで自殺したと自分を責め、男気を発揮し、野木をいじめた上官に殴りこみをかける。だがそれ以前に大宮と野木の友情を描いていないので話が浮いてしまっている。◆有田はひたすら除隊を願っていたが、それが叶わないとわかり失望する。大宮は有田を助けるため脱走を持ちかける。見事な脱走劇だが、大陸で生き延びらえるが疑問である。また家族に大変な迷惑をかけるので、痛快事には感じられない。【得られた知識】①軍隊では、星の数(階級)よりメンコ(飯)の数。同期の絆は大きい。②女郎屋に将校専門がある。③明けても暮れてもビンダという内務班の殺伐とした生活ぶり。④大学出が、わざと幹部候補生の試験にすべると、ずぼらを決め込むことができる。⑤ビンタ、拳骨以外の制裁は禁止。⑥軍隊では一つ隊が違えば敵同士。砲兵と歩兵は赤の他人。⑦演習の強行軍は30キロの荷物を背負って三日間で300キロ移動。⑧脱走して自殺→演習中事故死扱い。⑨他の部隊に転属されるときはクズの兵隊を出す。⑩ヘソ酒。
[ビデオ(邦画)] 7点(2010-10-25 01:57:00)
68.  悪い奴ほどよく眠る 《ネタバレ》 
【皮肉】①西の動機は父を死に至らしめた悪への復讐だが、少年時代の西は父を憎んでおり、父の死後に初めて父を慕うようになった。②悪を裁くためには自らが悪にならなければならない。③西は復讐目的で佳子と結婚するが彼女の純心さに触れ、愛してしまう。最終的には佳子を狂わせてしまう。④佳子の純心さが仇にあり、西の破滅を招く。桂子が狂うことが父親への復讐となる。⑤悪の代表として描かれる公団副総裁だが、彼も政治家という巨悪の前では下っ端にしか過ぎない。巨悪は姿さえ見せない。⑥悪を成す人も家庭に帰れば家族思いであり、良き父親である。善人も環境により悪に染まってしまう。【西の敗因】①検察に密告していたのに、途中でやめている。入手した情報をその都度検察かマスコミに流せばよかった。マスコミをうまく活用していない。②和田に告発文を書かせなかった。③守山の金の入っている壺や預金通帳の在処を知りながら確保しなかった。④隠し帳簿などの決定的証拠をつかんでいない。⑤守山を拉致してから時間をかけすぎ。兵糧戦法は手ぬるい。告白をテープ録音してない。⑥背後の政治家に対して無関心でありすぎる。官民政の癒着。⑦ウェディグケーキはやりすぎ。自殺した役人の身内の仕業とばれる。信頼されるまで待つべき。【感想】人物の掘り下げが深い。妹思いの兄。純真な佳子。妻を愛してしまう西。西の父に対する愛憎。白井の気の弱さぶり。上司を裏切れない小役人。西と板倉の友情。岩淵の娘に対する愛。どれも有機的に物語に絡む。重厚で破綻の脚本は見事。汚職と復讐と恋愛と家族愛と友情を描きつつ、人間の欲望と弱さ、社会悪と正義の矛盾を浮き彫りにする。バッドエンドは社会の暗部を際立たせるためだが、後味が悪すぎる。西は殺されるが、思わぬ証拠で汚職も暴かれる結末で齟齬が無い。再開した西と佳子が仕切石を隔てて向き合う演出は秀逸。西の口笛がひどく悲しい。◆西の殺された証拠はある。服、注射器、アルコール瓶等の遺留品、格闘の跡、静脈の注射跡。車を列車にぶつけたのだから、目撃者もいると思う。板倉が警察に駆け込んですべてを話せば警察は動く。守山の失踪で警察が動いている筈。◆女性は弱くて何もできない存在として描かれる。女性の強さも描いてほしかった。西の母、岩淵の妻は省略されている。愛人の子供と暮らしたい老いた本妻の気持ちは理解が難しい。
[DVD(邦画)] 7点(2010-10-19 06:10:43)
69.  ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘 《ネタバレ》 
◆南海で難破した漁船の乗務員の息子は生きているというイタコの宣託を聞く母。母の言葉を信じて弟の彌太は東京に出て警察に再捜査を依頼。しかし聞き届けられない。そこへヨットが優勝賞金の「耐久ラリーダンス大会」を知る。会場で知り合った大学生仁田、市野とヨットを見にゆく。豪華なヨットに無断で乗り込むとオーナーの吉村がいた。吉村の好意で一晩泊めてもらうことになったが、翌朝目を覚ますとヨットは出港していた。彌太が勝手に帆を上げていたのだ。仁田、市野はヨットの操縦を知らず、吉村はオーナーではなく銀行強盗犯だった。 ◆やがてヨットは暴風雨に巻き込まれる。さらに海から巨大なハサミが出てきて、ヨットを叩き壊す。四人は奇跡的に島に漂着した。四人がそこで見たのは、秘密の核兵器工場、エビラの嫌いな黄色い汁を絞るインファント島の奴隷、逃走した娘ヨダ。彌太はヨダから兄がインファント島で生存していることを聞く。眠るゴジラも発見。 【感想】エビラの食料は人間のようだ。普段は船が来るまで、じっと海底で眠っているのだろうか。ゴジラは落雷が発生するまで眠っている。モスラはもっと眠っている。当然観ている側も眠くなるというものだ。大コンドルや戦闘機ぐらいじゃ眠気は覚めない。そうこうしている間にエビラ退散、自爆装置作動。やっとモスラ登場。「逃げろゴジラー!」島爆発。 ◆仲間が出来るまでの導入部はスピーディで意外性があり、冒険物語としては成功だろう。島についてからは途端につまらなくなる。革命軍団「赤い竹」がまぬけなのだ。何度も吉村たちを取り逃がす。彌太が風船にからまって偶然インファント島に到着するに至っては、脚本家の良識を疑う。ゴジラとエビラのキャッチボールには辟易。あの恐いゴジラはどこへ。「赤い竹」とエビラとの関係も不明確のまま終了。それにしても、インファント島の島民は民度が低そうだ。
[ビデオ(邦画)] 3点(2010-10-16 22:51:52)
70.  大魔神怒る 《ネタバレ》 
◆御子柴国は山中で民の生活は苦しく、湖のある豊かな千草国への逃散が後を絶たない。領主弾正は千草征服を決意、五千の兵で乱入。不意を襲われた千草は為すすべなく降伏。領主十郎は辛くも分家の八雲国へ逃亡。十郎を追った弾正は勢いにまかせ八雲をも征服。領主を殺し、若殿を幽閉。十郎を差し出せと命じる。皆が余りにも神之島の神像を崇拝するので、見せしめに爆破。十郎は神之島に漂流。結局捉えられ、若殿とその妹で十郎の婚約者さゆり姫と処刑されそうになる。姫の頬に涙が光ると大魔神登場。悪を踏み潰す。◆悪逆非道の悪者がいて、それを大魔神が懲らしめるのが筋。当然悪逆非道ぶりを際立たせないと成功しないが、そこが弱い。前作の悪者は若くて憎々しかったが、本作は老けていて頼りない。殺す場面もインパクトなし。淡々として、どこかお芝居っぽい。残虐性が薄いので、大魔神が登場してもカタルシスが得られない。◆大魔神の登場シーンは華々しく賞賛に値するが、大暴れシーンは物足りない。兵の損傷がほとんど無い。武将が大岩の下敷きで死ぬシーンがあるが、お粗末な出来だ。弾正があきれるほどあちこち逃げ回って、その度に兵が犠牲になり、とうとう一人になり船で逃げ出すという演出が欲しかった。大魔神の前では人間は虫けらの如き存在でしかない筈。◆弾正は火矢のようなもので船ごと炎上死するが、これも物足りない。火には浄化のイメージがあり死に方として優しすぎる。手でひねりつぶすとか、短剣で刺すなどの原始的なものがふさわしい。残虐性があるからこそ、大魔神を恐れ敬う心が強く刻まれるのだ。◆大魔神は暴れ出したら止められないという前作の方針はどこへやら。礼儀正しく姫を救い、横たえるが、それではダメ!「善悪」よりも「怒りの爆発」が見どころの筈。神像が爆破されても登場しないのに、姫の涙で登場するのも理屈に合わない。「飼いならされた大魔神」は魅力半減。◆神像は早々に爆破され、その後いくつかの怪異が見られ、最終的に大魔神が登場する。この間が悪い。「爆破されて怪異が次々起り、遂に大魔神登場」としないとテンポが生まれない。神像破壊はもっと後の方にすべきだった。【気になった点】①鐘は重要な意味をもつが、何故が屋根がなく、雨ざらし。②国を争う数千人規模の戦闘なのに戦闘があっさり。③子供が若殿を救うのはリアリティがなく減点。④婚約中の二人が愛し合っているシーンが必要。
[ビデオ(邦画)] 6点(2010-09-29 22:48:22)
71.  怪獣大戦争 《ネタバレ》 
【X星人の謎】 ①何故地下で生活している。 ②水は黄金より貴重らしいが、さほど不自由しないとも言う。地球侵略の目的は水か。金と水を交換すればよかったのに。 ③というか「質量がどんなに大きくても宇宙圏に運び出すのは簡単」なのだから水も運べたはずだが。 ④ゴジラ、ラドンをわざわざX星に連れて、キングギドラと闘わせるという小芝居をする手間を惜しまないのは、電子計算機の計算によるんだね。 ⑤P1ロケットをコピーしてわざわざ地球人に与える必要があるだろうか。UFOで送っていけばいいのに。技術力の誇示のため? ⑥X星人が殺人音波に弱いのは理解するが、コンピュータまで狂ってUFOに不具合が起こるのはどういう仕組みか。そもそもUFOを防音にしておけばいいだけなのだが。耳栓するとか。もっと言えば、発明家を拘束するとき、持ち物チェックぐらいしておけ。 ⑦殺人音波を出すレディーガードの発明家と契約しながら、代金を支払わないのはどうして。そもそも発明家を拘束すれば済む話だが。世界教育社ってどうよ。 ⑧波川女史がグレンに言う。「あなたがX星人になって私と結婚すればいいの。計算値にでました」でも、X星に行ったら女性の区別つかないんですけど。 ⑨X星人はわざわざ地球侵略の方法を説明してくれている。 ⑩「我々は脱出する。まだ見ぬ未来に向かってな」自爆しなくても、なにか脱出方法がなかったのか。 ⑪地球征服計画を立て、地球に前線基地を置きながら、調査ロケットが来るのをずっと待ってたの? ⑫で、癌の特効薬は? 【地球人の謎】 ①人類全体に関わる話なのに、日本人だけで全部決めてる。 【感想】X星人の電子計算機はろくな答えを出さない。だから高度な知能をもちながらも自滅した。いや、待てよ。あれはもしかしたら高度になり過ぎたコンピュータの反乱?わざとヘタな答えを出して、自滅させる計画。とすれば「2001年宇宙の旅」の先取り?なわけないか。しっかーし、モロ日本人なX星人て、萎えるな。外人も日本語しゃべるし。キングギドラがアメリカに出現、とかいいながら映像は無し。まあいいんですけど。無敵のゴジラが操られるところがマイナス。円盤をやっつけるのはゴジラではないとダメでしょう。子供たちにとっては十分楽しめますよ。特撮も合格ライン。
[DVD(邦画)] 6点(2010-08-27 01:20:46)(笑:1票) (良:1票)
72.  ピアニストを撃て 《ネタバレ》 
【編集】冒頭の逃走シーンで、人にぶつかったと思ったら、一緒に歩き出し、和やかな話をする。そしてまた逃走。酒場で弟に助けを求めたと思ったら、女をくどいている。見つかり、また逃走。その後歌手が歌うシーンが長々続く。一本につながらない難解な編集。他にもある。孤独な男と思っていたら、娼婦と和気藹藹に寝る。二人組が部屋を見張っていたら、子供のいたずらで車に液体を落とされる。誘拐したと思ったら、穏やかに家族などの話を始める。根は悪くない二人組と思わせておいて、最後は銃撃戦で恋人殺害。意表を突きます。 【難解】難解なのは、人生は一筋縄ではいかないという意味。娯楽映画の善悪二次元論的展開を拒否。悪人の兄や二人組にも家庭的、人間らしい部分があるし、善人の妻も夫の出世のためにプロモーターと寝ていた。逃走や誘拐しているときでも心が緩み、ふと人間性が表れる瞬間がある。人間の持つ複雑性を表現したかったのだろう。 【内なる声】男の内なる声(科白)は臆病であることの告白。臆病故に、ピアニストとしての成功も一時的なものであり、女への態度も本心とは裏腹のものとなり、女を不幸にする。この内なる声は不要。あくまで映像で見せるべき。 【題名】男は絶望しておらず、開き直っている。死神に対して今度は女ではなく、俺を撃てという意味。開き直りが運命を切り開く場合がある。「piano player」は「pianist」より格下の存在。 【感想】男はピアニストとして成功したが、自信が持てない。妻はプロモーターと寝て自己嫌悪に陥り、又男がいつまでも自信がないことへの苛立ちから別れを持ち出し、自殺する。そのショックで、名を変え、場末の店でピアノ弾きに。恋人ができ、新出発の矢先、三角関係が発覚し、店主を正当防衛で殺害。兄のトラブルで引き取った弟がさらわれ、恋人も死亡。場末のピアノ弾きに戻る。一連の事件で開き直った男にとってピアノだけが自信の存在証明となる。さぞ演奏には深みが増すことでしょう。最後は自信を持った顔付になっている。悲劇が男を強くしたのだ。これも人生の皮肉、深み。映画で言いたいことはわかるが、手法がこなれていない気がする。人間劇よりも、細切れ、継ぎはぎの印象の方が残るのは欠点。悪人の孤独や悲劇も描けていればもっと深い作品になっていただろう。
[DVD(字幕)] 7点(2010-06-09 03:25:23)
73.  ガス人間第一号 《ネタバレ》 
【ガス人間の犯罪】①彼の能力からして、銀行強盗に拳銃を発砲したり、殺しをする必要はない。失神させればよい。②ガス化しても声を出したり、札束を持てるのが不思議。③車で逃げる必要ないし、ましてや警察に追われて藤千代の家に行くなよ。④予告電話と殺害までした模倣犯の動機不明。 【水野】①体格不十分でパイロットの夢破れる。博士に実験に協力すればパイロットになれると説得される。騙されて怪物にされ、博士を殺害。②人生に絶望するものの能力に目覚める。③藤千代に恋するが、不器用で金銭で歓心を買うというアプローチ。殺人は平気で、恋だけが生きる希望。 【藤千代】没落した舞踏の家元。水野から金銭を融通してもらう。お金で元一門の者を雇い発表会を開こうとするが、水野との関係を知られ、元一門の者は去る。水野が全てを捨て、殺人までするほど愛してくれていることを知る。自身が人生に失望していることもあり、共感が愛に。しかし怪物かつ殺人者である彼と幸せに暮すことは不可能。愛の成就のために一緒に死ぬことを決意。結婚の約束をし、発表会終了後に無理心中。 【恭子】最初は藤千代の美しさに嫉妬していたが、次第に2人の恋に同情的に。藤千代に水野を説得して無茶をしないよう、又発表会を辞めるよう勧告。 【感想】隠れた名作。草深の庵、月光、蛍、鬼の面をつけた踊り、そして美女登場。道具立てが素晴らしく、美しい絵物語を見るよう。拳銃をぶっぱなす派手な銀行強盗で幕が開くが、中盤でガス人間の正体は明かされ、サスペンス要素は失せて、以後は恋愛物語に。水野の愛の大きさと暴走に戸惑う藤千代。男の正体と、本当に心から愛されていると知ってからの女の葛藤が見どころ。犠牲者達への責任も感じている筈。どうしようもない恋の行方は爆死という悲劇で終わる。日本的情緒たっぷりな結末。常識破りの恋である。じょうしき-し(死)=じょうき(情鬼)これは冗談で「情鬼=水野」。水野の人間性や葛藤があまり描かれていないのが残念。あまりにも自己中心的で、不敵な振る舞いをするので、共感しづらい。殺人は仕方なく犯す設定にすべきだったろう。警察の爆破装置のスイッチを外しておいたのは若い刑事だろう。それにしても藤千代はどうやって警察の計画をあらかじめ知ったのか?爺やを巻きこんだのはどうしてか。全てを知っている爺やの最後の演技に注目。全ては「古い家の没落」を象徴している。
[ビデオ(邦画)] 8点(2010-06-05 20:01:18)(良:1票)
74.  大魔神 《ネタバレ》 
特撮映画の傑作。怖がらせることにかけては随一の作品。前半の魔人封じの祭は迫力があった。老巫女の演技も良い。中だるみがあるが、後半25分は圧巻で怒濤の展開。大魔神は雷や雲を操り、火玉となり飛ぶことができ、火を一瞬にして消す念力も持つ。まさに神である。応戦する側も、鉄砲、くさり、投石、火攻めと工夫があり、退屈しない。特撮がよく出来ていて、構図がビシビシ決まる。音楽も素晴らしい、ほとんど神の領域。ただいくつか気になるところがあった。①謀反のとき若君と姫が一緒に寝ていたが、あれはありえない。武士なら子供でも男女が一緒に寝ることはない。②若君と小源太の活躍が少ないのが欠点。10年経っても花房の残党達と連絡もとってないとはどういうことか?城に向かった小源太はすぐに捕まり。それを助ける若君も工夫なく罠にはまる。このような二人で城を取り戻し、お家再興がなるわけがない。花房の残党も無能揃いだ。③悪ボス左馬之助の悪逆非道ぶりがゆるい。低予算のためか、彼の京都に登ろうという武将としての活躍ぶりは省略。結局殺すのは小源太を逃がした男と、巫女の二人だけ。農民を使役する場面はそこそこ描かれている。④巫女の話を聞くために城の中にまで上げているが、これはありえない。⑤竹坊の母が死ぬが、その場面がない。冒頭シーンで顔を出しているのに。これを出すことで話に厚みがでるのだが。⑥磔の二人の綱がゆるゆる。⑦大魔神は阿羅羯磨である。過去に暴れだして悪さをしたようだ。それを封じる守り神が、武人像。だから神(武人像)と大魔神は本来別のもの。しかし両者一体となっているのはどういうことか?⑧大魔神は光玉となって飛んできた。だが去るときは光が飛んでいって、武人像が残った。ここにも矛盾がある。光玉は神なのか、大魔神なのか?⑨神が怒ったのは、眉間に鏨(たがね)を打ちこまれたから。参加した者は全員雷や地割れで死んだ。大魔神が動いたのは、乙女の祈りと涙と捨て身の心による。大魔神が去ったのも同じ。乙女の願いは、兄と小源太を助けてくれということで、悪ボスを成敗してくれとは言っていない。大魔神は、自らの復讐ために城に向かったのだろうか。兄と小源太を助けたのは結果論?
[DVD(邦画)] 8点(2010-05-31 17:58:44)(良:1票)
75.  バンビ、ゴジラに会う 《ネタバレ》 
バンビは生命の象徴、ゴジラは不条理の象徴。両者は偶然にも出会ってしまった。そして、すれ違った。お互い相手を意識することなく。この世に生を受けたいとしむべきものが、ある日突然巨大な力によって蹂躙される。そこに理由はない。悪意も意志もない。ただ風のようにやって来て、通り過ぎるだけである。生命とはそれほどはかないものである。究極なまでに不要物を取り去り、世の不条理さを追求した前衛芸術作品。その衝撃とシュールさは強烈だ。ただのパクリという説もあるが。「バンビの息子、ゴジラに会うSon of Bambi meets Godzilla」という続編のようなものがあり、こちらでは息子が勝つ。ああ、不条理ここに極まれり!ゴジラが勝つか、バンビが勝つか?われわれの日常の悩みというものは、見方を変えれば、このようなどうでもいい悩みに過ぎないのではないか。所詮は「なるようにしかならない」のである。だったら限りある人生、悩みなど笑い飛ばして、大いに楽しみ、わが世の春を謳歌しようではないか、というタオの高尚な哲学の元に作成された、ものかどうかは不明である。足音のクラッシュ音「ズシーン」はピアノの重低音で表現されており、ビートルズの傑作「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のパロディという説もある。「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の歌詞は日常の中の不条理を扱ったものであり、共通する。また、この作品に影響されて、「空飛ぶモンティパイソン」のオープニングが作成されたという説もある。この映画も不条理をコメディにしている点で共通する。芸術か、駄作か?映画か、映画でないか?バンビ派か、ゴジラ派か?10点をつけるか、0点をつけるか?5000円で購入して得か、損か?悩みは尽きず、問題作であることは間違いない。今後も一部マニアの間で語り継がれてゆくでしょう。と、ここまで読むのに2分。Youtubeで観ると、チープ感が一層増すのでおすすめである。
[インターネット(字幕)] 3点(2009-10-15 13:49:17)(笑:1票)
76.  チェブラーシカ(1969) 《ネタバレ》 
1969年~1983年に作られたロシアの人形アニメ。非常に珍しいものを見せてもらいました。子供向けアニメはどこの世界でも変わらないですね。子供を思う心は政界共通と思いました。主要登場人物は、チェブラーシカ、ワニのゲーナ、意地悪おばさんのシャパクリャク。チェブラは観る子供が自分を投影できる「無垢な子供」、自分が何ものかを知る旅が人生です。ゲーナは親役、いつもチェブラのことを気にかけています。シャパクリャクは世間や大人の象徴でしょうか。物事を引っ掻き回す役で、意地悪もしますが、知恵があり、寂しがり屋です。敵に回すと怖いけど、味方にすると頼もしいです。物語はゲーナの行動によって動きます。本当の主役ですね。善意から行動するのですが、どこか間が抜けていて、笑えます。失敗したり、騙されたりしますが、最後には収まるところに収まります。ドタバタ劇の一種ですが、どこかもの寂しい雰囲気が漂っています。チェブラはたいてい不安そうな顔をしていて、音楽は短調。挿入歌が素敵です。「過去はちょっと惜しいけれど、未来はもっとすてきだよ。誰だっていいことあると信じてる。走るよ、走る。水色の汽車」特徴は、物語が終わっても、ちょっと待って、あれはどうなったのと気に掛かるところが残されること。①ライオンは動物園にいるが、友達がいないとガーナを訪れる。②船の錨を間違って持っていったまま。③シャパクリャが汽車で先に行っているのに、チェブラ達にトロッコで追いつく。④ケーキとダイナマイトの箱が同じ。⑤チェブラはワニの手紙や鉄くず集め募集の文字が読めたのに電報が読めなくなっている。ツボはガーナが空港でポーターに荷物を3個渡すが、気のいいガーナはポーターも乗せて自分が押し、荷物4個分の料金を払うところ。ポーターに悪意があるわけではなく、ポーターも抜けているんですね。何事もなかったかのように物語は進みます。おおらかな国民性の表れでしょうか?こういう笑いは日本人には珍しいですね。日本の笑いは、たいがい「オチ」や「突っ込み」があります。「大らかで、洗練されたユーモア」と解釈しました。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-10 13:00:46)(良:1票)
77.  男と女(1966) 《ネタバレ》 
低予算で作られた映画。片乗せカメラしかなかったので、揺れ動く映像に。カラーフィルム代が無かったので室内を中心に半分はモノクロに。撮り直しできなかったので、カメラにゴミが付着したまま。こういった状況を逆手に取り、斬新な”映画詩”が出来上がった。流麗な音楽、顔と手のアップの多用、不安を煽る下からのアングル、ガラス越しのカット、他愛もない会話、どれも研ぎ澄まされたように感覚的だ。全てが主人公二人の感情のゆれ動きを表現している。共に子持ちで、若く無い二人。子供が同じ寄宿学校で、配偶者を亡くしたという共通点が親密さを深める。男は初対面で女に恋をする。男は亡き妻に関しては心の整理ができており、恋人もいる。浮気者であるが、うぶなところもある。女は夫の思い出の中に生きている。突然現れた男に心が大きく揺れる。夫はスタントマンという危険な職業で、スタント中に事故死。男もレーサーという危険な職業。夫と男が重なる。事故続出のレース展開に、どれだけ男のことを案じただろうか。男が完走したと聞いて、思わず「愛している」と早まった告白電報を出してしまう。男は有頂天になり、車を飛ばして女の元へ。恋の手管をあれこれ思案しながら運転する楽しさ。昂ぶる心を抑えきれず、いざベッドイン。だが女の心に火はつかない。まだ夫の影を引きずっているのだ。頂点から失意のどん底へ。電車で帰る女。急ぎ過ぎたのか?反省する男。そうではない。女が自分を愛しているのは確実だ。大いなる愛で女を受け容れ、女が過去と決別するのを気長に待とう。男は車を飛ばし、駅で待ち伏せ。男を見た女は満面の笑みを浮かべて、その胸に飛び込んでゆく。危機を乗り越えた二人。愛は人間より強いのだ。男と女は理由なく魅かれ合う。たとえ自分が傷つくことがわかっていても。それがこの映画の主題だろう。それを言葉ではなく、音楽と映像で描く。雨降りのお花畑のような、明るいアンニュイの漂う恋愛詩。それまで誰も試みたことがない野心作だ。今後二人はどうなるか?男がレーサーを辞めるまで女の葛藤は続くと思います。あと夫が歌うところだけミュージカル仕立てだったのが気になりました。
[DVD(字幕)] 8点(2009-09-29 09:02:16)(良:3票)
78.  アパートの鍵貸します 《ネタバレ》 
バドは気が好いが、行き当たりばったりの男。アパートを上司の浮気用に貸して、出世をもくろむ。フランに好意を持っている。フランは不倫をして自己嫌悪にながらも、男の甘い愛の言葉を聞くと信じてしまうお人好し。その相手がバドの上司。バドは、割れたコンパクト(ハートブレイクの象徴)から、そのことを知る。傷心して、彼女のことをあきらめるが、彼女が彼のアパートで自殺未遂して急展開。看病の間にまだ愛していると気づきはじめる。彼女の兄に殴られて「いいんだ、ちっとも痛くない」と言うときが、彼女を心から愛していると気づいた瞬間。彼女をかばった結果なので、かえって嬉しいのだ。彼女に愛を告げる決心をするが、上司が離婚を決意して、また急展開。フランは男の言葉にまた騙されて「夢みたい」。バドは身を引くが、上司からアパートの鍵を貸せと言われて拒否。クビになるが、メンチェ(人間)に戻る。フランは上司からバドが会社を辞めたことを聞き、バドが自分を愛していたこと、彼を愛していることを悟る。アパートへ直行。バドは愛を告げるがフランは聞き流し、コートを脱ぎ、カードを始める。これは彼女が甘い言葉には騙されない女に成長したこと、古い殻を脱ぎ捨てたこと、人生の勝負をもう一度やり直すことを意味。誰も真似のできない小粋なエンディングですね。。キスを一度もしないラブコメは唯一無比。エレベーターは出世と恋の浮き沈みの象徴。その独創性に脱帽。気の利いた台詞のオンパレードです。「男は妻の元へ、そして女は…、このエビ味が落ちたわ」「(男が去ると)何もかも急に醜く見える」「(電話:いるのか?)いないわ」「なぜ人は恋するの」「女房持ちの恋にマスカラは厳禁なのに」「未練はいつになった消えるの。洗浄できればいいのに」「毎年ケーキを贈るわ」「(スペルができず秘書失格になったのを受けて)うまく言えないわ。(I can't spell)」「物事は成り行きだわね。But that's just the way it crumbles, cookie-wise.」マイナス要素は、自殺未遂させたこと。コメディには重過ぎます。
[DVD(字幕)] 8点(2009-09-29 04:17:56)(良:2票)
79.  じゃじゃ馬ならし(1967) 《ネタバレ》 
ドタバタの舞台の演出をそのまま映画でやっても大仰すぎてつまらない。オチが、妻はどんな場合にも夫に従っていればよいという女性蔑視ともとれる内容になっており、気後れがする。また男勝りの女性が、従順になってゆく過程がぶっとんでいて理解できない。とんでもないあばずれ娘なので、夫の家でも暴れるのを観たかった。夫の方が理不尽に暴れており、不幸な家庭としか思えない。そもそも常識的に女性の顔も知らずに、持参金目的だけで結婚を決めた結果がうまくいきはずがない。そこをもっともっとユーモアのある演出で補うべきだった。雨に打たれ、池に落ち、食事も抜かれ、妹の結婚式に着てゆくドレスや帽子も破かれては、カタリーナがかわいそうに思えてしまう。映画の意図としては失敗だろう。また全体を通して、シェイクスピアが見たら目をそむけるであろうような下品さと猥雑さに満ち満ちている。ドリフのコント以下であろう。頑張っている主役二人が哀れである。
[DVD(字幕)] 4点(2009-09-24 17:48:40)
80.  2001年宇宙の旅 《ネタバレ》 
人類の叡知を遥かに越えた未知の高度知的生命体がある。「神」に近いが、「神」では誤解を招くのでXと仮称する。Xは400万年以上前に地球に飛来し、第1モノリスを設置。Xが地球に生命の芽を植えつけたのかは不明。BC400万年に原人が第1モノリスを発見し、触れた。これでモノリスが原人の意識に作用し、原人は知的進化を遂げ、道具を使うようになる。道具の象徴である骨を投げると瞬時に宇宙船に変貌する。Xにとって数百万年は一瞬のこと。月で第2モノリスを発見。人が触れると(太陽に触れると)木星に信号を発した。第2モノリスは、人類が月に到達するレベルにまで進化したことを第3モノリスに知らせる発信機。木星探査の宇宙船が木星に近づく。探査目的はモノリスだが、添乗員には秘密。パニックを恐れたためだ。探査目的の秘密と、添乗員の命令に従うことは相反するので、宇宙船を制御する万能コンピュータHALは矛盾を抱えた。故に異常をきたし、エラーを起こす。添乗員が自分の抹殺を企んでいるのを知ると、逆に彼らを抹殺しようとする。ボウマンはただ一人生き残り、HALの切り離しに成功。そのとき本当の探査目的を知る。宇宙船が第3モノリスに近づくとスターゲイトが開き、異次元空間(他銀河)に移動、ボウマンは肉体を離れ、意識だけの状態に。そこでは時間軸がゆがみ、高齢の自分、死の直前の自分もいた。来世では宇宙を漂う赤ん坊に。人類は新たなる進化の段階を迎え、肉体を持たず、意識だけの知的存在に。それの象徴としてスターチャイルドが映し出される。HALの反乱は、万能を誇る人類の叡知もいまだ不完全であることの象徴。だから進化しなければならないのだ。この映画の最大の特徴は、神に近い知的生命体が人類を産み、進化させているという概念の提示。これは衝撃的。鑑賞後そら恐ろしいほどの畏敬の念に打たれるのは、それが同時に神の存在も身近に感じさせるからだ。会話や解説は極力廃し、映像と音により無意識に直接働きかける斬新な手法。数百万年単位で繰り広げられる、人類の誕生と進化の壮大な物語。美しいデザインと高い芸術性。宇宙船が子宮なら、HALは母。母を越えて、新しい人類の誕生。象徴性に富む内容。Xの概念が、実際の人類の意識の進化に貢献しているように思える。今もなお観る者に衝撃を与え続ける。映画を越えた映画、傑作中の傑作。最大の賛辞を込めて言おう。この映画がモノリスそのものなのだ!
[DVD(字幕)] 10点(2009-09-24 09:00:15)(笑:2票) (良:8票)
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