81. アナザーラウンド
《ネタバレ》 プロットにさほど興味は湧かなかったがアカデミー賞において国際長編映画賞(=旧外国語映画賞)に輝いた作品ということで鑑賞してみた。が、正直あまり良さは分からなかった。もともとあの"実験"は悪い予感しかしなかったし、案の定ボロボロになっていく様子を「なんて馬鹿なことをしたんだ」と思いながら眺めていた。そして友人の死というひどい結果に唖然とした。「お酒はほどほどに」はこの映画を観る前から百も承知だから教訓にもなってない。うーん… ただまあ、アルコールの力を借りて一時的に物事が上手く進んだり、学校にバレそうになってヒヤヒヤしたり、どんどん濃度を高めていく怖さを見たりと、物語として退屈だったわけではないからとりあえず5点。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-03-23 23:05:56) |
82. 夏への扉 ―キミのいる未来へ―
<原作未読>ロバート・A・ハインライン著「The Door into Summer」は1950年代にアメリカで出版され、こういったジャンルの金字塔として知られているそうだ。しかし同時代には映画化されず、21世紀の世になって日本で…。正直、なぜ今これを?という感想になってしまった。当然と言えば当然で目新しさは皆無。映画オリジナルで驚きの展開があるわけでもなく、気がつけばLiSAの曲が流れていた。BTTF、ターミネーターなどのパロディ、オマージュがちょっと懐かしいのと、PETE役・藤木直人の健闘に触れておくくらいかな。あまり見るべきものはなかった。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-03-20 11:07:55) |
83. 余命10年
《ネタバレ》 タイトルから分かる通り、難病もの、余命もの。いずれ別れざるを得なくても和人と恋に落ちて、幸せな時間を過ごした茉莉。「私、間違ってなかったよね?」に「うん」と答えてあげたい。邦画では異例とのことだが1年かけて撮影した力作だ。丁寧に撮った感じが伝わってくるし、四季も感じることができる。小松菜奈はその期間内で体重を落とし、それなりに元気だった頃から最期までを演じきった。時間の使い方では贅沢な映画と表現することができそうだ。ところで、自分は普段あまり読書をしない。とくに小説はほぼ読まない。だから純粋に映画を楽しめている、みたいなおかしな自負もあったりするんだけど、これは気になって原作を読んでしまった。そうなると比較しながら観てしまうのは致し方ない。そこで3つだけ残念な点を挙げておく。まずはなぜ二人を母校の小学校に行かせなかったのかという点。原作は小学校の伝説でENDだから映画でもそこは期待してたなー。次に二人の別れ。原作は茉莉の死を受け入れたうえで「最後の時間を俺にくれないか?」と結婚を申し込んでいる。これがないのはどうにも物足りない。最後に、女友達や出来の良い姉に向けられる嫉妬などの感情が随分薄味になっていて小奇麗にまとまった感があること。このあたりを盛り込んでくれてれば気持ちよく7点は付けてたと思う。 [映画館(邦画)] 6点(2022-03-04 23:03:25) |
84. 望み
《ネタバレ》 息子は殺人事件の加害者か被害者か… どちらに転んでも地獄の二択で夫婦の思いに違いが生じる。原作は読んでいないが、このシチュエーションを描きたかったのだろうから第3の道は途中で捨ててどちらかを覚悟して鑑賞した。奇跡みたいな展開は興醒めに繋がる可能性が高く、観終えた今はこれで良かったと感じている。真相への興味から飽きずに観ることができたが、演出は全体的に過剰さが目につきやや不満だ。葬式のシーンとか狙いすぎてて嫌になる。もっと抑えてリアリティを持たせてほしい。邦画特有の問題って言う人もいるだろうけど、気にならない作品も全然あるんでこれは全部堤監督のせいにしておこう。ま、冗談だけどね。結局は好みの問題ってことで悪しからず。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2022-02-22 18:40:52)(笑:1票) |
85. ザ・ファブル 殺さない殺し屋
<原作未読>1よりずいぶん面白くなった。もちろんアクションを楽しむ映画ではあるけど、佐藤とヒナコのドラマが幹として最初から最後まで存在してるのが良いんじゃないかな。撮影はコロナ第1波と重なり、さぞ大変だったろうと思うがアクションは凄みを増した。凄すぎてリアリティはないけど、それはそれとして岡田准一には今後も日本のアクション映画を牽引していってもらいたいものだ。木村文乃のああいう感じもほんと好き。続編作られたらまた観ると思う。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2022-02-12 23:48:22) |
86. コーダ あいのうた
フランスのオリジナル版は未見(というかそもそもリメイクと知らなかった)。主人公ルビーは家族で唯一の健聴者。これまで両親・兄の耳となり口となってきた。ルビーは大好きな歌で生きていきたいと思っているが、家族を助けるため夢を諦めるべきだろうか? 簡単ではない問題だけに重たい空気になってしまうが、適度な笑い(主に下ネタ)と、ルビーの美しい歌声がこれを和らげてくれた。主演のエミリア・ジョーンズは歌手ではないようだが、役にしっかり説得力を持たせていてあっぱれと言う他ない。終盤の展開はまあベタではあるけど、手話で気持ちをぶつけ合う兄貴とのシーンなんかはやっぱり泣けた。家族愛に溢れる素敵な映画。V先生もナイスなキャラだね。 [映画館(字幕)] 7点(2022-01-31 23:31:30)(良:1票) |
87. 最後の決闘裁判
《ネタバレ》 決闘裁判というシステム、女性の扱われ方、あとは権力層の腐敗とか、ひどい時代もあったもんだ…と中世の怖さを感じながら観ていたが、残念なことにすべてが過去のものになったわけではない。現代にも通ずる社会派映画として重厚に仕上がっている。そんなテーマからして当然だけれども3周目=マルグリットパートではだいぶストレスを感じ、正直疲れてしまった。ささやかなハッピーエンドはこの陰鬱とした気分を晴らすには至らない。羅生門的構成もまあまあ興味深かったが、好きな映画かと問われればYESとは答えないかな。無論駄作とも思わないけど。俳優陣はベン・アフレック含め皆良かった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-01-12 19:01:48) |
88. はちどり
主人公ウニは1994年に14歳だから1980年生まれ、監督もそれくらいの人でやはり自伝的な部分が多々ありそう。だからか起承転結はあまりはっきりせず、結局どういう映画だったんだろう…という思いは今もある。ただ、抱えきれないほど多くのことが起きて爆発しそうだった日々も大人になってから振り返ると悪いことだけじゃなかったと思える、世界は不思議で美しいと言える日が来るんだってことならばなかなか素敵。国は違うがどこか懐かしい風景と、ウニを演じたパク・ジフの可愛らしさと繊細な演技が印象的な作品。おススメ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-12-25 13:37:38) |
89. スパイの妻《劇場版》
戦時下(=日中戦争)において関東軍の化学兵器製造とそれに伴う人体実験を告発しようとする夫婦の物語で、なかなかスリリングであったが、それ以上に二人の行動原理が興味深かった。基本的に夫は正義、妻は愛で動いていて、どちらも大望のために残酷な決断もする。「お見事ーっ」と言えるかどうかは分からないけど、驚きもあって楽しませてもらった。師弟関係にあるようだが黒沢清×濱口竜介は今考えたらかなり凄い。主演の蒼井優は当時の女優を意識したかのようなお芝居をしているがそれが吉と出たかは微妙なところか。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-12-16 22:30:29) |
90. 花束みたいな恋をした
押井守に興奮して意気投合。麦と絹は趣味が重なるお似合いのカップルだった。しかし「始まりは終わりの始まり」で徐々にすれ違いが多くなり冷めていく。今日、別れを告げると決めて最後に楽しい思い出を作る二人… しかし麦は未練たらたら状態になって「別れたくない。結婚しよう」と迫る。恋愛なんてそんなものだと。妥協して結婚すれば幸せになれると。そして、そうかもしれないと頷く絹。映画的にはやはり別れるだろうと思いながらも、そうならなかったからといって必ずしもバッドエンドじゃないし、正解、不正解のない選択は人ぞれぞれ違った捉え方になるんだろうなぁ。2021年を代表する邦画の一つだけあってさすがの完成度、クオリティ。面白かった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-11-29 00:33:03) |
91. 翔んで埼玉
原作は未読だが「パタリロ」の漫画家さんの別作品ということで実写化のハードルは高そうに見えた。しかしそれを可能にしたGACKTという稀有な存在、この映画はキャスティングの勝利だなー。二階堂ふみしかり、京本政樹しかり。そして埼玉をいじりながらも根底には埼玉愛があり(言い過ぎか?)嫌な感じはせず最後まで観ることができた。ま、小ネタはわからないところもあるにはあったが。関東民ならさらに楽しめ、埼玉県民ならさらにさらに楽しめる映画ということだろう。続編決定おめでとうございます。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-11-21 22:23:20) |
92. まともじゃないのは君も一緒
人付き合いが下手な塾講師と毒舌女子高生が利害一致し、ある計画を進めていくが二人の関係も徐々に変化していく…というお話で、前半はコメディ色が強い。成田凌がボケ、清原果耶がツッコミの役割を果たし軽快で笑える作品になっている。一方後半は普通ってなんなの?という問い、それなら普通じゃなくてもいいんじゃない?といった二人を肯定する温かさが感じられ、爽やかなラストへ向かう。演者もよく嵌まっており、おすすめできる一本だ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-11-03 16:09:16) |
93. ノマドランド
しんどいね生きていくのは。ドキュメンタリーのような…というかドキュメンタリーも含まれる映画といった感じで終盤のボブ(息子が自殺)の話も実話とのこと。ただしこれは悲しみや喪失感を抱えた人たちがあえて選んだ生き方だから、そこはとても尊重されているし、ことさら政治が悪いと主張することもなかった。もちろん厳しい現実もたくさん見せられたから憧れはしないけど、ノマドのことを知り、考える時間は悪いものじゃなかった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-11-03 16:07:30)(良:2票) |
94. ひらいて
めちゃくちゃ面白かった。原作は未読で、予告編と山田杏奈のインタビュー動画を見てから鑑賞。そのインタビューで彼女は主人公・木村愛を「わからない」と言っていた。主演を務めた人でもそうなのだから、と最初から理解や共感を目指さなかったのが良かったのかな。少し引いて眺めれば愛の行動は単純に面白くて目が離せないじゃないか。萩原聖人なんて絶対刺されるんだろうなと思いながら見てたからね。俗にいう悪女モノは過剰になってコメディ化するものもあるが、これは10代の精神的不安定さが前提にあるせいか、そこまではなっておらず好印象。愛を演じた山田杏奈も素晴らしく、空虚な言葉や吐き捨てるようなセリフの数々をちゃんと自分のものにして自然に操っていたように思う。一応ベッドシーンもあったことだし、なんらか賞をあげてほしいなー。美雪役・芋生悠の顔・名前もこれでしっかり覚えた! [映画館(邦画)] 8点(2021-11-01 20:17:10)(良:1票) |
95. 佐々木、イン、マイマイン
あなたの人生に多大な影響を与えた忘れられない友人はいますか? いるならこの映画はきっと心に響くでしょう。自分はいなかったから点数としてはこんなもんかな…(寂しい)。主演の藤原季節が「人の感情はまとめられない。まとめられないものをまとめないままだったからホッとした」と言っていたのが記憶に残っているが、ホントにそういう映画だなと思った。20代でこれを撮った内山監督の今後が楽しみである。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-11-01 01:04:59) |
96. アップグレード
AIが最善を導き出して人にアドバイスするのはすでに始まっていることだが、それがさらに進化し、体の動きまでコントロール可能になったら? そんな近未来を舞台にしたSFアクション。よくよく考えるとツッコミどころもあるんだけど、観てる間はそこを感じさせなかった。スピード感や緊張感が程よく見応えある映画になっている。オチも秀逸で満足だけど少々グロいのと、くしゃみで人を殺す技術に若干白けてしまったのを思い出して7点ということに。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-26 23:00:19) |
97. 燃えよ剣(2020)
威厳ある"ちゃんとした"時代劇。スケール感が必要なところにはしっかりお金をかけているし、往年(70年代あたりか)の邦画ような懐かしさも感じた。原作「燃えよ剣」は上巻・下巻という形で出版されていたと思うが、この映画化記念?で一冊にまとめられたものも見かけた。分厚かったなー 150分に収まる内容ではないはずだ。必然、駆け足になる。原作ファンは厳しい評価を下すかもしれない。が、未読の自分からするとこれでも十分楽しかった。新選組誕生のワクワク感、池田屋での死闘、やがて賊軍となり散っていく。敗者の悲哀は近藤や松平容保公に任せて、主人公・土方歳三はどこまでもクールでドライな存在であったのが一つ特徴と言えるかもしれない。病により衰弱していく沖田総司を演じた山田涼介の減量ぶりもなかなか。こういう大作時代劇が今後も作られ続けるといいな。 [映画館(邦画)] 7点(2021-10-16 09:05:43) |
98. 燃ゆる女の肖像
《ネタバレ》 ヨーロッパの映画らしく静かで気品がある。しかし燃え盛るような熱いものも感じた。主人公はマリアンヌとエロイーズ、二人の女性。画家のマリアンヌはエロイーズの肖像画を描くことになる。これは現代で言うお見合い写真なのだが、エロイーズはそもそも結婚に後ろ向き。以前雇った画家には一切顔を見せなかったという。その轍を踏まぬため、正体を明かさず、散歩のときなどによく観察して描くよう、エロイーズの母から言われている。ここから二人の関係が始まる。肖像画を描くためにエロイーズを目に焼き付けていくマリアンヌ、そして彼女の視線を感じ続けるエロイーズ。モデルを引き受けてからは互いにそのような状態になり、二人を結び付ける。良いキスシーンがある映画は良い映画だ(テキトー)。ラストシーン、エロイーズはマリアンヌを決して見ない。一方、自分が見られていることは分かっている。エロイーズは涙を流しながらも最後は笑うのだ。それぞれの道を歩んでも、あの日々の記憶が消えることはない。切なくも美しい映画であった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-11 23:39:21) |
99. 朝が来る
<原作未読>想像してたよりさらにヘビー…。英題はTrue Mothersっていうのか。これは素直に佐都子とひかりのことと受け取っていいだろう。ひかりの妊娠は思わぬことだが、ちゃんと愛する人の子であり、もし社会が許容するなら大切に育てたはずだ。だから彼女には母性みたいなものが既にある。しかし、経済的苦境はそんな我が子を不幸にするであろう行動にひかりを駆り立てていく。ポスターになっているのがまさにそのシーンなのだが、最後は… 一言で言えばやっぱり母なんだよね。そこに帰結する。女性原作者×女性監督だからこその説得力もあるのかな。演者に対する要求も「七人の侍」を撮ってた頃の黒澤監督ばりで驚くが、それがメインから脇まで実を結んでいるのだから大したもの。じつに丁寧に撮られた良い映画だが、振り返ればあそこはカットしても良かったかな…と感じる部分も無いわけじゃないので7点ということで。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-09-27 18:34:12)(良:2票) |
100. 劇場版 鬼滅の刃 無限列車編
<原作未読、アニメ1期は鑑賞済み>列車での(との)戦いはそこそこだったが、上弦の鬼が現れてからというもの、一段ギアが上がってなんとも凄かった。主人公そっちのけだけど、柱のかっこよさで400億円。心を燃やせ、か。ありがとう煉獄さん。2期も楽しみに待ってます。 [地上波(邦画)] 8点(2021-09-26 00:00:36) |