61. 追憶(1973)
《ネタバレ》 女性の自立を描いた大人の映画。赤狩りの描写は控えめだが、ケイティの意志の強さにある背景として問題意識はひしひしと伝わる。 B・ストライサンドは信念を貫く女性像を堅実に演じた。彼女が歌う主題歌は情感たっぷりで心に残る。 R・レッドフォードは凛々しい軍服姿がお似合いで適役だ。理想家肌で自立心の強いヒロインに対する常識的な男性像で、受けの芝居を的確にこなした。 愛し合いながらも主義主張の違いは乗り越えられず、別れるともお互いの人生を尊重する。男と女それぞれの道があっていい。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-04-24 20:09:47) |
62. ホット・ロック
《ネタバレ》 人を殺さず、ゆるい展開の犯罪映画。“失敗続きでも諦めずにミッション遂行!“の心意気がうれしい。 催眠術で宝石盗みはちょっと弱いけど「アフガニスタンバナナスタンド」………いいねえ。「チンチンチナパイポ」「シッコモーラー」「ゴリムリン」などの言葉のコレクションに、ユニークなものがまたひとつ加わった。 ラスト、盗みに成功したレッドフォードの硬い表情が徐々に「してやったり」の顔になって喜びを表すグラデーション、この一連のシーンもいいんだなあ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-04-10 12:35:12) |
63. ハート・ロッカー
「疑似ドキュメンタリー」と言えるような演出で戦場の実相を描写。手持ちカメラの撮影は臨場感を増し、極度の緊迫感の中で繰り広げられる映像の数々が観る者を惹きつける。 リアリズムを追求し、写実的な戦場描写に徹した演出は説得力を持つが、人間の物語は置いてけぼり。その点は物足りなさが残る。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-04-03 14:43:18) |
64. 麗しのサブリナ
プレイボーイのホールデン、堅物のボガート、妖精のように純な魅力のオードリー……三者三様の心の動きが面白い。おまけに、たとえ話の数々がユーモラスな脚本の妙。音楽も魅力的。最後の展開は甘いが、スターの魅力を十分引き出している。 「マイ・フェア・レディ」同様、オードリーが蛹から蝶になるかのような変身ぶりが楽しい。ファッションセンスの良さも光ってるね。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-03-20 21:06:09) |
65. 壬生義士伝
幕末を背景に、新選組に集った人々を描いた群像劇。中井貴一の独白シーンが見せ場だが、長すぎて間延びした印象だ。回想形式も食傷気味。 新選組の中で庶民としての一生を貫いた人物に焦点を当て、時代に翻弄された人々の生きざまを描いた点は評価できる。吉村貫一郎の、素朴な田舎者と剣豪ぶりとの二面性が味わい深い。 三宅裕司の芝居はせっかくのシリアスな雰囲気が台無し。方言云々には関わりなく、南部藩の重臣としては浮いた存在で緊張感に欠ける。かつて過去のテレビドラマを振り返る番組で、さんざん先人の演技や演出を笑いものにしていたが、まさにブーメラン。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2021-11-28 15:46:43) |
66. 暗くなるまで待って
《ネタバレ》 麻薬犯罪に巻き込まれた盲目の人妻をオードリーが熱演。冷蔵庫の開閉が最後まで伏線となり、光と闇を効果的に駆使した秀作。 スージーに対するサムの一見冷たそうな言動だが、よくよく考えれば障害者の自立を促す愛の鞭とも思える脚本が見事。 信じたマイクに絶望し、電話線が切られて絶望する中、屈折した性格の少女グロリアがスージーの目となり手足となって行動する。弱者と言える二人が協力して事件解決も意義深い。 悪党にも濃淡ありでロートの凶悪ぶりが際立つ。サスペンス映画はより強い刺激を求めがちであるが、本作はロマンチックな題名と裏腹の怖さが程よい。暗くなれば相手と対等以上に対峙できる強みは原題通りで、邦題「………待って」がいいセンス。 人形を力ずくで奪えば済むところだが、舞台劇を基にした“劇場型犯罪”は現代的ですらある。 [映画館(字幕)] 8点(2021-11-07 15:15:58) |
67. ハンニバル(2001)
《ネタバレ》 前作よりレクターの強烈な個性を可視化し、より刺激的であろうという思惑がみえみえ。メイスンの顔をこれでもかと見せたり、ポールのロボトミー痕らしきシーンが象徴的だ。 心理的な綾はみられず、ひたすら猟奇を強調した悪趣味が目立つ。レクターが自らの手を切断して逃亡という点も、クラリスに対する偏愛としてはあまり説得力がない。 鑑賞後、タラの白子や羊の脳みそ(スクレイピーの心配ない)に対する食欲は減退せず。 [CS・衛星(字幕)] 1点(2021-10-24 13:43:23) |
68. アパッチ砦
《ネタバレ》 カスター将軍を彷彿させる主人公の硬直ぶりが見どころ。2度目の鑑賞だがドンピシャのタイミングで、1か月あまり前に日本の政界で似たような光景があった。愚かな上司と翻弄される部下の関係は普遍的なものなんだなと実感。周囲の意見を聞かず独断でバンザイ突撃は悲惨な結果をもたらす。陰湿に人事権を振りかざす件もあり、現実と妙に符合する。 久しぶりにS・テンプルを見たくて鑑賞したが、サイドストーリー(フィラデルフィアとオロークの物語)は類型的で平凡。 現実のバンザイ突撃は、すんでのところで止める人がいたけどね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-10-10 21:13:49) |
69. 見知らぬ乗客
《ネタバレ》 交換殺人がテーマと思っていたが否、勝手にそれを持ちかけられて災難に遭う男の話だった。一方的な殺人に巻き込まれた「ガイの災難」という感じ。 F・グレンジャーの不安そうな表情が「ロープ」同様、うまく活かされている。彼が演じるガイの、母性本能をくすぐるような個性をブルーノは感じたか? マザコンのストーカー男ブルーノが不気味な存在感を示し、バーバラのメガネ姿にミリアムの面影を見る彼は、異常性が端的に表われている。R・ウォーカーが好演。 本来楽しいはずの遊園地が殺人現場になり、メリーゴーランドの暴走が緊迫感を盛り上げるなど、ヒッチコックらしい皮肉が随所にみられる。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-09-26 14:12:59) |
70. マイケル・ジャクソン/THIS IS IT
《ネタバレ》 延々と続くリハーサル映像の連続で平板だが、M・ジャクソンの思い「Love is my message」は心に強く伝わる。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2021-09-12 12:37:13) |
71. 頭上の敵機
《ネタバレ》 戦争映画ではあるが、人間ドラマとして興味深い作品。指揮官と部下の関係を通じ、優れて指導者論になっている。ストーヴァルの回想で始まる構成もいいね。 成果を上げるため部下には厳しい上司、「パットン大戦車軍団」はじめよくある上司像だなと思いながら観ていたが、終盤に精神の変調をきたす展開は予想外。組織におけるリーダーとしての葛藤や苦悩が描かれており、第二次世界大戦終結からわずか4年後にこのような映画が作られたことに驚き。 いかに優れた人でも強いストレスにさらされれば弱いもので、ピンと張りつめた糸ほど切れやすい。そんな主人公の内面をG・ペックは見事に演じた。 個人的には、部下たちから信望厚く細やかな人間性(不運を嘆く弱点含め)をみせるダヴェンポート大佐や、気配り上手なストーヴァル少佐にシンパシーを感じる。サヴェージとダヴェンポートの長所を併せ持った上司が理想かもしれないが。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-29 14:20:22) |
72. ナチュラル・ボーン・キラーズ
《ネタバレ》 “ロックな映画”で愛を語りたかったんだろうな。無軌道で刹那的で過激なことをやって………。 この手の映画はみな「俺たちに明日はない」の亜流に見える。あの作品との差別化を図り恋愛劇としてもブラック・コメディーとしても社会派としても尖がってるつもりだろうが中途半端な印象で、バイオレンスだけが浮き立つ。 刑務所でのインタビューが肝だろう。「すべての動物は必ず何かを殺してる」………人間も食べるもの(動植物)を殺めて生きている。言われなくても先刻承知。食うこと、環境破壊及び宗教まで持ち出して社会派ぶったセリフのやり取りにうんざりする。 かつてテレビで「なぜ人を殺してはいけないのか」としたり顔で語った輩を思い出し、この監督の偽善的な反体制ぶりが鼻につく。 [CS・衛星(字幕)] 0点(2021-08-15 15:17:44) |
73. 西部の男
《ネタバレ》 南北戦争後のテキサスを舞台に、農民と牛飼いの争いに巻き込まれた流れ者を描く。一見、W・ブレナンの儲け役が目立ちG・クーパーが食われたように見えるがさにあらず。クーパーが男の強さだけでなく照れや戸惑い、はにかみ等のきめ細かな仕草を見せてくれる。多少クセのある善人と言う感じで、ユーモアを交えた表情は味がある。女心を解しロイ・ビーンの心情も見抜き、対立する両者に話し合いで事態を収めようとする困難な役回りに説得力を持たせた。 焼き討ちシーンからジェーンの再起への決意に至るシークエンスは「風と共に去りぬ」を彷彿させ、麦秋で締めくくるラストがいいね。ただし、男二人の奇妙な友情を強調するあまり、最後まであくどいロイ・ビーンに対して甘い展開が物足りない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-08-01 11:42:35) |
74. ワイルドバンチ
アクションシーンは臨場感たっぷりで迫力は充分。キャストも興味津々だがW・オーツには興味なし。西部劇と言うより新タイプのバイオレンスアクション映画という印象で、「俺たちに明日はない」の二番煎じの感は否めない。 集団劇で芯になる人間がいないこともあり人物描写が単調。全体的に、男の美学・友情や滅びの美学というほどのものは感じない。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2021-07-18 13:44:24) |
75. アバウト・タイム 愛おしい時間について
《ネタバレ》 要はかけがえのない1日を大事にしようということなんだね。プロットはよくできており人生論として共感できる点があるものの、何度もやり直しができるというのは弱点でもある。もうひと工夫、制約があってもよかったかな。失敗してもやり直せる人生では深みが出るわけがない。手塚漫画を継承と触れ込みの小説「火の鳥」を読んで、過度のループ展開に飽き飽きしたことを思い出した。 親父のスピーチが最良だったということはラストへの布石。親子の愛情を淡々と綴り、何気ない毎日でも尊いものだと気づかせてくれる。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2021-06-27 20:14:43) |
76. 北北西に進路を取れ
《ネタバレ》 ストーリーテリングにご都合主義もあるが、見せ場を随所に用意して手に汗握るスリルの連続が良い。ハラハラドキドキながらラブストーリーに重きを置いた、監督お得意の巻き込まれ型サスペンス。ラブシーンは相変わらずうまい。 列車、飛行機、オークション会場等、舞台を転々として展開する中、広大な平原のバス停で一人ポツンと待つ主人公が印象深い。ラストのラシュモア山から列車シーンへの画面転換がお見事。 ジョージ・カプランの謎やスパイ団の緩慢さ等、演出の不満をヒッチ先生に言っても「たかがマクガフィンじゃないか」とケムに巻かれそう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-06-13 20:24:58) |
77. ロープ
殺人シーンで始まる倒叙的展開がいいね。舞台劇の映画化で場面転換に乏しいが、会話劇として観れば面白い。ワンシーン演出はあまり意識せず鑑賞。 死者の上に料理を並べる行動が二人の異常性を表わしサスペンスを生む。優生思想批判を織り込んで心理的な駆け引きもあるが、社会派心理劇と言えるほどの深みはない。フィリップ(F・グレンジャー)の終始不安そうな表情が印象的。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-06 21:16:24) |
78. 飛べ!フェニックス
《ネタバレ》 砂漠から脱出するために飛行機を作り直すという、奇想天外な発想がいい。 「知性に欠けた人間の反応」・・・冷徹なドーフマンをH・クリューガーが好演。機長とルーに模型飛行機の薀蓄を語る、半ば狂気的とも感じるオタクぶりが面白い。 登場人物たちの、良くも悪くも人間味あふれる描写が秀逸。それぞれ弱さを抱えながら困難を克服する姿に感動する。 絶対的な危機にあっても可能性がある限り最後まで希望を捨てない・・・良いメッセージだ。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2021-05-23 13:42:21) |
79. 愛情物語(1956)
《ネタバレ》 短い人生を駆け抜けた音楽家エディ・デユーチンと、マージョリー、チキータ、ピーター、それぞれの関係における愛情物語と言える。悲しい結末であり親子が同居しない選択に不満はあるものの、鑑賞後は心の中にさわやかな風が吹いた。 連弾からの、主人公不在のラストシーンは必見の価値あり。「ラストシーンが心に残る映画」という企画があればぜひ入れたい佳作。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-05-09 20:22:14) |
80. バラキ
C・ブロンソンの持ち味を生かしたとは言い難いが、マフィアの大物役ではなく下っ端の回想と言う役回りゆえやむを得ないところ。髭を剃りソフト帽をかぶった姿はキマってるね。若い頃の精悍さはないが、往年の「マシンガン・ケリー」を思い起こす。 組織の大幹部を中心にした大河ドラマに陥らず、実録風にマフィアの怖さ・権力闘争を描き、現実を直視した内容が良い。 [CS・衛星(吹替)] 7点(2021-04-25 10:39:52) |