61. ザ・キラー
《ネタバレ》 狙撃に失敗した殺し屋が婚約者を襲われ、報復で刺客と依頼者を淡々とじわじわと追い詰めていく。 まるで商品をただ消費するかのように、ルーティンワークの如く。 『セブン』の監督&脚本家の28年ぶりのタッグにしては非常にシンプルなストーリー。 その分、ストイックな空気感とソリッドな映像センスが際立っており、 立体的なサウンドデザインも合わさり、テレビの画面では堪能できないと思われる。 自己暗示をかけるが如く独り言が連なり、完璧な殺し屋になり切れない男のあがき。 最後の晩餐になってしまったティルダ・スウィントンによる熊と狩人の噺が象徴するように、 プロの矜持として後始末を全うしようとすることを建前に、 復讐という本音が僅かながらに彼を人間たらしめている。 婚約者とビーチで戯れる平穏なひと時も、殺し屋の宿命から逃れられないジレンマ。 アラン・ドロンの『サムライ』の系譜に近い、矛盾だらけの人間の美学を覗き込む。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-11-10 23:52:26) |
62. 西部戦線異状なし(1930)
90年以上前の傷だらけのフィルム、あからさまなオーバーアクト、ベタすぎる演出と今なら際立って見えるかもしれない。 しかしながらスクリーンから発する、余りある戦争の悲惨さ虚しさは今もなお色褪せていない。 いつの時代も大義のもとに無知な若者が扇動され、単に犬死になって消費されるだけ。 何度も繰り返す歴史に無力感を覚えながらも、無力なりに抵抗していきたいと感じさせる一本。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-10-31 23:58:28) |
63. ミニオンズ
映画は見なくてもミニオンズを知っている人は多いかもしれない。 怪盗グルーによる本伝シリーズはそっちのけで本作鑑賞。 可もなく不可もなく。 ミニオンズの能天気で奔放なキャラクターだけで突っ切るので、一見張ってありそうな伏線回収はほとんどない。 ストーリーの整合性もあったものではなく、現れてはちょっと活躍して退場していくサブキャラ達。 そう言えば、『ペット』も『SING/シング』も似たような中身であり、 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』をも手掛けるイルミネーションスタジオの"作風"なのだろう。 完全に子供向け、ファミリー向けに振り切って、 意識高いメッセージ性や巧みなストーリーテリングを求めるのは筋違いにも程があるか。 見ていて何も残らないが、純粋な娯楽映画として手堅く稼ぐにはこれが正解だろうね。 [地上波(字幕)] 5点(2023-10-21 01:42:27) |
64. サンセット
《ネタバレ》 監督は前作の成功体験で味を占めたのか、情報を遮断されたヒロインの一人称で 帝国末期の閉塞感と混沌を描く試みは見事に失敗している。 登場人物たちの思わせぶりな台詞と一向に進まない展開、消化不良のまま残る謎など、 ひたすらヒロインに寄り添う撮り方が本作の舞台とミスマッチ。 ホロコーストという強烈な舞台装置があった『サウルの息子』はその焦らし方が効果的だっただけに、 監督のメッキが剥がれた形だ。 難解と言えば聞こえが良いが、逆に言えば「何を描きたい?」とも言いたくはなる。 歴史の闇を描きたいのか、激動の時代を生きようとするヒロインの強さを描きたいのか。 ヒロインが何を考えて行動しているのか分からず、妄想も幻覚も入り混じり、 最後は第一次世界大戦に兵士として従軍している。 帽子店が存続のため貴族に女性従業員を捧げている、性奴隷を匂わせる嫌悪を見るに、 彼女も過去に似た被害を受け、女性の殻を脱ぎ捨て、兄から憑依されるように同化したと解釈できるが。 当時のハンガリー史を知っていること前提。 帽子店を訪れた皇太子夫妻が翌年どうなったかは言うまでもない。 [インターネット(字幕)] 4点(2023-10-19 22:19:15) |
65. フミ子の告白
後に『ペンギン・ハイウェイ』を手掛ける監督が大学在学中に手掛けた自主制作で、 そのクオリティの高さから当時のアニメーション界を騒がせた。 片想いの男子にフラれたフミ子が帰り道に、ふとしたハプニングから坂を大きく下りまくるだけだが、 一途な想いを代弁させるような圧倒的な疾走感と、それに付随するカバレフスキーの「道化師のギャロップ」が加わり、 実写活劇を思わせるカメラワークとありえないアクシデントが作品の魅力を引き出していく。 作品のほとんどを占めるサービスシーンはお構いなしにとにかく"勢い"が大切で、 若き才能の情熱が炸裂しているかのよう。 わずか2分半の長さながら、青春だなぁと思わせる爽快感が詰まっていた。 監督の他作品でも言えるが、別にカットしても問題がないのに、あえてサービスシーンを貫くあたり、 宮崎駿や細田守に近い性癖を感じる。 ストーリーを組み立てるのが得意ではないことも共通しており、今後のキャリアは脚本次第だろう。 [インターネット(邦画)] 7点(2023-10-15 22:01:11) |
66. ガールズ&パンツァー 最終章 第4話
《ネタバレ》 主戦力のあんこうチームが序盤で脱落し、残されたチームの運命を描いた第4話。 テレビアニメ第1話では全くの戦車道未経験者が、培われたノウハウと経験を総動員する。 54分の上映時間のうち、9割近くがアクションシーンのつるべ打ちでほとんどアトラクションの様相になっている。 あまりに目まぐるしく展開し、状況が分からなくなるくらいの情報量の多さと、 雪原を得意とする不敵な継続高校のBGMにいつ負けてもおかしくない緊張感があった。 後半の聖グロリアーナ対黒森峰の間に挟まれるサウナシーンを除くとずっとアクションシーン。 そりゃ製作に時間がかかるよね… 後半はもちろん聖グロリアーナが勝つのは予想通り。 それも島田愛里寿という大きな切り札を手にして。 エキシビジョンとは言え二度勝てなかった聖グロと劇場版で対決した愛里寿との、 二重の因縁を抱えるみほは如何に挑むのかで映画は終わる。 2年後に公開されるだろう第5話は、第4話では描けなかった、決勝戦前夜のドラマを入念に描くことを期待したい。 [映画館(邦画)] 8点(2023-10-06 21:41:40) |
67. ウーマン・トーキング 私たちの選択
《ネタバレ》 2000年代後半、南米ボリビアのメノナイト(キリスト教一派)のコミュニティで日常的に起きていた昏睡中の性暴行事件。 その実話をモチーフに2010年の南十字星の見える英語圏某所に移し替え、 文字の読み書きも許されなかった被害者女性たちの決断。 テーマがテーマだけあり、娯楽要素を捨て去ってまで訴えたストイックな社会派会話劇。 去るか、闘うか、赦すか── 18世紀同然の生活を営む彼女たちと次世代の子供たちの未来を大きく左右する重い選択。 力では負けてしまう女性の立場なら、女性全員で村を去るでお終いだが、本当にそれで良いのか? その三つの選択をさらに深掘りして、民主主義が如何に築かれ、秩序が作られていくか、社会の問題が浮き彫りにされていく。 閉鎖的な世界で赦しの名のもとに弱き者への暴力の正当化。 宗教は救いにもなれば、都合の良い思考停止の暴力装置にもなりえるのだ。 次の世代へ負の連鎖を繰り返されないために価値観のアップデートと教育の大切さが可視化され、 それを担うのが外の世界を知っている書記担当の男性なのが皮肉に思える。 彼女たちは新たな"国家"の建設を目指し、モーセの出エジプトの如く大移動する。 希望の船出のように見えて、その一本の道が海のように閉ざされることはない。 家畜もいないと分かれば、時代遅れの屈強な男たちが連れ戻すために逆襲するだろう。 新たな秩序を築くだろう彼女たちがどう動くか、我々が生きているこれからの時代とリンクしている。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-09-29 23:39:03) |
68. ベイビー・ブローカー(2022)
《ネタバレ》 全編韓国語、韓国人俳優で構成されながらも是枝監督の底流を感じさせる。 赤子の人身売買は犯罪行為であるが善悪を二分にはできない複雑さを、 並行的に描かれるペ・ドゥナ演じる女性刑事スジンの視点も含まれていて新鮮だった。 非常に日本的な映画なので、韓国的な激しさを求めると期待外れかもしれない。 時折、話の分かりづらさもあり、訴求力が過去作ほどではない。 「捨てるくらいなら産むな」 「生まれてきてくれてありがとう」 相反する二つの台詞。 前者は正論であるがソヨンの事情を知るうちに、 キャリアのために子供を持てなかったスジンの心境に変化が起き、 後者は問題を抱えた疑似家族だからこそ己の存在を肯定できたのだろう。 自業自得で血の繋がった家族から縁を切られたサンヒョンを除いて。 この矛盾が作品に深みを増している。 僅かに繋がりかけていた二つの物語が終盤についに繋がる。 ウソンは、スジン夫婦と服役後のソヨン、最後の養子縁組の夫婦による、 たくさんの親(=社会)によって育てられていくのではないか。 サンヒョンとドンスは彼らに関わることはできないが、ウソンの未来を守ることができた。 大団円ではないにしろ、想像の余地を委ねる監督らしい綺麗な着地点だ。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-09-23 14:33:45) |
69. グランツーリスモ
《ネタバレ》 原作ゲームは4から最新作の7まで万年素人プレイヤーながらある程度やり込みプレイしている。 事実、プレイしているからこそ分かるツボを押さえた演出がいくつか見られる。 既にプレイしている人なら分かるが原作ゲームにはストーリーが無く、 新車購入→チューニング&セッティング→レースで勝利→賞金で新車購入→… という流れなので、トッププレイヤーが本物のレーサーを目指す実話の映画化にした方が最適解だろう。 そのため、原作をプレイしなくても万人受けしやすい作りになっていて、 モータースポーツ版『トップガン マーヴェリック』と称した方が分かりやすい。 本物志向のアクションに、結末も分かり切った超王道で熱すぎる師弟関係も共通する部分がある。 ソニーが製作に関わっているため、ウォークマンのステマに笑ってしまったが。 実話と言ってもヤンがGTアカデミーを卒業したのが2011年なので(PS3の時代)、 劇中で既にPS5やスマホが存在している地点で、独立したフィクションとして見た方が良さそう。 とは言え、モデルになった人物や実際にあったエピソードが多数含まれていて捻った展開を作り辛いこともあり、 ニール・ブロムカンプ監督作としては肩透かしを食らうのは確か。 アウトサイダーの逆襲と辛気臭い展開をすぐ飛ばすテンポ良い編集に監督のテイストを感じる。 面白い映画ではあるが、秀作以上かというと少し厳しい。 あまりに行儀が良い作りで物足りないくらいだ。 思考停止で楽しむのであればこのくらいが丁度良いかもしれない。 [映画館(字幕)] 7点(2023-09-15 22:54:36) |
70. インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
《ネタバレ》 脚本のリテイクが難航し、前作から19年掛かりすぎたことが作品に悪い影響を与えている。 作品でも現実時間と同じ時間が流れ、ナチスからソ連に代わり、 宇宙人を捕獲したロズウェル事件、赤狩りが絡んだりと時代の大きな変化を感じるも無理に入れる必要がない。 変にスケール感を強調しようとして、SF要素を加味したインフレーション状態が気になる。 ハリソン・フォードが老体に鞭を打ち、肉体に衰えはあれど安定感のあるアクション。 とは言え、前作3作にある緊張感はほとんどなく、終始家族のドタバタ道中で終わってしまった。 悪女が似合うケイト・ブランシェットは頑張ってはいるものの… 一番盛り上がったのは「待ってました!」と言わんばかりのインディ再登板と、 一作目のヒロイン・マリオンとの再会くらい。 懐かしさに浸るには時代の変化と特殊効果の向上が作品とミスマッチで大きく足を引っ張る。 当初は5部作で構想されていたようだが、どこかで打ち止めできなかったあたり、 堅実に続編で稼ぎたいハリウッドビジネスの本音と限界を感じる。 [インターネット(字幕)] 4点(2023-08-31 23:38:34) |
71. インディ・ジョーンズ/最後の聖戦
《ネタバレ》 本作が完結編だとしても相応しい内容だった。 冒頭の"インディ・ジョーンズ誕生秘話"といい、聖杯の研究に明け暮れた父親との確執といい、 本題の聖杯を巡るナチスとの追っかけっこといい、前2作のノウハウをこれでもかと注入しただけあって抜かりはない。 特に父親・ヘンリー役のショーン・コネリーが飄々と知恵で危機を乗り越える鮮やかな手腕、歳を重ねたからこその味がある。 宝探しのロマンに対する三者三様のスタンスが印象に残った。 完全に私利私欲のナチス側、聖杯を博物館に持ち帰りたいインディ、奇跡を目撃しそれで十分なヘンリー。 よく考えればシリーズを通して、大団円ながらどこかほろ苦い顛末が多かった気がして、一つの答えを見た。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-08-26 15:22:19) |
72. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
《ネタバレ》 かなりの高評価でテレビアニメの映画化の枠を超えた名作なのは事実で、 ファミリー映画としてのエンタメを確保しつつも芯を持ったメッセージ性を放ち、 その後のクレしん映画の方向性を決めたのは周知のとおり。 だからこそ、クレヨンしんちゃんでなければならない理由があまり感じられず、 今後の作品群に息苦しさを与えた罪な作品だと思っている。 ひろしの回想からしても、'60年代~'70年代を生きていないとなかなか共感しづらい。 (本作が2001年製作で35歳とすると1966年生まれ)。 それにずっと歳を取らないサザエさん時空を生きている野原家にとって、価値観をアップデートしていかないと、 本作のメッセージが20年後30年後の視聴者に響かない可能性もあるし、 元来のギャグアニメのキャラを使っているからこその中途半端さがある。 もっとも当時のスタッフはそこまで考えていなかったと思うが。 "古き良き昭和"については意図的に悪い部分を排除したある種のディストピアとして扱っており、 ここらへんは実写映画版『ALWAYS 三丁目の夕日』よりも誠実だろう。 とは言え、自分にはあまり記憶には残らない、どっちつかずの間口の狭い作品に感じてしまった。 あれから20年以上が経ち、令和の今も閉塞感あふれるトンネルの中を我々は走り続けている。 イエスタデイ・ワンスモアのケンとチャコは令和をどう見ているのだろうか? [地上波(邦画)] 5点(2023-08-15 01:12:43)(良:1票) |
73. AIR/エア
《ネタバレ》 世界を変えたシューズの誕生秘話。 アーカイブ映像を使って1984年の空気に引き込む冒頭、 地味ながらもビジネス映画として堅実で小気味良いベン・アフレックの演出は今回も健在。 渦中の人物であるマイケル・ジョーダンが演者はいても顔を一切見せないことで、 本人のアーカイブ映像を引き立てる構成の巧さが心憎い。 あのときはまだ誰も知らない未知の青年だからこそ、エア・ジョーダンによって人格が与えられ、 ナイキの期待に応える大躍進なんて結末が分かっていても、未来が分からない故の大きな賭けにドキドキさせられた。 マイケル・ジョーダンやバスケットボールに精通していれば、より面白く見れただろうな。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-08-15 00:39:53) |
74. 8 1/2
レジェンドの映画監督たちがマイベストに挙げているように、自分事として刺さるのだろう。 傲慢で繊細な映画監督の逃げたくても逃げられない立場の重さによる現実逃避。 本人の意思とは関係なく映画製作が進み、まずます混沌に拍車がかかるあたりとか、 「映画とは何か?」を問うた草分け的存在として今後の映画史に多大な影響を与えたのは事実。 普通はこんな奇をてらう映画は観客に受けるわけがないと思いつつも、 コントみたいな結末に名作たる理由はなんとなく分かる気がした。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-08-15 00:25:09) |
75. 双生児
《ネタバレ》 眉毛なしの登場人物だらけ。 塚本晋也による美術と撮影の抜かりの無さが乱歩の不気味でアングラな世界観と絶妙にマッチ。 邦画によく見られる、悪い意味での過剰演出が本作ではプラスに働き、どこかポップな趣がある。 あのラスト、貧民街に診察に行く雪雄は本当に"雪雄"なんだろうか… 人格を乗っ取られたようで最後まで安心できない雰囲気が良い。 [DVD(邦画)] 7点(2023-07-29 19:58:00) |
76. 真夜中の弥次さん喜多さん
原作漫画がかなりぶっ飛んでいるので、未読の人間にはキツい内容。 メタ要素を用いた、ドラッギーでシュールな展開が続くも記憶に残らない。 リアルがどうとか、「あとは勝手にやってください」としか言いようがなく、 原作漫画や脚本家のファンでなければ無理に見なくても良いと感じます。 [DVD(邦画)] 3点(2023-07-29 11:38:18) |
77. 宇宙人ポール
《ネタバレ》 エドガー・ライトが監督でないことを除けば、いつものサイモンとニックのコンビに ステレオタイプな姿の宇宙人ポールが加わったドタバタ珍道中。 好評な割にあまり乗れなかった。 クセが少なく、見やすく、ただストーリーがダレ気味であまり印象に残らない。 ポールがスピルバーグ本人に電話で『E.T.』のアドバイスをしたり、 ラスボスが『エイリアン』で死闘を繰り広げたシガニー・ウィーバーだったりと、 面白そうな小ネタはあったんだけどね(すごく贅沢な使い方だ)。 遠い昔に見たままだったので、機会があればもう一度見たいと思った。 [DVD(字幕)] 4点(2023-07-29 11:29:07) |
78. アビゲイル・ハーム
《ネタバレ》 視覚障害者と繋がりはあっても、容姿が認識されない以上、ふわふわ漂うような孤独を感じる。 "名前"という存在意義が頼り。 そんな日々を過ごす女性がある廃墟で謎の青年の浴衣を隠し、まるで猫を拾うかのように衣食住の面倒を見る。 彼女の好意に青年も愛情を感じるようになるが、どこか分かり合えない、自分でも何をしたいのか分からない。 なぜなら彼には名前がなく、どこにでもいる対等で普通の存在ではないから。 どこかへ行きたい青年と離れたくないと思いつつ、彼女は彼の想いを尊重するように浴衣を渡し、試そうとする。 そして彼は彼女の元を去る。 もしかしたら一連の物語は彼女の妄想なのかもしれない。 だから一旦は事が上手くいったのであり、厳格な父の死によって現実と向き合わないといけなくなったのか。 どう解釈するかは見る人の自由で実験的な作り。 抒情的で寂しげな空気を捉えた、透明感あふれる映像が印象的だった。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-06-24 02:15:39) |
79. インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説
《ネタバレ》 ハリソン・フォードの魅力とスピルバーグによる畳みかけるアクションが黄金期のハリウッドを象徴していて今見ても面白い。 ただし、ストーリーは穴だらけ。 序盤の上海でのドタバタが終盤の展開で伏線回収するわけでもなく、ヒロインは偶然連れてきちゃった感じに。 相棒のショーティーとの出会いも口頭で少し説明するだけで、 ただのコメディリリーフ的な役割でしかなく、それ以上の存在意義はない。 採掘場の警備ザル過ぎだったり、火を当てれば洗脳が解けるとか、時系列では『レイダース』前の話なので、 ハッピーエンドに合わせなければならないご都合主義が垣間見える。 粗はあるかもしれないが、ストーリー上の欠点を上記で補っているので、 細かいことは気にしないで、時代劇のお約束みたいに楽しむのが一番だろうね。 [地上波(字幕)] 7点(2023-06-16 23:57:42) |
80. スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
《ネタバレ》 世界はバランスで成り立っている。 何かを得た場合、何かを失わなければならない。 その折り合いをつけられず、大人の境界線であがくマイルスは、 親と衝突し、ルールと衝突し、世界と衝突し、同じスパイダーマンと衝突していく。 未熟さゆえの勢いで決められた運命を変えられることを信じて。 彼がイレギュラー扱いされている理由が終盤で明かされる。 本来は蜘蛛に噛まれてスパイダーマンになる"運命"ではなかったのだ。 だから、ピーター・パーカーが死ぬことはなかったし、不幸な事故で科学者がヴィランになることもなかった。 そして、別世界線の蜘蛛に噛まれたために、その世界のスパイダーマンが存在せず、 プロウラーになったマイルスが生まれることになった。 前作の因果が本作で浮上して、"大いなる力は大いなる責任を伴う"というテーマが際立つ。 圧倒的情報量とカオスと色彩は健在で、二次元と三次元の境界線を忘れさせるアニメーション技術はむしろ進化している。 長尺になりすぎて前後編に分けたそうだが、溜めに溜めたまま終わった最後の15分はちょっと惜しい。 それでもマイルスの運命に抗う物語に共鳴した、一部のスパイダーマンたちが如何に反旗を翻すのか、 完結編で満点を出すほど大きな期待を寄せるには十分で8点とさせて頂いた。 [映画館(字幕)] 8点(2023-06-16 23:03:41)(良:1票) |