1081. 小さき勇者たち ガメラ
《ネタバレ》 いつもとは違うテイストの怪獣映画。個人的にはかなり好きです。 従来の『ゴジラ』『ガメラ』シリーズに比べると、牧歌的なドラマパートがとても新鮮で感情移入しやすいです。 ラストで子供達がリレーを始めたり、自衛隊の前に立ちはだかってガメラを守ったり、少々臭すぎる演出は確かにあります。ですが、主人公たちとガメラの触れ合いを前半で丁寧に作りこんでくれていたので、逆にそんな臭い演出にほろっと感動しちゃいます。 また、怪獣映画としてもその怖さを存分に堪能できる仕上がり。 ここからはかなり個人的な好みの話です。 今作の『ガメラ』及び『ジーダス』のサイズが、かなり絶妙です。おそらく、『あまりに大きすぎる生物』は、私にとって娯楽の対象にはなりますが、恐怖の対象にはならないみたいです。私達の目に『アリ』が視界に入らないように、大きすぎると自分達のことなんてどうせ見えていないんでしょって思っちゃいます。 ですが今作の『ジーダス』のサイズだと、完全に見られています。『ジーダス』が道をふさがれた人々を捕食するシーン。直接の描写は瓦礫で見えませんが、前半のキッズドラマとのギャップで凄いインパクトがあります。今までのめちゃめちゃでかかった怪獣たちに比べ、余程恐怖を感じます。 ただそのジーダスも、途中からエリマキトカゲみたいな姿になっちゃって、そこが残念。そんな微妙な正体だったら、元の姿のままがよかったです。 そして少年。最後の最後で『さよなら、ガメラ』って、そりゃないよ。そこは『さよなら、トト』でしょう。 [DVD(邦画)] 8点(2017-05-25 02:07:56) |
1082. ドゥーマ
《ネタバレ》 ドゥーマとの出会い。父親の病気、死別。母親との新しい生活、新しい学校。 ドラマ性が強い序盤、正直面白いのはここまでだと思います。 主人公の男の子がドゥーマを自然に帰しに行ってから物語は失速。 そこから先は男の子一人とチーター一匹のロードムービーなわけですから、当然人間ドラマなんてないわけです。 ようやく出会った旅人、っていうかバイクドロボー?目的不明、素性不明で怪しさ満点。これはちょっとテイストが変わってくるぞ、と期待します。いったい何者?善人?悪人?ってね。で、結局どっちかつーとただの善人で凡人です。 つまり、序盤の人間ドラマから、中盤以降はアドベンチャー形式のロードムービーと移行するわけですが、このアドベンチャーがどうにも弱いんです。『ファミリー向け』という大きな壁が、この作品から『スリル』『緊張感』『刺激』、そういったものを根こそぎ奪っています。 よって映画としてはとても中途半端。腰が引けてると言い換えても良いでしょう。 友情や家族愛を訴えるドラマとしては浅く、アドベンチャーというにはあまりにもつまらない。 『激流』『ワニ』『ライオン』、危機という危機がすべてだだすべり。 唯一主人公パーティーをわかりやすく窮地に陥れたのは『虫』。虫か・・・。 [DVD(字幕)] 5点(2017-05-24 02:55:27) |
1083. ガメラ2 レギオン襲来
《ネタバレ》 『ギャオス戦』から1年くらいしか経っていないのに、映像技術に凄い差を感じるのは気のせい? 今作における『ガメラ初登場の飛行シーン』、『小型レギオン初登場のホラー演出』、今までの怪獣映画の中で、この2つのシーンのクオリティは群を抜いていると思うのです。 そして『レギオン』、素晴らしい敵ですね。『怪獣』と『エイリアン』を見事に融合させた造形とその高いスペック。ガメラのライバルとして申し分なかったと思います。思うに、理想的な敵とは、主人公(ガメラ&人類)より『ちょっとだけ強い』ってのが大事ですね。そして多様性。この2点をクリアしている『レギオン』は歴代怪獣の中でも最高傑作と言っていいんじゃないでしょうか。 まずは『小型レギオン』の造形と攻撃力。『怪獣はでかいもの』『人間では太刀打ちできないもの』という常識を根底から覆しているその発想の柔軟性が素晴らしい。その小ささから、ガメラでは手に負えないが、逆に人間には倒せちゃうっていうのは、今までの怪獣映画にはなかったプロットです。『ガメラ』と『人間』による、本当の意味での『共同戦線』。こーゆーのがぜひ見たかったんです。 更には大爆発とともに種子をとばす、時限付き核爆弾のような『草体』。多彩な攻撃、鉄壁の防御、圧倒的な強さでバトルを盛り上げる『大型レギオン』。そんなレギオンたちに何度もやられながら何度も立ち上がるガメラの痛々しいこと。 今作のガメラは、『小型レギオン』にやられ、『草体』の爆発にまきこまれ、『大型レギオン』に一度はコテンパンにやられてしまうという、痛々しさが半端ないんです。多分シリーズ中最も血を流している作品です。そこには『プロレス』にも通じる、相手の攻撃を真っ向から受け止めるというかっこよさを感じるのです。 いよいよクライマックス。いったいここからどうやってガメラは勝利を掴むのか・・。どきどき・・・。 ・・・っておい、マジンガーZかよ、っていう必殺技。そしてラスト飛び立つとき、なぜか回転ではなくてロボットのようなジェット噴射。最後の最後で、なんかがっかり。いや、これね、ゴジラシリーズだったら全然良いんです。ガメラだから、なんかこんなんガメラじゃないっていう、そーゆーがっかりなんですよね。 [ブルーレイ(邦画)] 7点(2017-05-23 11:04:24) |
1084. フーリガン(2005)
《ネタバレ》 暴力団体を正当化・美化するような作風なので、手放しに賛同すると眉をひそめられそうですが、映画としては文句なしに面白い。 日本で言うなら、中学の時は普通の生徒だったのに、高校で偶然不良と仲良くなっちゃって、成り行きで高校デビューしちゃうのに近いです。 こーゆーシチュエーションは、ヤンキー漫画にはまったことがある人なら共感しやすそうです。 『喧嘩が強い』『度胸がある』、この2つが揃っているだけで、仲間と認められちゃう社会構造。自分への自信とつながっていき、仲間から頼られる心地よさに陶酔しちゃうんですよねー。この単純な思考回路。男ってほんとバカだよね。大人になりきれない子供です。 『大人になった現在はもちろん、学生のときだってこんな世界に飛び込む勇気はなかった。でも心のどこかでこーゆー世界に憧れている自分が確かにいる。』そんな人には、間違いなく満足できる追体験をさせてくれる一本です。 その一方で、こーゆー客観的に見れば『バカ丸出しの世界』がその性質上避けられないリスクを明確に描いているところはエライと思います。『友人の死』『家族の離散』『過去の過ちに対する報復』。これをしっかり描いているため、この作品はただのエンタメ作品から意味のあるメッセージ性のある映画へと昇華されています。 もちろんそのためには、『ホヴァーの裏切り』や『ピートの死』など、半ば強引な展開もありますが、これらのエピソードによって映画がより一層面白くなったのは間違いありません。 更には『謎の元リーダーの正体』というサプライズ、『マットの成長を感じさせるラストのシークエンス』など、決着つけてほしいところは、きっちり白黒つけてくれるので、ラストでは爽快なカタルシスを得られます。 その一方で『トミーの息子の死』や『スティーヴ、ピート、ホヴァーの因果関係』を考えると、拭いきれない後味の悪さってのも確かに残るんです。 これはなかなかの力作だと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2017-05-22 02:37:11)(良:1票) |
1085. キンキーブーツ
《ネタバレ》 『サクセスストーリー』というワードに惹かれ鑑賞。結論から言えば、期待していたような作品ではなかったです。 『経営危機の靴工場の再生』というわくわくするストーリー。それは良いのですが、思っていたより『同性愛』『性同一性障害』の割合が大きい。それに対する偏見・差別といったものを、かなり真面目に取り上げてるので、結果映画のリズムが悪くなっているように感じます。 また、『従業員との衝突』『婚約者との衝突』など、困難が多いのはわかるのですが、その困難に立ち向かうには、チャーリー・プライスに魅力とパワーが足りません。 更に、チャーリーが『いかに靴と父親と工場を愛していたかがわかるエピソード』が、劇中ではあまり描かれません。この作品の最大の問題点は説得力の欠如です。それでもチャーリーが靴工場再生に向け、もっとなりふり構わない姿勢を終始見せてくれていたら、もっと印象は変わったかもしれません。 チャーリーは、『ミラノのステージのため、自宅を抵当に入れる。』『父が売却の話をしていたかどうかは関係ない。私にとって従業員は他人ではなく仲間だ。』などと熱い一面を見せます。この作品のプロットからいけばファインプレーでしょう。 ですがそれ以外の面はどうでしょう。私には彼の公私混同の面がやたら目につきます。最も大事なときに、婚約者の裏切りでささくれた気持ちをローラにぶつけるなんてのは、その最たる例。主人公に魅力が無いサクセスストーリーは、『偶然が重なった結果オーライの産物』にしか見えず、爽快感も何もあったものじゃない。 また、『ニッチの市場に活路を見出した靴工場に再び各企業から注文が殺到する』というのがゴールだと思っていたので、私としては、この作品はストーリーの途中でエンディングを迎えています。 更には婚約者とは理解しあえないまま、とゆうか理解してもらう努力すらせず、新しい彼女とくっついてしまう主人公。 冒頭でクビにされたままの15名の従業員。 どこまでが実話なのかわかりませんが、『実話』にのっかって、工夫と創作努力を怠った凡作だと思います。 ゲイバーの人達の脚をアップで写しての一言、『見て、ニッチの市場よ』。ミラノでの逆転ステージ。従業員達のカムバック残業。などなど、見所も多いだけにもったいない作品です。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2017-05-21 14:22:47)(良:1票) |
1086. テキサス・チェーンソー
《ネタバレ》 これは怖い。前半、不気味で不穏で程良い緊張感。後半はたたみかけるようにスラッシャーホラー。 前半さすがにひっぱりすぎで、ちょっとダラダラしちゃったことを除けば、スラッシャー系ホラーとしては一流。不条理系ホラーとしては超一流です。あの狂った家族の、何もしていないときの怖さといったらなかったね。 人って、『何もしていないとき』が一番怖いかもしれないです。『今から自分の身に何が起こるのか。』、これがはっきりしないときの、不透明なドキドキ感がたまらない。とにかく、『説明が一切無い』、というのは怖いものです。 かと言って、レザーフェイスがチェーンソーふりまわし始めたら怖くないのかといったら、それはそれでやっぱ怖いのです。 レザーフェイスの、最も暴力的でありながら、最もコミュニケーションが取れない怖さ。彼の何を考えているのかわからない怖さっていうのももちろんありますが、『躊躇のなさ』がやはり一番怖い。まるで子供が虫の羽を無邪気にむしっちゃうような、無機質で無感動な暴力。それが自分に向けられるってのは、凄い恐怖感を煽られます。 話は変わりますが、個人的にホラー映画で好きな瞬間ってのがあります。 『窮鼠ネコを噛む』とか、『一矢報いる』とか、『形勢逆転』とか。そーゆーシチュエーション、たまんないんですよね。僅かなチャンスをものにする、その一瞬でしか感じられない爽快感。ホラーで一番テンションが上がる瞬間です。 レザーフェイスの腕を切り落としちゃうのも凄かったのですが、何といっても保安官を何度も轢いちゃうラスト。 『いけいけー』って、久しぶりにフィクションの世界を応援しちゃいましたね。 まあなんだかんだ言って、一番怖いのは『チェーンソー』だったりします。あの問答無用の攻撃力。そして『音』。チェーンソーって、なんであんなに凶悪な音をしているんだろう。 [DVD(字幕)] 8点(2017-05-20 14:39:51)(良:3票) |
1087. バタリアン2
《ネタバレ》 1作目ではまだ強かったホラー要素が、2作目ではかなり薄くなっています。 十分怖く出来そうなシーンやシチュエーションをお膳立てしておきながら、あえて怖くならないように茶化しちゃっている感じですね。完全に『笑い』に力を入れて、普通のホラーとは違う路線に行こうとしているのがよくわかります。これはこれで一つのエンタメ作品。 ジェシーに突き落とされるタールマンや、ジョーイとエドのセルフパロディを筆頭に、手を何度もふまれるバタリアンなど小ネタが満載。まるで吉本新喜劇のようなノリ。ここまでふざけちゃうと、この映画に対する好き嫌いは、1作目よりはっきり分かれそうです。 ちなみにトム・マシューズとジェームズ・カレンのコンビは、1作目もややうるさかったのですが、今作はそれに輪をかけて酷いです。また、この二人にひっぱられるかのように、周りの人達も負けじとうるさい。ぴーぴーぎゃーぎゃー無駄に騒ぎ、やたらもたもたしているので、映画全体のテンポ、スピード感が前作より悪い。 また、フィールドが前作より広くなっているのですが、広くなったがためにディテールはかなり雑に。町全体をフィールドにするのは好きなのですが、町のパニックを演出しないのであれば、フィールドを広くする意味はないと思います。 まあB級ホラーコメディなわけですから、これくらいの完成度であっても十分楽しめます。 ただシリーズものなので、前作と相対評価すると、やや物足りないとゆーことで、評価が落ちますね。 [DVD(字幕)] 6点(2017-05-19 14:55:34) |
1088. パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド
《ネタバレ》 パイレーツ・オブ・カリビアンって、見た後の気持ちが、『面白かった』とか『つまんなかった』などではなく、『見た!』って感じなんですよね。なんだかんだ言いながら、課題をやりきったときの達成感と疲労感に満たされるのに近いです。 それにしても相変わらず、自分達だけが楽しんでるような映画ですよねー。 いつの間にかクラーケン死んでる。デイヴィ・ジョーンズがベケット卿にアゴで使われている。ティア・ダルマの中にはカリプソという女神がいることになっている。 どれもこれもが、『じゃ、そーゆーことになっているから、黙ってついてきてね。』という設定ばかりです。 『わかりやすく、面白く』なんて気配りはみじんも感じられず、『みんなこれくらい知ってて当たり前』みたいな前提を平気で押し付けてきます。ですがそんなパイレーツシリーズが世界中で大ヒットしているわけです。もの凄い興行収入をたたきだしているのです。映画の世界は奥が深い。何が売れるかわかりませんね。 前作ではクラーケン。今作ではラストの一大決戦による大渦など、ビジュアル面での見所は確かにあります。 ですがそれだけのために、3時間近く付き合う気にはもはやなれません。 最新作まで頑張って見続けようかと思いましたが、もうこれ以上貴重な時間を無駄にしたくないという気持ちに逆らえない。 残念ながら私はここでギブアップです。 この作品のもう一つの長所をあげるとすれば、ここで一段落つけてくれたので、これで見るのをやめられるというところですね。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2017-05-17 13:55:41)(良:1票) |
1089. ファインディング・ドリー
《ネタバレ》 前作で、そのうっとうしさに少々苦手なイメージがついてしまったドリー。 今作は主役。多少の不安を抱きながら、おそるおそる鑑賞。 結果、うっとうしさは相変わらずのドリーですが、健気に両親に会いに行こうとするその姿、凄く良かったです。 声優さんの力によるところも大きいのですが、小さい頃のドリーが本当にかわいくて、ますます感情移入しちゃいます。 ストーリーは単純明快ですが、二転三転する情報により、『結局ドリーの両親はどこにいるんだ?』っていうプチミステリーの要素があって面白い。 そして魅力的な新キャラも登場。 眼が悪いジンベエザメのディスティニー。エコロケーションが使えないシロイルカのベイリー。海が怖いタコのハンク。 うーん、さすがディズニー。誰も彼もが愛すべきキャラに仕上がっていますね。 そして言わずもがな映像のクオリティの高さ。ついにここまできたかというビジュアル。 特に水面、そして『水面から見る地上の景色』は実写と見紛うばかり。更にはオープンオーシャン(大水槽)を遠景で眺めたときの画は言葉にならないくらい美しい。 ラストがちょっとひっぱりすぎですが、ドリーが貝殻を見つけてたどっていくシーンは文句なしに感動のシークエンス。 こんなに完成度の高い名作なのに、タコのハンクがベビーカーを走らせたり、トラックを運転したり、行き過ぎた擬人化がとても残念。興が冷めちゃいます。 あくまで『魚達の世界』の限界を超えない範囲で、夢のあるアドベンチャーを見せて欲しかったですね。 『何でもアリ』ってゆうのは、少なくともこの作品には相応しくなかったと思います。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2017-05-16 01:17:39) |
1090. ガメラ 大怪獣空中決戦
《ネタバレ》 期待してみただけに、評価が辛めになっちゃいます。 オープニングから中盤くらいまでは、雰囲気があって非常に良いです。 『ギャオス』にしろ『ガメラ』にしろ、「いったいこれは何だ?」と姿を現すまでの緊張感は素晴らしい。 ギャオスの糞の中から出てくる関係者の持ち物。この画が、生物としての生々しさを感じさせて期待が膨らみます。 これは『ゴ○ラ』とは一味違うぞという気にさせてくれます。 そして後半。ガメラとギャオスのガチンコ対決。一番の見せ場、が、なんか一番かったるいのは気のせいでしょうか。 やはりここは普通の怪獣映画なんですね。また、どうしても怪獣が出てきてからは模型を使ったシーンも多くなるため、テンションが下がってしまいます。飛行シーンの合成具合なんかは作り物感が半端ないです。 中盤以降の、出来ない描写を無理矢理力技で作っちゃうような画よりも、、前半のようにできる範囲で限りなくリアルに近づけている画のほうが好き。 また、伊原剛志の少々わざとらしい演技や、藤谷文子の棒読みも、鑑賞のジャマになっちゃうレベルです。 ただ、ストーリーは良かったです。 地元福岡の映像がたくさん出てくるのも嬉しい。 [ブルーレイ(邦画)] 5点(2017-05-15 02:23:23)(良:1票) |
1091. バタリアン
《ネタバレ》 子供の頃、それはそれは怖かったのを覚えています。トラウマになっちゃうシーンも数多く。 ですがこれって、『コメディ』に分類されていることが多くて、『まじかよ。日本人、すげーな。』ってずっと思ってたわけです。 そこで、今回意を決して、過去の弱かった自分と決別すべく、30年ぶりの鑑賞。 なるほど。確かにコメディ要素がありますね。子供の頃は怖くて、それどころではありませんでしたが。 ある意味思い出補正というやつですね。今見ると、グロさ、怖さもさほどではありません。 ですが、大勢のバタリアンに追い詰められるスリル。仲間が少しずつバタリアンになっていく緊張感。古き良きホラー映画の大事なポイントはしっかり押さえてあります。 その一方で、『救急車もう一台』『応援たのむ』と罠をはるバタリアン。道具を使って扉を開けようとするタールマン。斬新な笑いどころが随所にちりばめてあります。 確かにホラーとコメディ。相反する二つのジャンルのトータルバランスが優れている良質ホラーと言えそうです。 『オバンバ』や『タールマン』など、知性はなくても個性を与えられたゾンビがいるっていうのも、この作品ならではでしょう。 それにしても、『走るゾンビ』って『28日後・・・』が初めてかと思っていましたが、この映画、もうすでに走っていますね。しかもしゃべる。ホラー映画のパイオニア。ただし、今の映画みたいにゾンビメイクが凝っていないので、あんまり元気に走り回られると、もはやただのスタッフにしか見えないのが難点です。 『自ら焼却炉の中に入っていく。』『てぃ~な~』『あの音はなんだ・・・』クライマックスでたたみかける絶望テイストはなかなか良いと思いマス。今振り返ると、キッズだった自分はこのたたみかけがトラウマになっていました。さよなら、幼かった私。今見ると、『怖い』『面白い』より、やっぱ『古い』って思っちゃう。最恐の映画『バタリアン』も、時の流れには逆らえないみたいです。 あと1点だけ。この作品って、実は低予算なんでしょうか。『悲劇は繰り返す』の大事なオチの部分が、他のシーンの使いまわしだったのは正直残念です。 [DVD(字幕)] 7点(2017-05-14 10:42:36) |
1092. アンフィニッシュ・ライフ
《ネタバレ》 なんかよくある『雰囲気だけやたら良い映画』って感じがします。 何か起こりそうで、たいして何も起こらない。 何か秘密がありそうで、そんな隠すほどの秘密じゃない。 メインの人たちがあまりに心の動きを隠すので、さすがにもったいつけすぎじゃないかと思います。 かと思えば、これといったエピソードもなく、わりと簡単に心のわだかまりがとけちゃったり、なんか終始雰囲気に誤魔化されているような気がします。 優等生な作品は嫌いではないんですけどね。優等生ぶっている作品っていうのは、どうにも肌に合わないみたいです。 全体に漂うなんか説教臭い空気が、好きになれないな。 それにクマを逃がしちゃうってのも、どうでしょう。 あなたたちにはたいへん意味のある行為なのかもしれませんが、そのせいでその他大勢の町の人達を危険に晒すってのには、とても賛同できませんよ。 少々うがった見方をすれば、ストーリーが平坦すぎて面白みに欠けるので、クマやDV男を利用したようにも見えるのです。 それに、主役のジーン。 最愛の夫を自分の運転で死なせてしまい、それをずっと後悔している。 それはそうなのかもしれませんが、その後次々とダメ男を付き合っているようじゃ、まるで説得力がありませんよ。 私には、ジーンは自分の事しか考えていない女性に見えて、正直好きになれません。 唯一、グリフとアイナーの心の交流だけが凄く良かったです。 ただこの内容で2時間ってのは、ちょっと無いかな。 [DVD(字幕)] 5点(2017-05-13 04:15:38) |
1093. スタンドアップ
《ネタバレ》 『がっつり法廷もの』を想像していたのですが、予定とは少し違う内容でした。 一人の女性が労働者としての正当な権利を獲得するまでの『プロセス』を、職場、友人、家族を通して描いたものですね。 見応えのある作品です。その一方で、精神的にやや疲れる作品でもあります。なにせ、全体の8割は、主人公のジョージ・エイムズと共に四面楚歌状態を体験しなければならないのです。見るときには気力が必要。くたくたになります。 もちろん、その抑圧された空気は、後半のカタルシスへと一気に昇華されるので、後味は悪くありません。 やや卑猥な発言や、ちょっとした落書きなどは、個人的にはイタズラ程度で済まされそうなもの。後半はエスカレートしてきますが、それもジョージーの過剰な反応が招いたものという気がしないでもありません。ですが、それでも後半のジョージーに対する仕打ちは相当なもので、絶対に許されるものではありません。 ややヒステリックで、『自分だけがかわいそう』なジョージーが感情を抑制できずに、周囲を傷つけるため、前半はジョージーにも共感できません。父親も同様です。 だけどストーリーが進むにつれ、過去の真実、父親の本心が明らかになり、いつの間にかジョージーたちに同調している自分がいます。 ボビー・シャープの心変わりが唐突だったり、ジョージーの家庭を壊す要因となった高校教師はそのまま放置されたりと、もやもやしたり気になったりする部分は結構あります。 そういった点をふまえたうえで、ラスト、法廷で皆が立ち上がるシーンは心にぐっとくるし、いつの間にか泣いていたので、やはり良い映画なんだと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2017-05-12 08:52:33)(良:1票) |
1094. SAYURI
《ネタバレ》 うーん。これはどうでしょう。 面白い、面白くないの問題ではなく、ちょっと興味がわかない、どちらかと言えば苦手なタイプの映画です。 まず暗い。そして長い。 途中まではサクセスストーリの様相を呈していますが、『サクセス』とは少々違う気がしますね。 期待していたほど『SAYURI』にカリスマ性を感じることができず、芸者としての才能も、見ている分にはよくわかりません。 心の成長みたいなものがあるわけでもなく、『SAYURI』をメインとしたドラマとしては、物足りなさを感じます。 また、なんのひねりもオチもなく、バッドエンドのまま終わっているエピソードがあるのも、もやもやします。 姉と初桃はいなくなって終わり?おカボは実はさゆりをずっと恨んでいました、っていうサプライズだけやって終わり?延はさゆりをもう許せないってだけで終わり?さゆりは会長とうまくいきさえすれば、他の人間関係はもういいの? そりゃあそっちのほうが人間ドラマとしてはある意味リアルかもしれないけどさ、見るほうはそこに後味の悪さを感じこそすれ、満足感を得ることはできないのです。 桃井かおり演じるおかあさんが、なんかラスト良い人っぽくなっているのもなんだかね。この人も相当なことやってますよ? それに、私はフェミニストではありませんが、やはりこの時代の女性蔑視の社会通念みたいなものが苦手なようです。 [DVD(吹替)] 5点(2017-05-11 02:07:48) |
1095. ターミネーター:新起動/ジェニシス
《ネタバレ》 アクションは最高。スピード感あり、テンポも良い。ストーリーがよくわからなくても、映像だけで楽しめることは間違いありません。 そう、途中からストーリーがよくわからなくなります。 作っている人たちも、実は途中からわからなくなってるんじゃないの。 シュワちゃんなんか怪しい・・・。『とりあえずよくわからんが、俺はここでI'll be backと言えばいいんだな?』とか言ってそう。 私はもともとパラレルワールド、タイムパラドックス反対派なんです。 じゃないと、『過去に戻る意味がねー』と思うんですよね。 それにターミネーターシリーズにおけるタイムトラベルは、あくまで舞台装置のひとつであって、ストーリーそのものは非常にシンプルかつわかりやすく作ってくれていた印象があります。 それがこの作品は、完全にタイムトラベルとその謎解きがメインになっているような気がするのですよ。 後半はなにせ状況がよく理解できていないまま、どんどん話が展開するものですから、凄い映像見せられても何となく蚊帳の外・・。こーゆーサスペンスアクション系は、主人公達のゴールが見えないと、こちらもハラハラドキドキできないものです。 劇中ジョン・コナーが、『私達だけ時の流れの中置き去りにされているのだ』みたいなことを言うシーンがあるのですが、そうそう、まさにそんな気持ちで見ていましたよ。むしろあんたのせいだと言ってやりたい。 『1』の『T-800』にしろ、『2』の『T-1000』にしろ、『3』の『TーX』にしろ、外見は人間でも中身はロボットのあの無機質感が生み出す『怖さ』やある種の『かっこよさ』が好きだったのに、この作品ではよーしゃべりますねー。べらべらべらべら。 言葉のやりとりなんかできないのがターミネータの良さだと思うんですけどね。 映画そのものは最高級の技術で作られているであろう映像が満載ですから、そりゃあもうアトラクションとしては最高に面白いんですが、・・・もったいないなー。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-05-09 03:57:24)(良:1票) |
1096. パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト
《ネタバレ》 だらだら。本題に入るまでが長い長い。本題に入ってからもだらだらしています。 クラーケンやデイヴィ・ジョーンズ登場あたりから楽しくなってきましたが、島でのひと悶着で再び失速。 『いったいいつまで元気玉を作っているんだ。』という、某アニメの展開の遅さを思い出します。 この作品で面白いのは映像だけ。魚人海賊団のビジュアルはかなり好き。砂浜を駆けてくる様子は、日本の特撮ヒーローものと変わりませんが、昭和世代の私はこーゆーいかにも『怪人』って感じのディフォルメに弱いです。 そしてクラーケンの迫力。これはいい。 けど、それ以外にこの映画の良さってほとんどないです。 何よりストーリーが決定的につまらない。 ブラックパール号を手に入れるため、デイヴィ・ジョーンズと自分の魂を駆けて取引をしておいて、期日がきたら踏み倒そうとするジャック・スパロウ。個人的な問題に、無関係の仲間を巻き込み、結果多くを死なせてしまう。 更には前作で築いたジャック・スパロウ、ウィル・ターナー、エリザベス3人の絆をぶち壊すようなストーリーにがっかり。 私が前作で感じたジャック・スパロウの魅力。それは、小悪党ながらも頭のキレや、仲間想いの優しさを垣間見せるヒーロー性。それがこの作品ではもはや小悪党に成り下がって悲しい。 なのにラストはみんなで『ジャック・スパロウを助けるためなら世界の果てでも何でも行ってやる。』という異常なテンション。 台本にそう書いてあるから、そう盛り上がっただけみたいなノリで、まるでついていけません。 これぞ『看板』『キャスト』『CG』におんぶにだっこの凡作代表。 それに、せめて次の作品につなげるとしても、複数のエピソードのうち、一つくらいは決着をつけてほしい。 例えば、『苦戦の末クラーケンはみんなで何とか倒すことができた。でもその結果船は大破し、ジャック・スパロウは行方不明に』ぐらいであれば、まだ納得します。 そもそも、ドラマは3~4ヶ月くらいで一応完結まで見られるからまだ良し。ですが映画は次の作品が1年後とか2年後とかそれ以上。だからこそ、昔の映画はすべて完結させていたわけですし、それが映画というもんでしょう。 余命いくばくもない少年がいたとして、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の大ファンで、 「 シリーズを最後まで見るのは無理だけれど、せめてこの『デッドマンズ・チェスト』だけは生きているうちに家族と見られて良かった・・。 」 と映画館に無理をおして家族と最後の映画鑑賞に行き、この結末を見せられたら絶望しませんか。 と、私は続編ありきの映画に全面的に反対するわけではありませんが、最低でも3ヶ月以内に次の作品を公開すべきだと思っている次第です。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2017-05-08 02:05:39)(良:1票) |
1097. Mr.インクレディブル
《ネタバレ》 ヒーロー行為が違法行為になるという、今まであえて誰も踏み込まなかった領域に、ためらわず踏み込みましたね。 言うなれば、これは『ビルを壊したウルトラマンに損害賠償を請求する。』というアイデア。 いやー、面白いですね。これ。最高です。 誰にも見つからないように隠れてコソコソヒーロー活動。そこにあるのは『正義感』だけではない。過去の栄光を取り戻したい自分がいる。でも家族の生活も守りたい。そこへ追い討ちをかけるかのように、自分のせいでダークサイドへと堕ちてしまったアナキ・・じゃなかった、かつてのファン。切ない。ただのエンターテイメントには収まらないドラマ性が、この作品にはあります。 前半から中盤にかけては、逆風、逆境の連続で、見ているだけで気持ちが疲れちゃいそうになりますが、そこを暗くなりすぎず、軽快なテンポで次々と見せていくのはさすがピクサー。 そしてこのたまりにたまったもどかしい気持ちは、終盤へのカタルシスへと昇華されていくのです。 完璧です。 後半はインクレディブルファミリー大活躍。 スピード感あふれるアニメーションで繰り広げられる超能力バトル。待ってましたとばかりに駆け回るダッシュ。私はかれのダッシュシーンが相当のお気に入り。ラストでジャックジャックが何かやってくれそう、というのも予想通り。 こちらが期待するストーリーを期待以上のアニメーションで楽しませてくれるエンターテイメントの傑作。 『ジャックジャックアタック』という特典映像もかなり面白い。その面白さは本編を超えるかも・・ 久しぶりに永久保存版でブルーレイディスクを購入しようと思う1本です。 [ブルーレイ(吹替)] 10点(2017-05-06 02:56:56)(良:1票) |
1098. パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち
《ネタバレ》 ゆるゆるアドベンチャー。 ゆるい主人公。ゆるい海賊。ゆるい海軍。 ディズニーだから仕方がありませんね。 子供向けなのは間違いないと思います。そして盛り上がらない。決定打に欠けると言ってもよい。 決して面白い作品とは言えないです。 アドベンチャー要素も薄い。 せっかくの『海洋アドベンチャー』なのに、どちらかと言えば『てめー裏切りやがってむかつくんだよ。』的な、人と人との因縁が中心のストーリー構成。いや、それはまだ良いのですが、恋愛要素が間違いなくこの物語に水を差している。 『呪いをかけられた海賊たち』っていう発想は面白いのです。逆に言えば、そこ以外に面白みを感じない。 ただ映像はかなり美しく、CGは滑らか。視覚的に楽しめることは間違いない。 内容的に、安心してのんびり見られるという良さもある。 ですがそれは裏を返せば刺激が足りないということです。 『こーゆー映画ならではのカタルシス』ってものがあると思うのですが、この作品にいたっては、それもありません。 海洋アドベンチャーでしか得ることができない『達成感』のようなものが、この作品には無いのです。 アクションシーンだって、ただ賑やかなだけ。 特にメインのキャラたちが、なんかもたもたしているような印象まで受けます。 尺も長すぎ。メリハリがない。だらだらとした冒険活劇。 好きなジャンルなので、それなりには楽しめちゃいますが、映画好きな人には辛い作品かもしれないです。 余談ですが、こーゆー映画見ると、日本のマンガやアニメが、世界中で愛されている理由がなんとなくわかります。 空想の世界では、日本人は最強かもしれません。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2017-05-04 02:35:13)(良:2票) |
1099. 善き人のためのソナタ
《ネタバレ》 思ってたより、重い内容のドラマ。 共産主義が舞台装置になってはいますが、ストーリーそのものはかなり個人的でプライベートな内容な気がします。 いやむしろ、ヘムプフ大臣の振る舞い、そしてヴォルヴィッツの出世欲というのは、共産主義とは本来相反するものではないですか? 共産主義国のルール。その世界における自分達の地位と権力を利用して、私欲や出世欲を満たそうとする人たち。と、それに抗う人たちの戦いに見えます。 そうなってくると、『勧善懲悪』の『懲悪』部分が非常に控えめなこの作品、私としてはなんともすっきりしないものがあります。 自殺に追い込まれるイエルスカ。女性としての尊厳を奪われ、脅迫により恋人を裏切るよう仕向けられ、最後は命まで奪われてしまうクリスタ。その『死』のなんと悲しいことか。 クリスタに関しては、同情はできるし、理解もできますが、共感はできません。 どうしても、映画にはきれいごとを言いたい。最後までドライマンをかばってほしかった。こんな後味の悪すぎる結末になるなんて。そこもすっきりしない理由です。 ベルリンの壁は崩壊し、ドライマン、クリスタ、イエルスカ、ヴィースラーが払ってきた犠牲は何だったのかと、むなしくなります。 歴史の負の部分をモチーフにすれば、もちろん心にグッとくるものはあるわけで、決して映画として悪い作品ではありません。 ただ、私の好みではないというだけです。 また、他の皆さんが言及しているように、なぜヴィースラーがそこまでドライマンに肩入れするのか、その説得力に欠けている気もします。 この映画の核となる部分だけに、ここはもっとドラマチックなエピソードで説得力をもたせても良かったのではないでしょうか。 それはゆくゆく、私達観る側の人間の共感力となって、映画の完成度は最高潮に達すると思うんですけどね。 ラスト、書店でドライマンからのメッセージを受け取るヴィースラー。 ある種のハッピーエンドなのかもしれませんが、私は無性に悲しかった。 [DVD(字幕)] 6点(2017-05-03 04:13:39) |
1100. ターミネーター4
《ネタバレ》 ビジュアルがアツい。サウンドが凄い。シリーズ中最多のマシーン達が嬉しい。 T-800の前衛機なのかT-600。海蛇のようなマシーン。円盤型の偵察機。捕獲用超大型マシーンにバイク型。 個人的にはバイク型がかなりお気に入りです。 ストーリーもひねりが効いていて面白い。 ジョン・コナーとマーカス・ライト。二人の主人公という設定が、実に上手く機能していると思います。 マーカス・ライトの存在自体が罠なら、マシーンを無力化させるシグナルも罠。 単純な火力では太刀打ちできない人類が、頭脳戦でもスカイネットに翻弄されます。 つまりこの作品、ストーリーはそれなりに考えられているのですが、防戦一方なので気分が今いち盛り上がりません。 今までのシリーズと違い、『スターウォーズ』のようなプロットになっているわけですから、もう少し人類の見せ場が欲しいものです。 夜のシーンが多いことも重なって、少々疲れます。 SFアクションならではの爽快なシーンがもう少しほしかったところです。 とゆーことで、ストーリーとキャストは私を満足させてくれるものではありませんでしたが、ビジュアルだけは大変満足度の高い1本です。 これはもうアトラクションムービーですね。 私は、今のところ『3』が一番好きです。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2017-05-01 13:44:50)(良:1票) |