1041. 大怪獣ヨンガリ
《ネタバレ》 現在見られるのはアメリカ向け編集版だが、オリジナル版は現地で1967.8.13に公開されている。日本ではガメラ対ギャオス、ギララ、ガッパといった大怪獣映画花盛りの年であり、この映画もガメラの日本人スタッフが特撮を担当したとのことである。 怪獣そのものは単純な恐竜型で特徴がないが、その割に火炎攻撃(ガメラ)と切断光線(ギャオス)を兼ね備えた多機能型であり、F-104K(?)戦闘機や、走行中の車が真っ二つにされていた(ギャオス)のは既視感がある。また「アリラン」アレンジの曲に乗って踊るのは、ガメラのように子どもが親しめる性質まで詰め込んだということか。ほか遠方からのミサイル攻撃もバルゴンを思わせるものがあったが、独自性の感じられた場面として、怪獣がマンホールの蓋を踏んづけたのはちょっとスリルがあって面白かった。 一方で登場人物に小賢しい子どもがいるのもガメラ仕様だが、しかし昭和ガメラに慣らされた目で見れば大して不快感はなく、かえってラストを丸く収める役を担っていて賢明な少年に見える。この子どもとヒロインが少し年の離れた姉弟というのは日本でもよくある設定だが、このヒロインのツンデレ具合がけっこう可笑しかったりもして、登場人物は総じて好印象だった。 また特に異国の都市破壊場面が見どころであり、最初に映る政府庁舎(旧朝鮮総督府)は、その後“日帝残滓”として解体されて今はなくなっているので、この時点で早々に壊してしまえばいいだろうと思ったらそうはせず、続いて出た市庁舎(戦前の建物だが現存)の方をなぜか壊していた。その次に出た南大門(多分)は国宝第1号なのでさすがに破壊せずに済ませていたが、その後2008年に自国民の放火で消失したのは大変痛ましいことだった。ほか建物や橋もこの国では自然崩壊したりするので、怪獣が壊すのとどちらが先かという感じである。 以上のようなことで、単なる和製怪獣映画とはまた違った楽しさのある映画なのだった(皮肉交じりだが)。 なお余談として、今は現地に漢字の看板などほとんどないわけだが、劇中の「怪地震対策本部」「慶祝 怪獣退治歓迎記念式場」のように、漢語はちゃんと漢字で書いてくれればもっと近隣国とも分かり合えるはずである。何で自国産の文字にそこまでこだわるのかと言いたい(これも皮肉)。 [DVD(字幕)] 5点(2014-12-13 14:44:05) |
1042. 呪怨2 (2003)
《ネタバレ》 どうせまたこれまでと同じようなものだろうと思って見たら結構怖い映画だった。主人公の自宅で、何が出るか出ないのかわからない雰囲気の中に主人公が一人でいる場面などはたまらない不安感がある。また「千春」編では、傍らに人がいるかどうかもどこにいるかも関係なく、前後の脈絡もなしに突然異世界に引っ張り込まれて見たくないものを無理やり見せられていたのが非常に嫌な感じで、これでこのシリーズの特徴である逃げ場のなさがさらに強化されたように思われる。ほか今回は、変な場所で眠ってしまったところを誰かに名前を呼ばれた気がして目が覚めた、という感覚に少しこだわっていた感じもあった。 ところである出来事が発生時点より後でなく、発生以前にまで遡って影響を及ぼしていたのはこのシリーズとしては斬新である。また全体的によくわからない展開の中でも特に「千春」編は難解だが、ここでは千春にとっての結末が2種類あったようで、これは2つの並行世界それぞれで起こった出来事を示していたと解釈できる。かつ片方の千春は練馬の家に行っていない可能性があり、それでも結局呪われたということは、並行世界の境界を超えて呪いが及んだことを意味しているのではないか。これと前記の時間遡行を考え合わせれば、練馬の呪いは時空間の制約を受けずにどこまでもついて回るものであって、これはもうほとんど宇宙最強の呪いのようにも思われる。 今回の年代設定が2006年だったのは制作時点からすれば近未来だが、これは劇場版1の終盤部分と共通であり、両者は「千春」でつながっていることから、1と2は同時並行的な設定になっていたらしい。どこまでも同じことを続けるつもりでもなく、今回の劇場版では1と2の二通りの結末を見せていったん締めたという印象もある。ただ今作の趣向である世代継承ということ自体はそれほど感心するようなものではないが、まあ全体としてこのシリーズの中では見ごたえのある部類と思ったので、今回は珍しく少しだけいい点を付けておく。 なおキャストに関しては、いわゆるのりピーには個人的に特別な思い入れはない(世代的に少しずれている)ので淡々と見ていたが、新山千春とか市川由衣といった人々は見て損にならない。ほか個人的にはメイクの恵ちゃん(演・山本恵美)というのが外見的には地味だが登場人物として好印象だった。今回はこの人が一番かわいそうに見える。 [DVD(邦画)] 6点(2014-11-30 22:25:43) |
1043. 呪怨 (2003)
《ネタバレ》 OV版の映画化とのことだが中身は続編になっている。 さすがに映画らしく若干洗練された感じでホラーとしてもそこそこ怖いが、個々の出来事に新鮮味があるとは限らず、洗髪中に誰かの手、というのはこの映画以外のところで最初に見たような気がする。一方で旧作にあった微妙なおふざけが少ないのは真面目な映画なので仕方ないわけだが、終盤に出る女子高生の横暴なふるまい(男子を暴力的に排除、教員を脅迫)などはOV版2の中学校の場面に相当するものだったかも知れない。 一方で昼夜も部屋の電気も関係なく、TVには頼れず、布団を被れば布団の中に出るといった形で、徹底的に逃げ場を封じているのがこのシリーズの特徴になっている気はする。また旧作以来の時間軸錯綜型の構成を利用して、劇中で別の時間世界同士を接触させてみせたのは新しい趣向であり、これは例えば練馬の家は時間の流れの制約を受けない、といったことを示唆する試みだったとも取れる。 ただし今回は終盤が変に難解だったのが困ったことで、特に二度目のフラッシュバック以降は何がどうなっていたのか正直ほとんどわからない。無理に何か考えるとすれば、練馬の家は入った人間を呪うだけでなく、新たな呪いの根源を生み出し続けると言いたいのか? 何にせよ今後も単純に同じことが続くという前提のラストではない感じがしなくもない。 ところで今回は特に好きな女優が出ていたわけでもないが、それぞれに個性的な美人女優の競演のようになっていたのは大変結構なことだった。個人的には奥菜恵(怯えた顔)、伊東美咲(全部)が印象的だったが、そのほか徳永家の妻役(松田珠里)も微妙に好きだったりする。それにしても役の固定してしまった人は毎度大変だと思う。また今回は特にエンディングの歌の悲哀感が印象的だった(次回も同様)。 [DVD(邦画)] 5点(2014-11-30 22:25:39) |
1044. ちょっとエッチな生活体験 接吻5秒前
《ネタバレ》 「ラブ&エロス シネマ・コレクション」というシリーズの一つである(R15+)。「エロス」の部分は主に別女優が担当しているが、主演女優も何気に相手なしの“ひとりエロス”をやっていたりするのでその方面の見どころは用意されている。 この映画の問題点としては、とにかく初期設定がたまらなく不自然なことである。日頃からロリータフェイスなどと言われている人物を「ショートヘアでボーイッシュな」役にしたギャップで効果を上げているのはいいが、しかしこれほど童顔で華奢で小柄で肌ぷりぷりとか言われていながらそれでもなお周囲の全員が男と思い込んでいるのは非常に変だ。こんなに可愛いのに男だと思うか普通。いつバレるとかの問題ではなく最初からバレバレではないか。そういうウソ臭さに呆れるというより微笑ましさを感じるのはやはり地が可愛いからだろうし、その辺は制作側の巧妙さとも思われる。 一生懸命男を演じていても否応なしに女性らしさが滲んでしまい、またそれらしい衣装などなくても「女」が表面化してしまう場面もある。それをどうやら本人は意識していないらしいが、それでいて「あたしだって女でいたい」と願う純な心情がいじらしいところへ前記のひとりエロスを演じるのでこれがまたたまらなく愛おしい。とにかく見ていてたまらなくなる映画である。 ところで一つだけ残念だったのはラストのオチであり、ここまでの間にもう完全にバレているに違いないと思っていたにもかかわらず相手役がまだ男だと思い込んでいたのはさすがに不自然である。そのため自分としてはここでのカミングアウトを一瞬本気にしてしまったが、まあこの場面自体は「女の本質」さえあれば生物学的な性差も問題にはならない、ということを言っていたのかも知れない。 何にせよ最後がほのぼのと幸せな感じで終わったのは大変結構なことで、年齢制限の割には(主演女優の実年齢の割には)ピュアな青春物語のようになっている。最後には「大好き!」という台詞をこの主人公にそのまま返してやりたくなった…おれに言われても嬉しくないだろうが。 [DVD(邦画)] 7点(2014-11-08 20:53:26) |
1045. NINIFUNI
《ネタバレ》 制作意図は言葉で説明されているが、そういう試みがこれまで映画(邦画)界にはなかったということなのか。それを特別なことのように言われても今さらという気がする。 まずは制作側の意向に応じて自由に感じたことを書くとすれば、共感の余地のない男が自己都合により変なところで死んだためにアイドルのPV撮影に影響が出るかと思ったら結果的に問題はなく、みんな笑顔で撮影を終えられてよかった、ということになる。ただし時には死んだ男に本気で感情移入する観客もいて、人が死んだことを何だと思っているのか、とかいう建前をふりかざす恐れもあるので言葉には注意する必要がある(してないが)。 以上は第三者的な見方だが、仮に自分を死んだ男の位置において考えると、世の中は忙しいのでさまざまなことが同時並行で進んでおり、自分などが死んでも関係なしに世の中は動いていく。それで当然なわけだが、これから伸びようとしている若い連中の姿は死人の目から見ても嬉しく感じられるだろうとも思う。実際に自分が死ぬ時は、登下校の児童生徒が窓から見えるような場所で死にたいものである。 ところで、もしこの映画の撮影予定と「東北地方太平洋沖地震」との間で時間的な前後が逆転していた場合、この場所(茨城県神栖市、千葉県旭市)では制作に支障を生じていただろうことを自分ならまず考える。何となくナルシスティックな印象のあるこの映画にとって、世の中全てを巻き込まずにはおかない大災害など想定範囲の外だろうが、しかし現実に多数の死者が出ている世界でなおアイドルというものが果たしうる役割を、他ならぬ劇中のアイドルグループもちゃんと担っていたことを自分としては想起せずにいられない。 そもそも社会的な意義を持つ存在であるアイドルと、ただの男を同列に扱うことなどできないわけだが、もし死んだ男が最初からこのグループのファンであったなら、あるいは結末も違っていたのではと思わなくはない…まあそういうことのできない(広い意味での文化性に欠ける)男だからこういうことになったのだろうが。 なお劇中のアイドルグループは「ももいろクローバー 」という名称が耳慣れないのと、人数が6人もいるため自分の立場としては若干の違和感があるが、今から3年以上前ということでまだ中学生が2人おり、みんな少しずつ若くて可愛らしく見える。メイキングも可笑しい。 [DVD(邦画)] 3点(2014-11-08 20:53:22) |
1046. 裏切りの戦場 葬られた誓い
《ネタバレ》 一応説明すると、フランス領ニューカレドニアで1988年に起きた独立派による人質事件の経過を描いた映画である。邦画「天国にいちばん近い島」(1984)のわずか4年後であり、その場所も同作の主人公が“天国にいちばん近い島”を発見したウベア島でのことだというのは皮肉な話である。 ストーリーは事件の経過を主人公の視点から丁寧に追う形で進められている。主人公が一貫して交渉により人命の損失を防ごうとするのは理性的であり、またどこまでも次善の策を追求する執拗さも備えている。本人は「交渉人」(字幕)と自称していたが、これはいわゆるタフ・ネゴシエーターの部類だろう。最後は武力行使で終わってしまったが、そこに至る過程の方がこの映画の本体であり、戦闘場面があるからといって戦争映画というわけではない。真面目に見れば密度の濃い映画だが、真面目に見なければ何をやっているのかわからなくなるので疲れる映画でもある。なおこの映画を見る上で「国家憲兵隊治安介入部隊」(GIGN、字幕の略称では「治安部隊」)と、その他一般の「国家憲兵隊」の意味は調べた方がいい。 ところで最後のキャプションでは2014年に独立の是非を問う住民投票が行われると書いてあるが、実態としては現時点でメラネシア系住民の人口は全体の半数を下回っており、その中でも独立派が大多数というわけでもないだろう。また現地のニッケル鉱山に関わる利権がこの問題にどのような作用を及ぼしているのかわからない(個人的に知見なし、劇中にも出ない)が、何にせよ現実問題として、19世紀からの植民地支配に由来する現状を今から完全に覆すのは困難ではないかと想像される。 また劇中で軍隊が自国民を弾圧していたのは許されないことだろうが、しかし軍というもの自体はフランス共和国にとってなくてはならないものだろうし、一方でそれをコントロールすべき政府が選挙戦略で左右されるような現実にしても、当事者である政治家が一国の巨大な利害を背景にして動いている以上は個人レベルの倫理で対応できるものでもない。 そのようにどうにもならない世界であっても、まずは現状を起点にして、これから先を少しでも改善するよう粘り強く努力を続けるのが現実的な道であり、それをこの地味な交渉人物語は訴えていると感じられる。フランスの植民地支配が許せないとか、だから軍隊はいらないとか簡単に言い捨てて済ませられるような話ではない。 [DVD(字幕)] 7点(2014-11-07 22:06:34) |
1047. 天国にいちばん近い島
《ネタバレ》 まず主人公の少女は、あまりに清楚で可憐で正視するのがためらわれるほど眩しく見える。 しかし、これとの対比で現地の個人ガイドは極めて胡散臭い。意味的には、少女にとっての“父親”と“恋人”を分離する触媒として機能していたのかも知れないが、映像的には中年男が若い娘を手玉に取るような趣向にしか見えないのが極めて不快で、その子に近寄るな!触るな!と言いたくなる場面が多々あり、これは製作側の誰かの歪んだ欲求を反映しているのではないかとさえ疑われる。主演女優をクラリスにでも見立てれば男のロマンとかいうものが表現されていると取れなくはないが、何にせよ実写では気色悪いだけである。 一方で“恋人”役についても、「時をかける少女」(1983)を見た立場としてはまた深町か、と落胆させられるわけだが、薄汚い中年男と比べればまだしも爽やかといえる。 ところでこの映画の最大の謎は主人公にとって天国に一番近い島はどこだったのかということだが、それは結局よくわからない。恐らく、特定の場所というより人との関わりで見出されるもの、というようなオチだったのだろうと思うが(主題歌の歌詞もそうなっている)、そうだとしてもそれで自分の人生が豊かになるわけでもない。また愛とは自分のための物語、とかいう認識にしても、手前勝手で自己完結的な感じでついて行けずに困惑するばかりである。 要は主演女優の姿だけが救いの映画であり、未熟なようでいてちゃんと女優らしい表情も見られたのは大変よかった。後半になると滞在日数に応じて日焼けもしていた。だからどうだというわけでもないが、とにかくこの人を見なければこの映画を見た意味がない。 [DVD(邦画)] 4点(2014-11-07 22:06:29) |
1048. 51(ウーイー) 世界で一番小さく生まれたパンダ
《ネタバレ》 ひたすら微笑ましいパンダ映像が延々と続くというわけではなく、基本的にはパンダの生育過程を描いたドキュメンタリーである。成長してしまえばのっそりして薄汚いだけなので、見どころはやはりパンダ幼稚園が中心ということになる。飼育員の女性の物言いがきついので呆れてしまうところがあるが、本人はこれでも愛情をこめた罵倒のつもりかも知れない。 この映画で特徴的なのは見ている人間が感情移入できるよう作られていることで、特に後半ではナレーションと音楽での脚色が過剰なため個人的には全く歓迎できないが、これはまあ子どもだけでなく、一緒に映画館に来ている両親にも楽しんでもらおうという趣向だろう(それにしては少々きつい内容だが)。パンダが好きで見ようとする人々は、そういった点が気にならなければ素直に楽しめると思われる。また人によっては、制作側の意図のとおりパンダ映像に乗せた人間の物語に感動するかも知れない。 なお余談だが、以前にここの現地(成都大熊猫繁育研究基地)に行った際、パンダは人間を襲ったりしないのか、と同行していた地元の人に聞いたところ、いかにも心外だという顔で「優しい!」(日本語)と否定された。しかし外見的にはどう見てもクマであり、山奥では人を食ったりしているのではないかとまだ疑っている。 [DVD(邦画)] 4点(2014-11-04 20:38:34) |
1049. 四川のうた
《ネタバレ》 原題での「二十四城」は四川省成都市にあった大規模工場の移転に伴う再開発プロジェクト上の地区名であり、これは後半になってやっとわかる。要は近年盛んに行われてきた都市開発の一環ということらしい。 登場するのはこの工場に関わった人々限定だが、背後にはこの国全体に関わる大きな歴史の流れが感じられる。かつて軍需工場だったことを語るエピソードの背景には昔の軍用機(Q-5、J-5、J-7?)や、核弾頭搭載可能な弾道ミサイル(DF-2A)までが映っている。また中越戦争の話が何度か出るが、この国でも戦争中は特需があって終わると不景気になるというのは社会主義礼賛世代にとっては皮肉な話だろう。さすがに天安門事件の話はなく、そのあたりから時代が少し飛んでいる印象があった。 ところで時代の移り変わりに関して個人的に最も感慨深かったのは、終盤近くで老人が歌う「インターナショナル」に続いて詩が引用される場面だった。いわゆる現代化の過程で都市の新陳代謝が進んで古いものが失われると同様に、人間に関しても古い世代はただ去るばかりという例も劇中には多かった(「外資系では…」など)。しかし最後の女性が前世代とのつながりを強く意識したところで終わっていたのは印象的なまとめ方であり、これで大感動とはいかないまでも一定の感銘を受ける構成になっている。 もっとも、この女性がいかにもその場限りの仕事で日々をつないでいたのはどうも将来が危ぶまれる気がする。2014年の現時点ではすでに不動産バブルの崩壊が噂されるご時世になっているが、それより少し前のこの映画にしても、これで本当にこの国の力強い発展を描こうとしていたのかよくわからないところがある。 なお余談だが、「小花」役で出ていた女優は実際に劇中の映画「小花(戦場の花)」(1979)でヒロイン役をやったジョアン・チェン(陳冲)本人であり、ここはいわばセルフ・パロディのようになっている。若い頃はなかなか可愛かったようだが、その後は役者のほか映画「シュウシュウの季節」(1998)などでの監督もしている。この人が劇中で語っていた若い男の写真の話はけっこう切ないものがあった。 [DVD(字幕)] 7点(2014-11-04 20:38:30) |
1050. シュウシュウの季節
《ネタバレ》 まずは自然景観が美しい。場所は四川省内のチベット人居住地域という可能性もある。 内容としては過去の厳しい時代を描いているが、この映画自体は特に政治的主張を含むものとは思われず、そもそも過去の政策を批判して現在が変わるものでもないので、自分としてもこれでこの国への感情を今以上に悪化させたりはしない。劇中に下司な人間が多く出るのは政治体制などと直接関係なく、単にこの社会の文明度とか文化性のレベルを示しているものと解する。 ところで主人公の少女は確かに愛らしいが、自分としては冒頭からいかにも女優が演技しているように見えて心理的に距離を置いてしまい、結果として劇中の悲惨な状況にも過度の思い入れを持たずに見ていられた。さすがに過激な性描写はやりすぎと思うが、ここでの役者はエンドロールに出る「秀秀替身」であって、体型だけ見ても主人公が実際にやっているようには思われない。 それより痛々しいのは同居の男の方であり、一体どこまで耐え忍ぶつもりかと呆れ果ててしまって同情心も失われる。しかし原作者・監督とも女性であることからすれば、これは女性が望む純愛の姿を描いていたのかと思えなくもない。“男は去勢でもしない限り本当の愛を知ることができない”というならかなり毒気のある話になるが、女性の側がどれだけ変質しようと男は一途に愛を貫くというのもかなり都合のいい展開であり、どうも視点の所在が自分とは真逆と感じられる。 本来は自分としても少女の境遇に涙したかったわけだが、それほど純粋な気持ちの持てる年代でないこともあり、残念ながらかなり皮肉な感情を催す映画だった。この映画はあくまで美少女を主人公にした作り物だが、現実にはこういった悲劇は無数にあるだろうし(劇中ではほかに失踪者が一人)、その全てに涙してやれるわけでもないという諦観のようなものもある。 なお直接関係ない話だが、少し前に成都市での会議に出席した際、われわれ一行の世話役についてくれた地元の学生ボランティアが童顔で天真爛漫で本当に可愛らしい人で、それで現地の印象が若干よくなってしまったのは向こうの思惑にまんまと乗せられた形である(ハニトラはなかった)。現在でもいろいろと暗い側面が伝えられる国ではあるが、彼女のような人がのびのびと生きられる社会であってほしいと余所事ながら切に願う。 [DVD(字幕)] 5点(2014-11-04 20:38:26) |
1051. アイドル爆弾(OV)
《ネタバレ》 まず前半部分はユーモラスな展開が非常に楽しい。客観的にはかなり深刻な状況であり、一人でいれば荒れていたりするのが映像にも出ているわけだが、何より本人がカメラの前では完璧なアイドル顔をしてみせるので和まされる。人間だから笑ってばかりもいられないだろうし、舞台裏ではいろいろあるのだろうと察しながらも、あえて表の面を賞するのが現代アイドルを愛する作法なのだろうと思わされる。 所属事務所の同僚や先輩にしても本当に親身なのかは怪しいものだが、ここは本物の事務所の同僚・先輩が出ていることもあって馴れ合いの雰囲気があり、全てわかった上で楽しんで見る気にさせられる。また少し年の離れた親友も非常にいい味を出していた。 ところで本作では広い意味でのウソが問題にされているのだろうと思うが、少なくとも前半の面白さは、アイドルをめぐる虚構に関し見る側との暗黙の合意を前提にして成り立つものと思われる。それで個人的にはこの虚構部分が非常に楽しめたわけだが、終盤ではその虚構を受け入れられない実行犯が出て、これが時代錯誤的な勘違い男に見えていたわけである。 一方、これに代わってラストで示されたのはまた別種の欺瞞であり、劇中のディレクターによれば“隠すことはウソにならない”というタイプのものらしい。この事件の真相は最後までよくわからなかったが、しかし何やら所属事務所が関与していた節もあったので、もしかするとチェーンメール的な事象など初めから存在せず、死んだ実行犯も騙されていただけなのかも知れない。そうすると、最後に出ていたドキュメント制作者もマッチポンプ的に連動していたのではと疑われる。 そういった背景が最後まで明確にされないことで、ここでは底知れぬ恐ろしさが表現されていたと取ればいいのかも知れないが、しかし結局は“何だかよくわからない終わり方”という印象が強くなっていたのは残念なことである。 なお主人公のアイドル(現・麻生かな)は、ものすごく可愛い。それはまあその筋のプロだから当然ともいえるが、演技の方もなかなか頑張っていたようで劇中人物としても愛しく感じられた。結構ブラックなお話であるから、これが本当にこの人のプロモーションに役立ったのかどうか心配になるが(先輩タレントはまともに宣伝していたが)、少なくとも自分にとって好印象だったのは間違いない…走り回ってごくろうさま、なかなか面白かったです。 [DVD(邦画)] 7点(2014-10-26 20:51:03) |
1052. 婚活バトルロワイアル<OV>
《ネタバレ》 どうせどうしようもないバカビデオだろうと思っていたが、しかし見ると結構まともな話になっていたので驚いた。 最初は作り手の良心が全く信用できない状態に見えたが最終的には許容範囲に一応収まり、また演者それぞれの性質に応じて適切な役が振られている(当然だが)ので、何でこの人がこんなものに出ているのか、という不審の念も一応解消される。中盤のインタビューで出ていたシンデレラ観には少し感心したが、最後は少なくとも主人公に関してはちゃんとしたシンデレラストーリーになっていた。 そういうことで、当初のマイナスイメージと、終了後のそれなり感とのギャップが感動的なお話だった。 なお主演女優はこれまでかろうじて存在だけは知っていたという程度だが、これを見るとけっこう可愛いタイプの人だったらしい。汚れ役になりそうでならないハラハラ感が大変結構でした。 [DVD(邦画)] 4点(2014-10-26 20:50:58) |
1053. ゴースト・リベンジャーJK<OV>
《ネタバレ》 主演女優が別のOVでこれの宣伝をしていたので見たが、これを見るよりなら、同時にPRしていたグラビアDVDを見た方がよほど有益だろうと想像する(見てないが)。 これもジャンルとしては「アイドルもの」なのかも知れないが、その性質を除くと他にほとんど何も残らない。笑えるわけでも泣けるわけでもなく、復讐の爽快感もない一方でラストが感動的なわけでもない。あまりに出来が悪いために怒るならまだしも、なぜかそういうこともない(これは自分が寛容な人物だからか)。見た人間の記憶に残さず、スルーさせることを意図して作ったとさえ思えるのが不思議なことである。また「アイドルもの」としても、この人のファンにとって本当に見るべきものになっていたかどうかは怪しいものだが、それは自分が判断すべきことではない。 以上、基本的には見どころのない話だが、それだけでは感想として冷淡すぎるので少し特徴点を書いておくと、主人公の姉役が怪演だったのと(この人は誰?)、魔女館や秘密基地の設えが若干目を引いたとはいえる。 なおどうでもいいことだが、ヒロインは彼氏より背が高く(しほの涼172cm、野崎純平170cm)、かつ顔が小さい。 [DVD(邦画)] 1点(2014-10-26 20:50:40) |
1054. 蝉の女 愛に溺れて
《ネタバレ》 「ラブ&エロス シネマ・コレクション」というシリーズの一つである(R15+)。 内容についていちいち不満を述べたてるのも面倒臭いのだが、原作の場所と違っているため雰囲気がまるで出ていないとか2人の関係設定にかなり無理があるとか背景音楽がチープでやかましいとか劇団などという内輪ネタは見たくないとかそれまでずっとマグロだったのが突然AV女優のような動きをするのは変だとか登場人物がさかんに「仕方ない」と言っている割には何が仕方ないのか全くわからないとかいったようなことで正直なところ不満だらけである。特に、主演女優の経歴からしてエッチ描写が執拗なのはまあ納得するにしても、同僚のAV進出のエピソードなどはストーリー的にほとんど蛇足であり、要はこういうのを見せるための映画なのかと不快感まで覚える。このシリーズの性格というものはあるにせよ、この原作を扱う上でこれがよかったとは個人的には思えない。 加えて不満なのは最後の15分間が完全に不要に思われたことで、これでは余韻も何もあったものではない。原作の短編を1時間半に拡張するに当たって何らかの趣向を付加すること自体は否定しないが、こういうベタに泣かせる話にしなければ満足しないだろうと思われているとすれば観客もよほど馬鹿にされたものである。あるいは、そもそも映画というのは原作を低俗化しなければ成り立たないものだと考えなければならないのか。こんな映画を撮られたことは、撮影地の某県某市にとっても未来永劫の不名誉だろうと思われる。 以上、あまりに落胆したため酷評してしまったが、これは原作を先に読んだ場合の反応であり、映画単独で見た場合にどう思うかは不明である。 なお、ヒロイン役(七海なな)はさすがに見るに値する女優だと思うが、それとは別に、自分がこれを見た真の動機は「いやです」の人(演・住吉真理子)である。この女優は「ヘルタースケルター」(2012)で妹役をやった人であり、同作への出演後はまた減量したと聞いていたが、これを見るとまだそれほど印象が変わっていない。多少やせたとしてもこういう感じの人なのだと思われる。 [DVD(邦画)] 1点(2014-10-25 19:57:44) |
1055. 農家の嫁 三十五歳、スカートの風
《ネタバレ》 「ラブ&エロス シネマ・コレクション」というシリーズの一つである(R15+)。 題名の印象が強いので見たが、「農家の嫁」という割には舅も姑もおらず、また子がいないという条件まで揃ったことでこういうおバカ紀行が可能になっているわけで、その辺はストーリーの都合優先の設定になっている。 主人公の動機に関しては、自分のことを考えてみれば確かにこの歳になって“なかったこと”の埋め合わせくらいはしている(今どき切ない青春映画を見て泣く、など)が、それが“あったかもしれない”などという妄想まではさすがに持っていない。しかしまあ年齢性別が違うということもあるので、やれるうちに存分にやればいいのではないか、と他人事ながら微笑ましく見られなくもない。 またストーリー展開について、主人公が本当に東京まで行ってしまったのは少し驚いたが、その過程で男どもが出て来ては消えていき、それぞれが主人公を前に押す方向に作用するので多段式ロケットのような印象がある。ほかスクールの友人も、当初の裏工作に協力したうえ最後のソフトランディングまで準備していたので、有人宇宙飛行よろしく地上スタッフの支援があって初めて実現できたことのように見えている。最後のオチも気が利いていて、けっこう爽快感のある終幕になっていた。 そういうことで、個人的には特に共感できる映画というわけでもないがなかなかの佳作とは思われる。主演女優はこれまで好きでもなかったが、これで好感度が若干上がった。ちなみに登場人物の広島弁がきついため何を言っているかわからないところがあるが、それはまあ許容範囲である。 [DVD(邦画)] 5点(2014-10-25 19:57:39) |
1056. リトル・マエストラ
《ネタバレ》 非常に具体的な地名が特定されているのはなぜかと思ったら、「協賛」として電力会社の名前が挙がっていたので何となく納得した。劇中で何かと地域社会の先細り感を強調していたのは白々しく、そのために発電所を設置してもらったのではないのか、と言いたくなるが、まあ環境にやさしい風力発電も映っていたので、これでも見て少し心を和ませろということかも知れない。ただし途中で突然サイレンを鳴らす場面があったのは、まるで深刻な事故でも発生したかのような不吉感があったのでやめてもらいたかった。 ところで劇中の台詞として語られたことを聞いていると、楽譜というのは作曲者からの手紙であり、そこにみんな(演奏者?)の思いを乗せて、目指す相手に伝えるのが指揮者の役割だということらしく、こういう一般理論のようなものを得たのがマエストラとしての収穫だったのだろうと思われる。これをこの映画に置き換えれば、作曲者は脚本家、指揮者は映画監督ということになるだろうが、観客に伝えることに関していえば残念な結果というしかない。その場限りの台詞と表情を羅列しても心の動きは自然に感じられず、前記の理屈がわかれば感動するというものでもない。また微妙に芝居じみた陳腐な台詞や展開も苛立たしく感じられるところがある。 一方で、劇中の出来事の結果としてオケに依頼が殺到していたのはどういう因果関係に基づくものか不明だが、いわば競技スポーツ的にコンクールでの好成績を目指すより、鑑賞側(例えば福祉施設、学校など)に合わせた音楽を提供するコミュニティ楽団を目指すのが適切だ、というのならその通りだろう。この映画に関しても、好意的に見てもらいたい範囲(石川県内程度か)を相手にした地元対策の映画としては目的にかなったものかも知れないが、しかし例えば、全国の音楽好きの人に広く見てもらえる映画には全くなっていない気がする。せめてもう少し音楽というものにまともに向き合ってもらいたいものだが、まあ何か事情もあったのだろう。 なお出演者自体に関して特に苦情はないが、点数は主に映像関係に対して付けておく。またついでに書いておくと、原作(マンガ)には体育館で演奏する場面はない。 [2017-02-19追記]2011年の原発事故の直後に、わざわざ別の原発の隣接地でこういう映画を撮ることにどういう思惑があったかわからないが、何やら胡散臭い気がするので当初の2点をさらに減点しておく。別に出演者が嫌いとかいうわけではなく、また冬の日本海岸の映像的な印象は悪くない。 ちなみに現時点では大規模な風力発電施設の建設が全国的に増えていると思われるが、現地からすれば単に周辺の生活環境や自然環境や地元貢献に配慮してもらいたい建設事業(多くは外部資本)に過ぎず、再エネなら何でも歓迎という雰囲気でもない。上に「環境にやさしい風力発電」と書いたのは吞気すぎたと反省しておく。 [DVD(邦画)] 1点(2014-10-01 23:57:42) |
1057. 青いソラ白い雲
《ネタバレ》 主演女優はこれまで存じ上げなかったが、実は結構なお家柄の方だったようで、プチセレブどころかセレブそのものと思われる。劇中人物としては中等部から名門校に入っていたようだが、女優本人は幼稚舎から大学(文学部)までストレートで持ちあがりらしい。体型が非常に特徴的なため何の役でもいいわけではないだろうが(モデルが最適だが)、この映画に関してはまさに適役である。というか、本物がこういう役をやっていること自体が可笑しさを出している点でも適役である。 内容としては心地よい程度のブラックな笑いを含んだコメディになっており、当時の風潮を無遠慮に皮肉る台詞がユーモラスに聞こえる。人が死んだ場面でまで笑わせるのはやりすぎだ(笑)と思うが、しかし基本的にはウソっぽいものを全部引っぺがして地のままで出直そうという趣旨であり、最後にはそれなりの感慨を残す作りになっている。特に、ラストで題名の意味が劇的に明らかにされたのには感動した(笑った)。まるで天国にいるあのお方が、日本復興に向けてわれわれを導いてくれているようで嬉しくなる。 こういう不謹慎なものをその年のうちに制作していたというのは感心するが、自分としてもどうせならもっと早く見ておきたかった気がする。うちの地元でもこの年は春から好天の日が多かった気がするが、この時期に関する人々の記憶が薄れるほど、この映画の価値も忘れられていくかも知れないので、現時点でも自分としては素晴らしい映画に思えたということを証言しておきたい。これは見て本当によかった。 ちなみに、劇中で港区白金(植込み、地上1m)の放射線量として表示されていた0.06~0.07μSv/hは、同時期の自分の住所地における測定ポイントと同程度だが、これは日本国内で花崗岩が分布する地域での地中からの自然放射線量よりは低いようである(日本地質学会のサイトを参照)。 [DVD(邦画)] 9点(2014-10-01 23:57:38) |
1058. がんばっぺ フラガール! ~フクシマに生きる。彼女たちのいま~
《ネタバレ》 先日、いわき市の人々とたまたまお会いする機会があったので書いておく。書いて何かの役に立つわけでもないが。 まず題名の印象からすると終始ダンシングチームに密着取材かと思うわけだが、実際には2011年春~秋の浜通りに生きる人々のドキュメント、といった印象が強くなっている。中で圧巻だったのは双葉町民の一時帰宅に同行して現地に行く場面であり、これは地元民の解説も付いて非常に臨場感のある映像になっている。ウシはいるわダチョウはいるわで大変だが、自宅周辺から発電所の一部が直接見えているのはさすがに慄然とした。 ただしそういったことで誰かを声高に非難するようなものではなく、また悲劇性ばかりを強調するわけでもなく、映像に出ている人々がみな穏やかに自然体で前向きなのが清々しい。ドキュメンタリーにしても意図的にそのように作ってはいるのだろうが、それでわざとらしいと思えることもなく、特に中心人物として登場するサブリーダーが おっとりした感じで気の優しい人に見えるのは心和むものがあった。 また全体構成としては、最初が全国公演で始まって、最後は2011.10.1の部分オープン時のステージショーの時点で終わっているが、これは当然ながら「フラガール」(2006)を意識していたと思われ、映画で描かれていた出発点をここでまた再現したようで、見ている側としても感無量といったところだった。このステージショーの場面を見ていると、ここまでこぎつけた関係者の尽力はもちろん、お客の方もまだ半年でよくこれだけ集まったものだと感心するが、大変な時だから歌舞音曲は停止などといわずにお客自身が楽しむことで、ダンシングチームの人々や会社にも元気になってもらうのが本当の支援ということを納得させられる。 現在でもダンサーはほとんどが地元出身者とのことで、最初から今まで地元貢献ということで一貫しているらしい。こういう困難な時期であればこそ、初心に帰って地元と共存共栄しようとする事業者がいてくれることは地元にとって何よりの財産であり、このことで個人的には いわき市というところが何とも羨ましく思われた。 [DVD(邦画)] 8点(2014-10-01 23:57:34) |
1059. フラガール
《ネタバレ》 前半部はコメディ要素が空転している感じもあるが、何カ所か本当に笑えるところもある(菅原大吉氏の「グギってなった今」という台詞が個人的に可笑しい)。全体としては、わりと平凡で結末も見えている成功物語を演出と演技で盛り上げている感じだが、それでも要所の感涙ポイントには素直に泣かされ、またラストのステージショーは、劇場の大画面で見ていれば大感動だったかも知れないと思わせるものがある。 また物語の背景としては、国のエネルギー政策の転換のほか個人の職業観や人生観の変化といったことも出ているが、中で個人的に気になったのは、妹と先生を背後からサポートしたことだけで兄が満足し、自分は斜陽産業とともに消えていくかのような描き方になっていたことである。女は強いということ自体はいつの時代も同じと思うが、それより男がいつまでも既成秩序に縛られる一方、いち早く抜け出してみせるのは女性だという意味であれば、昭和41年というより21世紀向けの映画という気もする。 ところで幼少時からその存在を知っている自分にとって、“常磐ハワイ”は大衆的な娯楽の場としての低俗なイメージが強かったわけだが、この映画を見たことでその印象が一新された気がする。 劇中で出ていたように、親が危篤でも「バカみたいに笑って」ステージに立つという態度は、この種の仕事としては少し極端な気もするが(客の保安に関わらないため)、しかし逆にいえばそれが作り笑いの真の価値ということだろうし、また当然のことではあるが(今さらこんなことを書くのも失礼だが)プロがプライドを持って仕事をする場なのだということを、自分としてはここで改めて見せつけられた気がした。同時にそれが、炭鉱の単なる代替職場を超えた価値をこの場所に生み出したことの表現にもなっている。 さらにいえば、温泉レジャー施設といったものを地域にしっかり根付かせて現在に至る基礎を築いたという、いわば偉業を顕彰する映画にもなっている。別にこれだけで地域経済を支えてきたわけではないにしても、地元の雇用維持に貢献しようという志は出発点から持っていたものであり、また特に今になってみれば、どんなときにも笑顔を提供する元気の素をここに育ててきた意味もあったのではないか。そういったことをこの時点で全国に紹介しておいた点で、この映画もまた有意義なものだったという気がしている。 [DVD(邦画)] 8点(2014-10-01 23:57:28) |
1060. ヒトコワ -ほんとに怖いのは人間- <OV>
《ネタバレ》 5話オムニバスである。 【知ってはいけない友達の秘密】 有名な都市伝説から始めておいて違う結末を用意しているが、ありがちな話という印象しかない。本来はマミ役の女優が好きで見たわけだが今回はそれほどでもなく(あまりくだけすぎない方が個人的好み)、かえってエイコ役(我妻三輪子)の表情がいい。 【送り○チガイ】 最初からほとんどネタバレである上に、終わり方も本当にこんなのでいいのかという感じ。サチ役(岡本杏理)は、制服姿が似合うかどうかは別として人そのものは好印象。 【親の顔がみたい】 ちゃんとオチが付いているのはいいが、人によっては途中で結末がわかったと言い出すかも知れない。主人公は委員長タイプで、友人にもおばさんっぽいと言われていたが、個人的にももう少しかわいく見せてもらいたかったと思う。 【自分の名前を検索してみたら】 劇中の動画投稿者は見るに堪えないが、しかし井上麻子役の女優(早織)に惚れてしまうのは同感である。この人が本当にいい顔を見せているので感動する。 【あの世からの電話】 最も時間が長く、中身も少し充実している。片桐・加藤の2人の男の対比がなかなかいい感じを出しており、またユキオの母は言葉が微妙に地方人らしく聞こえ、表情も普通っぽいのがかなり真に迫っていた。オチも付いているが、最後の汗はマンガとしても面白くないのでやめてもらいたかった。 以上、全体として凡作(以下)揃いで単調な印象がある。題名のとおり超常現象によらないホラーを目指している(一部を除く)ようだが、そういうアイデア自体は以前からあるので目新しくはなく、また各話の内容もTVシリーズなどで確立したパターンを流用しているだけではないかという印象があってあまり感心しない。特に気になるのはオチらしいオチのない話があることで、別に実話怪談を装う必要はないのだから、ちゃんとお話として締めてもらうのが基本ではないのかと思う。 しかしそういった不満とは別に、スターダストプロモーション所属の多彩な女優を見るという意義はあったと思われる。このあとも続編として2と3が出ているようで、これも同様の趣旨だろうと想像するが見る予定はない。 [DVD(邦画)] 3点(2014-09-07 09:21:28) |