821. 夜汽車の女
《ネタバレ》 これは面白いすね。ロマンポルノではあるけれど、濡れ場はソフトだし今作では添え物程度。その代わりドラマとしての見応えは出色。見事な和製文芸(風)映画に仕上がっていますね。 仲の好い姉妹二人だが、妹の一方的な同性愛的感情が暴走し、姉の交際相手を巡っての常軌を逸した愛憎劇へと展開する。更にそこにもう一人の女の感情・謀略も交錯してゆく。演技が総じてどーも稚拙で(特に姉役の続圭子が酷い→ルックス自体は実に文芸的で好いのだケド)、そこをカバーするのが何とも抒情的で優れた雰囲気を醸し出す映像面の演出と音楽。中盤、妹が夜汽車で姉のもとに向かうシーンが実に好かったです(あれは多分、いわゆる瞽女というヤツですね)。終盤の映像表現も(若干「ムム?」という感じのも無くはないが)ロマンポルノとしても非常に凝った工夫あるものになっていて、製作側のやる気・高い志が垣間見える。個人的には前述どおり、ロマンポルノの枠に留めて評価してしまうのは勿体無く感じるほどに優れた作品だと思いました。興味ある方は、是非。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-08-15 22:23:58) |
822. 少女娼婦 けものみち
《ネタバレ》 神代辰巳作品だし、製作年的なコトからも、名作『赫い髪の女』に自覚的に寄せていった様な、男と女のグズグズなアレコレを生々しくかつどこかニヒルに描き出そう、という作品である様にも思える(しかも今作はソレを若い女のコで撮っちゃうよ!的な)。そして主演の吉村彩子は確かに若いし、そこそこ美形だし、脱ぎっぷりも演技もごく悪くはないのだ(何なら宮下順子よりも私は好み)。 しかし本作は、まず第一にお話(とゆーか人間関係)が少しややっこしいというかシンプルではないのと、第二として個々の描写にもイマイチよく分からないリアリティに欠ける様なものが散見され、結果すんなりと簡単に入ってくるという作品にはちょっとなっていない気がする(私が特に分からなかったのは、カモメに石を投げたら当たっちゃって、そんでもって青姦レッツゴー!の流れとか)。少しだけだが、奇を衒ってスベりかけている、という様にも感じられるのですね。全体的な雰囲気自体はそこまで悪くもないとは思うのですケド、随所に疑問とゆーのが残ってもうてる、つーか。 加えて痛いのが、結局吉村彩子ちゃんとゆーのが若くて青いが故に色気が率直に足りてない、とゆーコトなのですね。ポルノ的な価値とゆーのは『赫い髪の女』には完全に劣るかと思います。とゆーかそもそも主人公は17歳の学生で、実際に若い女優さんが演じてて、そんな彼女のセックスだのオナニーだのに高度に興奮する、つーのも、現代的な感覚からすればかなり「危うい」ラインかとも思いますし。 [インターネット(邦画)] 4点(2021-08-15 00:41:29) |
823. ブリット=マリーの幸せなひとりだち
《ネタバレ》 ごくシンプルながら本質的には「手堅い」お話ではあるのですよ。主人公は63歳ですが、今作のテーマはある種の自分探し、或いは自らの人生・存在の意義を再発見する、というトコロにあります。その部分に限ったお話の流れや導き出される結論とゆーのは、別に決して悪い内容ではないとも思うのですよね。 ただ、その「再発見」とゆーのは、家を飛び出した主人公が悪戦苦闘しながら人と出会い、そして端的には少年サッカーのコーチとして試合に臨む中に見い出されてゆきます。映画の大半を占めるこれらの部分の展開運びとゆーのは、まず率直にあまり巧くなかったと感じます。例えば、どー見ても冴えないオバハンな主人公にあの警官が言い寄ってくるのも単純に理由がイマイチ分かりませんでしたし、最初はサッカーのことが何も分からなかった主人公は、どのように練習を指導し、如何にして子供たちとの絆を深めていったのか、という部分の描写も非常にテキトーな様に思います(取り分け、サッカーの技術的な側面の話がまるで皆無、という部分において)。 根本的な話として主人公のキャラ自体、特にその魅力・ポジティブな側面とゆーのを殆ど描き込めていないというコトにも思うのですよ。北欧的と言えるのかも知れませんが、非常に寡黙で表情・感情表現も限定的な少しぶっきらぼうな人物に見えるので、だから尚更その辺が分かり難かったというコトにも思えます。主人公からポジティブさを汲み取れないが故に、終盤は色々なコトが(予定調和的に)ウマく回り始める、そこに必然性を感じないとゆーか、少し違和感が残るとゆーか。本質的にはキライな系統の作品では決してないのですが、結論的には私にはハマりませんでした。 [インターネット(字幕)] 4点(2021-08-14 21:20:05) |
824. フリー・ガイ
《ネタバレ》 ド初っ端はハイテンションにコミカルなアクションでオッ始まるので、単純なアクション・コメディなのかと思いきや、観てゆくと特にアクションはそこまで凝っててクオリティ高まってる、というモノでもないし、量もそれホドでもないのです。他方、コメディシーンもチョコチョコ豊富に入ってゆきますが、如何にもアメリカンな(矢鱈喋りまくる)ヤツで個人的にはさほどこちらもハマりませんでした。そもそも、ゲーム内世界・仮想空間とゆーのを舞台にした作品とゆーのは昨今もはや相当にありふれていますケド、今作の「フリー・シティ」とゆーのはごく現実世界に近い方のヤツであって、映像表現・設定部分も含めて独創性・斬新さといった面でごく優れているというコトでも全くないのですよね。そんなこんなで、中盤には(これも在りがちに見える)恋愛沙汰とかも放り込まれてきたりするので、結果的にはワリと「平凡さ」の方を強く感じる作品だなあ、と観ていました(正直モロトフ・ガールのピッチピチの尻しか印象に残ってなかったっす)。 しかし、結論からゆーと今作が真に描きたいのは人間ドラマ、それも充てがわれた運命から「自由になる」という非常に胸アツで優れたテーマの方だったのですね。あ~そー言えば、そもそも冒頭で我が物顔に振る舞う「サングラス族」と、それ以上にその現状を完全に「諦めている」モブキャラたちとゆーのが、今どきかなりの違和感とゆーかちょっと頭にカチンと来たのが思い起こされます。そこら辺も含めて最初から最後まで観ると、現実世界とゲーム世界をクロスオーバーさせるストーリー展開は(それらを結びつける自己進化AIという少しSF的なアイデアも含めて)かなり上質で巧みなものだったかと思います(ソコをやり過ぎないアクションとコメディで楽しく彩ろう、という作品だったのですね)。結論、最近の娯楽映画では一番明るく爽快に観終わることが出来ました。かなりオススメです。 [映画館(字幕)] 8点(2021-08-14 16:33:05)(良:1票) |
825. 悪魔の奴隷
《ネタバレ》 インドネシア産ですが、同じくインドネシアの名作?レトロホラー『夜霧のジョギジョギ』のリメイクとゆーことらしいです。ただ、お話の内容+全体の雰囲気はかなりアレンジされています。お話としては、子を授かるために悪魔の力を借りる、という部分の要素が足し込まれており、終盤の展開も大きく異なります。雰囲気としても、旧作はあまりインドネシアの情緒というものが感じられなかったのですが、今作ではまずメインの舞台となる屋敷がかなり古びて雰囲気があるのと、生活描写にも異国感が大いにあり、その意味では中々好い方向性のリメイクと言ってもよいかも知れません。 しかしホラーとしての技術的な面は、率直に(現代の他国のソレと比較して)決して高いとは言えません。雰囲気はかなり重く禍々しいどちらかと言うと和ホラーに近い様な感じですが、ショック描写はごく終盤までだいぶ地味+安上がりで、その割にテンポも好くないので正直ちょっと退屈です。終盤残り25分くらいで屋敷の周りを怪しげな集団が取り囲み、ここから一気にクライマックスか⁉と思いきや一旦流れが中断して暢気なシーンに戻る、等展開運びもやや稚拙です(結局そのあとそのまま屋敷に留まり、翌晩に同じよーに襲われるとゆーのは流石に「あんたらバカァ?」という感じですね)。ラストもなんか相当に適っ当でした(旧作のイスラム教万歳!エンドよりは好いのかも知れませんケド)。 結論、マニア向けとしては観る価値が無い、とまでは言わないケドも、正直微妙すね。 [DVD(字幕)] 4点(2021-08-13 23:19:05) |
826. MAMA(2013)
《ネタバレ》 姉妹を取り巻く状況がかなり奇抜なワリには、コトの真相や霊的存在の正体、そしてかなりファンタジックな終盤の展開などにしても逆に結構在り来りだとも言える(こーいう幻想的なラストで泣かせに来るのはスパニッシュ・ホラーの「あるある」かも知れませんね)。 ただCG全開でファンタジックとは言え、ショック描写が禍々しくて気持ち悪くて結果そこそこ怖いのである。なので、ホラーとしてはそれだけでも十分に合格点以上ではあるし、ジェシカ・チャステインは流石になかなか良質な演技を披露してくれている。少し甘く付けてではあるが、ここら辺の評価とさせていただきたい。 [DVD(字幕)] 6点(2021-08-12 21:26:20)(良:1票) |
827. わさび(2016)
《ネタバレ》 芳根京子ちゃんが可愛いすね。可愛いだけでなく、年齢よりもしっかりして見えるとゆーか、要はこの娘、結構色々苦労を重ねて来たけどその都度健気に乗り越えてきたのよ、という根本部分の(省略された)キャラ設定は、狙い通りにスンナリ入って来る様にも思います。 ただ、結局コレって何を描きたかった話なんすかね?父子の絆?明日への前向きな一歩?(それは状況を俯瞰した時に「適切な」判断と言えるもの?)なんとゆーか、30分観てきてもそもそも何も積み上げた諸問題がクリアにはなっていない、という様に思えます。別に、空気感がメインディッシュです!みたいな短編も多いワケで、必ずしもお話がゴールに辿り着いてないことが許されない、というコトでもないとも思いますが、今作はソレにしちゃあゴチャゴチャとお話の構成要素を盛り沢山に詰め込んでいる、という様にも思いますし、個人的にはも少しポイントが分かり易いシンプルな短編の方が好みですね(監督に複雑な話をコンパクトに纏め上げる能力が有るとゆーなら別ですケド)。 [インターネット(邦画)] 4点(2021-08-11 19:00:13) |
828. 愚行録
《ネタバレ》 サスペンスではあるがタイトルにも表れているとおり、登場人物たちの愚かで醜い人間性を(互いの互いに対する言及を通して)描いてゆこう、という側面のある作品でもある。その意味では、中盤まで満島ひかりの話はコレは何なんだろう?と思って観ていた矢先、突如そっちの話が妻夫木クンの追っかけてるサスペンス話に無理矢理割り込んでくる、とゆーのがかなり大きな違和感として感じられたのだし、終盤の方のサスペンス的展開も相当に突拍子も無いし、結論、サスペンスとしては正直少し安っぽい、とも感じられる。 ただ、醜い人間性を描いていくという側面については、それを詳らかにしてゆく登場人物たち自身がまた醜い、というコトも含めて、かなり見応えがあったのですね。小出恵介はあくまで軽い感じでしたが、女優4人のその部分の演技はそれぞれに暗く重く、また非常に嫌らしい感じでもあってどれも見事でした。でもこれに関しても、その「病み」度とゆーのは満島ひかりだけちょっと頭抜けているとゆーか、結局松本若菜は別に殺されるホド悪いことはしていない様に見える、その意味でもやはりひかりチャンだけ場違いにブッ飛んでる様に思えるのですよね。なのでこちらも、安っぽいと言うよりはバランスが悪い、という風にも少しだけ感じましたです。まあでも、そのひかりチャンに言及する場面の臼田あさ美のイヤらしさなんか、中々絶品に殴りたくなる様な優れた代物だとも思いましたケド(妻夫木クンの気持ちも分る)。 [インターネット(邦画)] 6点(2021-08-11 18:57:06) |
829. パンドラの箱(1929)
《ネタバレ》 私の観た「クリティカル・エディション」とゆーのは、1997年にドイツで修復されたプリントによるもので、その際に伴奏音楽は新たに作曲されたものということである。かなり現代的で(でありながらレトロで時代的な雰囲気も十二分に醸している)叙情豊かな音楽は相当に良質で、字幕がかなり少ないことも相まって率直な観たままの感触はオペラや音楽劇にも近いもの(=音楽の力で伝えたいモノを伝えてゆこうという意志を持つもの)に感じられた。確かに少し分かり難い作品ではあるが、その意味ではあくまで個人的にはある程度「慣れて」いる範疇の演劇的表現であったかと思う。内容的にも例えば『マノン・レスコー』などにもかなり近い様な、所謂(その時代の先進的な)ファム・ファタールを描く物語だと思われるが、今作のルイーズ・ブルックスにはそういった他作品の女性に感じる負の人間性の側面よりは、むしろ純粋で透き通ったソレの方をより強く感じ取れる様にも思われるのだ。 ルイーズ・ブルックス、世紀のハマリ役ですね。しかし、ただ悪女かと言うと少し違うとも思います。彼女は自分の感情にどこまでも素直なだけであり、そしてそう振る舞うことに揺るぎ無い自信と矜持を持ち合わせている、と感じました。その部分の彼女の表現の絶対的な土台となっているのが、類稀で実に現代的・普遍的な彼女のルックスであるかと思います。話を聞くと、実際の彼女本人もそういう自信に満ち溢れた「媚びぬ」女性だった様で、その意味でもこれ以上無いというキャスティングだったのでしょう。重ねて、今作の彼女のキャラクターには常しえに朽ち果てぬであろう普遍性とゆーのを感じます。傑作ですね。 [DVD(字幕)] 8点(2021-08-11 08:55:42) |
830. サイコ4<TVM>
《ネタバレ》 ノーマン・ベイツ最終章。「母殺し」をテーマにしたラジオ番組にノーマンがコンタクトしてくるという建付けで、主にノーマンと母の人物像とその関係性を描いてゆく作品だが、『2』『3』とは別の世界線上のお話というコトのようである(ノーマンがほぼ完治して退院し、更には結婚までしているというやや驚きの設定)。 初めて生きているときの様子が描かれる母ノーマをオリヴィア・ハッセーが熱演しているが、彼女のキャラクターの中身自体は、このお話の根本の元ネタ、エド・ゲインのエピソードに酷似したものであって正直あまり新鮮味は無いし、肝心の母殺しのシーンにも見るべき独創的な仕掛けというホドのモノは無い。その他、母を殺した後の第一・第二の殺人なども描かれるがそれも大したもんでもないかと思う。更にそもそも、この意外なハッピー・エンドにはそれこそ賛否両論があるだろうし、ラストの大騒ぎも個人的にはハッキリ蛇足だと思う。その意味ではやはりテレビ映画かな、という程度のクオリティにも感じられる。 ただ、コレこそがアンソニー・パーキンス自身のノーマン・ベイツの解釈なのだろう、というのは大いに伝わってくる。今作まで観たうえで改めて『1』『2』を観直すコトで新たな発見がある、という可能性は否定できないし、その意味では今作を観る価値も多々あると言えるのかも知れないとも思う。シリーズのファンなら、観て損は無い。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-08-10 00:59:06) |
831. サイコ3/怨霊の囁き
《ネタバレ》 うーん、全体としては(ある意味待望の)「ノーマンが母を克服する話」なのですよ。だから、その部分だけに絞って筋を追う分には別にそこまで酷くもない様な気もします。パーキンスの演技自体にもかなり力が入っていますし(ラストとか特に)。 しかし、それ以外の部分がちょっと「チープ」過ぎます。まず、モーリーンが自殺しようとする場面で母親に化けたノーマンが聖母に見えた、つーのはギャグですか?あと、メインの筋書きが非常に単純でボリューム不足だからしょーがないのでしょうケド、場繋ぎとしてその他に盛り込まれる殺人がどれもテキトーな上に数が多すぎます。『1』と『2』は同じサイコ・スリラーでも、もう少し風格とゆーのを保っていたと思うのですが、今作はソレを自らB級のモノに堕としてしまっていると感じるのですね。 もう一つ、これは前述のB級スリラーになっちゃってるというコトにも関係しますが、結局ノーマン(パーキンス)はホラーモンスターには為り得ない、というコトだとも思うのですよ。『1』も『2』も(実際には彼は狂ってるのだケド)それがどっちなのかが定かでない、というキャラクターだったからパーキンスでも成立してたというコトであって、彼を主役にB級スリラーを撮ろう、とゆーのがそもそも筋違いな様にも感じます。だから一層、メインの筋に注力した真剣なヒューマンドラマ・サスペンスとして組み立てるべき話だったのだろう、と思いますね(パーキンスの演技力もその方が活きるでしょうし)。 [インターネット(字幕)] 5点(2021-08-10 00:58:48) |
832. サイコ2
《ネタバレ》 かなり入り組んだ複雑なシナリオだが、色々と微に入り細を穿って組み立てられており、完成度としては確実に合格点を大きく越えていると言えるだろう。少しだけ無理繰り・取って付け感が在るとしたらラストの「真の母親」の箇所かと思うが、その女をノーマンが即座に手に掛けるオーラスはもはや哀愁すらも感じさせる優れたバッド・エンドだと思う。 一方で、シナリオの当初は正気を保とうと苦悩するノーマンを主人公として描いてゆきながら、徐々にメアリーの方に主人公の役割をシフトしてゆくアイデア(=ノーマンが正気なのかどうかは逆に定かではなくなってゆく)、そしてそれを可能にするメアリーのキャラ設定と実際の展開運びまでが非常に秀逸で的確だったとも感じるのですね。加えて、実際のノーマンとメアリーの演技自体もまずまず以上に好い出来で、結論、名作である『1』の名に恥じぬ優れた続編、と言ってよいかと思われます。アマプラに出て来ていますが、これは『1』のファンなら必見かと。是非。 [DVD(字幕)] 7点(2021-08-10 00:58:24) |
833. 夜歩く男
《ネタバレ》 無駄とゆーものを限り無く削ぎ落とした、混じりっ気無しのガチンコ・ノワール。身内を殺られた警察の鬼気迫る全力捜査には、いつでもそんぐらいマジメにやれよ、と若干ながら溜息も出そうになるものの、リチャード・ベイスハート演じる犯人の意外なまでの狡猾さ・凶悪ぶりを見せつけられれば、(ちょいと詰めが甘いのがだいぶん気にはなるケドも)警察やったれ!と何やら鶏冠に昇って来るのも必然か。ラスト、ベイスハートは小柄なのもあってスルッとまた排水溝から地下に逃げてしまう、そっから先は『第三の男』で観たよーな地下の追っかけっこだが、今作の方が1年先行の作品なのですね。催涙弾からの集中砲火で哀れ凶悪犯は蜂の巣に…キレの好いラストにもまた、実に無駄が無い。良作。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-08-09 01:55:53) |
834. ダニエル
《ネタバレ》 ティム・ロビンスの息子マイルズと、シュワちゃんの息子パトリックが共演する(二世もの)ホラーですが、パトリックは率直に素晴らしいイケメンですね!オールバックの似合う甘~いマスクで、悪魔的なカリスマの有る役柄に見事に説得力を持たせることに成功していました。マイルズ君の方もそこそこカワイイ顔面に演技もそこそこで、今後が楽しみな二人です。 内容は、いちおうテーマ的なトコロはこれも「イマジナリー・フレンド」なのですが、子供時代に一度封印した「ダニエル」が大人になった現在に復活して…とは言いつつ、実は結局彼は悪霊(悪魔)的な何者かである、という点では、ちょっと拍子抜けする程度にコトが単純すぎるとも思います(ホラーとして)。あと「ダニエル」は本気を出せば主人公の人格を乗っ取れるのですが、そこら辺で「本気を出してゆく」描写を入れるタイミングがやや早すぎた、とも思いました。中盤で早くも一発カマしてくれるのですが、そこから終盤にかけて逆にあまり展開がエスカレートしてゆかないので、正直少し盛り上がりに欠けるのですよね。ダニエルが悪魔的な魅力を全開に主人公を翻弄してゆく序盤からのシーンが優れた出来だったので、ソッチをもう少しジックリ眺めてゆきたかった、というコトでもありますケド。 結論、お話(ホラー)としては少しだけ残念にも思われる仕上りですが、映画自体の質はそこそこ高めで、少しアーティスティックだったりスピリチュアルだったりもする映像のクオリティに関してはかなり上等だったかとも思います。主演二人のみならず、監督についても今後はチェックしていこうかと思います。 [DVD(字幕)] 5点(2021-08-08 18:22:31) |
835. ダニエル 悪魔の赤ちゃん
《ネタバレ》 リメイクですが、まんまのリメイクというワケではなく大きな違いとして、旧作ではド初っ端からアクセル全開で大暴れだった怪物赤ちゃんが、今作では本気を出し始める(=ダニエルが怪物だという周囲の認識が決定的になる)までにかなりの時間を要します(残り30分くらい迄ですかね)。ただ、それ自体は別にイケてない工夫というコトでもなくて、とゆーかホラーとしてはこっちの方が普通でしょう。そもそも旧作とゆーのは、冒頭からホラーを観る我々側の「警戒レベル」とゆーのが長時間変化しないのでメリハリの面に弱点があったとも思ってますし、ソコは確実に改善されてるとも言えるでしょう。 しかし、新たにひとつ大きな疑問点ができちゃってる、つーのが赤ちゃんの母親なのですね(今作ではこっちが主人公です)。結論からゆーとこの人、ダニエルが怪物だとゆーのには中盤でいち早く気付いてる様なのですが、我が子可愛さのあまりその後は息子の犯行を隠してゆく側にいとも簡単に回ってしまうのです。それはまだギリ分からなくもないですが(旧作準拠だと言えなくもねーし)、しかしこの母親に関しては息子が怪物だという事実自体について思い悩んだりorそれを甘んじて受け容れると腹を括ったり、という心理面の描写・印象付けがまるで皆無なので、結果的に非常にいい加減で倫理観の薄っぺらい愚昧なちょいワル女に見えてしまってるのですよ。旧作の両親には少なからずシンパシーを抱くことも出来た、という意味では、キャラのつくり込みという面では今作は旧作にはハッキリ劣りますね。もう一点、旦那の弟が旧作のクリスの役割で配置されてるのですけど、彼が無意味に車椅子なのも謎or無駄or取って付けだと思いました。 怪物赤ちゃんを(ホラーモンスターとしては)極力「見せて」ゆかない、という旧作から引き継いだホラー演出面のコンセプトはまずまず巧く表現できていた、とも思ったのですケドね(こーいう奥ゆかしいのはワリと嫌いじゃないですね)。ただラストも旧作に比べるとこれもちょっと薄っぺらいし、とにかくリメイクなのにシナリオが退化してる、つーのにはガッカリ感もひとしお、という感じでさーね。 [DVD(字幕)] 4点(2021-08-08 18:22:29) |
836. 悪魔の赤ちゃん
《ネタバレ》 本当に生まれたて(生後0日)の赤ちゃんがマジでヤバい超デンジャラス殺戮モンスター、という有りそうで無かったアイデアはいくぶん斬新だとも言えるが(紛うコト無きナチュラル・ボーン・キラー)、作中で実際に赤ちゃん(の人形)を動かして通常のホラーに仕立てるだけの技術や能力や資金源は今作のスタッフは持ち得なかった、とゆーことで、直接的なショック描写が殆ど皆無の本作は結論的にはホラーとしては極め付けに地味で、正直コレはもーちょっとキツいというレベルすね(今サラ観ると特に)。 とは言え、流石にそっちの方だけでは映画に為らんのも悟ってはいたよーで、なのでそーいう怪物赤ちゃんを産み落としてしまった両親の苦悩・それでも芽生える赤ちゃんへの情、といったヒューマニティなモノを描き込んでゆくことで何とか間を持たせようとしてる…のだケド、それも正直ごく終盤まではあまり巧いコトいってなくて、序盤・中盤がこれまたちょっと退屈レベルの許容値を超えている感じ、でもある。ただ、ヒューマニティ溢れる最終盤はそれなりに観れなくもないし、救いが無いうえに実に不穏なオーラスも決して悪くはないとも思った。うーん…根本のアイデア以外にも、もう少しだけ展開・演出面で見るべき良質な工夫を施すことが出来てれば…という感じすかね。 [DVD(字幕)] 4点(2021-08-08 18:22:27) |
837. 拷問男
《ネタバレ》 この邦題は「罠」ですよ。この映画で真に拷問されるのは作中の浅はかな登場人物ではなく、こんなタイトルに釣られてトーチャーポルノ目当てでホイホイ群がってくる変態どもの方です。正にこの世の地獄の様な、とでも言いましょうか、とにかく全編実に居たたまれないという作品です。お気をつけアレ… キャッチー?なタイトルに比べ、その拷問描写は(低級~中級程度というワケでは決してありませんが)そこまで突き抜けてグロ全開、というホドではありません。個人的な観たままの感覚としては『ホステル』か『ソウ(2以降)』と同程度、ないしは少し下、といった位かと。今作で拷問を手掛けるのは主人公ですが、元々はごくマトモな父親なのですから、激しい拷問とはゆーてもそこにはどこか理性が残されていて、狂気というまでのモノは感じ取れない、というコトだと思います。その分、その哀れな父親の人物像を描いてゆく部分には、前述どおり非常に高度な居たたまれなさを伴う優れた見応えが確実に存在します。たぶん「思ってたんと違う」映画になるコトも多々あるかと思いますが、それでも(チャンと観れば)おそらく観る価値はきっと見い出せるという作品、なのではないかと思いますね。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-08-07 15:55:24) |
838. ワイルド・スピード/ジェットブレイク
《ネタバレ》 最初と最後のアクションはまずまず高品質ですし(またカネ掛かってそう)、本来のコンセプトである乗り物アクションの側面をごく重視している、という点でも個人的に好印象です。結論的に娯楽アクション大作としては全く悪くはない出来だと思いますが、ただしまずアクションにしても、最近の本シリーズの傾向ではありますがかなり荒唐無稽(いくら何でも無茶苦茶な)という部分も多々見られますし、それ以上にストーリーはまた相当にいい加減です(言わずもがな、過去作との整合性という部分が)。 本筋のアクション部分のストーリーは極めてよくあるお話ですし、中盤はそこにドムの過去の話やハンの話が混ざり込んでくるので正直ちょっとかったるいです。やはりお話にワクワクしてゆくとゆーよりは、シリーズでつくり上げたドムとファミリーのキャラクターの活躍を眺めてゆく方に見ドコロがあるという作品でしょうし、その意味では彼らの出来も悪くはなかったとも言えるでしょう(今作ではミア・トレットが妙に存在感ありましたですね)。ただ一点、前作『アイス・ブレイク』にせよスピンオフ『スーパーコンボ』にせよ、ロック様とステイサムという非常に魅力的なキャラが居たのが今作には居ない、とゆーのはひとつ残念ポイントではあります。加えて、今作にもセロン姐さんは出てるのですが、彼女もごく終盤まで殆ど目立っていないので、その意味でも出演者のゴージャス度とゆーのは前2作にはいくぶん劣るかと。次はオーラスらしいので、多少ムチャしてでも全員放り込んだお祭り騒ぎを期待しています。 [映画館(字幕)] 6点(2021-08-07 13:13:48) |
839. 青鬼
《ネタバレ》 うーん…例えば主演のアイドルちゃんはかなり可愛いし、須賀健太とか出てるし、そして肝心の青鬼は(完全にCGで3回くらいしか出て来ないケド)そのクオリティ自体はそこまで悪くもないし、部分的には別にB級としては十分、とも言えるかと思うのだね。 ただ(B級のアイドルホラーとしては)「質」はギリ合格点を越えてたとしても、全く以て「量」とゆーのが足りてないのですよね。70分も無い映画なのに低級ホラーよろしく前半半分は殆ど何も起こらんし、前述どおり青鬼が3回しか出て来ないが故に後ろ半分にもまるでスピード感が無いし(途中停車の嵐)、そもそも元ネタって激しく青鬼に追っかけられまくって2,30分くらいで終わるゲームじゃなかったでしたっけ?その意味では、この物量・密度の不足ぶりは「ゲームの映画化」としての今作にとっては致命的かと思います。結論、ちょっと成立してないと感じたっすね。 [インターネット(邦画)] 3点(2021-08-07 01:44:44) |
840. ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷
《ネタバレ》 『呪怨』というホラーは、元々は超・低予算作品だし、かつ根幹的なコンセプトも「足を踏み入れた者が皆死ぬ呪いの家」という非常にシンプルなものではある、のだケド、ホラーとしてはやはりこれも非常に特徴的な側面を持つ作品でもあった、と思ってますです。それは第一に伽椰子と俊雄という実にユニークで禍々しいお化け(あとそのお化けを思いっ切り「見せて」ゆくという演出方針も)と、もう一つが時系列の入替えを含んだ(ホラーとしては異例なまでに)複雑に入り組んだシナリオ構成、という点であるかと思うのです。 ただその意味でゆーと、数あるシリーズ作品・リメイク(リブート)はやっぱし大体この2つは要素として取り込もうとトライしてるのだケドも、特に後者、ややこしい切り貼りシナリオとゆーのを採用したヤツが面白く出来てた試しがねえ、とも感じてるのですよ。アレはね、いっちゃん最初のオリジナルが奇跡的に超絶に出来が好かったから成立してるだけのモンなのであって、中途半端に真似できるよーなヤツでは全くねーのですわ。そもそもオリジナルを撮った清水崇本人ですら、それに続く劇場版もほぼ同じ感じでつくったケドも驚くほどに全くモノに成ってなかった、という代物なのですからさ。 今作も正にドンピシャでその感じ、とゆーか…作品自体は製作費もある程度掛かっていて、まずショック描写はだいぶん気色の悪いまずまずの質だし、かつそれが非常にチョコチョコと豊富に入り続けるのでそこら辺はB級よろしくケチってる感じも全くせず、決して全然見ドコロが無いという完全なポンコツとは言えないかと思います。しかし、ここまでお話が散発的でホラー的にも脈絡が無いとなると…どだい90分の映画に4つも話が入ってますからね。オムニバス的、と言うことも出来るのかも知れませんが、オムニバスとゆーのは4つ話が入ってるなら彩りとゆーのを考慮するモンじゃねーですか。今作の4つの話っちゅうのは率直にどれもほぼ同じ話で、そもそもそれらが只パッチワークで繋がってて只ノンベンダラリと流れてゆくだけで実はトリックもナンにも無い、とゆーのでは、結論、まるで何処にも盛り上がりとゆーのが見い出せないのですよ。ここまで来るとこれはもうキチンと統合された一本の映画とも言えないのではないか、とすら思いますね。 メイン主人公の(化粧っ気無い)女刑事さんの少し病的な感じがホラー的に好さそうだったのとか、リン・シェイがまた中々イイ感じのイカレ婆を演じてたのとか、ちょっと以上に好きな箇所もあったので(あと実はワリと少しだけ期待もしてたので)こんな初歩的な躓きで終わってしまったのには個人的にはかなりガッカリしてます。無念。。 [インターネット(字幕)] 3点(2021-08-07 00:10:25) |