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 > かたゆき さん
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プロフィール
コメント数 1922
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1101.  アンダー・ザ・スキン 種の捕食 《ネタバレ》 
イギリス、スコットランド。大きな車を乗りこなし、夜な夜な夜の街を徘徊する“女”は道行く男どもに声を掛け、独り者で急に居なくなってもしばらく誰にも気にされないだろう男を探し求めるのだった。彼女の色香に惑わされて家まで着いてきた男は、皆一様にまるで暗い底なし沼に引き摺りこまれるように彼女に捕食されてゆく。そう、彼女は何処とも知れぬ世界からやって来た捕食者なのだ。次々とその皮の内側にある中身を引き摺り出されていく、捕らえられた男たち。ところが、生まれつき顔の皮膚に障害を持つ醜い青年に出会ったことによって、彼女の冷酷な心にとある変化が起きていくのだった…。当代きっての人気女優スカーレット・ヨハンソンがオールヌードも辞さない姿勢でもって挑んだのは、そんな最後まで淡々と描かれるアート系作品でありました。うん、観終わってすぐの率直な感想を言わせてください。死ぬほどつまんなかったです、これ。この監督の「とにかく意味ありげで思わせ振りな映像を撮って、そこに神秘的な音楽を流しとけば、それだけでゲージツっぽい感じになるんでしょ」と言わんばかりの、観客を舐め切った余りにも独り善がりな唯我独尊的態度に僕は正直腹立ちが止まりませんでした。もうひたすら退屈!!場面が切り替わる度に、ただでさえ弱い因果律がそこでブツリと寸断されるので観ていて凄くイライラさせられます。キューブリックの正当な後継者かもしれないなんて誇大広告もいいところ!!たとえば、キューブリックの『2001年宇宙の旅』という同じような前衛的作品なんて、いくら難解で哲学的な映像が延々と繰り広げられようともそこにはしっかりとした因果律や観客に伝えたい明確なテーマが強固としてあるからこそ傑作たりえているのです。対してこの作品が観客に伝えたかったテーマってなんなのでしょう?「人間はその皮の下に色々なものを隠し持っているので、人を外見だけで判断するのは止めましょう」ってくらいのモンっしょ。薄っぺらいにも程がある!!ホント、ただただ退屈で無意味な2時間弱を過ごしてしまいました。
[DVD(字幕)] 1点(2015-09-09 01:30:17)
1102.  アデル、ブルーは熱い色 《ネタバレ》 
「ねえ、エマ。初めて味わったのは何歳のとき?」「何を?」「女の子」「女の子?それは私が女の子といつキスしたかってこと?それとも食べたかってこと?」「キスよ、もちろん…。その先のことは後で教えてもらうわ」「14歳のときよ、アデル」「そう…、エマはやっぱり女の方が好き?」「両方試した、男も女も…。それでもやっぱり女の方が好き。アデル、絶対よ」「エマ、私もあなたとキスしたい」――。17歳の女子高生アデルは何処にでも居るような平凡な女の子。毎日バスで学校に通い、退屈な先生の退屈な授業を受け、休み時間は女友達とのどうでもいい恋バナをして、そして家に帰るといつものように家族揃ってご飯を食べて…、という平穏な日々を遣り過ごしている。そんな毎日に物足りなさを覚えたアデルは他の女友達のように彼氏を作ってデートをし、セックスだってしてみるのだけど、それでも心の空白を埋めることが出来ないでいる。「何かが違う」。そう感じたアデルは、彼氏とも別れ、友達に連れてこられたゲイバーで“彼女”に出逢ってしまうのだった。髪の毛を鮮やかなブルーに染めた彼女の名は、エマ。そう、彼女こそアデルが街中で偶然擦れ違ったとき、自分の心の深い部分に火を点けるような衝撃を与えて去っていった女の子だった。偶然の再会に、何か運命的なものを感じたアデルは、そんなエマと何もかもを捨ててもいいほどの情熱的な恋に堕ちてゆく…。自分の殻を破れないでいる平凡な女の子アデルと芸術家肌の奔放なレズビアンの女の子エマとの数年間にわたるそんな濃厚な愛の日々を詩的な美しい映像で綴るカンヌ映画祭パルムドール受賞作。とにかく、この監督は人の顔をアップで撮るのが好きみたいですね~。3時間という長い上映時間のほとんどがこのアデルとエマの顔のどアップで占められておりました。もう冒頭から、主人公アデルのスパゲッティやらケバブやらをくちゃくちゃ食べるシーンが延々と繰り返されるのですが、普通、そんな挑戦的な演出はものの見事に失敗するのだけど、この監督さんの映像センスは素晴らしいですね。このアデルという何処にでもいる平凡な女の子の等身大の魅力を見事に引き出していたと思います。そんな彼女を虜にしてしまう青い髪のボーイッシュな少女エマとの濃密なベッドシーンも全然下品じゃなく、かといって必要以上に綺麗に美化されている訳でもなく、この絶妙なバランス感覚は凄く良かったです。後半、互いの生活のすれ違いから2人は破綻に至るわけですが、そこで描かれるアデルの心理は女と女という狭い枠組みを超えた普遍的なもの。辛い失恋を経験した男女なら誰もが共感できる、切ないものでした。僕もちょっと過去の色んなことを思い出して思わず泣きそうになっちゃいました(笑)。ただ、いかんせん長い!!このストーリーなんてほとんどあって無きが如しお話に3時間弱はさすがに長すぎます。2時間弱くらいに収めてくれたらもっと完成度の高い傑作になり得ただろうに。そこらへんがちょっぴり惜しかったですが、充分見応えのある納得のカンヌ映画祭パルムドール受賞作でした。
[DVD(字幕)] 7点(2015-09-07 02:30:31)(良:2票)
1103.  ブランカニエベス 《ネタバレ》 
むかしむかし、カルメンシータという女の子がおりました。年老いた祖母と平穏に暮らす彼女の父親はかつての天才闘牛士アントニオ・ビヤルタ。だが、父は獰猛な雄牛との競技中に事故に遭い全身麻痺という悲劇に見舞われて、さらには愛する妻をも失ってからずっと心を閉ざしてしまったのでした。幼い彼女を遠ざけ、欲深き悪女であるエルカンナと再婚した父を、それでも待ち続けていたカルメン。祖母の死をきっかけにとうとう父と念願の再会を果たします。ところが、迎え入れられた父の屋敷には継母である悪女エルカンナが君臨し、カルメンは虐げられた不遇の日々を過ごすことに。それでも継母の目を盗んで、カルメンは父との交流だけを糧にそんな生活に耐えていたのです。でも現実は何処までも残酷です。カルメンの生きる支えだった父も継母の策略で殺されてしまうのでした。邪魔者となったカルメンも森の奥深くに捨てられてしまいます。辛うじて生き延びることに成功したカルメンは、そんな森の中で「7人の小人闘牛士」を名乗る愉快な小男たちと出会い、数奇な運命に翻弄されていくのでした……。1920年代のスペインを舞台に、『白雪姫』という誰もが知る童話をベースとしながら、そんな女闘牛士として美しく成長していくカルメンの姿を詩情性に満ちた美しいモノクロ映像と情熱的な音楽で綴るサイレント・トーキー作品。ほとんど予備知識もなく、ただゴシック調のパッケージに記されていた「アルモドバルが絶賛!」という宣伝文句に惹かれてこの度鑑賞してみたのだけど、確かにアルモドバルが大好きそうな映画でしたね、これ。3Dやなんやと喧しい現代に於いて、敢えてモノクロサイレントという古風な作風で撮られた本作、その冒頭から漂ってくる並々ならぬ淫靡で独特な世界観に僕は完全にノックアウトされました。主人公カルメンの幼少時代を演じた少女がとにかく可愛くて、そんな彼女が迷い込むことになるおとぎの国の映像美なんて、もう監督のセンスが冴え渡っています。妖艶な悪女である継母の目を盗んで父との秘密の交流を図る一連のシークエンスなども、ぞくぞくするほど美しい。ただ、惜しむらくはそんなカルメンが大人になってからの後半の展開。『白雪姫』という物語に拘りすぎたのか、展開の先が読めるうえに、少々強引な印象が否めませんでした。特に毒りんごを食べてからの運命の人のキスを待つ最後の流れはさすがに無理があったような気がします。とはいえ、他の追随を許さない唯一無二の映像センス、情熱的なのにどこか淫靡な世界観を僕は充分に堪能できました。新たな才能の出現にひとまず喝采を贈りたい。
[DVD(字幕)] 7点(2015-09-05 00:45:38)
1104.  エスケイプ・フロム・トゥモロー 《ネタバレ》 
この作品はフィクションです。ウォルト・ディズニー社や実在する企業、団体、人物などとは一切関係ありません――。愛する家族とともにディズニーリゾートへとバカンスへとやって来た会社員、ジム。ところが、旅行最後の日に、彼は会社から掛かってきた一本の電話で解雇を通告されるのだった。妻に心配させまいとそのことを内緒にしたまま、ジムは楽しい夢の国で最後のバカンスを謳歌しようとホテルの部屋を出てくる。無邪気にはしゃぐ幼い息子や娘たちとともに、そんな夢の国へと直行するモノレールへと乗り込むのだが、やはりジムはこれからのことが気がかりで心は落ち着かない。そんな浮かない気分のジムの前に現れたのは、ピチピチした身体で周りに色気を振りまくセクシーな2人の若い女たちだった。辿り着いた夢の国で、子供もそっちのけにしてそんなセクシーな2人組を追いかけ始めるジム。さらには、車椅子に乗った横柄な中年男性や、自分のことを誘惑してくる妖艶な美女といった謎めいた人々が次々と彼の前に現れ、ジムは不穏で淫靡なもう一つの“夢の国”へと迷い込んでいく……。誰もが知る某超有名テーマパーク内で展開されるそんな不条理な世界を、運営会社の許可も得ずにゲリラ的に撮影した映像で綴ったシュルレアリスム劇。はっきり言わせてください!!恐ろしくしょーもなかったです、これ。まず言っておきたいのは、この映画の舞台がディズニーランドである必然性ってなんですか?ただ単に無許可でこのパーク内で撮影したってことをウリにしたかっただけで、このディズニーランドという舞台が一向にストーリーに利いてきませんやん。きっとそうやって撮った映像を何とか頑張って無理やり一つのストーリーに仕立て上げようとして完全に失敗したパターンでしょう。もう独り善がりもいいところ。それに全編白黒で描かれる映像だってただ単に奇を衒っただけの凡庸なもので、1ミリたりともセンスを感じませんでした。中盤あたりからは、この主人公のおっさんのゲロやらうんこするシーンやらが何度か差し挟まれて、汚いったらありゃしない。とにかく不愉快千万!こんなしょーもない映画で観客から金を巻き上げたこの監督は、犯罪者といってもいいくらい酷い。ディズニーさん、今からでも遅くないんでこんなしょーもないクソ映画で金儲けしたこのアホ監督には大弁護団を組んで訴訟を起こしてコテンパンにやっつけちゃってください!!
[DVD(字幕)] 2点(2015-08-28 21:34:32)
1105.  カニバル(2013) 《ネタバレ》 
初めて獲物を愛してしまった――。普段は仕立て屋として真面目に働き、家では静かな独り暮らしを謳歌している孤独な中年紳士、カルロス。少々変わり者だが、仕立て屋としての腕も良いと近所の人たちからも評判で、教会の司祭からは高価なマントの修繕を頼まれるほど信頼されている。ところが彼はその仮面の下に、誰も知らないドロドロとした醜い欲望を隠し持っていたのだった。そう、彼は生まれついての冷酷な殺人者であり、殺した若い女の肉を夜な夜な食べる恐ろしい食人鬼でもあったのだ。その暗い欲求を抑え切れなくなった彼は、いつものように近所に越してきた女性を殺すと、切り分けた彼女の肉を冷蔵庫へと保管する。ディナーのごちそうとして、カルロスはその肉をワインと共に夜毎味わっていたのだった。そんなある日、彼の犠牲者の妹を名乗る美しい女性が現れる。彼女の名はニーナ。新たな獲物の出現に欲望を抑えきれなくなったカルロスは、「一緒にお姉さんを捜そう」と彼女に提案し一緒に警察署や行きつけの場所を廻り始める。ところが、しばらく一緒に過ごしていくうちに、カルロスはそんなニーナに名状しがたいある“感情”を抱き始めるのだった……。生まれついての快楽殺人鬼とそれを知らない若い女性との間に芽生えたそんな禁断の愛を淡々と綴ったサイコ・ラブ・ストーリー。なんですけど、ホント退屈極まりない映画でしたね、これ。映画が終わるまでほとんど音楽も流れないし、主人公である根暗~~な殺人鬼とコチラも同じく根暗~~なヒロインとの大して面白くもない言ってしまえばしょーもないラブストーリーが延々と垂れ流し。もう5分に一度は強い睡魔が襲い掛かってきて、僕は最後まで観るのが苦痛で苦痛で仕方なかったです。肝心の主人公が食人鬼という設定も、どうして彼がそんな猟奇的な行動に走るようになったのか、生まれついての宿命なのか、それとも過去に経験した強いトラウマが原因なのか、最後まで一切説明されないので物語に全く入り込めません。このおっさん、ただ単にナイフとフォークで、ずーーっと肉喰ってただけですやん(笑)。監督としては恐らく芸術映画を撮ったつもりで良い気になってるんだろうけど、もう独り善がりもいいところ。ホント久し振りに、「時間と金を返せーーー!」と大声で叫びたくなるほどのこんなにもつまんない映画を観てしまいました。
[DVD(字幕)] 3点(2015-08-25 21:40:14)
1106.  GODZILLA ゴジラ(2014) 《ネタバレ》 
「ゴジラ」――。終戦直後の日本が生んだ、この世界に誇る大怪獣がハリウッドで、しかも巨額の予算を投入して映画化、しかも当時はアメリカが日本に投下して間もなかった原爆という悪魔に対する怒りをその創作の原動力としていたのに対し、本作のゴジラは大震災後に起きた原発事故によって日本にもたらされた未曾有の危機の暗喩として描かれているということを知り、なかなか興味深いものを感じてこの度鑑賞いたしました。まず最初に言っておくと、僕はずっと昔に記念すべき第一作目である白黒『ゴジラ』を観たのだけど、確かにその優れた脚本やゴジラという特異な魅力に満ちた怪獣の造形美などは充分に認めるものの、そこまで心に残るものを感じませんでした。なので、僕はゴジラというものにそんな思い入れもないまま、基本的にニュートラルな立場で最後まで鑑賞。結果、映画の出来として純粋に評価するならまあ“及第点”というレベルになるのではないでしょうか。2時間、ビール片手にポップコーンでも食べながら頭空っぽにして観るモンスター・パニック・ムービーとしてはぼちぼち楽しめると思います。肝心のゴジラが一向に出てこないやーん!とか、魅力的なキャラクターなり印象に残るシーンなりがほとんどなーい!やら、映画の胆となるべきゴジラ大暴れシーンが暗くて見難いんじゃー!といった本作の欠点もまあ目を瞑れる範囲内であったと思いました。てか、つがいの巨大昆虫ムートーが交尾し卵を産んで子孫を増やそうという極めて自然な営みをしようとしていたのに、そこに勝手にやって来て邪魔するゴジラって、ムートー目線で見たらけっこうヤな奴ですよね(笑)。そんなリア充カップルに執拗に嫌がらせをしに来る非リア充の哀しき男子・ゴジラ君が大活躍するクライマックスに僕は思わず応援せずにはいられませんでした。うん、ゴジラ君にはこの勢いで世の中のムートーみたいなカップルたちをとことん蹴散らしてもらいましょう!!頑張れ、ゴジラ!!
[DVD(字幕)] 6点(2015-08-24 00:17:37)
1107.  ウォーム・ボディーズ 《ネタバレ》 
俺、どうしちゃったんだ?顔色も悪いし、身体も調子よくないし、姿勢だって猫背になっちゃってるし。それに、俺はもっと人と繋がりたいのに、どうしてまともに接せられないんだろう?あ、そっか、俺って死んだんだ…。ここに居る連中も皆死んでしまってるんだ。あいつもそいつも皆よれよれ。そう、もう気付いていると思うけど、俺ゾンビなんだ。自己紹介したいところだけど、名前も思い出せないんだよ。Rから始まった気がするけど、忘れた――。謎の病原菌の蔓延により、人類の大半がゾンビと化した近未来。人間が主な主食のゾンビたちは、巨大な壁の中に閉じこもって自衛している人間たちが物資調達のためにたまに外に出てくることを涎を垂らしながら待っている。ゾンビと化して間もない青年“R”も、腹が減ったらそんな自衛コロニーまでとろとろ歩き〝食事〟にありつくのだった。ところがその日、いつものように人間たちを襲おうと仲間のゾンビたちと一緒に部屋へと雪崩れ込んだRだったが、そこで彼はその人と出会ってしまったのだった。そう、動かなくなって久しい彼の心臓がもう一度ドクンと脈打つほどの最高に可愛い女の子、ジュリーに…。ゾンビと化した青年ととってもキュートな人間の女の子のそんな禁断の愛をコミカルに描くヘンテコ・ラブストーリー。いやー、まさにアイデア一発勝負な映画でしたな~、これ。ゾンビ男と人間女の恋愛と聞いて、もっとキワモノ系の悪ノリ映画だと思って観始めたのですが、中身は意外にも『ロミオとジュリエット』的プラトニックラブストーリーでありました。最初こそ、主人公が人間の脳ミソ喰うシーンがあるものの、それ以降は「こいつ、ホントにゾンビなんかい!!」と突っ込みたくなるほどフツ~の青春ラブコメなんで、誰でも安心して観ていられると思います。って、これって主人公がゾンビという特異な設定を取り除いたら、後には大して面白くない青春ラブコメしか残らないんじゃ?という疑問が最後まで拭いきれないんですけどね(笑)。個人的には、もっと挑戦的なネタ――たとえばゾンビが人間の女の子と思わずセックスしてみたら、思わずテンション上がって彼女の肉を文字通り食べちゃった!!みたいな(笑)――が欲しかったけど、それは好みの問題。主人公の恋が世界を救うという脚本もそこそこ練られていたし、ゾンビと骸骨と人間の三つ巴の戦いが繰り広げられるクライマックスもけっこう盛り上がったし、ベタではあるけれどぼちぼち面白かったんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 6点(2015-08-21 19:25:06)(良:1票)
1108.  渇き。(2014) 《ネタバレ》 
普段、積極的に邦画は観ない。何故かというと、安易な商業主義に走るあまり、アイドルのPVもどき・昔のアニメの実写化・テレビの連ドラの延長でしかない「ナントカ・ザ・ムービー」等というほとんど中身のない類型的な作品ばかりが公開され、僕が映画に求めるものがそこにはないように思えるからだ。そんな邦画の世界で僕がその新作を心待ちにする数少ない傑出した才能の持ち主である中島哲也監督の待望の最新作ということで、もう期待に胸を高鳴らせながら今回ツタヤでレンタルしてきた。夕食を食べ終え、トイレで用を済まし、部屋の電気も暗くして、映画の世界にどっぷり浸かろうともう万全の体制を整えてDVDプレーヤーにディスクをセットする。長い最新映画情報も終わり、ようやく本編が始まるといきなり主役を演じる役所広司が口汚く罵る「この糞が!!」という言葉…。さらに続く、極彩色の映像で描かれる不穏なバイオレンス&エロ描写に、「ああ、これこれ。この誰もが最後まで安心して観ていられる“無難な”娯楽映画ばかりを求める昨今の邦画の観客たちにガツンと挑戦状を叩きつけるような、いかにも中島哲也監督らしいこのアンモラルで淫靡な世界観。これを待っていたんだよ~」と僕のテンションは否が応でも上がっていくばかり。『告白』という中島の生んだ傑作を髣髴とさせる、心に闇を抱えた中学生たちが織り成す不穏な世界と、狂った大人たちの狂った欲望がどんどんとエスカレートしてゆく阿鼻叫喚の地獄絵図を交互に展開させ、さらにはそんな狂った世界を彩るポップでサイケな抜群の映像センス、「やっぱ、中島哲也は天才だ!」と僕はそんな不穏で淫靡な世界にますます嵌り込んでいった。だが…、1時間が過ぎ、完全にぶっ壊れてしまった役所広司が暴走していく後半からそんなヒートアップした僕のテンションは急速に萎んでしまうのだった。加奈子という悪魔的な美少女が周りの人々をどんどんと不幸にしていく過去パートと、アクの強いキャラクターたちが織り成すもろにタランティーノを意識しただろう現代のバイオレンス展開が完全に乖離しているのだ。この2つの世界が上手くリンクしていない。これが本作から僕の心が離れてしまった最大の原因だ。僕が中島哲也の作品に求めるものは、極端なまでにシニカルな暴力描写と人間の心の闇に鋭く切り込む冷徹な視線、そしてその狭間に垣間見える豊かな詩情性だ。もう言わせて貰えば、この役所広司演じる狂った父親の暴走ストーリーは完全に要らなかった。加奈子という悪魔的魅力に満ちた美少女がその持って生まれた“美貌”と“悪”でもって、周りの世界をどんどんと破滅させていくというこの耽美的ストーリーだけを徹底的に追求していたら、既存の道徳観を爽快に踏み越える物凄い傑作になりえただろうに。残念と言わざるを得ない。とはいえ、それまでの作風に安易に留まることなく、さらに新しい世界を追求する中島哲也監督のそのアグレッシブな姿勢を僕は素直に称えたいと思う。今回は残念な結果に終わったが、これからも彼の新作を期待して待とうではないか。
[DVD(字幕)] 6点(2015-08-17 22:46:25)(良:1票)
1109.  スパイラル ~危険な関係~ 《ネタバレ》 
美しい妻と最愛の息子にも恵まれ、一見幸せそうに暮らす産婦人科医ジェフ。だが内実は、もう随分と前から妻とはセックスレス状態、夜な夜なネットでエロ動画を盗み見ては一人で処理している。自慢の庭も夜中に現れるアライグマに荒らされ、隣で独り暮らしをしている変わり者の女性との関係にも悩まさ、積み重なったストレスはそろそろ限界に。気分転換にと、友人の妻と2人で飲みに行ったところ、彼女も夫とのセックスレスに悩んでいるという。共通の悩みに意気投合し杯を酌み交わしていたら、最初はそんな気もなかったのに、ジェフは勢いで彼女と“一線”を越えてしまうのだった。浮気とはいえ、久し振りのセックスにすっかり浮き足立つジェフ。だが、彼は知らなかった。そのことが、とんでもない負の“スパイラル”に彼を巻き込んでしまうことを――。たちまちのうちにその友人に浮気がばれると彼は大金を払うように脅され、それを偶然知った隣人の女からはストーカーされ、妻とはますます仲が悪くなり、庭を荒らすアライグマはさらにその暴挙をエスカレートさせるのだった。そんな中、ジェフは心の慰めを得ようと、ジムで知り合った腎臓病を患う黒人男性に仕事を紹介したのだったが……。トビー・マグワイアをはじめとする豪華俳優陣競演で贈るのは、そんな人生の袋小路に迷い込んでしまった1人の男の騒動をシニカルに描き出すブラック・コメディでした。まあ、やりたいことは分かるのだけど、さすがにエピソードを盛り込みすぎじゃないですか、これ。主人公ジェフに降り掛かる不幸というのが、①友人の妻との浮気がバレその友人に脅迫される②隣人の気が変な女に惚れられ執拗に言い寄られる③ジムで知り合った男は腎臓移植を受けなければあと数年しか生きられない。というどれもこれも1本の映画に出来そうなほど濃いものばかり。ストーリーが進んでいけばいくほどそのエピソードが一向に纏まっていかないというのが本作の致命傷だと僕は思います。まさに「散漫」というしかありません。それにこの監督のユーモアセンスとは合わなかったのか、僕は最後までほとんど笑えませんでした。唯一笑えたのは、最後に全てを知った妻が発する、「信じられない!こんなことが現実にありえるの?」という言葉。それはこっちのセリフだっつーの(笑)。最後のオチも後味悪いし、主人公がときたま見るアライグマの妄想もよく分かんないし、僕は本作のいい観客とはなれなかったようです。
[DVD(字幕)] 4点(2015-08-16 19:55:11)
1110.  肉(2013) 《ネタバレ》 
アメリカの小さな田舎町で慎ましく暮らすパーカー家は、偏屈で変わり者の父親と情緒不安定な母親、年頃を迎えた美しい姉妹である長女のアイリスと次女ローズ、そしてまだ食べ盛りの幼い長男ロリーという何処にでもいるような平凡な5人家族。ところが、彼らの周りではここ20年の間に不可解な失踪事件が相次いでいた。ある日、そんなパーカー家の母親が不慮の事故で亡くなってしまう。哀しみにうちひしがれる家族だったが、「こんな状態だが、2日後は〝子羊の日〟だ。いつも通り決行する。これから、これまでママがやって来た役は長女のアイリスに任せる」という父親の宣言の下、彼らはとある儀式の準備に入るのだった。新たに失踪する町の若い女性、かつて自らの娘も失った年老いた医師は、そんな怪しげな家族の真相を探ろうとするのだが……。殺人と人肉食という狂気の伝統を受け継ぐそんなパーカー家の恐ろしい4日間を静謐な雰囲気の中に描き出すサイコ・サスペンス。この奇を衒ったような邦題と、パッケージに書かれていた「注意!この作品には、ショック映像に耐性のある方以外には耐えられない危険な映像が含まれています」との煽り文句に、きっとこれは『マーターズ』系のトンデモグロ映画だと覚悟して鑑賞。なんですが、これがちゃんと撮られた王道のゴシック・サスペンスで、僕のそんな先入観はいい意味で裏切られました。うん、普通に面白かったです、これ。配給会社の「とにかく多くの観客に映画を観て貰わなければ」という思惑は分かるのですが、それでもこの本編とは掛け離れた邦題と宣伝の仕方はどうかと思います。さて、肝心の内容なのですが、これが僕の好みを良い感じでビシバシ突いてくる、全編にわたって不穏で淫靡な雰囲気に満ち充ちたアンモラルな作品でございました。いやー、もうこの一家のとち狂った感じ、なかなか良いですね~。特に、主役である美しい2人の少女が纏う淫靡で怪しげな魅力に僕はすっかりやられちゃいました。長女が森で愛する男と結ばれていたら、そこに唐突に父親のスコップが振り下ろされ娘の胸の上に血がボトボトボトってトコなんかもう監督のセンスが冴え渡っています。他にも、この姉妹が初めての〝行為〟に臨もうと地下室に向かうシーンだとか、このきょうだいが3人並んでベッドに横たわるシーンだとか、随処にデカダンスな抒情性が漂っていて久し振りに次作が楽しみな才能に出会えたように思います。うん、思わぬ掘り出し物でした。それだけにこの奇を衒ったような邦題が残念でなりません。
[DVD(字幕)] 8点(2015-08-16 14:41:12)
1111.  LUCY ルーシー 《ネタバレ》 
人間は、脳の本来の機能の10%しか使っていない。もし、脳の力を100%使いこなすことが出来たなら、人類は未知の領域に達するだろう――。クラブで知り合ったばかりの男に強引に手渡されたアタッシュケース。それをホテルで待つチャンという男に届けるだけで500ドルをくれるという。受け取ったルーシーは半ば強引にホテルのロビーへと向かわされるのだった。ところが、外で待っていた男はいきなり射殺、ルーシーは黒スーツの集団に捕らえられ気を失ってしまう。「お前には新しいドラッグの運び屋になってもらう。まことに勝手ながら君のお腹にブツを埋めさせてもらったよ」。目を覚ましたルーシーは、麻薬密売組織のボスであったチャンにそう告げられ、有無を言わさず空港へと連れてこられる。ところが、ほんの些細な手違いから彼女の体内に埋め込まれた謎の薬が漏れ出してしまう。それは、人間の脳を極限まで進化させる危険な薬だった。何もかもが鮮明に見え始めたルーシー、難なく敵を皆殺しにすることに成功した彼女は、自分の未来を守るためにその道の権威である一人の脳科学者の元を目指すのだが……。スカーレット・ヨハンソンを主演に迎え、リュック・ベッソン監督が新たに挑んだのは、そんなサイキックSFアクションでした。まー、一言で言うなら「荒唐無稽」ですよね、これ。どうして脳の機能を30%使えただけで、自分の髪の色を自在に変えたり、大勢の人間を一瞬で眠らせたり、デジタル回線を自由に操れたりするのか、僕にはさっっっぱり理解できません(笑)。こういう荒唐無稽な作品って、だからこそ観客に説得力を与えるために考え抜かれたディテールが必要となるのに、本作にはそれが一切ない。もう気が付いたら、主人公ルーシーが無敵のスーパーウーマンになっちゃってて敵をばったばったと薙ぎ倒してるし、無謀な運転で街中を走り回ってるし、出会ったばかりの刑事とチューしちゃってるし、もはや観客である僕たちは完全に置いてけぼり。挙句、最後のトンデモ展開に至っては、「もう勝手にやっとくれー!!」っと呆れるしかなかったです。リュック・ベッソン、きっとサイキックSF漫画の名作「AKIRA」の実写版をやりたかったんだろうけど、さすがにこれは脚本がテキトー過ぎと言われても仕方ない。でもまあ、映像的にはけっこう綺麗だったし、アクションシーンもそこそこキレがあったし、それ程退屈せずに最後まで観ることが出来たし、適度な暇潰しとしてはぼちぼち楽しめるんじゃないでしょーか。
[DVD(字幕)] 5点(2015-08-10 22:12:20)
1112.  ニンフォマニアック Vol.2 《ネタバレ》 
「何も感じない…。私、何も感じなくなってしまったの。信じて…、いくらセックスしても、私、もう何も感じない」――。そんな衝撃の言葉を残して静かに幕を下ろしたVol.1から続く、生まれついての“ニンフォマニア(色情狂)”ジョーの性遍歴の物語もいよいよ後半戦。愛を信じず、セックスで得られる快感だけが生きる支えだった彼女に突如として降りかかる不感症という名の災厄(笑)。Vol.2では、冒頭からそんなセックスの快感を再び取り戻そうとするジョーの苦難に満ちた紆余曲折が描かれていきます。言葉の通じないアフリカ人に抱かれたらどうだろうと安ホテルの一室に身を投じてみたものの、やって来た2人の黒人は訳が分からない議論に明け暮れてことに及ばず(黒人男性2人の勃起したペニスに挟まれて佇むジョーの姿はなかなかシュール!笑)、最終的に辿り着いたのはアパートの一室にある秘密SMクラブでした。ちなみにこの間、ジョーは自分の処女を奪った男性と再会して一緒になってちゃっかり男の子を出産してます。でも、そんな最愛の息子が居るにも関わらず、ジョーは超ドSな男に鞭で調教されゆくうちに久し振りに性的快感を取り戻しいつの間にか濡れていた自分を発見するのでした。子供の世話なんかそっちのけでSMクラブ通いを止められなくなるジョー。ここらあたりから、それまでジョーを演じていた若い女優から一転、くたびれた身体のシャルロット・ゲンズブールというおばさん女優へとバトンタッチされるので、もはや目の保養すらなくなってただひたすらイタい展開となっていきます。このセックス大好きおばさんジョーという本作の主人公ほど反発も共感も感じさせない、見事なまでの性的ピエロを僕は初めて見たような気がします。もう完全に喋るダッチ・ワイフ(笑)。ところが、彼女の長い話をずっと聞き続けていた〝男〟が実はこれまで性経験が一切ない汚れなき童貞であることが判明します。そんな奔放な彼女と対極をなす〝汚れなき男〟が、最後に語りだす男と女のセクシュアリティの違い、そしてその違いから端を発する性差別の歴史…。最後に暗闇から聞こえてくる銃声は、結局この社会を形作る倫理観の壁は男どもにとって都合の良いように築き上げられたもので、そんな道徳的な顔をしながら裏側では「女は男の性欲を満足させるための穴でしかない(でも、子供を産み育ててくれる)」と無意識のうちに思い込んでいる男どもへの、女性たちの復讐なのでしょう。トリアー監督って、女性の心からの味方でありながら、それでも自らにもある女性たちへの醜いまでの性欲を自覚している、絶対に友達にはなりたくないタイプの超面倒臭いペシミストなんだろうね。でも、そんな彼が僕は大好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2015-08-10 01:47:27)
1113.  ベイマックス 《ネタバレ》 
モコモコとした風船のような外観の文字通り癒し系ヒューマンケア・ロボット、ベイマックス。兄を亡くしたショックから心を閉ざしてしまった少年と、そんな心優しきロボット、さらには彼の友達である4人の“ヒーロー”たちの、成長と戦い、そして友情を美麗なフルCG映像で描いた、いかにもディズニーらしいアニメ作品。もうまさに「ザ・王道」という言葉がぴったりな万人向けエンタメ映画でしたね、これ。昔からよくあるベタなヒーローものと言ってしまえばそれまでだけど、単なる勧善懲悪では終わらない脚本もけっこう練られていたし、主役のベイマックスをはじめとするそれぞれの登場人物たちのキャラも立っていたし、映像的にもクオリティ高かったし(特に、画面狭しと動き回るマイクロボットの躍動感には目を見張るモノがありました!)で、僕は最後まで面白く観ることが出来ました。ベイマックスの、それまでのロボットという概念を完全に覆すあのふわふわとした造形を思いついただけで、このスタッフたちの勝利ですね。もう少しアクの強さみたいなものがあればなお良しだけど、それは好みの問題かな~。まあ良くも悪くも、最後まで家族そろって安心して観ていられるエンタメ映画の王道でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2015-08-09 21:42:20)
1114.  ニンフォマニアック Vol.1 《ネタバレ》 
「聞いてくれる?十代のころ、私は仲間たちとある会を作ったの」「どんな会だ?」「ファックと好色でいる権利の会よ。みんなで一緒にオナニーとかするの…。恋人は持たない。同じ男とは2度とヤらない。私たちは反抗的だった」「そうか…。で、そんな君たちは何に反抗してた?」「愛よ」「愛?」「そう、愛。愛なんてくだらないものに取り憑かれたこの世の中と闘っていたの」――。雪が舞い、冷風吹き荒ぶ寒い冬のとある夜。〝男〟は、道端に痣だらけになって捨てられたある〝女〟を発見するのだった。救急車も警察も要らない、ただ温かい紅茶が飲みたいと願う彼女を〝男〟は躊躇うことなく家へと連れて帰ってくる。〝女〟の名前はジョー。自らを生まれついての“ニンフォマニア(色情狂)”だと言う。雪が降り積もる音まで聞こえてきそうな静かな部屋の中で、ジョーは〝男〟にこれまでの性にまみれた自分の人生を赤裸々に語り始めるのだった…。人間の愚かさや社会の不条理をその冷徹なまでの視線で持って見つめ続けてきた鬱映画の巨匠ラース・フォン・トリアー監督の最新作は、そんな人間の性の醜さをシニカルに描いた意欲作でした。いやー、相変わらずこの人は人間、及び人間の生きる源泉であるはずのリビドー(性衝動、性欲)が嫌いなんでしょうね。なんだか中二病をこじらせた挙句にオナ禁している日本の若い男と精神構造的に似ているような気が…(笑)。でも、本作はそんな自分の言ってしまえばしょーもない悩みをまるで自己戯画化するような視線があって素直に面白かったです。きっと、そんなニンフォマニアであるジョーの話に、倫理観を一切持たずに耳を傾ける聞き手の男は、トリアー自身の投影なのでしょうね。観終わって、僕は遥か昔に読んだ18世紀フランスの自然主義文学の大家モーパッサンの代表作『女の一生』の中に出てくる神父のことを思い出してしまいました。その神父は、とても厳格で保守的でセックスこそが諸悪の根源であると妄信していて、道を歩いていた妊娠中の普通の雌犬を「この淫乱め!」と蹴り上げてしまうのです!馬鹿ですよね。セックスは人間が生きる上での重要な営みであるけれど、だからといって誰彼構わず何処ででもセックスするのは許されない。だから人は、その中間に倫理観という線を引くのだけど、この線引きの位置がいつの世も曖昧なものだから人間は何処までも愚かで社会から不幸な現実はなくならない…。そんな曖昧な線引き(もしかしてその位置を愛と呼ぶのか?笑)なんか完全に無視しちゃっているジョーのセックス遍歴の旅路は観ていて爽快ですらありました。そんなセックス大好きっ子だったジョーが最後に呟く衝撃の発言…(笑)。Vol.2も期待して観てみようと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2015-08-08 01:56:51)
1115.  マップ・トゥ・ザ・スターズ 《ネタバレ》 
学校のノートに、自分の机や木々に、砂の上や雪の上に君の名を書く。肯定する肉体すべてに、我が友すべての額に、差し出された手すべてに、君の名を書く――。女優として行き詰まりを感じ、起死回生を計るために今まで真剣に向き合うことを拒んできた自分の母親の人生を描いた伝記映画に主演しようと目論むハリウッドのセレブ女優、ハバナ。子役として一躍有名になったもののクスリに手を出し謹慎を余儀なくされた13歳の高慢な少年、ベンジー。その姉で、かつて弟を焼き殺そうとしてずっと病院に隔離入院させられていた、生まれつき精神に問題を抱えた少女、アガサ。2人の父親で、神秘的なセラピストとしてハリウッドセレブたちに人気の金に目がない男、スタッフォード。ハリウッドの上流階級で蠢く、そんな醜いセレブたちの嘘と喧騒に満ちた日々を、まるで夜空の星に地図を描くような空虚さでもってシニカルに見つめた群像劇。かつてグロ映画界の巨匠としてその名を馳せたものの、最近はなんだか分かりにくい作品ばかり撮っているクローネンバーグの最新作、そんなに期待せずに今回鑑賞してみました。率直な感想を述べさせてもらうと、比較的分かり易いアプローチで描かれていて、今回は眠気と戦うことなく最後まで観ることが出来ました(笑)。とはいえ、ストーリーは確かに分かりやすかったのですが、この作品が観客に伝えたかったテーマはやっぱり分かり難かったです。たぶん、このどうしようもない人たちの何も有益なものを生み出さない醜悪な人間ドラマを延々と描くことで、人生の空しさを表してると思うんだけど?とはいえ、そんなさっっっぱり分からない感じが、上手く言えないのですが今回はなんだか心地良かったです。例えるなら、デビット・リンチの傑作『マルホランド・ドライブ』を幾分か薄めた感じのシュルレアリスム劇と言ったところ。豪華な役者陣の熱演も光っていたし、シニカルな人間ドラマの中にときたま顔を見せる抒情性も印象的だし、なかなか見応えがありました。それにしても、本作で主役を演じたジュリアン・ムーアのもう何も怖いものナシと言った感じの鬼気迫るような演技は凄いですね。誰も望んでいない?ヌードを惜しげもなく披露し、ヒステリーを起こして泣き喚くわ、おばさんとレズっちゃうわ、ネグリジェ姿で変な踊りを踊りだすわ、挙句の果てには便器にパンツを下ろして座り、「最近、便秘気味なの」とブブブってオナラしちゃうなんて、物凄い女優魂です。そ、そこまでせんでも…と若干ひいちゃうくらいでした(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-07 18:27:47)
1116.  フライト・ゲーム 《ネタバレ》 
最愛の娘を病気で亡くし、以来酒浸りのアル中となってしまった航空保安官ビル。その日も、コーヒーに混ぜたウィスキーを呷り、彼は担当するロンドン行きの旅客機へと乗り込むことに。乗員乗客150名と供に今日も平穏なフライトになる予定だった。ビルの携帯端末にそのメールが届くまでは――。「20分以内にこの口座に1億5千万ドルを振り込め。入金が確認できなければ乗客のうちの誰かを殺す」。まるで自分のことを近くから観察しているかのような犯人の脅迫文に、ビルの緊張感は一気に高まるのだった。コカインの密輸に手を染めていた同僚、アラブ系の医師、何故か自分の隣に座りたがった女性、正義感の強いNY市警、急遽乗り合わせることになったCA…。乗客乗員誰もが容疑者となる中、とうとう最初の犠牲者が発生するのだった。決死の覚悟で犯人探しに奔走するビルだったが、入金先の口座が自分名義であることが分かり、疑いの目は自分にまで向けられてしまう……。果たして犯人は誰なのか?ビルは無事にこの150名を乗せた旅客機を地上へと着陸させることが出来るのか?最近、すっかりアクション俳優としての顔が定着してしまったリーアム・ニーソンの新たな主演作は、そんな密閉された空間で序盤からノンストップで展開されるフライト・アクションでした。一言で言ってしまえばワン・シュチュエーションのベタなスリラーなんですが、そこはこれまでエンタメ映画の良品を幾つかものしてきたセラ監督(これはちょっと…ってのも中にはあったけどね笑)、ツボを押さえた演出と練られた脚本、そしてリーアム・ニーソンを初めとする何気に豪華な役者陣競演で最後まで一気に見せる娯楽映画としてなかなか面白かったです。特に、見れば見るほど誰も(主人公含む)が怪しく見えてしまうこのミスリードの巧みさはなかなかのもの。携帯のメール文を画面に映し込む演出もなかなか冴えてました(壊れてしまった画面をそのまま映すとかナイス!)。そして、クライマックスで一気に爆発する畳み掛けるようなアクションシーンにもテンション上がりまくり!まあ、観終わって冷静に思いなおしてみたらけっこう「?」な部分もあったし、強く印象に残るようなシーンなりエピソードなりが乏しいせいで1週間後にはすっかり忘れてしまいそうな内容ではあったけど、ぼちぼち面白かった!6点!!
[DVD(字幕)] 6点(2015-08-07 15:12:30)
1117.  イコライザー 《ネタバレ》 
再就職したばかりのホームセンターで地道に働く中年男性マッコール。古いアパートに独りで暮らし、真面目で面倒見の良い彼だったが過去の経歴はほとんど謎に包まれている。そんなマッコールの唯一の心の慰めは、深夜のファミレスで紅茶を飲みながらの静かな読書。ある日、彼はそこで荒んだ生活を送っている若い娼婦テリーと出会う。「ねえ、どうして本ばかり読んでいるの?」。これから客と会う憂鬱を紛らわすかのように、彼女はそんなマッコールに話しかけてくるのだった。お互いの孤独を埋め合わせるように次第に仲良くなってゆく2人。やがて、マッコールは昔最愛の妻を亡くしたことを、テリーは実は歌手を目指していることを打ち明けるのだった。だが、ある夜、テリーは顔を腫らして店へとやって来る。「あたし、客とトラブっちゃった…」と話す彼女に心配を募らせるマッコールだったが、数日後、売春婦たちの元締めである冷酷なロシアン・マフィアによってテリーは半殺しの憂き目に遭い、病院に入院したことを知るのだった。悪い奴らは絶対に許さない――。マッコールは、葬り去っていたはずの過去の記憶を甦らせて、単身、そんな街のゴミのようなロシアン・マフィアたちの根城へと乗り込んでゆく……。昔から、このアントワン・フークワって監督さん、こんな感じの男臭~~~いまさに僕好みの男の男による男のためのエンタメ映画を幾つも撮ってきた人。そんな彼がこれまたまさに“漢”を演じさせたら右に出る者の居ないデンゼル・ワシントンと再びタッグを組んで製作したという本作、けっこう期待して今回鑑賞。結果は……、すんません、僕はちょっとノレませんでした、これ。うーん、なんだかこのD・ワシントン演じる主人公があまりにも無敵すぎやしません?たった一人でロシアン・マフィア5、6人を19秒で皆殺しにしちゃうまではよかったのですが、そこから悪徳警官は懲らしめちゃうし、組織から送り込まれてきた凄腕の殺し屋たちにたった一人で立ち向かっちゃうし、本筋とは無関係の単なる強盗もきちんとやっつけちゃうし、石油タンカーは爆破しちゃうし、挙句本国にまで乗り込んでボスまで殺しちゃうって…、どんなけスーパーマンやねーん(笑)。ちょっとあまりに荒唐無稽すぎて、僕はいまいち楽しめませんでした。それに、クロエちゃんの出番、少なすぎ!!てか、物語の発端となる彼女が途中から完全にどっか行っちゃって、最後に申し訳程度に再登場するのも脚本的にどうなのかななんて僕は思っちゃいました。ま、これは好みの問題なのだろうけど、僕はもう少しリアリティに裏打ちされた作品の方が好きです。フークワ監督の次回作に期待!
[DVD(字幕)] 5点(2015-08-06 22:01:50)(良:1票)
1118.  グランド・ブダペスト・ホテル 《ネタバレ》 
1968年、ヨーロッパの東端にある小国旧ズブロフカ共和国。閑散としたかつての豪華ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」に泊まっていたとある作家は、そこでこのホテルのオーナーで大金持ちの老人ゼロと出会う。いかにも変わり者と言った彼に小説の題材を探していた作家は、いたく興味を惹かれ、思わず夕食の誘いに乗ってしまうのだった。そこでゼロが語り始めた物語は、彼の師でありホテルのコンシェルジュでもあったムッシュ・グスタヴと共に経験したとある殺人事件を巡る波乱万丈の冒険活劇だった…。豪華俳優陣を存分に使い、昔から独特の作風で知られるウェス・アンダーソン監督が新たに製作したのは、そんな奇想天外なスラップスティック・コメディでした。正直に言わせてください、僕はこのウェス・アンダーソン監督のセンスとはやっぱり合わないみたいです。確かに、この作品の全編に横溢する唯一無二の独特の世界観や、まるで絵画のように美しい色彩感覚や、上質なウェットとユーモアに富んだストーリー等々、その実力は充分に認めるところなのだけど、それでもこの監督の「どうだい?俺ってセンスあるだろう。まぁ分からない奴には一生分からないだろうけどね。ははは」と言わんばかりのまるで自分のセンスを上からひけらかすような唯我独尊的態度(え、卑屈すぎ?笑)が、僕は昔から妙に鼻について正直あまり好きではないんですよね~。ティム・バートンやジャン・ピエール・ジュネのように、もっとアクの強い一片の毒のようなものがそこに含まれていれば良いのだけど、この意図された極度なまでの軽薄さはやっぱり僕には物足りないっす。って、「じゃあ、観なきゃいいじゃん!!」と突っ込まれるとイタイところなのだけど、この人の作品て毎回キャストが豪華だからやっぱり手が伸びてしまうんですよ、悔しいけどさ。こうなると、なんだか文句を言うために映画を観てるみたいで、「これじゃ、テレビ局にクレームの電話したいがためにテレビ見ているクレーマーおばさんと大して変わらないじゃん…(泣)」と自己嫌悪に陥りそうなのだけど、それでも自分の心を鬼(クレーマーおばさん?笑)にして評価させてください。5点!!
[DVD(字幕)] 5点(2015-08-05 21:59:28)(良:1票)
1119.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 
ノーマン、何処に居る?こっちへ来い。分かるか、こいつはさっき捕まえたドイツ兵だ。ドイツ野郎を殺せないような役立たずはいらない。こいつの背中に風穴を開けろ。間違っていようと関係ない。お前は何をしにここに来たんだ?俺たちの任務はナチスを殺すことだ!ノーマン、お前はこいつを殺すためにここにいる。そして、こいつはお前を殺すためにここに来た。こいつを殺すか、お前が死ぬかだ――。1945年、4月。連合軍に追い詰められ、降伏寸前のナチスドイツは、最後の総力戦を戦うために女子供を問わず戦場へと駆り立てていた。兵役についたばかりのノーマン二等兵は、そんなドイツ軍との熾烈な戦いの最前線へと送り込まれるのだった。それまで事務仕事ばかりで実戦経験のほとんどないノーマンだったが、歴戦のベテランであるドン・コリアー軍曹の愛機“フューリー号”の副操縦士として配属される。鋼鉄と油にまみれたそんな狭い戦車に揺られながら、ノーマンは戦場の汚い現実を目の当たりにしていく。自分が信じる神と良心に縋ることによって何とか理性を保とうとするノーマンに、そんなものなど当の昔に捨ててしまったドンは、ドイツ兵は誰であろうとたとえ女子供であろうと躊躇なく殺せるマシーンになれという教育を施していくのだった…。第2次大戦末期のドイツを舞台に、戦車部隊の工員として過酷な戦場を生きたそんな男たちのドラマを生々しく描き出す軍事アクション。とにかく、この徹底的にリアルさに拘った重厚な戦場描写は凄まじいものがあります。ナチスドイツの狂気性はもちろんのこと、歴史的には英雄として認識されることが多い連合軍にもきっと蔓延していたであろうモラリティの欠落も、ちゃんと目を逸らさず描き出した本作のこの冷徹な姿勢は賞賛に値すると思います。そんな汗と泥の臭いにまみれた男臭い物語なのですが、中盤に登場する一人の可憐な女性を巡るエピソードは強い印象を残してくれました。もし、自分の童貞を捧げた美しい女性が、その次の瞬間に死んでしまうなんて経験をしてしまったら、そりゃ人間性なんてどっかに吹っ飛んじゃいますって。今では粗野な振る舞いを繰り返す先輩たちも、きっと入隊したての頃は彼のような葛藤があっただろうにと思うと見ていて辛いものがあります。ただ…、終始そんな冷徹な視線でもって戦争のやり切れなさを見つめていた本作なのですが、後半における無謀なヒロイシズムへと安易に流れてしまった展開はやはり大きなマイナスポイントでしょう。「俺の最大の任務は、仲間を生きて帰らせることだ」と言っていたドン軍曹の信念がここで揺らいでしまったのが残念でした。とはいえ、最後までヒリつくような緊張感を途切れさずに見せきる戦争ドラマとしてなかなか良く出来ていたと思います。7点。
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-04 01:38:22)(良:1票)
1120.  ホビット/決戦のゆくえ 《ネタバレ》 
ロードオブサリングの感動再び!と勢い込んで観たものの、原作のボリュームを考えるとこちらも同じような枠組みで3部作にするのは無理があったんじゃ…、と思わせ続けた本シリーズもとうとう完結。という訳でけっこうハードルを下げて観始めたせいか、僕的にはけっこう面白く観ることが出来たっす。まあ、いろいろと突っ込みどころは多々あれ(あれだけ引っ張ってきたドラゴンが冒頭10分であっさり死んじゃうトコとかけっこう失笑しちゃいました~☆)ど、戦闘シーンの迫力なんかは抜群の安定感で素直にハラハラドキドキ。当初の予定通りシンプルに2部作として製作していたらきっと完成度の高いシリーズになっていただろうに、そこらへんはやっぱ色々と大人の事情があったんでしょうね~。クライマックスが終わった後の大団円の超あっさり終わってしまうトコとかなかなか投げ遣りな感じがして、P・ジャクソンの「俺は普通に2部作で撮りたかったんだよ!」という嘆きがそこに滲み出ているような気がしたのは僕だけかしら?フロドもゴラムも出てこないし…。と、前シリーズに比べるとやっぱり見劣りしちゃうけど、普通に独立したファンタジーとして観ればけっこう面白かったかな~。ジャクソン監督はこれで肩の荷が下りただろうし、次はどんな凄い作品を撮ってくれるのか期待を込めて7点!
[DVD(字幕)] 7点(2015-08-03 21:30:21)(良:1票)
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