1241. 風が吹くとき
《ネタバレ》 田舎で平和に暮らす善良な老夫婦。政府が作成したいい加減な核兵器使用後の放射線対策を何の疑いもなく信じ、国は迅速にして適切な対応でもうすぐ自分達を助けに来てくれるとひたすらに信じ続ける夫婦のどこかコミカルな描写が冒頭から続きますが・・・。 少しずつ体に異変が出始めるにつれ、終盤は見ているのが辛くなってくる。悲しみと共に核や放射線の恐怖を感じずにいられません。本作は今こそ多くの人たちに、政治家達にも見てもらいたい映画です。政府の発表をひたすら信じ、助けに来てくれると信じ続ける夫婦の姿からはそんなことも感じました。本作の背景にある東西冷戦は終結したけれど、今を生きる僕たちにもズシリと重い問題提起を投げかけられた思いです。 今回吹替版で見ましたが、森繁さん、加藤治子さんの声の演技が本当に素晴らしかったです。 [CS・衛星(吹替)] 9点(2012-02-05 12:05:06) |
1242. ビッグ・ガン
マフィアなど悪の組織から足を洗おうとするが上手くいかず・・・という男のドラマは映画としてはかなりよく見られる話であり、アラン・ドロン自身も「暗黒街のふたり」でも犯罪組織から足を洗おうともがき苦しむ男を演じています。本作は組織から足を洗おうとした結果妻子を失い、アラン・ドロンが復讐に燃える男を演じるという作品ですが、アラン・ドロンはやはり何かから追われる男の役が本当によく似合うし、感情を爆発させず心の内に秘めた何かを感じさせてくれる佇まいがまたいい。この復讐劇の結末、つまりドロン演じる男の運命はこれしかないというところに行き着きますが、基本的に何をやっても絵になる人であり、それは本作のラストもまた然り、なのです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-02-04 15:35:54) |
1243. バンド・ワゴン(1953)
これぞザッツ・エンターテイメント!ミュージカルの楽しさ・豪華絢爛さを存分に味わえるアステアの後期の傑作だと思います。 アステアのソロの見せ場が少ないのですが、それでも序盤のゲームセンターでの靴磨きの黒人やゲームセンターの客を巻き込みながら、ゲーム機とも絡みながらのコミカルなアステアのダンスはとても楽しい。またアステア、オスカー・レヴァント、ジャック・ブキャナン、ナネット・ファブレーの4人で魅せる“ザッツ・エンターテイメント”も楽しさいっぱいです。 勿論シド・チャリシーとのこれぞアステア!ヒロインと時にはうっとりするような、そしてパワフルなペアの舞も堪能させてくれます。全盛期のような派手さは無いけれどアステア全盛期のトレードマークであるトップハット&燕尾服姿でのタップを見せてくれるのも嬉しい。 優雅で、コミカルで、歌も素敵で、色んなアステアがたっぷりと堪能できる本作。ミュージカルスターとして頂点を極めたアステアのキャリアも終盤に差し掛かった頃。アステアの集大成のように思える作品です。 [DVD(字幕)] 8点(2012-02-02 23:52:03) |
1244. 天空の草原のナンサ
モンゴルの草原に生きるある遊牧民の家族の日々の営みを、彼ら(特に子ども達!)に気付かれず隠れて撮影しているかのごとく自然な表情をとらえていく。 昔から変わらぬ生活のようで、お父さんが町へ毛皮を売りに行く手段はバイクだったりする。お土産は鳴き声をあげながら自動で歩く犬のおもちゃ。広大な土地を移動しながら自然と共に生きる彼らですら、国政の選挙区に組み込まれてしまっている現状。作中にそんな昔ながらの生活をおくる人々が町へ出て行き、遊牧の民が確実に減少していることが感じられる台詞もありました。 ゆったりとした時の流れの中で生きる彼らも、実は急速に移り変わる現代の時の流れの中にいることを感じさせられますが、自然と共に暮らす人々への敬意が感じられるいい映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-01-30 21:49:02)(良:1票) |
1245. 詩人の大冒険
「少林サッカー」「カンフーハッスル」でお馴染みのチャウ・シンチー主演のラブコメ・アクション・ハイテンション・バカ時代劇。冒頭から人間を墨汁まみれにして筆にしてしまうバカバカしさ満点のギャグ、”手羽先の歌”の下らなさから大爆笑です。 チャウ・シンチーは勿論素晴らしいのですが、もう一つ特筆すべきは僕が大好きなコン・リーですよ! この頃にはチャン・イーモウやチェン・カイコーといった巨匠の傑作に立て続けに出ていた彼女。本作前後の彼女の出演作を見ると本作が物凄く異様に際立っています。何故コン・リーが本作に出たのか?いや、なぜコン・リーを起用してしまったのか?しかし、結果的にこれが大正解で、コン・リーを見てキュートで可愛いと思ったのは初めてかもしれません。 アホな世界観を演出する音楽もイイ感じ。いやいや、笑わせてもらいました。それだけで十分の映画です。 [DVD(字幕)] 7点(2012-01-27 21:12:37) |
1246. ニューイヤーズ・イブ
去年暮れから何度か本作の予告編を見ていました。かなり軽いタッチのラブコメ群像劇かな?という感じでそれ程期待していた訳ではなかったですが、いい映画でした。 ちょっとイイ話にバカ話にゲイリー・マーシャルの十八番、ロマンティックコメディにちょっと悲しい話も・・・。中盤まではそれぞれが順序良く登場し素晴らしいテンポで展開していく。そして終盤に少しずつそれぞれのストーリーが重なり合う。それにしても豪華なキャストですが、やはりミシェル・ファイファーが一番印象に残りました。終盤にはちょっと扱いが軽くなってしまう話もありますが、それはこのジャンルでは仕方が無いところかもしれません。 1年の終わりに見ても、また新たな1年の始まりに見ても、実に気持ちのいい映画です。(でも、やっぱり”ニューイヤーズ・イブ”に見たかったな・・・)最後に「バレンタインデー」のDVDパッケージがチラッと登場しましたが、ゲイリー・マーシャルの茶目っ気でしょうか。また、一番最後の日本に向けたメッセージをとても嬉しく思いました。 [映画館(字幕)] 8点(2012-01-27 19:52:52)(良:1票) |
1247. 雨の訪問者
フランスで国際的なスターになったアメリカ人俳優ブロンソン。本作でも彼のいい味が出まくりです。本作のブロンソン、ちょっとウザく品の無い行動も見せる。アラン・ドロンと共演した「さらば友よ」でも同じような味を見せてくれますが、シブさの中に見せてくれるこの人独特のユーモラスさがよく出ています。しかし作品の雰囲気にはかなり格調の高さが感じられます。淡い色でまとめられた衣装、室内装飾などもそうですが、巨匠フランシス・レイの音楽の貢献度も非常に高い作品です。「ちっ、惚れちまったか・・・。」というユーモアのあるラストもいいですね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-01-27 19:48:55) |
1248. ウエスト・サイド物語(1961)
ロバート・ワイズ監督はかなり色んな映画を撮っている人ですが「サウンド・オブ・ミュージック」「ウエストサイド物語」と映画史に残る素晴らしいミュージカルを撮っているだけあって僕の中ではミュージカルのイメージが強い監督です。 心温まる物語と歌の素晴らしさで魅せる「サウンド~」と歌の素晴らしさプラス、キレのある素晴らしいダンスで魅せる本作。どちらも元の話があるものをスケールの大きいミュージカルに仕立て上げた演出が見事。本作の場合は共同で監督した振付師ジェローム・ロビンスの功績も大きいですね。 ミュージカルとして話の展開は好みではないですが、キレがありカッコよくて、特に前半のユーモアにあふれたミュージカルシーン、それを支える歌、音楽、ダンスのどれもが本当に素晴らしく見応えがある作品です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-01-23 21:12:43) |
1249. 胡同のひまわり
路地の奥に門があって、そのさらに奥に隣人と共有するような中庭がある。例えばチャン・イーモウ監督作「活きる」でも見られる中国の庶民の生活様式が印象深い。 現代中国のとある家族を取り上げた中国映画が避けて通れない文革をその終わりから上手くスタートし重くなることなく、現代に至るまでのある親子の日々が淡々と綴られる。その中に庶民が現代的なアパートに憧れ、時代が進むにつれクルマや家電製品など人々の生活や世代間の価値観が少しずつ変わっていく様子を上手く挿入していく。それでも変わらないのは時には難しくもあるけれど親子の関係ということでしょうか。 忘れた頃に大事があるけれど、大半は何て事の無い日々。そんな家族の日々、人生というものを淡々とした中に上手く描いた佳作。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-01-22 23:18:10) |
1250. ウォーター・ホース
ネス湖のネッシー伝説。ネッシーが湖面から首を出しているとされる有名な黒白の写真。子どもの頃、UFOや未確認生物とかの特番でよく取り上げられていたけど、そう言えばこの写真を見るのもその名を見るのも久々な気がします。 戦争、そしてパパが既に戦死しているという背景、反戦のメッセージは小さな子どもには難しいかもしれませんが、家族で見るのにもいい映画だと思います。 冒頭の「これは本当の物語・・・。」という字幕がいいですね。子どもの頃、ネッシーはいると信じていたよなあ・・・。そう、こういう伝説は信じる人、子ども達にとっては本当の物語、これでいいんじゃないでしょうか。クルーソーが無事、生涯を全うしたことをそっと教えてくれるラストも良かったです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-01-21 20:10:13)(良:1票) |
1251. チアーズ!
《ネタバレ》 カリフォルニアのカラッと晴れた青い空の下、自由な服装にクルマ通学に・・・。田んぼに囲まれた高校にチャリ通だった田舎の地元高校出身の僕にとっては、こんな自由で陽気な雰囲気がたっぷり味わえるアメリカン学園ドラマって昔から好きなんですよ。 お話の方は序盤で大体予測がついて実際その通りに展開していくのですが、本作はとても気持ちの良い映画に仕上がっています。自分の気持ちに正直に精一杯頑張ったら、結果優勝はできなくてもこんなにハッピーな気持ちになれる。そんなことを直球勝負で見せてくれます。 冒頭のチアリーディングに、トニー・バジルの”ミッキー”を思い出すなあと思いながら見ていたら、ラストはやっぱり”ミッキー”で明るく締めてくれましたね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-01-21 13:21:20) |
1252. 必殺マグナム
J・リー・トンプソン&ブロンソンとくればもうやる事は復讐しかない!ですね。邦題の方も「ブロンソンの復讐モノだからとりあえずマグナムを入れときますか」というブロンソン愛が無いようで有るような?微妙な適当さもいい感じです。中盤以降は職業がデカという事をお忘れのような展開ですが、もはやブロンソンの復讐モノにそんなものは関係ありません。デス・ウィッシュ・シリーズと比べると地味ですが、ブロンソン大好き人間の僕にとってはそれなりに楽しめる作品です。逆に言うとそうでない方にはちょっと・・・。という作品かもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2012-01-20 22:13:47) |
1253. ワーキング・ガール
《ネタバレ》 皆さんのレビューの中にも同じ時代の「摩天楼はバラ色に」が登場しますが、僕も同じ感覚で見ていました。もう一つ似た邦題「摩天楼を夢見て」という、不動産会社の営業マンの悲哀を描いた男臭い映画がありますが(そう言えば「夢見て」にもアレック・ボールドウィンとケビン・スペイシーが出ていますがこの2人も立派に成功しましたね)この邦題、本作の方がしっくりくるんじゃないかな。本作のように恋に仕事に頑張る女性のサクセスストーリーはその両方とも上手くいってハッピーエンドが基本ですが、本作は最終盤で「あれれ・・・?」という感じになるのですが、最後は土俵際の見事なうっちゃり、9回ウラ逆転満塁ホームランといった感じで上手くまとめましたね。ただ、終盤にキャサリンのベッドルームに絶対に見られちゃいけない大事な大事な手帳を置き忘れるというのはちょっとワザとらしすぎたかな・・・? [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-01-15 13:15:26) |
1254. グッドフェローズ
約2時間半の長さを全く感じさせないナレーションを巧く挿入したテンポのいい語り口。 マフィア映画(特に実話モノ)にしてはその語り口が軽く感じられましたが、それも出自がイタリア系でないが故、マフィア社会では決して幹部にのし上がっていく事ができないヘンリーの置かれた状況がよく出ていたと思います。エンドロールでシド・ヴィシャスが荒々しく歌う”MY WAY”も。 まだ若手の主演レイ・リオッタの両脇をデ・ニーロ、ペシがガッチリと固める。それぞれに持ち味が出ていましたが、本作の中ではキレ役ペシが一番オイシイ役どころでしたね。助演男優賞も納得の存在感でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-01-14 20:37:12) |
1255. ヤングガン
当時人気者だったブラットパックのスターが勢揃いした西部劇。 ビリー・ザ・キッドを中心にした西部のアウトロー達は本来は感情移入しづらいですが、本作のドラマの中で先に手を出したのは町の悪徳権力者マーフィー。罪を犯しても権力やカネでもみ消す。昔から耳にする話です。 流れ者だった自分達を一人の人間として扱い、教育や仕事を与えてくれた恩人を殺害された復讐に燃えるという展開は非常に分かりやすい。ラストの銃撃戦もなかなかの見応えです。 エミリオ・エステベスのイカれた演技も良かったし、チャーリー・シーンが残念な扱いでしたが、知的な一面を見せるドク、先住民の血を受け継ぐチャベス、気弱なチャーリーなど、個々のキャラもうまく立てた西部開拓時代の青春群像劇です。 [映画館(字幕)] 7点(2012-01-14 12:58:13) |
1256. ぼくは怖くない
序盤はどこか「スタンド・バイ・ミー」を思い出す展開。冒頭から何度も登場する青空の下一面に広がる麦畑の風景も、10歳の少年ミケーレの汚れなき心も、綺麗な映画です。一方で描かれる大人の汚さ。しかし優しい笑顔のウラに隠された別の顔を持つ父、「大人になったらこの村を出て行きなさい」=「私達のようになってはいけない」とミケーレに教えながら、村のしがらみに縛られた母の姿には大人の悲しき一面も感じられます。子どもが持ち得る勇敢さ、純粋さと大人というよく見られるテーマを一風変わった切り口で描きながらも温かみのある作品となっています。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-01-14 00:57:15) |
1257. リトル・ブッダ
もっと難解な作品だと身構えていたのですが、王子が悟りを開いていく物語は分かり易く、映像の美しさ、キアヌの意外なハマリ具合もあって予想していたより楽な気持ちで見ることが出来る作品です。神秘的で美しいおとぎ話のような世界。西洋の人間の目には東洋の仏教の精神世界はそれ自体神秘的なものに見えるのでしょうか。もっと難解で見づらい作品になっても仕方が無いテーマの作品ですが、おとぎ話のような美しい世界観と現代の子どもの目線を取り入れたこともあり、長さは感じますが見やすさがある作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-01-10 21:25:08) |
1258. 地獄の7人
《ネタバレ》 国のために戦い長年囚われていた元兵士達は家族の元に帰ることが出来た。その一方で現地には多大な犠牲が出て、彼らにもまた家族がある訳で。ジーン・ハックマン演じる大佐にとっても皮肉な結末が・・・。全ては戦争が、アメリカが引き起こした事。今回の作戦に参加した元兵士達。彼らのベトナムから帰還後の人生も様々でしたが、戦友と再会し再び軍服を着て訓練キャンプに入ると、街にいる時とは対照的な生き返ったような表情を見せる。そんな彼らの姿もまた悲しかった。セイラーの最後の姿、大佐の最後の姿も。ツッコミ所はさておき、彼らの人間ドラマとしてもなかなかいい作品じゃないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-01-08 14:20:25) |
1259. ロンリー・ハート(1986)
《ネタバレ》 ダイアン・キートン、ジェシカ・ラング、シシー・スペイセク。3人のオスカー女優が姉妹を演じる豪華競演の作品です。 人生への悲観と生きる希望、南部の地に生きる3姉妹の物語に込められたシリアスさとユーモアのある語り口。3人姉妹それぞれのドラマの配分。3姉妹と関わりがあるドクターの存在感がもう少し彼女たちのよき理解者として出ていれば良かったとも思いますが、これらのバランスも素晴らしい作品です。 冒頭で自分の誕生日を「ハッピーバースデイ・トゥ・ミー」と一人で自分の誕生日を悲しげに祝っていたレニー。ラストでは姉妹から「ハッピーバースデイ」と祝われ、満面の笑みでローソクの火を消す。この監督さんの作品に「ドライビングMISSデイジー」という僕の好きな映画があります。年齢も、事情も違いますが、どちらの作品も登場する女性を通して人は支えあって生きていることを感じさせてくれるいい映画です。 [DVD(字幕)] 7点(2012-01-08 00:57:56) |
1260. ザ・ファン
後半の失業以降は完全にイカれた男を演じているので、デ・ニーロの十八番、イカれた男の演技には彼ならではの不気味さがあるのですが、デ・ニーロ演じる男が営業マンである前半もデ・ニーロの見せ場ですね。あの営業マンぶり、あの父親であり元夫ぶり、あのスタジアムで野球を見るファンぶり。まだ一応普通の人で、なんてことはないのだが、言いようの無い不気味さを醸し出す。ストーリーが本格的に動き出すのは失業以降になるのですが、デ・ニーロ演じる男が壊れていくのと平行してストーリーも壊れていくのが何とも残念。ですが、やはりデ・ニーロはこういう役を演じると流石の不気味さを出しますね。 [映画館(字幕)] 6点(2012-01-05 18:06:10) |