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101.  わが青春に悔なし 《ネタバレ》 
 黒澤監督の、戦後すぐの民主主義プロパガンダ映画。    GHQの検閲が厳しい折、娯楽性ゼロ、コメディ要素ゼロのシナリオになってしまっている。   そんな中で、美人女優の原節子がお嬢様から汚れ役までこなし、それを感情や情景が滲み出るような印象的な絵作り、カット割りをして、ある女性の数奇な半生のドラマとして「映画」に仕立てたことに黒澤監督の才能を感じる作品。   しかし、この説教じみたストーリー展開だけは、いくら黒澤監督でもいかんともしがたく、面白い映画かと言われれば、好んでみるようなものではない。   シナリオの制約で、娯楽性ゼロのプロパガンダ映画を、一応鑑賞に耐えるドラマ性のある「映画」に仕上げた黒澤監督が凄い、ということを感じる映画。 
[DVD(邦画)] 5点(2010-07-12 01:53:39)
102.  サマータイムマシン・ブルース 《ネタバレ》 
 ほぉーーーと思わず唸ってしまう作品。   シナリオは超都合主義なのだが、タイムパラドックスを扱うからこそ、その超都合主義が、この映画の面白さの本質になっている。   コミカルで、軽妙で、なかなか面白かったのだが、こじんまりした映画で終わってしまったのが惜しい。   タイムマシン物の不朽の名作バック・トゥ・ザ・フューチャーは、細部では矛盾を持ちつつも、それを感じさせないスピード感あふれる展開の妙と、お金をかけたスケール感の大きさで大成功した。   こちらは、タイムマシンの矛盾が起こらないようにするために、あちこちに散りばめられた伏線をすべてを収束させるというシナリオの妙のみで、スケール感を大きくすることが出来ていない。   もともと舞台演劇のシナリオで、最初から大作にする意図が全くなかったのだろうか、低予算だったのか、随所に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「タイムマシン」を意識したオマージュが散りばめられているものの、最初からそれらを超えてやろうという気はなく、これでよしとしてしまってる感がある。   このスケール感の小ささも、これはこれで十分味になっているし、良い面もあるのだが、時間をかけて映画用にシナリオを練り上げて、セットやロケや撮影にもお金をかければスケール感を大きくすることもできるだろうし、そうすることで、もっとバック・トゥ・ザ・フューチャーに近づけたのではないかという気がする。   コミック原作物や、テレビ局主導の映画で、ミーハーのためだけに大げさに宣伝してお金をかけるくらいなら、こんな面白いシナリオをしっかり拾いあげて、お金をかけて世界に通用する娯楽大作を作って欲しい。
[DVD(邦画)] 7点(2010-07-11 02:37:57)
103.  醜聞(1950) 《ネタバレ》 
実にいい。説教臭いというか、いかにも作りもののベタなヒューマンストーリーなのに、実にいい。    決してスマートなシナリオじゃなく、ダイナミックで斬新な映像を使っているわけでもない、役者の演技や設定もあざとかったりオーバーだったり、途中のワンシーンワンシーンや使われる音楽もそれぞれ切りだしてしまうと粗があるように思えるのに、観終わると映像と音楽と演技が見事に調和してつながっていたように感じる。    編集の妙、展開の妙であり、実にうまい演技の志村喬を実質の主役に据え、三船敏郎の個性をスポイルすることなく完全に志村の引き立て役にしたキャスティングなど、監督の手腕に脱帽です。    志村喬の演技では、この後の作品「生きる」が有名だけど、こっちの方が人間臭くてもっといいかも。
[DVD(邦画)] 8点(2010-07-07 03:05:04)
104.  虎の尾を踏む男達 《ネタバレ》 
 シナリオは歌舞伎「勧進帳」そのものだし、セットもロケも極めて少ない場面数で、第二次大戦の最末期に作られた作品だけに、予算も少なく、娯楽要素を大きくすることも出来なかったことが伺われる。   わずかに「強力」の役回りにコメディータッチを加えることが黒澤らしさとも言えなくはないが、そこに人気喜劇役者榎本健一を配しているところも、体制に気を使い、慰安として許されるような映画作りをしなければならなかったのではないかと思われる。   黒澤監督の歴史を語る上で見ておくべき作品だとは思うが、背景を一切考慮せずに作品として評価すると、当時の並みレベルのもの、今の時代では面白くない映画、というしかない。
[DVD(邦画)] 5点(2010-07-05 00:47:50)
105.  静かなる決闘 《ネタバレ》 
 映画の出だしは黒澤作品らしいベトベトした重たい画面で、期待は高まったが、話が進むにつれて、あまりにも変化の少ない画面作りに監督手抜きしてるんじゃないのと思ってしまった。   また、三船敏郎のイメージとあまりにもミスマッチな役柄で、準主役の志村喬と千石規子だけがイメージ通り頑張ってる感じ。  それ以外の脇役陣も、大映映画だからだろうが、存在感がなく魅力に欠け、主人公三船の違和感のみが強調されてしまった。   シナリオ的には若くてギラギラした風貌の主人公が静かに葛藤するということで、当時は三船敏郎がドンピシャと判断したのだろうが、その後の映画で築いた三船敏郎のイメージでこの映画を観ると、ちょっと違うだろう思ってしまう。   三船を使うなら、もっと躍動感があってギラギラした展開、絵作りにすべきだし、シナリオ重視なら、もっと落ち着いた役者を使うべきだったと思う。   シナリオも含めて映画として全然駄作ではないのだが、「黒澤-三船の映画」という目で見ると名作とは言いがたく、まだ三船の可能性を探っている段階の試験的作品で、この路線はダメだと勉強した作品ではないだろうか。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2010-07-04 03:50:02)
106.  江分利満氏の優雅な生活 《ネタバレ》 
 岡本喜八監督の冒険心は感じられるのだが、 正直、これはちょっと微妙。    アクション映画じゃないのでテンポが取りづらい。緩急の工夫はしているのだが、いかんせん、原作が映画的な緩急のある話ではないので、空回りしている感じがする。    劇中で話を聞かされている者が退屈する様子を観客にも同時体験してもらって根比べみたいな趣旨のことを特典映像の監督インタビューで言っていたが、まさに監督の思い通りになってしまった。   監督の意図どおりの映画になってはいるのだが、それが楽しさに繋がったかどうかは微妙。
[DVD(邦画)] 5点(2010-07-01 02:17:05)
107.  戦国野郎 《ネタバレ》 
 コミカルアクション時代劇。お気軽に見れて楽しい映画。題名からして、いかにも軽い。    星百合子も水野久美も美人で、今で言うアイドル出演の映画みたいな雰囲気もあり、乗りも非常に軽いのだが、変な安っぽさはなく娯楽映画!!って感じ。    歴史に残る名画、にはほど遠いが、気軽に見られる娯楽映画としてのレベルはハリウッドにも負けてない。 
[DVD(邦画)] 7点(2010-07-01 02:13:43)
108.  ああ爆弾 《ネタバレ》 
 自由で、シュールで、馬鹿馬鹿しいのに、何故か凄いと思わせる作品。   狂言、歌舞伎、浪曲、狂言、念仏、雅楽、ジャズまで使ってミュージカル風に仕立ててしまうセンスは、今の感覚でも斬新。時代背景を現代に変えても十分に成立しそうな脚本と演出である。    画面構成や、カメラワークも当時の白黒シネマスコープという独特の制約をむしろ利用したかのように、ストーリ展開のテンポの良さを引き立てていて、岡本監督のうまさが光っている。   黒澤監督のこだわりと方向性は違うが、岡本監督の画面とテンポへのこだわりもひしひしと感じられる。こういう軽いポップな作品は岡本監督の勝ち。 
[DVD(邦画)] 7点(2010-07-01 02:11:30)(良:2票)
109.  酔いどれ天使 《ネタバレ》 
 第2次大戦終戦3年後に作られた黒澤映画。    白黒で画質も悪いのに、この見応えは何なんだろう。    ストーリーは複雑ではないのだが、水溜りのドロドロさに代表されるさまざまな細部の描写や展開の緩急で見るものを引き込む脚本、カメラワークの凄さや、若い三船敏郎の鬼気迫る演技と志村喬の熱血漢ぶりなどの演出の素晴らしさなどが、びんびんと伝わってくる。    むしろ白黒だからこそ、画質が悪いからこそ出せる魅力なのかもしれない。    黒澤映画、凄い!! でも、ちょっと重い(^^; 
[DVD(邦画)] 7点(2010-07-01 02:09:05)
110.  モスラ(1961) 《ネタバレ》 
 50年近く前の作品だが、シネマスコープでカラーでも見劣りのしない特撮でがんばっており、かなりお金をかけた当時の勢いを感じる。   今見ると、当然ちゃちなところも多々あるが、CG無しでここまでやれるのは見事な職人芸と言う他ない。    しかし、シナリオが幼稚すぎる。とんでもない設定や展開であっても、演出次第でもっと違和感なく見せることも可能だろう。ストーリーの本筋が単純なだけに、それ以外の枝葉を安直に設定してしまうとB級感漂いまくりとなり、役者がまじめな演技をしていると駄作感すら漂ってくる。    出てくる役者はみな芸達者で、それぞれのシーンではキラキラ光るいい演技をしているのに、演出がまずいのか、全体の中でうまく生かせておらず、逆にいい演技が浮きまくってる感じさえある。    あと、外人と子供がぶち壊し。外人は吹き替えるべきだし、子供は出しちゃだめだ。コミカルを狙ったのだろうが、幼稚なシナリオでは絶対だめ。もっと細部をじっくり詰めて欲しかった。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2010-07-01 02:07:27)
111.  マダガスカル 《ネタバレ》 
 キャラは完全に子供向けながら大人も無理なく楽しめるのは、完全擬人化された動物を、動物園で飼いならされた動物にして大きな違和感を感じさせないシナリオの妙。    フルCGもなかなかのクオリティで、動物の擬人化以外には架空のものは一切出てこないにもかかわらず、本物に近づけるだけでなく、本物ではありえない動きやアングルを多用することで、本物以上にインパクトのある映像に仕上げられている。  
[DVD(吹替)] 6点(2010-07-01 02:05:58)
112.  カーズ 《ネタバレ》 
車の種類・年式自体から来る印象と擬人化したときの性格が付けとが絶妙にマッチして、完全に感情移入してしまった。    圧倒的な質感のフルCGで迫力と美しさはさすがピクサー、かつ、車の擬人化した動きも自然で、ストーリーもどこかで見たことあるようなものであるが単純明快で判りやすく、誰が見ても爽快感があってホロッとして暖かくなれる。    娯楽映画としては一級品。誰でも理屈抜きに楽しく見られること間違いなし。    一番のツボにはまったお気に入りのシーンはトラクターころがし、、農学部出身なもんで(^^; 
[DVD(吹替)] 7点(2010-07-01 02:03:34)(良:1票)
113.  GO(2001・行定勲監督作品) 《ネタバレ》 
 政治や社会への問題提起はほとんど無く(北朝鮮の描き方は少し否定的ではあるが、)て、登場人物の心情を中心にしっかりと描くことができており、重くならずに見ることができた。    テーマ性を持ったストーリーなので、娯楽と言うほど爽快感は無いが、コメディータッチの部分も多く、最後まで楽しんで見られた。    原作が良かったからなのかもしれないが、ややもすれば重くなりがちな在日の若者のアイデンティティに対する葛藤と言うテーマをしっかりと青春ドラマの脚本に仕上げてあり、原作(未読)が良いんだろうなぁと感じると同時に、いつもガチャガチャな宮藤官九郎もやるときはやるじゃんって感じ。      キャストもみんな演技派で非常にいい味を出している。   日本人として安心して見られるのはやっぱり日本映画かな(^^; 
[DVD(邦画)] 6点(2010-07-01 02:01:16)(良:1票)
114.  パルプ・フィクション 《ネタバレ》 
 ブッ飛んだ無茶苦茶な設定と意味ありそうで無い会話とバイオレンスの組み合わせに着いて行けるかどうかが分かれ目で、風邪気味でだるい時に見る映画じゃなかった(^^;    英語が判らないから吹き替えで見たけど、日本人の感覚じゃないからなんとなく違和感、でもあの情報量は字幕じゃ出せないだろうし、そのへんも消化不良な感じ。    ジョン・トラヴォルタが軽妙で凄くいいなあと思ったのは、ちょっと前にサタディナイトフィーバーを見たせいかな。エピソードとしてはブルース・ウィリスのエピソードが、ちょっと他から浮いていたけど一番良かった。彼女への気遣いやボスを助けるとこなんか浪花節っぽくてオマケに日本刀を選ぶところなんかが気に入ったのは日本人だからか(^^;    ストーリ展開も見せ方もうまく作ってあるとは思うのだが、体調よくないと乗り切れずに疲れる映画に感じてしまうことは確かで もっと気分がハイなときに見るべきだった。 
[DVD(吹替)] 5点(2010-07-01 01:59:49)
115.  ウォーリー 《ネタバレ》 
ピクサーのCGアニメは外れがない。文句なしに楽しめる。    最初から圧倒的な質感のCGアニメで見るものを引き込み、ちょっとしたエピソードと細かい仕草で感情移入させたあと、一気に展開が変わり、ハラハラドキドキに持ち込んで、猛スピードでクライマックスを迎えて見事に拍手喝さいと同時にホロッとさせる、と、お決まりのパターンにあっさりと嵌ってしまう。    見事なCGと、完璧なまでの起承転結ストーリが、大多数の人を理屈抜きで楽しませてくれる。    屁理屈こねる類の映画じゃなく、見ている最中は素直に楽しめたので、感想はここまででもいいのだが、少しだけ見終わった後の突っ込みを(^^;   ロボットが感情を持ち始めたという流れで話が進むのに、最後が人間にとってのハッピーエンドというのは良く考えるとなんとなく違和感。   また、ウォーリーの設定が、ラピュタの衛兵ロボットのパクリじゃないのと思ってしまったのはジブリの見すぎ?(^^; 
[DVD(吹替)] 7点(2010-07-01 01:57:21)
116.  パルコフィクション 《ネタバレ》 
 タランティーノのパルプ・フィクションと間違わないように、ていうか、明らかに題名ぱくってるだろ、これ(笑    題名からも判るとおり、おばか系の映画である。何かを表現したいのではなく、観客を楽しませたいあっと言わせたいということに徹していて、そのセンスもなかなかのもの。    ありえない設定、とんでもない展開、意味不明なストーリーが笑いと不思議感をしっかり捕まえてくれる。「ひみつの花園」の不条理でハチャメチャなところだけを突き詰めた感じ。    「ウォーターボーイズ」、「スイングガールズ」、「ハッピーフライト」の路線のほうが多分一般には受けて興行成績も上がるから、矢口史靖監督はそちらに力入れざるを得ないのだろうが、こっちの路線のほうが絶対やりたいんだろうと思う。
[DVD(邦画)] 6点(2010-07-01 01:55:26)
117.  天国は待ってくれる(1943) 《ネタバレ》 
ほんわか暖かくて、じんわり感動できていいねえ。夫婦メインの中に家族や親族の愛情までバランスよく取り揃えられていて、映像よりストーリーで見せる感じでマイルドで心地良く見ることができる。    主人公はじめ、それぞれの人の行動の善し悪しには?の部分もあるけど、根底に優しさがしっかり流れていて、嫌悪すべき悪人が一人も登場しないから違和感なく感情移入できて、その暖かさが染み込んでくる。    この時代にカラー!!、「閻魔」って字幕に出るけど英語にそんな言葉あるの? 最初に驚きと突っ込みを入れてしまったけど、すぐに、暖かさに引き込まれてしまった。  
[DVD(字幕)] 6点(2010-07-01 01:51:33)
118.  野良犬(1949) 《ネタバレ》 
ジメジメと蒸し暑くて重苦しい設定が、白黒のコントラストと画面構成でいやというほど表現されていて、それが引き込まれる魅力になってしまう映画。   感覚的に、登場人物全員「野良犬」という言葉がぴったりだ、と思わせる描写はさすがである。     刑事物としては、それほど練りこまれた脚本ではないのだが、場面展開、画面の作り方、見せ方、役者の個性で、映画を見た!っていう満足感はしっかり味わえる。この後に出てくる世界に名を馳せる名作の、クロサワエッセンスが、まだ研ぎ澄まされないままでこってり入ってる感じ。    同じクロサワ刑事物でも「天国と地獄」の方がエンタテインメント性では絶対にお勧めではあるが、映画としてのテーマ性、芸術性と戦後3-4年しか経っていない日本の雰囲気がよくわかるという歴史的価値でトータルでは負けていないかもしれない。
[DVD(邦画)] 7点(2010-07-01 01:49:25)
119.  悪い奴ほどよく眠る 《ネタバレ》 
 テーマは現実的な社会問題だがストーリーや演出が非現実的な展開という、あらすじを説明すると見たいとは思わなくなるかもしれず、平凡な監督が平凡な脚本で作るとメチャクチャ駄作になりそうなのに、この見応えはさすが世界のクロサワとしか言いようがない。    2時間半の長尺も、最初のシーンでぐっと引き込み、途中の無理やり説明調シーンもダレる一歩手前で展開を変え、コミカルなテイストも織り交ぜつつ最後まで一気に見せてしまう。    他の同時代のクロサワ映画に比べると一歩劣るかもしれないが、それでもこのレベルの高さは驚き。50年前の映画で歴史的な価値があるという観点を一切排除しても、これはA級作品です。
[DVD(邦画)] 8点(2010-07-01 01:47:20)
120.  恐怖の報酬(1953) 《ネタバレ》 
ストーリーだけは知っていて古いアクション映画だろうと思っていたら、いい意味で期待を裏切られた。   前半は全くアクションはなく人間ドラマばっかりなのだが、主人公たちの置かれた立場や背景を良く描いており、かつ飽きの来ないシナリオと演技で一気に見せてくれる。   後半のアクションも、派手な場面で見せるのではなく、あくまで、主人公たちの人間ドラマがあることで緊張感を保っており、派手なアクションシーン流行の最近の映画も見習って欲しいと思う。   ただし、ラストシーンだけは納得できなかった。途中で何か伏線を張って納得のいく結末にして欲しかった。   トータルでは良くできた映画であり、名作であると思うが、スカッと楽しめる映画ではないことも事実。  
[DVD(字幕)] 6点(2010-07-01 01:45:53)
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