981. 侍(1965)
確かに前半は説明が多くやや退屈してしまったが、監督 岡本喜八、脚本 橋本忍という「日本のいちばん長い日」コンビの作品だけあってとても重厚な時代劇となっていて全体的に見ればとても面白い映画だった。やっぱり三船はこういう時代劇の主役をやっているととてもカッコイイし、井伊直弼(八代目松本幸四郎)を暗殺するラストの雪の降る桜田門外のシーンも迫力充分で緊張感が伝わってきてとても印象的だった。三船以外の出演者ではやはり伊藤雄之助がいかにもな悪人ぶりで抜群の存在感を発揮していていいし、最近見た川島雄三作品で改めていいなあと思った新珠三千代もやっぱりキレイ。三船演じる鶴千代の友人栗原役の若い小林桂樹も多少違和感がありながらも好演しており、鶴千代が栗原を斬るシーンの「なぜだ」というセリフが悲しい。しかし、この二人の関係をもっと深く描いていたら、さらなる傑作になったように思えてちょっと惜しい気もする。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-02-21 17:23:10) |
982. クレージーの無責任清水港
クレージーキャッツの時代劇コメディーシリーズ3作目で、今回は清水次郎長のパロディー。脚本が最後まで完成していない状態のまま撮影を開始するなど信じられない状況下での撮影だったらしいが、スタッフの意気込みがやはり今とは違うのか、多少のチグハグはあるものの、それでも楽しめる映画になっているのは感心させられる。先週見た「ホラ吹き太閤記」では植木等とハナ肇が中心だったが、この作品では植木等演じる追分の三五郎と谷啓演じる森の石松が中心で二人のかけあいが面白い。ただ、楽しかった反面、何か物足りないような気がしないでもない。本家の次郎長ものは見たことがないが、「社長シリーズ」でやっていた「サラリーマン清水港」のほうが面白かった。 [DVD(邦画)] 6点(2008-02-19 13:37:18) |
983. ホラ吹き太閤記
植木等が後の豊臣秀吉である木下藤吉郎を演じるコメディー時代劇。筋としては無責任シリーズをそのまま戦国時代に置き換えた感じだが、無責任シリーズ同様(というかこれもあのシリーズの一編なのか)植木等のポジティブなキャラクターと古澤憲吾監督の勢いあふれる演出が見事に合致した娯楽作となっていてとても楽しめた。ナレーション(芥川隆行みたいな声)が舞台を現代の会社に例えて解説しているのが面白いし、合戦シーンもなかなかの迫力だった。ハナ肇の信長は最初どうかなと思っていたが、コメディー作品だからかそれほどの違和感はなかった。出番は少ないが、谷啓演じる家康(なんかすごいキャスティング)も笑える。主題歌「だまって俺について来い」は世代的には天童よしみが歌ったカバー(アニメこち亀オープニングテーマ)を知っているが、やはり植木等が歌うオリジナルも聴いただけで元気が出てくる大好きな曲だ。 [DVD(邦画)] 7点(2008-02-13 11:44:36) |
984. トッポ・ジージョのボタン戦争
《ネタバレ》 最初はほのぼのとした作品かと思っていたが、いきなり核爆弾のスイッチを狙う悪人グループが登場し、ラスト付近で警官隊との銃撃戦があるなど、トッポ・ジージョという可愛らしいキャラクターが主人公の映画としてはけっこう内容が異色かもしれない。日本側主導で作られているのか陽気な国という印象のあるイタリアのキャラクターを使っているにしてはジージョと赤い風船のエピソードなんかは見ていて切なくなるような展開でなんか日本的でちょっと暗い印象が残ってしまう。でも、バナナにトランシーバーを仕込んで悪人たちに指令を送るボスがちょっとユーモラスで楽しかったりもした。人形劇と実写を組み合わせたような実験的な映像も市川崑監督らしい。2/14追記:市川監督の訃報・・・。つい最近もテレビで「木枯し紋次郎」について語っている姿を拝見して元気そうだと思っていた矢先のことだったんでとても驚いた。この映画も先週見たばかりなのもあってご高齢だったとはいえ、ショックが大きい。市川監督のご冥福をつつしんで心よりお祈りしたい。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-02-11 15:28:17) |
985. 花のお江戸の無責任
黒澤明監督や本多猪四郎監督、谷口千吉監督が師事していた山本嘉次郎監督による植木等主演の時代劇コメディー。ほかのクレージーの面々ももちろん出演していてそれなりに楽しめるものの、古澤憲吾監督や坪島孝監督が手がけるクレージー映画と比べるとちょっと勢い不足の感があった。有島一郎演じる青山播磨のキャラクターが強烈。 [DVD(邦画)] 6点(2008-02-05 02:35:42) |
986. わが町(1956)
大阪を舞台に明治・大正・昭和の時代を豪快に生き抜いた一人の男の一生を描いた川島雄三監督の映画。川島監督の映画というと、これまで見た限りではちょっと風変わりな映画が多いという印象だが、この映画はとてもオーソドックスな人情劇となっていて久しぶりにとても温かい感動を味わうことができた。主人公のターやんがとても魅力的で演じる辰巳柳太郎が「無法松の一生」のバンツマを思わせていて素晴らしく、特に人力車を引く姿は思わずダブってしまう。ほかにも、妻と孫娘の一人二役を演じる南田洋子(孫娘がターやんを批判して殴ってしまう後半のシーンがなんだか切ない。)は勿論、殿山泰司、小沢昭一、北林谷栄なども実にいい。三橋達也も今回はダメ男ではない孫娘の幼馴染を実にうまく演じていて好印象。既に他の二人の方も書かれているが写真屋で孫娘がマラソン大会の写真を見て自分の両親の存在を知るシーンとラストのプラネタリウムのシーンはこの映画の中でも特に感動的で思わず涙が出そうだった。川島監督、こういう直球ストレートな映画でもこんな名作を作ってしまうなんてやっぱりただ者ではない監督だと思う。 [DVD(邦画)] 9点(2008-01-30 18:57:41)(良:1票) |
987. 風船
三橋達也のダメ男ぶりが「洲崎パラダイス 赤信号」よりパワーアップしていて見ていて本当に腹が立つし、二本柳寛の役柄や森雅之演じる主人公の妻もなんか嫌なキャラクターであるので見ててちょっと鬱な気分になるし、ストーリーも川島雄三監督の映画としては暗いと思うものの、そのような状況下にいても明るく健気に笑顔を振りまいている純真無垢な娘・珠子を演じている芦川いづみの存在があることによって、かなりその暗さが和らいでいる。はっきりいって彼女がいるといないとではこの映画の印象は全く違うものになっていただろう。川島監督の映画としては個人的には「洲崎パラダイス 赤信号」や「愛のお荷物」のほうが好みではあるが、芦川いづみに2点ほどプラスして8点。そうそう、劇中出てきた映画館でかかっていた「ビルマの竪琴」の予告編が楽屋オチ的で川島監督らしい。 [DVD(邦画)] 8点(2008-01-23 00:25:37)(良:2票) |
988. 里見八犬伝(1983)
同じ深作欣二監督の「魔界転生」と似た感じの時代劇だが、あちらに比べるとパワーダウンしてる感はあるものの、これも深作監督らしいパワフルな作品で面白かった。深作作品のヒロイン役がアイドル時代の薬師丸ひろ子というのが見る前はちょっと違和感を感じていたのだが、実際見てみるとそうでもなかった。それに共演が真田広之だったので10年以上前に見た「病院へ行こう」を思い出してなんか懐かしい気分になり、またあの映画見たくなった。しかし、この映画で印象に残るのはなんといっても悪の妖怪軍団の親玉を演じた夏木マリのインパクトが強烈すぎる事。「千と千尋の神隠し」で湯婆婆の声をしてたときも印象に残ったが、ここまでの強烈さはなかったように思う。ひょっとしたらこの映画での演技を見て「千と千尋」でのあの役をキャスティングしたのかもと思ってしまった。息子役の目黒祐樹をはじめとした配下の妖怪を演じる俳優たちも実に楽しそうに演じているのが画面から伝わってくる。 [DVD(邦画)] 7点(2008-01-15 13:53:34) |
989. セーラー服と機関銃
相米慎二監督の第2作。普通アイドル映画というのは主演俳優のアップを多用した作品が主だと思うのだが、この映画は主演女優である薬師丸ひろ子のアップが極端に少なく、望遠レンズを使って遠くから撮影された映像が多く時には顔が識別できないほどであったり、驚異的な長回しがあったりして本当にこれがアイドル映画なのかと半ば疑いたくなったと同時にちょっと新鮮に感じた。でも内容的にはいかにもアイドル映画という感じで何か軽いのがなんともアンバランスな印象。ただ、三國連太郎の演じたキャラはアイドル映画に出てくるようなキャラとはとても思えなかったので強烈に印象に残った。テレビで放送されていた「釣りバカ日誌17」を見たばかりだったのだが、見比べてみるとスーさんよりはこういう大物悪役のほうがうまい気がする。 [DVD(邦画)] 6点(2008-01-08 03:48:42) |
990. 釣りバカ日誌17 あとは能登なれ ハマとなれ!
《ネタバレ》 メインである石田ゆり子と大泉洋の恋のエピソードがなんか適当に感じるし、だからといって浜ちゃんとスーさんにも見せ場らしいシーンがないので(そういえばいつもの「合体」シーンもなかった。)全体的にあまり楽しめない。このシリーズは特に期待はしていないが、いつもそれなりに楽しんでいるシリーズだけにちょっと今回は残念だった。 [地上波(邦画)] 3点(2008-01-07 19:33:21) |
991. 連合艦隊
あまりいい評価を聞いていなかった作品で、確かに大作映画にありがちな大味感があるし、いかにもミニチュア丸出しの戦闘機とか特撮もしょぼい。しかし、人間ドラマが予想以上にしっかりとしていて、見ごたえのある戦争映画だと思う。松林宗恵監督といえば「社長シリーズ」しか見たことなく、戦争映画は初めて見たが、軽い雰囲気の喜劇である「社長シリーズ」とは180度違う演出で、戦闘によって人が死ぬシーンなどの描写が重苦しいのにはただただ驚くばかりだ。松林監督のほかの戦争映画も見てみたくなった。「社長シリーズ」ではコミカルな味わいを見せる森繁久弥や小林桂樹が渋い存在感を放っているのもなんだか嬉しい。これがデビュー作となる中井貴一はちょっとかたいものの、「女王蜂」(松林監督が協力監督として参加。)の姉・中井貴恵ほど酷くはなかったし、ラストシーンの独白も感動的だった。そこにかかる「群青」がものすごくシーンとマッチしていて実に素晴らしい。 [DVD(邦画)] 7点(2008-01-02 14:39:49) |
992. ガス人間第一号
「美女と液体人間」、「電送人間」では警察と変身人間の攻防を中心に描かれていたが、この「ガス人間第一号」は、それよりも実験台にされてガス人間になってしまった男と彼を愛する一人の女の悲しいラブストーリーに重点が置かれており、深い人間ドラマが描かれる秀作になっている。正直言ってここまで深い内容だともはや完全に大人向けの恋愛映画である。考えてみれば本多猪四郎監督は最初の本格的な空想特撮映画である「ゴジラ」でも芹沢博士と山根恵美子の悲恋(一応、三角関係ではあるが。)を描いており、ここにこの監督の本質があるのだなと改めて感じる。それにしてもラストシーンは思わず泣けてきた。出演者の中ではガス人間水野を演じた土屋嘉男、特撮作品には珍しい八千草薫はもちろんだが、藤千代に仕える爺やを演じた左卜全がとくに素晴らしく、彼の演技がよりいっそうこの映画の完成度を高めているといっても過言ではないだろう。 [DVD(邦画)] 8点(2007-12-27 01:52:19)(良:5票) |
993. クレージー黄金作戦
東宝創立35周年記念映画として作られたアメリカロケによるクレージー・キャッツの大作映画。ハリウッドの名声の歩道で植木等がはじけたり、ラスベガス大通りでクレージーが歌い踊ったりとかなり豪華な作品に仕上がっている。いつものように楽しめるのだが、いかんせん2時間40分というこの手の軽い映画にはあり得ないような長尺作品で、いつものクレージー映画ならサクサクと進んでいくであろうシーンが長く、テンポも全体的にあまり良くないので途中でだれてしまうのも確か。やっぱりこういう喜劇映画は2時間以内に終わってくれるほうがちょうどいいと感じる。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2007-12-23 02:01:02) |
994. 愛のお荷物
冒頭のハイテンションなナレーション(「幕末太陽伝」と同じ加藤武)から一気に引き込まれた。その後すぐの国会での菅井きん演じる女性議員(「ゴジラ」)と山村聡演じる大臣との質疑のシーンから川島雄三監督らしいテンポのいい演出で見ていて楽しいし、それでいながら答弁に対して周りの議員から野次が飛んだりするのもリアルに演出されていて感心した。ほかにも川島監督ならではの笑いが随所に盛り込まれた喜劇映画で、電話越しに婚約者にドラムを演奏して聴かせるフランキー堺(本物のドラマーだけあって上手い。)とか、仮病を使う東野英治郎が最高に笑える。一人三役を演じている三橋達也とかこの後、「暖簾」で再び川島監督と組むことになる山田五十鈴も出ていてなかなか豪華で贅沢なキャスティング。後に裕次郎夫人となる北原三枝は「狂った果実」を見て以降悪女というイメージが個人的には強いのだけれどもこの作品では全く違う魅力を出していてとても良かった。全体的な内容としては少子化の現代に見るとちょっと時代を感じてしまうのも事実であるが、非常に楽しい映画だった。 [DVD(邦画)] 8点(2007-12-18 14:06:03) |
995. 美女と液体人間
ストーリーに核実験が大きく関わっているところは「ゴジラ」を思わせるが、人間を襲うのが核実験によって生まれた巨大怪獣ではなく、核実験によって突然変異した液体人間ということで、怪獣映画とは違うサスペンスホラー的な恐怖感を生み出すことに成功していると思う。円谷英二監督をはじめとした特撮スタッフによるドロドロと動き回る液体人間の描写は今見ると「ターミネーター2」のT1000型を思わせていて、さかのぼること約30年前の日本映画に先駆的作品があったことに驚いた。 [DVD(邦画)] 7点(2007-12-11 14:21:30) |
996. 銀座の若大将
シリーズとしてはまだ2作目なんだが、既に数作このシリーズ見てるせいか次はこうくるだろうなあというお約束が既に分かっているのでなんだか安心して楽しめる。社長(上原謙)と久太郎(有島一郎)が雄一(加山雄三)についてほめあうシーンや雄一の「椿三十郎」という自己紹介などの楽屋ネタ(昔からあるんだなあ。こういうの。)、それに1作目と同じようなギャグである残飯鍋のシーンが笑える。それにしても澄ちゃん(星由里子)にいいように使われる石山(田中邦衛)はちょっと気の毒。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-12-06 03:06:31) |
997. 洲崎パラダイス 赤信号
《ネタバレ》 最初は「赤線地帯」のような娼婦たちの生き様を描いた作品かと思っていたが、男女の腐れ縁を描いたラブストーリーだった。川島雄三監督らしいユーモラスなシーンもあり、同じく男女の腐れ縁を描いている「雪国」や「秋津温泉」ほど見ていて暗い気持ちにはなることはなかった。また、それでいて人間ドラマが非常に深く描かれた傑作に仕上がっており、川島監督がやっぱり並の監督ではなかったと実感できる。出演者の中では新珠三千代が今まで見た役柄のイメージとは少し違う印象の役(とはいえはじめはちょっと気づかなかった。)を好演していて新鮮で良かった。ダメ男を演じる三橋達也も素晴らしい。でもやっぱ出演者の中でいちばん印象に残るのは芦川いづみ。この間見た「愛と死の記録」では印象が違いすぎて違和感しかなかったのだが、本作ではこれでもかと言わんばかりに可愛さを振りまいていてとてもキュートだった。ほかにもチャンバラごっこに興じる子供たちなど、製作当時の時代風景も印象的だ。ラストシーンも余韻を残す終わり方でよい。 [DVD(邦画)] 8点(2007-12-04 18:12:49)(良:2票) |
998. 河内カルメン
「悪名」の今東光の原作を鈴木清順監督が映画化した風俗映画。ストーリーだけ見ればドロドロした内容なのだが、テンポのいいストーリー運びと清順監督のスタイリッシュな演出のおかげで、変な言い方かもしれないが、暗い映画のはずなのにとても楽しく見られた。野川由美子がバイタリティーあふれる主人公を熱演しており、すごくかっこよかった。主人公が使う河内弁の響きも「悪名」の勝新と同じくとてもいい。 [DVD(邦画)] 9点(2007-11-26 02:22:05) |
999. 愛ふたたび
「個人教授」の日本での大ヒットで日本で爆発的な人気を得たフランスの俳優ルノー・ベルレーが日本映画に主演した恋愛映画。相手役が浅丘ルリ子、監督は市川崑という顔ぶれ。全体的にフランス映画のような感じを出そうとしているようだが、それがあまりうまくいっているとは思えず、市川監督の演出もいつもと比べておとなしめであり、出来のいい映画とははっきりいって言いにくく、日本でのルノー・ベルレー人気に頼って作られた一種のアイドル映画という気がしないでもない。浅丘ルリ子の妹役で出ている桃井かおりはこれがデビュー作だそうだが、面影はあるものの「幸福の黄色いハンカチ」や「男はつらいよ 翔んでる寅次郎」と比べてもまだ垢抜けない感じがして印象が少し違う。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2007-11-25 13:49:21) |
1000. 続・サラリーマン清水港
「サラリーマン清水港」の続編。前作でインパクトの強い中国人を演じていたフランキー堺がこの続編では出ていないのでそのあたりが少し物足りない気がするけど、前作同様に面白かった。今回も三木のり平の存在感は抜群でやっぱり笑わせてくれて楽しい。野球のシーンでルールも分からず応援している姿がとくに最高だった。小林桂樹と司葉子のロマンスはなんか「若大将シリーズ」のようだったが、安心して見られる展開。宝田明のボンボンはイメージにピッタリじゃないか。志村喬がちょっとだけ出てくるのだが、彼の東宝サラリーマン喜劇への出演はけっこう貴重かもしれない。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-11-24 03:17:34) |