61. ジョン・ウィック
《ネタバレ》 キアヌ・リーヴスはこういうことがあるから侮れない。そろそろ落ち目かなと思わせたときに「マトリックス」が来て今回はこれ。「マトリックス」ほどのインパクトはさすがに無いがシリーズ化できそうな作品だし今後も期待できるかもと思わせる。 「犬が殺されたくらいで」と言う人もいるだろうが犬はきっかけにすぎない。人には踏み入ってはいけない領域がそれぞれあるのだ。蹂躙するのなら蹂躙される覚悟をしておかなければならない。マフィアの息子ならなおさら。まあピンポイントで凄腕の殺し屋を襲撃してしまうという渾身のボケをやらかしたから仕方ないね。 売りはやはり銃撃戦。面白いようにヘッドショットを決めていく様はなかなか面白い。まるでゲーム感覚。スタイリッシュであると同時に確実にとどめを刺していく姿は現実的なアクションだと錯覚させる。さすがにガンアクションだけではもたないと感じたのか素手のアクションも挟むがこちらはガンアクションに比べると少々もたつく。これらをテンポ良く消化できるともっと良かった。 殺し屋の世界観、映像や雰囲気も良く一見の価値あり。しかし、こういう役をやっても「しぶい!」と思わせないキアヌ・リーヴス。年齢も50を越えているのにどこか「青年」を思わせる。この不思議な感覚がこの映画の雰囲気に妙に合っていると感じた。 [映画館(字幕)] 7点(2015-11-24 01:32:23) |
62. カリフォルニア・ダウン
《ネタバレ》 誘われたから観に行ったのだがそういえばパニック映画を映画館で観たのはいつが最後だったか。「ジュラシック・ワールド」もパニック映画というなら最近なのだが災害映画という意味でなら記憶がない。90年代後半はかなり多かった印象だがいつの間にか映画館でそういうジャンルの映画を観なくなっていたことに気がついた。あの頃はすごい映像が観られるだけで満足していたのになあ。 さて本作だが最新の映像技術で作り上げられた災害シーンはかなりの大迫力。主人公は現役から離れた元消防隊員にすべきだったかもなあと思ったり、奥さんの恋人が露骨なまでの夫の株上げ要員だったり(しかもきっちり死ぬところも描かれて)するのだがなんとも分かりやすいアメリカ的な娯楽映画になっていて90年代後半に映画館で楽しんでいた災害映画たちをなんとなく思い出し懐かしい気分にもなった。久々に観た映画館での災害映画はベタであってもかなり新鮮に感じられ、逆にベタだから安心して楽しめる感じもあり、最初から最後まで災害シーンの波に浸ることができてかなり満足したというのが正直な感想だ。 それにしてもドウェイン・ジョンソンのあの絵面の頼もしさといったらないね。奥さんが別れようとする気持ちが全く分かりませんわ。 [映画館(字幕)] 7点(2015-10-03 03:59:31) |
63. THE GREY 凍える太陽
《ネタバレ》 想像していた感じの内容ではなかったのは確かだ。遭難するというくらいの情報しか持たずに観始めたがサバイバルの末の生還劇をやはりどこかで期待していたのかも知れない。 ああいう環境で遭難したのだが寒さや飢えが最大の敵ではない。彼らの最大の敵は狼だ。彼らはメカのように一人ずつ生存者を殺そうとしてくる。だがああもきっちりと単調に一人ずつ死んでいく姿を見せられるとただの理由付けのようにも感じられるのが残念だ。生還劇ではないのだと途中でなんとなく感じたのは生還劇らしからぬ死に方を見せられたからだが、ならばこれは一体どういう作品なのだろうかと観終わって考えた時「無意識の内に死に場所を求めていた主人公」に生存者たちが巻き込まれているようにも見え改めて救いが無いと思った。 こういう作品にしてはちと長いとも感じたし恐らく観返すことはないだろう。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-10-03 02:49:34) |
64. アナベル 死霊館の人形
《ネタバレ》 「死霊館」で強い印象を残した人形の経緯を描いたスピンオフ的な作品。 1969年のシャロン・テート殺害事件を起こしたカルト集団を絡ませてくるあたり「ローズマリーの赤ちゃん」をどうしても連想させ興味がわくのだが、いかんせん序盤以降はあまり怖くない。中盤あたりは退屈に思えて眠気さえ覚える。ホラーで眠気を覚えたらどうしようもないのだが中盤以降でいちばん怖かったのはミシンだ。ミシンをあれだけ強調すれば「ああ、刺さるんだろうな」とわかるのだがその直接的な恐怖にオカルト的な恐怖が勝てていないのが問題だ。 そしてラストの自己犠牲。たしかに娘はいなくなった。しかし、自己犠牲的な行動をするほどに追いつめられている状況にも見えず、そんな段階で「私が死ぬ」「いえ、私が」とやられても困惑しかないわけで。しかも自ら犠牲になったのは本屋で知り合ったただの知り合い。もちろんその女性にはその人なりの想いがあっただろうが明らかに描き足りていないため唐突な印象しか受けない。題材としては面白そうだったのに残念。 [ブルーレイ(字幕)] 3点(2015-08-22 19:58:46)(良:1票) |
65. ゲッタウェイ スーパースネーク
《ネタバレ》 「ゲッタウェイ」というとスティーヴ・マックィーンのあれかななどと思ってしまうが何も関連はありません。スーパースネークというのは車の名前なのね。メチャクチャ丈夫で最初から最後までずーっとカーチェイスをしている本作だがこの車じゃなかったら死んでるね。 警察との小競り合いから派手な爆発もあり終盤には長回しまであっていろんな車を使ったアクションが観られる。でも全編カーチェイスというのはいさぎよいと思いながらもちょっと飽きてくるかな。それにしてもあの駅には一体何が置いてあったんだ。恐ろしいくらい連続爆発が起きていたけど。カーチェイスでは警察も車は壊してなんぼの精神で突っ込んできてくれるし、主役がピンチの時には悪党の車にどこかのトラックが突っ込んで来てくれる。ある意味お約束だね。 巻き込まれる少女はこの車の持ち主でハイテク関係に詳しいスペシャリスト!ただの女子高生くらいにしか見えないし家は金持ちっぽいけど一体何者なんだ。まあ突っ込みどころはいろいろあるが尺も短いし気軽に楽しめる。黒幕はチラリと顔が見えるだけだがジョン・ヴォイト。そういえば久しぶりに見たな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-08-17 20:31:44) |
66. ヒッチコック
《ネタバレ》 映画のベストランキングが発表されると数多くの作品がランクインする名匠ヒッチコック。現在では彼が映画界に与えた多大な影響を疑うものはいないが彼でも現役の時は「もう退き時では?」などと言われてたり、検閲のことでもめたり、製作費に苦心して買うものを切りつめたりなど…やはり映画を作るというのは簡単ではない。 「サイコ」製作時のエピソードだが話は奥さんとのやりとりが中心。アンソニー・ホプキンスとヘレン・ミレン。安心して観ていられるのはさすがだ。友人と共同脚本の作業をする妻を「不倫をしているのではないか」とシャワーの後の砂を集めたりとヒッチコックの偏執的なところも描くが基本的には彼の悩みは我々が日常に抱く悩みとそうは変わらない。人間だもの。「サイコ」が出来上がった当初は退屈な作品という評価だったのは知らなかったが、「すぐに再編集しましょう」と妻が立ち上がってからはすいすいと良い流れに。編集の重要性と共にアルマという女性が仕事でも良きパートナーだったことが窺える。 役者も良いし退屈はしないのだがズバッと深く切り込む作品でもないのが少々残念。しかしヒッチコックが有名なシャワーシーンで観客の反応を窺いながら音楽に合わせて切りつける動作をするところはなんとも微笑ましい。思わず体が動いたのだろうが監督の指揮に合わせて観客が悲鳴を上げるようにも見えバッチリ狙い通りといったところか。監督にとっては批評家のどんな賛辞よりも生の観客の反応が何より嬉しいものなのだろうなあ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-08-17 19:43:18)(良:1票) |
67. ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション
《ネタバレ》 5作続くシリーズだが毎回監督が違うせいか作品の毛色がいつも違うこの「ミッション:インポッシブル」シリーズ。だが4作目が好評だったためかどうかは知らないがキャストも方向性も前作に近い感じを受ける。トム・クルーズの体を張ったアクションはもうお約束だが3作目のようにシリアスになりすぎずユーモアもたっぷりで娯楽に徹した作りだ。 しかし、予告編やCMでも今作の売りとばかりに流れていたあの飛行機に張り付くアクションが冒頭に出たのには驚いた。もちろんこの後もアクションシーンは満載なのだが冒頭のようにド派手なものではない。今作のアクションはどちらかというとスマートな印象を受ける。スタイリッシュというよりスマートでキレがある。特にオペラでのアクションが気に入った。ドタバタになりそうなところをいい塩梅に緩急をつけ緊張感を切らせず、しかし最後に脱出するところはユーモアで締める。見事!その後に続く水中アクション、車からバイクへ続くハイスピードなカーチェイスも見応えがあり飽きさせない。そして、ラスト。このシリーズはいつもラストは黒幕と殴り合ってる印象があって今回もそうなるのかと思ったが良い意味で意表をつかれた。殴り合いで屈服させるより屈辱的な確保の方法だし、序盤に自分がやられたことのお返しにもなっていてやはり今作はスマートで粋だ。 ヒロインもミステリアスで良かったし(顔は好みじゃないかな)、サイモン・ペッグやジェレミー・レナーの続投、皆勤賞のヴィング・レイムスも嬉しいがやはりトム・クルーズが素敵だ。素でもかっこいいがアクションをこなしているトムはやはりメチャカッコいい。「3分間息を止めるのなんて余裕だよな」と言われた時の顔もお茶目で、いろんな表情のトムが観たかったら「ザ・エージェント」の次にこれを推すかも。最近は「もう映画賞なんか知らん」と言わんばかりに娯楽作を製作、出演しているが気がつけば50越え。いつまでも楽しませてくれる貴重な映画スターだ。 [映画館(字幕)] 8点(2015-08-16 22:21:07) |
68. ジュラシック・ワールド
《ネタバレ》 気がつけば14年ぶりの新作。え、もうそんなに経っちゃったの?そういえば恐竜映画を長らく観ていなかった。 1作目は自分が中学生の時。CGの恐竜に目を瞠りながらもどこか夢中になりきれなかったのを覚えている。恐竜が大好きだった小学生の時に観られたら生涯の一作になっていたのだろうか。 さて今作だが展開としては1作目に近い感じ。結局は人間のなんでも管理して支配できるという傲慢さをあざ笑うかのような展開に。しかし、過去の事件で恐竜を管理することの難しさ、恐竜の恐ろしさは嫌でも味わっただろうに。そういうところは教訓として活かされてないのね。20年前の事件なんて知らないよと言わんばかりの逃げられ方のあっけなさ。ヒロインは運営責任者らしからぬ行動ばかり取るし、CEOはなぜかヘリの操縦にご執心で案の定…。もういいよ!人間が愚かなのはわかったよ!! 映像は迫力はあるのだが14年ぶりだしこれくらいはやるだろうという域を越えてない印象。意外と一つ一つの出来事はこじんまりとしていて怒涛の展開とまではいかず、全世界興行収入3位に躍り出るほどのインパクトは残念ながら感じられなかった。個人的に一番印象に残ったのは兄弟の付き添いの女性の末路かな。ひどい死に方というのは印象に残るもんです。 あれ?全然褒めてないなこれ。でも観ている間はそれなりに楽しめたかな。家族で楽しめるサマームービーになっていると思うし、このシリーズのファンには終盤の展開に熱くなる人も多いでしょう。なにより子供たちがまた恐竜映画を楽しめるのは喜ばしいことだと思う。 [映画館(字幕)] 6点(2015-08-10 04:32:20)(良:3票) |
69. インサイド・ヘッド
《ネタバレ》 ここ数作は自分の好みの作品がなかったピクサーだが今作は久々に面白いと思えた。 人間の頭の中はあんな単純なシステムじゃないよなあと思いながらも作品に引き込まれていくことに気づく。ヨロコビ以外はネガティブな感情なんじゃないかと思ってしまうがどの感情も必要なもの。子供のときは思いのままに感情を開放していたがそれではいけないと気づいたのはいつだっただろうか。カナシミとの付き合い方を知ることが成長、大人になるということを感情たちの旅を通して少女の心とシンクロさせながら描く手腕はお見事。 ビンボンや思わず口ずさんでしまうCMのフレーズなど「ああ、あるある」と感じるのは子供より大人の方だろうか。いろいろな意味で子供もきっと楽しめる作品だろうけど大人の方がより楽しめる作品に感じた。多くのサブキャラも楽しい今作だが、まさか「理想のボーイフレンド」をああいう風に使うとは思わなかった。頭の中とはいえカオスだ。少女は「理想のボーイフレンド」を踏み台にして成長していくのだ! エンディングのいろいろな人の頭の中も面白い。ネコの頭の中は超適当。ああ、気まぐれなわけだ。 (字幕上映が無かったので吹替えで観たがヨロコビを演じた竹内結子が光っていた。竹内結子の吹替えというとテレビ放送の「タイタニック」しか覚えが無いがとても上手くて驚いた。 あと上映前のドリカムの歌の必要性がよくわからない。本編前に短編が入るのもお約束になってて、その上その前に予告編もある。散々待たされたと感じる人も多いだろうに。主題歌とか言ってるけど本編で使わないならただのイメージソングですな。) [映画館(吹替)] 8点(2015-08-03 03:46:36)(良:1票) |
70. ターミネーター:新起動/ジェニシス
《ネタバレ》 「3」「4」と経てハードルは下がっていたはずだった。もちろん「1」「2」ほどの傑作は初めから期待していないが、やはり子供の頃から観てきたシリーズだし思い入れもあるから映画館へと足が向く。オープニングは戦争に勝利した未来のジョンとカイルがタイムマシンを見つけカイルが過去へと飛ぶ場面。長いシリーズの中でたしかにここは映像化されてないなと思い「結構楽しませてくれるかも」という期待が膨らみそうになる。が、ここまでとっ散らかった話になってしまうとは…。 キャストではエミリア・クラークはふとした瞬間にリンダ・ハミルトンの面影があるような気がして中々悪くない。だがジョンとカイルは地味で絵的にあまり映えない。ジョン・コナーほど同じシリーズでありながらここまで顔に一貫性がないキャラクターも珍しいが、「4」でクリスチャン・ベイルが演じイケメンに回帰したと思ったら今回はおっさん顔のジェイソン・クラーク。うーん。カイルは見た目も行動もゴリラにしか見えずサラとのロマンスが生まれる気がしないがラストではキスしてた不思議。だがキャストの問題というより作り手の問題のような気がした。 序盤はまだ興味を持続させるが物語が進むにつれ正直どうでもよくなってくる。ジョンが敵になる?ならばそれなりの必要性やドラマがあっても良さそうだが見当たらない。サラ、カイル、ジョンが勢ぞろいしてもなんの感動もドラマも生み出せないこの物語は何だ?「2」では数日過ごしただけのジョンとT-800との間にはドラマも感動もあったのに、数年過ごしているはずのサラとT-800の間にはドラマも感動も希薄だ。安っぽいテレビドラマを見せられているような感覚。作り手が小手先だけで観客を驚かせようとしているようにしか見えない。 映像面でも最新技術を使っているはずだが特筆するような場面はあまり思いつかない。「1」の懐かしい場面を織り交ぜた序盤のアクションは興味を引くがなぜだかこの作品は全体的にノリが軽くアクション場面でも緊張感に欠ける。売れない芸人の一発芸的なT-800のぎこちない笑顔ネタをなぜ繰り返しやるのか。液体金属風呂に浸かったらバージョンアップとかジョークにも程がある。 思い入れのあるシリーズだけに辛辣な感想になってしまった。この作品を「4」みたいに新シリーズとして売り出したいようだがここまでとっ散らかった話を今後誰かがコントロールできるとは思えないし、そろそろ無理して作る必要もないのではないか。ここまで続編に失敗するのを見るとサラ、カイル、ジョンそしてシュワちゃん顔のT-800にこだわることさえ呪いのように思えてくる。 [映画館(字幕)] 4点(2015-07-13 02:03:29)(良:1票) |
71. マッドマックス 怒りのデス・ロード
《ネタバレ》 「マッドマックス」シリーズは自分より少し前の世代がピンポイントでその世界観に影響を受けた(というよりモロパクリした)「北斗の拳」の方が触れるのが早かった。だから一応シリーズは観ているのだがそこまで入り込むこともなく、そして今回の新作の話も随分前から噂されては消えをくり返していてほとんど期待していなかった。が、まさかここまでの傑作アクションになるとは。 ストーリーはシンプル。行ってそして戻ってくるだけ。その中に息をつく暇もないカーチェイス、アクション。砂、煙、炎、水、血…。そして狂気と生と死。草木も生えない世界。どこへ行っても地獄なのだ。そこで生きようともがく登場人物は後がない連中ばかり。だからこそ彼らの極限状態での行動が胸を打つ。世界観は狂っていて馬鹿だが作りこみは本気だ。止まらないチェイスやアクションはCGに慣れた目に新鮮だし、よく計算されていて飽きさせない。昨今の映画では並ぶものが思い浮かばないくらい迫力があり壮絶だ。 この映画の芯は間違いなくシャーリーズ・セロン。物語的にも主役と言ってよく彼女の演技が要所でこの作品をうまく締めている。ボロボロになっていく彼女はカッコ良く美しい。その割りを食う形になったのは主役のマックスを演じるトム・ハーディだろうか。個人的にはがんばっていたと思うし低音ボイスもいいが存在感はメル・ギブソンと比較されてしまいそうだ。もう少し背があると良かったのかなあ。 まあそんな細かいこともこの映画が持つ熱量で吹き飛ばしてくれる。もう一度観に行きたいと思わせる娯楽作品は久々!絶対劇場で観た方が良い類の作品だ。 [映画館(字幕)] 9点(2015-06-22 01:35:16) |
72. ファイティング・タイガー
《ネタバレ》 キアヌ・リーヴスが監督をやるというイメージがあまり無かったが「マトリックス」で相当惚れ込んだのか初監督作はカンフー映画。武術指導にユエン・ウーピンを迎えているので安定したカンフーアクションをじっくり見せてくれて好感触。 主役はキアヌではなくあまり主役という感じはしない顔だちの人(デコ広い!)。もちろんアクションができるから選ばれたのだろうがかなり地味だ。まあ無垢な青年が闇格闘技にのめりこむ内に暗黒面を見せ始めるというストーリーだから無垢な感じは出てるとは言える。まさかこの人を主役に選んだからそういうストーリーにしたんじゃあるまいな! 終盤の「ザ・レイド」の主役とはじっくり闘って欲しかった。もったいない。ラスボスはキアヌ本人。寺までわざわざ出張って「マトリックス」でダウンロードしたデジタルカンフーを見せてくれます。 それにしても車であれだけ転げ落ちても普通に動けるカレン・モク姐さん丈夫すぎ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-05-27 03:48:37) |
73. セッション
《ネタバレ》 すごい映画だ。勢いがあってテンポもいい。緊張感も抜群。終盤の盛り上がりも稀有なものだし、こういう瞬発力のある映画はもしかすると映画の理想系なのではないかと思わせるくらいだ。監督が撮影当時28歳だったのは驚きだが逆に若いのが功を奏したのかも知れない。歳をとって落ち着いてからではこういう映画は撮れない気がする。 天才はどうやって生まれるか。血の滲むような努力とありえないほどの困難に直面しなければならない。かどうかは知らないが少なくともフレッチャーはそう信じている。彼には自分の手で天才を生み出すということしか頭にない。主人公のニーマンはそれに喰らいつく。ガールフレンドを捨て練習に没頭する。彼には友人らしき人間がいない。親類をも罵倒する彼はドラムで大成することしか頭にない。それが成就するなら孤独に早死にしてもいいと思っている。だからフレッチャーのありえないしごきにも喰らいつく。彼は恐ろしい人間だが自分を高めてくれる存在と信じたからだ。この二人には我欲しかない。ニーマンは間違いなくフレッチャー側の人間と言える。普通の人間からすれば二人ともクソ野郎だ。 終盤のフレッチャーの梯子を外すような行動。恐ろしい。あんなことをされたら常人なら一瞬で消し飛ぶ。あれはしごき?それとも復讐?結果的にニーマンはありえないほどに追いつめられあのラストが生まれる。見送った父は何を思うのだろう。過保護とも言える父の抱擁から離れた後あのラストが生まれる。あのラストの後この師弟がどうなったかは知る由もないが、あの一瞬だけはあの一瞬だけは二人は望んだものを手にしたのだろう。 [映画館(字幕)] 9点(2015-04-28 02:07:59)(良:5票) |
74. 6才のボクが、大人になるまで。
《ネタバレ》 12年同じ俳優を使い撮影する。この手法がやはり特別に取り沙汰される本作。この手法がどういう効果をもたらすのか気にしながら観ているつもりだったが、いつの間にかこの世界に惹きこまれていた。 描かれるのはある少年の12年間だが基本的にはアメリカの家族のよくある風景を切り取っているのだろう。もちろん母の離婚など家族や少年にとってショックなシーンはあるがそれもじっくり描くことはせずあくまでひとつのシーンとして流される。そう。この映画ではなにげない、そしてさりげないシーンが流れていくように描かれる。断片と言ってもいい。それが素晴らしい。家族の誰かが泣いたり笑ったりする姿に反応している自分に気づく。それはこの家族のそばにいて自分も体験しているのに近いというのは大袈裟かもしれないが、そう感じるくらい感情移入できていたのだとしたら上記の手法の効果は絶大だ。 母が息子を大学に送り出す日、彼女は嘆く。「こんなにあっけないとは思いもしなかった」と。時間のあまりの早さを嘆くものだが、それは積み上げたものがあるからだろう。積み上げたのはこの映画に描かれた瞬間。いろんなものを積み上げて育ててきた息子は巣立っていき家に残されるのは自分だけ。積み上げた時間が長い人ほどこのシーンに共感するのではないだろうか。特に母親は。 「瞬間とは今」とはラストの会話。なにげない今だがくだらないものではない。それは私たちにおいてもそうだと語りかけているようだ。 [映画館(字幕)] 9点(2015-04-06 03:30:07)(良:2票) |
75. MAMA(2013)
《ネタバレ》 この作品は設定が少しユニークだ。ホラーといえば主人公たちが屋敷などに迷い込み幽霊や怪物に遭遇するのが定番だが、この作品は主人公が引き取った姉妹に幽霊がくっついてきたというもの。しかもその幽霊は姉妹を生かし育ててきた。まさに姉妹にとっては「ママ」なのだ。 オープニングの子供たちの壁の落書き。それが姉妹の5年間なのだが明らかに姉妹以外の存在が・・・。こういう想像をかき立てる導入が上手い。姉妹という設定も良い。妹が部屋で戯れている絵に姉がひょこっと廊下に現れる。じゃあ今妹と戯れているのは誰なんだぁ!?こういうトリック的な怖がらせ方も効果的だ。 だが、終盤にかけて「ママ」が頻繁に姿を現してくると恐怖感は薄れていく。ジーンおばさんが襲われるところは完全に「ママ」の八つ当たりにしか見えず思わず笑ってしまう。ラスト「ママ」に子供の遺骨を渡すシーンは日本映画の「スウィートホーム」を彷彿とさせる。が、あの映画のようにすんなりハッピーエンドの方向にいかないのはデル・トロがプロデュースしているからなのか。結局こういう題材になると母性のぶつかり合いになるのだが、「ママ」との5年間に打ち勝つだけの母性を彼女は得たのか。そのためのドラマの配分がホラーだからこそ難しいと感じる。 ジェシカ・チャステインがこういう映画に出る印象があまりなかったので意外だったが短い髪がなかなか似合っている。彼女の演技も良かったが姉妹を演じた子役たちの演技が印象に残る。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-03-30 02:19:26)(良:1票) |
76. 博士と彼女のセオリー
《ネタバレ》 余命二年と宣告されたら?しかも筋力が徐々に弱り動けなくなる病気で、治療法は現在まで確立されていない。絶望しかない。だがそんな彼を受け止めてくれる存在がいた。彼の限りなくゼロに近くなった「時間」は彼女を得た瞬間また動き始める。 彼と彼女の「時間」をこの映画は丁寧に描いていく。そこに伝記映画にありがちなあざとさはなく誠実に描いている感じが好印象。エディ・レッドメインの観ているうちに演技とは思えなくなってくる演技が素晴らしい。徐々に現れる障害の症状を段階的に演じ分けていて圧巻だ。それを支えるフェリシティ・ジョーンズも凛とした雰囲気に芯の強さを感じさせる演技で美しい。これからが楽しみな二人だ。 二年と思われた二人の「時間」は想像を越えて長いものに。その長い年月の間に二人の想いも揺れ動き、関係も変遷していく。ラスト彼らの積み上げた「時間」が巻き戻っていく演出はあざといと思いながらも涙をこらえきれなかった。苦能と困難、輝かしい瞬間、花火の下でのキス、そして出会い。なにげないあの出会いが運命的なものだった。しかし、それは誰の人生においても同じだ。なにげない「時間」を誰もが生きている。そう思うと背筋がピンとなる。まっすぐに前を向いていれば、自分を見つめる瞳がそこにあるかもしれない。そう思わせる素晴らしい人間賛歌だった。 [映画館(字幕)] 8点(2015-03-23 01:31:06)(良:1票) |
77. フューリー(2014)
《ネタバレ》 戦車が主体の映画はあまり見たことがなく結構期待していたのだがドラマ部分は意外とありきたりな感じ。激戦をくぐり抜けてきた戦車隊に実戦経験のない新兵が配属され、戦争の現実を突きつけられながら隊員たちと心を通わせていく。しかし、それをこの監督の脚本作「トレーニング デイ」と同じく一日の出来事として描くのはちとつらい。一日のドラマとしてはつめこみ感が否めず戦争映画としてのポイントを押さえているのに浅く感じてしまう。 だが、ドイツの母娘(っぽいが従姉妹)のエピソードは意外と嫌いではない。戦争という異常な日常の中ですでに非日常になってしまって久しい平和で穏やかな食事をしたいという気持ちは共感できる。結局隊員によってぶち壊されるが童貞卒業シーンもはさまれる特殊さもあって、個人的にはこの映画のドラマの中で唯一引っかかりがあるシーンだ。まあ長いなとは思ったが。 戦車同士の戦闘シーンはさすがの迫力。戦車には全然詳しくないがタイガー戦車が恐ろしい性能を持っていることは伝わってくる。あんなのに出くわしたら生きた心地がしないだろう。人体破壊描写も凄まじく何台も戦車が踏み荒らしていったと思われる死体なども記憶に残る。 全体的に見てくれは悪くない。が、最後の戦闘があまり良くない。ウォーダディの選択が理解できない。動けなくなった戦車に立て篭もる作戦なのになぜ予備の弾薬を車外に放置してあるのかわからない。こんな感じで終盤に悶々としてしまう何かもったいない作品だ。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2015-03-20 03:06:56)(良:1票) |
78. イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
《ネタバレ》 アラン・チューリングという人物も知らないし作品の情報もあまり入れずに観たが面白かった。 エニグマの解読にここまでの苦労があったとは…、そして解読するためにチューリングが作り上げたあのマシン。まるでコンピュータだと思っていたらやっぱりそれの原型だったんですな。しかし、そのマシンに「クリストファー」と初恋の人の名前をつけるのは怪奇映画みたいな話。まあ「モンスター」と言われたのは作った本人だったが。 解読に成功してもそれでめでたしとはいかない。解読した情報の取捨選択、情よりも効率や効果を優先しなければならないところがつらい。MI6が二重スパイと知りながら泳がせていたことも驚いた。戦争とは情報戦なのだ。 しかしこの映画で印象的なのは孤独だった彼が同じ目的の仲間と出会い心を通わせても、結局孤独のまま死んでいったところだろうか。同性愛者にはあまりにも生きづらい時代。戦争という時代によって功労者にもなった彼が結局時代に殺されていく。なんともやるせない。 ベネディクト・カンバーバッチやキーラ・ナイトレイの演技も良いが、マーク・ストロングの渋い雰囲気も良い。エニグマ解読と平行して学生時代や戦後の話が何度も挟みこまれるが混乱もせず良い効果を出せていたと思う。娯楽映画としても伝記映画としても秀作な一本だ。 (それにしても公開館数の少なさはどうにかならなかったのだろうか。アカデミー賞効果で増えるかと期待したが、結局地方に住んでいる自分はいつもの3倍の時間がかかる映画館へ行くハメになった。近所の映画館がアカデミー賞受賞作を一本もやる予定がないことに絶望している昨今である。) [映画館(字幕)] 8点(2015-03-15 14:42:35)(良:1票) |
79. ある日どこかで
《ネタバレ》 おそらく今まで観たタイムスリップ作品の中でこれ以上にふわふわしたものはないだろう。ふわふわしたというのはタイムスリップの方法もそうだが劇中で繰り広げられる恋愛劇もそうだ。何か地に足が着いた心地がしない。まるで夢でも見ているかのよう。それを作り手が狙ったのだろうか。 多くの感想の中でこれは彼の妄想なのではないかという意見は興味深い。これが彼の妄想だったならこのふわふわしたものの辻褄が合ってくる。自己催眠というとんでもないタイムスリップの方法も、彼の一方的過ぎる情熱に彼女が驚くほどすんなり応えてくれることも、彼の想像の産物ならありえる。 個人的には現代に戻って来てからもう一展開あればとも思ったがこれはそういう映画ではないらしい。これは悲恋なのだ。あまりのショックに衰弱して死んでしまう彼も悲劇だが、彼がいなくなって数十年彼を探し続けていた彼女のことを想像すると気が遠くなるし切ない。 それにしてもクリストファー・リーヴはスーパーマンのイメージが強いが背が高くハンサムで笑顔もまぶしく素敵な俳優だったと再確認。ジェーン・シーモアはあまり知らなかったがとても美しくこれなら一目惚れも無理はないかなと思わせる。 ホテルの彼女の写真が撮られたシーン。素敵な瞬間だった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-03-12 23:24:50)(良:1票) |
80. トランスフォーマー/ロストエイジ
トランスフォーマーを観るのが億劫なのは上映時間だ。1作目から増え続けて4作目の今回はとうとう165分。こりゃ3時間越えもそう遠くないな。 そしてその長い本編に見合うだけのドラマがあればいいがそれはいつもと変わらず。キャストが一新されてもしかしたらという希望をあっさり粉砕していく。マイケル・ベイはマイケル・ベイなのだ。でも監督デビューしたての頃はもう少し楽しめる監督だと思っていたのになあ。 たしかに映像はすごい。すごい映像の連続だ。そういう映像を作れるこの監督に才能があることも認める。しかし、映画はメリハリが重要で娯楽映画ならなおさら。どれだけ凄まじい映像だろうと素材のひとつに過ぎず、垂れ流されれば飽きる。結局、観客を感動させ熱くさせるのは核である物語だ。と、このシリーズを観るといつも思うことをやはり書いてしまう。 しかし、この上映時間はどうにかならないものか。くだらないコメディシーンを削れば、トランスフォーマー同士の凄まじい戦闘の合間にはさみ込まれる「本当に必要なのか」と思わせる人間同士の戦闘シーンを削れば等々、本編を観ながらそんなことを考えさせてしまうのだこの映画は。 [ブルーレイ(字幕)] 3点(2015-03-10 02:48:01)(良:2票) |