861. オデッセイ(2015)
《ネタバレ》 R・スコットらしい遠大な画に魅せられる140分でした。相変わらず凄い映像を作る人だ。リアルで緻密で、ああ火星でのロケって大変だろうなと私が小学生だったら素直に思ったかもしれないレベルです。画作りにはいつも情熱を注ぐ監督ですが、話はたまに(先日観た)プロメテ○スみたいに脚本おざなりにぶっとんだりします。だけど今作は大丈夫。スタンダードなサバイバルドラマ、プラス人類の同胞愛を高々と謳い成功しています。 M・デイモン演じる植物学者のタフで明るいキャラクターが、物語を見易くしていると思います。無人の地に一人ぼっち=”キャスト・アウェイ”と似てはいても、トム・ハンクスが苛烈な孤独と闘っていたのに対し、マットの方はあまり思いつめない。比較的早く地球と交信できたのが大きいのでしょう。毎日たくさんのメールが来る、これは非常に精神の支えになりますよね。 宇宙科学や物理学についてはど素人の目から見ても、クライマックスのマット確保劇は「いやそれは無理では」と思わなくもないですが、でもこの映画 その他たくさんあるであろう「理論的に不可」な事例をことごとく一蹴する位の清清しい力技を備えています。 気持ちとしては、地球人の一人として彼の帰還を喜びましたから、完全にのせられてしまいました。ただやっぱり中国市場を意識しすぎな作りは煩いです。 [DVD(字幕)] 7点(2017-11-20 18:03:25) |
862. ゴーストライター
《ネタバレ》 巻き込み事故型で陰謀に呑まれちゃうユアン・マクレガーが健気な一品。この人はゴーストライターとして一稼ぎしたかっただけなのに、前任者がヤバイ記録を残したが故に狙われてしまう。本人としては別に前首相の戦争犯罪を暴こうとか過去経歴を云々したいとか一切思っていない。このあたりは”オデッサ・ファイル”のジャーナリストとは全然立ち位置が違うのです。さして志の高くも無い、フツーの市民なのだったユアン・マクレガーは。だからラストはなんかこう気の毒なんですけど、でも彼ちょっと必要以上に誰にでも情報しゃべり過ぎじゃないかい?うわーばかだなー、とハラハラしてしまった。最後だって、なぜ元首相のヨメ本人に黒幕ですよねなどと言うのだろう。 とまあ主人公の頭はあまり良くないんですけど、ポランスキーならではの、なんか陰気で良ろしくない雰囲気に満ちみちた映像は観る者を「なんかあるんじゃなかろうか」とぞくぞくさせるに力量充分。加えてピアース・ブロスナンの意外な演技力の高さにも驚いたりもします。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-11-19 23:59:29) |
863. プロメテウス
《ネタバレ》 私は’79作エイリアンのファンである。何度うっとりと見惚れたことか。しかしリドリー・スコットが手がけた前日譚は期待を大幅に下回るものだった。これは一体、と思った。 外枠は”エイリアン”まんま。未知の星へカプセルで眠ったまま赴き、異星生物に出くわしてクルー壊滅。腹部に侵入されるのも、アンドロイドが首だけになっちゃうのも同じ。だけど決定的に違うのはキャラクターが一人も活きてないことだ。リプリーがいない。他クルーにも共感を促すような設定もされていない。 何故乗務員皆落ち着いているんだろう。謎の生命体により死者が出たんだよ?「話が違う」とセロンに詰め寄り、帰星すべきとの論が沸き起こってよいはずでは。隔離寸前の女学者が逃走したときも静かだった。同僚二人を殴って逃げ、医療カプセルに入って一人で処置をする。はて、どうして誰も追ってこないんだろう。船全体に危険が蔓延する瀬戸際ではありませんか。そもそも、こうあるべき展開は一作目で学んだのだ我々は。感染がいかにオソロシイか。 こちらの予想を裏切るクルーの行為は最後まで続く。船長が下した判断がまさか自決だとは思いもよらなかった。それまで悲愴感とか異星の謎と心中すべく腹をくくった描写とか一切無いんだもの。もう唐突でびっくり。 美術は見事だったけど、見てくれを気にしすぎです。人間の生理とか気持ちとかをすごく雑に扱っていて、違和感しか覚えませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2017-11-18 00:32:27)(良:3票) |
864. サバービア
《ネタバレ》 現代アメリカの若者の閉塞感を切り取ったドキュメントのよう。登場人物たちの”何も起こらない”日常に密着。事件らしい事件も起きないんだけど、元学友でミュージシャンとしてそこそこ成功した奴が帰郷してくるのがこの夜の目玉。MTVにも出てる割に、旧クラス挙げて歓迎する規模でもないのが小さい田舎っぽい。元つるんでた5人でどうってことなくダベって時が過ぎる。 各キャラクターが立っていて、バカと軍出戻りニートと理屈屋の3人が男子。女子はNYでの成功を夢見る自称アーティストと、アルコール依存症が2人。実に見分けつきやすい。 田舎ではコンビニ前でたむろするくらいしかすることがない。当然店主に迷惑がられて、移動するも気付けばまた店の前に戻ってたりして、その行動半径の狭さに呆然とする。嘘をついたり空虚な大声を出してみたり、オーバードーズしたり。このアメリカ人らはパキスタン人のコンビニ店長のように、学位を取って高みを目指そうという意欲すら無い。かつて優位にあった国が下り坂へ向かうとこうなっちゃうのだろうか。 バカ男子とアーティスト女子は業界人の口車に乗せられて付いていってENDとなったけど、リアルなエンタメ業界であの子らの仕事が評価されるほど甘くはないだろう。遠くないうちに、またこの町に舞い戻ってくる気が私はとてもする。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-11-12 23:43:20) |
865. キャプテン・スーパーマーケット
なんでこんなB級作のレビュワー数が多いのかなと思ったら、「死霊のはらわたⅢ」の位置づけだったのですね。知らなかった。平均点が高いのも、死霊ファンの贔屓目なのかな。 はらわた1作目のガチホラーを繰り返してもしょうがないと思ったのかどうか、全くベクトル違いの冗談路線の本作。ギャグセンスが合わなくてそんなに笑えなかった。安っぽさが逆に味わい深いといったカルト作でもないし。シンプルに、つまんないB級作の評価が妥当と思う。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2017-11-11 00:50:02) |
866. なまいきシャルロット
80年代のティーンの女の子の鬱屈と混乱と輝きをこれ以上無いくらい鮮やかにスクリーンに焼き付けた、シャルロット・ゲンズブールの出世作ですね。 ああ、13歳女子の不機嫌、不安定なことったら。「暴走するフェラーリ」脳なんだそうだ思春期というのは。彼女の振れ幅はかなり大きい方とは思うんだけど、気持ちはよく分かります。かつて通ってきた道ですから。 もちろんシャルロットだから、この低気圧の塊みたいな年頃が「瑞々しい」と称される作品となったのです。すらっと長い手足、小さい頭、キレイな肌と仏頂面でも可愛い顔。髪はいつもボサボサ気味で、”令嬢”クララのきちんと感と比べると明らかに”一般の”子なんだけど(空腹でプールサイドで倒れちゃったり)、まあその痛さも含めて魅力的なんでありますね。 ご本人はもうベテラン女優になりましたが、13歳をくっきりと保存したこの作品は永遠に、後世の女子らの共感を得て褪せる事は無いでありましょう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-11-09 00:05:28) |
867. 完全なるチェックメイト
《ネタバレ》 天才を扱った映画を観るたび思うこと。やっぱ「周囲」が苦労する。凡人には計り知れない脳を持っているから天才なんだが、その才に魅せられる一方、社会性を有しない彼に振り回されるストレスのハンパないこと。 映画は、ボビー・フィッシャーその人の苦悩にも迫ろうと苦心したあとは伺える。折り合いの悪い母親の代わりに姉に依存している姿を描いたり、肌に吹き出物を作りながらギョロ目で変人ぶりを余すところ無く演じたトビー・マグワイアは確かに精神病んでるし。 称賛を受けても喜ぶでもなくステージを後にするボビー。天才の感性などわかるはずないもんなあ。脚本もトビーも頑張ったけど、ボビーは何を思ったんかなあ、とやはり理解するには全然遠かった。マネージャーやセコンド役の神父らの苦労は手に取るようにわかったが。 残念ながら、ワタシはチェスについては全くの門外漢。史上最高と言われるレイキャビクでの第六戦、ソ連のチャンピオンが、自らの敗北を悟ったにも関わらず思わず笑みをもらしたのは、そこに「完全なる美」を見たからと思われる。ああ、それを目にすることができないわが身が、つくづく残念だ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-11-06 17:28:04)(良:2票) |
868. ブラック・スキャンダル
《ネタバレ》 ギャング映画としての水準が低いです。抗争や流血に伴う憂いはすっぽり抜け、展開もスリリングとは言い難い。バルジャーの息子の死や、ダチのFBI捜査官の家庭崩壊、職場での意見対立といったサブストーリーも本筋を引き立てる機能をほぼ果たしていません。箇条書きみたく挿入されるだけです。 極道でなければ生きられない者の刹那が様式美となって訴えてこないと、ギャング映画は輝きを放ちません。 脚本にも問題はあると思うけど、このバルジャーって人は結局チンピラレベルのワルだったんじゃないですかね。描かれるスケールの小さいこと。娼婦まで自分で出向いて殺すんかい。敵対する組織の本部に盗聴器を仕掛ける見返りに、FBIに要求したことといえば「相手側の自販機を全部撤去しろ」だって。なんじゃそりゃ。自販機のアガリってなんぼほどの問題なんだろう。 それに、あのみすぼらしいすだれハゲはなんとかしたらどうなのか。おそらくモードに敏感なイタリアマフィアならもっとかっこ良く処置してるはずだ。別の映画で観たけど「アイリッシュマフィアはビンボーだからな」とイタリア系に馬鹿にされていたくだりがあった。 やっぱりセンスって大事だよなあ、とそんなことを思いつつジョニデの熱演を眺める120分でありました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2017-11-05 00:12:05) |
869. ザ・ロイヤル・テネンバウムズ
《ネタバレ》 変人だらけのシュールな物語。変わってんだけど、一人一人の中で自己完結してるというか、引きこもりタイプの変人さんが多いためか、例えばコーエン兄弟作品のように変と変で化学反応を起こす、ということが無い。ただただゆるーっと展開し、さして何も起きない。けど私このぬめっとした感じ、好きです。ジャージ親子の父であるB・ステイラーは見てきた中で一番良い仕事をしているように感じるし、メンタルをリストカットしている眉無しグウィネスは目がうつろの迫真演技。それにG・ハックマンがすごく良くないですか。さすがというか、大御所でいてこのコミカルさ、今さらながら凄い演技の幅を感じる。ロイヤルというクソジジイに「愛すべき」という文言が乗っかるのは、ハックマンだからこそ。 息子に疎まれつつ、めげずに孫にアタックするじいちゃん、大好きだけど万引きはイカンな。 凝りに凝った美術は冴え渡り、室内の1カット1カットが絵画のよう。印象に強く残る個性派ムービーでありました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-11-04 00:56:00) |
870. ダウト・ゲーム
《ネタバレ》 ??なんでこうなるの?と思いっぱなしの90分。まずサミュエルは「良い罪人」ではなかったのですか?終盤は完全に逆ギレした馬鹿野郎でしたね。検事のヨメに銃を向けて「俺の気持ちが分かるか」云々って、はい分かりません。 検事くんの行動もさあ、キミおかしくないか?刑事の部屋に潜入してデータ泥棒するわ なんでか嫌ってた義兄にまるっと策を預けちゃって、しかもまたもや人の家に忍び込んで、こりゃもうやってること無法者ですやん。 で、その義兄がサミュエルに拉致られる。直後に駆けつけた件の検事くん、よく二人が入った入り口分かったなあ。あんなに窓も出入り口もごちゃごちゃ混在した工事跡地の廃ビルでさ。もう、この頃になるとひき逃げの一件はすっかり誰も気にしてないっていう。検事も刑事もサミュエルもついでに客も。あ私はちょっと気にしてましたよ。 これさあ、「合理的な疑い reasonable doubt 」って裁判用語を言いたかっただけなんじゃないの。この映画。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2017-10-30 00:03:35) |
871. ハイネケン誘拐の代償
《ネタバレ》 見慣れないぶん、一般人のようにも見えちゃう俳優さんたち。そのぶんドラマがリアルに感じられます。犯罪の代償として、仲間らが疑心の末バラバラになっちゃうくだりとかは特に。 だけど良いのはそこらへんだけかな。ハイネケン会長が老獪さを発揮して、もっと連中に影響を与える筋書きかと思っていました。中華料理に細かく注文をつける、会社に手紙を書かせる、・・で、そこ止まりなんですよね。 結局どこかからタレコミがあって、警察による事件解決という事実ならではのつまらないオチ。出来事を並べただけでは映画にならないのだなあ、とつくづく思うよ。創作でもいいから、犯人側の切羽詰った人生等もっとつっこんでもらいたい。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-10-29 00:16:22) |
872. ジャージー・ボーイズ
《ネタバレ》 アメリカ本国では評価が今ひとつだったらしい本作。トミー賞を取った舞台に比べると、盛り上がる場面に使われた楽曲がBGM扱いになっている等、手触りの違いが不興だったのだとか。 私は舞台版は知らないけれど、イーストウッド監督は舞台劇を映画の文法に上手く書き直していると思った。情感溢れる描写の数々で、人間ドラマのひだが役者の表情や台詞にきめ細かく反映されていますもん。 物語は一世を風靡したバンドの、立ち上げから絶頂期そして離散へ至るまで、とまあよくある話ではある。にも関わらずジャージー・ボーイズらのこの生き生きした造形はどうだろう。ニュージャージーでの悪ガキだった時代から、ギターとマイクを手に音楽業界を席巻し、トラブルを重ねて年を経る彼らの人生とすっかり同化してしまった。 リアルで活きた台詞と、舞台でも同役を務めた俳優らの演技を超えたリアリティはメンバー本人のよう。J.L.ヤングのファルセット・ボイスには度肝を抜かれる。脇を固めるウォーケンやプロデューサー役のM.ドイルらも、とても良い味を出している。 役者陣が魅力的な上、さらに卑怯なことに(?)音楽の力の凄いこと。正直フォー・シーズンズをきちんと聴いたことは無かったのだけど、現代風にアレンジし直した楽曲群がどれも素敵。わあー良いじゃん、フォー・シーズンズ。さすがにタイトルや歌詞は時代ズレの感があるけれど、シンプルで心地よいメロディは気付くと口ずさんでいたりする。 娘に子守唄に歌った“My Eyes Adored You”が葬儀の場面で流れ、ここらですすり上げてたワタシ、引き続き“Can't Take My Eyes Off You”のイントロが流れた瞬間、目の幅の涙が滝のように流れ出たのでした。 傷つけあってバラけてしまったジャージー・ボーイズ。年月を経て彼らを再びロックの殿堂で結集させて了した、イーストウッドの感性も好きだ。笑って泣いて胸が熱くなる、イケメンはいないけどこの映画がとても好きです。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2017-10-25 17:53:06) |
873. 椿三十郎(1962)
《ネタバレ》 時代劇という枠を取っ払っても、痛快娯楽作ジャンルにおいて上位に君臨するだろう名作。 言うに及ばぬ三船の圧倒的な存在感。明快、爽快なストーリー。良い者、悪い奴、切れ者、おっとり役と揃いに揃ったキャラクター。お気に入りは押入れに出たり入ったりのとぼけっぷりが絶品の小林桂樹。 ああ椿三十郎(もう少しで四十郎)。粗くて深くて、おかしみも醸す愛すべき浪士。若侍たちの青臭い行動の浅はかさに苦虫を噛み潰し、御内儀の扱いにはほとほと手を余す。椿は赤だ白だと口を出す女衆に辟易し、ふすまの仮名を指でなぞる三十郎。笑える。でもそんな愛嬌とは別の顔を持つのが殺陣のシーン。全身殺気をはらんだ身体の動き、刀の返しのキレには息を呑む。有名なラストシーンは、それこそ呼吸が止まった。 私ごとですが、映画といえば洋画ばかり観ていて、日本映画のクオリティの高さを知ったのはだいぶ後になってから。黒澤作品はどれも震えるほど感動したものです。これもそんな一本。 [DVD(邦画)] 10点(2017-10-21 00:57:18)(良:1票) |
874. ナイトクローラー
《ネタバレ》 TVにおいては映像こそが力。より臨場感を伴って、刺激的であればあるほど価値が上がる。一応「視聴はご自身の判断で」とか言って流す責任は取らないのもヤラシイ。こんなTV局のディレクターらも相当イっちゃってるんだけども、怪物ギレンホールに比べりゃまだまだ。目ばかりギョロギョロ大きくて薄っぺらな笑みをふりまき、御宣託めいた理屈をまくしたてる。ジャンクワードをつなげてるだけなんだけどな。 こいつの冷やっとする人間性の欠落した感、もうギレンホールが凄い。事故に遭った同業者をカメラに収める時の、その何の情も無い顔、暗い目。悪魔かと思う。この場面、担架で運ばれる負傷者の目線で描かれているので殊更ルイスの非情さを感じる。 一人でTVを見て笑い、繕い物も一人でやる。いつも一人。相棒を募っても本物の仲間になんかなれっこない。こいつは他者に与える情なんか持ち合わせていないから。警官が人間らしい怒りを向けても、女性ディレクターが特ダネに感謝を寄せても、いつもニヤニヤして一人でぬるん、としている。あー気分悪い。ナイトクローラーとは良く言えている。闇に徘徊する暗い生き物、できれば人生で出会いたくないものだ。だけど私も「刺激的な」画を求める視聴者の一人。ルイスばかりを悪く言う資格はない。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-10-18 00:02:56)(良:1票) |
875. リバース(1997)
《ネタバレ》 20年も前の作品とは思わなかった。カイリー・トラヴィスはヘアスタイルもファッションも全く古臭くない垢抜け美人だし、おもに舞台となる車もむこうの車ってあまりデザインが変わらない(ように見える)しで。怪しい研究所のコンピュータの古色蒼然とした佇まいが、さすがに「これ古くない?」と思わしめたけど。 ”短いスパンで時を繰り返す”ジャンルの「走り」の作品だと思えば、この粗さとか詰みの甘いのにも納得。後作品はもっと練られてるのが世に出てますよね。 やたら身体を張るカイリーと、スピード感のある展開はぐいぐい引っ張ってくれますし、「やり直し」にわくわく感は持たせてくれるんだけどちょっと期待値以上の内容にならないんですよね。はっきり言うと同じことの繰り返し。幕切れもそんな感じ?とあっけない。ちゃんと当時に観て新鮮に驚きたかったなあ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-10-17 00:17:17)(良:1票) |
876. 追想(1956)
《ネタバレ》 I・バーグマンとユル・ブリンナー、20世紀を代表する大スターの二人。さすがというか、凄い存在感ですな。ハンパないバーグマンの美貌と、ハンパないユル・ブリンナーの精悍さ。他の出演者は一切かすんでいます。 二人の心が惹かれあう描写にもう少しふくらみが欲しいところではありますが、お互い分をわきまえての距離感が節度があって清潔なのでした。 結局物語としてはアンナが本物の皇女なのかどうかは上手いことぼかして(というか皇太后に丸投げして)終わりました。 バーグマンがあまりに気品に満ちていて、ローブ・デコルテ姿もこれ以上無いほどの皇女っぷりでしたので、「もうこの人でいいじゃん」と限りなく平民のワタシは思いましたが。 [DVD(字幕)] 6点(2017-10-15 00:32:25) |
877. 悪魔のいけにえ
絶叫ホラーの原典にして完成形。血も涙も無い殺戮っぷりといい、その理不尽さといい、ひと安心から急転直下するエゲツ無さといい、後世の追随を許さぬ完成度である。 画が、80’以降のホラー作品のような小奇麗さが無いんです。そこはかとなく、あるいははっきりと小汚く不潔。猟奇犯らの家の凄まじい禍々しさ、ピックアップトラックのきったないこと。さらに言うと被害者若者5人の乗るバンも後部荷室はごちゃごちゃとリアルに汚らしい。この“不潔”が視覚に訴えるリアリティですが、この要素が稼ぐホラー度はかなり高いと言えましょう。 音楽が無いのもまた特徴的というか、中盤以降はほぼ全編女優の絶叫声のみでお届けされるので音楽なんか流されても聞こえないのであるが。彼女、大絶叫続きで喉は無事だったろうか。 これだけ語り継がれる傑作ならば、ホラー映画に州の金を投入されたテキサス州民も納得であると思われます。 [DVD(字幕)] 8点(2017-10-10 00:19:19) |
878. マネーモンスター
《ネタバレ》 才媛ジョディ・フォスター監督にしては、ひねりの無いやけにストレートな出来でした。ウォール街全体にはびこる搾取システムを糾弾するのかと思ってたんだけど、一企業CEOのセコイ企みを暴くだけでした。その発覚の仕方もやたらイージーで頂けません。TV局とハッカーが結託してものの数十分で真相が明らかになるのですよ。そんな簡単な。 G・クルーニー扮するTV司会者と投資に失敗してキレた襲撃犯がなんとなーく心通わすんだけれど、その辺の心理機微もざっと済ませてしまってる。ほかにも「何をどう考えてるのかなあ」と物足りないキャラばかり。悪徳CEO本人やその背反秘書の気持ちとかジュリアとクルーニーの関係とか、私には今ひとつぴんと来なかった。 もっとも、個人の内面等をすっ飛ばした結果、事件の展開がテンポよくさくさく進んだともいえますが。 そうそう、ジョディ監督が”awful"と評したクルーニーの下手くそダンスシーンが見どころでもあります。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-10-08 16:49:28)(良:1票) |
879. フィラデルフィア物語
《ネタバレ》 コメディの傑作中の傑作って。そうなんですか?今の時代この作品で笑う人は何割くらいいるのだろう。私の感想は「豪勢な屋敷だこと。こりゃ戦争に勝てないはずだわ」であった。 やたら長台詞プラスワンシーン固定が多く、話もつまらない。妹役の子がひとり良い味出してるけど。もう眠くて眠くて。 ヘプバーンとグラントの気持ちが丁寧に描かれてるとは言い難いので共感も抱けぬまま。ラストシーンにはなんじゃそりゃ、となった。J・スチュワートは噛ませ犬かい?なんてこった。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2017-10-06 00:04:45) |
880. 家(1976)
《ネタバレ》 家そのものに意志があって、悪魔さながらのダークパワーで住む者の生気と引き換えにぴかぴかとリニューアルしていくなんて我が民族には無い発想だなあと思う。家を大事にするアメリカっぽい。日本のオバケ屋敷は廃屋が基本だよ。 映像技術がさほどではない製作年代ですから、画づらでびっくりさせるというよりメンタルにじわじわくる脅かし方をしてきます。 お父さんは憑依されて子どもをいじめたり、かつてのサイレントの可憐なスターであるリリアン・ギッシュを悶絶死させたり、かなり気分悪いです。 現代コードではたぶん子供を酷い目に遭わせない事、となっていると思うんだけどこの時代では12歳の男の子まできっちりと餌食になります。後味の悪さは相当なものです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-10-02 23:53:58) |