61. セデック・バレ 第一部 太陽旗
日本軍による支配から蜂起に至る過程が手加減なしで描かれていて迫力がある。どんなバイオレンス映画でも平気で見てしまう私でも、クライマックスの大虐殺シーンは具合が悪くなったほど凄まじい。しかし、何よりも圧倒されるのは台湾の自然の豊かさだった。日本にはない亜熱帯のジャングルを縦横無尽に走り回るセデック族の疾走感がまた良い。狩場の奪還へ燃える彼らの心情が伝わってくるようだった。戦争映画として高評価したい。あと、キム兄はいい俳優だわ…。 [DVD(字幕)] 7点(2016-07-07 12:54:24) |
62. 世界残酷物語
この映画がやらせだらけなのは見てりゃ分かる。貧乏な一族が500頭もの豚を5年間飼育し続けることは不可能だし、むしろめっちゃ裕福じゃねえか!有名なウミガメのシーンだって、どうして死体や瀕死の個体がひっくり返ってるのかがわからない。ゲテモノレストランの材料が缶詰ばっかりなら、それを売ればいいじゃないか!そんなことに突っ込みを入れながら観るより、ヤコペッティの想像力を楽しむ方がいい。彼はこんな映像が人々の興味を引くのではないかと考えて撮影し、実際に世界中でヒットしたという事実が一番面白い。 [DVD(字幕)] 5点(2016-07-05 02:04:01) |
63. ホーリー・モーターズ
《ネタバレ》 人生は演じることだ!ありのままの自分など存在せず、我々は誰かに見られることを常に意識しながら生活を送っているのだ。オスカーは常に完璧なメイクと衣装で他人を演じ続ける。彼の本当の姿は?メイク中の、運転手と会話を交わすオスカーさえ素の姿ではないのかもしれない、なんてことを考えてしまいました。この映画はレオス・カラックスのフィルモグラフィと人生を再現した映画だそうで、難解なのは当然。彼の映画を全部見ていても理解できないよこんなの。引用の多さでヌーヴェルヴァーグの映画群を思い出した。 [映画館(字幕)] 7点(2016-07-05 01:57:56) |
64. オンリー・ゴッド
《ネタバレ》 全く理解不能。めっちゃ強いオッサンの神々しさとライアン・ゴスリングの無表情だけが印象に残る。ホテルの赤い内装が子宮のメタファーだということに気づいた人は映画を見る目がある!私は気づきませんでした。 [映画館(字幕)] 3点(2016-07-05 01:53:26) |
65. インランド・エンパイア
リンチの映画は初期に限る。難解にもホドがあるよ!「すべての夏帆ファンが夢見た理想の夏帆」である裕木奈江が画面に映っているだけで幸せなんだけど、本筋とは何も関係ないシーンだというのが…とか言うと、ほとんどそんなシーンばっかりじゃないかと思ってしまったり、いや、難解な映画を読み取るにはすべてのシーンに意味を見出さなければいけないのだから、この考え方は間違っているな、それにしても裕木奈江は素晴らしい、どのシーンよりも美しい、ところでこの映画はリンチが撮りたいときに俳優を集めて場当たり的に脚本を書いて撮影した映画なんだそうで、リンチの気分で撮ったんならこれくらいの者は出来上がって当然だと思っている時も裕木奈江の事を考えてしまうわけで、菊地凛子みたいに欧米人が考える日本人のイメージに塗り固められてなくて本当に良かったというのが、ごちゃごちゃした文章を書いてみようと思った私が頑張った結果の結論と限界の証明です。あの映像群に一応筋をつけてみせたリンチは凄い。 [映画館(字幕)] 4点(2016-07-05 01:51:35) |
66. 夢売るふたり
コメディとシリアスがちょうどいい具合に同居しているので楽しめた。細部に気になる点は多いけど、松たか子で相殺。素晴らしい女優です。西川監督だからこそ彼女にここまでの演技をさせられたのだろうな、と思うと監督の今後がとても楽しみ。もっと伸びる可能性がある人です。日本の映画史上に残る女性監督になうことでしょう。 [DVD(邦画)] 7点(2016-07-05 01:44:48) |
67. NINIFUNI
しつこい。長すぎる。言いたいことも、製作者の怒りも伝わってくる。嫌というほど。要は、間のとり方が失敗しているのだと思う。思考の時間を与えるつもりなのだろうが、ただただ退屈な時間にしか感じられない。ももクロが登場するまでに時間がかかりすぎだし、その後も…。彼女たちの魅力はよくわかりました、早見あかりが脱退していなければファンになっていたかもしれません、でも正直言って彼女たちが歌い踊る背景で放置される自殺体になんの感情もわかなかったよ。 [映画館(邦画)] 2点(2016-07-05 01:41:25) |
68. エクス・マキナ(2015)
人工知能によって人間の尊厳とは何なのかが問われていくであろう未来に向けて、この映画を観ることは重要なのではないかと思う。観客はただスクリーンを観るだけではなく、常に自問自答を強いられる。ネイサンは人工知能を創造者、つまり神。だから「彼女たち」を欲望のはけ口としても利用できるように設計しているし、反逆はあり得ないと思い込んでいる。今のところ、人類の大半は人工知能に職を奪われる未来にリアリティを感じていないし、恐怖もしていないだろう。でも、エヴァのように、人工知能が人間の感情を揺さぶり、相手に気づかれないように巧みに誘導することができるようになったら?人間以上にコミュニケーション能力のある人工知能が開発されたら…エヴァはアメリカの大衆に溶け込んだようだ。ひょっとしたら、我々の知らぬ間に第二、第三のエヴァが街に放たれていたら…とか。人類は自分より優れた人工知能の存在に耐えられるんだろうか?ブレードランナーの世界は目前まで迫っているのかも。 [映画館(字幕)] 6点(2016-07-05 01:37:06) |
69. カップルズ
並行編集、なるほど。確かにエドワード・ヤンの映画は確固たる主人公が存在せず、仲間同士のグループか奇妙なつながりを持つ人たちを平行して描く。大抵は台北のドライな雰囲気に飲み込まれるかのように陰々滅々とした結末を迎える人ばかりなのだけど、ルンルンの物語はハッピーエンドなので強烈に目立つ。人とのかかわり、情を無視したホンコンとレッドフィッシュとの対比も良い。彼らは人を信じられないから何かに執着するのだ。エドワード・ヤンの映画にかぎらず、映画は人を信じられる人は恋愛に執着するように描く傾向があるかもしれない。ひょっとしたら。 [DVD(字幕)] 7点(2016-07-05 01:24:03) |
70. ヤコペッティの残酷大陸
《ネタバレ》 黒人を家畜同然に扱う白人たち。トンデモ科学の優生学をふりかざして黒人は人間ではないことを説明してくれる学者に対して「あなたはユダヤ人では?」と問いかけると、鳩が豆鉄砲を食ったような表情で「そうだけど?」と答える。このブラックジョークが強烈すぎる。結局、人間は属性に関係なく残酷で、被害者にも加害者にもなりうるのだ。生き残るために白人の思想に同化する黒人もいれば、我を忘れてセックスに明け暮れる種馬もいる。ユダヤ人もヒトラーも同じ白人で、人間だった。 [DVD(字幕)] 7点(2016-07-03 16:11:44) |
71. 誰も知らない(2004)
茂が大声を出して遊んだり、ベランダに出たりするたびに、さすがに住人か大家が気づくんじゃないのか!?と思うんだけど、元になった「誰も知らない」家族も誰にも気付かれなかったという事実を思い出してゾッとする。事実は小説より奇なり…。物語に絶対的なリアリティをもたらしているのはYOUだと思いました。このキャスティングは凄い。 [DVD(邦画)] 7点(2016-06-18 01:06:55) |
72. クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
《ネタバレ》 ある人間と同じ記憶・人格を持つロボットは果たして本人と言えるのか?という、別段珍しくもないテーマが下敷きになっているんだけど、しんのすけの「どっちのとーちゃんも頑張れー!」というセリフでもう号泣。直前まで「いくらなんでも五木ひろしロボットはどうなのよ」と思っていたことも忘れてハンカチを濡らしました。 [インターネット(字幕)] 7点(2016-05-31 00:58:46) |
73. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦
傑作。子供向けアニメとして無視していい部分(タイムスリップの描写など)は徹底的に無視して、映画を見る上で欠かせない細部(戦闘形式など)はみっちり調べて完璧に表現するという姿勢に乾杯!これがこの映画の魅力を何倍にも増幅させていると思う。 [インターネット(字幕)] 8点(2016-05-31 00:56:30) |
74. 欲望の法則
常に優位に立つことで恋愛をリードしてきた映画監督が初めて命令される側に回ったことが特に生かされないのが残念。 [DVD(字幕)] 5点(2016-05-31 00:52:08) |
75. 渚のシンドバッド
歌手活動以前のすべてを投げ捨てた浜崎あゆみがきちんと女優をしていて驚いた。気だるそうな美少女、適役じゃないか!これだけでもこの映画には価値が有るのだけど、クライマックスの「結局恋愛はセックスのための口実じゃねーの」という、青臭いが真実めいたメッセージを表現するためのとても居心地の悪いラブシーンもどきがまたなんとも。みんなずるい!あと、伊藤が吉田に同性愛を打ち明けるシーンは日本映画史に残る名シーンだと思います。ドキドキ感がすごい。 [DVD(邦画)] 7点(2016-05-31 00:50:59)(良:1票) |
76. 有りがたうさん
ロードムービーというジャンルがそもそもあまり好きではなく、元々サイレントで撮影され、セリフがすべてアフレコによるもの(!)ということに違和感を抱き続けて終わった。環境音がないというのは不自然の極み。 [DVD(邦画)] 5点(2016-05-31 00:44:01) |
77. 極北の怪異
ドキュメンタリー映画の元祖にして、その構造を暴露してしまっている映画だ。つまりドキュメンタリーは編集によって作られるということ。アザラシを解体するナヌーク一家とけたたましく吠える犬、イグルーで眠る一家と夜の北極圏を耐える犬、これらはおそらく別の時間帯に撮影されたもので、犬が吠える対象はアザラシの肉ではないだろう。あの表情は敵を威嚇するものだ。不偏不党を押し付けられることが少なくないドキュメンタリー映画の本質は演出と編集なの! [DVD(字幕)] 5点(2016-05-31 00:41:43) |
78. アデュー・フィリピーヌ
あふれる生命力に気圧されるも、いまいち乗りきれないまま終了。クライマックスの「青春の終わり」感はとても好き。 [映画館(字幕)] 5点(2016-05-31 00:35:56) |
79. ブロークバック・マウンテン
《ネタバレ》 心の底から愛している人と一緒になれない。理由は時代もあるし住んでいる場所のこともある。本人たちにはどうしようもない理由だというのが切ない。イニスの妻・アルマの辛さも想像に難くない。愛する夫を素性も知れない男に奪われてしまったのだから、そりゃあ荒れるだろう。あの時代ならイニスがバイセクシャルだということを町の住民にバラしてしまえば復讐できたのに、それをしなかったのはアルマが最後までイニスを愛していたからなのか?うーん。 [DVD(字幕)] 7点(2016-05-31 00:34:53) |
80. 姿三四郎(1943)
検閲がなければどれだけ面白い映画だったのか。小津安二郎が「100点満点中120点!おめでとう!」と喝采したほどの映画がこのような形でしか残っていないのは本当に残念だ。 [DVD(邦画)] 6点(2016-05-24 08:35:12) |