881. 007/カジノ・ロワイヤル(1967)
《ネタバレ》 まあでも、昔の007って今時点に比べたら格段に軽~いノリで(少なくともロジャー・ムーア時代くらいまでは)、ソコと今作との「落差」とゆーのは、確実に今我々が007シリーズに抱くモノと今作とのソレよりは小さかったと思うのですよね。だからあくまで今作は豪華キャストのお祭り騒ぎとして(目くじら立てずに)軽~く観るのが正しいのだと思います。少なくとも、こんなカルト的にイカレポンチな作品だと思って「構えて」観るのは、当初の意図からは外れていると思うのです。 とは言え、特に終盤は本当に本当にやりたい放題で、軽く観たとゆーても流石にどーかと怒りを覚える人が(少なからず)居るとゆーのも重々承知です。ただやはり好いと思われる点、極上にシブいデヴィッド・二―ヴンや、底抜けに滑稽なウディ・アレン、そしてゴージャスな美女の大盤振る舞い、と、見所は決して少なくありません。暇潰しor話題づくりには完全に十二分かと(ただ一点だけ、女性陣は確かに美人揃いなのですが、ちょっと似たよーな見映えの人ばかり…とゆーのは少しだけ残念にも思いますケド)。 [DVD(字幕)] 5点(2021-06-29 20:39:13) |
882. 親密さ
《ネタバレ》 一年前、サンクス・シアターという所で映画が観れるとゆーことになったので、濱口竜介監督作品を片っ端から鑑賞していたのである。短編・長編問わず優れた作品も数多く観ることが出来たのだが、惜しむらくはどれもマトモにソフト化もされていない様な代物ばかりで、そーいった作品を本サイトで登録するのは少し気が引けるので、比較的鑑賞チャンスが今後も多いだろうと思われる今作についてのみここで言及させていただき、それら作品の魅力を少しでも伝えられれば、と思う。 ENBUゼミナールの卒業制作として製作された本作は、劇中舞台劇『親密さ』の実際の公演風景を収めた後半と、その舞台劇を演出家の男女2人(この2人は恋人同士でもある)を中心としたメンバーがつくり込んでゆく様子を収めた前半から構成されている。劇中劇のテーマも、その劇をつくってゆく過程で主なトピックスとなるのも、それは自分と他人との関係性をどのように考える・突き詰めてゆくか、或いはその際に最も重要となるであろう「言葉」の可能性と限界をどのように捉えるか、といった比較的シンプルなものである。劇中劇について言えば、その点に関する作者の価値観は主に詩、または手紙の朗読という形で表現される。その意味では(これは前半も含めても)全体として非常に文学的な雰囲気を纏った作品だと言えるし、それはある種、伝えたいものを伝える手段として「演劇」を選択した彼らが、言葉の可能性に対する問いかけを常に抱き続けつつ、それに決して絶望はしていない、ということを意味する様にも思われる。 世の中の諸々を陰陽二元論よろしく2つに分けるとある観点として、「理想の追求」と「現実の処理」というのがあるかと思っている。端的な表現で言えば、「狭く深く」と「広く浅く」という2つの方向性、ということにもなるのかと思うし、より実際的に言えば、深めることをどの時点で諦めるか、ということだとも思っている。それは人間関係も、或いは演劇というものの価値のつくり込みに関しても、ある部分で同じことだろうかと思っている。 若い時というのは、どちらかと言えば「現実」よりも「理想」の方が幾らか早く「見えて」きがちなこともあってか、より深める・極める方への衝動の方が強いのではないかとも感じている。年齢を重ねるに連れて、諦め・或いは妥協という手段に格段に流れがちになった自分を省みて、彼らの純粋でどこか不器用な様子から感じられるのは、私には一重に爽やかな郷愁であった。この映画からは、やはり「若さ」が強く感じられる。そしてそれは、彼らが自らの秘める若い「可能性」をこのとき確かに信じていたことの証でもある様に、私には思われたのだ。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-28 00:38:42) |
883. のぼる小寺さん
《ネタバレ》 例えば『寝ても覚めても』という映画なんかは、私も初見時はかなり好い作品だと思いましたし、その頃は世評も全然悪くなかったと記憶しています。しかし最近は(とゆーか例の「事件」以降は)各所で木っ端微塵に酷評されていて、でもソレって強ち間違ったコトでもないよなあ…なんて思ったりもね。役者とゆーのはある面では自分の「色」を消し、ソコに作品で必要なキャラクターを纏ってゆくものだと思いますが、その一方で消し様が無い「個性」とゆーのを備えている…てのがそもそも存在価値なのだと思います。ソレがふと崩れてしまったならば、当然観るひとに与えるトータルの印象(=演技者としての端的なクオリティ)は変化・劣化せざるを得ない…というコトでしかないのかな、と。 その意味でゆーと今作は、実質主役なのがコレも「例の」伊藤健太郎だ、てのが(悪い意味での)ポイントになってしまうかなあ…と思いましたよね。そもそも彼が演じる近藤というキャラは、率直に言って(特に前半は)相当に印象の芳しくない、正直気持ちの悪い男のコだ、ということなのですよ。その部分を「純朴・純粋」とかゆう別の属性に読み替えられるか…という段になって、でも演じてるの「あの」伊藤健太郎だよ?となってしまう様にどーしたって感じるのですよね。例の件で彼の人間性が露になった後では、どーにもソコに「つくりもの感」がプンプン臭い立つとゆーか、何つーか表現として上っ面で浅薄な様にも見えてくる、とゆーか。コレも率直に本作は、最初は何だかよく分からないケドも次第に何となく朧げな「カタチ」が見えてくる…という類のごく繊細で奥ゆかしい作品だと思うのですよ。ソコにのっけから差し挿まれるこの「疑念」とゆーのが、個人的にはだいぶ致命的にも思えますのですよね。 小寺さん役の工藤遥ちゃんに関しては相当に頑張ってたと思いますよ(ホントにほぼ「のぼってる」だけでしたケド)。彼女のボルダリングのシーンはたぶん完全にガチでしたね。コレがスポーツ的にどの程度までスゴいモノなのかは私には分からんのですケド、全くスゴくないというモノでもないのは何となく分かる…とゆーかね。そして、少なくともその部分は決して「紛いもの」ではないのだろう、ともね。 [DVD(邦画)] 5点(2021-06-26 00:20:46) |
884. エクトプラズム 怨霊の棲む家
《ネタバレ》 いちおう実話ベースということらしいのですが、お話に高度にリアリティが保たれているとかそーいう感じでもなく、ごくごく普通のアメリカン・ホラーという風ですね。しかし、実話ベースの弊害的側面とゆーか、今作のメインの怪奇現象はその分類としてはポルターガイスト系(+幻覚)というホラーとしては若干地味めな方のヤツで、序盤から怪異のシーンは割と豊富にチョコチョコ入り続けるのですが、正直あまり怖い・恐ろしい、という感じでもねーのですよね(とりあえず、スラッシャーとかで容易に発生する「命が危険」という意味でのシリアスなシーンなどは殆ど無かったりで)。 序盤30分くらいが完全にそーいう感じのジミ~な展開であんま面白くなくて、中盤は徐々に謎が解き明かされてゆくので序盤よりはマシですが凄みはやはり欠いていて…ただ、終盤はそれでもまあまあでした。今作の一番のウリは登場する亡霊の見た目の禍々しさだと思うのですが(耳無し芳一状態の死霊どもは日本人にとっては見た目ポピュラーですが、やっぱ中々に気味悪いし)、そーいう死体が屋敷の真ん中にワンサカ隠されていた、とゆーのは中々どーして怖気が走ります。何故かアッサリとグッド・エンドに倒れてしまう結末も、これもなんかアメリカンだなあという感じですが、こーいうの悪くないね!という人も比較的多いのではないでしょーか(個人的にも、アリか無しかで言えばギリ、アリの方かなあと)。 [DVD(字幕)] 5点(2021-06-25 21:11:17) |
885. THE PROMISE/君への誓い
《ネタバレ》 特に、日本においては決して知名度が高いとは言えない歴史上の事件を、かなりシリアスかつ真摯に冷徹に描いた作品、というだけで、とりあえず観ておく価値は間違いなく非常に高い作品だと言える(もちろん、娯楽映画として観れる類いの作品ではない、ということは前提として)。全体的にオスマン帝国政府・軍に対する批判的な製作姿勢が大いに見て取れるものの、例えばエムレのエピソードに代表される様に決してバランス感覚を著しく欠く、という訳でもないと思う。また、主役3人の三角関係的恋愛模様をシナリオに持ち込んだことも、あくまでこの要素は添え物に留められている、という点からしても個人的には決して悪くない工夫だと思えた(こーいうのがあると、登場人物が一層「人間」に見えてくる、というか)。 ただ、本作の意義は重々認めつつも一点だけ指摘したいのは、本作が主に描いているのはとある「結果」であり、より重要なのは「原因」だということだ。何故このような事態に陥ってしまったのか、というのは、本作を観ただけではちょっと分かり辛い、というのが正直なトコロで、その辺の事情、アルメニア人とトルコ人の宗教的差異であるとか、アルメニア人勢力・ロシア・トルコの三つ巴の関係性とそれに第一次大戦が及ぼした影響、といったことは別途自分で調べないといけない。ソコを上手いコト作中に描き込めたのであれば、よりバランス感覚に優れてかつ深い映画になった、と言えるのではないだろうか。 [DVD(字幕)] 8点(2021-06-24 23:41:26) |
886. モータルコンバット(2021)
《ネタバレ》 何も前提を入れずに気楽に観に行きましたが、思ったよりだいぶん楽しめましたよ。元ネタは残虐がウリの格闘ゲームとのことですが、この映画版でもその格闘は武器で斬ったり刺したりのオンパレードな血ミドロで(かなり痛そう)、かつトドメの所謂「フェイタリティ」は確実に18禁レベルのハードスプラッタ連発、という有様でした(実際はR15+ですケド)。が、何ちゅーかやっぱり少し「背徳的」とも言えるよーな優れた爽快感がありましたね。一点注文を付けるなら、もう少し敵に対する恨みつらみが募ったトコロでカマしてくれるとより一層爽やかだったかも知れません(まあ、話の内容・キャラ設定のつくり込みはかなり甘めな作品なので、ソコは如何ともし難くはあるのですケド)。 前述どおり、話の内容や世界観には大した中身・工夫も無くて、要は、敵味方色んなキャラがワンサカ出てきてそいつらがバトルロイヤルでひたすら闘うよ!というだけの話です。その一番肝心な登場キャラに関しては(ココは原作準拠なのだとは思うのですが)中々彩り・バランス好く集められていたのではないでしょーか。主人公はチョイ地味な気もしますが、女キャラは可愛かったですし、我々日本人なら何と言っても真田広之の絶大な存在感は非常に嬉しいトコロです。続編の製作自体はかなりの確度で期待できるのではないかと(出来がどーなるかは分かりませんケド)。 [映画館(字幕)] 7点(2021-06-24 21:05:52) |
887. ドラゴンロード(大陸版)
《ネタバレ》 今回、デジタルリマスター版とゆーのをレンタルしての鑑賞なのですが、上映時間的にも内容的にも(→Wikiを参照)こちらが「大陸版・オリジナル版」というコトなのですかね。まあ、あまりどっちを観るべきか、という拘りがあったワケではないのですが。 ただ、カンフーでは稀によくあるコトですが、お話自体は正直かなり面白くなかったです。このバージョンの特徴でもあるのかも知れませんが、特に序盤30分くらいは酷く退屈、と言って過言でないかと。そして、お話のつまらなさは終盤に向けても大して改善せず、加えてカンフー自体も結構微妙な感じかと率直に思いましたですね。今作のジャッキーは圧倒的な強キャラというワケでもなく、ラストバトルでも相手に苦戦する場面が目立ち、むしろなんかエライ泥臭いカンフーを繰り広げてゆくのですね。カッコ好く敵を倒してゆく、とゆーよりも、派手でアクロバティックな「やられ方」の方にアクション的に面白味があるかも、てなもんで。 なので、今作で観る価値があるのはこれも正直、まずは中盤の「羽根蹴り」の試合ですね。「ジェンズ」という実際の中国のスポーツらしいのですが、これも中々アクロバティックにテクニカルで、そこまではボーっと観流してたのが一気に目ェ釘付けになってしまいました。あとは何と言ってもオーラスの「まんじゅう競争」。私もいちおう昭和(生まれ)の人間なので、こーいうメチャクチャな(コンプライアンス?安全配慮義務?なにそれ、おいしーの?)ヤツはハッキリ言って大好物です。 結論、評点としては7点を付けたいのですが、観てないとは言えおそらく「国際版」の方が面白いのではないか、と思ったので、1点引きました。尺が短い(=無駄が少ない)のと、コッチは「まんじゅう競争」が初っ端に配置されてる、とゆーのは、明確に改善点だと私には思われるのです。 [DVD(字幕)] 6点(2021-06-24 00:17:10) |
888. 極楽特急
《ネタバレ》 小気味好い。が、実に他愛の無いおはなしである。ラブコメであるが、その部分は三角関係と言えるホドでもなく、リリーは単なるオジャマ虫の様に見える(あんまり可愛げも無い)。他方、マダム・コレを演じるケイ・フランシスは中々好かった。少しエキゾチックで、何と言うか「モダン」な美女である。衣装・装飾・髪型も結構凝っていたし、メロドラマなシーンの艶やかさも素晴らしい(シャドーの入った目元が実に色っぽいのよね)。気楽に観るなら、損も無いかと。 [DVD(字幕)] 6点(2021-06-23 21:51:32) |
889. ポラロイド
《ネタバレ》 殺人鬼の怨念が籠った呪いのポラロイドカメラで撮影されると死ぬ、というシンプルなアイデアのホラー。かつ全体的に典型的アメリカン・ホラーといった感じの(大味な)質感。例として、まずカメラで撮られた犠牲者とゆーのは呪いの力で不可解に死んでゆく、とかではなく、いちいち怨霊が出向いて(素手で)殺して回るという時点でかなりの力技、てなもんで。 序盤30分くらいがだいぶん地味で正直退屈だが、中盤からは無難に盛り上がってゆき、終盤はCG全開ながらそこそこデーハーな話になるのは個人的には悪しからず思う(これも少ーしアメリカンにチープ!かとも感じるケド)。他方、ショック描写はグロ控えめで、そこも含めて対象世代はティーンド真ん中といった感じの手堅くややマイルドめの仕上りと言えるか(好く言えば)。ただ一点、終始画面が妙に暗くて単純にチョイ見辛いのは幾分マイナスである。結論、別に全然悪い作品ではないと思うが(好くもねーけど)パンチやユニークさといった部分はまあ不足ぎみですかね。珍しくスキナー副長官ことミッチ・ピレッジがそこそこ重要な役ドコロで出てるのだす。 [映画館(字幕)] 5点(2021-06-22 00:58:19)(良:1票) |
890. ザ・ファブル 殺さない殺し屋
《ネタバレ》 う~ん、お話の内容は相当に酷い、というかメチャクチャですね(前作にも増して)。とにかく、堤真一一味に関しては何から何までサッパリ意味・意図とゆーのが通じません。ギャグ要素込みの単なるアクション(スリラーというホドでもねーワケで)を何故にこんなややこしく支離滅裂にしてしまったのでしょーか(こーなる位ならもっとシンプルで陳腐につくればいーじゃないですか)。 他方、ド初っ端のカーアクションにせよ、中盤の団地(足場)での盛大な戦闘シーンなんかにしても、邦画としては一級に派手だし率直に相当以上に面白く観れましたのですよ。だから尚更、もっと単純一直線な話にして(それなら尺も90分くらいにしちゃって)そのアクションだけを思いっ切り際立たせる、という方が絶対に正解なよーにも思うのですよね。何ですかね、コロナ禍真っ只中の製作でちょっとやりたいコトと予算的なコトのバランスが崩れちゃった、とか、平手友梨奈を必要以上に目立たせる為にシナリオが歪んじゃった、とか、そーいう「大人の事情」とゆーのがそこはかとなく感じ取れる、という風にすら思われます。 まあでも、平手友梨奈自体は確かに凄く可愛かったですし、それも量産型な可愛さでもなくユニークで個性的なパッと目を引く魅力が在った、とも思うのですよね(確かにこのコで一本映画撮りたくなっちゃう、的な)。ただ、本作品での平手さんの引き立て方とゆーのは、お世辞にも巧かったとは思いませんです。前述どおりストーリーはパッパラパーですし、その意味でのハイライトたるラストのアクションシーン(地雷)は(ココだけは)これもかなり意味不明という代物でした(やっぱり、コレだってもっとシンプルにすりゃいーじゃない!てな感じで)。 コレもコロナの弊害、なのでしょーか。巣籠もりで打ち合わせばっかり時間長くなって、みんな考え過ぎた(煮詰まり過ぎた)、という感じなのかも知れません。 [映画館(邦画)] 4点(2021-06-20 13:07:14) |
891. みをつくし料理帖
《ネタバレ》 ドラマの内容としては(ほんの一部にシリアスな場面も孕みつつも)ごくほのぼのとしたヒューマン系、しかもややダイジェスト的、というか、好いトコロ寄せ集め!という感じでもあるケド、その纏め方自体はかなり手堅く、そしてこれも緩やかな全体の間の取り方もあって実にノンビリとホッコリと観てゆけるという作品だと思う。 そしてその間の取り方とゆーのが、個人的に非常に心地好かったですね。時代劇ならでは、と言いつつ、最近は時代劇も(昔に比べれば)実に忙しなくなってるなあ、というのを逆に実感しました。そもそも現代劇では中々こーいう間の取り方はこれも逆に難しいかも知れない、とも思います。今作、役者さんの演技がこれまたその間にズバリとマッチしてるというか、どれも非常に味の有る優れたものばかりでしたね。一番好きなのは終盤の澪と小松原のシーンです。これも時代劇的、というか、何とも奥ゆかしい日本的な好さのある素晴らしいシーンだったかと。確実に良作以上で、かなりオススメな方でゴザイマス。 [DVD(邦画)] 8点(2021-06-18 23:55:06)(良:1票) |
892. セクシー・キラー リベンジ・オブ・ザ・デッド
《ネタバレ》 邦題に偽り無く、8割がたが『セクシー・キラー』の話で残り2割くらいが『リベンジ・オブ・ザ・デッド』の話である。かつ、どっちにせよかなりコメディ寄りのおっちゃらけた雰囲気、そしてそもそも話にもさほどの内容は無く、基本的に主演のマカレナ・ゴメスの魅力に頼り切り?とゆーよーな映画である(前半は特に)。 要は、それって根本的にどーなの?という作品でもある。マカレナ姐さんは確かに美人ではあるが、ややメンヘラ臭が強すぎるというか、本作の役ドコロのサイコパスにはハマリ役ではあるものの、そこまで(=映画1本それだけで撮れちゃうホドに)魅力的かと言われるとだいぶん微妙かと思う(いちおう女子大生役なのだが今作時点で30歳だし、チョイと薹が立ってると言えなくもねーし)。終盤のゾンビ展開は(かなり在り来りだが)そこまで酷くもないが、前半は相当に退屈、という感じで。暇潰しとしても少し物足りない程度の出来かと。 [DVD(字幕)] 3点(2021-06-16 21:49:46) |
893. キャラクター
《ネタバレ》 世の中つーのは結構世知辛いモノで、どーしても「ただ善人」という人は中々トップまでは辿り着けないのかなあ、とも思うのよね。少なくとも、いわゆる「悪人」とゆーのが何をどう考えているのかを想像くらいは出来る、とゆーのは必須かと。残念ながら世の中のそこそこの割合の人々てのは、悪人か、でなくてもイザとなったら悪人に為るという人間なのだから、とでも言いますか。 その意味で言うと、ごくごく善人な主人公の漫画家は自分が善人だから悪人を描けない、その彼と、それこそ凶悪極まりない殺人鬼が邂逅・シンクロし、彼らが二人で「彼らの」物語を描き始める…という大元のアイデアは、率直になんかかなり面白いな、と共感できたのですね。そしてその(やっぱりどこまでも善人な)主人公が、勝ち得た自分の地位を守る・そして周囲の期待に応えるコトの重圧と、自分が描く物語が社会に「悪」をもたらすことの罪悪感の狭間で葛藤してゆく、という前半の展開は、繊細な菅田将暉の演技の上質さも相まって個人的にとても面白く・また多分にユニークにも感じながら観てゆけたのですよ。 しかし本作は、最後までその主人公の葛藤を描いてゆくというワケではなくて、中盤で彼はある種「白旗」を揚げて、そこから先はワリと単純な犯人捜しスリラーに変わってしまう、そこは率直に少し残念だと思ったのですね。ただ、そっから先が全くに平凡・月並な作品だというワケでも決してなくて、後半は後半でかなり意外性やアイデアの在る展開運びでそこそこ以上に面白いし、加えて、猟奇大量殺人のその「現場」の凄惨な血みどろ具合や終盤のショック描写の「痛さ」とかいった部分のキレ味もかなり良好で、そこにも相当な見応えが在りましたのですね。結論、良作と言える範疇のサイコ・スリラーなのは間違いの無いトコロかと。 演技面でも、前述どおり菅田将暉は好かったし、犯人の彼も結構「手堅い」出来だったすね(特に見た目の不安定さが)。もう一人、小栗旬は『罪の声』でも思いましたが刑事役はドンピシャ・絶品ですね。人当たりの好さそうな一方で、切れ者ぽい鋭さや凄みも兼ね備えていて、そーいう現代的な刑事の役だけでも今後相当食ってける、とゆうよーな気がします。 ※追記:小栗旬は『罪の声』では刑事じゃなくて記者でしたね…(勘違い)…まあ役割的には似た様なもんだとゆーコトで。。 [映画館(邦画)] 7点(2021-06-16 21:48:05)(良:1票) |
894. 猿楽町で会いましょう
《ネタバレ》 どーみても恋愛映画にしか見えませんが、率直にここまで来るともはやそーとも言い切れない、というレベルですね(コレを恋愛映画だとは、私は認めたくないのです)。ここに描かれるのは愛だ恋だといった人間性のごく善なる側面では更々なくて、徹頭徹尾がその負の側面の方なのです。シンプルな愚かしさに始まり、狡猾・打算・不誠実、そして猜疑…ここまでネガティブな映画、それも一見そうは見えない様な「皮を被った」作品というのは、個人的には随分と久し振りな気がします。 とにかく、本当に碌でもないヤツしか出てこないのです。男の方も正直言って最初からあんまり印象は好くないのですが、ラストまで観ると彼には逆に同情の念すら覚えます(=女の方がヒドすぎて)。まあ、あくまで女性を信じようとした彼の人の好さを「未熟」だと糾弾してよいものなのかどーかは、率直に微妙なトコロでしょう。ただ個人的には、人を信じるのはそれこそ個人の自由だと思いますが、大人ならばそのリスクに対する回避策・自分が傷つかない術、とゆーのは常に用意しておくべきだと思います(仕事においても、プライベートにおいても、それは常識かと)。大人は基本的に、オールベットなどしないものです(自分で書いててなんか浮気の言い訳に見えてきましたケド)。 まあそんなのはどーでもよくて、とにかく問題は女のコの方ですべ。なんつーか、どーしよーもないですね。なんも考えてませんし、困ったら泣くか媚びを売るかすればどーにかなるとしか思ってなさそう、とでも言いますか。とにかく彼女は、自分がその時欲しいモノを相手がすぐに与えてくれるか、でしか他人を見ていない様に思われます。それは相互関係、高度な意味での(大人が必要とする)人間関係ではない、とすら思います。本作のラストには、彼女は影もカタチもありません。それこそが監督の「答え」なのではないか、と感じました(すなわち、彼女の居場所とゆーのはこの世の何処にも、他の誰の人生の何処にも、無いという意味かと)。若い日本の女優さんにしては珍しく脱いで頑張ってますが、後半はそれが全く嬉しくもなかった、とゆーのが、彼女に対する(私の)嫌悪感を物語っているよーにも思います。 映画としての完成度は、かなり高い作品だと思います。とは言え、こーいう(ただネガティブな)お話を映画として描くことにどこまでの意味を見出すか、というのも、ひとつ確実に議論の在るトコロではあるでしょう。少なくとも、映画から何らかのポジティブさを得たいと常々思っている人、或いはそーとまでは言わなくても、現時点でそーでもない映画を観れるだけのメンタル的な準備が整っていない人、には向かない作品だと思います。個人的にはこの見応えの、ある面での「素晴らしさ(ユニークさ)」を念入りに勘案して、正直嫌いな部類の映画ですがこのような評価とさせていただきたい、と思います。 [映画館(邦画)] 7点(2021-06-16 21:47:03) |
895. クルエラ
《ネタバレ》 まず、シナリオの出来がまま高いです。クルエラの生い立ち、デザイナーとしての異能と、その狂気の源泉、と(前日譚として)必要とされる要素を無理なく自然に繋ぎ合わせ、同時に見せ場もふんだん+テンポも良好で、やや長めの尺ながら無駄とゆーのが殆ど無い濃密な時間を楽しめました。難癖を付けるなら、クルエラ自身は「復讐」という意味では本作でも罪を犯していきますが(序盤、生きるためにコソ泥をやってんのは置いといて)、結局「根」はそこまで悪人でもないかも?と見えかねない部分は、スーパーヴィランの誕生譚としては少し違和感として残る、というよーな気もしますケド。 ただシナリオがいま一歩90点だったとしても、他方でひとつ美術面は確実にそれを超えてゆく、というクオリティでありました。なんと言っても肝心の衣装が実に素晴らしい。クルエラ或いはバロネスのデザイナーとしての能力というものにリアリティを与えているというか、これのおかげで本作は単なる娯楽映画になっていない(部分的には芸術映画の風をも纏っている)という様にすら感じました。流石、二度のオスカーを誇るジェニー・ビーヴァン女史のこれも卓越した仕事であると同時に、商業作品でこーいう部分のつくり込みにここまでこだわってワンランク以上に優れた結果を出せるとゆーのが如何にもディズニーらしいとも思いますね(毎度トンデモなくゴージャスな製作ですこと)。 もう一点、音楽がこれまた素晴らしかったのですね。劇中の年代が70'sに設定されており、劇伴は基本的に当時のパンクロック楽曲で構成されていますが、まずそれが「権威」に挑戦・反逆してゆくというクルエラのアナーキーな特性にもマッチしていましたし、レトロな聴き心地自体も非常に興味深い、というものでした。サントラを買おうかと思ってますデス。 [映画館(字幕)] 8点(2021-06-16 21:46:06)(良:2票) |
896. はるヲうるひと
《ネタバレ》 「架空の」売春島のとある置屋を舞台にした…という時点で、すわ群像劇か!と思いきや、明確に主人公と言えるのがソコの経営者の(腹違い含む)兄弟+妹だ、という話でした。この三人とゆーのは率直にかなり「奇怪な」人物造形がされており、その部分のユニークさ、そしてそれを表現する演者三人の仕事ぶりも決して全く悪くはなかったというか、演技の仕事としては正直観ていてかなり面白かった、とも言えるかと思うのですね。 ただあくまで個人的には、若干ながらの上滑り感を覚えるというか、地に足が付いてないというか、端的に「何故にそこまでそーなっちゃってるの?」という部分に少し疑問があった、と言いますか。いちおう、とある過去の事件とゆーのが彼らの人生&人格形成にドス黒い影を落としており…というのが話のメインで、その事件の真相が明かされる、とゆーのがクライマックスにもなっているのだけれども、ハッキリ言ってこの三人、全員人格破綻者or廃人にも近いよーなドラスティックな描かれ方で、そもそも全員マトモに社会生活を送れるっちゅうレベルでねーとすら思われる、と(特に佐藤二朗と仲里依紗は)。なんちゅーか、舞台が舞台だけにちと極端な方にはしり過ぎた、とでも言いますでしょうか(ソコにはやっぱりそこはかとなく、この業界の関係者なんてみんな頭オカシイ、という一種の偏見の様なモノまで感じ取れる、つーかね)。 そのナニが好くないといって、主人公の三人が三人ともそーいう感じのちょっとなかなか感情移入してゆけない様なキャラクターなので、どーにも作品に入り込めなかった、というコトですね。もちろん一方で、置屋の女郎たちの中にはホッとさせてくれる様なキャラも居るし、それこそ少し落ち着いた姉御肌で話を纏めて運んでゆける様なキャラも居なくはないのですが、彼女らは(三人と比べて)それホド目立っている訳でもないし、そもそも明確に主人公ではないし、という。結論、ややバランスの悪い映画だ、と思いましたです。はい。 [映画館(邦画)] 5点(2021-06-16 21:45:06) |
897. 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
《ネタバレ》 原作は大昔に読んだものの、さほど印象に残った記憶も無く(結末がやるせなかったのだけ覚えてる)、三部作という大仰な設えには(それに足るだけの話の内容はあったのだっけ?と)一抹の不安も感じつつ、更に意図せずもDolby-ATMOSでの劇場鑑賞と相なりました。 それでもこの第一弾は、先陣としては十二分以上の好い出来だと思う。ハサウェイ、ケネス、そしてギギのキャラクターを詳らかにしてゆくことがメインの内容もそこそこ興味深く観れるし、程好くコンパクトな尺ながら序盤・中盤・終盤にアクションシーンはバランス好く在るし、そのアクション、特に終盤の第五世代MS空中戦闘シーンは期待どおりのかなり高水準なクオリティだったしで(夜戦なのでチョイ見難い、というのは確かに玉に瑕ながら)。Ξガンダムを目出度く手中に収め、テンションMAXなトコロで次回へ続く、とゆーのはついこないだ『UC』の第一話でもやった(在りがちな)手法だとちょっと苦笑しつつも、コレは第二弾も確実に劇場鑑賞となるでしょう。 雰囲気もイイですね。コンセプト自体は割とハードめな話だし、そのハードさを結構剥き出しに見せつけてくる様な暗さ・凄みとゆーのも十二分に醸しつつも、若き「反逆者」たちの様子には特大の爽やかさと、そして気高さ・人の人たる美しさといった様な少し懐かしい空気も仄かながらしっかりと感じ取れる。青春映画としても素晴らしいモノになってゆくのではないか、という大いなる期待を抱かせます。良作ですね。 [映画館(邦画)] 7点(2021-06-16 21:35:45) |
898. 地球防衛未亡人
《ネタバレ》 あまりに音の感じが不自然すぎるアテレコに関してはそーいうコトなのかどーかすら確信持てないですケド、諸々敢えて「手を抜いている」感を醸しまくることで笑いを誘う、という類いのシュールコメディかと思います。だから色々とクオリティが低いのはある意味当然なのだと思うのですが、にしてもまず、肝心の笑いの部分がちょっとレベル低すぎです(これを本気でやってるのか、というレベル)。もう一点、せっかく壇蜜を起用しているのにエロ要素がほぼ皆無なのもサービス精神とゆーのが無さすぎだと思います。これで演技も稚拙、お話の内容もどーでもよいとなると、もはや見所が見い出せない、というか。逆に、言ってるコトに根拠が無さ過ぎる(のに私が一番マトモですという顔をしてる)イワムラ博士とゆーのは、個人的に少しだけもはや面白かったですケド(演技も一人だけ多少好かったよーにも思いますし)。 ただ、例えばいわゆる特撮マニアとかにはもう少しだけ見ドコロ・笑いドコロとゆーのがあった、と言えるのかも知れません。主演に森次晃嗣が居るコトもあって随所に『ウルトラセブン』ネタが仕込まれていたのは気付きました(レフトンR30とか)。或いは、監督の昔からのファンならもっと楽しめた、というコトでもあると思うのですよね。(色々な意味で)にわかの鑑賞者向けではない作品かと。 [インターネット(邦画)] 3点(2021-06-15 23:43:18) |
899. 片腕マシンガール
《ネタバレ》 血飛沫スプラッシュなおバカ・和製スプラッタですが、随所のつくり込みにはかなりのこだわりが見て取れます。その熱意こそが、こんな低俗なB級作品にこんなに熱烈なファンがこんなに沢山居る理由かと(しかも世界中に)。 まず、血飛沫の派手さで大いに誤魔化されてもいますが(それも当然狙いのうちでしょうが)人体破壊描写のアイデアには中々にユニークなものが散見されます。個人的に面白かったのは、板前のけじめ寿司だとか、マシンガンで敵の胴体に風穴を空けておいてそこから後ろの敵を撃つシーンだとかですね。オーラスも(ちょっとグロすぎてエフェクトかけてますが)かなり派手かつシュールでユニークなシーンだったかと思います。 もう一つ、やはりカメラワークがかなり面白いですね。俳優さんは女性も多くて決してアクションが本領という人ばかりでもないと思いますが、戦闘シーンにはかなりの迫力が出せていますし構図その他に意外性も多分に感じ取れます。予算的にどーしようもない部分は潔く諦めますが、出来ることには妥協しないという姿勢にも、とても好感が持てるとゆーか。 更に一点手を抜いてないのが、随所で「キメ」のポーズをチャンと考えているコトですか。これは何つーか、日本の特撮や戦隊モノを好んで観てきた人たちだから出来ることだ、という様にも感じます。これも所謂「文化的レガシー」と言ってよいヤツなのかも知れないと思ったりしますね。 正直、邦画ってカネ掛かってないヤツの方がユニークで面白かったりすることがままある、と思ってます。その中でもかなりアウトサイダーな作品なのは確かだと思いますが、日本の映画文化全体においても地味に結構重要な作品だった、とも思うのですね。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-06-14 21:20:46)(良:1票) |
900. ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急地獄行
《ネタバレ》 クリストファー・リー、ピーター・カッシングのダブル主演ということもあり、60年代か或いは50年代ものだと思っていたら、なんと1972年の作品なのでした。とすると全体の質感はチョイ古臭すぎますし、特撮のクオリティもチャチすぎますね。何つーか『ウルトラQ』の拡大版でも観てるかのよーな(特急列車と変な類人猿の取り合せは『地底超特急西へ』のエピソードに酷似してますし)。 それっぽいシーンが無くはないので『ゾンビ特急』とかいうタイトルになってますが、本作はゾンビものと言うよりは系統的には『遊星からの物体X』に近い方ですかね。モンスターの能力自体は、紅い眼で見つめるだけで乗り移れるor殺せる(殺した相手は実は操れる)という強力なものですが、正直その能力もあまり生かしきれておらず、かつショックシーンは終始殺されて白眼剥いて血涙流してる犠牲者のアップの一点張りですし、あとSFなのに科学的考証の部分がかなり珍妙・荒唐無稽なのと、矢鱈と登場人物が多くてとっ散らかったシナリオ、加えてラストもごく陳腐、と殆ど褒めるトコロが無いという有様です。アマプラでタダで観れたので別に損はしてないのですケドも… [インターネット(字幕)] 3点(2021-06-14 07:32:13) |