1081. セント・オブ・ウーマン/夢の香り
《ネタバレ》 この映画を観た後、思ったこと。この国(アメリカ)は何て手強いんだろう、てことだった。戦争で手足を奪われたり、悲惨な光景を目の当たりにしてきたアルパチーノ演じる軍人が最後、生徒たちの前で言った「一番悲惨なのは魂がつぶれた人間」という言葉に、生徒たちの多くが拍手を送る光景を見て思った。映画だけど、支持されてる映画ってことは共感されてるってことだ。1990年代の映画だが、エリート校の生徒たちがこのような考えをもって大人になるのだとしたら、2010年代の暗礁に乗り上げたようなアメリカではあるが、地下に脈打つ国民の魂は死んではいないってことかもしれない。でも中東との戦争で変わったかな?でも根っこはこういう国民性だよね。日本のエリート校はどうだろう?陰惨ないじめなどのあるこの国で、果たしてこのアメリカと伍する国民性を持ちうるか?そう思った。しかし偏屈な盲目軍人をアルパチーノが見事に演じていた。この人の愛すべき老人になろうとしない毒舌に、最後は皆が拍手を送るんだなぁと微笑ましく思った。 [ビデオ(字幕)] 8点(2016-08-28 21:56:07) |
1082. はなれ瞽女おりん
《ネタバレ》 この世の地獄が見えぬよう、神様が眼を見えなくしたと教えられて育つおりん。まさしくこの映画での展開は、地獄模様。かくしておりんは絶望して、自ら命を絶つ。本当に救いのない映画だった。一体、監督の言いたいことは何だったんだろう?無常だろうな・・。岩下志麻の美しさが、それを際立たせていた。花は萎れるがゆえに美しい。そんな世の無常を謳った映画だった。 [DVD(邦画)] 7点(2016-08-27 20:08:47) |
1083. オーケストラの少女
《ネタバレ》 イイですね~。観るなら、こんな映画を観たいですよね~。あり得ない話と一笑するのも野暮。せめて生きづらい世だもの、せめて映画を観るときは、顔がにやけてしまうような映画が観たいですよね~。面白い映画とは、こういうのを言うんでしょうね~。 [ビデオ(字幕)] 8点(2016-08-26 23:45:20) |
1084. ショート・カッツ
《ネタバレ》 アルトマン節、絶好調!浮気をごまかす嘘に爆笑する妻、下半身露出して痴話げんかする女性、等々もうこれでもかって感じで、群像劇中の女性のB面を描く。これは結婚してる男性にはうなづけるとこがあるのだろうか?それともアメリカという国がやり過ぎなのだろうか?それか嫌われ者のアルトマンの人生観なのだろうか?しかしよくまぁこんなに淡々と生活を描くだけで3時間ももたせるよ。BGMもほとんどなくて、それどもついつい見入っちゃうのは、他人の家の裏事情に好奇心が行くからかな?いやアルトマンが上手いんだろうな。群像劇を見せる演出が只者じゃない。・・で最後まで観て、地震しか起きない、って変な映画(笑)。これで終わり?って皆思うよね。それかやっと終わったと思うか?アルトマン群像劇は自分は「ナッシュビル」が断然好きだなぁ。 [ビデオ(字幕)] 7点(2016-08-21 22:41:11) |
1085. 白いドレスの女(1981)
《ネタバレ》 まぁこんな悪女、いないんでしょうけどね。話の面白さに重点を置いた映画。ローレンスカスダンは「再会の時」でもそうだったけど、男性に精神的に頼らない女性をいち早く描いてた監督。男性の目線から、そのような女性を描くというのはやっぱり画期的(?)だったんだと思う。それにしてもキャサリンターナーは冷たい美人に見える風貌なのかな。後に「女と男の名誉」では殺し屋まで演じてる。まぁ冷たい女性じゃないんでしょうけどね。 [ビデオ(字幕)] 6点(2016-08-21 14:36:34) |
1086. 野火(2014)
《ネタバレ》 人肉を食べたという内容は、前からあってドキュメンタリーの「ゆきゆきて、神軍」や、アメリカでは「生きてこそ」とかある。しかしそこに人間としてあるまじき行為だという罪の意識を深く問いかけるのは、大岡昇平の「野火」が筆頭だろう。高校の時、課題図書にまでなった。先生には悪かったけど、最後まで読んでない(笑)。その映画であるが、塚本監督はどっちかというと映像作家である。だから戦闘場面は彼らしい映像で我々に投げつける。そこはいいのだが、人肉を食べるまでの葛藤や、飢えの凄まじさみたいのは、あまり描かれてなかったように思う。でもこんな戦争映画、日本になかった。やはり功績大と言えると思う。 [DVD(邦画)] 7点(2016-08-21 07:57:15) |
1087. タイタンズを忘れない
《ネタバレ》 当時としては盛り込み過ぎの感はあったようだが、今の映画に慣れてる自分に消化不良はなかった。しかし男の話に何故か小さな女の子がよく似合うね。漫画「ドカベン」のサチコみたいに。このアメフトの白人コーチの娘は男の汗くさい話の中に丁度いいアクセントになる。白人と黒人のぶつかり合い。でもどっちにしても悪い人間じゃないし、スポーツを通せば友情も築ける。試合に勝ち続けるというのは、ちょっと話が良すぎるかと思いきや、実話なんだね、これ。人間の理解が深いと、スポーツも強くなるのだろうか? [ビデオ(字幕)] 7点(2016-08-19 23:13:17) |
1088. ブリッジ・オブ・スパイ
《ネタバレ》 よく「水面下」で色々政治的なことが行われてるというけど、なるほどこういう事なのか、といった映画でした。スピルバーグにしてみれば、2枚舌(1.5枚舌?)交渉の現場のダイナミクスを映画にしたかったのではないでしょうか?スピルバーグの天才的な演出も随所に見られ、面白かったです。しかし「リンカーン」もそうだったけど、セリフが多いよね。次回作はもっと演出で画面に引き込まれるような作品を創って欲しいなぁ。「インディジョーンズ」かな?次は? [DVD(字幕)] 8点(2016-08-13 21:17:06) |
1089. 黄金のアデーレ 名画の帰還
《ネタバレ》 どこがクライマックスの映画なんだろうと思って観ていた。法廷劇も大してスリリングでもなく、人間ドラマとしてもよく伝わらなかった。この映画の感想は、これはユダヤ人が観たら、してやったりと思ったろうなぁということだけ。ナチスの残虐な仕打ちに祖国ウィーンも助けてくれなかった。そのウィーンにあるナチスに奪われた姉のモデルの絵画を、ユダヤ人を受け入れてくれたアメリカにいるヘレンミレン扮する女性が自分のところに取り戻そうとする話。・・・そうだよね。非道い話だもんね。ナチスのやったことは。歴史の非人間的なことに声をあげた映画がここもう一つできた。確かに非人道的な歴史は許せない。どれほどの悲劇が悲鳴をあげているか。今のこの瞬間にも、そんなことが中東やあちこちで起きている。本当にね、それを前に個人は非力だと思うよ。ただこの映画に関しては、自国(ウィーン)の文化の顔のように思われてた絵画が、よその国(アメリカ)の美術館に行ってしまう。その絵画を愛したたくさんの人たちが残念に思うだろうなぁという気持ちも捨てきれず、主人公たちに感情移入のしづらい面もあったなぁ。 [DVD(字幕)] 6点(2016-08-13 15:42:42) |
1090. 女殺油地獄(1992)
《ネタバレ》 近松門左衛門の五社英雄流の解釈ものである。バブル後の日本の作品だけあって、ちょっと女性の描き方が粗い気もした。樋口可南子の役どころがイマイチ現実味がなかった。与兵衛を誘うとこなど、説明不足で急で、ついていけなかった。与兵衛が子どもの頃の「おばはん」とのやりとりも描いた方が良かったのではないか?2時間弱の映画では、ちょっと理解しづらかった。まぁあの「鬼龍院花子の生涯」の監督だからなぁ。この近松「女殺し油地獄」1957年版も観てみたい。 [ビデオ(邦画)] 6点(2016-08-11 11:26:54) |
1091. シティ・オブ・ゴッド
《ネタバレ》 リオ五輪真っ最中なので、ブラジル映画をチョイス。それがこの作品だったが、南北アメリカでギャングの成り立ちが全然違うんですね。犯罪の絶えないスラム街で、一人の凶悪な子どもが出てくる。話はこの子どもの生い立ちに触れない。何故こんな凶悪な子どもが生まれたのかが分からないため、この映画はバイオレンス映画になってしまったが、これが実話なら、その辺が大事だと思う。ラスト、警官に賄賂を渡して、悪玉が釈放されるのが切ないが、そこにとどめをさすのが、若い子どものギャングというのが、もっと切ない。テンポもよく、飽きさせないストーリー運びにブラジルの文化度が分かる。 [ビデオ(字幕)] 7点(2016-08-07 13:56:48) |
1092. ワンダフルライフ
《ネタバレ》 ドキュメンタリー調の前半に、話に入り込めず、自分だったらどの想い出であの世に行くかなとぼ~っと考えてた。一つだけ選ぶいい思い出で、あの世に旅立つ、この世とあの世の際(きわ)の世界の話。しかし、それは一番大切なものを選ぶことでもある。親か恋人か子どもか自分か・・。選べない人も出てくる。それがこの会社の人たち。モラトリアムは次元を超えて、あるもんなんだね。・・にしても協賛にどこかの葬儀会社が入っているのかな?葬儀会社のCMにピッタシの題材。監督の、映画は夢工場ではあるけども、天国工場にもなりうるか?という問題意識を感じました。 [ビデオ(邦画)] 7点(2016-07-31 23:27:09) |
1093. 幻の光
《ネタバレ》 海辺の村の時間の流れ方、ロングばかりではっきり見せぬ江角の美しい顔、子どもたちの自然な振る舞い。後の是枝節の萌芽はあちこちで見受けられる。是枝は職人になりたかったらしい。すると周囲から作家でいてくださいと言われたらしいのだが・・。確かな演出。奇をてらわぬ素材。海外で賞をとったのもうなずける。でも江角の美しさに票が集まったのかもしれない(笑) [ビデオ(邦画)] 9点(2016-07-30 23:58:56) |
1094. アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
《ネタバレ》 見応えあった。オールスター映画としては言うことなし。それぞれのヒーローの苦悩みあり、見せ場あり、ロマンスあり。細かい設定は分からないが、皆の曲者の性格がストーリーに活かされてて、十分楽しめた。敵がAIというのが分かりにくかったが、ヒーローの敵のAIとなると、こんな邪悪になるんでしょ。前回活躍した空中空母も最後の最後に見せ場があって、ジ~ンときた。兄を失った双子の妹や今回の悪のAIと生体化学の相の子が、新アベンジャーズの仲間入りとなるのだけど、イマイチ頼りないメンバーだよね。多分、新アベンジャーズが手こずったころに、元祖アベンジャーズが助けに来るんだろうけど(笑)。戦争映画でも、人間が敵じゃないから、安心して観てられる。ユーモアも許される。話、盛り込み過ぎて、気が抜けなかったが、あっという間の2時間強だった。 [DVD(字幕)] 9点(2016-07-30 19:37:46) |
1095. トランセンデンス(2014)
《ネタバレ》 エンターティメントの要素はかなり薄いが、題材が興味深い。人間の意識をコンピューターにアップロードすれば、AIの完成度にもよるだろうが、意識はずっと生き続けられるっていう問題提起は面白い。でも他のAI(医療技術のAI)ともやり取り可能になるのかな?アップロードしても24時間パソコン操作する人格があるっていうことでしかない気もするが・・。せっかくこんな面白い題材なんだから、死んだ人の意識がコンピューターに残ってる世界で、遺された人たちはどんな気持ちがするか、深く掘ってほしかった。スパイクジョーンズの「her」ならぬ「he」だね(笑)それにしてもモーガンフリーマンは科学ものによく似合うね。リュックベッソンの「ルーシー」もそうだけど・・。なんか知的な感じするもんね。 [DVD(字幕)] 6点(2016-07-30 16:48:16) |
1096. サンドラの週末
《ネタバレ》 ダルデンヌ兄弟の新作。会社は金を得るための集まり。時として一緒に助け合ったりして働いてる「仲間」なのに、その「仲間」より金の方を優先する人も出てくる。サンドラは、ボーナスか自分かの選択を突きつけられた「仲間」に接していくうちに、この会社は一緒に働くのに値しない会社だと分かってくる。結局、サンドラはクビになるのだが、ボーナスより彼女を選んだ仲間には、大切なものを失わずに済んだ誇りのようなものが残る。ダルデンヌ兄弟は、新しい社会の病理などに飛びつかず、今足元で起こっている人の絆の問題を、改めて何度も何度も映画にしていく。新しい社会問題を取り上げるのだけが、映画ではない。もしかすると歴史に残る作品は、ダルデンヌ兄弟の方の作品かもしれない。 [DVD(字幕)] 7点(2016-07-30 13:54:19) |
1097. 祇園の姉妹(1936)
《ネタバレ》 小津をして「俺に撮れない映画は溝口の「祇園の姉妹」と成瀬の「浮雲」だけだ」と言わせた、その作品を鑑賞した。なるほど、人を舐めたやつは舐められる。当たり前の理屈だ。芸妓を舐めた男どもに囲まれるうちに、段々と男を舐めはじめる山田五十鈴扮するおもちゃ。これも当然だ。しかし物語は、男を舐めるなとおもちゃを痛めつけたところで、おもちゃが芸妓なんて商売なければいいのだと嘆くところで終わる。巨匠溝口のこの作品の落とし前何処は如何なものか。ここでラストではいけないのではないか?これでは男を舐めた、男側が作った映画ということになる。それでは男の面子がたつまい。ここをきちんと料理した作品だったらなぁと思った。が、男を舐める山田五十鈴の演技は、恐ろしいほどの演技だった。ぞ~っとした。なるほど、小津さんにこの迫力は出せるだろうかとしみじみ鑑賞後、思った。 [ビデオ(邦画)] 8点(2016-07-27 00:57:30)(良:1票) |
1098. プリティ・ウーマン
《ネタバレ》 楽しくってイイよね。ビジネスって人間社会あってのものなのに、ビジネスだけが先走って、すべてがビジネス優先。そんな世界に生きてるリチャードギアが、人間らしく生きていってる下町の娼婦の女性に、何が大切なのかを思い知らされるって話をお洒落に描いた娯楽作品。まぁちょっと昔の映画だから、今観ると、当たり前のことを言ってるんだけど、当時は中々インパクトがあったみたいですね。その監督、ゲイリーマーシャルも亡くなってしまった。娯楽作品を創る作家さんってあまり大きく報道されないけど、無くてはならない文化を支えてる人たち。レンタル屋のポップで亡くなったことを知った。 [ビデオ(字幕)] 6点(2016-07-24 14:42:57) |
1099. 緋牡丹博徒 お竜参上
《ネタバレ》 藤純子と言えば、僕なんかは東山くんの「山桜」に出てた冨司純子のイメージが強い。僕らより前の人たちは、この緋牡丹シリーズなんだろうなぁ。どれから観ていいか分からないので、とある映画本に紹介された本作を鑑賞。まぁあの「山桜」の品のいいお母さんのイメージあるある。あぁ極道やっても、乱闘しても、品がいいんだなぁと感心。女は度胸。惚れ惚れします。 [DVD(邦画)] 6点(2016-07-23 22:46:23) |
1100. 鬼龍院花子の生涯
《ネタバレ》 ヤクザな父親も人の子。女性にだらしないのに、ハートがある。その辺を仲代達矢が鬼気迫る演技で見事に演じてる。鬼龍院松恵の生涯なのに、タイトルが花子であるのに疑問を持つのは、原作未読だからか。松恵役の夏目雅子の代表作と言われる本作だが、自分は「瀬戸内少年野球団」の素朴な先生の方が夏目らしくて好きだ。この作品の「なめたらあかんぜよ」は日本映画史上の名セリフ。いや~堪能しました(笑) [DVD(邦画)] 7点(2016-07-23 17:56:10) |