981. レディ・バード
ちょっとひねった青春モノをやってみたかったのでしょうが、内容がなんとも凡庸な上に、各シーンの突っ込みも浅いまま次から次に進んでしまうので、結局制作側の自己満足にしかなっていません。私はレディ・バード、といくら口で言ったところで、主人公がなぜそうしたいのかについても洞察も描写もされていないのですから、設定の意味がないのです。シアーシャ・ローナンは、もっと高度な複雑な演技も要求できる人なのですが。 [ブルーレイ(字幕)] 3点(2020-02-07 00:16:17) |
982. 夕陽の用心棒
《ネタバレ》 まずは敵の悪党集団が人質を取り農園に立てこもるのですが、そこからが凄い。すでに拳銃の達人であることが描写されている主人公が、丸腰で敵地に臨んでいく。で、何をするかというと、いきなり口八丁手八丁で敵ボスを丸め込もうとする。何たる平和的解決でしょうか(笑)。その一方で、人質の一人は真剣に敵ボスの愛人を口説き始め、しかもそこそこ上手くいっている。その間に随所で展開される、どうでもいい内容の会話群の数々。敵集団になぜか漂っている、どことなく間の抜けたのんびりした雰囲気。タランティーノは絶対にこれ見てるだろ。主人公は終盤で敵の手に落ちリンチに遭いますが、そこでも全力で繰り広げられるその場しのぎ乗り切りトーク。あっぱれです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-02-05 23:31:49) |
983. 海外特派員
えらく壮大でダイナミックな作りであり、かつ複雑な内容にも挑戦しているのですが、何が起こってもそのまま前に進んでいるだけなので、スリルもサスペンスも感じない。当時の映画としては斬新な領域ではあったのでしょうが。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2020-02-05 23:28:50) |
984. ミネソタ無頼
《ネタバレ》 最初に囚人っぽい主人公が、採石場みたいなところから脱出する・・・が、追っ手が来るわけでもなく、そこで終わり。人質にした医者っぽい人とここからロードムービーが?と見せかけるも、それも何もなし。続いて訳ありの感じの女性が出てきたので助けるも、それもそこで終わり(後で出ては来ますが)。そしてかつての妻や娘がどうのこうの・・・が入ってくる、と、つまりは継ぎ接ぎ感満載なのです。主人公の目標はかつての自分の事件の証人を探して汚名をそそぐ、というものなのですが、そういう一般市民的というか秩序的な発想も、どうもウエスタンに似つかわしくない。結果、作品全体に何となくじめじめ感が漂っています。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2020-01-25 23:58:22) |
985. 巴里の屋根の下
全体がやたらと慌ただしくて目まぐるしくて、ラブロマンスとしての奥行きが感じられませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2020-01-25 23:44:37) |
986. ミルカ
《ネタバレ》 冒頭でいきなり本題の「振り向き事件」をずばりと出して、返す刀で回想カットバック。と思っていたら、そこからさらに二重回想。で、進むごとにいろいろ時系列もいじっていたりして、単調さを避けようとしたのは分かるのですが、この作品ではあまり成功してないかな・・・。結局、話の軸がきちんと確立されていないので、ぶれたらぶれるだけになっているのです。それに、意味ありげに出てくる女子水泳選手とか金髪の2人組とかは何だったんだろう?●あと、単にひたすら走るだけでなく、そのためのトレーニングの詳細や戦術面についても、きちんとふれてほしいところでした。●などと文句も言いつつも、とにかく制作者の主人公ミルカを讃える姿勢は最初から最後まで一直線に貫かれており、その情熱は過剰なほど伝わってくるので、低い点はつけられない。 [DVD(字幕)] 6点(2020-01-25 01:36:11) |
987. ダンガル きっと、つよくなる
《ネタバレ》 田舎の姉妹が父親の猛特訓の下レスリングをするようになり、男の子も打ち負かすようになって勝ち進むというスポコン成功譚かと思っていたら、そのとおりだったのですが、それは前振りにすぎず、その後が本番でした。娘の成長と自立こそがこの強い父親の最大の敵だったという構造的変容。娘にとっても、抑圧であったはずの父親が実は庇護の存在だったという気づきと変化。その中で、田舎の試合でもスタジアムの決戦でも練習でも、レスリングそのものを丁寧に撮りきっているのが実に素晴らしい(しかしベストバウトはもちろん中盤の父娘対決)。また、こういったトーナメントではラスボス以外は雑魚キャラ扱いなのが常なのですが、この作品の最終大会では、1回戦の相手も準決勝の相手もラスボスクラスの強さを見せつけており、こういったところにも手抜きのなさを感じさせます。 [DVD(字幕)] 7点(2020-01-23 02:02:17)(良:1票) |
988. ユリシーズ(1954)
《ネタバレ》 何といっても原作は紀元前の叙事詩!はたしてどんな壮大な世界が!と期待は高まるのですが、意外なほどぱっとしません。前半はやたらと弛緩した緊張感のない場面が続きますし、後半の一つ目巨人やら魔女の登場部分は、ほとんどコントみたいになっています。やはり、原作が吟遊詩人の口伝えの詩であり、もともと詳細は決まっていないことを考えると、よほど制作側にイマジネーションや構築力が必要になってくるのですね。そこが徹底されておらず、画面化するだけで手一杯なので、焦点が定まらずにフワフワした雰囲気のまま終わってしまうのです。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-01-22 01:30:48) |
989. アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
《ネタバレ》 通常の演技部分に加え、インタビュー(と見せかけたこれも演技)パートが加わり、さらには元々の演技部分でも演者がカメラに語りかけるメタ構成。これだけあれこれいじくれば、普通は何じゃそりゃとなるところだが、不思議に違和感がない。それは、ある登場人物の台詞でも「ここに出てくるのは馬鹿ばっかり」とあるとおり、主要キャストがことごとく馬鹿、それも突き抜けた馬鹿ばかりだからです。再三繰り返される「自分のせいではない」というフレーズが、全員の根底において見事に一貫しています。そりゃ、こういう構成でもとってキャラクターを押さえ込まなければ、どこまでも暴走して収拾がつかなくなっただろうということなのですね。 [DVD(字幕)] 6点(2020-01-20 00:00:19) |
990. ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ
コメディアン志望の若者とかパキスタン云々とか途中で相手方の彼女に起こる事態とか、いろいろそれっぽいエキスが存在しているというのに、それがただ淡々と綴られているだけであって、何も機能してません。とりわけ、肝心の主人公の象徴たるステージ・コメディに何ら変化がなく、単に繰り返されているだけというのは実に痛い(加えて、主人公のステージに向けた「熱」とか「喜び」とか「体温」みたいなものも感じられない)。したがって、全体に軸が存在していないので、中身として面白くもならないのです。それと、尺も長すぎ。 [DVD(字幕)] 3点(2020-01-18 23:21:51) |
991. あゝひめゆりの塔
《ネタバレ》 多分哀しい女学生の情緒一直線的描写になるんじゃないかとか、こんな重いテーマで吉永小百合はきちんと演技ができるのかとか、いろいろ危惧していたのですが、意外にきちんとした内容でした。まず、前半の青春生活のところを、明るくなりすぎない程度にきちんと押さえている。エキストラ使いまくりの運動会の「拡がり感」がよい(そして後になってみれば、「それだけの若者がここにいた」という痕跡としても機能している)。それに先だっては、なぜか登場する現代パートの渡哲也。このアバンギャルドな構成も、それほど浮いておらず、ある種の楔として残っている。中盤の卒業式や池の水浴びのシーンの焦点の絞り方もなかなかですが、この辺から、(やっぱり)何かあるたびに泣いたり叫んだりしているのは、結局最後の解散命令やお別れ会の重みを削いでいるんじゃないのかな。それと、最後に2時間ドラマのラストのごとく岸壁に立つ2人、あれはいかんでしょ。そこに行く理由がないですし、その前に絶望しきっている心理の描写があることともつながりません。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-01-13 02:53:14) |
992. 愛と死の記録
前置きも背景も何もなしで2人が勝手に盛り上がっているので、追いかけようがないのです。途中から不協和音的音楽を延々とかぶせてくるのも、何かを狙っているのかもしれませんが、内容がついていってないので、浮きまくっています。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2020-01-10 00:49:59) |
993. みんな愛してる
ホラー・コメディのタレントであるシングルファザーとその2人の男の子が周辺といろいろあって・・・というなかなか拡がりのありそうな設定で期待させるのですが、一つ一つの描写がことごとく中途半端で、結局、全体が継ぎ接ぎにしかなっていない。ゲイリー・シニーズの存在感も、かえって浮いてしまっている。この家族の何を表現したいのかが分かりませんでした。●ところで一番の見所は、当時17歳のウィザースプーン!顔つきはほぼ大人のレディで、どう見ても主人公の彼(設定は小学生くらい?)とつり合っていないのはご愛敬。しかし、出番は少なめにもかかわらず、キスシーンがそれも2回もある!主演の君、これは一生自慢できるぞ! [DVD(字幕)] 3点(2020-01-09 01:12:08) |
994. サボテン・ブラザース
《ネタバレ》 発想一発でシンプルに勝負、内容は素直に勧善懲悪。こういうのはそれでいいのです。クライマックスの「作戦」なんてのは、ネタとしても優れている上に(アミーゴの理念が村全体に拡がったという象徴機能も込み)、ビジュアル面でもインパクトがあって美味しかったりします。 [DVD(字幕)] 8点(2020-01-07 01:26:23)(良:1票) |
995. 青い目撃者
《ネタバレ》 主人公の検事が、性的虐待の被害児童と成り行きで逃避行していくお話。いきなりの法廷シーンからの掴みは巧いし、児童の被支配心理の描き方にも無理はない(20年前の時点で児童虐待にここまで正面から踏み込んだ映画って、あまりないはず)。後半に顕著な夕陽の草原をはじめとして、映像面にも頑張った跡が窺える。それでも何か物足りないのは、それぞれのシークエンスが今ひとつ浅くて、せっかくのドラマの機会が不完全燃焼で先に行っているからなのです。よって、サブキャラもいろいろ考えて配置していながら、それがあまり生きていない。 [DVD(字幕)] 5点(2020-01-04 01:44:28) |
996. マザー!(2017)
《ネタバレ》 中盤くらいで、「なるほどこれは、人が集まるとゾンビより怖いという趣向か」と思いながら見ていて、赤ちゃんが奪われるあたりでやっとこさ「ああこれ、神とマリア/キリストの話だったのか」と気づきました(クレジットもきちんと"Him"ですしね)。ただそれならば、バルデムはネタバレした後でも悪魔にしか見えないし(おい)、もっと一見して善人っぽい人をキャスティングすべきだったし、逆にローレンスはどうやってもそういう「歴史上の母親」っぽくは見えない。あとそれ以前に、ローレンスのアップばかり追うカメラも、もう少し何とかすべきでした。コンセプト自体は面白いのでこの点数。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2020-01-02 22:35:38)(良:1票) |
997. アラン・ドロンのゾロ
《ネタバレ》 単純な正義の味方の勧善懲悪ものなんですから、もっとコンパクトでよかったと思うのですが・・・ゾロの活劇シーンが売りであるのは当然としても、同じようなパターンが何度も繰り返されると、味わいも落ちてくる(馬車内のインチキ一人二役みたいなスパイスがほかにも欲しいところでした)。そして一番の問題は最後の対決シーンであり、あれだけ延々とやられると、かえって実は両方とも弱いのでは?という疑惑まで招いてしまいます。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-01-01 00:38:29) |
998. 若草物語(1964)
えーと、このタイトルで四姉妹が主人公なんだけど、オルコットのあれとは全然関係ない、ということでいいんですよね?で、せっかく四姉妹にしていながら、対比もなければ個性もないので、設定の意味がありません。そもそも、関西出身とかにする必要もなかったというか、その必然性も感じられないんだけどなあ。慣れない関西弁を喋らされて、芝居がぎこちなくなっているだけです。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2019-12-31 02:39:02) |
999. エクス・マキナ(2015)
AIがどうとか視覚効果がどうとかいう以前に、まず、あの会話群が心地よいわけですよ。「羊たちの沈黙」を彷彿とさせる、双方が分析と観察を脳内で駆使している、ガラス越しのやりとり。また、主人公と社長の間で展開される、斬り合い寸前の切り返しの連続。そして、ここがコケたら全部コケてしまう重圧の中で、ポイントとなる人工人間役をきっちり演じ切ったアリシア・ヴィキャンデルも見事でした。他方、全体的にカメラワークに今ひとつ冴えがないのが残念でした。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2019-12-29 01:16:28)(良:1票) |
1000. 死の追跡(1973)
何かもう、すべてが中途半端なのですね。悪党のワルぶりも、キャラづけも、1人1人の処理も中途半端。主人公の行動経路や見せ場、そして肝心のクライマックス(になるはずの部分)の持って行き方も中途半端。むしろ、最初のところで主人公の指示の下に協力して悪党を追い詰めるシークエンスで、すべて終わっていました。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2019-12-27 04:06:07) |