941. フレンジー
《ネタバレ》 ヒッチコックが再び息を吹き返したと言われた作品。ヒッチコックでは珍しく、女性の裸が出てくる。他にも美として女性をとらえていたヒッチコックがこんなシーンを撮るとは?という場面も。当時のR指定になったらしい。 主人公の女友達が魔の手におちた瞬間の演出がヒッチらしい。犯人と部屋に入った途端、カメラがずーっと下がっていって、建物に外に出ることで、絶望をあらわしていた。ヒッチコックのようにユーモアある会話の飛び出すキャラクターが、殺されるのは胸が痛い。 やはりヒッチコックは人間描くよりも、サスペンス映画を撮る方に重きを置く人なのだなぁと思う。 当時のこの映画を観て、手塚治虫はサイコパスの短編漫画「ペーターキュルテンの記録」を描いたのではないかと推測した。発表時期が重なるからね。 [ビデオ(字幕)] 6点(2017-10-16 12:24:24) |
942. 夫たち、妻たち
《ネタバレ》 何か違うんだけど、そうかもしれないなぁと思って、毎回最後まで飽きることなく観させてしまうのがウッディのコメディ。何だろう?この不思議な感じ。アメリカニューヨーク発の人間賛歌ってとこでしょうか?今回はカウンセリングに話してるような語り口で二組の夫婦を描く。 一組は映画冒頭で別れるが、最後はよりをもどす。ここではあの名匠シドニーポラックが若い女性の肉体にはまってしまう中年を軽やかに演じている。「追憶」の監督がこんなんなの~って考えてしまう。 もう一組は監督アレンお馴染の公私混同カップルが出てくる。つまり実際付き合ってる女性を恋人役として映画に出演させている。ここではミアファーロー。どうでもいいけど、色んな女性と付き合うよね~(笑)。アレンのドキュメンタリーを観たけど、ダイアンキートンと違って、ミアファーローってあんまり別れてからはアレンのことで話題にならないよね。ま、とにかくここではミアファーローは無名時代のリーアムニーソンと出来てしまって、アレンは教え子とサックス奏者みたいな熱いキスをして、このカップルは終わり・・という話でした。 う~ん、夫と妻のどっちがいいのか悪いのか、二人で試練を乗り越えようとせず、あっさり別れるカップルをアレンは好むよね。私生活でもそうなのかなぁ。 [ビデオ(字幕)] 7点(2017-10-15 22:42:13) |
943. ホームボーイ
《ネタバレ》 ミッキーロークは俳優なんだなぁと、当たり前だが感心した。いや、よく考えると、どの映画でもちゃんと役作りしてるんだけど、今までセクシーな役の映画ばかり観てて、素直に評価できなかった(笑)。 この映画の愛すべきキャラは、彼の半自伝的な映画ということもあって、実にいい。特に最後、ノックダウンを食らって、もう立てないという表情は、映画史に残るほどの表情だ。こんな子どものような表情、みたことない。何ていうか、こいつと友達になりたいと素直に思える表情だった。 後の「レスラー」もダメな人演じてたが、その頃は酸いも甘いも噛み分けたような、渋い大人だった。あれはもうついていけないって感じだったが・・ ミッキーロークってボクサー目指してたんだね。人間って奥深いよなぁ・・。 [ビデオ(字幕)] 7点(2017-10-14 10:53:19) |
944. アグネス
《ネタバレ》 品のある映画です。ニューシネマが終わって、ひと頃しても、やはりアメリカ人は犯してはならない表現はしないものだなぁと感心。ここではキリスト教への冒涜など絶対しちゃいけないもんなんだなぁと思った。「ゴットファーザー3」とか最近では「スポットライト」とかキリスト教にたずさわる人たちを糾弾することはあっても、神さまは絶対なんだよね。アメリカを理解するとき、ここは絶対おさえておかないといけない。 で、この映画なんだけど、神の子を宿ったこの女性は、本当に人間の男と関係してないか?というストーリー。近代療法とかで奇跡を暴こうとするのは、強いアメリカの女性ジェーンフォンダが演じるドクター。しかし最後に奇跡が起きる。これを見過ごすかどうかでこの映画は、下品にもなりうる。日本人の自分としては、なぜ赤ちゃんを殺したか?この点をもっと丁寧に描いてほしかった。ここが最大の焦点のはずなのに、映画はそこはあまり描かない。 映画バカの自分には、映画としての完成ばかり考えちゃう。本当にコメントするのも言葉を選ばないといけないほどの繊細な映画でした。 [ビデオ(字幕)] 7点(2017-10-13 12:11:17) |
945. スノーデン
《ネタバレ》 オリバーストーン、久々の新作。相変わらずの反骨(?)映画。スノーデンがどのようにして国を敵に回すにいたったかの心情変化の様子がもう少し丁寧に描かれていれば・・と思った。 特に自己否定の強い性格でもないのに、自分の仕事を何故ここまで冷静に見つめられたかがポイントだと思う。オリバーストーンはそこを、愛する人の存在、そして中東の戦争でゲームのように人を殺しているアメリカという国の実態に置いてる。もう一つ、忘れてはならないのがてんかんという持病。この病気とともにあるだけで大変なのに、スノーデンはそこに天才的なコンピュータースキルを持っていたのだ。 国を敵にするというのは相当なこと。僕はやはりてんかんの存在が大きかったと思う。この主人公は、かなりこの持病の存在に葛藤していたから、そんなことができたのではないか? でもまぁオリバーストーンの映画は、大きい存在に疑問を呈する社会派が大きな持ち味。久々のオリバー節、健在で安心しました。 [DVD(字幕)] 7点(2017-10-07 23:07:59) |
946. 君の名は。(2016)
《ネタバレ》 面白かった。二人はどうなるんだろうと前のめりで見てしまった。中年のおっさんだけど、ラストの二人の若者の出会いには拍手喝采。幸せな気分になれたアニメ映画だった。男女が入れ替わるのは、大林監督の「転校生」が有名。でも、この二人が時空を超えて、東日本を思わせるような災害から、愛する人を守るために行動していく展開は新鮮だった。「ある日どこかで」「転校生」「バックトゥザフューチャー」をミックスしたような展開。しかもそれが愛する人のため、という日本が舞台なのも面白く感じられた要因の一つだと思う。アメリカでリメイクされるようだけど、この映画の感動を損ないたくないので、多分観ないと思う。日本アニメの力量を強く感じた。アニメ現場の過酷さはよく聞くけど、その中でこれだけの作品を仕上げたクリエイターの人たちに脱帽します。あなた方が閉塞した日本の希望と思えました。 [DVD(邦画)] 8点(2017-10-02 07:53:26) |
947. ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場
《ネタバレ》 イーストウッド12作目の監督作品。上司が喧嘩が強いと、出来の悪かった部下たちも上司の汚点に全員一致でシラを切りとおすとこがいかにもアメリカ。自分で自分の身を守れる人間に人望が集まる国のようです。最後に書類バカが降格されるのは小気味いいですね~。戦場では書類に忠実なことよりも臨機応変な対応が肝なんでしょうね。話変わりますけど、今の日本って有事の際の対応は、書類バカのような気も・・(汗)。アメリカさんから降格されなきゃいいけどねぇ。 [ビデオ(字幕)] 6点(2017-09-25 00:55:34) |
948. この世の外へ クラブ進駐軍
《ネタバレ》 阪本順治監督はうまいなぁとつくづく思う。第2次世界大戦後の日本にいた米軍、そして朝鮮戦争に再び米軍が行くその間の日本人とアメリカ人の友情をジャズを通して描いてる。そしてバンドのメンバーを通して、戦後の日本の痛ましい状況の中、懸命に生きる人たちもまた描いてる。この監督は、社会の中の人間を描く方に重点を置き、そこに映画的面白さのサスペンスやユニークな素材を盛り込んでくる。だから娯楽映画的なものを求める人にはちょっと物足りないかもしれないが、僕はこの監督のこのバランスが、とても知的に感じられて、毎回感心してしまう。頭のいい監督です。疲れてる人が味の濃い料理を求めるように、日常で疲れてる人には味付け足りないかもしれない。でも僕はこの監督のさじ加減にいつもうならされてしまう。 [ビデオ(邦画)] 7点(2017-09-24 11:05:19) |
949. ルーキー
《ネタバレ》 無茶苦茶(笑)。イーストウッド監督15作目らしい。本当にあのじいさまは、何でもこなすねぇ。女性の描き方が下手だけど・・。ど派手なアクション、ただそれだけ。 [ビデオ(字幕)] 6点(2017-09-18 22:25:20) |
950. バルカン超特急(1938)
《ネタバレ》 これは貴重!前半はヒッチコック節絶好調なのだが、医師が敵だと分かってからの展開がヒッチコックらしくなく、特に駅馬車のような銃撃戦をヒッチコックが描くなどまったく珍しい作品。後半はヒッチらしいユーモアもなく、本当に珍品。加えて政治情勢を加味して、非常に社会派サスペンスとしての色も濃く、興味深い。特に無抵抗主義をつらぬく男性がかんたんに殺されたりして、第二次世界大戦前の不穏な空気をあらわしている。そして暗号が曲だなんていうオシャレなところも憎い。アメリカに行く前のヒッチコックの作品なので、色んな意味でイギリス時代のヒッチコックの円熟味が堪能できる。 [ビデオ(字幕)] 7点(2017-09-18 14:12:31) |
951. 第3逃亡者
《ネタバレ》 ヒッチコックの職人芸、無実の人の逃避行。今では普通のパターンだが、無実の人が犯人に間違えられて、警察に追われながら真犯人を見つけるというストーリー。この手の話で自分が一番好きなのは、ハリソンフォードの「逃亡者」。 さて古典となったヒッチコックのこの作品。最後のグランドホテルでの犯人探し。観てる我々も途方に暮れる。一体どうやって犯人を見つけるのか?しかしここでヒッチコックは、フロアー全景から、ある一人のドラマーまでカメラを近づける。そしてその男の目がアップになったその瞬間、犯人の癖であるまばたきが出る。主人公たちも知らない犯人を観客だけは知ることになる。上手いなぁ。 後は主人公がどうやって犯人に気づくか?しかしそこに警察が来て、主人公たちはホテルから連れ去られようとする、その瞬間、ドラマーが緊張のあまり、気絶する。そこで我々は冒頭の主人公の女性が、ガールスカウト仕込みの意識をはっきりさせる術を持ってることに気づく。そしてハッピーエンド。もう職人技のなせる安定した面白さ。いいなぁ。 しかもワンちゃんが何かとポイントになってて、緊張感ある展開に息抜きを与えてる。何か逃避行というより、ピクニックみたいな気分になってしまうとこがヒッチコック一流の可笑しさ。まったくお見事です。 [ビデオ(字幕)] 7点(2017-09-18 11:50:15) |
952. この世界の片隅に(2016)
《ネタバレ》 DVDで家で鑑賞したため、人目をはばかることなく嗚咽できたのが良かった(笑)呑気だが芯のある女性がこれからどうなるのか、舞台の広島で何が起きたか知っている観客の自分は冒頭から涙が止まらなかった。しかし原作同様、淡々と話が展開していく監督の手腕はさすが。クラウドファンディングなので、原作を下手にいじれないためだが、それでもここまで映画としてまとめたのはスゴイと思う。何よりのんの声がどんぴしゃ!恐れ入りました・・。 [DVD(邦画)] 8点(2017-09-16 23:27:35) |
953. レオン(1994)
《ネタバレ》 何度も観てる大好きな映画。スティングのShape of my heartを聞くと、胸がしめつけられて泣けてくる。子どもの目をした殺し屋レオン。その昔、レンタルビデオ屋でバイトしてたことがある。この映画「レオン」を返却しに来た女の子の目が赤かった。彼女は何に涙を流したのだろう。レオンの生い立ちにか。現実の哀しさにか。女として共感するマチルダの想いか。時々一人で酒を飲む時にふと考える。 [ビデオ(字幕)] 8点(2017-09-16 09:36:10) |
954. 泥棒成金
《ネタバレ》 映画冒頭で豪華客船の模型を背景にキャストを紹介していたので、主演がケーリーグラントだし、「めぐり逢い」のようなロマンスにヒッチ調が加わるのかなと思い、観てました。でもその後、豪華客船は出てきませんでしたね(笑) 今回の美人さんはグレースケリー。グレースケリーがキャットだったら面白いなぁと思ってましたが、さすがに彼女にアクションをさせるほど、ヒッチコックは鬼ではなかったね。しかしこの映画でなんといっても名場面は、無関心を装った彼女が、部屋に入る前にいきなりケーリーグラントに熱いキスをするというシーン。男なら「おぉ!?」と思ってしまうだろうなぁ。 内容はというと、主人公が泥棒成金なので、感情移入がいまいちできなかった本作。サスペンスとは善人が窮地に陥るから成立するもんなのだなぁとしみじみ実感しました。 [ビデオ(字幕)] 6点(2017-09-11 11:29:07)(良:1票) |
955. マリアンヌ
《ネタバレ》 本当にロバートゼメキスは、どの作品観ても、映画の見せ方が上手い。飽きさせることなく、分かりやすい展開で最後まで見せる。安定した手腕だ。でも娯楽何でも屋って感じで、サスペンスの見せ方に特化して観ると、やはりサスペンス職人には敵わない。でも面白かった。最後までマリアンヌは裏切ってないと思ってた。注意深く演技を見ていたが、やはり情報を送っていたかぁ。女優さんは巧いね。ブラピもアンジーに毒を抜かれたか、裏の無い好青年になってしまったね。イングロリアスのブラピは、微塵も感じさせなかった。やはりこの人も陰で色々努力してんだろうなぁ。 [DVD(字幕)] 7点(2017-09-06 15:19:56) |
956. ピッチ・パーフェクト
《ネタバレ》 お決まりの展開ではあるけど、カッコいいので、つい前のめりに観てしまう。一緒に観た「ストンプ・ザ・ヤード」と展開が全く同じだった(笑)。時代が新しくなっていくたびに、繰り返し創られていくストーリーだよね。でも全然飽きない。ピルドゥンクス(成長)ロマンと言って、一つのジャンルだよね。面白い!若返る!しかし異性受けして同性に友だちの少ない女子が、女子たちのリーダーになっていく話はありそうで、中々見られない素材でした。主役の女性が実にはまり役でねぇ。有名な「トワイライト」(←未見)に出てる女性だったか・・。う~ん、彼女の映画は「ランナウェイ」しか観てないが、どこかでよく見る印象を受ける女性だね。そして歌のシーンが舞台でも練習の場面でも断然カッコいい。やはりアメリカはスゲェなぁと思ってしまう。 [DVD(字幕)] 7点(2017-09-03 01:28:38)(良:1票) |
957. 悪魔のいけにえ
《ネタバレ》 うわぁぁぁ・・。容赦なく残酷な映画の古典。本来、この手の映画は観ないのだが、有名なトビーフーパー監督が亡くなられたので、鑑賞。この監督作品は「ポルターガイスト」が結構、好きだったけど、出演者に不幸が続いたりして、以後気持ち悪くなり、この手の映画はあまり観なくなった。ニューシネマらしく、観終わった後に、「あぁクソみたいな現実だけど、こんな映画よりまだましだ」と別の意味で元気(?)になる映画ではある。自分の中では「時計じかけのオレンジ」がトラウマになっていたのだが、この映画よりましだった。もし、この映画を若いころに観ていたなら、今頃は犯罪者予備軍だったかもしれない。あぁ恐ろしい。本当に映倫はしっかりしてくれよ。こんな映画、子どもに観せたら、いかんでしょうが!アメリカがベトナム戦争で、いかに国内が激しくのたうちまわっていたか、まさに心に錆びたナイフでキリキリ切りつけられるように刻まれる一本。悪夢ってこんなんだろうなぁ。 [ビデオ(字幕)] 6点(2017-09-02 01:29:01) |
958. 連弾
《ネタバレ》 面白かった。天海祐希が面白い役柄を演じている。ピアノを見事に弾いたり、むかつく女をさらりと演じたり・・観ている間はむかつく天海にイライラ来てたが、ラストの「死ぬときは一緒だよ」と娘に言ってのけるセリフに全てが氷解した。むかつく女は実は・・たくましい!セリフがミュージカルっぽい場面がいくつもあり、コミカルな家庭劇だった。 [ビデオ(邦画)] 7点(2017-08-28 10:21:40) |
959. 嫌われ松子の一生
《ネタバレ》 映像はカラフルだったが、内容は昭和もの。演出が弾けているにも関わらず、描いてる人生模様は深刻な内容。こういったギャップから、昭和がもう遠くなってしまったことを描くのに成功している。最後、昭和の「神様」を平成の子どもたちが撲殺するところが、監督の平成の子どもたちへの不信感が見受けられる。これは中島監督の「告白」でもそうだった。平成もどんどん進んでいくうちに、子どもたちも変遷していく。3.11以降の中島監督の平成論を観てみたい。 [ビデオ(邦画)] 8点(2017-08-27 15:29:04)(良:1票) |
960. 海外特派員
《ネタバレ》 ヒッチコックは映画の教科書と言われるくらい、この映画でも、彼の後の名監督への影響が感じられます。特にこの「海外特派員」の風車の歯車は宮崎駿監督の「カリオストロの城」のラストを思い出しました。それにしても日本で言えば戦前にこんなダイナミックな映画を創っていたなんて、当時の文化格差を感じます。戦後の日本のクリエイターがショックを受けたであろうことも想像できますね。この映画、ヒッチらしさは相変わらずなのですが、飛行機が水面に着水してからの描写は、凄まじい。最近では「ハドソン川の奇跡」がありますが、あれはスマートに描いてただけですが・・。今の映画はこんなんありえないよ~という描写は極力避けてますもんね。この頃の表現者たちのダイナミズムをあの海上のシーンに感じました。 [ビデオ(字幕)] 7点(2017-08-20 14:53:25) |