1121. 好色一代男
《ネタバレ》 市川雷蔵がコミカルな商人を演じた時代劇。 クールな役がピタリとはまる雷蔵だが、コミカルな役を演じても、十分に演じきれている。 それがまず凄い。 雷蔵が演じる男の人生観は、女を喜ばせること。 その為には、親の財産も食いつぶすし、お役人にも逆らう。 時には、命の危険もいとわない。 終始一貫とした姿勢は素晴らしいが、どうにも現実離れしていて、どう入っていっていいものか最後まで戸惑った。 最後は船で旅立ち、終了。 終わらせ方としては、かなり卑怯かな。 だって、女の為に権力にも逆らって男意気を発揮したんだから、その顛末が一体どうなるのか知りたかったし。 綺麗ごとで済まされるのか、それとも処刑されるのか。 だって、誰だって女の為に好き勝手やりたいわけで、でもそれをやったら下手したら、一生刑務所なわけで。 理想を好き勝手に追究すると、最後はどうなるのか? 意外とうまく生き抜けるもんなのか? この作品なりの解釈を知りたかった。 若尾文子が二番手クレジットなのに、最後にちょっとしか出なかったのが不満。 もっともっと、あのふくらはぎの美脚をさらけ出してほしかったのに。 [DVD(邦画)] 6点(2016-07-19 12:40:39) |
1122. WEEKEND BLUES ウィークエンド・ブルース
《ネタバレ》 『運命じゃない人』から先に観たので、インパクトには欠けた。 本作から先に観ていたら、もっと衝撃を受けたと思う。 それでも、監督デビュー作で、自主製作な点を鑑みると、もの凄い才能だ。 メジャー街道に乗るのは、時間の問題だったと思うし、必然だったと思う。 それだけ、内田けんじ監督は、才能抜群の監督だ。 こういった作品があって、後の傑作『運命じゃない人』が産まれたかと思うと、感慨深い。 冒頭で、雄カマキリが雌に食われてしまう話が出てくるが、これがいいパンチを効かしている。 しょせん人間の男も生物学的には単なる雄であって、雌の犠牲になる雄カマキリの様に、女性の前では、ただ無力なのだろう・・・ 実際、自分も女性に翻弄された経験があるし、そういった自身の経験と重ね合わせながら、この作品を観ると、更にパンチが効いてくることだろう。 まあ、苦笑するしかないやね。 [DVD(邦画)] 6点(2016-07-15 01:01:41) |
1123. ジャンクフード
《ネタバレ》 山本政志監督の、アウトローに対する愛情に溢れた作品。 いわゆる世間のはみ出し者ばかりが出てきて、それでいて躍動している。 色んな事情を抱えた登場人物たちが、終盤で偶然、一堂に会し、無邪気にゲームに興じる場面は、まさに秀逸。 東京ならではの、「知らない者同士の一晩だけの交わり」を、分かりやすく表現したシーンで、とても印象深かった。 東京のアングラな世界でうごめく人々。 そんな人たちの日常。 どこまでリアルなのかまでは分からないが、アウトローの生き様を描いた内容は、とっても面白い。 山本政志監督が描くと、特に面白い。 ますます、この監督が好きになった! [DVD(邦画)] 7点(2016-07-15 00:54:25) |
1124. リムジンドライブ
《ネタバレ》 コギャルが主人公。 コギャルという存在自体が、時代を感じさせてしまうので、とにかく古臭い。 年代的に古いという意味ではなく、時代遅れ感が痛々しいのだが、それもまた山本政志監督らしいところであって、 その時代を色濃く映すアイコンだからこそ、コギャルを主演に据えたんだろう。 この映画、演技という点では最低だ。 ほとんどの登場人物が素人くさい。 だけど、それが逆にリアリティを生んでいて、臨場感がある。 鬼丸という役者、生理的には受け付けないが、とにかくインパクトが凄い。 耳障りな低い声、気色の悪いロンゲ、妙に強い設定等、とにかくウザい。 そのウザさがありながらも、インパクトと存在感だけは絶大で、この作品で一番印象に残った役者だった。 内容はほとんど無いに等しい。 ウリは、全編オール・ニューヨーク・ロケ。 ニューヨークを堪能できる内容だ。 雰囲気は悪い意味で、80年代日本映画の佇まい。 垢抜けず、内容も薄い。 ニューヨークロケという時点で、満足してしまったのか、それともニューヨークロケが大変過ぎて、演出まで気が回らなかったのかは分からないが、 完成度は高いとは言い難い。 [DVD(邦画)] 6点(2016-07-12 01:46:38) |
1125. スリー☆ポイント
《ネタバレ》 京都、沖縄、東京の三か所を舞台にした内容。 3か所の話に関連性はないが、同じ日本でも、所変われば様々な人がいて、様々な人間模様が存在しているんだなぁ、という一種の感慨を覚えた。 この映画、ボリュームが半端ない。 2時間の尺を存分に使っている。 それだけ人間模様がてんこ盛りだし、存分に楽しむことができた。 ★京都篇 ラッパーの生態は生理的に受け付けなかったが、女が男を一途に愛するまでの過程、時間の重さ、愛情表現の面白さ、観るべきものはあったように思う。 ★沖縄篇 ドキュメンタリー。とにかく個性的で、異形な人物が数多く登場する。 色んな人間が流入してくる、沖縄ならではの特色が出ている。 中には、これまた生理的に受け付けない人間も出てくるが、それも個性ということで。 沖縄はまさに人間的カオスなのでありました。 ★東京篇 途中まで、なんてチープな設定なんだ・・・と思いながら観ていたが、終盤であっと言わせる展開に。 意外にも、よく作りこまれた話だった。 リアリティはないが、物語としての面白味はあった。 その筋に疎いので、蒼井そらという名前は知っていても顔は知らず、エンドロールを見た後、初めて気づいた。 どうりで、内面と外面の両面から滲み出るエロスを感じた訳だ。 声色、七変化、肌質・・・うーむ、さりげなく、それでいて豪快にエロイ。 男は最初、女を相手にせず、見下していたが、終盤から立場が一気に入れ替わった。 この立場の逆転劇が凄まじい。 しょせん、男と女とでは、生命力が違う。 男は生気を奪われ、女は元気を取り戻す。 男は生命力という点で、女には太刀打ちできないということを、まざまざと見せつけられた気がする。 そういう意味では、男にとって、とっても怖い内容。 なんとも語りつくせぬ、素晴らしく濃い内容です。 山本政志監督の次回作を観てみたい、と思わせられた圧巻の一本でした! [DVD(邦画)] 8点(2016-07-11 02:33:03) |
1126. 鏡の女たち
老人時間でひたすら進行する。 とにかく展開が遅い。 そして、とにかく画面が暗い。 既に、この時点で不満が募るが、結末も大して面白くなかったから、踏んだり蹴ったり。 音楽が不気味で印象的ではあるが、話の内容がちっともスリリングでないので、マッチしていない。 とにかく、老人製作による、老人が演じた映画で、熟練というより終末的な香りが漂う。 なんだか、登場人物が皆、ネガティブ。 このネガティブさに、何を見出したら良いのか戸惑った。 ケチをつければキリがない内容なので、良かった点を最後に・・・ 失踪というテーマについては、考えさせられるものがあった。 日本国内で、どれだけの人が失踪しているんだろう? 失踪された場合、その家族の心境はいかに? 社会派的な側面も持つ作品なので、その辺は興味深かった。 [DVD(邦画)] 4点(2016-07-11 02:23:03) |
1127. ヒロシマナガサキ
《ネタバレ》 気分が良くなるようなドキュメンタリーではないし、面白いというようなものでもない。 ただひたすら原爆の悲惨さを目の当たりにした。 今までに観た、どの原爆関連の映像より、過激で激しい。 容赦のない悲惨な映像の数々。 顔を歪めずにはいられなかった。 この映画を観て意識が変わったのは、どんなに外見が酷い方々を見たとしても、それを好奇の目で見たりはしないだろうということ。 日本が今後、兵器を保持するべきかどうかについては、この映画を観ても尚、分からない。 同じ過ちを犯さないという点では、日本は今後も兵器を持つべきではないかもしれないが、世界の中で日本だけが兵器保持を放棄しても意味がない。 ただ一つ間違いなく言えることは、世界の全ての国々が核兵器を持たないというのが理想だということ。 でもそれは理想であって、現実にはほぼ不可能だということを考えると、どうにもやりきれない思いにかられる。 広島と長崎で被爆した方々の気持ちを察すると、今だあちらこちらで戦争が起きているという現実は、どうにもやりきれないに違いない。 この映画を観たところで、その悲惨さは理解できるものの、世界の戦争を未来永劫、廃絶することが困難である以上、心に残るのは、その無力感のみである。 今自分が生活している平凡な幸せに、ただただ感謝するしかない。 [DVD(吹替)] 6点(2016-07-08 02:08:19) |
1128. 密告・者
香港より発信の、良質なクライムサスペンス。 カンフー映画を得意とした香港は、今や過去のはなし。 スタイリッシュなクライムサスペンスやバイオレンスアクション映画を作らせると、香港は世界でもトップクラスだと思う。 本作も、出来栄えは非常によく、人間の持つ心の闇や優しさ、道義というものを繊細かつ切れ味よく描いてる。 埋もれさせておくには、もったいない佳作。 クライムサスペンス好き、そして香港ノーワル好きの方は、必見の作品。 [DVD(字幕)] 7点(2016-07-06 01:31:21)(良:1票) |
1129. パイラン
《ネタバレ》 たぶん人生で一番泣いた映画。 主人公の男に、どれだけ感情移入できるかが鍵。 ろくでもない人生を送ってきた男で、しかも大事な女性がいる男なら、きっと感情移入できるに違いない。 観終えた後、しばらく涙が止まらなかった。 ただただ働き者で、真っ直ぐな女性。 そんな女性が自分より先に死んでしまったら・・・ しかし残酷だなぁ、この話。 女性の人生も哀しいけど、男はある意味、もっと不憫。 女性と向き合えたのが、女性が死んだ後という始末。 これじゃ、どうにもできない。 自分を想ってくれたこの女性に、人生を捧げようにも不可能なのだから。 私はこの映画を観終えて、大切な女性との時間を大事にしたいと思った。 心から、そう思った。 そう思わせるだけのパワーがある。 こんだけ打撃をくらう映画は、そうはない。 [DVD(字幕)] 9点(2016-07-04 09:23:33) |
1130. 犯人は21番に住む
《ネタバレ》 十分に楽しい作品だが、傑作ぞろいのクルーゾー作品の中で言えば、普通の出来。 それだけ、クルーゾーの作品群は凄い。 本作は、ラストまでやや退屈感があったものの、ラストはあっと言わせられた。 それにしても、本作のモノクロ映像は美しいなぁ。 [DVD(字幕)] 6点(2016-07-03 01:58:20) |
1131. ロビンソンの庭
廃墟好きには堪らない作品。 調べて分かったが、舞台になっているこの廃墟、杉並区の蚕糸工場跡地のようだ。 この場所をロケ地に選んだ時点で、既に映画として成り立つ、そういう意味ではロケ地選びの勝利。 内容はほぼゼロに等しいが、この舞台を活かすという意味で、余計なストーリーは要らないのかもしれない。 主演の女性が、これまたキモい。 これは映像として堪えうるものではない。 カルト的な味わいを出す上では意味があったかもしれないが、個人的にはNG。 [DVD(邦画)] 5点(2016-06-30 01:08:44) |
1132. 血と砂(1965)
《ネタバレ》 ユーモアたっぷりの戦争映画。 慰安婦をプラスに描いている点も印象的。 三船敏郎がまともな役どころを演じているくらい、その他のキャストが破天荒揃い。 粒揃いな俳優陣も、見所の一つ。 戦争の悲惨を間接的に描いているところが、絶妙。 残酷描写は沢山あるが、それがメインではなく、おかずという感じ。 シーンとシーンの間に、さり気なく入ってくるあたりが、にくい。 音楽隊というのが一つの主役になっているが、少々、しつこい感じもある。 だが、その音楽隊の奏でる音楽こそが、ラストで非常に効いてくる。 死ぬ直前まで楽器を奏で、仲間の生死が、音楽により確認できるところなんかもすごい。 すごいづくめの作品だが、どうも肌には合わなかった。 きっと、戦争という題材に、ユーモアを入れ過ぎたからだろう。 何か、不自然なものを感じた。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2016-06-22 02:48:56) |
1133. 菊五郎の鏡獅子
歌舞伎という伝統芸能を紹介する記録映画。 歌舞伎というものに造詣のない私からすると、その凄さがさっぱり分からなかった。 でもその一方で、歌舞伎は戦争をも乗り越えて、現代に脈々と伝わっているのだと感嘆した。 小津映画を観たというより、とてつもなく貴重な、日本の伝統芸能の映像を観たという感覚だ。 [インターネット(字幕)] 5点(2016-06-01 05:46:52) |
1134. 群衆(1941)
《ネタバレ》 キリスト教の物語。 イエス・キリストが、1940年代にジョン・ドーとしてよみがえった! そんな内容の物語。 つまらない内容ではないが、かといって、特に面白いというものでもない。 ただし、ヒロインの女性の脚が、この上なく美しいということだけは、ゴージャス! [ビデオ(字幕)] 5点(2016-05-20 23:58:16) |
1135. 拳銃無宿(1947)
《ネタバレ》 またしてもジョン・ウェイン。 こんな太り気味のおっさんに、早撃ちができるはずがない。 とにかく本作でも無敵でモテまくりのジョン・ウェイン。 話としては普通に楽しめ、奇をてらったところがないのが好印象。 [ビデオ(字幕)] 5点(2016-05-12 09:20:31) |
1136. パームビーチ・ストーリー
《ネタバレ》 かの蓮實重彦氏が推薦している作品だったので鑑賞。 ビデオジャケット裏に、“ノンストップ・コメディ”と書かれていたので、この時代のアメリカ映画に特有な、べちゃくちゃうるさいラブ・コメディを想像していたが、意外とそこまでうるさくはなく、落ち着いて観ることのできる内容だった。 結局は元サヤに戻るという結末は、偶然にも最近鑑賞した、同時代のアメリア映画とまったく同じオチではあったものの、そこにいたるまでのストーリーが面白かったので、楽しむことができた。 [ビデオ(字幕)] 6点(2016-05-07 22:58:27) |
1137. スター・ウォーズ/フォースの覚醒
《ネタバレ》 期待を上まわり、スターウォーズの世界にどっぷりと浸ることができた。 それにまず感謝! 懐かしい登場人物たちとの、再会てんこ盛りも、もちろん嬉しい。 だが、それ以上のインパクトだったのが、ハン・ソロが殺されるシーンだ。 息子の心を取り戻し、ライトセーバーを手渡されたかと思いきや、その手は強く握られ、離されない。 次の瞬間に殺されてしまうわけだが、このシーンはとても切なく、記憶に残るシーンとなった。 この切なさ、やるせなさも、スターウォーズの魅力の一つじゃないだろうか。 スター・デストロイヤーが砂漠に突き刺さっているシーン。 『猿の惑星』の自由の女神の如く、衝撃なシーンだった。 あとは、ハックス将軍。 エピソード4の“グランド・モフ・ターキン”の様な、冷徹な将軍。 そして地位が高く、カイロ・レンに対して臆することもなく、堂々していて、頭脳明晰。 この悪人キャラは、帝国軍の縦社会の厳しさと恐怖感、威圧感を感じさせてくれる。 ハックス将軍が次回作にも登場するわけだが、カイロ・レンとの覇権争いも楽しみだ。 おそらく修行を終えたカイロ・レンに駆逐される運命にありそうだが・・・ 細かく書いているとキリがないので、この辺で。 やっぱりスターウォーズは、最高の映画だ。 切なさ、恐怖、希望、愛情、そして友情・・・ 全てが詰まっている。 でも再認識したのは、ダース・ベイダーの威圧感は最強でいて、唯一無二であるということ。 それを感じることができただけでも、観た甲斐はあった。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2016-05-06 02:46:33) |
1138. キング・オブ・キングス(1927)
《ネタバレ》 キリスト教に伝わる福音の数々を、そのまま引用し、イエスが起こす奇跡から復活までを、コンパクトにまとめた内容。 特に面白いとか面白くないとか、そういう映画ではない。 ただただ、キリスト教映画である。 この映画を観て思ったこと。 それは、なんだか善玉と悪玉がはっきりし過ぎているということ。 そして悪玉は最終的に後悔する。 結局は皆、イエスの思うがまま、である。 宗教映画だから当たり前の成り行きだろうが、さすがにうまく行き過ぎていて辟易する。 この一方的な価値観の押しつけこそが宗教である気がする。 真っ向から反対論を展開し、それも正しいとする表現が、もっとあっていいのでは? この映画で表現されている内容は、とても独善的だ。 もし多角的な価値観を認める宗教が存在するならば、信仰してもよいとさえ思う。 だがキリスト教は、私が学んだ限りでは、価値観の押し付けが過ぎている。 閉鎖的な環境の下で、一方的にキリスト教を説かれれば、傾倒してしまう完成度はあるが、冷静になれば都合の良い講釈と感じる。 これが、この映画に限らず、キリスト教というものに関する、私の雑感である。 [ビデオ(字幕)] 4点(2016-05-05 02:52:43) |
1139. 會議は踊る
話としては分かりやすく、人生の華やかな一瞬をとらえた内容で、楽しく見ることができる。 しかし、かといって、名作たる所以を感じるほどの内容でもない。 [ビデオ(字幕)] 5点(2016-05-03 00:07:55) |
1140. キートンの蒸気船
セットを壊しまくる終盤のスタントに呆然。 キートンにしか演じられない、もの凄いスタントに唖然。 恋する女性役の脚の綺麗さも特筆もの。 小柄で、とてもチャーミング。 時代を超えて、この女優さんに恋をしてしまった。 荒くれ者の父親だが、息子に対する愛情が感じられ、ほんわかとした気持ちにもさせられる。 見所にあふれた、キートン代表作の一つ! [ビデオ(字幕)] 7点(2016-04-30 00:58:50)(良:1票) |