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61.  さすらいのカウボーイ 《ネタバレ》 
“The Hired Hand”『使用人』…いや解るよ?解るけど、それタイトルにする? 太陽光を受けてキラキラした水面と、水浴びしたり釣りしたり、遊んでるわけじゃないんだろうけど、少なくともきちんと定職についてない3人組。そこに流れるヒッピー・ムーブメントを感じさせる気怠い音楽。 普通にイメージする西部劇とは何か違う。初っ端、溺死した少女が川を流れてくるのなんて、この映画のその後の、どこに繋がるんだろう???  「3人で西海岸行こうぜ!」「カリフォルニアだぁ!ハッハッハ!」「…やだ」「…え?」「お家帰る」「えっ!?」7年も放浪して、時間の無駄だったと思い立って、今さらながら捨ててきた女房のもとに帰るハリー。それに付き合うアーチ、彼とはもう女房より長い付き合い。 夫は死んだものとされている女房ハンナの家で『使用人』として働く2人。「ハンナは『使用人』とも寝るんだぜ?良かったな!ハハハ!」街で誹謗中傷を聞き激怒する2人。ピュアな男たちと現実的な女。あの当時の女だって、いくら西部開拓時代とはいえ、一方的に出て行った夫をいつまでも待っているほど優しい世界じゃない。  「俺やっぱ海見てくるわ」アーチが選んだ男のロマン。「彼を助けたら戻ります」「最初から計画してたんだろ?あんた絶対戻らないわ」ハンナはハリーが心の奥底で、アーチを追い駆けたい気持ちを察していたんだろうな。 最後、アーチの腕の中で、ハリーはやっと、追い求めていた自由を手に入れる…そういう解釈でいいのかな? 男2人の友情。その2人の終着点の違い。オートバイでフロリダを目指したイージーライダーと、馬でカリフォルニアを目指した本作って、敢えて対になるように創ったのかも。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2024-10-22 23:09:27)
62.  シビル・ウォー アメリカ最後の日 《ネタバレ》 
“Civil War”『内戦』。 じゃあ、逆から考えてみましょうか。最後に1枚の写真が出てきますが、恐らくあれが“アメリカの歴史を捉えた1枚”です。今後、この内戦を振り返る際、必ず目にする1枚にして、きっと歴史書に出る写真かもしれません。その前の数枚は、きっとネットで拡散されるでしょう。その前の1枚は、戦場カメラマンとしての彼女の人生を変える1枚となったことでしょう。 さて、この歴史的1枚は、どのようにして撮られたんでしょう?この物語は、ある女性に出会うところから始まります。…とまぁ、戦場カメラマンがあの1枚を撮るまでを描いた、記録モキュメンタリー映画だとしたら、戦況や状況の説明が薄いのも納得できるかも。  私も予備知識無しで観たから、大統領側と対抗勢力の1対1の衝突なのか、他にも幾つか組織があるのか、どっちがどう有利不利なのか、そもそも何で内戦してるのか、目の前のこの兵士はどっち側なのか、相手の方はどっち側なのか、サッパリ解らず観ていました。ただ、目的地だけはD.C,と決まっていて、そこで大統領にインタビューを行う、戦場を1400km駆け抜ける、無茶苦茶なロードムービーとなっています。クルーの4人は年齢的に、両親と子供、そして祖父という“拡大家族”の様相。恐らく今のアメリカの一般的な家族一世帯のユニットなんでしょう。映画は『疑似家族が目にする無政府状態のアメリカの人々』で、意図的にそうしたんでしょうね。  wiki見たら結構細かく(結末まで)書いてましたね。ふむふむ、なるほど~、19の州がねぇ…怖いねぇ。 アメリカは50の州(国)が集まった合衆国だから、政府が無茶するなら各州の独立もあり得るのかな?アメリカを別けるとしたら民主党の青い州と共和党の赤い州に別けるのがシンプルですが、テキサス(赤)とカリフォルニア(青)が連合を組んでるので、現実の大統領選を前に、内戦を助長するような組織図にはなっていないようです。 ただ影響されやすい国民性と、大統領の権限が絶大な国だから、映画の惨状がリアルなばっかりに、歯車が狂えば現実に…なんて、不安になりますね。
[映画館(字幕)] 7点(2024-10-21 22:56:33)
63.  ランボー 《ネタバレ》 
“first blood”『最初の血=(相手が)先に仕掛けてきた』という意味だそうです。劇中トラウトマンとの無線のセリフで出てきます。 ランボー2公開直後のテレビ初放送で観ました(まだ2は観てないです)。当時のスタローンは、ムキムキ・マッチョな2の時と比べて、無駄な筋肉がなく、言い換えると線が細いんですね。映画自体も、戦場でドンパチするド派手な2と比べて、田舎町と山の中で、敵も田舎の警官で、想像より大人しめなアクション映画だなぁと、当時はそんな印象でした。  そして最悪だったのが、初見時、保安官ウィルがランボーに撃たれて以降、観るのを止めてしまったんですよ。親にチャンネル変えられたのか、他に観たいのがあったのか覚えてませんが『まぁ、良いかな』って思ってしまったんです。翌日学校で、みんな「最後が凄かったね」って。「ランボー泣き出して可愛そうだったね」って言うわけです、小学4年生の子供らが。私は『ランボーあれだけの騒ぎを起こして、最後泣き出すって、どういうこと??』って、理解できませんでした。  数年後('88年の金ロー?もう2は観ています)に観返すと、まず声が聞き慣れた低音ボイスのスタローン声(羽佐間道夫)でなく、若々しい声(渡辺謙)で驚きました。そして私が見逃した“最後”が、あまりに強烈でした。戦場で出来た友人は次々と死んでいき、帰ってきてからも仕事もなく孤独な毎日を送る。そこに来て警察での酷い扱い。怒りの奥底の悲しみが伝わってきました。警官を殺して、静かな街を恐怖に陥れたランボーの行為は社会的には“悪”と捉えられます。でもランボーの側から社会を観ることで、善悪なんてそんな単純な事情じゃないことを、観させてくれました。この映画で、どれだけのベトナム帰還兵の心が救われたことか。 そして渡辺さんの吹き替えが、まさに心を痛めた青年の叫びでした。羽佐間さんだとマッチョなオッサンのイメージなんですね。私もやっと、クラスのみんなの言っていることが解りました。エンディングの“It’s a Long Road”が染みます。  本作以降のシリーズのランボーとね、このファースト・ブラッドのジョン・ランボーは違うんですよ。別に人並みにしかアメリカを愛してないし、アメリカの愛なんてデッカイもの求めてないし、ただ戦場で心を痛めたちっぽけな自分を、いつまでも受け入れてくれないことに、驚いて、悲しんでるだけなんですよ。 ランボーを愛しているなら、至高の名作として、そっとしておいてあげるべきでした。特に3と5。そういうトコだぞ。
[地上波(吹替)] 8点(2024-10-21 11:48:31)(良:1票)
64.  リトルショップ・オブ・ホラーズ(1986) 《ネタバレ》 
“Little Shop of Horrors”『恐怖の小さい店』。グレムリンみたいな怖可愛いのを想像してたらミュージカルだったわ。 '60年のB級ホラーをモトに、'82年にミュージカル化して大ヒット。それを映画に逆輸入したのが本作。だからミュージカル仕立てなんですねぇ。 眼を見張るのはオードリーⅡの唇の動き。チュウチュウと唇の先をすぼめる滑らかな動きは、当時のSFX技術の結晶です。スティーブ・マーティンのバイクシーンが、ブルーバック撮影で特撮感丸出しな時代なのを考えると、マペット技術は頂点に達していましたね。  主演のリック・モラニス自身もそうですが、当時テレビや映画で活躍していた、アメリカで大人気のコメディアンが多数出演しています。スペースボールやブルース・ブラザーズも同様で、'80年代のハリウッドのコメディ映画って雰囲気が強めです。一番印象深いのがサド歯医者VSマゾ患者で、全然映画本筋とは関係ないけど、強烈なインパクトが有りました。アメリカのコメディアンの笑いなので、同じハリウッド製コメディ映画でも、スラップスティック・コメディやシチュエーション・コメディとは笑いのベクトルが違います。ここを理解して楽しめる人には、最高のミュージカル・コメディでしょう。  最初、オードリーⅡが動いたり喋ったり血を吸ったりって、シーモアの妄想なんだと思っていました。植物に操られたと思い込んでる連続殺人鬼シーモアの話。…まぁそんな事はなかったですね。でも、歯医者の死体を損壊し、店長は食べられる位置に誘導しています。そんなシーモアが最後、愛するオードリーと幸せに暮らしましたとさ、おしまい。…って良いのかいそれ?
[DVD(字幕)] 6点(2024-10-21 10:45:30)
65.  マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ 《ネタバレ》 
“My Life as a Dog”『僕の人生は犬同様』。 イングマルは他の子と比べても、性格もやる事も幼い印象を与えます。兄のせいもあるけど、子供らしい失敗やイタズラが病弱なママを苛つかせます。時間が経つごとに、自分が成長するごとにママの病状は悪化していく。でもちょっぴり大人なカエルちゃんはグイグイ誘ってくる。 田舎に行ったら風変わりな人がいっぱいいた。みんながイングマルを暖かく迎えてくれる。そして今度はサガがグイグイ誘ってくる。美女の裸をのぞきはしても、直接的な性に興味を示さないイングマルは、これ以上成長することに怖さを感じていたのかも。時間とともに病状とイライラが悪化するママ。幼い頃の優しかったママを思って、子供なりの抵抗をしていたんじゃないかな?  母が亡くなり、再び田舎へ。でも時間は経過して、田舎の事情も大きく変わっていました。隣人アルビドソンさんは亡くなり、今はギリシャ人家族に。「家が狭いので寝る時は叔母さんの家へ」厄介者のような扱いに心を痛めるイングマル。サガもより女の子として成長していました。成長していないイングマルに残された“当時と変わらないもの”が愛犬シッカンの存在。でもシッカンは既に殺処分されたのは薄々わかってます。サガの自分への愛情もわかってます。犬のマネで、幼稚にその場をはぐらかそうとしたんでしょうか。シッカンの死をサガに突き付けられたイングマルは、精神的に追い詰められ、あずま屋に閉じこもる。本当にライカ犬のように。 後半の2人の本気ボクシングの場面で、サガってのはあだ名でフロイドが実名だと勘違いしました。そして最後の方、イングマルとフロイドの試合がラジオで掛かってて「え?2人が本当にボクサーに?」って勘違いの上塗りを…   スウェーデンの映画です。よく知らなかったけど、このスウェーデンって国、大戦中はドイツにもイギリスにも組みせず終戦まで中立を維持。戦後も西側諸国と交流をしつつも、ソ連を刺激しないようNATOには加盟しなかったんですね。 映画の舞台は'58年から'59年、この年代は近代スウェーデンがもっとも輝いていた年代です。日本で言えばおそらく'64年東京オリンピック前後でしょうか?'58年、劇中のラジオで掛かっていた自国開催のサッカーワールドカップで、史上最高成績の準優勝をしています。そして翌年、ボクシングでイングマル・ヨハンソンがフロイド・パターソン(米)を破りヘビー級王者になりました。映画には出てきませんが、この時ボルボが世界初の3点式シートベルトを開発し、この時サーブが世界最高速の実用戦闘機ドラケンを創りました。…ちょっと脱線しましたが、イングマルという名は、輝かしいスウェーデンの象徴と思っていいと思います。日本で言えば、今なら大谷翔平。当時なら力道山とかでしょうかね? サガを友達から女として受け止め、子供から大人への一歩を踏み出したイングマルを、世界に羽ばたいていった当時のスウェーデンと重ね合わせた映画なんじゃないでしょうか?「スウェーデン万歳!」
[ビデオ(字幕)] 7点(2024-10-21 08:44:34)
66.  侍タイムスリッパー 《ネタバレ》 
公開されてから結構な日数が経っていますが、思った以上の人の入りでした。客層は若い方はまばらで、私より二回りほどご年配の方が多くお見受けされましたね。 春からBSで再放送されていた朝ドラ『オードリー('00)』を観ていたので、たまたまチャンバラ映画末期の京都撮影所の内情に、多少の理解がありました。時代劇は映画からテレビへ、そしてテレビからも消えてゆく。'11年に水戸黄門の放送が終わり、人知れず地上波から時代劇が消えていたようです。 『幕府滅亡から140年』滅亡が1867年だとして、舞台は現代ではなく2007年くらいのようです。優子がスマホでなく携帯を持っていたのと、『子供の頃友達がセーラームーン('92~)を…』と言っていたので、大体その頃かな?って思って観ていました。あとから沙倉ゆうのさんの実年齢を知って驚きました。せいぜい30歳前後かと…  さて、幕末の京都から同じ京都太秦の時代劇撮影所へ。侍の格好した人が歩いていても珍しくない場所に来ちゃったから、周りからはちょっと風変わりな役者だと思われる高坂。戸惑いながらも徐々に時代を受け入れて、切られ役として第二の人生を歩みだす… 自分だけこんな平和な時代に来て、真っ白な握り飯を食べることに涙する高坂に、私も何故か涙が出ました。ベテラン俳優風見の登場に『そう来たか』と思い、幕末と真剣にまた涙が出ました。最後の闘いはとても迫力があり、息を殺して観ていました。幕末の会津藩士の思いと、終わりゆく時代劇への思い。それぞれの立場で一生懸命に役目を全うしようとする人たち。私には泣ける一方な映画でしたね。  最初は“タイムスリップあるある”で笑いを誘うところですが、会場は思いのほかウケてましたね。『え!え?今のコテコテのネタ、そんなに面白い?』って戸惑ってしまいました。鑑賞中は確かに『ここって実は、後々の伏線で、それを知ってる人が笑ってるのか?』って勘ぐってしまいました。 この映画はもともと、ある程度ご年配向けに創られた映画なのかもしれません。そう、寅さん→釣りバカシリーズ辺りまでは、映画館に足を運んでいた世代の方々。そんな方々が、久しぶりに映画館に足を運びたくなるような映画だったのかもしれません。そこを見据えてユーモラスな効果音とか「すべる、落ちる」の寅さん定番ネタを入れたんでしょうね。最近のスタイルで、家で独りでDVD観てると、面白くても笑わないんですよね、ニヤリとはするけど。振り返ると、ご年配の方々は“面白いシーンは声出して笑う”という、当時のままの楽しみ方をされているんだなぁ。と思うに至りました。   もっと素直な気持ちで楽しむ映画でした。この時代に来たばかりの高坂には、コンクリの建物やワゴン車が目に入っているだろうに、そこはスルーしてます。確かにいちいち全部に反応していたら、一向に話が進まなくなるし。でも病院から一晩、独りでさまようのをしっかり観せないのは、その間彼が何を知って、何を知らないのかが解らなくなり、映画を観てる私との間にちょっぴり溝が… 上の方で2007年と、wikiにも出ていた時代設定をわざわざ得意げに書いたのは、鑑賞中、そこにもうひと捻り理由があるんだろう。と思ってしまったからです。更に先の時代があったり、逆にモトに…だったり。あと映画の途中もう一人の存在に触れたことで、そこも気になっていて、どこかに絡む前フリだと思っていました。そう、私は勝手に、この映画には驚くような仕掛けがあるんだ。と思ってしまっていたわけです。ネット記事の「某映画の再来…」という見出しが、私のハードルを少し違う方向に上げてしまったようです。失敗。 あとですね、今回始めて去年出来たTOHOシネマズで観たんですが、セリフと画が微妙にズレてて、ちょっと気が散りました。このズレ、どこで観てもそうなのかな。(※これは評価に含めてません)
[映画館(邦画)] 6点(2024-10-20 23:57:09)
67.  デッドコースター 《ネタバレ》 
“Final Destination 2”そのままで良いのに何この邦題?配給会社の新人に付けさせたの?ってくらい、あれれなタイトルです。 『大事故を免れた人々が、運命付けられた死を回避できず、順々に死んでいく』というプロットが優れています。工夫次第でいろんなバリエーションが創れそうです。今回はハイウェイの多重衝突事故。まぁ飛行機事故=ほぼ100%死ぬことを考えると、交通事故ってそこまで、関係者の死亡率高いか?って思いますが、日常で誰にでも起きうる死なので、良い着眼点だと思います。  また事故当日を『晴れてるけど路面が濡れた朝』にしています。撮影のため、わざわざ数百m~数kmもの路面を濡らしたと思うと(いやCGかな?)、制作側のちょっとしたコダワリが感じられて好感度高いです。ってか、後半に出てくるハイウェイの路面も濡れてます。単に季節的な気候現象なのかな? 大惨事は一瞬でしたが、「つぶせ!つぶせ!」のスクールバスや、ミニカー2台をガッチャンガッチャンしてる子供とか、事故に至るまでの不吉な予兆も、イイ感じにイヤな感じです。前作では、人によってはアッサリ死んだんですが、本作ではまるで『こんなアンラッキーな死に方はイヤだ』のオンパレードです。じわじわ迫る死を、どうにか回避…したと思ったら突然死。って感じで、本作では特に拘ったポイントだったんでしょうね。  クレアが精神病院に自主入院しているのは、悲惨なその後が伺えて良かったですが、あっさり死んでた主人公アレックスは、もう少し深堀りしてほしかったような…レンガが頭にって…。 後半けっこう雑です。せっかく再登場のクレアの最後、正直印象薄かったです。死神が1年掛けたミッションが、ようやくコンプリートしたんだから、達成感的な何かがあっても良いような気もしたけど。死を回避するには新しい生命の云々…も、無理やりなこじつけ感が強いかな。そもそも自殺は出来ないのはユージーンが実証済みだし。まぁ、結局はそれが正解じゃなかった。って結末でしたね。
[地上波(吹替)] 6点(2024-10-17 22:40:41)
68.  マトリックス 《ネタバレ》 
“The Matrix”『母体』。劇中の意味は『人工知能が人間を支配するために創り出した仮想現実の世界』を指しています。 マトリックスは『映像革命』という言葉とともに私達の前に現れました。今まで表現できないモノや事象を、映画の中に実際にあるものとして映像化してきたCGですが、本作では遂に“その映像を、どんな角度で、どんなスピードで観せるか?”を可能としました。 簡単に言うと、漫画の実写化でしょうか?漫画はコマの大きさや絵(カメラ)の角度、コマ割りの数(時間表現)などで、平面で動かない絵を、まるで動きの一瞬を切り取ったかのように表現する作品です。平面の絵のコマとコマを繋いで、活き活きと動きを付けるのがアニメーションです。その技術を実写映像に取り入れたのが、このマトリックスでした。 具体的には、例えは漫画で描かれたパンチの連打。アニメでは格好良く表現出来たけど、実写にするととたんにウソっぽくなるか、格好悪くなる(実写版北斗の拳みたく)。それをしっかりと格好良く観せてしまった最初の作品が、このマトリックスだったんですね。…伝わってるでしょうか?  どうしても“マトリックス避け”とか、映像の奇抜さや素晴らしさばかりに注目してしまいますが、世界観も負けじと素晴らしかったです。 現実と変わらない都市だけど、どこか緑がかった無機質な仮想現実の都市。ダライアスとかのシューティング・ゲームのような敵メカが泳いでる現実の世界。カタカナやローマ字が混ざった緑の文字(マトリックス・コード)が流れるモニター。コネクターとコードを通した生体と機械の融合。SF映画の敵=ロボットやサイボーグだったものが、21世紀を前に、コンピューターとプログラムに変異しました。自由に他人に乗り移れて、物理的に破壊できないプログラム“エージェント”は、過去に例を見ない脅威の敵キャラです。  人間らしく平和な暮らしが出来る仮想現実世界と、ドブネズミのように隠れて生きなきゃいけない現実世界のギャップがキツく、私なんかサイファーの裏切りにとても人間臭さを感じました。うん、多くの人はモーフィアス達みたく強くは生きられない。 モーフィアス救出作戦からの、ノンストップアクションは息を呑む迫力と美しさです。だけどこの映画を何度も観るほどに、最初に撃たれまくるビルの警備員たちが不憫に思えます。彼らは仮想現実世界に住む、いわゆるNPCの扱いだけど、彼らが死ぬと、カプセルで養分になってる本体も死ぬんだよね?たぶん。観ようによっては無差別殺人です。仮想現実を実世界として生きる人にしてみれば、ネオとトリニティは頭のイカれたテロリストです。良くまぁあんなにアッサリと殺せるなぁ…9.11テロ以前だから創れた作品とも言えるかも?  ネオが覚醒し、スミスと互角以上の戦いをしてみせるのは、アドレナリン出まくりです。最後は人知を超えたネオの“舞空術”で、映画は終わります。この“これから先、俺は何だって出来るぞ”って感じが、劇中のマトリックスの世界だけでなく、映画業界全体にも無限の広がりが感じられて、今後どんな凄い映画が楽しめるんだろう?って、期待に胸が膨らみましたよ。 '99年と四半世紀も前の作品ですが、マトリックス以降、少なくとも映画の世界では、次の映像革命と呼べるものは、未だに起きていないと思っています。たぶん。インセプションなんか凄かったけど、正常進化型だよなぁ。 スマホのアプリの短編動画の方が、映画業界より進んでる気さえします。映画は3D立体映像や4DXの動いたりするアトラクション化が進んでいますが、スクリーンに映し出される映像自体は、未だにマトリックスの応用の範囲に思えます。
[映画館(字幕)] 8点(2024-10-16 23:15:38)
69.  ライトスタッフ 《ネタバレ》 
“The Right Stuff”『正しい資質=適任』。何かの本でたまたまX-1とチャック・イェーガーの記事を読んだちょっと後に、テレビで本作が放送されてて「あ、コレって、アレじゃん!?」って驚いた記憶があります。チャックだけで1本の映画が出来そうなものの、本題はマーキュリー計画で、まさに映画1本で2本分のボリュームがあり、長尺なのに飽きずに最後まで楽しめました。 まず驚いたのは特撮の質です。'83年の作品で、CGデジタル合成が出る以前の作品。当時は特撮とハッキリ解るブルーバック合成がメインで、明らかに“ウソの映像”と解り、シラケてしまうことが多かったんですが、本作では恐らく、ミニチュア模型による特撮をメインにしているんでしょうね。合成より古い技術ですが、むしろ凄くリアルでした。  マーキュリー計画も米ソの宇宙開発競争がどれだけ熾烈だったかが良く伝わりました。でも、ソ連が先行する→ジェフ・ゴールドブラムが走ってくる→「知ってるよ、座れ」の流れが見事にテンドンになってる。宇宙飛行士の訓練とお猿の訓練をオーバーラップさせるのも上手いし、尿意を我慢するアランにジョボジョボと飲み物のシーン被せるのも巧い。そんな真面目一辺倒じゃない作風から、長時間でも飽きないんだな。  宇宙飛行士7人のうち、メインとなるのは4人。最初に打ち上がったアラン、便意に尿意に色々大変だった人。2番目はガス、ハッチが吹き飛びパレードも大統領の夕食会もなかった人。かわいそう。地球を周回したジョンは3番目、吃音症の奥さんへの愛情がじんわり来る。宇宙で観たホタルの美しさ&不思議さに見惚れたわ。最後が6番目、地球を21周周回したゴードン。4番目スコット、5番目ウォルターは割愛。7人目のディークは病気で飛べなかったそう。でも調べると、それぞれにもドラマがあるなぁ。 話はイェーガーのその後に戻り、“最後の有人戦闘機”ギラギラのF-104が飛び上がる。雄々しく美しい。奥にチラッとF-102が走ってるのも美しい。 時代とともに記録は塗り替えられる。だけど先人の偉業は決して色褪せることなく輝き続ける。
[地上波(吹替)] 8点(2024-10-14 22:57:08)(良:1票)
70.  マグノリア 《ネタバレ》 
“Magnolia”『木蓮』。なんだろう?花言葉は“忍耐”とかでした。エイミー・マンの歌が格好良くて、当時アルバム買って聞きまくりましたね。主人公たちの問題がどんどん膨らんでいき、この先どうなるんだろう?どうやって解決&収束するんだろう??…と期待が最高潮に高まったところで、カエルの雨…!何だこりゃ?こんだけ期待煽っといて、こんな終わり方って、あるかい?夢オチと同レベルの酷い終わり方だ。客を馬鹿にしてるわ。記憶から消し去ってやりたい。4点!  数年後、たまたまTVで放送されてて、スタンリーはトイレ行きたいと言い、フランクがインタビューで責められてる辺り…あれ?彼らはどうなって行くんだっけ?内容まだらに忘れてたんだわ。最後にカエルが降ってくるのは覚えてるけど…?? 主人公たちの問題がどんどん膨らんでいき、この先どうなるんだろう?どうやって解決&収束するんだろう??…と、私の記憶力の悪さから再び期待が最高潮に達していきました。あれ?観ている間ずっと楽しめてるってことは、これは良い映画なのでは?即DVD買いました。本作は2度目の鑑賞で好きになった、初めての映画かもしれません。で、結局どうなったのか?子どもたちが過去の呪縛から開放される映画でした。劇中3組(+1組)の親子がでてきます。病人のパートリッジ一家と、司会者のゲイター一家は直接は結びつきませんが、クイズ番組の制作がパートリッジ・プロダクションで繋がってました。  フランクは母を捨てた父を憎み、今は男の片思い(=一方的な愛)を金にする怪しいセミナー講師をしています。苦しんで死んで行く父に会うことが出来て、憎しみを全部ぶつけて涙を流します。でも父は液体モルヒネで意識がありません。息子の赦しが聞こえてません。 クラウディアは父に性的虐待(母親がすぐに察したので事実だったんでしょう)を受け、今は売春婦をしています。妻に過去を告白した父は、自殺さえ出来ませんでした。撃ったTVが漏電してた(+雨+気絶)ので、家が全焼したか感電死したかもしれません。どっちにしろ苦しんで孤独に死んでいくんでしょう。 ドニーは親に金づるにされ『元天才クイズ少年』の過去だけが付いて回っています。今はスタンリーが父親の金づるとして同じ道を進んでいます。敗退で積み上げたものを失った父。「僕に優しくして」「…寝ろ」スタンリー自身に救いがないように思えますが、ドニーと違い親の呪縛から開放されたのが救いでしょう。歯科矯正のため金を盗んだドニーは、矯正する必要がなくなり、彼の一方的な愛は終わりました。  もう(+1組)の親子。クローゼットで白人夫が死んでた黒人女性(他重婚してた)。犯人と思わしき息子のウジ虫と、その息子(孫)のラッパー少年。母親は黙秘することで息子を守ります。ラッパー少年は警官の銃を拾い父を守ります。母は息子に逃げ延びてほしくて、子は父に射殺でなく逮捕されてほしかったんでしょう。最初少年は川に銃を捨てたんだと思いましたが、恐らくカエルのいる池に捨ててきたんでしょうね。その後オーバードースのリンダから金を盗み、ついでに救急車を呼んで救います。でも少年は「俺は預言者、ウジ虫どもは踏みとどまって苦汁を飲め♪」この歌は父であり、死ねなかったリンダのことでしょう。  財産目的で結婚し、影でアールをさんざん裏切っていたリンダ。今はアールを愛するようになったけど、アールは死の間際さえ息子(の母=元妻)を一番に思っていたことを悟りました。リンダの一方的な愛でした。液体モルヒネでアールを苦しみから開放し、自分も死ぬことにします。結果リンダは生き残り、これから憎んでいたフランクと面会します。液体モルヒネを投与したのが、リンダ自身でなくフィルなのが、アールを愛していたので自分じゃ出来なかったとも、勝手に息子に連絡したフィルへの復讐とも取れましたが、そもそもリンダは投与の資格がないからできないのかも?フィルは看護師だから投与したら死ぬことを知っていた(泣いてた)んだし。  一番幸せなのは銃を無くしたジムでしょうか。銃も出てきて、一方的な愛だったのが実って…毎朝毎晩お祈りしてるジムは神の子です。 何の罪もなく、親との辛い過去もないフィルは、きっと傍観者。映画を観ている私の代わりなんでしょう。 『過去を捨てたと思っても 過去は追ってくる』善人が必ず幸せになれるわけじゃない。改心して懺悔や告白をしても許されるわけじゃない。でも罪は消えないし業は背負って生きていかなきゃいけない。せめてカエルの雨のあと、親の身勝手を押し付けられた可哀想な子どもたちが、少しでも幸せに向かって歩き出せたら…涙で目を腫らしたフランクと、クラウディアの疲れ切った笑顔から、そんな希望を観せる結末に思えました。
[ビデオ(字幕)] 9点(2024-10-14 13:40:40)
71.  少林寺木人拳 《ネタバレ》 
“Shaolin Wooden Men(少林木人巷)”『少林の木製人間(少林・木人の路)』。中国に(嵩山)少林寺がありますが、そこ発祥の拳法は少林拳。少林寺拳法は日本で創られた武術です。子供の頃は一緒だと思ってました。 ジャッキーのカンフー映画ブームの中で、拳精と並んで異彩を放つ本作。鎖に手足を繋がれた木人の存在がシュールでファンタスティックでした。本作が日本で最初に公開されたジャッキー主演映画だそうで、テレビで流れた回数は少なかったと思うんですが、無感情で怖可愛い木人と、勢いある日本版の主題歌のインパクトが強く、“ジャッキーを語る際に欠かせない名作”ポジションだったと思います。  久々の鑑賞。童顔一重のジャッキーが初期作品なのを感じさせます。功夫の源流とされる少林寺が舞台だけに、五獣拳、蛇拳、酔拳と、多彩な拳法の達人が出てきて賑やかです。オープニングの五獣拳の組手、真っ暗な舞台にロウソクと文字だけと、そんなにお金掛かってないのに良い雰囲気が出てます。当時のカメラとフィルムが成せる技ですね。続いて、ウルトラマンの切り絵オープニングを連想させるような、木人のシルエット…あぁ、可愛い。小刻みにプルプルしてる。真ん丸なお手々のアップ(右手?)に続き、おんなじカタチの逆の手のアップ(左手かなぁ?)、あぁ愛おしい。  そんな木人の可愛らしさから、ジャッキーらしいコミカルな映画だったと思っていたんですが、龍拳並みに真面目な復讐劇でした。少林寺で厳しい特訓をして、尼さんから善の拳を、罪人ファユーから邪の拳を学ぶ。相乗効果で強くなってる反面、急所攻撃に躊躇するなど師によって違う教えに葛藤が出てしまうのも面白い。更に管長から無敵の拳を学ぶという、少年ジャンプ黄金パターンですね。少林寺の癒しキャラ、酔拳の師匠からもちょっぴり学んでますが、真面目な復讐劇にコミカルな酔拳は合わないとの判断でしょうかね?  洞窟に幽閉されてるファユー。両腕が下ろせない位置で鎖に繋がれるという、かなり酷い扱いを受けていますが、饅頭を食べるときとか修行で竹を動かすときとか、けっこう自由に腕を動かしています。どういうカラクリか伸縮自在の鎖なんですね。このネビュラチェーンみたいな謎技術は、きっと木人を動かす鎖と同じ技術が使われてるんでしょう。恐るべし少林寺の鎖技術。まさにミラクル。ユーガッザ ミラクル。奇跡を起こーせー 今その腕ーでー♪
[地上波(吹替)] 6点(2024-10-13 10:13:39)
72.  マルタイの女 《ネタバレ》 
伊丹監督10作目にして最後の作品。伊丹作品としてスタンダードだった前作『スーパーの女』。私は面白かったんですが、監督は不満だったんでしょうか?本作では遂にキラータイトルの『〇〇の女』シリーズにまで、大幅なテコ入れをしてきた印象です。当時大人気の脚本家・三谷幸喜を起用して、恐らくはマンネリ打破を狙ったんでしょう。三谷作品が産んだ時の人・西村雅彦の起用も納得。伊丹&三谷のコラボ作品のようですね。それが巧くマッチしていたかと言うと、正直失敗だったと思います。  宮本信子の『〇〇の女』と言えば、彼女自身がその世界のベテランとして登場し、我々に色んなハウツーを教えるというのがパターンです。本作の場合、彼女が『マルタイ』を守る側(刑事)を演じるのがセオリーでしたが、そこを崩してきました。あと敵の組織・真理の羊の上層部、教祖なり幹部の、人間臭い欲にまみれた素顔が、イマイチ観えてこないのも今までのパターンとは違いました。そんなところが過去の『~の女』とは違う印象を受けます。 彼女の、一見トップレスのようなクレオパトラの衣装は、当時ワイドショーでも結構話題になっていたと思います。映画界で一斉を風靡したあの宮本信子が、あの年齢で、ここまで体を張って話題を創っている姿に、ちょっと必死さを感じてしまったのは事実です。伊丹監督も、夫を支える妻の信子夫人も、必死にもがいていたんでしょう。このクレオパトラ衣装の場面が思いのほか長く、その間は肝心の物語が進みません。そのなかで立花刑事のエキストラ出演&アドリブ暴走と、本筋とは無関係な遊びを入れてくる辺り、いつもの伊丹映画のノリではありません。  敵側を暴力団ではなく、宗教団体にしたのも、当時のテレビはオウムの特番をやれば数字が取れる時代だったので、オウムを仄めかすワードを多数入れたんでしょうか。マルサ2も新興宗教が敵で、かなり深く切り込んだ印象を受けましたが、本作はあそこまでの切れ味がなく、オウムっぽい組織が敵という話題性優先のように感じました。そして最後、証言のシーンを入れなかったのは、逆効果だったと思います。宮本信子が警察の守る側の役だったら、あんな終わり方もアリですが、本作では守られる側。証言台で何を話すかも、それに対する教団や警察の動きなんかも、観る側が期待したシーンだったと思いますが…  見所といえば、本作ではビワコが津川雅彦演じる真行寺と不倫していて、そのネタが教団にバレてしまいます。彼は脅迫に来たヤクザを撃ち殺し、自殺してしまいます。これがビワコが見た夢なのか、実際の出来事かはボカされています。伊丹監督の不倫スキャンダルが出ていた最中ですから、真行寺は伊丹監督自身で、相手を撃ち殺したのは、脅迫には屈しないという、監督なりの宣戦布告だったんだと受け止めました。 最後はどうして映画館で『マルタイの女』を観ている警視総監のコメントにしたんでしょうか?こういう演出は、そう、『タンポポ』がそうでした。映画館で役所広司演じるヤクザ風の男が、私達に語り掛けるところから映画が始まりましたね。 タンポポは監督2作品目ですし、何よりこのマルタイが、監督が自身最後の作品として創ったとは思っていません。でも、何と言うか、この演出で、図らずしも伊丹さんの創ってきた、映画の世界の輪が閉じたような、そんな結末に思えました。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2024-10-10 22:40:39)(良:1票)
73.  スパイダーマン3 《ネタバレ》 
“Spider-Man 3”邦題まま。三部作として創られた完結編です。 過去2作品で見慣れた登場人物たちの、安定した掛け合いが気持ち良い。やっぱ新聞社とピーターの大家さん達とのやり取りが面白い。新キャラ・エディにグウェンも作品世界にすぐ馴染んでたわ。ただね、マルコがベン伯父さんを殺したって設定が今更出てきて、そこは後付け感が…。2の最後で3のヴィランはハリーのゴブリンだなって思ってたところ、サンドマンを出したもんだから、ピーターが戦う理由が必要と考えたのかもしれない。それが効果的だったかどうか?更にヴェノムまで出てきて驚いたわ。ヴェノムって映画の主役やってたのは知ってたから、相当人気のあるキャラだと思うけど、まさか最終作の後半に出てくるとは思わなかったわ。  整理すると本作は敵が多く、メインのサンドマン&ヴェノムに、ハリーゴブリン。ブラック・スパイダーマンとしてピーター自身の葛藤も描いているから、実質4体もの敵キャラが登場。これがきちんと整理できていたかというと、どうかなぁ? 序盤はマルコ/サンドマンの家族構成や誕生に時間を割いたのに、終盤は単なるモンスターとして中ボス化し、途中からポッと出てきたヴェノムがボスキャラ・ポジションになってしまった。そもそも、ヴェノムってもっと見せ場を作れるヴィランだったんじゃないかな。本作がシリーズ最後だから入れましたって感じで、ちょっともったいない気がしたなぁ。サンドマンだけで良かったんじゃないかなぁ?  ハリーが最後味方になるのはアツい展開だけど、敵対→記憶喪失→記憶回復→共闘→最後。と忙しい。ってか周りに振り回されて可哀想に思える。記憶を失ったハリーを見たピーターが“あれ?このままイケんじゃね?”ってしたり顔に見えて…けっきょく、一番記憶に残るのは“調子こいた主人公”だ。街の人気者だと浮かれるピーターにスパイダーマン。ブラック化して腰振って踊りまくるピーターの滑稽さと勘違いっぷりが痛々しかった。 アクションは素晴らしい。キャラも素晴らしい。でも時間配分が内容に見合わない。1のときに思った「長いなぁ」って感じはなかったけど、なにか物足りなさを感じてしまった。
[DVD(字幕)] 5点(2024-10-08 22:35:21)
74.  ファイナル・カウントダウン 《ネタバレ》 
“The Final Countdown”『最終秒読み段階』。原子力空母が嵐に飲まれて、真珠湾攻撃直前にタイムスリップする…こんな突飛なSF映画に、最新鋭の空母と戦闘機を惜しげもなく登場させるアメリカ海軍の懐の深さよ。 “アメリカ海軍の宣伝映画”とも言われていますが、これはこれで大成功だったんじゃないでしょうか?この当時の軍用機って、スーパーカーやガンダムのモビルスーツと同じくらい、強さと速さの魅力に溢れていたんですよ。本作は当時少年たちに大人気だったFー14の魅力を余す所なく観せてくれてます。それもドクロマークが印象的なVF-84ジョリーロジャースのトムキャット。着艦時のギアの出方、細かい尾翼の動き。桁違いの空戦能力。零戦が遅すぎて可変翼は開きっぱなし。なのに敢えて閉じたり開いたりして観せるサービス精神。攻撃も零戦の機関砲の「バババババ!」と違いガトリング砲は「ヴウーーーー!!」って怖い音するし。戦闘中のF-14は資料映像の寄せ集めでなく、きちんと機体ナンバー202と203の2機なのがお金掛かってる。  サービス精神は他の機にも活きていて、E-2ホークアイのレドームきちんと回ってるのが確認できるし、偵察機はマニアックなRF-8クルセイダー。旧型機A-7コルセアで緊急着艦の実演。あの海域で必要か疑問だけどKA-6イントルーダーの空中給油まで観せてくれる。パールハーバー基地には退役したばかりのA-5ヴィジランティをチラッと駐機。…まぁ解る人だけ解ってくれれば。 ニミッツ級の内部も結構細かく出てきます。ブリッジや格納庫はもちろん、食堂やら娯楽室、放送室まで。こんなの3隻(当時。今は10隻)も持ってるアメリカの、軍事力の誇示ですね。東西冷戦下だけにソ連の漁船(スパイ)も出てきますが“そんなに見たけりゃ、映画で好きなだけ観やがれ!”って感じでしょうか?  『宣伝部分は解った。じゃあ映画はオマケか?』と言われると、そんな事もなく、タイムトラベル“if”物としてきちんと面白いです。少しずつ置かれた状況が見えてくる上層部と、断片的にしか情報が入らず、第三次世界大戦の勃発と誤解する下士官。未知の兵器に驚く上院議員と日本兵。 帝国軍の機動艦隊を見つけてからの、上層部のタイムパラドックス議論も想像を膨らませます。アメリカにとって、真珠湾攻撃は“合衆国史上、唯一の屈辱(※後に9.11テロが加わる)”でした。突飛な事態で、思っても見なかった雪辱を果たすチャンスが訪れた。面白いですね。 イーランド艦長の決断は終始悩みつつも、一貫して「我々は、もしアメリカが攻撃を受けたら、過去や未来に関係なく、国を守るのが任務だ」でした。 実際の最終決戦が起きないことに物足りなさを感じるかもしれませんが、もし戦闘が起きても、ニミッツの一方的な勝利で終わるのは観るまでもありません。そして、まだ真珠湾攻撃を仕掛けていない帝国艦隊を、一方的に奇襲攻撃で撃退するというのは、パールハーバーの屈辱の上塗りになります。艦長の未来に帰る決断は、映画的に間違ってなかったと思います。 最後のSF映画らしいオチもいいです。40年の時を超えて愛犬チャーリーと再会するスコット。タイムパラドックス議論で「一度起きた事実は変えられない」と考えていたオーウェンスが、オープニングで、自分の体験した過去と同じく、やっぱりラスキーをニミッツに派遣したのも納得でした。そして過去の戦史を研究していたオーウェンスと野心家のスコットが、軍事産業タイドマン社を創って、歴史を変えること無く、陰ながらアメリカの防衛に尽力してきたんですね。
[地上波(吹替)] 7点(2024-10-07 14:38:11)
75.  ファイナル・デスティネーション 《ネタバレ》 
“FINAL DESTINATION”『最終目的地』。空港でアレックスのスーツケースに付けられる荷物タグに書いてます。『FINAL DESTINATION CDG(シャルル・ド・ゴール空港) PARIS,FRANCE』 後にシリーズ化され、『死のピタゴラスイッチ』なんて言われるようになりますが、実はピタゴラスイッチ放送開始前の本作。この当時のホラー映画って、ジェイソンみたいな殺人鬼物は出尽くした感があり、コメディや宇宙生物(CGが見どころ)と融合した変化球だったり、呪いや幽霊でゾッとする恐さ表現(出血少なめ)にシフトしていた感があります。そんな時代に本作は、グロい死に様を前面に出した、かなりド直球なホラーの成功作でした。 公開時の予告でテリーがバスに轢かれるあまりに突然っぷりに『あ、これ怖そう…』と思わせた作品。なのでビビリの私は劇場で観る勇気がなかったですね。  序盤の空港から飛行機事故までの一連の流れが出色の出来です。雷雨の中の離陸、巨大な飛行機の先端の剥げ具合、飛行機ドア横の傷と舐めたネジ、翼の煤け具合…空旅が苦手な人は、こんな些細な情報を自分から拾って『この飛行機大丈夫か?』って思ってしまうんですよね。 そこに追い打ちをかける不安要素。変な宗教家、墜落死を連想させるジョン・デンバー('97年死去)、たまたま開いたページがダイアナ妃の事故写真(パリ)、空港作業車の車体番号が666(ありえん)…不吉のフルコースですね。ちなみに出発前、アレックスがお守りとして敢えて付けてた荷物タグはJFK(空港)のものでした。ママに外されたけど。 飛行機墜落をアレックスの予知夢として、乗客視点で観せる演出も墜落の恐さ満点です。炎に巻かれ皮膚がパチパチと焼ける音、全身焼かれてもまだ生きてる様子が生々しく、肺が熱風で満たされる苦しさを感じました。実際の事故は遠影で小さく観せるのも旨い演出ですね(でも流石に、空港ロビーのガラスは砕けないだろう)。劇中では架空のヴォレー航空になっていますが、事故の経緯は'96年のTWA800便墜落事故をベースとしていて、なるほどリアルです。  トッドの父の逆恨み、ルートン先生がラリー先生を先行させたことで心を病むところとかも人間臭いですね。アレックスがクレアの写真とエロ本を見比べて何かを感じてるところもいい。事故直後、クレアだけ空港に迎えが来ない時の寂しそうな表情も良かった。クレアの部屋にエッフェル塔の置物が幾つかあって、お土産で貰ったのか、自分で買ったのか、彼女のパリへの思いもちょっぴり感じられました。トッドの兄やクリスタとブレイクの学校のマドンナ・コンビ。ずっとフランス語のラリー先生。飛行機に赤ちゃんと障害者。チョイ役もきちんキャラが立ってます。 最後は試写会の不評から半年後に撮り直したというエンディング(こういう事してしまうのが、ハリウッドの凄さだよね)で、タイトル回収…でも悪夢は続くよってホラーらしい終わり方。 うわ、メインのホラー部分について何も書けなかったな。けど『良いホラー映画観たなぁ』って満足感に満たされました。
[ビデオ(字幕)] 8点(2024-10-07 11:41:51)
76.  スパイダーマン2 《ネタバレ》 
“SPIDER-MAN 2”大文字か小文字か、悩ましいところです… 前作で「…面白いけど長いなー」って感じましたが、本作は普通に面白かったです。上映時間は長くなっていますが、前作で感じた、重たいメインディッシュの連続感はなく、話の組み立て方にメリハリがあったと思います。 スパイダーマンの独特の動き。前作ではどうも、スローモーションを活用した体捌きが、マトリックスのインパクトに引っ張られたんだろうなぁって印象でしたが、今回きちんと蜘蛛っぽい(=スパイダーマンらしい)動きに磨きがかかってきた印象です。特殊能力が消える&引退を考える。というのはヒーロー物の定番ですね。そんな定番をサム・ライミは、このスパイダーマン・シリーズに上手に落とし込んでいます。  あと監督が好きなコメディ要素も若干増えてます。デイリービューグル新聞社の個性的な面々のやり取りが微笑ましく、なんかず~~っと観てられます。秘書?のブラントが意味深ですが、原作ではピーターの初恋人だったんですね。 懐かしい“スパイダーマンのテーマ”。'67年版スパイダーマンのアニメが存在しない世界で、前作ではエンドロールに入れてましたが、本作では劇中、路上ミュージシャンが歌ってます。思い切った演出ですが、本作はスパイダーマンの決定版だと思っているので、なんか納得してしまうんですよね。 今回多くの人に正体がバレます。電車のNY市民は彼の正体を見なかったことにし、体を張ってスパイダーマンを守ろうとするシーンは胸が熱くなります。そしてMJは彼の正体に納得し、ハリーは驚愕します。続きが気になる展開です。  敵はドクター・オクトパス。アームの中心に太ったオッサンが居るビジュアルは、見た目的に中ボス感が漂うんですが、3部作の真ん中として『次の敵はもっと凄いぞ!?』って割り切ってる感じがして、案外納得してしまいました。そして映画の最後に次の敵が…おぉ、そう来たか!って、凄くテンション上がりました。続き物の真ん中って、あんまり『この続きは次作で!』パターンを入れすぎると、満足感が減って消化不良を起こすんですが、こと本作の終わり方は、適度な満足感と、続きが気になる度合いのブレンディングが巧かったと思います。 最後、川に沈んで大惨事を防げるって理由がイマイチわかりませんでした。どうして??あと、結婚式当日のドタキャンは、ウエディングドレスで駆け出す画的なインパクト(使い古しではあるけど)は良かったけど、特段欠点のない婚約者ジョンに説明もなく、MJが一方的に逃げただけなので、MJ嫌いな人はますます嫌いになったでしょうね…2作続けてノーブラで頑張ってるのに。
[DVD(字幕)] 7点(2024-10-06 11:35:52)
77.  ロサンゼルス 《ネタバレ》 
“Death Wish II”だけど『狼よさらば2』にしなかったんですね。8年後の続編ということもあり、配給は“前作のファン<<新規の観客”って考えたんでしょうか?私が中学生の頃に放送されて、たぶんクラスの多くが観てました。『ロサンゼルス=若い娘の可哀想なレイプシーンのある映画』として、インパクトが凄かったです。 娘のシーンの記憶はあるけど家政婦さんのシーンの記憶はあまりないので、たぶん大幅にカットされていたんでしょう。前作があるとは知らなかったので、まだあどけないキャロルは中高生の役だと思っていました。後から『狼よ~』を観て、まさか結婚する年齢だったなんて…って衝撃でした。 キャロルについてちょっと掘り下げると、前作ではジャックと結婚してキャロル・トビーに。キャスリーン・トーラン('50生、当時24歳)が演じていました。本作ではキャロル・カージーになっていたので、ジャックとは離婚してたんですね。ロビン・リン・シャーウッド ('52生、当時30歳!)が演じています。2人は実年齢2歳しか違わないので、ロビンの見た目年齢が恐ろしく若いということが、今回解りました。  4年前、“アマチュア警官”として9人を殺害し、ニューヨークを追い出されたカージーが、シカゴからロスに居を移し、精神病院に入る娘を見守りながら過ごしてます。…前作のカージーの心理状態を考えると、ガールフレンドを作ってるのはどうかと思いますが、ジル(ブロンソンが溺愛する奥さん)だったら仕方ない。ジルが出るたび復讐劇のテンポにブレーキが掛かりますが、仕方ないんです。 このブロンソン&ジルのラブラブ共演って、きっとイーストウッド&ソンドラに影響与えてると思います。カージーのガールフレンドがジル(ジェリ)だから、ジェリをレイプするわけに行かないから、家政婦ロザリオが一番酷い目に遭うんですね。  オチョア刑事の再登場は嬉しかったです。相変わらずくしゃみしてるし。ロス市警から協力を求められたNY市警。4年前カージーの犯行と知っていて逃がしたんだから、カージーがロス市警に捕まってバレたら困る。だからオチョアに説得に向かわせる。って設定はとても面白いですね。続編としてオチョアを出す上手い口実です。オチョアの、管轄をまたいでの捜査やバスの尾行。この辺『フレンチ・コネクション』シリーズを参考にしてるのかな?って思いました。 今回カージーは手当たり次第ギャングを襲うのではなく、ターゲットを絞って復讐します。そのためカタルシスはあるんですが、前作で感じたリアリティは少し減ってしまいました。
[地上波(吹替)] 6点(2024-10-06 10:23:11)
78.  スパイダーマン(2002) 《ネタバレ》 
“Spider-Man”邦題まま。小さいころ東映のヒーロー物でやってましたね。そのためスーパーマンと並んで馴染み深いヒーローでした。 サム・ライミと言えばB級ホラー映画監督のイメージが強いのに、こんなメジャーなアメコミ・ヒーロー物を、それも巨額な制作費を掛けて撮るなんて!と当時驚いたものです。…そう言えば同じB級ホラー監督だったピーター・ジャクソンも、同じような時期に超大作の監督に抜擢されてますね。ハリウッドがそんな動きをしていた時期だったんでしょうか?  ひ弱な苛められっ子のピーター・パーカーが新種の蜘蛛に噛まれ、超能力を手にし、謎のヒーロー・スパイダーマンとして成長していく。サム・ライミ監督なのに、奇をてらわない、とてもオーソドックスな展開に驚きました。原作は知りませんが、あの有名なスパイダーマンの映画化として、ディープなファンも、にわかファンも、一般人も、みんな納得して受け入れられる作品だったと思います。 叔父の死、片思いのMJとの関係。親友ハリーとその父とMJの複雑に入り組んだ気持ちと関係。グリーン・ゴブリン=ノーマンの心の葛藤を、本作の一貫したテーマである『大いなる力には、大いなる責任が伴う』を絡め、一本の映画に上手くまとめていると思います。 MJのキルスティン・ダンストに批評があるようですが、スパイダーマンとのキスシーンや、ピーターに女優でなくカフェで働いてるのがバレた時の表情なんか、私はとても好きです。  さて、エピソードのどの部分も、スパイダーマンを創るに当たり必要な要素に思えるし、上映時間も長すぎない。だけど何故か個人的にダレてしまいます。初めて観たとき「…面白いけど長いなー」と感じ、恐らく6回目くらいの今回の視聴も、やっぱり同じ感想を持ってしまいました。上映時間は決して長くないのに、不思議。恐らく『トラブル発生→スパイダーマンが解決』のエピソードの積み重ねの、一つ一つがそれなりにボリュームがあって、つど満足してしまうから、それが積み重なって、全体を通したとき、過剰な満腹感になってるかな?って。  クドクドと自己分析すると、“オズコープ社の平和の祭典”からの、グリーン・ゴブリンによる“新聞社襲撃”あたりからクライマックスに流れていっても充分満足だったところ、MJとのキスを挟んでの“火災現場の戦い”。これだけ派手な戦いでもクライマックスにならず、叔母さんとハリーとMJとの関係を深堀りしての“ロープウェーでの決戦”で、やっとクライマックス。個人的に映画2本分くらいの情報量で、言い換えるとフルコース2回分の満腹感に感じてしまいました。 良い映画、面白い映画と認めていても、どうにも苦手ってあるものですね。このスパイダーマン辺りから、クライマックスの連続で、満足感でなく満腹感(お腹苦しい)を感じる映画が増えてきたと思います。
[映画館(字幕)] 6点(2024-10-05 18:24:00)
79.  ナバロンの嵐 《ネタバレ》 
“Force 10 From Navarone”『ナバロンから第10部隊へ』…とかかなぁ?バーンズビー中佐率いる特殊部隊『フォース10』は、橋を爆破する任務を任されていて、そこにマロリーとミラーのナバロン島メンバーが、旧知のスパイ・ニコライ暗殺任務で、ユーゴスラビアに同行する…と。 今回ナバロン島全く関係ないです。マロリー版ジャック・ライアンシリーズみたいな感じだけど、シリーズ・タイトルにずっと『レッドオクトーバー』を付けてるような感じですかね。そもそもニコライなんて居たっけ?『~要塞』の、アンナの上官?キャストも全とっかえで混乱しますが、映画自体が前作から17年経ってて、ビデオもない時代だし、当時の人は多分誰も気にしないでしょう。 オープニングで前作の要塞爆破シーンが入ってます。巨砲が海に落ちるシーンは新カットかな?  多分ですね、この映画が、私が最後まで観た、一番最初の洋画だったと記憶しています。当時8歳で、ゴールデン洋画劇場で放送されてて('82年4月だって)、普段だと寝かされる時間でしたが、最後まで黙認してくれてました。たぶん父がこの映画を観たかったんでしょうね。 怖がりな子どもで、撃たれた血とかは大丈夫でしたが、パルチザンのマスクの二人が怖くてねー。もしマスクを取る場面なんてあったら、そこでリタイアしてたかもしれません。この火傷の跡のある、無しは、要塞のアンナの背中のオマージュですね。 ドイツ軍がモロに戦隊モノとかの悪の組織な印象で、ワイヤーカッターで首斬られるのとかも、アレは悪い奴らだからって平気でしたね。8歳児強し。  ディア・ハンターと同じ'78年の戦争映画にしては、戦場描写がのんびりしているように思います。まるで'60年代の戦争映画な印象。当時はリアル志向とかニューシネマとか、観終わってズシンと来る映画が多かったからか、きっと制作陣も意図的に“戦争を舞台とした古き良き明るい冒険活劇”にしたんでしょう。 ストーリーは全然覚えてませんでしたが、フォース10がバタバタやられて、最後バーンズビーだけになってしまうのも思いきった決断。きっと特殊部隊の映画ではなく冒険映画なんだって、バランスを取るための措置でしょう。白人だらけのユーゴでの潜入任務なのに偶然にも黒人ウィーバーが入るのも、ハラハラ要素として面白いです。マリッツァやレスコバー、マスクの2人も、映画の意外要素として掻き回してくれました。 ダム爆破から崩壊までの間と、脱出を諦めたマロリーとバーンズビーが、やっぱり駆け出すところとか、成功したあと、絶望的な孤立無援状態でも、明るく前向きに脱出について話し合ってる終わり方とか、とても心地よいです。映画観終わって「あぁ面白かった!」って思える終わり方って、やっぱ良いですね。
[地上波(吹替)] 7点(2024-10-05 16:41:22)
80.  キング・コング(2005) 《ネタバレ》 
“KING KONG”と大文字になりました。 '76年版は現代劇として制作されていましたが、本作は'33年版オリジナルを、時代そのままに踏襲しています。 この辺りからでしょうか、ハリウッドが送り出す大作映画が、美麗なCGがウリなだけのリメイク作品やシリーズものばっかりになってきて、個人的にちょっと、食傷気味になってきたんですよ…。本作もそんなイメージで、美麗なCG以外のウリが、'76年版と違ってオリジナルのリメイク…くらいなんですよね。 でもけっこう高評価の作品のようですので、そういう意見もあるんだぁ~程度に読み流してください。  33年当時のニューヨークの街の再現度。オリジナルキャストの名前を出すお遊び。不気味な巨大昆虫。静まり返った公園の池で滑って遊ぶコングとアンなど、良かったシーンは結構あります。…ほとんどCGしか褒めてませんが。 エンパイヤステートビルの創り込みは、'33年版のビルの再現度の高さを再認識させてくれました。 ジュラシック・パークで見慣れたCG恐竜ですが、キングコングの恐竜はどこかヌメヌメした印象で、制作チームが違うと表現方法も変わるんだなって、勉強になりました。そしてオリジナルでは割愛されたらしい、巨大昆虫が気持ち悪いです。とても気持ち悪いです。次々襲われる船員。あんな島で、あんな虫に殺されるのは勘弁してほしいですね。 オリジナルと違い、アンとコングが相思相愛となっていて、この辺'76年版の影響かなぁ?'76年版を見慣れた私には、こちらの方がしっくりします。でも言い方を変えると、恐竜や昆虫以外、あまり代わり映えのない内容だなぁ…って思ってしまいました。 アンを握ったままジャングルを疾走するコングに、アンが潰れたり頚椎損傷しないか心配になりました。当時USJのアトラクションでも作ろうしたんでしょうか?そんなスピード感演出でしたね。(※アトラクションあったみたいです) プロントサウルスがゴロゴロと坂を転げ落ちるシーンは、まるでAIが造った、動く肉の塊の映像みたいです。そもそも、あのシーンの必要性が判りません。ラプトルみたいな肉食恐竜も一緒に走ってますが、別に踏まれる危険を犯して並走しなくても、一番足の遅いプロントサウルスを捕食すれば良いだけでは?って、冷めた目で観てしまいました。こちらもアトラクション化を意識しての演出かな?  一番の欠点は、上映時間が長いんですよ。オリジナルが100分のキングコングに188分も掛けるのは、時間管理と映像の取捨選択が下手だからだと思います。 例えば船の衝突の場面。見張りのジミーが前方に壁を見つけて叫ぶ。で船長が壁を目視して機関停止を命じるまで、何と20秒も掛かってます。長すぎです。壁を見つけてから座礁するまで4分近く使ってます。時間取りすぎです。キングコングを観に来たお客さんは、貨物船の座礁なんて、別にじっくり観たい訳じゃないんです。きっと他の監督なら30秒で終わらせたでしょう。 キングコングの前で起死回生のパントマイムするアンは予想外の動きで可愛いんですが、序盤の舞台で踊る映像は酷いもので、放り投げた帽子のキャッチは観客の背中や別カット割りで誤魔化す。アンが倒れ込むアクションすら別カット。何か「役者が頑張ってないなぁ」って印象を持ちました。 ジミー少年と育ての親ヘイズにも時間を割いていますが、2人で本の解釈を語り合う場面って必要?どんな裏設定でも構わないけど、2人のシーンは全カットしても全く問題なかったですね。 コングの最後を見たデナムの「美女が野獣を死なせたんだ」のセリフ。これオリジナルではコングの片想いだったから、意味があったと思うんですよ。相思相愛にしちゃった本作では、やっぱり飛行機がとどめを刺したって事になると思います。デナムは知らないけど、本作のアンは体張ってコング守ろうとしたし。 良いシーンもあったし、CGはお金掛かって綺麗。本作の出来に腹は立ちませんが、もう50分短ければ、もう1点追加しても良かったです。  個人的な見解ですが、ピーター・ジャクソンって何故か大御所感がありますが、ブレインデッドのカルト的高評価で、実力以上の仕事を任されてしまった感が拭えません。彼をメジャーに押し上げたロード・オブ・ザ・リングって、あれだけメジャーな原作で、上映時間と制作時間、制作費と宣伝費を掛けたら、誰が創っても、アレくらいはゴージャスになるような気がします。そんな流れで、メジャーなオリジナルがあって、同じように時間と費用を掛けた本作。その後はまたロード・オブ・シリーズの尻尾のホビット…身の丈にあった上映時間と制作費の、オリジナル作品を観てみたいものです。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2024-10-02 18:51:41)
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