1321. ドリアン ドリアン
《ネタバレ》 大陸から香港に出てきて、売春婦としてお金を貯める。 田舎から都会に出てきて、都会になじみつつも、やはりなじみきれず、最終的には故郷に還る。 日本でも同じようなパターンがよくあるだろう。 地方から東京の大学に入って、そのまま東京で就職。 だが、やはり都会は仮の場所であって、本来の自分の姿は発見できない。 それで、田舎へ戻る。 その様な、どこの地域にでもありそうな事の顛末を、けだるくて、きらびやかな香港を舞台に、じっくり描いてみせる。 フルーツ・チャンの魅力は、それなりに感じられたが、東京で生まれ育った私には、等身大では観ることのできない部分があって、それが障壁となってしまった感がある。 一方で、香港映画としての魅力、香港の猥雑でいて、どこか寂しい夜の風景。 そういった、香港映画特有の雰囲気と映像の数々が、印象に残った。 [ビデオ(字幕)] 6点(2012-06-17 23:17:27) |
1322. ルージュ
《ネタバレ》 愛する人の為に死ねるか? 永遠の愛は存在するか? テーマは分かるのだが、ファンタジーな内容に完全にうんざりとなった次第。 愛する相手に裏切れた女。 その女が現代の香港に幽霊となって現れ、愛の顛末の真相を解明していく・・・ いやー、お粗末というか、感想自体どうでもいいや、と投げやりになる恐ろしさよ。 幽霊より、この映画のお粗末さの方が恐ろしい。 [ビデオ(字幕)] 1点(2012-06-11 00:41:44) |
1323. 美しすぎて
《ネタバレ》 フランス映画らしいと言えばらしいのだが、より正確に言えば、“退屈な類いのフランス映画”といったところだろうか。 美人な奥さんを持った男が、ブスに惚れてしまうという設定は、その設定自体が面白いので、それなり観ることはできた。 だが、その設定内容から一歩も外へ出ない。 延々と最後まで、「美人な妻を捨ててブスな女と浮気する男」を描き続けている。 この平坦さはもはや、「フランス映画的」とか「エスプリ」とかとは別次元に、“映画的に退屈”と言う他ない。 この映画は、随所にフランス映画的なスタイルを感じさせるが、フランス映画は決してこんな映画ばかりではないぞ!と声を大にして言いたい。 [ビデオ(字幕)] 5点(2012-06-10 00:41:15) |
1324. ANA+OTTO/アナとオットー
《ネタバレ》 情熱の国スペインで偶然出会った男女が、やがて成長し、氷の国フィンランドで運命の再会を交わす・・・ いわゆるラブストーリーにありがちな“偶然の出会い”を多用した陳腐な内容かと思いきや、それがちょっと違った。 苦味に似た、哀しい余韻を心に残す。 人生とは偶然の出会いの連続である。 そしてそれが、男女間の恋愛問題に絡んでくると、心の底を揺さぶられるような感動、もしくは切なさが体を襲う。 この物語は、そんな人生の感動や哀しさ、やりきれなさを、暗めのトーンながら鮮やかに描いてみせた逸品である。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-06-07 17:51:01) |
1325. 野獣死すべし(1980/日本)
《ネタバレ》 大昔、テレビで観た映画。 女性が銃弾に倒れ、その際に、真っ白なブラウスを血で汚し、切ない表情でスローモーションで倒れていくシーンは、今もなお脳裏にトラウマとなって焼き付いていた。 あれから30年。 沢山の映画を観てきて、現在、このシーンを見たら、どう感じるんだろうという、自分に対する好奇心がわいてきて、再鑑賞するにいたった。 結論としては何てことはなかった。 だが、大昔観た時、この女性が撃たれるシーンが、とてつもなく怖いものに見えたのは事実だ。 それだけ、このワンシーンが強烈なインパクトを持っているであろうことは間違いない。 今思えば、村川透監督色が出まくった内容で、特別なインパクトも無いんだけど、映画って数多く観れば観るほど、映画から受ける衝撃度は落ちていくものだと、実感した。 それを実感してしまったことの方が、このシーンより切なかったりして・・・ [ビデオ(邦画)] 6点(2012-06-03 18:38:33) |
1326. 大地のうた
《ネタバレ》 個人的には名作とも傑作とも思えない。 人の良いお婆さんを邪険に扱っているし、親父(オヤジ)はフーテンだし、しょうもない。 唯一評価したいのは、そのストレートな作り。 変な趣向を凝らさず、真正面から村に住む人々の生活と人生を描いている。 その部分には好感を持てた。 [ビデオ(字幕)] 3点(2012-05-26 23:52:41) |
1327. 園子温ファンタ・ジア SHORT FILM COLLECTION<OV>
今となっては、有名監督になった園子音監督の、ショートフィルム集。 この作品を観ていると、いかにその後の作品が、自らのアイデアの焼き直しで作られているかが分かってしまう。 つまりは自己模倣。 それも世界観の狭いヤツ。 ゴダールの縮小版、いや、せこい版。 女優陣の露出っぷりが唯一最大の見せどころとなっていて、中身はすっからかん。 しかも、映像は究極にショボい。 観るに堪えない短編の数々。 そして本作、最大の隠れ見どころは、夏川純が夏川純に見えないこと! うーん、、整形前と整形後、確かに整形後の方がきれいかな。 勿論、人工的だけど・・・ [ビデオ(邦画)] 2点(2012-05-18 01:18:29) |
1328. 友よ、静かに瞑れ
沖縄が舞台。 基地周辺の殺伐とした街並み、憂鬱感さえ誘う沖縄の陽射し。 それらが、この物語の殺伐感を巧みに演出している。 男の友情という動機のみで、ここまでやるか!という臭い話。 だが、それがまたこの映画の魅力でもある。 1980年代のダササ爆発のBGM。 これが非常に良い味を出している。 極めて効果的だ。 藤竜也、原田芳雄、室田日出男の男三人衆が、映画に男臭い花を添えている。 [ビデオ(邦画)] 7点(2012-05-14 01:20:12) |
1329. 花火降る夏
香港返還期前後の混乱を描いた作品。 『メイド・イン・ホンコン』で、印象的な映像美を見せたフルーツ・チャン監督が、今度はアクション映画を撮った。 少々分かりにくい映像と展開は、香港返還の混乱を象徴しているとも取れなくもない。 ラストの展開はなかなか見もの。 残念なのは、ありきたりな香港アクション映画のレベルにまとまってしまっているところだ。 ただし、香港の雑然とした街並みと雰囲気を堪能できる、香港映画好きにはたまらないロケーションの数々が良い。 [DVD(字幕)] 6点(2012-05-12 22:55:26) |
1330. 針の眼
《ネタバレ》 なかなか素晴らしい人情劇だった。 冷酷なスパイが、一人の女性の前では無力となり、正直になる。 どんな人間にも、人間らしさが眠っており、そしてその冷酷さの裏には、幼少期のトラウマがある。 人間を表面的に理解することの問題点をついているような気がした。 殺人を犯す人間にも、それなりの背景と事情がある。 そして優しささえ持っている。 それは、気を許せるほんの一握りの人間の前でしか見せない本当の姿。 スパイもの、戦争ものではあるが、人情劇だと感じた。 そして同時に、戦争の持つ悲惨さ、戦争の犠牲者を描いた内容でもあった。 見応え十分で、イギリス映画らしい、真正面な真面目さが良い方向に出ている。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-04-29 18:58:11)(良:1票) |
1331. セリーヌとジュリーは舟でゆく
《ネタバレ》 難しさも散見されるファンタジーだが、とても退屈。 なぜならば、主演二人の女性に興味がわかない。 女同士のくだらないやりとり、仕草が気に食わない。 性に合わない、生理的にむかつく。 特に、おばさんパーマの方。 これがまた、センスの悪さ爆発。 髪の毛も爆発。 口紅塗ったところで変わらんだろう!と言いたい。 本の中の世界に入り込んでいくというファンタジーな設定もありきたり。 尺の長さも含め、何とかならんもんだろうか。 [DVD(字幕)] 2点(2012-04-22 07:45:10) |
1332. 霧の旗(1965)
《ネタバレ》 サスペンス仕立てだが、作品自体のテーマは、復讐劇そのものだ。 女の恨み、執念、その怖さが存分に、そして巧く描かれた内容。 終始、表情の無い倍賞千恵子が、執念深い女を実に巧く演じている。 そして特筆すべきは、大物弁護士を演じた滝沢修。 落ち着いた演技と、それとは対照的に、終盤に見せる落ちぶれた演技。 実に貫録十分の演技で、舌を巻くほど素晴らしかった。 [DVD(邦画)] 7点(2012-04-12 00:39:42) |
1333. それから(1985)
日本文学小説の趣きを存分に感じることができる作品だ。 ロケーションや家屋の佇まいからして、その時代の雰囲気が良く出ている。 致命傷は、脇を固めるキャスティングだろうか。 藤谷美和子や羽賀研二、森尾由美などが、現在からみればではあるが、作品の雰囲気を見事にぶち壊すキャスティングとなっている。 森田芳光の控え目な演出は冴えわたっているものの、役者選びの先見の明に関しては、否定せざるを得ない。 ただし、それらを全てチャラにするくらい、松田優作は素晴らしい。 穏やかながら、鬼気迫る演技を見せている。 [DVD(邦画)] 6点(2012-04-10 00:08:05) |
1334. アパートメント(1996)
時間とタイミングを利用し過ぎの感、大有りの、一種のコメディ。 体裁はラブストーリーかサスペンスか。 いずれにしても、一風変わった作品だ。 役者陣は、いずれも個性派ぞろい。 皆、インパクトのある演技をしていて見応え十分だ。 娯楽に徹していて、なんというか、飽きさせない演出は素晴らしいのだが、それが先行し過ぎている。 真剣に観るタイプの作品ではなく、単純に映画を楽しみたい人向けの内容だ。 粒揃いの女優陣についてだが、最初と最後にしか登場しない、主人公の金髪彼女が一番美しい。 何故にこんなに美しい金髪女性がいるのに、わざわざ仕事を棒に振ってまで、おかしなゲームに首を突っ込むのか疑問だ。 別に金髪美女でいいじゃねーか! 主人公の野郎は、好奇心が悪い意味で旺盛で、欲張りである。 私も欲張りになりたい(笑)。 [DVD(字幕)] 5点(2012-04-08 00:39:19) |
1335. ロング・グッドバイ
ハードボイルドな雰囲気たっぷりの主人公がかっこよい。 ただ、最初から最後まで何だか置いてきぼりをくった感じ。 良く言えば、二転三転するストーリーなのだが。 ところで、主人公が住んでいるマンションのロケーションと構造が凄い! 専用のエレベーターに、あの住まい、そしてあの隣人たち。 こんなのを作ってみせたロバート・アルトマンのセンスに脱帽。 [DVD(字幕)] 6点(2012-04-01 17:37:00) |
1336. モロッコ
まさしくロマンス映画の王道をいく作品。 男女の駆け引き、会話、しぐさ、異国の地・・・ それら一つ一つの要素が素晴らしく洗練されている。 モロッコという異国の地で偶然で出会う男女。 もうこの時点で、恋の予感を感じさせる。 とにかく、押したり引いたりの、男女の駆け引きが絶妙! [DVD(字幕)] 5点(2012-04-01 10:58:25) |
1337. 子宝騒動
非常に良く出来た和製コメディで、昭和初期の雰囲気が出ているのも良い。 30分ちょっとの短編ではあるが、最初から最後まで疾走するギャグの連発。 子宝という幸せと、その背景にある苦労を、時にはシニカルに、時には面白おかしく描いている。 あ、最後のオチも凄いです(笑)。 [映画館(邦画)] 6点(2012-04-01 05:38:04) |
1338. 楢山節考(1958)
《ネタバレ》 かの有名な姨捨(おばすて/うばすて)山の話を映画化したもの。 有名な題材なだけあって、いかにそれを映画として演出するかに注力している。 陰鬱な雰囲気を出すために、木下惠介監督は様々な工夫を本作で凝らしている。 それが一般的に評価されたか否かは別にして、奇をてらったかのような演出がどうにもわざとらしい。 具体的には、ほぼ室内セットで撮られた演出にあざとさを感じ、そのあざとい演出に、終始、意識がいってしまった。 ただし、ラストシーンだけは屋外で撮影されており、この部分についてはさすがの迫力。 しゃれこうべがそこかしこに転がり、不気味な霧が辺りを覆う。 その斜面に老婆を捨ててくる。 この物語のラストシーンに相応しい、不気味で陰鬱な映像に圧倒された。 しかししかし、そもそも老人を捨てるなどという因習自体に腹が立つ。 というか苛立つ。 ならわしだからといって、当然のように行っていた当時の村人に苛立ちを隠せない。 「みんながやっている」 「かわいそうかもしれないけど、やるのが普通だから」 「現在のならわし(制度)に別に疑問もない」 そんな風にしか物事を考えない人間が、閉鎖的な村社会の中で、平然とやっていた悪しき行為。 普通だからやる、みんなやっている、そんな日本人特有の思考回路が、最も悪い方向で現れたのが、このおばすてという行為だろう。 たとえ自分の考えや行動が、少数派であって、周囲から普通じゃないとか言われたとしても、自分自身が正しいと思えば実行し続ける、そんな人間になりたい。 この映画を観て、改めてそう思った。 [DVD(邦画)] 4点(2012-03-26 01:36:39) |
1339. エブリデイ・イズ・バレンタイン
ラブコメディなんだろうけど、どうも適当につくった感が否めない。 コメディというより、悪ふざけ的な感じにみえるのがネック。 その分、肩の力を抜いて観られるし、セシリア・チャンも出ているけれど、さすがに絶賛できるような作品ではない。 っていうか、作っている側も絶賛されるとは思っていないであろう。 なんか確信犯的に、適当に作ったんじゃないかとさえ、邪推してしまう。 香港のラブコメディと言えば、上質な作品も数多く、本作もそれを期待して観てみたのだが、残念だった。 題名は、なんだかとても素敵な感じがするのになぁ・・・ なんだかなぁ。。 [DVD(字幕)] 4点(2012-03-25 16:15:42) |
1340. 愛さずにいられない(2005)
《ネタバレ》 主演の女優さんを、どこかで見たことがあるなぁ・・・と思っていたら、時代は異なるが、司葉子の若い頃にそっくりだ。 それはそれとして、香港恋愛映画の良さがタップリと染み出した逸品であった。 確実に女性の為の映画であると、私は勝手に思ったが、実際はどうなんだろう。 話があまりにストレート過ぎて、日本で作るのは難しい、というか現実的に日本では作られないであろう内容だ。 若い頃、街では有名なほど美人で優雅だった40代の主婦が、カリスマ理容師を愛してしまうという内容。 彼女は、その理容室に10年間も通い続けた。 年齢差はかなりあるが、理容師の方も、彼女のことを憧れの存在として、好意を持っていた。 だが彼女には、夫はもちろん娘もいた。 なのに、家族を捨てて、理容師の元へはしってしまう。 これをいとも簡単にやってしまうから、男の私としては存分に引いてしまった。 何不自由なく育った彼女は、稼ぎの悪い夫との生活に嫌気がさしてしまったのだ。 でもなぁ・・・いくら嫌気がさしたからって、泣いてる子供をよそに、あっさり逃げるから凄い。 いや正確には、逃げたことが凄いんじゃなくて、家族を捨てて若い男の所に走るという女性の行為を、何ら悪びれることなく、肯定的にあっさり描いている本作の視点が強烈だった。 その後彼女は、若い理容師とはうまくいかなかったが、実業家として成功し、幸せな笑みを満面に浮かべて上海の街を闊歩し、エンディング。 家族を捨てて若い男にぞっこん、そして仕事に生きて活き活き。 こんな流れを爽やかに、何ら否定的な部分もなく、最後まで描ききった内容に唖然。 だが、一種、その価値観というか、ある女性の生き方の方向性が明確に描かれているので、これはこれで一つの映画として完成している。 上海の街を活き活きと闊歩する主人公の女性。 その時流れる、アップテンポで幸せに溢れたエンディングソング。 この映像と音楽の取り合わせが圧巻のラスト。 このラストは、自分のやりたい事を貫き、ふっきれた女性の生き方を描いた本作の内容を、これ以上なく象徴していた。 男の私からしたら思いっきり引いてしまう内容であるにも関わらず、この爽やか過ぎるラストは、極めて爽やかだった。 [DVD(字幕)] 7点(2012-03-25 16:11:10) |