81. ポゼッション(2012)
《ネタバレ》 オカルトホラーとしては新鮮味を感じない内容。実話ベースらしいが離婚した後の家族のドラマというのもよくあるケースだ。 しかし、喉の奥から指が見えるシーンやCTスキャンに悪魔が映り込むシーンはドキッとさせられるし、父親役のジェフリー・ディーン・モーガンや娘役のナターシャ・カリスもなかなかの熱演。ベタではあるが家族が愛情を再確認するドラマはホッとするし好感が持てる。本編も短くサクッと観られるのも良いがもう少し全体の恐怖感が欲しかったというところか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-03-10 02:20:32) |
82. アメリカン・スナイパー
《ネタバレ》 イーストウッドの映画はいつも過剰な演出が無い。この映画もクリス・カイルという一人のアメリカ兵に起こったことを描いているだけ。ただこの人にずば抜けた狙撃の才能があって戦果を挙げたため表面的にはかなりドラマティックなものになっている。 最初に狙撃したのが少年そしてその母親というところにこの人に忍び寄るものを暗示しているように感じる。敵から恐れられ莫大な懸賞金まで懸けられ、ムスタファと呼ばれる元五輪選手の凄腕に狙われるというまるでフィクションのような物語。だがそんな彼にも戦争の闇が忍び寄る。四度の出征の中で確実に彼の心は蝕まれていく。妻は止めるが彼は聞かない。それは「羊たちを狼から守る番犬になれ」という父親の教えを守っているからだろうか。それともムスタファを殺せるのは自分だけだという自負があったのか。ムスタファを長距離スナイプでしとめ彼は帰還する。その後の子供と戯れていた犬に殴りかかるシーンは象徴的だ。子供を守るために殴りかかろうとした相手は「狼」ではない。 この映画はアメリカでは3億ドルを越えるというどこかのアメコミ映画のようなメガヒットを叩き出している。こういう題材では信じられないくらいの大成功。その反応には賛否もあるみたいだが英雄視する人、反戦映画だという人、アメリカ万歳映画だという人、いろいろな思いを持った人たちが映画館に押し寄せた結果なのだろう。 個人的には英雄を讃える作品というよりは戦争で傷ついた一人の兵士を描いた作品という印象を強く持った。PTSDの元兵士に射殺されるという最後も皮肉すぎる皮肉だ。 それにしても84歳が撮ったとは思えない作品。過剰な演出も無いが娯楽的に観られるようにもしてあって、イーストウッド作品に大きなはずれが無い(あくまで個人的な印象だが)のはそのバランス感覚によるところが大きいと感じた。 [映画館(字幕)] 8点(2015-02-22 16:54:16)(良:1票) |
83. 一枚のハガキ
《ネタバレ》 恥ずかしながら新藤兼人監督の作品はほとんど観たことが無い。脚本作は何本か観たのだが。 森川定造の妻・友子は戦争で多くのものを失う。まず夫を失い、その後その弟に嫁ぐがそれも失い、そしてその父と母も息子を失った失意の中でこの世を去ってしまうという絵に描いたような悲劇。その夫を戦地に行かせたのはクジ引きである。定造本人ではなく上官が引いたクジでだ。だがそのクジで戦地に行かずに済んだ者もいる。松山啓太はクジで生き残るが帰還してみれば妻は父親と関係をもって家からはとんずらしている始末。 といったように徹底して戦争による不条理を描いている。ここまで不条理だと悲劇すら喜劇に見えてきてまさに紙一重だ。その不条理に翻弄される人々を役者たちが冒険的な演技で演じる。まるで舞台を観ているかのようにその演技は大げさで声を張り上げるようなものだ。特に大竹しのぶはさすがの怪演。もっと若手女優でも良さそうな役だがこの演技力が必要だったのだろう。 しかし、この作品を観終わった後の印象はそんなに暗いものではない。どちらかというと人間のたくましさや力強さを感じられる。一人になった友子に言い寄る男は妻子もいるのにどうしようもない奴だが、友子が松山とブラジルに行くと決まれば祝いの席を設け「あんたが本当に好きやった」と感情を吐き出す。その姿をぐちゃぐちゃだが可愛いと思ってしまう。戦争を起こすのももちろん人間だが愛すべき姿もきちんと描かれていて監督はきっと人間を見つめ続けてきた人なのだろうと思う。 ともかく100歳まで生きた監督が晩年まで創作意欲が尽きなかったことが素晴らしい。人間の持つエネルギーを体現してますね。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2015-02-13 02:35:27) |
84. プリースト
ポール・ベタニー主演でこういうアクションだと「レギオン」を思いだす。と思ったら同じ監督だった。しかし、アメリカは吸血鬼映画が好きね。吸血鬼というよりはエイリアンのような造詣だが。 冒頭に世界観の説明としてアニメーションを使っているので結構凝った作りなのかと思ったが、世界観やアクションはなんとなくどこかで観た感じのものばかりでそんなに目新しいものは無い。ストーリー的にも特に盛り上がる感じはなく平凡な出来。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2015-02-13 01:12:11) |
85. ソフィー・マルソーの三銃士
三銃士の後日譚でダルタニアンに男勝りの娘がいて陰謀に立ち向かう…とあらすじだけ見ると痛快な剣戟アクションを想像してしまうが全体的にゆる~い作り。コメディ調なのだがそれにしてももう少しメリハリが欲しい。そのゆるさに加えて本編が意外と長いのもつらいところ。 ソフィー・マルソーは美しく可愛いくお胸も見せてくれます。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2015-02-11 01:55:59) |
86. エクソダス:神と王
《ネタバレ》 クリスチャン・ベイル扮するモーゼとジョエル・エドガートン扮するラムセスは兄弟のように育った二人。だがどう育ったかなどは描かれず本編が始まる。二人が対峙するシーンは何度もあるのだが二人のドラマが描けていないせいで盛り上がらない。 今この物語を映画化する意味はどこにあるのか?現代的なドラマの盛り付けもないのであれば現代のCG技術で災厄を描きたかったのか?ただその災厄シーンも別段褒めるところも無いように思える。山道を走る戦車が崩れ落ちていくシーンで眠たかった目が覚めてきたからあのシーンは印象に残ったのだろうが、あんな戦車が走れる山道って一体誰が整地したんだよとすぐにツッコミに変わってしまった。 リドリー・スコットのことだからディレクターズ・カットが存在するのかもしれない。だとしたらあの希薄なドラマ性も分からなくもないが脚本家が四人クレジットされているところを見ると脚本の完成にかなり錯綜したのでは。 どちらにしろ現段階ではこの映画を高く評価することはできない。 [映画館(字幕)] 4点(2015-02-08 02:32:03)(良:1票) |
87. 今日、キミに会えたら
《ネタバレ》 録画した中から何か観ようかなと選んでいたら誤操作で再生されてしまい「ま、いいか」と観始めた。おそらくジェニファー・ローレンスが出演しているため録画していたのだろう。邦題からスイーツ向け恋愛映画かと思ったが、意外とリアルタッチのほろ苦い恋愛映画だ。 遠距離恋愛をしている間にふたりの情熱が醒めていく様を描いているのだが、その原因が不法滞在という不法行為が発端なため少し共感が得られにくいかもしれない。まあ若気の至りというわけだが結局男女が結ばれるためには情熱だけではどうにもならないという現実を突きつけてくる。 物語はほろ苦いが映像は柔らかい感じで作品自体を重々しくしていないので比較的観やすかった。なんでもキャノンのデジタル一眼レフカメラで全編が撮影されているらしく演技と台詞もすべて即興とその挑戦的なところは買うが、個人的には一度観たら十分かな。しばらくしたら忘れてしまいそうだ。彼女のアンナを演じたフェリシティ・ジョーンズは今年のオスカーノミネートを予想されているらしくこれからの注目株か。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-01-08 01:22:16)(良:1票) |
88. 里見八犬伝(1983)
《ネタバレ》 いやあ、懐かしい。小学生の頃テレビでワクワクしながら観た。光る珠を持った八犬士が集まっていくのがすごく好きだった。 しかし今観るとやはりチープな部分が目に付く。ムカデや蛇などは思わず笑ってしまう。それでも当時のように楽しんで観られるのは懐かしさもあるだろうが魅力的な物語だからだろう。 深作の演出も大味だがパワフルでそれに負けまいと役者陣も熱演。特に夏木マリは素晴らしく、彼女一人で八犬士に負けないくらいのインパクトがある。JACのアクションもスピード感があって良い。志穂美悦子のようなアクションもできる女優って今は見ないなあ。 久しぶりに観て驚いたのはラブシーンが意外と長いこと。バックの歌が流れている間ずっとラブシーン。いつまでやってんだよ。その空気を感じて七人が事前にそそくさと出て行くのはちょっと面白い。あと、ラストバトルが凄まじい。八犬士は自分の死に場所を求めるかのごとく次々に死んでいく。死の見切りのつけ方が早いというか潔いというか、ここまでスピーディーだったっけ? いろいろ書いたが個人的には思い入れもあるし結構好き。欲を言えば八犬士の描き込みがもう少し欲しかった。でもそうなるともっと尺が長くなるだろうし下手すると二部作になりかねない。逆にこの尺でよくまとめた方か。邦画もこういう作品にまた挑戦してほしい。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-01-07 02:22:22) |
89. ホビット/決戦のゆくえ
《ネタバレ》 まさか竜がタイトルが出るまでに退治されてしまうとは思わなかった。当初の予定は二部作だったらしく、なるほど三部作にするために膨らませたり取ってつけたりしたエピソードがやや贅肉に感じられる。見せ場の配置に相当苦労したのではないだろうか。 とはいえ戦闘シーンは見ごたえがあるし、ロード・オブ・ザ・リングを観た後では「これくらいやって当然だろう」なんて思ってしまうかも知れないが世界観やその映像、美術はとても素晴らしい。 役者ではビルボを演じたマーティン・フリーマンが良かった。フロドのように悲壮感たっぷりではなく飄々とした雰囲気の中にも情の厚さや勇気が垣間見れる演技がいい。ロード・オブ・ザ・リングの出演者も多数いるが彼らの印象が変わらない内にシリーズを完成できて良かったと思う。 しかし、膨大な量の財宝とはいえあんな簡単に目を曇らせてしまうトーリン。彼の手にひとつの指輪が渡っていたら一瞬で闇の部分を見せてきそうだ。やはり指輪がホビットの手に渡ったことは幸運なことだったと改めて思ってしまった。 [映画館(字幕)] 7点(2015-01-01 05:03:45)(良:1票) |
90. ベイマックス
《ネタバレ》 あまり情報を入れずに観た。オタク要素をかなり詰め込んでるのにここまで間口の広い作品に出来るのはさすがディズニーだ。舞台は架空の都市らしく日本要素がところどころに散りばめられているが、あまり必然性は感じられなかった。普通のアメリカの都市を舞台にしても違和感は無いだろう。 ベイマックスはマスコットとしてもキャラクターとしても良く出来ていてひとつ自分の家に欲しいくらい。映像もアクションも素晴らしく飛行シーンは爽快だ。発明品のデザインも洗練されていて仲間たちが使う装備も目に楽しい。 気になったのは主人公の仲間になる四人の描きこみが物足りないところか。良キャラになりそうなキャラばかりなのにもったいない。ラスト彼らはヒーローを続けているようだがその必要性があまり感じられないのはそういった描きこみが足りないせいだろうか。 まあそれらが気になっても感動させられてしまったわけだが、個人的には同じヒーローものなら「Mr.インクレディブル」の方が好み。 大人も子供も感動できる良質の娯楽作。冬休みに家族でどうぞ。 [映画館(吹替)] 8点(2014-12-31 05:06:09) |
91. 阿修羅のごとく
《ネタバレ》 向田邦子にも詳しくないし、テレビドラマも見ておりません。 父の浮気を機に4姉妹それぞれの心の揺れを描く。姉妹間の嫉妬等のやり取りはリアルだがあまりドロドロした印象は受けない。 面白いやり取りも端々にあるのだが、全体で見るといつ着地するのだろうと感じる。やはりテレビドラマ向きか。 演技で印象に残るのは仲代達矢と八千草薫の安定感。八千草薫は昭和の母親像という感じだ。大竹しのぶと桃井かおりのやり取りはさすが。深津絵里の三女が実は一番印象に残っている。旦那の中村獅童はちと作りこみ過ぎか。 食べるシーンがかなり多く咀嚼音も聞こえるシーンは「家族ゲーム」を思い出す。鏡餅を割って油で揚げて塩をふるお菓子はうちでもやるので親近感。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2014-12-05 22:09:00) |
92. サニー 永遠の仲間たち
《ネタバレ》 青春映画としてはよくあるタイプだが笑いどころや泣きどころでキッチリ笑えて泣ける良作。 余命二ヶ月の旧友と偶然出会うところから話が展開するがそういう難病の部分で安易に泣かせに来ないのがいい。 テンポよく過去と現在を描き出す話術も上手いが、なにより女の子たちの演技や存在感が素晴らしい。全身を使った彼女たちの演技は若いエネルギーに満ち満ちていて、観ているこちらをも元気にしてくれる。 そういう部分が素晴らしいから細かいところはあまり気にならないが、ラストの遺言のところは「ん?」と思ってしまう。やはり解決方法が安易ではないだろうかと。そこが気になるとその後のダンスから全員が集まってみんなが少女の笑顔に戻るラストも、上手いと思いながらも何かもやもやしてしまい残念だ。 あと病室で流れていたテレビドラマでの兄妹ネタや難病ネタ。「またかい!」って韓国の人もそう思ってるんだなあ(笑) [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-12-05 18:05:57)(良:1票) |