81. ローラーガールズ・ダイアリー
《ネタバレ》 監督としてのドリュー・バリモアの処女作という事もあってか、全体的に粗削りだったのが残念。 それも才気が尖っているがゆえの粗さって訳ではなく、なんていうか「ダンスに慣れておらず、下手だけど頑張って踊ってる女の子」って感じの粗さなんですよね。 好意的に捉えれば可愛らしく思えるし、応援したい気持ちにもなるんだけど…… それ以上に「観ていて、もどかしい」「もっと上達した後の踊りも見てみたい」って感じてしまうという、そんな未熟さの方が色濃く出ちゃってた気がします。 特に序盤において「この主人公は、どんな性格なのか」「どんな境遇の子なのか」の説明が不足しており、置いてけぼりのまま物語が進んで行っちゃうんだから、何とも居心地悪い。 明るい作風なのか暗い作風なのかも中途半端で、心のアンテナが面白さを受信出来なかったんですよね。 内気な眼鏡っ娘が「ローラーゲーム」というスポーツで才能を開花させていくっていうのは王道な魅力があるし、観ていて不愉快になる場面もなかったんですが、どうにも物足りない。 決定的な理由としては、主人公のブリスが初めてローラーゲームを観戦する場面が短過ぎて「彼女はローラーゲームに魅了された」という展開に、説得力が欠けてるのがマズかったように思えます。 その後、ブリスが「貴女達の大ファンになりました」と言い出し、入団テストを受ける流れになっても(えっ、何にそこまで感動したの?)と思えちゃうし、主人公に感情移入出来ないんです。 これなら「特に乗り気じゃないけど、親への反抗も兼ねて流されるままにテストを受けて合格した」「それから徐々にローラーゲームの魅力に目覚めていった」って形にした方が良かったんじゃないでしょうか。 ラブコメ部分の「王子様」にあたるオリバーも、やたら曖昧な立ち位置であり、結局「単なる浮気者」だったのか「誤解されて彼女にフラれた不幸な男」なのか、どっちつかずでハッキリしないのも困り物。 決勝で負けてしまう展開と併せ「恋もスポーツも、そうそう上手くいく事ばかりじゃない」という「青春の挫折」を描きたかったのかも知れませんが、それなら決勝で負けてしまうってだけでも充分だと思うし、色恋沙汰を絡める事で軸がブレてしまった気がします。 他にも「母娘の和解が雑」とか「決勝で負ける場面や、ラストシーンがアッサリし過ぎていて物足りない」とか、欠点を論えば幾らでも書けちゃう映画ではあるんですが…… 上述の通り「可愛い女の子」的な魅力も備え持ってるので、嫌いにはなれなかったんですよね。 「ローラーゲームのルール」について、劇中で分かり易く説明してあるってだけでも、娯楽映画としての最低限はクリアしていますし。 ちゃんと観客の事を考えた、独りよがりじゃない誠実な作りだったと思います。 スポーツ物のお約束である「主人公チームが生まれ変わり、初勝利を収めるシーン」は痛快だったし、仲間との協力プレイである「ホイップ」を多用するチームって設定にしたのも、正解だったと思いますね。 嫌味な敵役とも最後は心を通わせ「好敵手」って関係になるのも、実に気持ち良い。 あとは単純に、主演のエレン・ペイジ(2022年現在は、性転換してエリオット・ペイジに改名済み)や、彼女のチームメイトとして出演してるドリュー・バリモアがキュートなので、彼女達を愛でる「アイドル映画」として楽しめるっていうのも、立派な長所だと思います。 スタッフロールも愉快で賑やかな雰囲気なので、後味が良いって辺りも嬉しい。 総評としては、純粋な面白さって意味では物足りないんだけど…… 「面白い映画」ではなく「可愛い映画」を求めて観るのであれば、問題無い出来栄えじゃないかって気がしますね。 この作品の後、ドリューは監督業に手を出していないようですが、次回作にも期待したくなる一本でした。 [DVD(吹替)] 5点(2022-05-31 18:31:30)(良:2票) |
82. バトルクリーク・ブロー
《ネタバレ》 ジャッキーが自伝にて「ジャッキー・チェンが歩き回っているだけの映画を、金払って観ようという人はいない」と語っている通り、商業的には失敗した映画。 その原因は「燃えよドラゴン」(1973年)を手掛けたロバート・クローズ監督が、ジャッキーに「ブルース・リーのような魅力」を求めてしまったからに他ならない……なんてイメージがあったのですが、久し振りに再見し、それは間違いだったと気付かされましたね。 それというのも、本作は意外にもコメディ色が強くて「ジャッキーらしい魅力」を、ちゃんと描こうとしてた痕跡があるんです。 (これはブルース・リーっぽいな)と感じた場面なんて「敵の屋敷に侵入する場面」「友人を殺された仇討ちしようと、怒りの声を放つ場面」くらいでしたし。 少なくとも「ジャッキーにブルース・リーの真似事やらせたから失敗したんだ」って認識は間違ってたみたいで、大いに反省させられました。 ただ、映画として面白かったかどうかっていうと……やっぱり「微妙」「退屈」って印象の方が強いです。 ジャッキー当人はキレのある動きを見せているんだけど、肝心の相手側が「戦ってる」というより「事前の打ち合わせ通りに動いてる」って感じが見え見えで、迫力が伝わってこないんですよね。 ローラーレースの場面でもスローモーションを多用していてテンポが悪いし、演出も良くなかったと思います。 そして致命的なのが、脚本の拙さ。 何せ本作と来たら「ジャッキーが人質を取られてギャングの言いなりとなり、要求通りにストリートファイトの大会で優勝しました」ってだけの話なんです。 一応、途中で仇敵の一人は倒して溜飲を下げてるんだけど、肝心のギャングの親玉は無傷どころか、ジャッキーが言いなりになってくれたお陰で万々歳。 そんな親玉に「約束通り人質を解放する」って言われ、ジャッキーは笑顔になって終わるんだけど…… (それでハッピーエンドにして良いのか?)ってツッコむしか無かったです。 主人公の父親が料理店を経営してるとか、現実のジャッキーの生い立ちにリンクさせるような設定は悪くなかっただけに、どうにも着地の仕方に納得出来ない。 どんなにベタでも良いから「人質を取った卑劣なギャングに復讐するカタルシス」は描いて欲しかったですね。 「口笛を交えたBGMは良い感じ」とか「特訓の描写は頑張ってる」とか、一応褒めるべき点はあるし、何より自分は「ジャッキー・チェンが歩き回っているだけの映画」でも結構楽しめちゃう口なので、駄作と断ずる事は出来ないんですが…… 失敗作扱いされても、特に反論しようって気にはなれないです。 それと、後世の人間としては「紆余曲折を経て、ジャッキーはハリウッドで大成功を収めた」のを知ってるからこそ、余裕を持って鑑賞出来たけど…… もし自分が「公開当時のジャッキーファン」だったとしたら、相当キツかったと思いますね。 (違うんだ、ジャッキーは本当は凄い奴なんだ)(ハリウッドで通用しなかったのは偶々なんだ)って想いで一杯になってた気がします。 成功してくれて良かったです、本当に。 [DVD(吹替)] 5点(2022-05-18 03:49:19)(良:2票) |
83. ブルー・ストリーク
《ネタバレ》 「ビバリーヒルズ・コップ」(1984年)に影響を受けた映画なんて、星の数ほどある訳ですが…… その中でもオリジナルに比肩するほどの傑作は何かと考えたら、真っ先に本作が思い浮かびますね。 単純に「面白い」「出来が良い」っていうのもありますが「元々は犯罪者という経歴を活かし、型破りな捜査を行う主人公刑事」っていう面白さを「ビバリーヒルズ・コップ」以上に描いてる点が素晴らしい。 次々に事件を解決し、周りから「アイツは凄い刑事だ」と誤解されていく様も愉快だし、この一点においては間違い無く元ネタを越えてると思えます。 それと、本作には二面性の魅力があり「マローン刑事による事件捜査パート」だけでなく「泥棒のマイルズによる侵入窃盗パート」も、しっかり面白く描けてるんですよね。 冒頭、ダイヤを盗みに入る場面だけでもワクワクさせられるし、なるべく人を傷付けないよう行動してるから、観客に不快感も抱かせない。 この辺りのバランスが絶妙で、ホントに理想的な「悪党主人公」であったように思えます。 ……先程「悪党主人公」と断ずる事によって気付かされましたが、本作って主人公のマイルズが「刑事を演じている内に正義感に目覚め、罪を悔いて改心する」なんて展開には全くならず、一貫して「悪党」のままであるっていうのも、凄いポイントですよね。 カールソン刑事達とは友情が芽生えているけど、彼らの為にと自首したりはせず、最後もダイヤを持ち逃げしちゃう。 それでも(こいつ、酷ぇ奴だな)とは思わなかったし、鮮やかに逃げ切った姿が痛快ですらあったんだから、もう御見事です。 脚本と演出、どちらも高いレベルにあったからこそ成し得た偉業と、そう呼んでも差し支えないくらい、凄い事だと思います。 一応、欠点も述べておくなら「女っ気も出しておこう」というサービス精神ゆえか「恋人のジャニース」「グリーン弁護士」などを登場させているのは、ちょっと無理矢理な感じで、浮いているように思えた事。 あと、ラストに仇敵のディークを殺す場面は、如何にも恰好付け過ぎで、違和感あった事が挙げられそうですね。 それまでのマイルズのキャラとも合ってないと思うし、事前に「ディークを殺すのを躊躇い、銃を持つ手が震える場面」があったのとも矛盾してる。 監督としては「最後を恰好良く〆て、ギャップに震えさせたい」って意図があったのかも知れませんが、正直ハズしてた気がします。 それと、マイルズとの別れの際にカールソン刑事が「その内、会えるかも」と言ってるのも、ちょっと残念。 続編を意識させるというか、期待を煽るような台詞だったのに、2022年現在「ブルー・ストリーク」の続編は作られていない訳ですからね。 これって、実に残酷な描写だと思います。 本当、今からでも続編を作って欲しいな、再びこの映画の世界に浸ってみたいなと思わせてくれる…… そんな一品でありました。 [DVD(吹替)] 8点(2022-05-05 04:39:24)(良:1票) |
84. コブラ
《ネタバレ》 「ビバリーヒルズ・コップ」(元々はスタローン主演作の予定であり、没になった脚本が本作に流用された) 「ダーティハリー」(本作の元ネタの一つであり、出演者も何人か共通している) 「フェア・ゲーム」(本作と同じく「逃げるアヒル」を原作としている) といった具合に、様々な映画と縁がある一作。 でも、映画本編を観た限りでは、あんまりそんな感じがしないというか…… 良くも悪くも個性が光る映画になってましたね。 例えば「主人公のコブラはダーティハリーを意識したキャラなんだよ」と言われても「えっ、そうなの?」と驚いちゃうくらい、ちゃんと独立したキャラになってると思いますし。 当時はイケてたかも知れないフラッシュバック演出などが、今観ると古臭くてダサく思えちゃう辺りも、何かそれはそれで「独特の味わい」になってる。 あと、自分としてはコブラに対し(銃を仕舞う仕草とか、気取り過ぎだろう)と、最初は共感を抱けなかったはずなのに、観終わった頃には、すっかり彼を好きになってたんですよね。 硬派でハードボイルドな主人公かと思いきや「やたら健康に拘る」「マッチ棒を咥えてるのも、気障というよりは禁煙の為にやってるだけ」「本名はマリオンで、女みたいな名前だと気にしている」といった具合に、次々と新情報が判明し、意外と愛嬌がある奴なんだって分かる形になってる。 それでいて序盤に描かれた「気取り過ぎな恰好良さ」も失われていないし、この辺りのバランスは本当に良かったですね。 犯人に対し「お前には黙秘権がある」と言った後「だから、そのまま黙って死ね」とばかりにトドメを刺しちゃう場面なんかは、素直に恰好良いなって思えますし。 冷蔵庫からピザを取り出し、鋏で切って食べるシーンなんかも、真似したくなるような魅力がありました。 敵が狂信的なカルト団体であり、陰鬱な作風なのかと思わせておいて、主人公もヒロインも相棒も全員生き残るという、能天気なハッピーエンドだったっていう落差も、何かこの映画を象徴してる気がしますね。 派手なカーチェイス有り、ニトロで加速する車というギミック有り、美女とのロマンスも有りで、贅沢な作りになってるのも良い。 意地悪な目線で観れば「あれこれ色んな要素を詰め込み過ぎて、破綻してる映画」「スタローンの魅力に頼り切りで、作劇による面白さなんて皆無の映画」って酷評する事も出来そうだし、自分としても、決して「出来の良い映画」とは思えないんですが…… それでもやっぱり、こういう映画が好き。 そして何より、スタローンが好きなんだなって事を再確認した一本でした。 [DVD(吹替)] 6点(2022-04-30 16:48:34)(良:2票) |
85. ビバリーヒルズ・コップ3
《ネタバレ》 前作を「同窓会映画」と評した自分としては、タガートの不在が何とも寂しい。 そして、レギュラーキャラであるトッド警部が撃たれて死んじゃうというのも、受け入れ難いものがありましたね。 そりゃあ、このシリーズは「誰かが悪人に撃たれ、主人公は仇討ちを誓う」って導入部なのがお約束ではあるけど、1のマイキーは登場して数分での退場なので観客としても受け入れ易いし、2で撃たれたボゴミルは一命を取り留めていますし。 視点を変えて考えれば「1や2を越えるほどショッキングな導入部」として評価する事も出来るんでしょうけど…… それならそれで、もっと「トッド警部の死」を物語に深く絡め、ラストは警部の墓参りで終わらせるとか、やりようは幾らでもあったと思います。 他にも、ヒロイン格のジャニスとロマンスが芽生えるのも、このシリーズらしくない点であり(これ、ビバリーヒルズ・コップでやる必要あった?)と思えちゃう内容なんですよね。 「遊園地で銃撃戦を繰り広げる刑事物」ってアイディア自体は良かったし、アトラクションを駆使した楽しい場面も色々あったんだけど、それが結果的に「1や2と全然違う」って違和感も生み出してる。 マンネリ回避の為に、新機軸を打ち出そうとしたのかも知れませんが、それが成功したとは言い難いかと。 あと、せっかく新キャラのフリント刑事を登場させておきながら、彼と主人公のアクセルに友情が芽生えていく過程を描いていないのも、実に勿体無い。 「ビバリーヒルズの警官」とアクセルが仲良くなって、一緒に事件解決するのが本シリーズの華だろうに、何でそれをやらないんだよって、もどかしく思えちゃうんですよね。 FBIのフルブライトが黒幕って種明かしも、アッサリし過ぎていてカタルシスに欠けるし…… (アイディアは悪くないんだから、もっと細部を丁寧に作れば良いのに)って、歯痒くなっちゃいます。 そんな訳で「ビバリーヒルズ・コップ」シリーズの一作と考えたら失敗に思える作品なんですが…… これ単品として考えたら、そこまで悪くない仕上がりなんですよね。 上述の「このシリーズらしくない」っていう不満点に関しても、例えば「アクセル・フォックス」っていう単品映画だったとしたら、全然気にならなかったと思いますし。 本作の白眉であろう「子供達を助けるスタント場面」なんかも、初見では(アクセルらしくない。どっちかっていうと「ポリス・ストーリー」のチェン刑事がやる事)と思えて、戸惑ったもんですが、純粋にその場面だけを評価すれば「良い場面」って事になる。 あと一応、シリーズのファンに対するサービスとして「セルジュの再登場」ってサプライズもありましたし、作り手の誠意のようなものが感じられて、憎めない作りなんですよね。 それが単なるファンサービスだけで終わっておらず、ちゃんと物語の中で機能しており、彼に貰ったキーホルダーなどの発明品が、しっかり活躍してるのも嬉しい。 スタローンの母がデストロイヤー2000を買ったという「刑事ジョー/ママにお手あげ」を踏まえたようなネタがあるのも、ニヤリとさせられましたね。 元々「ビバリーヒルズ・コップ」ってスタローンとは縁深い作品ですし(2でも「コブラ」や「ランボー」のポスターが映り込んでる)こういうネタが盛り込まれてる辺りは、信頼出来る作り手さんだなって思えました。 結果的に「1」は8点「2」は7点「3」は6点と、尻すぼみな評価になってしまったのは寂しいけれど…… 自分としては、この「ビバリーヒルズ・コップ3」も、充分に「好きな映画」って言えると思います。 三部作まとめて、定期的に観返したくなるシリーズです。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2022-04-29 15:14:13) |
86. ビバリーヒルズ・コップ2
《ネタバレ》 前作に比べると、よりエディ・マーフィらしい映画になってる気がしますね。 特に「ニトロを届けに来た」と受付の女性を騙し、目当ての情報を引き出す場面なんかは、それが顕著。 爆発シーンも派手になってるし、バズーカで車を撃ったりもするしで、笑いとアクション要素に関しては「1よりパワーアップした続編」だと、胸を張って言えると思います。 ただ、自分が1に感じた「意外とシリアスで、ハードボイルドな魅力」は薄れてしまったように思えて……そこが、ちょっと残念ですね。 前作のホテル以上に「宿泊先の確保の仕方」が傍迷惑であり、豪邸の持ち主である金持ち夫婦が可哀想に思えちゃうのも、スッキリしない感じ。 元々、主人公のアクセルって「模範的な刑事とは言えない、悪党に近い人物」ではあるんだけど、本作に関しては「やり過ぎ」だったんじゃないかと。 とはいえ、欠点らしい欠点なんてそのくらいだし、基本的には「楽しい映画」でしたね。 ブリジット・ニールセン演じるカーラは「理想的な悪役美女」って感じで、男心を擽る魅力がありましたし。 アクセルの同僚であるジェフリーが、上司のトッド警部に成り切って電話に出る場面なんかも、コント的な魅力があって好き。 そして何と言っても、1で絆を育んだ「ビバリーヒルズの警官」達との友情描写が、本当に良かったです。 1のラストで友達になった二人と、2では仲良しトリオとして一緒に行動してるってだけでも、嬉しくなっちゃうんですよね。 これはシリーズ物ならでは、続編映画ならではの魅力であり、映画一本だけでは決して生み出せない味わいがあると思います。 ローズウッドの部屋で会話する三人とか、アクセルの嘘に呆れて他二人が同時にサングラス掛ける場面とかも、凄く好き。 ある意味では、続編映画というよりも、同窓会映画って感じですね。 「1で生まれた友情を、再び確認する映画」「懐かしいアイツらと再会して、また楽しく盛り上がる映画」って考えても、本作は充分に成功してると思います。 (こいつら、仲良いなぁ……)って、主人公達を微笑ましく見守るような気持ちで、エンドロールまでの時間を楽しむ事が出来ました。 [ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-04-29 15:09:35)(良:1票) |
87. ビバリーヒルズ・コップ
《ネタバレ》 刑事物における金字塔と言える映画ですね。 こういったジャンルの場合、どうしても主人公二組による「バディ形式」が多くなってしまうものなのですが、本作の主人公は一人。 それだけに、主演のエディ・マーフィの魅力を堪能出来る作りになっていると思います。 と言っても、主演の魅力に頼りっ放しの映画という訳では無く、脇役にも「血が通ってる」と感じさせてくれるのが、本作の特長ですよね。 例えば、冒頭でトラックを暴走させて警察から逃げようとする悪人なんかも、カーチェイスを繰り広げている内に楽しくなって笑顔になる場面があったりして、妙に憎めない。 バナナをタダでくれたホテルの従業員にも愛嬌があるし、画廊で働いてるセルジュにも「3」で再登場するに相応しいような存在感がありましたからね。 勿論「ビバリーヒルズの警官」にあたるタガートとローズウッド達も良い味を出しており、彼らが主人公のアクセルと仲良くなっていく様は、とても微笑ましかったです。 ラストにて、皆で口裏を合わせてアクセルを庇ってみせる場面とか、悪い事をしているんだけど、それによって「仲間としての連帯感」が生まれた事を自然に描いており、観ているこっちまで、その仲間の輪に入れたような気持ちにしてくれるのも、凄く良い。 観客との「秘密の共有」を丁寧に描いているという一点においても、本作は優れた映画だと思います。 そんな本作の難点としては……主人公の行動が「模範的な刑事」とは程遠く、観ている側としても「これは、倫理的にアレコレ言うような映画じゃない」と頭を切り替える必要があるとか、精々そのくらいかな? あとは、主人公の動機となる「親友のマイキーを殺された仇討ち」に関しても、良く良く考えてみると「金(正確には無記名債券)を盗んだマイキーが悪いのでは?」って思えてきちゃうのは、引っ掛かる部分ですね。 もうちょっとマイキーを「不当に殺された被害者」として描き、自業自得な感じを抑えてくれていたら、もっと素直に主人公を応援出来たかも。 ちなみに、本作は元々シルヴェスター・スタローンが主演する予定だったとの事で、コメディ色を薄めた映画にしたいというスタローン側と制作側とで意見が分かれ、その結果「スタローンなりのビバリーヒルズ・コップ」として「コブラ」(1986年)が生まれたというのも、中々興味深い逸話ですね。 本作は後のエディ・マーフィ主演映画に比べると「親友を殺された仇討ちをするという、ハードボイルドな粗筋」「銃撃戦が意外とシリアスで恰好良い」という珍しい長所を備えているんですが、それって元々はスタローン主演作だったからでは? って思えちゃうんです。 あるいは「48時間」(1982年)の影響かとも考えられますが、そちらでも「仇討ちをする刑事」はニック・ノルティの役でしたからね。 やはり主演の交代劇により「本来エディ・マーフィには相応しくないような映画を、エディ・マーフィが自分色に染め上げている」という、独特の魅力が生まれる形になったんだと思います。 本作は映画史に残る傑作ですが、演者や監督の力だけでなく、そんな「素敵な偶然」も作用した結果、そうなったんじゃないかと思えば、浪漫を感じちゃいますね。 エディ・マーフィの代表作でありながら、エディ・マーフィらしからぬ魅力も味わえるという、何だか御得な一品でした。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2022-04-29 14:59:53)(良:2票) |
88. チーム★アメリカ ワールドポリス
《ネタバレ》 なんか結局「チーム・アメリカは色々迷惑も掛けるけど、世界平和の為に必要なんです」って結論になるのに白けちゃって…… 映画は勇ましい出撃シーンと共に終わるんだけど、観ている自分のテンションは低調そのものっていうギャップが印象に残ってますね。 そもそも内容が悪趣味とかブラックユーモアとか以前の問題として、単に作ってる人達が「嫌な奴ら」ってだけにしか思えなかったのが痛いです。 気に入らない著名人を映画の中で登場させ、悪人として描いて殺すのが楽しいって感性の人も世の中にはいるんだろうけど、流石にノリ切れない。 というか、単純に笑いのテンポとか間の取り方とか、そういうのが上手くないように思えちゃって「悪趣味で不謹慎な笑いである」って事以外には特徴を感じられないんですよね。 人形がセックスする場面や嘔吐する場面とか、もっと短くサラッと描いてくれたら笑えたかも知れないけど、長々と何度も繰り返し描くもんだから「長いよ」「しつこいよ」と思えちゃって、笑えない。 「自分の感性に合わないので面白くないけど、これが凄い映画だって事は分かる」って品も結構あるんですが、本作に関しては「合わないとかそれ以前の問題として、全然凄いと思えない」ってパターンであり、観ていて辛かったです。 とまぁ、そんな具合に、不満を並べ立てたらキリが無い映画なんですが…… それだけじゃ寂しいので、以下は良かった点を。 まず「素人の主人公がプロの集団に仲間入りし、成長してヒーローになる」というストーリーは王道であり、映画の軸がしっかりしていた辺りは評価すべきだと思います。 本作の売りは「メインストーリーの間に挟まれる小ネタ」の方にこそあるんでしょうけど、小ネタを楽しめなかった自分でも、そこまで退屈せずに観られるよう仕上げてあるんだから、この辺は「色んな客層に配慮した、プロの仕事」って思えて、感心させられました。 歌詞の内容には鼻白むけど、挿入曲もノリが良くて楽しい代物が揃ってるし、その使い方も上手い。 人形が人形を操ってる二重構造や、猫を黒豹と言い張る「稚拙な特撮」っぷりにも、愛嬌というか「映画としての可愛らしさ」を感じられて、憎めなかったです。 総評としては、作中で揶揄されてる「パール・ハーバー」よりは面白いと思うけど、好きな映画とは言い難い……と、そのくらいに落ち着きそうですね。 こういう尖った映画の場合「大好き」か「大嫌い」の、どちらかに振り切った方が評価する側としても気持ち良いんだけど、悪趣味を気取ってる割に、妙に優等生な面もあったりして、中途半端になってしまった感じ。 傑作にも駄作にも成り切れなかったという、そんな一品に思えてしまいました。 [DVD(吹替)] 5点(2022-04-20 09:39:22) |
89. ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密
《ネタバレ》 ロビン・ウィリアムスの遺作であり、そう考えると彼が演じるテディの「休ませてくれ」の一言が、より重く響いてしまいますね。 現実とのリンクが衝撃的で、ともすればそればかり語ってしまいそうになるのですが、ここはグッと堪えて、映画本編の話を。 まず、全体的な面白さに関しては「1に比べると微妙で、2と同じくらい」って感じになると思います。 監督は三作ともにショーン・レヴィが担当しているし、良くも悪くも安定しているというか「ナイト ミュージアム」らしい仕上がりなんですよね。 夢のある内容という長所も、説明不足でツッコミ所が多いっていう短所も、そのまま受け継がれているという形。 個人的には、敵役となるランスロットに魅力を感じないのが、一番辛かったです。 善人なのか悪人なのかも中途半端だし……作り手側としては、前作のカスター将軍同様に「悲劇的な人物の救済」を描きたかったのかも知れませんが、どうもイマイチでした。 ニッキーと友情が芽生えたかと思ってたのに、そんな伏線無かったかのように「ニッキーに剣を向けて人質に取る」って展開になったりして、その後にフォローも無かったりするんだから、もうガッカリ。 せめて終盤、ランスロットも皆の仲間入りした後「ニッキーに謝っておいてくれ」とラリーに伝える場面があれば、印象も変わっていたかも。 「石板の力が失われ、皆が動けなくなってしまう」っていう問題を提示しておきながら、その解決法が「石板を月光に当てれば大丈夫」っていうのも、簡単過ぎて拍子抜けなんですよね。 無事に問題解決かと思いきや「アクメンラーが両親と一緒に暮らせるように、石板を大英博物館に移そう」って話になって、お馴染みの自然史博物館メンバーは動くのを諦める事になり (これまで苦労したのは何だったんだよ……) って思えちゃう展開になるのも、スッキリしない感じ。 台詞からするに「皆もう動く事に疲れたから」ってのが結論を下した決め手なんだろうけど、それならそれで、展示物達の苦悩を事前に描いておくべきだったと思います。 とまぁ、そんなこんなで、文句を言い出したらキリが無い出来栄えなんですが…… 惚れた弱みというか、やはり「ナイト ミュージアム」シリーズには「好き」って気持ちが強過ぎて、上述の不満点込みでも、映画として愛せちゃうんですよね。 ラリーの鮮やかな「懐中電灯術」は健在だし、絵の中に入り込む面白さも描かれているしで、2で新たに生み出した良さを、しっかり継承しているのも嬉しい。 そして、3では「お馴染みの展示物達との別れ」を描いており、これは1にも2にも無かった良さで、ちゃんと「3を作る意義はあった」と思わせる内容になってるんですよね。 アッテカが「俺の、友達」と言う場面や、デクスターが別れのキスをする場面では感動させられたし、三部作の完結編に相応しい魅力がある。 こういうシリーズ物って「1が傑作であり、2以降はその余波で作られただけの蛇足」って思えちゃう場合も多いですし、それに該当しなかっただけでも、立派なんじゃないかと。 一連の事件から三年後、再び「博物館の夜」が訪れて、新キャラのラーとティリーも結ばれて、ハッピーエンドを迎えてくれるのも良い。 それだけに、警備員を退職後、教師になったラリーが博物館の中に入ろうとせず、外から眺めて微笑む姿で終わってしまうのは気になるんですが…… これは、主人公であるラリーと観客を一体化させて「博物館からの卒業」を描くのが目的だったのかな? そういうメッセージ性も悪くないとは思うけど、やはり自分としては「博物館の夜は終わらない」「ラリーも、何時までも皆の仲間」って形で完結させて欲しかったですね。 幸い、明確な結論は作中で描かれていませんし、あの後ラリーも夜の博物館に忍び込んで、皆との再会を楽しんでいたと思いたいところです。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2022-04-14 06:27:00) |
90. ナイト ミュージアム2
《ネタバレ》 「主人公のラリーが夜警を辞めて、社会的に成功してる」って設定、本当に必要だったの? ……って思っていたら、ちゃんとラストにて「必要だった」と納得させられる作りなのが良いですね。 本来、ラリーが夜警を辞めているなんて設定、前作のファンとしては到底納得出来ないはずなんです。 でも、作中にて息子のニッキーやジェデダイアが「どうして夜警を辞めちゃったのか」と文句を言ってくれるから、観客である自分としても「そうそう、その通り」と頷かされて、映画との一体感を味わえるし、最後まで観れば (なるほど、博物館に寄付するオチの為に金持ちにしておいたのか) と、大いに納得。 この「序盤にて抱かされた疑問と不満が徐々に薄まり、最後にはスッキリ消えて無くなる」って構成は、中々気持ち良かったです。 ただ、全体的に考えると……面白さって意味では、前作より見劣りしてしまうかな? 「ジェデダイアとオクタヴィウスの友情」とか「自らが作り物の人形であると悟る切なさ」とか、前作にあった長所はキチンと引き継がれてるんだけど「色々と説明不足なゆえに、観ていて戸惑うストーリー」っていう短所まで、しっかり引き継いじゃってるんですよね。 ヒロイン格であるアメリアとの恋物語は唐突過ぎて応援する気になれないし、ジェデダイアが敵の人質になる場面でも (そもそも彼は人形なので、砂時計に閉じ込められても死ぬって事は無いのでは?) と思えちゃって、緊迫感が湧かない。 終盤の展開もグダグダで、巨大なリンカーン像が援軍に来てくれて一件落着と思ったら、なんかアッサリ帰って再び窮地になるし…… 場面場面は悪くないので「こういう場面をやりたかった」っていう作り手の考えは分かるんだけど、場面の繋げ方が雑なもんだから、不自然さが生じてるんですよね。 パソコンを駆使してサポート役を務めていたニッキーが、途中から全然出てこなくなる(博物館改装後に、ようやく再登場)ってのも構成として如何なものかと思うし…… この辺に関しては、あまり誉める気にはなれませんでした。 とはいえ「1には無くて、2で新たに生まれた良さ」も、ちゃんとあったりするので、決して嫌いではないんですけどね。 ダース・ベイダーが出てくる場面や「携帯電話を拾った水兵が、後のジョセフ・モトローラだと判明する」オチには、ニヤリとさせられましたし。 棒術ならぬ懐中電灯術を駆使して敵を倒すラリーの姿も、正に痛快無比って感じ。 何より前作のラスト同様、今作でも最後は「楽しい博物館」を描いて終わる形になってるのは、凄く良かったです。 前作は「夜の博物館」という、閉ざされた楽園の中で秘密の祭りを楽しんでる感じでしたが、今作はそこに客を呼び込み、より「博物館らしい魅力」を打ち出す終わり方になってましたからね。 (この博物館、行ってみたいな) と感じさせてくれたんだから、やはり良い映画だと思います。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2022-04-14 06:18:57)(良:1票) |
91. ナイト ミュージアム
《ネタバレ》 ベン・スティラーという俳優を初めて意識したのが、この映画だったように思えますね。 コミカルな演技を軸としつつも「決める時は決める」恰好良さに痺れて (この人、良いなぁ……) と惚れ惚れしちゃったのを憶えています。 後に彼の主演作をチェックする事となり、その中には本作より面白いって感じるような品もチラホラあったりしたんですが…… やはり「初めての映画」として、本作は印象深いです。 そんな具合に、自分としては主演俳優ばかり注目しがちな品なんだけど、映画全体で考えても、やっぱり「面白い映画」「良い映画」なんじゃないかって思えますね。 冒頭に色んな展示物を映し出し、予備知識を持った観客には「こいつらが動き出すのか」とワクワクさせる作りになってる辺りなんて、特に良い。 観客の喜ばせ方を分かってるというか、夢や期待を裏切らない作りになってると思います。 本作の特徴としては「女性ヒロインが不在である」って事も挙げられますが、それもまた自分好みなんですよね。 一応、それっぽい存在としては同僚のレベッカがいるんだけど、彼女とはロマンスに発展せず、あくまで同僚止まりで終わっちゃう。 主人公は夜警として頑張り、それが最終的にハッピーエンドに結びつく訳ですが、その姿を「女にモテたいバツイチ男」ではなく「息子に認められたい父親」として描いてるのは、本当に良かったと思います。 ここで作り手が欲張って「レベッカとも結ばれた」なんてオチにしていたら、話の軸がブレちゃいますからね。 色恋沙汰の要素を排し「頼りない父が、可愛い息子を笑顔にしてみせる物語」として纏めたのは、もう大正解だったんじゃないかと。 他にも「ミニチュア模型好きには嬉しくなる場面が多い」とか「自分は歴史上の偉人ではなく、それを模して造られた人形に過ぎないと語るテディの姿が切ない」とか、色んな長所が備わってる映画なんです。 敵が老人三人組じゃあ脅威として弱いなと思っていたら「石板の力で強くなる」って展開になり (ほほう、そう来たか) と感心させられる辺りなんかも、観ていて気持ち良い。 嫌味な感じの上司は、最終的には主人公を認めてくれるし、悪人とは言い切れない老人三人組も博物館に復職する後日談が付くしで、鑑賞後の後味が爽やかなのも良いですね。 最後の「博物館の夜」も本当に楽しそうだし「楽園を守り抜いた」という主人公の感慨が伝わってくる、最高のエンディングだったと思います。 そんな本作の難点としては……色々と説明不足で、モヤモヤしちゃう辺りが挙げられそうかな? 監禁されたマヤ族へのフォローは無いし、ラジコンの車に関しても何故か人形が乗り込み操縦出来ちゃうしで、観ていて気になる箇所が多いんです。 正直、作品の完成度は高いとは言えないかも知れません。 でも、そんな「説明不足」という欠点に関しても (マヤ族の人形達は、あの後なんだかんだで皆の仲間入りしたんだろう) (ラジコンの車は、ジェデダイア達が改造したんだろう) って具合に、あれこれ考えて補いたくなるというか…… ある意味では、凄く想像力を刺激される作りになってるんですよね。 「作りが丁寧で、観た後に何のモヤモヤも残らないような傑作」ともまた違う、独特の味わい。 「想像力を刺激される」「それによって、色んな夢が広がる」という意味では、非常に博物館らしい映画と言えるかも知れません。 [ブルーレイ(吹替)] 7点(2022-04-14 05:55:51)(良:1票) |
92. Gガール/破壊的な彼女
《ネタバレ》 これは……「設定は好みだけど、結末が好みじゃなかった」ってパターンの品ですね、残念ながら。 メインヒロインかと思われたジェニーではなく、女友達のハンナと主人公が結ばれる形となっており、どうもスッキリしない。 この手の「女友達と結ばれるラブコメ」って好きな映画が多いはずなのに、本作に限っては違和感が大きくて楽しめなかったんだから、自分でも不思議です。 理由を考えてみるに、根本的にハンナの魅力が不足していて「メインヒロインではなく、この子と結ばれて欲しい」と思えなかったのが痛いんですよね。 ジェニーは性格に難ありの美女ってタイプなんだから、対比としてハンナの方は性格が良くて優しい子にすべきだったと思うんだけど、何かそれが中途半端というか……作り手の考える「優しい子」の定義が自分とズレてる気がして、魅力を感じなかったんです。 例えば「主人公のマットにだけ優しくて、男友達のヴォーンには素っ気無い」っていう態度があからさまな辺りとか、それで嬉しくなっちゃう人もいるんだろうけど、個人的には興醒めしちゃいます。 これって根本的には「優しい女性」というより「主人公にとって都合の良い女性」ってだけですからね。 (見た目は美人だけど、性格美人って訳じゃないんだな)って、つい思っちゃいました。 そもそも主人公のマットにも魅力を感じなくて、主人公カップルの片方ではなく、両方を好きになれないってなると、流石に褒めるのは難しいです。 ジェニーの陰口を言うマットの姿とか「身勝手で性格が悪い、嫌な奴」としか思えないんですよね。 にも拘わらず「貴方みたいに優しい人は初めて」だの何だのと、作中で女性陣に絶賛されてるんだから、観ているこっちが恥ずかしくなっちゃう。 マットの代わりにジェニーと結ばれる事になるバリーも「家の中にジェニーの写真や服を飾った神殿がある」っていうストーカーとしか思えない男なのに、ジェニーはそれを聞いて拒否感を示すどころか、感激しちゃう始末だし…… 男にとって都合の良い映画は嫌いじゃないけど、本作に関しては「性格が悪い男」でも「ストーカー」でも美女と結ばれるんだって形になっており、流石に感情移入出来ませんでした。 何だか、こうやって分析してみると「結末」以外にも好みじゃない部分の方が多いなって気付いちゃう訳ですが…… 一応、監督はアイヴァン・ライトマンだし、演出や音楽の使い方も良かったので、観ていて退屈はしなかったんですよね。 アメコミのスーパーガールやパワーガール好きにとっては、夢のような映画ってのは間違いないと思うし、コスチューム姿でエッチする場面がある辺りなんかは(分かってるなぁ)と嬉しくなっちゃいます。 2006年制作である事を考えれば、もっと自然な飛ばせ方も出来るだろうに、あえて冒頭の場面にて「スーパーマン」(1978年)っぽい飛ばせ方をしているのにも、拘りを感じました。 そして何より、主人公と結ばれたハンナも超人的なヒロインとなるオチであり「スーパーヒロインを恋人にする」という男の夢を裏切らないまま終わった事には、素直に感心しちゃいましたね。 物語の面白さや整合性よりも「夢」を優先させた映画……と考えれば、素敵な一品だと思います。 [ブルーレイ(吹替)] 5点(2022-03-30 18:41:21)(良:1票) |
93. 生きてこそ
《ネタバレ》 実話という衝撃が大き過ぎる映画なのですが、単純にサバイバル物として考えても、良く出来てますよね。 完全なフィクションとして提供されても「これは凄い、傑作だ」と唸るくらいに面白い。 本作には「実際に起こった悲劇を風化させない為、後世に伝える為」という制作意図もあったのでしょうけど「観客を楽しませる娯楽映画」としても、立派に成立してると思います。 序盤にて飛行機が墜落する場面も迫力があり、映画としての「掴み」に成功してる辺りにも、感心しちゃいましたね。 他にも「普通の道だと思って足を踏み出したら、実は崖の上に雪が積もっていただけで転落死しそうになる場面」もあったりして、視覚的なスリルを味わえる作りになってる。 「明日救出が来ると勘違いして、配給制にしていたチョコやワインを一気に消費しちゃう」とか「新しいスーツケースを見つけ、その中の歯磨き粉を夢中で貪る」とか、極限状態ならではの可笑しさ、面白さを丁寧に描いている点も良かったです。 最初はギターを弾く余裕があったのに、後に暖を取る為にギターを燃やしてしまう描写なんかも、徐々に状況が切迫してる事を伝える効果があって、印象深い。 それと、実際にあった墜落事故について調べてみると、宗教的な色合いが強く「仲間の遺体を食べる」事が可能だったのは「彼らがキリスト教徒だったから」「聖体拝領という儀式が存在したから」こそと思える感じなのですが、本作はそういった説明を必要最小限に止めてるんですよね。 それによって、キリスト教徒ではない観客にも感情移入させる事に成功してるし、この辺りのバランス感覚の巧みさが、本作を傑作たらしめているように思えました。 主人公格と思われたキャプテンのアントニオが中盤で死亡してしまったり、最初は眼鏡姿で頼りない印象だったナンド・パラードが皆を救う為の脱出行を成功させたりといった具合に、群像劇としての魅力が詰まってる作りなのも良い。 こういったサバイバル物において「誰が生き残るのか分からない」と思える作りになってるのは、物語としての大きな強みですからね。 「前半はアントニオが主役と思わせておいて、実はナンドが主役だったと後半に明かす」「全体を通してメインになる存在としては、医学生のロベルト・カネッサを用意する」という構成にしているのは、本当に上手かったと思います。 捜索が打ち切られた事を「良い知らせだ」「これで自分の力で脱出しなきゃならん事が、ハッキリした」と語る場面や、山を越えた後に更なる山脈が広がってるのを目にしても「歩いてみせるさ」と諦めず前進を続ける場面にも、感動させられましたね。 思えば上記二つの場面とも、主人公のナンドの魅力が光る場面でしたし「途中まで脇役かと思われた人物が、実は主人公である」という変則的な手法なのに納得させられたのは、彼の魅力に依るところが大きいように思えます。 それだけに、そんなナンド達の「奇蹟の脱出行」の描写が短く「絶対無理と思ってたけど、意外と何とかなった」としか思えない描き方になってるのが気になっちゃうんですが…… まぁ「そこに尺を取り過ぎても、冗長になってしまうから」という判断ゆえなのでしょうね、きっと。 ちなみに、本作は群像劇であるがゆえに、ナンド・パラード目線で書かれた「アンデスの奇蹟」(2006年)とは受ける印象が違っており、その差異に関しても興味深いものがありました。 脱出を成し遂げた二人に関しても、本作では「無謀で我の強いナンドに苦労させられる、常識人のカネッサ」って対比になってるのに対し「アンデスの奇蹟」を読んでみると「一途で誠実なナンドと、有能だが毒舌で偏屈なカネッサ」っていうコンビになっているんです。 自分としては後者の方が魅力的に思えたくらいなので、こちらのキャラクター像に合わせた映画も、何時か観てみたいですね。 それと「アンデスの奇蹟」においては「ナンドが旅立つ際に、片方だけ残していった子供靴の由来」「目を保護する為のサングラスの作り方」に関しても詳細な説明が為されており、映画で気になってた部分の答え合わせが行われているのも、見逃せないポイント。 本作は紛れも無い傑作であり、これ単品でも満足出来ちゃう仕上がりなのですが…… 原作となったドキュメンタリーの「生存者」(1974年)そしてナンドの自伝と言うべき「アンデスの奇蹟」を併読すると、より楽しめると思うので、オススメしておきたいです。 [DVD(吹替)] 8点(2022-03-24 20:37:51)(良:2票) |
94. 25年目のキス
《ネタバレ》 この手の「年齢を偽り学校に潜入する」ネタ、好きですね。 もう一度学生時代に戻ってみたい、青春の日々を味わいたいって願いを叶えてくれる形になっており、観ていて心地良い気分に浸れました。 本作は「恋のからさわぎ」(1999年)「O」(2001年)「アメリカン・ピーチパイ」(2006年)など、2000年前後に流行った「シェイクスピアを現代の学園物に置き換えた品々」の一種であり、1999年公開という事を考えれば、先駆的な作品と評価する事も出来そうなんですが…… とかくラブコメの「王道」「お約束」を重視した作りでもある為、あんまり「斬新な内容」とは感じられないのが、ちょっと勿体無い。 最後も観客の期待通りのハッピーエンドを迎えるんだけど、それも「ラブコメの終わり方といえば、ハッピーエンドに決まってるから」という予定調和に頼った感じで、なんか完成度が低いんですよね。 起承転結の「転」までは丁寧に作ってあるんだけど、肝心の「結」が締まらない感じであり (……で、どうして国語教師のサムは彼女を許し、キスしてくれたの?) って思えちゃって、スッキリしないんです。 ここをもっと綺麗に仕上げてくれていたら、胸を張って傑作と呼べたかも。 そんな具合にラストで失速した感はありますが、全体的には楽しめたし、好きな映画でしたね。 この手の映画の場合「主人公は皆に馬鹿にされる負け犬」であり、ともすれば極端な「負け犬賛歌」に終始してしまいがちなのですが、そこから一歩踏み込んで「学園の人気者達」も肯定する内容になっているのは、文句無しで長所だと思います。 これは主人公が「最初は冴えない子達と仲良くなるけど、取材の為に人気者グループに接近するのを強要される」という展開だからこそ生み出せた流れだと思うし、ちゃんと「取材の為に潜入した」って設定を活かす形にもなってますからね。 「負け犬を差別してはいけない、彼らだって素晴らしい人間だ」というのであれば、この手の学園物で悪役にされがちな「人気者」にだって、当然その言葉は当てはまる訳で、ラブコメ映画において不遇極まる彼らに救いの手を差し伸べた事には、素直に拍手を送りたいです。 「ミセス・ロビンソン」って単語が「未成年に手を出す大人の女性」の代名詞になってるとか、主人公の弟のロブが「卒業白書」(1983年)のコスプレをしたりとか、映画好きなら嬉しくなっちゃう小ネタが散りばめられてる辺りも、良いですね。 本作は主演のドリュー・バリモアが製作総指揮を務めた作品であり「完成度は高くないけど、何だか愛嬌がある」って辺りは「美人じゃないけど可愛い」っていう彼女らしさが反映されているようにも思えました。 数ある主演作の中でも、非常にドリュー・バルモアらしい映画の一つとして…… そして何より、可愛い映画の一つとして、記憶に残る事になりそうです。 [DVD(吹替)] 6点(2022-03-23 22:31:59)(良:1票) |
95. 映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021
《ネタバレ》 ドラ映画としては監督&脚本が新人コンビである為、不安も大きかったのですが……中々の仕上がりになってたと思います。 まず、何と言ってもアクション描写が素晴らしい。 小説版を読んだ時点では「アストロタンク」だの「アストロスラスター」だのといった兵器名が並んでるのを見ても、全然ピンと来なかったのに、映画本編を観た今となっては、こうして名前を書き込んでるだけでもワクワクが甦って来ちゃうくらいですからね。 火力重視の戦車モードと、機動力重視の戦闘機モードを使い分ける戦闘シーンが、本当に見事でした。 正直、最初は(どうして戦車に名前を付けたの?)(変形する必要あったの?)って疑念を抱いたりもしたんですが、それが映画を観ていく内に「名前を付けて正解だった」「変形させて正解だった」と思えてくるんだから凄い。 この「謎が解き明かされていく」ような感覚は、ちょっと独特な楽しさがありましたね。 例えば、原作漫画では「パピ君が銃を使って探査球を撃ち落とす場面」が、本作では「スパナを投げて探査球を破壊する場面」に変更されているんです。 (何故?)と思っていたら、後に「野良猫のクロの口に翻訳ゼリーを投げ込み、説得するパピ君」という場面に繋がって、そこで(おぉ、なるほど! だから事前にパピ君のコントロールの良さを示しておいたのか……)と納得出来ちゃう。 この改変、原作で一番不可解な部分である「窮地に追い込まれたパピ君が、突然謎の超能力でクロを洗脳して助かる」という場面を、自然に変える事にも成功しているんだから、本当に効果的だったと思います。 悪役のドラコルル長官も「原作以上に知的で、部下想いな一面がある軍人」というキャラに生まれ変わっていたんだから、嬉しかったですね。 ギルモア将軍から「有人兵器ではなく、無人兵器を用いるように」と命じられた際の 「我々の犠牲を恐れているのでしょうか?」 「……将軍が恐れているのは反乱だ。我々ですら信用ならんのさ」 という副官とのやり取りなんて、もう痺れちゃうくらいに良い。 万策尽きて敗れた後、巨人と化したジャイアンに対しても一切怯まず「長官から手を離せ!」と銃を向ける副官という描写も、ドラコルルの人望が伝わってくるものがあり、好きな場面。 最後まで毅然とした態度を貫き、降伏する代わりに部下の安全を保障して欲しいと交渉するドラコルルの姿は、作中で一番恰好良いと思えたくらいです。 それと、地球人であるのび太達だけでなく、ピリカ星の人々が頑張って「自分達の手で自由を掴もう」と独裁者に立ち向かう要素がアップしているのも、良かったと思います。 これに関しては、旧アニメ版の「宇宙小戦争」でも同じような試みが為されていたのですが、本作の方が更に徹底しているし、戴冠式におけるパピ君の演説などによって、市民による革命に至る流れも、とても自然になっていましたからね。 「原作を改変し、原作より面白くなった映画」という意味合いでは、間違い無く本作の方が上だと思います。 「アストロタンクの戦闘シーンが素晴らしかっただけに、ラストの巨人VS小型兵器という戦いが見劣りして感じる」「自由同盟のリーダーが恰好良くなっていただけに、出来れば本職の声優さんを配して欲しかった」など、細かい不満点は色々あるんですけど…… 明らかに長所の方が多いので、まぁ良いかって気持ちになっちゃいますね。 なんていうか「才能は豊かだか、経験が足りない若手監督」っぽさを感じる作風というか「ここは、もっとこうすれば良いのに」って思える箇所が多い映画なんだけど「ここは素晴らしい、本当に素晴らしい!」って箇所も同じくらいあるっていう…… 悪く言えば完成度の低い、良く言えば破天荒でパワーを感じる品に仕上がってたと思います。 あと、出木杉くんの扱いが良かったというか「皆の仲間外れにされてる」感じが薄くって、むしろ「出木杉くんも皆の仲間」って形になってたのも、凄く嬉しかったですね。 冒険に参加出来なかった理由も「塾の合宿で不在だったから」と、きちんと理由が説明されているし、ラストにて一緒に「宇宙大戦争」を観て、冒険の顛末をのび太達から教えてもらう事になるのも、良いオチだったと思います。 おまけ映像からすると、次回作は「創世日記」か「ブリキの迷宮」が有力に思えますが…… いっそ出木杉くんと一緒に冒険するような、オリジナルストーリーの映画でも良いなぁと思えちゃうくらいでしたね。 そんな「禁じ手」を用いたとしても、きっと面白くなると信じられる程に、今のドラ映画はクオリティが高い。 また来年も、映画館に足を運ぼうと思えるような、良い映画でした。 [映画館(邦画)] 8点(2022-03-04 12:48:39)(良:1票) |
96. トラックス<TVM>(1998)
《ネタバレ》 こういった代物の場合「○○のリメイクとして考えると微妙だけど、映画単品として考えれば面白い」ってパターンもある訳ですが…… 残念ながら、映画単品として評価しても微妙な出来栄えでしたね。 全体的なクオリティは五十歩百歩なのに「地獄のデビル・トラック」(1986年)にあった「馬鹿々々しさ」「愛嬌」が失われてるというのが、何より残念。 爆発シーンも控えめになってるし、今回の籠城場所には拳銃が一つあるだけなので「人間と機械が戦ってる」感じも薄いしで、どうもテンションが上がらない。 陰鬱な作風と併せて考えるに「地獄のデビル・トラック」はアクション映画だったが、本作はホラー映画であると解釈する事も出来そうなんだけど、それにしては「一応拳銃も出てくる」「終盤には爆発シーンもある」って形なので、何か中途半端なんですよね。 元ネタとは違う魅力を出そうとしたのであれば、変に媚びるというか、元ネタにあった要素を少しだけ再現するような真似はせず、もっと「陰鬱なSFホラー映画」という方向性に振り切った作りにすべきだったと思います。 機械からのモールス信号を解読した訳でもないのに「やっと分かったぞ」「奴らが欲しいのは燃料なんだよ」って言い出す場面も不自然だったし、脚本も褒めるのが難しいんですよね。 元ネタにあった馬鹿々々しさが薄れてる分だけ「脚本の整合性」という意味ではアップしてるだろうと思ってたのに、全然そんな事は無かったというか…… 全体的に「長所は失われ、欠点はそのまま」って形に思えちゃって、非常に残念でした。 それでも、あえて良かった箇所を探すとしたら…… ロズウェル事件と絡めて、一応は「機械が暴走した理由」に説得力を与えようとしてる所。 「有害なガス」という要素で、危険度を高めてる所。 あと「防護服が勝手に動いて、殺人鬼のように襲ってくる場面」は中々感心させられたとか、そのくらいになっちゃいそう。 最後も「助けに来てくれたヘリは無人だった」=「主人公達は決して助かった訳ではない」と感じさせるバッドエンドで後味悪いし、どうも好みじゃないです。 ……とはいえ、能天気なハッピーエンドだった「地獄のデビル・トラック」とは真逆のオチなので、こちらの方が好きという方もいそうですよね。 「トラックス」の方が先に作られており、後から「地獄のデビル・トラック」が作られていたとしたら「真面目なSFホラー映画が、馬鹿映画にされてしまった」って印象になってたかも知れないですし。 やはり、こういうリメイク物は評価が難しいし、どうしても厳しい目で見ちゃうから不利だなって思わされた一品でした。 [DVD(吹替)] 4点(2022-02-02 11:57:38)(良:1票) |
97. 地獄のデビル・トラック
《ネタバレ》 監督と脚本をスティーブン・キングが担当したという、それだけで映画史に残ってしまいそうな一本。 こういう場合、いっそ「破滅的に酷い出来栄え」であれば、カルト映画として人気になってたかも知れませんが…… 本作は「一応そこそこ楽しめる」ってタイプの品なので、評価に困っちゃいますね。 勿論、粗は多いです。 例えば冒頭にて、機械が勝手に動き出す場面も、映像だけ見れば不気味なのにBGMがロックなAC/DCなので、何かチグハグなんですよね。 キング当人がAC/DCのファンであるがゆえの選曲なのでしょうが、ミスマッチとしか思えなかったです。 男がトラックに轢かれる場面でも「止まってる車に男の方からぶつかってる」としか思えない撮り方してるし、演出の拙さが目立ちます。 脚本に関しても「新婚夫婦の車だけは暴走しておらず、人間が自由に動かせる」って事が伏線だろうと思ってたのに、全然そんな事は無くて、理由が説明されないまま終わっちゃうんだから、もう吃驚です。 主人公達が籠城するガソリンスタンドの地下には、武器がたんまり秘蔵されており、戦力的に主人公側の方が有利っていうのも、ちょっと歪なバランス。 わりと序盤の段階から「バズーカあるから勝てるじゃん」って思えちゃうし、途中で出てきたマシンガン搭載の車に対しても、わざわざ主人公が近付いて手榴弾で爆破なんかしなくても「バズーカ使えばいいじゃん」ってなってしまう。 そんな感想が間違ってなかった証のように、最後は普通にバズーカ撃って、敵の親玉トラックを倒して終わりだし…… 観客に違和感を抱かせない為には「切り札であるバズーカを中々使えない理由」を、ちゃんと描いておくべきだったと思います。 本業は小説家のキングだから、演出は拙くとも脚本には光るものがあるだろうと期待していたのに、それさえも裏切られた気分。 そんなこんなで、欠点を論ったらキリが無いんだけど、ちゃんと良い所もあるというか…… 「長所」っていうよりは「愛嬌」を備えてるタイプの映画だったので、不思議と憎めないんですよね。 まず、予算は問題無く確保出来たようで、トラックが破壊される場面はキチンと描いているっていうのが嬉しい。 「玩具の車を口に突っ込み死んでる犬」とか、同じキング作品の「クリスティーン」や「クジョー」を知ってるとニヤリと出来ちゃう場面があるのも、程好いファンサービスって感じがしましたね。 他にも「芝刈り機は襲ってくる」し「下水パイプの中を移動する」しで、さながらキング作品のオールスター状態。 それらの「元ネタ当てクイズ」をするだけでも楽しめちゃうし、ちゃんと「スティーブン・キングが脚本を書き、監督を務めた事」に、意義のある作品だったと思います。 キング作品ではお約束の「可愛らしい子供」も登場しているし、キング当人も冒頭にカメオ出演しているしで、嫌々撮った訳ではなく、きっと楽しんで撮ったんだろうなって思えるような、微笑ましさがあるんですよね。 最後の気象衛星オチも、非常に馬鹿々々しくて「何じゃそりゃ!」と、呆れながら、笑いながらツッコむ事が出来ました。 面白かった……とは言い難いんだけど、それなりの満足感は得られたし、また何時か気が向いたら、観返したくなっちゃいそうですね。 話のタネになるという意味でも、観ておいて損は無い映画だと思います。 [DVD(吹替)] 5点(2022-02-02 11:50:11)(良:1票) |
98. ペントハウス
《ネタバレ》 「オーシャンズ11」の監督を降板したブレット・ラトナーが、そのリベンジのように撮った映画って印象ですね。 オールスター感は薄めだけど、その分だけ主演のベン・スティラーの魅力が光る仕上がりになっており、個人的には大いに満足。 ビジュアル的に最高に恰好良い彼を収めたフィルムってだけでも、凄く価値があると思うんですよね。 微かに白髪交じりな「老け具合」さえも魅力的に思えちゃうし(この人、恰好良い歳の取り方してるよなぁ……)って、惚れ惚れしちゃいました。 ストーリーとしては「善人が泥棒になる話」であり、中々感情移入し難いはずなのですが、その点を上手く仕上げている辺りも、お見事。 「大金を盗んで楽に暮らしたい」なんていう身勝手な動機ではなく「皆の年金を取り戻す」という目的がある為、主人公のジョシュを自然と応援したくなるんですよね。 そもそも皆の年金が失われたのは「ジョシュが悪人のアーサー・ショウを信頼して、金を預けてしまったから」なので、一種の贖罪行為になってるという点も上手い。 この辺り、ジョシュに全く咎が無いとなると「無償で皆を救おうとする聖人」タイプの主人公になってしまい、ちょっと鼻白んじゃいますからね。 自殺未遂したレスターに同情している、と言い張るアーサーに対し 「……じゃあ、何故レスターが無事か訊かない?」 と静かに問い返す場面も印象的であり、彼の犯行動機が「自分の為」ではなく「他人の為」である事が伝わってくる、良い場面だったと思います。 上述の台詞もそうなんですが、この映画って「如何にも名台詞って感じではない、さりげない台詞が凄く良い」って特長があるんですよね。 特に終盤にて、何とか助かろうと取り引きを持ち掛けるアーサーに対し、主人公達が「チップは頂かない決まり」と答えるのも恰好良くて、痺れちゃいました。 そういった会話劇としての魅力だけでなく「宙吊りの車に掴まって、高層ビルから落ちそうになる」っていうスタント場面もあったりして、視覚的に分かり易い魅力も備わってるし、本当にバランスの良い映画だったと思います。 序盤にて、こっそり司法試験の勉強してたジョシュの部下が、いずれジョシュを助けてくれる展開なんだろうなと思っていたら、やっぱりそうなったって辺りも、実に気持ち良い。 一応、難点も挙げておくなら…… 副主人公かと思われた泥棒のスライドが、全然活躍しなかった事が該当するでしょうか。 活躍しないだけなら、まだ良いんだけど「ジョシュとの間に絆が生まれてるように思えなかった」っていうのが、何とも寂しかったですね。 例えば、金を独り占めしようと銃を向ける場面にて、幼馴染であるジョシュとの子供時代を思い出し、結局撃てなくて悪態をつきながら銃を下ろすとか、そういう場面があれば、もっと印象も違ってた気がします。 後は、そもそもの犯行計画が杜撰過ぎるって点も該当しそうだけど……まぁ、この点に関しては「アーサーを終身刑にした代わりに、主人公も窃盗罪で二年ほど服役する」という相討ちに近い結末だった為、さほど違和感は抱かずに済みましたね。 特に悩んだりもせず、淡々と「クィーンを犠牲にする」事を決意した辺り、いざとなったら自分が全ての罪を背負って逮捕されるって、最初から覚悟の上だったんだと思われます。 ラストにて、屋上のプールに隠してた車を取り出す爽快感も素晴らしいし…… 色々欠点があるのを承知の上で、それでもなお「傑作」と呼びたくなる。 ベン・スティラーの代表作の一つとして、彼を好きな方には、是非オススメしたいです。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2022-01-12 17:54:23)(良:2票) |
99. ラブ・アクチュアリー
《ネタバレ》 「ラブ・アクチュアリーを観た日」という曲を聴いた勢いで、元ネタである本作も鑑賞。 所謂「グランド・ホテル」形式の群像劇であり、エピソードの殆どを「恋愛」で纏めている点と「クリスマス」という特別な日にスポットを当てた点が、当時としては斬新だったのでしょうね。 この映画から数年後に「バレンタイン」や「大晦日」にスポットを当てたラブコメ群像劇が作られていますし、影響力の強さが窺えます。 登場人物が多く、同時進行するエピソードも多くて、難易度の高い作品なのですが、それをギリギリで混乱させず、破綻させずに仕上げてる手腕も見事。 特に「場面転換の際に音楽を用いて、各話の繋ぎを自然にしてる事」には感心させられましたね。 主人公の一人が歌手である点も含め、全体的に音楽の使い方が上手かったと思います。 個人的に一番好きなのは、義理の親子であるダニエルとサムが、少しずつ距離を縮めていくエピソード。 そして、ラブストーリーとして一番好きなのは「小説家と家政婦の恋」になりそうですね。 後者に関しては「言葉が通じない彼女とも、キスによって互いの想いを確認する」「片言のポルトガル語で告白したら、相手も片言の英語で答えてくれて、互いに相手の為に言葉を習ってたと分かる」って場面が凄く良かったし、映画全体の構成を考えても、この二組の話が主軸になってた気がします。 それと、オールスターキャストも魅力的でしたが、やはり一番印象深いのは、ローワン・アトキンソン。 カメオ出演のような形で「店員役」として登場し、それで出番終了とばかり思っていたのに、終盤まさかの再登場でしたからね。 しかも、デパートでは傍迷惑だった「緩慢な動作」が、空港では恋する少年を助ける形になってたりするんだから、これには脱帽。 つまり「誰かにとっては迷惑な人物が、他の誰かにとっては有益な人物と成り得る」って事を描いている訳で、群像劇ならではの魅力があるんです。 正直、各キャラの繋がりが「たまたま知り合いだった」「血縁だった」程度な事にはガッカリしちゃったけど…… 彼の存在だけでも、本作を群像劇にしたのは正解だったと言えるんじゃないでしょうか。 その他、欠点としては ・歌手からマネージャーへの想いが、友情なのか同性愛なのか分かり難い。 ・サムがダニエルの事を初めて「パパ」と呼んだ場面が、アッサリし過ぎていて戸惑う。 ・クラウディア・シファー演じるキャロルが出てくる場面は意味深なのに「本当に偶々、ダニエル憧れのクラウディア・シファーに似てるだけ」ってオチなのが残念。 等々が挙げられそうですが…… これらに関しては「脚本が説明不足」というより「演出が拙くて、場面の意味が伝わり難い」って印象を受けましたね。 やはり、リチャード・カーティスは「監督」というよりも「脚本家」気質の人なんだと思います。 後は「アメリカに行けば俺はモテまくるはず!」って一念で渡米した若者が、本当にモテモテになっちゃうオチだったのは吃驚したとか、精神を病んだ弟がいるサラだけは意中のカールと結ばれず可哀想とか……気になったのは、そのくらいかな? サラという例外もありましたけど、彼女は彼女で「恋愛」よりも「姉弟愛」を選んだと言えそうな感じですし、色んな形の「愛」を肯定し、優しく包み込んでるような雰囲気が心地良かったです。 「ハッピーエンドな恋愛映画」の代表として、曲のタイトルに選ばれるのも納得なくらいの、良い映画でした。 ……ちなみに、2017年の続編ドラマ(米国版)では、サラがカール以外の男性と結婚する展開になってたりもするんですよね。 本作を鑑賞後にモヤモヤが残ってしまった人は、そちらも是非チェックして欲しいです。 [DVD(吹替)] 7点(2021-12-25 21:12:45)(良:3票) |
100. クロコダイル2
《ネタバレ》 冒頭、銀行強盗のシーンが中々スピーディーで良い感じになっており(これは1より面白くなったパターンか)と期待させられた訳ですが…… 結果的には、そんな期待を裏切らぬ仕上がりとなっており、嬉しかったですね。 低予算な作りなのは前作と同じだけど、血の嘘っぽさも緩和されているし、稚拙な特撮ながらも(頑張って本物っぽく見せよう)っていう、作り手側の熱意が伝わってきました。 前作で豊富だった「お色気サービスシーン」も殆ど無くなっているし、硬派で真面目に仕上げてきたって印象です。 「サメ映画かと思いきや、ワニ映画」っていう前作の構成を踏まえ「ハイジャック映画かと思いきや、ワニ映画」ってストーリー展開にしているのも、上手かったと思います。 前作はサメを全面に出す予算が無かったせいか「サメ映画と思わせるミスリード」が徹底しておらず、折角の仕掛けがイマイチ機能していなかったんですが、今作の場合は人間が演じる形で「ハイジャック映画と思わせるミスリード」が、キチンと行われていますからね。 同じ「○○かと思わせて××」展開でも、今作の方が、ずっと賢いやり方だったんじゃないかと。 ワニが本格的に出てくる前の「無力な主人公達と、銃を持ったハイジャック犯の戦い」も中々面白く仕上がっているし、ワニ映画として考えても「巨大ワニが空飛ぶヘリに食らいつく」なんて見せ場があったりして、明らかに前作よりパワーアップしてる。 「中々火が付かないライター」「沼地に充満するメタンガス」が伏線になっており、ワニを火葬にしちゃう倒し方も、派手で良かったです。 そんな訳で、前作と比較すると大幅に改善されている本作なのですが…… コレ単品で評価すると、欠点も色々目立っちゃうというのが、ちょっと困りもの。 例えば、ヘリを操縦するローランドが主人公カップルを裏切ったと見せかけて、犯人側のボスを撃つ展開は痛快で良いんですけど、その後すぐローランドがワニに襲われて死んじゃうっていうのが、ちょっとチグハグなんですよね。 これじゃあ主人公達は「ローランドは俺達を裏切った」「卑劣な男だ」って認識のままだろうし、ボスを倒した後に二人を助けに戻ろうとしてたローランドが、凄く可哀想。 こういう展開で、観客をスッキリさせてくれない脚本っていうのは、如何なものかと思います。 最後の「夢オチ」も、それ必要だったかなって思えちゃうし…… これならワニを倒した後、沼地で救援を待ちながら、キスする二人で終わらせた方が良かった気がしますね。 1→2という流れで観た為「前作より良くなってる!」という興奮を味わえたけど、単体で評価する限りでは「まぁ、それなりに面白い映画」くらいに落ち着きそうな…… そんな一品でありました。 [DVD(吹替)] 5点(2021-12-17 00:06:22) |