1021. リアリティ・バイツ
《ネタバレ》 90年代のニュージェネレーション世代ってこういうこと?あんまりぱっとしない連中だなあ。70年代のヒッピーのように思想に突っ走ることもなく、80年代の「レス・ザン・ゼロ」の金持ちコドモのようにクスリとパーティに溺れることもない。自信過剰で口ばかり大きいことを叩くけど、”現実は厳しい”ので就活の傍らバイトで糊口をしのぐ。ドラッグは忌避するけどセックスにはゆるく、エイズ検査の結果が気になって怖くて仕方ない。 というわけで、あまりドラマ性の無い薄味な若者たちである。極端なエピソードや事件が無いのがリアルっちゃリアルだけど。 リアルで近しいからこいつらが好きかと言われればそうでもないかな。ウィノナの下半身もゆるいしバイト先でのキレ方も爽快ではないし男二人天秤にかけるし。 ただもうウィノナ・ライダーという女優のピーク時の輝かしさ、その白目の驚くほどの綺麗さでこの映画はもっている。 気の利いた台詞に多々助けられているイーサン・ホークは随分得をしているな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-09-13 00:19:59) |
1022. 47RONIN
《ネタバレ》 スタッフがどっかから聞きかじってきた赤穂四十七士の物語が Oh,ジャポニズム!てなわけでダークファンタジーな世界観でもいける、と思ったんでしょうかね。初めのほんの数分こそ日本史ベースでがんばるのかと思いましたが、幻獣みたいのが現われた瞬間「指輪物語」になり、その後もディア・ハンターだったりブレードランナーだったり三国志もどきだったりでいやあ居ずまい悪かったー。どこに拠点を置いて観ればいいのか分かんないんだもん。キアヌすら主人公の扱いじゃないんだもの。”真田広之と仲間達”でそれなりに話が進んでゆくうち、うっかりキアヌの存在を忘れそうになったりもする。 誰を軸に、何を柱として描きたいのかもっと絞りましょう。 主君の敵討ちと姫様奪還をひとつのパッケージにするのは欲張りすぎ。妖術女までいては化け物退治の必要も出てくるし。忙しすぎる。 収穫といえば真田広之の太刀捌きの美しい身体の動きが健在であるということ。久しぶりに観ましたが、衰えぬ運動神経に感嘆でありました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-09-11 23:56:33) |
1023. ジェニファー8(エイト)
《ネタバレ》 A・ガルシアとユマ・サーマンの雰囲気が良いのと、加えて映像も湿度の高いしっとりとしたこれまた良い感じで幕開けるので、まあ中盤くらいまでは真剣に観ましたよね。 だけどもこれ面白くないよ? 中盤までやたらもたつく展開かと思えば、ところどころ面倒がってか強行突破する勝手ぶりが横行。ラストの切り上げ方には唖然呆然だ。結局こちらの疑問もいろいろ取り残される。序盤に探してたナイフはどうした。いらないのか。カツラをつけたジェニファーマネキン。役に立ってないよね?あの管理人はワイセツ罪で逮捕されないの?レッドヘリングにしたって扱いが雑すぎる。 同じ名前が二人オチってのも古典すぎて90年代でやるかね、という感じ。 しかもジョン・テイラーっていったらデュランを思い起こす年代だったりするわけでワタシは。とまあこんな雑念まで入って、いややっぱり面白くなかったな。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-09-10 00:20:49)(良:1票) |
1024. イル・ポスティーノ
《ネタバレ》 イタリア映画の、何者でもない人たちの人生を語る、その訥々とした語り口が好き。出てくる人たちは皆普通の、生活はちょっと苦しくて、でも基本善良で恋したり瑣末な人間関係に悩んだりして生きている。おんなじだ、私らと。 主人公もまた、一人の郵便配達人で何ということの無い人生を送るはずが 世界的に著名な詩人と出会って共産の思想や詩の世界に触れてちょっとだけベクトルが変わる。 人との出会い、その化学反応が彼の人生の終焉にまで影響したのだと観る側は衝撃を伴って知らされるけれど、ドラマチックに盛り上げる演出は一切無くて終始映像は穏やかなままだ。美しい地中海の寄せては返す波のように、繰り返し日々は過ぎてゆく。この穏やかさがラストのショックの緩和剤になっている。 何かをどーんと訴えてくる種の映画ではないけれど、人間を愛おしさでくるんだような大切な一品。思い出すと泣けてくる。 [DVD(字幕)] 8点(2016-09-06 00:24:54) |
1025. プロミスト・ランド(2012)
《ネタバレ》 石油に代わるエネルギーとして脚光を浴びているシェールガスの環境破壊面に食い下がってみた、実に旬な社会作。石油産出国のアラブ首長国連邦が提供してるっていうのがなんとも生々しい。米国内ではスポンサー募るのは大変だったのかな。 社会派作品ではあるけれども、シェールガス採掘による問題点はあまり深く追求していないなあという印象を受ける。それより、エネルギー会社の悪辣で強引な土地買収のやり方がよろしくない、という描き方になっています。 となると、ドラマにおいて大事になってくるのは、会社に滅私奉公した末に裏切られることになる一社員の人としての葛藤や煩悶といった心理描写でありましょうが、マット・デイモンがそつなく演じています。さすがです。 やり手のビジネスマンと素朴な好青年の顔を演じ分け、「環境団体」の言いがかり&妨害にも一途に誠実に闘う。それゆえ、すべてがひっくり返った衝撃も大きく、地元民の前で白旗を上げたスピーチの時の憔悴した表情なんかも上手いです。 脚本自体はわりとざっくりしているので、作品に繊細さをも与えるマットの演技さまさまですね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-09-05 00:13:51) |
1026. フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ
《ネタバレ》 なんだこれは。SM好きな男がなんでだか「契約」を女に要求してうじうじ。女もまた「SMはちょっと・・」と煮え切らないままの12 0分。 どんな風にセックスしようと好きにすればいいがな。早く話進めろよー、と欠伸が出る。欠伸涙で画面がにじむ。 売りの情交場面もこの程度で官能だとは笑わせる。鞭やら手錠やら小道具は並べるけど画自体に情感が乏しくてナインハーフの焼き直しにすらなっていない。貧相な身体の女と色気の無い男。来ない来ないちっとも。 エロスてのが分かってないんじゃないのか作り手が。ヘリやら飛行機やらで遊覧飛行すればゴージャス感が出て素敵でしょ、と思ってるようでは。なんという退屈。 ひとつもの凄く驚かされたことがあった。ラストだけど。「終わりやがった・・・!」と茫然自失した。こんなもんで三部作作る気なんだとか?もう観ないよ? [CS・衛星(字幕)] 1点(2016-09-04 00:06:02) |
1027. グッバイ、レーニン!
《ネタバレ》 国家によって台無しにされた個人の人生を描いているけれど、重たくならず場面によってはコミカルに描いているその筆致に感服する。 どの人物も(脇に至るまで)きちんと人間が描かれていることに脚本の良質なことを感じる。母のために献身的にがんばる息子ダニエル、それよりちょっと現実的な姉、彼ら家族を生暖かく見守る周囲の人々と。 お母さん、大変な人生でしたね。幼子を連れてすでに当局に目をつけられている夫のもとへ亡命するなど、怖ろしくて勇気を奮い起こすことなど容易ではなかったことでしょう。反動で共産活動に精を出す、その気持ち分からなくもないです。こつこつ貯めた貯金が価値を失くしても、こんなにも愛のある息子さんが育ったではないですか。 人生の去り際に、わが子のしたことを悟って息子を見つめる母の眼差し。世の中の真実を知っても、皆が心配したようにお母さんは壊れたりしなかった。母の愛は真に強く優しい。 統一後の東側の混乱ぶりを市民目線で知るのは初めてで、勉強にもなった。道路わきに積まれた古い家具、(それもすぐには回収に来ない)我慢に我慢を重ねてきた市民らの思いの象徴のようだった。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2016-09-03 00:05:04) |
1028. マダム・イン・ニューヨーク
《ネタバレ》 インド映画のヒット作って、既出のプロットをベタなまでに盛り上げて味付け濃く焼きなおしする、ていうのが得意みたいですね。 一主婦が殻を破って、新しい世界に踏み出す。心の自立を取り戻す。あるいは自分の立つべき位置をきちんと自覚する。人生はちょっとしたきっかけ(何しろ4週間の英会話教室だ)で生き方も変わるのよ、ってうわあ このテーマすごくいっぱい見た事ある。 テーマ、展開はもう既視感いっぱいだけれど、明るく楽しい雰囲気が良いのと、主演女優の特に”困った”表情が魅力的なのでヒットするのもうなずけます。個人的にはインド映画お約束の歌と踊りはちょっとお腹いっぱいですが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-09-01 23:53:41) |
1029. グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札
《ネタバレ》 グレース・ケリーという一国のプリンセスとなった伝説の美人女優を演じるとしたら、やはり当代ではN・キッドマンしかいないでしょう。クール・ビューティな顔立ちや品のある佇まいなど、良く似ていると思います個人的には。 公妃の美貌を強調すべく、大変麗しく撮られているニコールであります。この人を見るといつもとりあえず綺麗だなあと思うのですが、本作では主人公は美人女優であることが肝になってますからそれはもう美しいこと美しいこと。特に相対する仏軍に差し入れに向かった妃は、彼女ならではの戦闘服姿でありまして神々しいばかりの華麗さ。その場の全員が息を呑む、まさに「The 女優」の圧巻の存在感でありました。 私人グレースの公国における迷い、悩みを織り交ぜて彼女の人生を描こうとしたのでしょうが、政治謀略話の筋書きが関わり過ぎてしまって、焦点がぼやけてしまいました。まさかドゴールがパーティでの女優の演説に心動かされて政治方針を変えたわけではありますまい。国の情勢に公妃が深く関与したかのような描写にはやや違和感を覚えます。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-09-01 00:31:18)(良:1票) |
1030. シン・ゴジラ
《ネタバレ》 二作目以降長らく続いてきた「ゴジラ=怪獣映画」の流れを断って、初作品の哲学に立ち戻った21世紀版ゴジラであります。現代社会に破壊神が降り立ったら、のシチュエーションのもと描かれるのは主に人間ドラマ。今作では指揮トップに立つ役人や政治家の右往左往がメインで、硬直した組織の縛りっぷりであるとか、首相の暴走発言による混乱とか、やたら長い役職名とか現日本国民である我々は肌でデジャブを感じるリアリティである。前半のどたばたっぷりはとても面白い。私はくどくど会議が展開中の中盤までの方が好きである。 邦画の常として、主人公クラスは人気先行のタレントをおいて脇をベテランで固めるパターンにはもう慣れてはいる。本作もしかり。長谷川のおぼつかなさを支える柄本明であったり、特に巨災対チームの面々がそれはもう素晴らしい芝居っぷりで心躍らせて観ていたのだが、突然冬のオホーツク海並みの冷や水を浴びせられるのだった石原さとみに。米国政府のブレーンというよりイキった日本人にしか見えない。この人が口を開くたび下を向いてしまった。つらくて。未曾有の有事に際しているのに毎日髪をきっちり縦ロールにしてくる人材は大統領にはなれないと思う。ヒラリー・クリントンだって国務長官時代は髪なんかにかまっていられなかったと言っていた。 とはいえゴジラの造型は素敵でした。ゴジラサイドに立つ人間がいなかったことが残念でしたが。あ、そして生活に根ざした圧倒的な恐怖感という意味ではやはり一作目には及ばないような。映像が綺麗でシステマティックだからでしょうか。 [映画館(邦画)] 7点(2016-08-28 18:47:26)(良:4票) |
1031. ワイルド・スピード/EURO MISSION
《ネタバレ》 いかに派手にアクションをかますかが焦点になってきたシリーズ6作目、ついには戦車やら飛行機まで参戦してかつてのクルマ愛はどこへやらといった趣きである。 ストーリーはとりあえず脇に置かれているカンジで、観てるこちらも「あれ、今これって何が目的なんだっけ?」と度々思うシマツ。もっともそんな観賞態度でも全体通しては大した支障も無いのがFFシリーズの良いところ。 死んだはずのメンバーが戻ってきて、代わりに二人ほど卒業。ここらへんのキャストの入れ替えって何か業界の力関係が働いてんのかなーといらん勘繰りをしたりもする。個人的にレティって余人を持って変え難いとは思わないんだけどな。 男優陣は各々役割がうまいこと性格分けされているけれど、女優らはキャラがかぶってるのも気になる。外見も性格もそっくりさんがシリーズごとに増えてゆく印象なんですが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-08-25 00:45:30) |
1032. ザ・ゲスト
《ネタバレ》 なんだか消化不良だなあと不満の残る小粒な一品。 男の目的が明らかになるまでは、D・スティーブンス、頼もしい息子代わりの存在感を爽やかに発揮してうまいこと引っ張る展開だったのだけど。なにやらでかい組織が出てきてからは一気にテンションダウン。個人的なサイコパス的ストーリーを期待していたのにな。ああ組織キライだなあ。何の被検体だったの?というこちらの疑問には答えず、とにかく軍が関与してたのさ、という強引さ。がっかり。 D・スティーブンスはあからさまにイケメンなのでオモテの人格にはよくはまっていた。”狂っている”演技は要努力。 ヒロインのマイカ・モンローは下手。画的に見慣れないキャストプラス演技力は並、という役者が揃ったため、より一層連続学園ドラマっぽくなってしまった。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-08-21 18:01:23) |
1033. バートン・フィンク
《ネタバレ》 つまりどういうことなのかは自分で考えなさいよジャンルの映画でして、初見時はまだ人生経験も浅い時期、会社帰りの映画館で呆然とした思い出です。いやー???の連続だ。夢オチとも考えづらいし、もう夢でも現実でもどっちでもいいのかも。 決して「面白かった」とは思わなかった映画だけれども、何年たってもしつこく映像が脳内に残っているのです。陰気ホテルに変人ぽいホテルマンブシェーミに、アル中小説家。垂れ下がる壁紙、シリアル・キラージョン・グッドマンの怪奇なこと。なかでもNo.1に強烈なのはいつでも惨殺死体がよく似合うジュディ・デイビスでしょうか。この人の顔も雰囲気も多幸性はゼロに近いもんですから、このときも「うわーまたこんな死に方かい」と思ったな。 [映画館(字幕)] 5点(2016-08-15 00:15:17) |
1034. 美女と野獣(2014)
さて、これはたくさんある同名の映画の中で、どの程度の出来なのでしょう。他作品を観ていないので比べようもないんだけど、本作について言えばあまり面白くなかったです。王と雌鹿王妃の悲劇も、ベルと野獣の心の機微も実にさらさらーと流れてゆきます。もっともっとしつこく描き込んで、胸に迫るラブストーリーにしてほしかった。 レア・セドゥーがまとうドレスや宝飾品は素敵でしたが、画像加工の仕方が若干キラキラし過ぎていかにもフェイクっぽく眼に映るのは惜しい。レアは美形とは言い切れないけれど、「雰囲気をかもす」ことの上手いフランス人らしい女優だなあと思いました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-08-12 00:42:55) |
1035. ヴァージン・スーサイズ
《ネタバレ》 ”ガーリー映画”の旗手なんだそうでS・コッポラは。そんなジャンルがあるとは知らなかったが。女子映画といっても、女の子の心理を解き明かしてくれるような作品ではなかった。姉妹のうち焦点が当てられるのは四女のキルスティンのみで、他の3人(生存の)は完全にお飾り状態。もっとも、各人の性格まで丁寧に踏み込むと”若草物語”みたく健全なものになってしまうのかもしれん。それは監督の狙いと外れてしまうだろうし。 なんとなく感じたこの映画の凄いところは、少女の抱く漠とした不安や苛立ち、不穏な空気をすべて映像で伝えてきてること。画は大変綺麗だ。すごく良いカメラを使っているのかな。 金髪の美少女らはもちろん絵になるし美しいけれど、その明るさと対になっている暗さの方がじわじわと脳に来る。支配欲の強い母親の統べる家、その暗さ。なぜパーティを地下室で?レコードは焚書扱い。たちこめる煙。末娘が飛び降りた窓、柵。こわい。 冒頭から頻出する、木を枯らした毒。街そのものを汚染していた有毒な伏線が、ラストで彼らの大人への出立を覆う。緋色の映像で。この不吉なこと。 青春の残酷や潔癖、無理解、いろんなキーワードが言葉でなく、映像で流れ出る。詳細に語らなかったことでぼうっとした怖さの手触りのみが残った。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-08-07 23:47:55) |
1036. ロスト・ハイウェイ
《ネタバレ》 この映画のジャンルはデヴィッド・リンチ、とは言い得て妙。もうほんとに、いかなる作品かと問われればリンチです、としか。 もちろん、ハナっから期待はしていなかった。こう、どこかで理解がいっぺんに進むような謎解きがあるだろう、とは夢にも。 それにしたってなあ。独房の中にいたビル・プルマンが別人になってました、ときた日には「これで観客についてこいと?」と度肝を抜かれる。頑張ってついていったけど。 素直な客を薄暗い迷宮へ連れ込んで置き去りにしてしまうリンチ監督。何がすごいって、こんなヒドイ目にあわされているのに、なぜだか最後まで観てしまうってことだ。考えてしまっている。・・これはピートの頭の中なんだ、とか白塗りのアイツは現実と妄想の橋渡しか?とか。何もないのに何かありそうな。それともこっちの頭が悪いだけなのか。 D・ボウイのミステリアスな歌声も妙にマッチする、理解不能なれど魅惑のリンチワールドであります。振り回されたい方はぜひ。 [DVD(字幕)] 6点(2016-08-05 23:28:57) |
1037. ダブル・ジョパディー
《ネタバレ》 ちょっと出来の良い火曜サスペンス。ヒロインのやることは上手くゆくし、悪い奴は成敗されるのだ。子供にしてみりゃオカンが親父を殺したって十字架を背負うことになるんじゃないの?と思わずにいられないが、この手の話にそういう突っ込みをしてはいけないのだ。 アシュレイは美人で雰囲気も良いけど、作品に恵まれていない感じの女優。 トミー・リーはやっつけ仕事。ヒロインを理解し協力する役どころなのに、この二人が心を通わせる描写がもーおざなりで、こんな脚本ではやる気が出なかったものと思われる。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-08-05 00:03:47) |
1038. アデル、ブルーは熱い色
《ネタバレ》 主演の二人が大熱演、アデルは全裸も鼻水顔も厭わないし、レアはこれまでの役柄とは180度違うレズビアンの男役をひるむことなく演じきり、実力のほどを思い知らしめた。ボンドガールにしとくのは勿体ない。ものすごく熱量の高い本作、恋情がぐいぐいと迫ってくるので心に火傷をする人もいるかもしれない。 ただ、現代フランスにおけるセクシュアルマイノリティの二人を取り巻く環境はかつてほど厳しいものではないみたい。ゲイカップルであることは極力秘密にしなくちゃ、といった社会の制約のようなものはあまり感じなかった。だから個人的には、この話を男女間のそれに置き換えても全然いけるし、むしろそっちの方がキャストによってはぐっとくるかもなあ、と思ったり。 みっちりと人物の心情に寄り添い、粘着質なまでに描きこんだ制作意欲には敬服するけれども、たとえば自宅パーティでのアデルとゲストとのやり取りや、アデルの職場の光景(それも多数)などあんなに必要だろうか。おかげでこの長尺、私はちょっとダレた。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-08-01 00:20:21)(良:1票) |
1039. サン★ロレンツォの夜
《ネタバレ》 子供というのは未熟な生き物だ。あの”禁じられた遊び”のなかで墓の十字架を勝手に使ってマイワールドを作っていたように。6才の女の子にとって、戦時は非日常。夜中に村が爆破されるのをどこかわくわくしながら待ったり、財産を消失したおばさんがイヤリングを預けてくれたことで胸が躍ったりする。こういうコドモ感覚、私もかつて持っていた。遠い記憶の中に。 大人の感性で捉えると耐えられないほどの苦痛を、子供の「?」フィルターを通して酷さを緩和しているような描写の映画である。 しかし観賞している私はもう大人なので、あののどかで美しい麦畑で、厳かな聖堂で、何が起きたのか悲しいかな知っている。コドモ側の「イヤリングもらって嬉しい」、「米兵さんは風船をくれて親切」と並行して起きている大人側の苛烈な現実。あまりのギャップに心をどこに置けばいいのかわからなくなった。 少女は母になりわが子に語る。それはおとぎ話のようだけど、内包されたただならぬ事実をその子も長じるにつれて知るのだろう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-07-29 23:38:31) |
1040. ナイト ミュージアム
博物館の展示物が夜になると動き出したら楽しいね、という発想も現代の映像技術では難なくクリアできちゃうのですね。先人たちは苦労しながら特撮をやっていたのになあ。ぜいたくに慣れちゃってありがたみが少なくてなんか寂しい。なめらかに動くティラノザウルスの標本を観ながらそんなことを思ってしまった。 でも、”技術”はあくまで作品にとって黒子の役割だと思うんだ。大事なのは脚本で、私は、どんなお話を聞かせてくれるのかなと映画を観るときにはいつでもそこんとこを楽しみにしている客なのだが、本作は設定以上の話の広がりを持たせられなくてやや退屈でした。 [DVD(字幕)] 5点(2016-07-29 00:00:48)(良:1票) |