81. 隠し剣 鬼の爪
《ネタバレ》 すでにみなさんお書きですが、日本を代表するとされる映画監督が二番煎じ、しかも自作のパクリをしてはいけません。細かい部分は違うでしょうが、概していえば同じですわ。貧乏侍がいて、なぜか心が通じ合う可憐な女性がいて、お家騒動が起こって、藩命によって決闘するハメに陥り、辛くも勝って、穏やかな終焉を迎える……。なので私は、作品の内容うんぬん以前に、どうしてこれほど同じ作品をつくるのか、つくれてしまうのかという点に疑問を感じてしまいます。映画会社からのリクエストやしがらみもあるでしょうが、映画監督という職業がクリエイティブなものであり、それに矜持をもつというのなら、やっぱりやっちゃいかんでしょう。これだったら、「たそがれ清兵衛2」としてもらったほうが潔かった。 立ち回りとかは真田のほうがうまかったし、永瀬侍はうらびれ方がちょっと足りなかった? 松たか子は好演してたと思いますが、いかんせん華がありすぎ(笑)。必殺技「鬼の爪」はカッコよかった(爆)。 5点(2005-02-16 06:57:36) |
82. 時計じかけのオレンジ
《ネタバレ》 名奇作としてきわめて評価が高く、これを評価しないヤツは見る目がないというムードさえある本作。でも……これって、そんなにいいんだろうか? いいたいことはわかる気はする。表と裏、一般論と個人の本音のギャップ、権力と反権力と反権力という権力、善と悪と悪が除かれた悪(悪を犯しさえしなければそれでいいのかという問題提起=「時計じかけのオレンジ」でいいのか)、大義名分の影にあるご都合主義、表面的なものでしか成否や幸不幸を測れない社会……さまざまなテーマあるいはサブテーマがシニカルな映像のなかにほの見えはする。また作り方も実験的でその意図と意欲は買う。 しかし、世の中のありとあらゆる欺瞞を告発する本作の主張はわかるが、要するに強い感銘は受けなかったのだ。怖いとも感じなかったし、メッセージに心を揺さぶられることもなかった(「わかる」のと「心揺さぶられる」のは違う)。「ああ、なるほどな、工夫してつくったな」と思いはするが、インスパイアされはしなかった。であれば、したり顔で「これは、傑作だ!」と通ぶることは、私にはできないのである。ということで、5点也です。でも、あのサイケなアートセンスは気に入りました。 5点(2004-12-16 00:30:50)(良:1票) |
83. フレンチ・コネクション
《ネタバレ》 まったく飾り気のない、抜き身の刀を思わせるような作品である。場面を盛り上げるBGMなし。劇的感を高める効果音最少。(当然ながら)CGゼロ。しかし、そうしたテクニックがミニマムでも、ものすごく引き込まれるし、むしろかえって「本物」感が強く、ハンパな演出をいっさい拒絶するストイックな制作姿勢にしびれるばかり。ストーリーも、安易なハッピーエンドとはほど遠い。実話を下敷きにしたとはいえ、最後まで終末が読めず目が離せない。 印象的な場面は、車を徹底的に捜索するシーン。もはや「捜索」なんてものではなく、「解体」以外の何ものでもない。そんなことまでするのかと、唖然となってしまう。おのおののシーンが超リアルで、つくられて30年を経たいまでも終始圧倒されっぱなし。そのほか、地下鉄相手のカーチェイスの場面もすごい。 本作を見直して、改めて映画の本質を問い直さずにはいられない。巧みな作画技術とか、多彩な撮影技術とか、コンピュータを駆使した音楽やグラフィックとか、たしかにそれらは映画の進歩に大きく貢献しているし、作品の魅力を高める要因にもなっている。しかし、それらはあくまでもサブ的要素なのだ。作品の核をなすのは、やっぱりストーリーであり、作品を貫くスピリットなのだ。それらが不足している映画が最近、とみに多いのではないか、と思わずにはいられない。歴史的作品に拍手、ということで、9点也です。彼らの世界を垣間見て、ああ自分なんか超温室育ちだなと、ちょっと自虐。。。 9点(2004-12-15 20:51:27) |
84. ニュースの天才
《ネタバレ》 本筋とはまったく関係ないけれど、2番目のレビューとは驚き(なぜか、ちょっと嬉しい気もする(笑))。捏造ネタで花形ジャーナリストとして活躍した男の人生転げ落ち物語だが、これが「実話モノ」とはビックリするやら呆れるやら。アメリカはなんという国なのだ、といいたいところだが、よく考えたら日本もエラソウにできない。「ゴッドハンド」と称された考古学者が、実は発掘物を自分で埋めていたとか、データをつくり変えて公害防止装置を売っていたとか、欠陥があるのを知っていながらホッカムリしていた自動車会社とか、していない原発の検査をしていたことにしていた電力会社とか。きりがないくらいである。 基本的にはマスコミ批判がテーマだが、ここで問われているのはそれだけではなく、もっと広範で普遍的な、いわば「嘘」と「人間の良心」でもあるだろう。功名心にかられたり、具合の悪いことに頬かむりしたりは、誰しも身に覚えがあるはず。とすると、要は、どこまでならまあ許し、どこからは絶対NOとするかという線引きの問題である。自分にその線があるかどうかが問われているのだろう。 ただ、映画としての作り込みは弱く、最初から終わりまで平板にストーリーが推移し、盛り上がりに欠けた。その結果、娯楽作品として力不足で、かといってシリアスな問題作ともいえない中途半端なものにとどまった。ということで、5点也です。トム・クルーズは、これでほんとうに満足? 5点(2004-12-14 15:17:03) |
85. イン・ディス・ワールド
《ネタバレ》 私たちがロンドンへ行くとすると、まあふつうは飛行機だから、日本からなら約12時間くらい。そのとき思うのは、「12時間もエコノミークラスっちゅうのはかなわんなぁ……」とか。――ふ~む、ついつい忘れてしまうけれど、やっぱり日本は「地球」という観点から見れば、超ファーストクラスの国なのである。 最初のほうで、少年の家族が「陸路でロンドンを目指すのは危険だ」という。私も「そりゃ、危険だ」とか思った。が、そのとき私が感じた「危険」は、あくまでも漠然とした観念にすぎず、そのあと展開されるほぼ現実に近いであろう具体的な陸路の旅のありさまを目の当たりにしたとき、私はいかに自分が生っちょろいか思い知らされた。そこには、エコノミークラスをうっとうしがる私の想像を絶した「旅」があった。同じ、現在のこの地球の上の話なのに、日本からわずか12時間の旅が、彼らにとっては三蔵法師が天竺へ行くのにも等しい命がけの旅路となっている(こうした実情は簡単に想像できるものではない。映像の力を強く感じた)。 旅の途中、少年たちは地元の子どもたちとよく遊ぶ。彼らも笑っている。その姿は、束の間のものであっても、ほっとさせるものがあり、貧しいながらもよく笑う子どもたちの健康さに、ふと、小学生が小学生を殺す自国の現状を照らし合わさずにはいられない。イタリアからフランスへ列車で移動する車中、少年がさまざまなことを回想するシーンでは、私の目から何やら生暖かいものがドドドとあふれ出るのであった。 少年の一人は、なんとかロンドンにたどり着く(もう一人はどうなってしまったのか)。しかし、それで彼の旅が終わるわけではない。まだまだ異国での「生きる」という旅が待っている。少年はロンドンに出てきてよかったんだろうか、と思ってしまうエンディングだった。9点也をつけたいと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2004-12-12 22:59:56) |
86. スパイダーマン2
《ネタバレ》 してやられたって感じですなぁ。途中までは、「ここまでスパイダーマンでないときのピーターを落とすか!? もうこれ以上付き合ってられないな」と思わせるが、ああいうラストをもってくるとは(日本人では、ちょっと思いつかないかも)。欲求不満がたまっていたものをスカッとさせる部分もちゃんとつくってあり、お決まりの「つづく」もありで。まあこれが、観客心理を読みきっているフィルムメイカーのプロのワザってところですか(そのワザにきっちりハメられるのも口惜しいが)。ということで7点也です。ところで、ミルクとケーキをもってきてくれたあの目の大きな女の子と宇宙飛行士の青年、絶対、3でトリックスターになると見た(笑)。それからトビー・マグワイアは実際には、ビバリーヒルズの豪邸に住んでいるそうです……。 7点(2004-12-12 18:15:25) |
87. 鬼が来た!
《ネタバレ》 これは奇作的名作ではないか。描かれているのは、「日本人は悪いことをした」とか「もっと歴史を学べ」とかいった教条的で単純なことではない。世の中には、誰もが関わっていながら、誰にもどうすることのできないまま突き進んでしまう「成り行き」というものが絶対的に存在するという無情である。それを前半はコミカルに、後半はこれ以上ないというほどニヒルに見事に映像化してある。ものすごい脚本力だと思う。 物語のなかで、いくつかのサブストーリーが展開されるが、すべて「ちょっとしたはずみ」がきっかけでそうなっていく。最初に起こったこと自体は小さなことで、うまく通り過ぎられれば、どうということのないものだけれど、一度引っかかってしまったら、あとあと騒ぎがどんどん大きくなり、収拾がつかなくなる。人類が繰り返してきた数々の戦争や悲劇の歴史も、ふりだしはその程度のものじゃないのか、という作り手のシニカルな視線が見える気がする。 途中から物語は“神の見えざる手”に操られているかのようになり、登場人物たちの恣意をもはや越えてしまったところで展開していく。そこに、「何とかならんのか」というもどかしい思いが何度も浮かぶが、どうにもならない。残酷といえば、強烈に残酷なシナリオ。 類を見ない個性をもった作品であり、満点をつけたいところなのだが、ラストが余りにもやるせなかったので-1点。ということで、9点也です。 9点(2004-12-12 13:22:36)(良:2票) |
88. ロード・トゥ・パーディション
《ネタバレ》 親子愛VS親子愛の映画。ポール・ニューマン親分とトム・ハンクスが訣別せざるを得なくなったのは、どちらも「義理の関係より実の息子のほうが大事」であるがゆえ。一見、ハンクス親子による逃避行&復讐劇のように見えるが、ニューマン親分側も同じ親子であることに気づくと、「息子を守るために闘う」という共通したロジックが見えてくる。おとうちゃんは切ないものだ。 ジュード・ロウが、ちょっとイカれた暗殺者を好演(この人、スティーブ・マックィーンに似ていると思うのは私だけ?)、最後のあやつり人形のような倒れ方は、なかなかのもの。ただ、作品を通しての感動はそれほどないし、脚本も水準には達しているのだろうが、突き抜けたものは感じられなかった。ということで、6点也です。 6点(2004-12-12 11:59:55)(良:1票) |
89. 存在の耐えられない軽さ
《ネタバレ》 もっと、タダのエロい映画かと思っていたが、どうしてどうして、すぐれた作品だった。女と見ればすぐ口説きにかかり、手術中にも鼻歌を歌うような超軽々しい医師、トマシュ。前半ではトマシュの軟派ぶりがいかんなく発揮される(笑)。 ところが、「プラハの春」が終わり、ソ連軍が進駐してきて、すべては一変する。安全なスイスにいることもできたのにテレーザを追って再びチェコへ戻ったり、ほかの医師たちが「自己批判書」にサインするなか、トマシュだけが断固として拒否したり。真面目であったはずの者たちが保身を図る一方、このうえなく軽い男と思われてきたトマシュだけが鋼の棒のような筋を通す図式。たしかに人間って、いざとなってみないとわからないもんだと思わされる(自分も含めて)。 そうした「男の生き方」を問う一方、「男と女の不可解さ」も実に丹念に、魅力たっぷり描かれていた。サビーナとの善悪論を越えて惹かれ合う関係、トマシュを理解しようとするあまり自らを傷つける情交を結んでしまうテレーザ……。ステレオタイプではすまない人間心理の機微が見せられ、「そういうもんだよなぁ」と共感した。 個人的にとくに印象に残ったのは、サビーナの情人であった大学教授が「妻と別れてきた。一緒になろう」といってきたシーン。サビーナにとって女としてこんな嬉しいことはない。が同時に、結婚すれば一人のものになってしまうし、トマシュとも切れなくてはならない。そのしがらみに耐えられない思いもどっと去来する。そうしたアンビバレントな感情と涙が、とてもうまく演じられていた。 映像も美しく、俳優たちの目だけの演技などもたっぷり堪能できる秀作。ということで、9点也を捧げます。ラストはまさに「天に召された」といった感じでしたね~。 9点(2004-12-12 10:23:20) |
90. ゴッドファーザー PART Ⅲ
《ネタバレ》 Ⅰ、Ⅱと比べると、かなり落ちるなあというのが正直な感想。マイケルがあんなに喜怒哀楽をあらわにする男になっていたのには、かなりガッカリ。まるで別人で、Ⅰ、Ⅱでのマイケルの面影もない。物語も、3時間かけて、いったい何を伝えたかったのか? 聖と俗の宿業とか因果応報的な神の摂理とでもいうものを描き、オデッセイの世界へ昇華しようとしたのだろうと思うが、実際には何となく話がいろいろとつむぎ出されていただけといった感がある。 結局、Ⅰ・Ⅱとは完全に別物になっていたというのが私の感想。どなたかが「蛇足」と書いておられたが、同感。Ⅱとのあいだに時間が開きすぎたのが凶と出た気がする。Ⅱのラストから、せいぜい数年後を舞台にした「GFⅡ.5」を見てみたい。ということで、6点也です。 6点(2004-12-12 00:27:48) |
91. ゴッドファーザー PART Ⅱ
《ネタバレ》 なんという贅沢な映画なのだろう。全編200分のうち195分は、最後の5分のために費やされた。そして、そのラストシーンによって本作は、一気に名作の仲間入りをすることができた(もし、あのラストでなかったら、私の評価はもっと低いものになっていただろう)。 数ある映画のなかでも、あのマイケルの、自分だけは満たされないものに気づいている表情で終わるシーンは、特筆されるべき素晴らしいものだと思う。いったい、どこでボタンの掛け違えが生じたのか。マフィアとはいえ、パパの時代はファミリーのあいだに温かいものが流れていたではないか。いったい、どうして自分を取り巻く空気は、こうも冷え冷えとしたものになってしまったのだろう……。 若き日のヴィトーも人を殺してはきた。しかしそれは、友のためであったり、家族のためであった。それに対して、マイケルは友を殺し、ついには肉親をも殺してしまう。ファミリーのためにと思ってのことではあったが、そのファミリーを構成する誰からも慕われることはなくなっていた。マイケルは、ゴッドファーザーとしての地位を確乎たるものとしたが、孤独である。 195分間、途中「ちょっと間延びしてるな~」とか思いながら見ていたが、最後の最後で見事にうっちゃられた。そして前作にない普遍的なテーマを含んでいた点を高く評価したい。私はⅠより上回っていると思う。ということで、9点也です。それにしても、ロバート・デ・ニーロを回想で使うとはもったいない! 9点(2004-12-11 20:33:05)(良:1票) |
92. ゴッドファーザー
《ネタバレ》 ゴージャスなホテルのバーで飲む極上のブランデーのような、最高にクールな(カッコイイ)雰囲気――それがまず本作の何よりの魅力。マーロン・ドンのしわがれた声、終始悲しみをたたえて流れるメロディ、ボスとなってからは表情をゆるめることのないアル・パチーノ新ドン……すべて決まりすぎるくらいキマッていて、しびれるような感覚を覚える。 マイケルは、イタリアに身を隠しているとき、ファミリーのルーツであるコルレオーネ村を訪ねようとする。地元の身元引受人が「車に乗っていけばいい」というのを「いや、歩いていく」と断り、自らの足で“故郷”へと向かう。そこには、やがて運命の糸に引き寄せられるようにファミリーへと入っていく男の定めが示され、「妥協」という言葉と無縁な男の生きざまがさりげなく布石される。 イタリアで一目惚れの女性と首尾よく結婚するも、新妻はマイケルの目の前で謀殺される。そこに、逃れようのない自らの宿命を見せ付けられ、以後のマイケルは自分の宿命を真正面から受け入れた男へと変貌する。 ラストシーン、妻から「義弟を殺したのか」と問われ、「No」と答える。それは夫としての思いやりからだったのか。それとも、完全にカタギの世界と決別するゴッドファーザーとしての宣言だったのか。重厚なトビラが閉じられ、それをなすすべなく見るしかない妻、という終わり方は見事! ただ本作は、描かれた男たちの生きざまや振る舞いのクールさ、しびれるようなカッコよさが最大の魅力をかたちづくる一方、同時にそのことが限界ともなっている。つまり、存分に作品世界に浸り込むことはできるが、では、そこから何が得られるかというと、感覚的な充足感という消費しかない。このあたり、のちに「地獄の黙示録」で同じ監督が、やはり同様に感じさせる欠落感の予兆があるような気がする。ということで、8点也です。 8点(2004-12-10 00:02:57) |
93. 風の谷のナウシカ
《ネタバレ》 「ハウルの動く城」を見たあと、改めて本作を見直した。アニメーションこそ前者にひけをとるものの、作品としてのクオリティは比較にならない。制作されて、すでに20年。が、いまなお感動はまったく色あせない。映画の魂は、決してハード面の技術ではないことを教えてくれる。 終盤、オババが「いたわり」と「友愛」という言葉を口にする。それが、すべてをいいあらわしている。武に武を重ねるだけでは、安らかな世界は築けない――そんなきわめてシンプルでありながら、しかし21世紀のいまなお、人類は学べていない真実をこの映画を見た人は、改めて自分の胸に刻まないではいられまい。 ストーリー(脚本)も大変よくできていて、初見のときは、脅威の存在としか見ていなかった腐海の真の意味が明かされたときなど、思わず「あっ、そうだったのか!」と声を出しそうになってしまった。またオームなどのキャラクター類も、のちの媚びたようなものと違い、好感がもてる。 アメリカやドイツでも繰り返し上映され、多くの人の心をうった。日本が世界に誇る名作である。惜しむことなく満点を捧げたい、ということで10点也です! [ブルーレイ(邦画)] 10点(2004-12-08 23:44:29)(良:1票) |
94. ハウルの動く城
《ネタバレ》 面白くないことはなかった。が、期待したほどでもなかった。すでに見た人たちの評価が必ずしも高くないことは知っていたが、「なるほど、これはたしかに」と思った。 とにかく、登場人物の行動とストーリー展開の必然性が弱い。弱すぎる。なぜ、ソフィーは老女になった自分をあんなに簡単に受け入れられるのか? なぜ、ソフィーはハウルを愛するようになるのか? なぜ、憎むべきはずの荒地の魔女とも手をたずさえて暮らしていけるようになるのか? 本作では、そうした諸点に説得力ある理由なしに、「好ましい結果」だけが唐突に示されている。「老女もいいわね」「ハウル、愛しています」「あんたも頑張って」、と。しかし、ほんとうは「好ましい結果」そのものより、それに向かって努力しようとする「プロセス」のほうが尊く、大切なのではないだろうか。人は、どんな葛藤を乗り越えて、どんなふうに考えて、どんな涙と汗を流して、逆境に立ち向かい、ついには敵をも愛せるようになるのか。このもっとも大事な「プロセス」が本作には決定的に欠落していた。また、私は今回のヒロインには、さほど共感できなかった。冷静に考えたら、ソフィーは掃除以外は、ほとんど何もしていないから(笑)。終盤の「引っ越し」劇にいたってはまったく理解不能。 もう、ジブリは終わったのか? 『ナウシカ』や『ルパン三世・カリオストロの城』が素晴らしかっただけに、新作が出ると見るが、アニメは素晴らしいものの、必ずしも期待を満たしてはくれていない。頼むから、こんどつくるときはシンプルにしてくれ~。ということで、6点也です。PS.賠償千恵子さんのソフィーは、私にはキツかった。ラストの歌も不要。 6点(2004-12-05 23:43:43)(良:2票) |
95. エレファント
たぶん自分に感受性が不足しているのだと思い、恥ずかしいのですが、正直にいえば、あまり何も感じることができませんでした。タランティーノ風の時系列が複層する構成、精神的といってもいいような美しさを見せるファースト&ラストシーン(ユーミンの歌に『悲しいほどお天気』というのがあったなぁと思い出した)、巧妙なカメラワーク、そっけないほど説明的でないシナリオなど、実験的で完成度の高い作品であるとは思います。しかし……みなさんが書いておられるような、事件の悲惨さとか、日常に潜む非日常とかに対する不安とか恐怖は、なぜか生じませんでした。。。。。もっと別のときに見れば、違う印象が得られたのでしょうか。ということで、6点也です。ちょっと映画を見る自信をなくしてしまった。。。。。 5点(2004-12-05 22:47:34) |
96. サンダーバード(2004)
私もオリジナル楽しみ世代(笑)の一人ですが、正直、ちょっと物足りなかったっす。何が足りなかったって、サンダーバードのメカたちの活躍自体が少なかった。CG駆使で予算の関係があったのかもしれませんが、メカたちの救助シーンでもっとドキドキハラハラしたかった。そういう人は、決して私だけではないはず。メカの現代風へのアレンジはうまく処理されていたので、なおさら残念です。 とくに2号命少年だった私としては(2号のプラモを10個はつくった。2号を何機も並べて喜んでいた。←もう2号じゃないっての)、2号に大暴れしてもらいたかった(笑)。兄弟たちがほとんど画面に登場しなかったのも、もったいない気がしましたが、みなそれぞれオリジナルの人形にそこはかとなく似ているのが面白かった。あ、お父ちゃんはまったく違いましたが。パーカーなんか、この人をモデルに人形をつくったみたいで笑えました。とうことで、6点也です。 6点(2004-11-24 10:59:29) |
97. スモーク(1995)
《ネタバレ》 ハーベイ・カイテルのタバコ屋は、いい味出してますな。いわゆる社会的な“勝ち組”にはなれなかったけれど、なまじな“勝ち組”ではとうていかなわない人間力を備えているって感じで魅力的です。こういう下町親分をやらせたらピカ一。 ピンポイント写真のアルバムをウイリアム・ハートの作家に見せるとき、「ゆっくり見たほうがいいと俺は思うな」と、さりげなく亡き妻エレンを見つけさせようとするところや、ホントかウソかわからないクリスマス話を語るところなど、じんわり胸に伝わってくるものがありました。いいですね、この役者。 本作の場合、あまり「意味」を「理解」しようとするのは“正しい”味わい方ではないと思われますが、「お金」と「家族」が終始強い意味合いをもっていました。黒人少年が泥棒から泥棒した例の5000ドル、泥棒→少年→(作家)→タバコ屋と“持ち主”を転々と変えていきましたが、結局、誰もただの1ドルも使わないで、可哀相なルディのところへいってます。そして、1ドルも使われずに“持ち主”が変わるたびに、 なぜか“幸せ”を生み出していく不思議! 「家族」のほうは、ルディと娘、黒人少年と自動車工になっていた父の親子関係、ルディとタバコ屋、作家と亡き妻の夫婦関係が作品のなかで一つのアヤをつくっていたように。家族関係がきわめてややこしくなった現代アメリカでも、いや、そんなアメリカだからこそ、か、やっぱり「家族」が最後の寄りしろになるのですね。 と同時に、家族でも何でもない他人同士のあいだにも家族同様、いや場合によったら家族以上の関係が築けるとも訴えているように思えました。ラストのクリスマスストーリーの逸話は、その“まとめ”として受け取れました。カイテルのタバコ屋と黒人おばあさんのクリスマスの1日、「他人」と「家族」があいまいにミックスしたような状態での幸せなひととき。作者は、ここに社会の縮図を織り込んだのでしょうか。ちなみに、最後はカメラを盗んだとしたのは、カイテル・タバコ屋のテレがあったからだと私は解釈しました。 白人黒人、若いの年寄りの、男女……いろんなセクターの登場人物を巧みに取り込み、一つの作品にまとめあげた力量は大したもんです。残念ながら、こういう作品は日本ではとうていつくることはできないだろうなあ、ということで8点也です。 8点(2004-10-31 01:10:30)(良:2票) |
98. プリシラ(1994)
この手の映画は高得点をつけないと「理解がないヤツ」と思われがちで、点が甘くなる傾向があるような気がするのは考えすぎ? 派手派手な内容のわりには淡々と進むストーリーで、ちょっと物足りなかった。盛り上げるところはもっと盛り上げ、シリアスな部分はもっとシリアスに、というふうに、メリハリの付け方を現状よりも激しくしたほうがよかったと思う。かといって見て損したとは思わないが。バスの屋根に乗ったガイが衣装をたなびかせて、バスがオーストラリアの大地を疾走するシーンが最高でした。ということで6点也です。 6点(2004-09-23 23:35:57) |
99. REM レム
《ネタバレ》 「REM」というネーミングにつられて見たが、失敗した。みなさんがお書きの通り、「長ったるしい」「ストーリーがよくない」「オチがない」と、クオリティの低い作品。「REM」なんて邦題をつけるから、もっと睡眠がキーになるのかと思った。よかった点があるとしたら、邦題を付けた人のマーケティングセンスか。ということで3点也です。 3点(2004-09-20 12:05:58) |
100. タクシードライバー(1976)
《ネタバレ》 いま日本の社会は、中抜きで格差が拡大しつつある。かつては「一億総中流」といわれたが、「中流」が急速に減少し、「下層」が増大しつつあるという。そうした状況から、この映画は約30年前のアメリカ社会を描いていながらも、私には近未来の日本を暗示するものとして映った。 正義を求める行動に出ているつもりのトラビスの姿は、第三者的には狂気をはらんだものといわざるを得ない(もしかしたら、オウム真理教の連中の内面も、こうしたものであったのか)。それは、暗殺を企図しながらも、麻薬や売春を憎悪する、一見、矛盾する思考ではあるが、トラビスのなかでは筋が通っている。その歪曲を生み出す都市生活の閉塞と孤独。人ごととは言い切れないものが残って不気味に感じてしまう。 ベツィが属する「階層」とトラビスが属する「階層」の差は、ヒューマンな部分では惹かれ合うものがある二人であっても、両者のあいだに埋めようのない溝を見せ付ける。ラストシーン、ベツィが誘ってもトラビスはもう応じないように描いたところに、救いようのない社会の病巣が浮き彫りにされ、やるせないエンディングだった。 いろいろなテーゼを含んでいて、まるで鉄を飲み込んだような見応えがあった。ずっと記憶に残る映画となる気がする、ということで9点也です。 9点(2004-09-19 00:38:41)(良:1票) |