1221. エイプリルの七面鳥
《ネタバレ》 この作品からは、優しさが感じられます。 それも、押し付けがましい優しさではありません。 演出された優しさではなく、自然体から滲み出るような優しさ。 鑑賞中、まるで小説を読んでいるときのような、人物の心の機微を感じられる良さがあります。 とは言え、映画として、これって面白いのでしょうか。 よくある話をドラマ仕立てにしただけで、映画として見応えのあるものになっているとは思えません。 七面鳥を持って行ったり来たり。もっとコメディタッチであれば笑えるのですけど、変にリアルな作風であるため、こんなに誰もオーブンを貸してくれないものかと、不自然さを先に感じてしまいます。 それに、そんなに家族との再会を大切にしているのであれば、『事前にもっと準備しておけよ。』とも思うのです。 家族が様々なトラブルに見舞われて、来るのが遅くなったのはただの偶然。 実際は、七面鳥を持ってうろうろしていた時に来た可能性だってあります。 段取りの悪さ、見通しの甘さに、若干イライラしたせいで、ストーリーに入り込めません。 『人生をきちんと生きている自分を、家族に、母に見てもらう。そして母ともう一度やり直す。』 素材はすごく良いのに、うまく調理しきれなかった感じです。 まさにこの映画に出てくる料理のようです。 [DVD(字幕)] 5点(2016-07-10 23:16:23) |
1222. 大いなる休暇
《ネタバレ》 まるで御伽噺のようなプロローグとエピローグの構成が良いですね。 ストーリー自体はいたって普通。 前半は自己中心的な人ばかりでイライラすることもあります。 その後、しだいに一つの目標に向かって、みんなの気持ちがまとまっていく様子が微笑ましい。 コメディ演出が私好みです。 『レストランから教会への大移動で村人の人数を倍に見せる作戦』は、べたすぎて面白い。 『なんちゃってクリケット。』『つり(やらせ)』『もう一人の医者(仕込み)』、などなど、自分好みの演出が盛り沢山。 それに加え、クリストファー医師のリアクションが、素直すぎて、おかしさに拍車をかけます。クリケットへの食いつき方が最高。 もしこの作品が、コメディオンリーで『馬鹿騒ぎして終わり』であれば、ここまでの好評価を受けることは無かったでしょう。 コメディテイストのなかで、時折はさまれるシリアスなドラマパートの味わいが、何とも言えず良いんですよね。 『生活保護を受け取る気持ちがわかるか。お金を受け取る代わりに、誇りを失うんだぞ。』は名ゼリフ。 働けるのに、生活保護を受け取って、そのお金でパチンコに行っちゃうような、誇りを失った日本人の恥さらしに聞かせてやりたいです。 ドラッグ、盗聴、亡くなった人の分まで不正受給。必然性の低い違法行為が多いので、高い評価は出せませんが、映画としては面白い。 鑑賞後の満足感は絶品です。 あ、この作品、字幕がかなり端折られてます。この作品に限っては、吹替えのほうが断然オススメです。 [DVD(吹替)] 7点(2016-07-06 13:17:13)(良:1票) |
1223. 僕のスウィング
《ネタバレ》 まるで教科書。いや、夏休みの日記。 エンターテイメントのかけらもない。 こーゆー特殊な教養、感性を要求してくる間口の狭い映画は、本当に苦手。 ってゆーか、『スウィング』って人の名前かよ。騙された。 平均点よ、下がれ。 [DVD(字幕)] 1点(2016-07-04 02:14:41) |
1224. AIKI/アイキ
《ネタバレ》 脊椎損傷により、下半身麻痺になった青年が、合気道を通して人生を再スタートするサクセスストーリー。 人生の途中で、突然下半身麻痺になるのがどういうことか。それを延々と描写する前半。それは、排泄、性機能障害にまで話が及びます。 このディテールへのこだわりにより、この作品は一般的な青春スポーツドラマと一線を画しています。 突然の事故、怪我。それにより変化するのは、肉体的なことだけではありません。人間関係、社会的立場、そのすべてが劇的な変化を遂げます。彼女、友人、家族。その関係性の変化が生生しくリアルです。 主人公芦原の人間関係は一度リセットされます。もはや以前と同じように、周りの人と触れ合うことができません。 その一方で、車椅子になってから知り合った人々とは、自然体で触れ合うことができる芦原。 それは、以前の自分を知らない人たちだから、なのかもしれません。新しく出会う人々が自分を見るその目は、障害者を見る目ではあっても、芦原個人に対する憐憫の眼差しではないのでしょう。 ベッドに置かれたビールを、取ろうとして取れない。排泄をするのに、一回一回ゴム手袋を使わなければならない。それはもう想像を絶する世界です。 そこからの後半。雰囲気が急に変わります。 合気道を通して、人生が再び動き始めます。 この作品での『AIKI』には二つの意味があるのですね。『武道としてのAIKI』と、『人生をもう一度受け入れるという意味のAIKI』。 芦原太一がAIKIを通じてもう一度人生を受け入れるその過程に、素直に感動します。 前半のぐちゃぐちゃだった部屋。ラストの綺麗に片付けられた部屋。まるで芦原の人生に対する心の在り方の変化を表しているようで、ぐっときます。 ただ、個人的に非常に苦手なともさかりえ。彼女の投入により、やたらファンタジックでフィクションの雰囲気が漂ってしまったのが一番のマイナス。彼女の演技、声、表情、そのどれもがわざとらしくて苦手です。この作品には出て欲しくなかった。 また、最後の他流派との異種格闘技戦。エンターテイメントとしては致し方ないのでしょうが、これのせいで随分と安っぽくなってしまったのは残念。 ですがそのおかげで、すがすがしい気持ちで見終わることができたのも、また事実です。 最後に加藤晴彦、あなたは素晴らしい。 [DVD(邦画)] 9点(2016-07-02 15:09:13) |
1225. ハンニバル・ライジング
《ネタバレ》 『妹を食いやがったな。妹との約束だ。おまえらも食ってやるぜ』なるほど。理にかなっています。 ある出来事がトラウマになっている場合、そのトラウマの元凶に自分がなることで、トラウマを克服するというケースがあります。 原作は知りませんが、映画を見た限りでは、レクター博士はそれに近いのではないでしょうか。 ある凶悪犯のルーツを辿るサスペンスドラマとしては十分に面白い。 ですが、ハンニバルシリーズとして見ると、期待値の高さに相応しい傑作、とは言い難いものがありますね。 グレアム、クラリスの両名は、レクター博士の異常性を、相対的に強調するような存在だった気がします。 この作品の『妹』、そして『レディ・ムラサキ』。この両名は、『人間ハンニバル』の輪郭を、私達に見せてくれているような気がします。だとすると、レクター博士の熱心なファンに受けが悪いのもうなずけますね。 更には、『妹の復讐』という動機の部分を明確にしてしまったことで、ますます彼の神秘性は失われてしまいます。 そして、鎧、刀、原爆といった日本的マストアイテムの登場。これは良くなかったかもしれません。生粋の日本人である私達にとって、『チープな作り物』というイメージを意識させてしまいます。 そんななか、レクター博士を演じたギャスパー・ウリエル。彼は良いですね。この作品の掘り出し物的人材じゃないでしょうか。レクター博士の狂気を、予想以上に表現してくれていたと思います。 悪党達を、凶悪な暴力でねじ伏せる、悪の華。その美しさは、この作品でも十分に堪能することができました。 中盤以降のサスペンスアクションな展開には、十分満足しています。 ただ、ちょっと長いですね。 このシリーズはどれも尺が長めなのですが、基本的には必然性のある長さで、鑑賞中にその長さを感じません。 ですが、この作品は、その長さを感じてしまいます。間延びしている部分があるのでしょう。そしてその長さに必然性も感じません。 駆け足気味だとドラマに深みや重みがなくなります。 今作が、その性質からストーリーの深みを大切にするのはわかります。 ですが、あまりにもったいぶって冗長になると、間延びして緊張感がそがれます。 なかなかバランスが難しいですね。 [DVD(字幕)] 7点(2016-07-01 13:35:33)(良:1票) |
1226. DENGEKI/電撃
《ネタバレ》 タイトルからしてB級。 そして、スティーブン・セガール。 これは頭をからっぽにして見る映画ですね。と、思って、本当に頭をからっぽにして見ると、わけがわからなくなります。 なにしろ登場人物が多い。 また、伏線なのか、単発なのか、よくわからないエピソードも多い。 実は黒幕。実は裏切り者。実は味方。っていうパターンも多い。 終わってみれば、勢力図が結構すごいことに。なんせ、最初敵だった人たちと、味方だった人たち、ほとんど入れ替わっています。 と、ゆーわけで、ストーリーを理解したい方は、『セガール』という偏見にとらわれず、ちゃんと見たほうが良いかもです。 ただし。ストーリーへの理解が、面白さにつながるとは限りません。 この作品、ストーリーがわかったとしても、結局はセガール様のストリートファイトが一番、もう圧倒的に面白いわけです。言うなれば、それ以外はすべておまけみたいなもんです。 しかも今回は、敵もアクションできるやつが多いんですね。わりかし良い勝負の連続です。ですがセガール様の強さ、カリスマが損なわれることはありません。とても満足です。殴り合いアクションに関しては、見ていて飽きることはありませんでした。 その一方で、カーアクションやガンアクションは、悪くないのに、イマイチ盛り上がりに欠けます。 ストーリーとアクションがうまいこと混ざってない気がしますね。 それに、駆け引き、違法捜査なんかの知能戦で中盤ぐいぐい押していたのに、結局ラストはいつもどおりの大喧嘩で、逆に爽快感に欠けてしまったかもしれません。 要は、雑なくせに、欲張りさんで、ラフファイトを除くすべての要素が中途半端に仕上がってしまったということでしょうか。 うーん。惜しいなあ。 [DVD(字幕)] 6点(2016-06-29 05:44:04) |
1227. ワイルド・スピードX3/TOKYO DRIFT
《ネタバレ》 テイストは1作目に近いかも。 とにかくストーリー、そして主人公を含めたメインのキャラクター、そのどちらにも魅力がまるでありません。 ですから、どんなに美しいドリフト走行を見せられても、高揚感を感じるには至りません。 やはり、エンタメ作品であっても、ストーリーとキャラクターは大切ですね。 そもそも、ハンが組のアガリをピンはねしたうえに、コトがばれると開き直り。そんでDKに追い掛け回されて、最後はクラッシュして炎上。自業自得じゃないでしょうか。 にもかかわらず、主人公のショーン、DKに殴りかかります。そして『レースで勝負だ。負けたほうが街を出て行く。』って。いやいや。お前に正義の心はないのか。DKのほうが筋が通っているでしょう。これは『主人公』という権力を振りかざした悪質な『職権乱用』ですね。 はっきり言って、こんなに共感できない主人公は、はじめてです。 周りがみんな主人公の味方なのも、???です。 しかしこの作品を見て、『ドリフト』って日本ならではのお家芸なのかなって、思いました。道が狭く、山道が多く、アメリカに比べるとカーブが多そうな日本。ドリフトで円を描く技術とか、立体駐車場上っていく映像とか、美しすぎます。 これでストーリーとキャラクターに魅力があれば、傑作になったのに。 日本の高校に入学したりとか、その辺の発想、舞台設定は非常に面白いです。ただ日本の高校って、こんなんでしたっけ?それに、この舞台設定が果たして効果的に機能しているのでしょうか。 日本という舞台が、本当にただの『舞台』にすぎないとしたら、もったいないですね。 いろいろ文句つけましたが、こんな作品でも、北川景子がヒロインやっていたら高得点つけたかもしんないです。 一番筋が通っていないのは自分ですね。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2016-06-28 08:01:07) |
1228. ニュー・ガイ
《ネタバレ》 ハイテンションすぎるコメディは苦手なジャンル。 特に下ネタでぐいぐい押してくる冒頭は、本当に観るのをやめようかと思ったくらい、嫌悪感しかわきません。 簡単に言えば、いじめられっ子が、別の高校に転校して、人気者になろうとする物語。 ですが個人的には、今いる学校で自分を変えて欲しいと思うのです。『別の学校』という舞台の移動が、すでに『逃げ』に見えちゃうわけです。当然、そこでいくら頑張っても、最初にいた高校での自分に対する評価は変わりません。それで良いのでしょうか。 更に、主人公のデイジーは努力しているものの、ほとんどは『他者の力』と『ラッキー』に救われているだけです。 その成功によってカタルシスを得るのは非常に難しいものがあります。 唯一良かったのは、ブラスバンドの人を助けるシーン。そのシーン以外は、ずっと冷めた目で見てしまいます。 一番がっかりだったのは、友人達を前に、『知り合い?』と聞かれ、『知らない』と言ってしまったこと。 ではなく、その後の対応です。 何だその謝りかたは。そしてメンバー、許しちゃうの?なんてゆるい人間関係。そもそもこの主人公から人徳を取ってしまったら、何が残るのでしょう。 そしてラストも期待はずれ。 音楽でもよい、スピーチでもよい。もっと説得力や、カタルシスを得られるフィナーレが欲しかったです。 中途半端、ここに極まれり、な作品です。 [DVD(字幕)] 4点(2016-06-27 02:22:25) |
1229. レッド・ドラゴン(2002)
《ネタバレ》 『レクター博士が鉄格子の中からプロファイリングをし、推理する。』このスタイルが、やはりこのシリーズ一番のウリなのかもしれません。手負いの獣が危険であるように、鎖でつながれているほうが、レクター博士の狂気が滲み出るような気がします。 ですが、本題は、悲しき殺人鬼ミスターDの物語。 彼の犯した罪に同情の余地はありません。ですが彼の生い立ちは同情を誘うものです。 鑑賞者の心の琴線に触れるバランス感覚が絶妙な脚本。いえ、これは原作があるわけですから、原作が素晴らしいのでしょう。 リーバ・マクレーンという女性とのエピソードを通し、ダラハイドの善良性を前面に押し出す描き方は最早卑怯な感じすらします。 観客はいつの間にかダラハイドに感情移入します。そしてその一方で、いつ彼が暴走するのか、不安な気持ちがいつもつきまといます。 もともと人の心の闇を描くサイコスリラーが好きなので、好きなジャンルをこの完成度で仕上げられると、ため息しか出ません。 ただ一つ注文をつけるならば、犯行動機についてです。『幼き頃の虐待』という抽象的で曖昧な表現にとどめてしまっています。 標的となる家族の選び方の基準も、『自分の会社にビデオ製作を頼んだから』というだけのもの。 そうではなく、なぜあの二家族が標的にされたのか、それこそがこの作品で一番知りたかったことです。肝心の部分を描いてくれていません。ダラハイドの生い立ちと、彼が狂気に走った理由を、もっと明確に結びつけてほしいのです。 ラストは、ダラハイドがサプライズを仕掛けます。 エンターテイメントとしは成功でしょう。映画としては間違いなく盛り上がります。 ですが作品の格はどうでしょうか。 ラストの仕掛けによって、よくある娯楽サスペンスに成り下がってはいませんか。 ダラハイドが愛する女性を殺せずに、自殺して終わる。 美しく悲しくやるせないラストとして相応しいと思ったんですけどね。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2016-06-26 17:46:59)(良:3票) |
1230. アメリカン・アウトロー
《ネタバレ》 血生臭い時代背景とストーリーを、ポップで明るい雰囲気に仕上げたエンタメ作品。 よって多少の不謹慎感はありますが、気軽に見られるポップコーンムービーとなっています。 プロットも極力わかりやすくなっているようですね。 まずは南軍が北軍に敗北します。南軍のレンジャー部隊、故郷に還ります。故郷の村に、政府の息のかかった鉄道会社が立ち退きを迫ります。つっぱねます。仲間が処刑されそうになります。助けます。今度は母親が殺されたりして、報復強盗が始まります。 このようなシリアスな脚本を、ひたすらライトなテイストで味わうことになります。 当然犠牲者もいるわけです。ジェームズ兄弟の母親。ヤンガー兄弟の末の弟。また、話題の中でしか出てきませんが、ドク・ミムズの長男も死んでいます。 ですが『人の死』の扱いが、この作品ではかなり軽いです。悲しみ、怒り、痛みといった感情が、この作品から伝わってくることはありません。もちろん、そこから生まれるはずの、逆襲や復讐によって得られるカタルシスもありません。なんせ、ラストは自分達の家族を殺した相手と馴れ合う始末です。そして笑顔で新天地へ向けて再スタートですから、死んだ者達は浮かばれないですよね。 したがってこの作品は、終始ジェシー・ジェームズというアウトロー・ヒーローを描くことにこだわった作品と言えそうです。 そりゃあ、見ていて楽しいですが、深みはなく、共感することも無く、見応えもありません。 ついでに言うと、部分的に脚本がかなり雑です。 一例を挙げると、仲たがいのシーン。ここはかなり強引ですよ。 その人間性とカリスマで、みんなをひっぱってきたジェシー、突然のご乱心です。 『俺がボスだ。』『お前は死にぞこないだ。』 不自然極まりないです。 ライトなタッチは好きなのですが、しめるところはしめてほしいですね。 『袂を分かつシーン』や、『人の死のシーン』だけは、もう少し脚本や演出を練っても良かったのではないかな。 [DVD(字幕)] 7点(2016-06-24 11:06:45) |
1231. ヴェロニカ・ゲリン
《ネタバレ》 女性ジャーナリストに起こった悲劇、その意味を問いかける作品。・・・なのかな、との予備知識ありでの鑑賞。 予想通り、かなり『強い』作品ではあります。 ですが、この映画では、その『強さの源』が見えてきません。 あるいは、冒頭で、注射器で遊ぶ幼い子供達のシーン。麻薬漬けになっている少年・少女のエピソード。この冒頭のシークエンスから、ヴェロニカのジャーナリストとしての正義感を感じるべきだったのでしょうか。 自分の身や、大切な家族を危険に晒してまで、なぜ麻薬の記事を書くことに固執するのでしょうか。 『子供達の未来を救いたい。』『麻薬の売人は許せない。』理由は何でも良いのです。何でも良いから、ヴェロニカの行動の原点にあるもの、それを映画で見せてほしかった。 でなければ、ただ意地になってムキになっているだけの人に見えてしまうことすらあります。 にしては、『ここで屈したらジャーナリズムの敗北よ。』という信念を掲げておきながら、記事を書くことより訴訟を起こすことを選んだりします。なんだかよくわかりません。 また、周囲の人間の感情の機微も、抑えすぎている感があります。鑑賞者の判断にゆだね過ぎているような気がします。旦那、母親、刑事、上司、誰も彼もが優柔不断に見えてしまいます。 『実話』だからこそ、ただ事実を流すだけではなく、そこに生きる人たちの『思い』を見せてほしいのです。 そこに作成者の価値観や解釈が入っても構いません。心の描写が中途半端なバッドエンドストーリーを見せられても、口の中に苦い味わいが残るだけです。 ラストのナレーションで、ヴェロニカの死に大きな意味があったことは、わかります。 ですがこの作品に関しては、あまりにもラストのナレーションに頼りすぎている気がします。 この作品を見てよくわかりました。私は『実話』が好きなのではないようです。『実話ベース』の『映画』が好きらしいです。 [DVD(字幕)] 6点(2016-06-21 13:22:41)(良:1票) |
1232. ロード・トゥ・パーディション
《ネタバレ》 かなり落ち着いた雰囲気のマフィアもの。 ですが落ちついているのは雰囲気だけで、中身は結構凄惨ですよね。 忠義を尽くしていたのに、妻子を殺されたうえに、父同然に慕っていたボスから命を狙われるマイケル・サリヴァン(トム・ハンクス)。 元凶はコナーというボスの息子。それは皆わかっているのに、ボスの息子だから、誰も手が出せない。理不尽なストーリーに怒り心頭です。 サリヴァンは、父親としてもマフィアとしても一流。ある意味、ヒーローとしての側面を持っていると言えるでしょう。 だから、救いようの無いストーリーでも、サリヴァンのダークヒーローぶりに、一筋の希望を期待せずにはいられないのです。 最低の状況からの大逆転を期待してしまうのです。 実際は、妻子が殺されて、サリヴァンがその報復を始めたときから、真のハッピーエンドなんてありえないのに。 そういった意味では、『家族の幸せエピソード』を序盤で『描きすぎなかった』のは逆に良かったかもしれません。そこを描きすぎていたら、家族が失われた悲しみのほうが、映画を支配してしまいそうです。 ラストはせめて二人の幸せを願っていたのですが、何とも後味の悪い結末。 にも関わらず、サム・メンデス監督の、とてつもなく上品な演出で、悲しさを最小限に抑えてしまっているのは凄い。 それどころか、息子のナレーションでしめちゃったことで、まるで感動的なドラマのような仕上がりに。とんでもないですね。 この映画は、『マフィアもの』か、『家族ドラマ』か。 正直どっちつかずの印象ですが、良く言えば『合わせ技一本』みたいな作品だと思います。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2016-06-21 02:15:04)(良:1票) |
1233. ワイルド・スピードX2
《ネタバレ》 『1』がイマイチでしたので、見るかどうか迷ったのですが、見て良かったです。 凄く面白くなっています。 ストーリーにちゃんと必然性があります。 一人一人の行動の動機が、はっきりしています。 映像、スピード感は、前作を凌いでいるのではないでしょうか。 コーナリングが多くなったことで、レースっぽさも前作よりあります。 公道でのカーチェイスも、トラックしか出なかった前作に比べ、障害物(一般車やトラック)が多くなったことで迫力が増しています。 地元の警察やらFBIやらがわんさか出てきて、みんなで追いかけっこしているのは、理屈抜きで楽しいものです。 車庫からたくさんのスーパーカーが出てきて、追跡を撹乱する仕掛けは、大掛かりでわくわくします。 これだけサスペンスフルで、ドラマ性があって、ちょっとコメディな部分もあると、車のことがよくわからなくても全然楽しめます。 前作は、はっきり言って、一部の玄人よりの作品であったのに対し、今作は万人向けのエンターテイメントに仕上がっています。 映画としての完成度は雲泥の差でしょう。 よくある『刑事のバディもの』的なテイストがあるのも嬉しい。 仲が悪かった二人がいつの間にか協力し合っています。もはや使い古されたプロットかもしれませんが、やはりこーゆーのが楽しいです。 『使い古された~』とか言わずに、面白いものは面白いんだから、使い古されたものでも良いものはどんどん使って欲しいものです。 それに、主人公の相棒として、ローマン・ピアース(タイリース・ギブソン)はとても相性の良いキャラクターだと思います。 更には、テズ、スーキー、ジミーといったメカニックやドライバー仲間の存在が、大変良いスパイスになっています。 前作がまとまりのないごった煮状態だったのに対し、今作は一つの料理としての体を成しています。 大変面白いエンタメ作品です。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2016-06-19 16:32:50)(良:1票) |
1234. ショウタイム
《ネタバレ》 ストーリー性のあるコメディは好きです。 特に刑事もので、ベタなやつならなお良い。 そういった意味ではこの作品は自分好み。 ですが、最初のうちは笑えることより、イライラすることのほうが多いかもしれません。 なにしろ、前半のトレイ(エディ・マーフィ)がうざすぎます。 TVプロデューサーのチェイスは、あほすぎます。 そーゆーキャラ設定なのはわかるんですけどね。さすがにミッチ(ロバート・デ・ニーロ)がいたたまれなくて。 ですが中盤以降、特にラストに向けて面白さが加速します。 コメディタッチは崩さず、それでいてサスペンスアクションのノリもまあまあ。それなりの爽快感すら感じられます。 あれだけ否定していた『ボンネットダイブ』を結局やらされるハメになるシーンは面白すぎます。 そして、事件解決の瞬間を、『SHOW TIME』のタイトルでしめくくる演出はあざやか。 事件は解決。番組は大ヒット。トレイとミッチは本当の相棒に。 ですがトレイが本物の刑事に昇進できたのが、一番後味が良かったかもしれません。 あくまでB級、ポップコーンムービーに違いはありませんが、こーゆー映画が心をリフレッシュさせてくれます。 大絶賛はできませんが、私にとって、こーゆー作品は必要なジャンルなんですよねー。 『エディ・マーフィー』『マーティン・ローレンス』『ジャッキー・チェン』『クリント・イーストウッド』、親が吹替えで見ていた世代なので、もはや吹替えのほうがネイティブに感じるのが悲しい(笑) [DVD(吹替)] 7点(2016-06-18 10:01:43)(良:1票) |
1235. ワイルド・スピード
《ネタバレ》 車もバイクもアクセル全開ですが、映画は空回り気味です。 エンターテイメントな作品には、ヒーローが欲しいところです。 メインの二人。ドミニクとブライアン。このどちらにもヒーロー性が足りないのが痛い。 ドミニクはトラックジャックの犯人。しょせんは犯罪者。それに皆から慕われるほどのカリスマを感じません。 ブライアンは容疑者の妹に、自分がおとり捜査官であることを簡単にばらしてしまいます。更にはラストでドミニクを見逃す始末。どう考えても警官の適正が0でしょう。そんな人間を主役に据えられても、応援できないし、共感できません。 共感できないから、ブライアンといっしょにハラハラすることもできません。 脇役も、個性があるし、キャラ分けはできていますが、魅力がありません。 最大のマイナス要因は、それぞれの動機が見えてこないことでしょう。 動機が見えないから、目的も見えません。 ブライアンはどうしたいのか。犯人を挙げたいのか。ただドミニクの妹と仲良くなりたいだけなのか。それともドミニクに認めて欲しいのか。主役なのに主体性がなく、そのスタンスが宙ぶらりんのままラストまでいっちゃうってどうなんでしょう。 そしてドミニク。なぜトラックジャックをやっているの?その動機は絶対必要でしょう。 その理由は明かされないまま、ラスト二人でチキンレースみたいなことやって、終わり。 確かに映像だけは、凄い良かったです。映像『だけ』はね。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2016-06-15 09:59:31) |
1236. モンスター(2003)
《ネタバレ》 ストーリー重視の私ですが、この作品にかんしてはストーリーより主演二人の演技に圧倒されます。 特にシャーリーズ・セロン。 『いったいいつ出てくるんだ、シャーリーズ・セロン。主役と思っていたのに、全然出てこないじゃないか。そしてやたらグイグイ出てくるこのゴリラみたいな女は誰だ?キャストを確認してみよう。ええ~と。うん?ええー!!』 というわけで、シャーリーズ・セロン=アイリーンという事実にまず驚きます。 家庭環境にめぐまれず、娼婦しかできなかったアイリーン。同性愛者のセルビー。共に世間から阻害されているという共通点でひかれあう二人。お互いがはじめて自分を必要としてくれる人間に出会ったわけですか。うーん。辛い。マイノリティの人間というのはかくも大変なものなのか。 同じ境遇、同じ苦しみを知っている二人。その二人がそろう。二人のコミュニティが出来る。すると悲しいかな、微妙なパワーバランスというものがやはり出来てしまう。お互い依存しあっているようでいても、その依存の度合いにわずかな差が出来てしまうものなんですね。 一見アイリーンのほうが優位に立っているように見えますが、実のところ支配権を握っているのはセルビーでしょう。アイリーンは確実にセルビーの精神的な支配下にあります。それは、ラストからもわかりますし、遊園地のエピソードからもわかります。バー、遊園地で、悪気も無く他の女性と仲良くしようとするセルビー。つまり、アイリーンには本当にセルビーしかいませんが、セルビーはアイリーンの代わりがいれば、それは誰でも良いわけです。 ラストの電話で、自分だけ助かろうとするセルビー。かたや、セルビーだけは救おうとするアイリーン。皮肉にも一致してしまう利害。 社会的にモンスターなのはまぎれもなくアイリーンですが、本当のモンスターは誰なのか。セルビーなのか、それともアイリーンのような人間を生み出してしまった社会なのか。 アイリーンは善良な人間の命を、自分の都合で奪います。同情の余地はありません。ですが、アイリーンは事件の最悪の加害者であると同時に、最大の被害者でもあるかもしれません。 だからなのか。見終わったとき、とにかく私は悲しかったです。そしてこんなに悲しいのに、この映画は泣くことさえ許してくれないのです。 そしてこれだけ力の入ったレビューばかりだと、何を書いても誰かのパクリになってしまう現実がまた悲しい。 この状況が一番のモンスター。 [DVD(字幕)] 8点(2016-06-10 13:12:21)(良:1票) |
1237. MUSA-武士-
《ネタバレ》 明と高麗、それに元、3つの国が出てきますが、ストーリーはそんなに複雑でなくて良かったです。 明と元は仲が悪い。明と高麗もうまくいっていない。 じゃあ元と高麗で力を合わせれば良いのに、その元と高麗の優秀な武将達が殺し合う物語。悲しいのは、明の知らないところで、明とうまくいっていない二つの国が殺しあっているという現実です。これが戦の不思議。 もちろん、そこには『明の姫』というキーパーソンがいるわけですが。 『元から明の姫を救い出し、明に送り届ければ、明と高麗の関係修繕のきっかけになる。』 それはまあ、そうなんですけどね。 まるでいじめられっ子が、いじめっ子に気に入られるために、他の子とケンカをしているようで虚しい。 だからでしょうか。 最初から最後まで、登場人物の誰とも、心でわかりあえないのです。 もちろん、どの人物も個性的で魅力ある人物です。 将軍や、将軍の右腕のような武将も強いし。元奴隷のソヨルは鬼神の如き強さだし。アン・ソンギ演じるタイセイは沈着冷静なスナイパー。将軍や姫に噛み付くタイセイの弟も、なかなか光る脇役。 これだけの武将が、生き残るためにひたすら戦い続ける物語。 結末はともかく、その過程は大変見応えがあります。 ただ願わくば、もう少し力を合わせて、知恵を出し合ってほしかった。 それにやはり多勢に無勢ですね。 どんなに個人が奮戦しても、結局みんな死んでいく。辛いです。あんなに強いのに。 正直、みんな死ぬってわかっていたら見なかったかもしんないです。 なんだかんだ言って、姫を無事に送り届けて、高麗に帰るのだと、ずっと願っていました。 [DVD(字幕)] 7点(2016-06-08 15:04:31)(良:1票) |
1238. ハンニバル(2001)
《ネタバレ》 スーパーヒーロー『レクター博士』の冒険活劇第2弾。 レクター博士とその関係者の方々の頭脳戦がアツイ。 永遠のライバルFBI捜査官『クラリス』。狂気の大富豪『メイスン』。金のためなら手段を選ばないベテラン刑事『パッツィ』。脳膜ぺりぺり『ポール』。 クラリスはともかく、小悪党から本物の悪党まで、悪者がズラリ。 その誰も彼もが、レクター博士のえじきとなってゆく爽快感。 レクター博士は、私にとって、まぎれもないヒーロー。 小さい頃は、『ウルトラマン』、『ドラゴンボール』など、『正義』VS『悪』の図式に感動したものです。 ですが大人になると気付きます。心の奥底の黒い欲望を満たしてくれるのは、『悪』VS『悪』の図式なのだと。 『悪』を、『それ以上の強大な悪』が飲み込んでいく、その衝撃。圧倒的な暴力と狂気。自分以外の『悪』を虫けらのように蹂躙していく興奮。『正義』VS『悪』の図式では感じることができない領域です。 映像的にはラストが注目されがちなこの作品。ですが、私はあえてコーデルがメイスンをあっけなく裏切るシーンに注目したい。原作を読んでいませんから、映画でのみの判断です。 コーデルがメイスンを裏切るシーン。あれは戦慄が走りました。コーデルの本心を一発で見抜き、たった一言で裏切りへと導いてしまったレクター。レクター博士の最も恐ろしい部分を、最も端的に表す貴重な1シーンです。 完璧とも思えるこの作品。残念ながら減点ポイントが2つあります。 まずはメイスンとレクター博士の過去の描き方が不十分。この作品の中で、私達が最も知りたい真相の一つではないでしょうか。 そしてもう一つは、レクター博士、あなたは偶然を味方につけてはいけない。 クラリスが助けに来てくれたことは偶然の産物であり、あなたの功績ではない。その辺のありきたりなヒーローのように、偶然に助けられて偉そうにするレクター博士なんて、見たくはないのですよ。 [DVD(字幕)] 8点(2016-06-07 10:46:35)(良:1票) |
1239. ピアノを弾く大統領
《ネタバレ》 韓国お得意のシンデレラストーリーですね。 男性のほうは、リッチで社会的地位が高くて、気さくで寛容。 女性は一般人。 ラストはお約束のハッピーエンドで、誰がいつ見ても楽しめる一本なのは間違いありません。 あとは結論に至るまでのプロセスはどーか。ディテールはどーか。 まず、万引きはダメ。絶対。 自分も万引きすることで、生徒との信頼関係築こうなんて、大間違い。せめて、その後お店に商品返して謝罪してほしいです。 また、クラスのいじめられっこ、大統領の娘、そのパシリ君、主人公のチェ・ウンス(チェ・ジウ)、この人たちの背景はもう少し語ってほしいです。チェ・ウンスは何故学校の転勤を繰り返しているのか、大統領の娘は何故ひねくれてしまったのか、一切教えてくれません。 もう少し説明が欲しいところですね。 さて、全体的なストーリーテリングはどうか。 前半、バランスのとれた複数ジャンルの融合から、後半はロマンティックコメディ1本に収束。その分、作品としての落ち着きは取り戻しますが、面白さは半減。個人的にはこの作品のピークは、大統領に宿題を出す辺りまでです。 チェ・ウンス(チェ・ジウ)も、ハン・ミヌク大統領(アン・ソンギ)も、先生や大統領としての登場シーンは最高。 それにプラスして、それぞれの仕事に対するプライドや志を感じさせるエピソードが、あと一つずつくらいあれば、より二人に感情移入できたかもしれません。 まあ、さらっと観るエンターテイメントとしては、十分及第点でしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2016-06-06 00:24:13) |
1240. ゴーストバスターズ(1984)
《ネタバレ》 小さい頃何度も見た作品。世の中にこんな面白い映画があるのかと思っていましたね。 今見ると、『思い出補正』をプラスしても7点くらいでしょーか。 もっとゴーストがわんさか出てきたイメージがあったのですが、それほどでもありませんね。 それにしても、まだCGが無かった時代に、ゴーストや捕獲レーザーの映像は驚きです。鮮やかなカラーリング。今見てもエキサイティングでビューティフル。 ストーリーはあってないようなものです。 いつの間にか会社ができてるし、いつの間にか捕獲レーザーができてるし、いつの間にかCMができて雑誌にのって何の前触れもなくゴーストがいっぱい出てきて大忙し。 その一方で、図書館のゴーストや終盤で街にちらばったゴーストなんかは放置。 ラスボス『ズール』だの『ゴーザ』だのとのバトルも、門に向けてレーザーを交差させて、何か凄いことが起きて、終わり。 この絶妙ないい加減さが嫌いではないなー。 とにかく細かいことは気にしていないようです。 ノリと勢い。そして映像。これだけで突っ走る。気持ちが良いくらいに潔い作品であります。 ですが、子供のときは映像だけで楽しめたのですが、大人になるとそれだけでは物足りない自分がいるのも、また事実。 つまりは、この作品は『子供向けアニメ』と同ジャンルなのかもしれませんね。 子供はまず第一に『映像』。ですが大人になると、『ストーリー』、『人』、その次くらいに『映像』が大切なのかもしれません。 少なくとも自分はそうだと再認識できた作品です。 それにしても、4人がコスチュームを着て立ち並ぶ姿は、コメディを通り越してもはやカッコ良いですねー。 その気持ちだけは大人になっても変わらなかったのが嬉しい。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2016-06-05 17:30:40) |