1321. 怪談(1964)
《ネタバレ》 個人的に一番印象に残ったのは『黒髪』。元がシンプルな話ではあるが、特に夫と妻のシーンに関しては様々な面の「無駄」を徹底的に排除し(セットや衣装等の美術面、音の使い方、演技面でも所作・表情・台詞に至るまで)、エッセンスを抽出して洗練し尽くしたその仕上がりには、まるで「能」を観ているかの様な感覚を覚えた(その意味では、ラストの大騒ぎは少し私の感覚とはズレていたが)。 もう一点言及しておきたいのは『耳無芳一』の平家琵琶である。正直、浄瑠璃的な芸能に関して、その趣向を感じ取るということが今まで経験出来ていなかったのだが、本作で初めてその素晴らしさの一端を体感することが出来た様に思う(もちろん、優れた映像演出のアシストがあってのことだとは思っているものの)。 総じて本作には、日本ならではの、日本映画でしか実現できない「文化の粋」とも言える純粋なクオリティがつくり込まれていると感じる。その意味で、真に傑作と言える作品だと思っている。 [DVD(邦画)] 9点(2020-05-03 22:28:48)(良:1票) |
1322. ルトガー・ハウアー/危険な愛
《ネタバレ》 非常に汚らしいシーンや、必要以上に扇情的で直接的な(これはもはや率直に「猥褻」だと言える様な)性的描写のオンパレードには、監督2作目にしてヴァーホーヴェンの独特な個性が全開であり、この「下品さ」が彼のアイデンティティなのだということが否応なく理解できる。しかし、描かれる物語は「普遍的な」という意味で一種ありふれた愛の物語であり、それ自体は意外にも詩情的、かつどこか確実に美しさを纏っている。「下品さ」はヴァーホーヴェンの存在証明であると同時に、やはり一つの「手段」に過ぎないのだ。それが狙うところの「効果」というものを、本作では大いに体感できるだろう。この内容でアカデミー外国語映画賞ノミネートは、やはり伊達ではない。 [DVD(字幕)] 8点(2020-05-03 20:34:00) |
1323. SPETTERS/スペッターズ
《ネタバレ》 スピルバーグは一時、ヴァーホーヴェンをスターウォーズ・エピソード6の監督に起用するようジョージ・ルーカスに本気で進言するつもりだったそうだが、本作を観て正気に戻ったらしい。本作が無かったらもしかすると、ハン・ソロがハードゲイ軍団に集団レイプされる可能性すらあったのだ。その意味では、本作は映画史における最重要作品のひとつであることに間違いが無い。 しかし、その色眼鏡を脱ぎ捨て、いつもの性描写の過激さには若気の至りと目を瞑れば、本作は間違い無く傑作の域に達している青春群像劇だと言ってよいだろう。ほろ苦いというには少し苦すぎる嫌いもあるが、友情・恋・夢・葛藤・挫折・本能の目覚め…と、本作には正に青春の全てが詰まっていると言える(前述のとおり、ややダークサイドな要素も多いけど)。一筋縄ではいかない登場人物たちも、どこか実に魅力的で、恐らくそれは迸る無軌道な若さのもたらす清涼感から来ているのだろうと思う。マイナー作だが、是非。 [DVD(字幕)] 8点(2020-05-03 20:20:21) |
1324. サマー・ストック
《ネタバレ》 こちらも最強の二大スター共演が楽しすぎる傑作ミュージカル。歌と踊りは正に大盤振舞い、かつクオリティもハイでグウの音も出ないが、とりわけジーン・ケリーの踊り、ジュディの歌はどちらもベスト・パフォーマンスに近く、大絶品。加えて両スターはルックス的にも全盛期な感じ。話の方も終盤がやや雑なご都合主義だが、中盤まではドタバタが相当に面白い。ミュージカルとしては一流。 [DVD(字幕)] 8点(2020-05-03 01:51:09) |
1325. レ・ミゼラブル(2019)
《ネタバレ》 色々と中々に見応え・歯応えの有る映画だが、とにかく今作はラストに尽きる。 これは問いだ。無情なまでに切迫した問いだ。つまりこれは、これ程までに「非」善良で悪意に満ちた(そしてそれは、誰の所為であるとも言えないが、一方で絶対的な必然性のもと厳然たる事実として存在するという意味で正に絶望的な)人間性の内に、それでも希望、ポジティブな未来を見出せるかという極限的な問いかけなのだ。社会問題を広く提起する類いの作品として、このラストは率直に極めて優れていると感じた。是非、この(普通の映画では味わえないだろう)リアルで切実な鑑賞後感を体験していただければと思う。 [映画館(字幕)] 8点(2020-05-03 00:27:52) |
1326. アリー/スター誕生
《ネタバレ》 レディ・ガガは一聴して理解できる真に偉大なアーティストであり、ハッキリ言って彼女の歌が本作の唯一絶対のウリなのである。ただ、あまりに存在感が個性的過ぎるレディ・ガガは正に飛び道具であり、どこをどうやってもレディ・ガガでしかないのだから、そもそも彼女に誰かを演じさせる、ということに無理がある様な気もする。 話の内容としては色々と非常に「浅い」という印象の作品だが、下手に話をつくり込み過ぎずにMV的な作風に逃げたのも、だからそれはそれである意味正解なのかも知れない。その意味でMV的に本作を観るならば、歌の分量、個々の曲自体の出来や歌唱シーンの演出は総じて優れており、その点では満足いく仕上りだと思う。 とは言え、やはり映画としては安直で浅薄な印象の強い作品に思える。評価自体が少し難しい作品ですね。 [DVD(字幕)] 5点(2020-05-02 23:58:22) |
1327. スター・ウォーズ/最後のジェダイ
《ネタバレ》 まず指摘したいのは、まるで魅力を感じない新作キャラ連中。独り善がりなダメロン、役に立っている様には皆目見えないフィン、全く悪役感の無いカイロ・レン、何故にこういうブスを起用したのか全く以て意図が分からないローズ(これが普通に準主役なのだからもう…)、これまた無能感全開な紫ババア、更に言うと、マーク・ハミルも完全にノーカリスマなオッサンで、かつジェダイ絡みの展開にも想像を上回るものがまるで無いという極め付きの平凡さ。。 シナリオに関しても、掴みのアクションシーンはまだしも(とは言え初っ端から特攻に近い追い詰められ感はやや頂けない)、そこから90分近くは率直にかなりつまらない。メタメタ過ぎるレジスタンス(終いには内紛騒ぎまで起こす始末)、ダラダラ追いかけっこというメイン展開の締まりの無さ、コードブレイカーとかいう謎展開(しかも結局何の足しにもならないというボンクラ)、そこからの後半は多少盛り上がるとはいえ、スノークをあっさり殺しての拍子抜けだとか、そんな方法で敵艦隊に大被害が出せるなら最初から特攻しろとしか思えなかったり、このレベルの大作で何故こんなにシナリオやキャラづくりのレベルが低いのか更々理解できないレベルに酷い。 あと、ジェダイの殺陣も新三部作より率直にかなりレベルが低いのだよね。レイとカイロ・レンは演技はまずまずだが、アクションは結構平凡だなあと(レイは女性としてはかなり頑張ってはいると思うのだが、それでもやや物足りなさを感じるのが正直なトコロ)。 [DVD(字幕)] 4点(2020-04-29 05:16:24) |
1328. 恐怖の報酬【オリジナル完全版】
《ネタバレ》 やや長めの前段部分が少々分かりにくいのが玉に瑕(カットされたのも分かる気がする)。だが(人物の背景描写としての)試み自体は良いと思う。これも含め主筋以外の部分の作り込みが中々優れてるのも(割とどうでもいい部分のアクションとかも)個人的には好印象。 で、メイン部分は元ネタを踏襲してる箇所も多いが、部分的には間違い無く進歩させていると言ってよい出来。特に素晴らしいと思うのが「(全てを飲み込み腐らせるかの様な)ジャングルの絶望感」と、具体的には豪雨・吊り橋のシーンである。ラストも個人的には結構好き(元ネタより良いとは言わない)。リメイクとしては十分に合格点だと思うし(これを凡庸な二番煎じと見るのか、リスペクトと見るのかは難しい問題だろう)、単純に、確実に楽しめる傑作スリラーかと思う。フリードキンの代表作なのは言うまでも無い。 [映画館(字幕)] 8点(2020-04-29 03:29:12) |
1329. コーヒーが冷めないうちに
《ネタバレ》 特に第4話は、色々と展開が急すぎて正直置いてきぼりになってしまった感がある。それも含めて、やはり連続ドラマだったらもっと面白く観れただろう作品だと強く思う(毎回、ゲストのメイン話+吉田羊のコメディ描写+有村架純の恋愛話で構成して、最終回が件の有村架純の話ならもっと入りこめただろう)。結局、映画にするほどストーリーに力が無いとしか言い様が無い。 [インターネット(邦画)] 4点(2020-04-28 21:18:41) |
1330. ジェーン・ドウの解剖
《ネタバレ》 いわゆる司法解剖をテーマにしたアイデアホラー。序盤、かなり詳細かつ科学的に解剖を進めてゆく部分は、描写の物珍しさといい、そこに織り交ぜる不可解な事象の気味悪さ&深まる謎のワクワク感といい、非常に優れたホラーの快感を醸し出している。加えて肝心の死体ちゃんが、ポスターのちょっとキツそーな感じでもなく普通に柔和な可愛い子ちゃんなので(しかも美乳)、ハッキリ言ってテンションは最高潮なのである。 ところが、中盤は結構普通のオカルトもの、かつここの出来はあまり良くない。死体ちゃんの「したい」ことが何なのか分からない点では不可解系のホラーなのだが、起こる事象は要するに「他の死体がチョロチョロ出歩いてます」なだけで、その攻撃もハッキリ言って生温くて予定調和なのは明らか、何も怖くないのだ(流石にこれでは緊張感が保てないので、途中で若造の彼女を使ってテコ入れしているが、ここまで無理繰りな方法でメンタルダメージを狙うのも正直ちょっと大人気が無い)。もう一点、死体ちゃんがほったらかしになっている中盤は、致命的なまでに女子成分が足りていない(誰が爺の恐れ戦くサマなど観たいというのか)。 結局、終盤はまた死体ちゃんの所に戻って来るも、終い方が分からなくなった様なチンプンカンプンな終幕を迎える頃には、ハネ上がったテンションもダダ下がってしまった。決して見どころが無い訳ではないが、残念さの方が強い作品。 [DVD(字幕)] 5点(2020-04-25 23:00:18) |
1331. オネーギンの恋文
《ネタバレ》 当方、原作小説は未読だがオペラ版は何回も観た。だからオネーギンがバカで厨二病な高等遊民(と書いてニートと読む)なのは百も承知で、その彼・彼の苦悩に如何に血肉を与えるのか(と、望むべくは何某かの彼の魅力を描き込むのか)が本作への期待なのである。 しかし、これ………私の期待した点はオペラからまるで改善していないばかりか、改めて観せられると率直にドクズですよね。特にオペラでは「レンスキーちょっと沸点低すぎじゃね?」な部分がここだけは明確に改善(改悪?)されたのも踏まえると、尚更オネーギンの幼稚さ・思慮の浅さが際立つなあと。これをいきなり観たとして、普通の人なら正直「?」だと思う(何故にこんな奴が主役の映画を観てるんだろう、というか)。これならオペラの方がまだマシかも知れない(これはいよいよ、原作を読む必要がありますかね)。 そしてオネーギンから感じる所の若さ・青さとか短慮さとかは、そもそもレイフ・ファインズからは殆ど感じられないとゆーのもハッキリ言及しておきたい(どだい、20代前半の役を38,9でやってるのですからね)。まだレンスキー役のトビー・スティーヴンスの方が適役だと思う。 もう一点、純粋で清純な乙女である印象のタチアナにリヴ・タイラーというのも、ちょっと大味で雑味も強すぎる気がする(公爵夫人になって以降の連れない感じは悪くもないケド)。一つだけ、暖炉に手紙をくべるシーン、オネーギンはタチアナの手紙を拾い戻したが、タチアナは手紙を一瞥しただけだった、という対比は、この2人の違いを的確に示す優れた演出だったと思う。 [DVD(字幕)] 5点(2020-04-25 14:25:57) |
1332. ヒストリー・オブ・バイオレンス
《ネタバレ》 家庭的な雰囲気の中に突如割り込んで来る暴力シーンの切れ味が、本作の最大の見どころであろう。その出来は率直にどれも素晴らしく、監督は流石の手腕だと思う。 より優れていると思うのは、この暴力の持つ二面性の表現というか。基本的には正義な(とまでは言わなくとも、正当防衛な)主人公の暴力は、本来人間が備える攻撃性(男なら分かる筈)を満たすという意味での痛快さと同時に、主人公の暗い過去を具現化するところの重苦しさを湛えている(更に同時に、本来人間が持つべき「暴力を嫌悪する感情」と複合しての悲痛さを含めて)。 その意味で良く出来ていたのは、息子がフォガティを射殺するシーン。ある意味「適切な」暴力を果断に行える息子には、人間としての成長・成熟を感じることと同時に、父親が最も忌むべき自身の残虐性が受け継がれているという悲劇もが描き込まれている。そんな息子から銃を取り上げ、暫く思案げにじっと見つめた末、そっと抱きしめる主人公。 本作は、家族の愛の物語なのだなあ、と。暴力と、過去からただ逃げる主人公への嫌悪を越えて、それを強く感じられたラストの余韻も素晴らしい。ヴァイオレンス映画の佳作。 [DVD(字幕)] 8点(2020-04-25 11:39:43)(良:1票) |
1333. ナイチンゲール
《ネタバレ》 「ナイチンゲール」ゆうのは歌の上手い女性を指す言葉とのこと(もともと鳥の名前なのですよね)。話の内容は、気でも狂ってんのかというレベルで凶悪無類な男共に、これでもかと虐げられ尽くしたひとりの女が、モノの見事に復讐を果たす(以上。)というだけの話で、内容の勘所も暴虐と悪辣の限りを尽くすネガティブ極まりないヴァイオレンスだけだと言ってもよい。 であるからして、まずかなりタラタラと長尺なのがそもそも非常に気に入らない(特に中盤以降はただグルグル行ったり来たりしているだけ)。加えてその暴虐な行為も、根っこが実は結構に浅いのがなんか気になる。オーストラリアの人種差別の歴史を背景として踏まえているように見せかけて、その実、この映画は単なる個人的な話なのだよね(色々と人種差別的描写を描き込んでいるものの、それは別に本筋とはあまり関係なく、その意味ではある種のファッションで浅薄なテーマ面の小細工だとも言える)。 結論、見た目ほど中身が無いのに矢鱈と大仰かつ長大、その上に極めてネガティブという、個人的には結構に嫌いな部類の映画。 [映画館(字幕)] 4点(2020-04-25 02:29:15)(良:1票) |
1334. インド・オブ・ザ・デッド
《ネタバレ》 明るくトロピカルなインド産初ゾンビ。インドとは言え踊ったらいくら何でもホラーではなくなると思うが、流石にそれはなし(それはそれで)。ただ、9割がたコメディに振れておりかなりモタモタしたテンポ(なんか普通に二晩くらい経ってるし)、かつコメディとしてもゾンビとしても相当に月並な内容で、設定もユルい(薬物が原因でゾンビ化したのに、なぜ咬まれると感染するのか)。まあ映画としての質自体はそこそこだし、させそでさせない破れ傘ヒロインはルックスもスタイルも抜群(脱ぎはしないが、基本的にかなり薄着でグッドだし)。 [DVD(字幕)] 5点(2020-04-25 02:19:55) |
1335. パキスタン・ゾンビ
《ネタバレ》 パキスタンのホラーという物珍しさ(質感はインドの低予算映画的な感じ)。ゾンビも少しだけ出てくるが(どうも河の汚染が関係しているらしい)、基本的な内容はまんま『悪魔のいけにえ』で、キチガイ殺人親子が通りがかった若者を襲う、という話。レザーフェイス的な奴がブルカで身を隠し(どうみても男だが、母親的には「娘」らしい)、モーニングスターをブン回しているというのが特徴的。ファイナル・ガールはエキゾチックでまあまあ可愛い上に、ラストは有刺鉄線を棍棒に巻き付けてブルカ男を撲殺&杭でメッタ刺しというアグレッシブさ(叫びっぷりも中々)。低予算なのは否めず、総じて超チープ&剽窃的な作品だとも言えるが、チープ故に逆に手加減の効いていない生理的嫌悪を催す気色の悪さを十分に備えており、ホラーとして全く観れない作品でもないかと(一応、輸入されたワケである所のクオリティは、伝わらなくもない)。 [DVD(字幕)] 4点(2020-04-21 02:54:45) |
1336. 獣道
《ネタバレ》 前半は完全に伊藤沙莉の話だが、後半からはサブキャラの話も出てきて、群像劇の様相を呈する。生きていくための居場所を求めて藻掻く人々を描くことがテーマであるが、ひとつ引っかかるのは、今作が明確にコメディを意識してつくられていることである。この手の「どん底」を描く作品として、リアリティを犠牲にして笑いを挿入することに意味はあるのだろうか。個人的には不良絡みのシーンはどれもコメディにしか見えなかったし、あと深い意味でのリアリティという意味では、例えば愛衣が一般家庭に受け入れられ、そして拒絶されるシークエンスの諸々はどれもかなり嘘くさい(そこまで言わないとしても、少なくとも表面的だ)という印象を受けた。率直に、今作は演出のコンセプト面であまり共感できない、というのが私の結論。 ただそうは言っても、鑑賞中はかなり引き込まれて観ていたのも事実(特に前半。私はこの手の『カビリアの夜』とか『マル秘色情めす市場』ぽい話は大好きなのですよね)。そしてそれは確実に、俳優陣の演技の出来の良さがあってのことだと思う(言うまでも無く、伊藤沙莉は出色の出来だったかと)。観れるか観れないかでいったら、確実に「観れる」レベルのクオリティは整っており、更に共感に至るかは、個々人の好み・ポリシー次第かという映画に思う。 [インターネット(邦画)] 5点(2020-04-20 00:26:24) |
1337. ダンスウィズミー(2019)
《ネタバレ》 ミュージカルシーンを主人公の空想(現実逃避)として映画に落し込んだ『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は、極めてシリアスな(踊ってる場合じゃない)物語と幻想的なダンスシーンを融合させることに成功した傑作だった。『シカゴ』でもミュージカルシーンは作中の現実ではない観念的なものとして表現されるが、こちらはミュージカルの物量が圧倒的で、むしろミュージカルに映画がくっついている、という特殊な質感を醸し出していた。 翻って今作では、ミュージカル自体は主人公の幻覚だが、本人だけは現実に踊り狂っており、そのことで様々な混乱が生じる、というのが、コメディとしての本作の根幹を為す設定となっている。このアイデア自体はそこまで斬新だとは言わないが、ミュージカルとコメディを自然に結びつけられるだろう点で決して全く悪くもないと個人的には感じている。ところが実際の作中では、この設定が問題を引き起こすのはごく序盤のみで、特に中盤は音楽を聴いていても歌ってれば踊ってなくても平気(自我も保てる)、という様に見える。この「軸のブレ」の所為もあってか、中盤はさほど笑えない至極平凡な内容になっている様に思われる。ある意味、今作は一種の「アイデア倒れ」な映画だとも感じる。 とは言え、ミュージカルシーンの量自体はかなり豊富、かつ三吉彩花は歌も踊りもまずまず頑張っている(加えてかなり可愛いし)、そしてコメディ面も(平凡とは言え)普通程度には笑えなくもない出来だとも思う。個人的に、ミュージカル映画に(コメディ面やシナリオ面で)そこまでソリッドなものを求めるのも詮無い事かなあ、と思っているので、気楽に観ること前提で、そこまで悪い映画ではないかと思う。重ねて、三吉彩花はとても可愛かった。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-04-19 18:55:17) |
1338. ギャングバスターズ
《ネタバレ》 B級テイスト、かつどこか確実にタランティーノ風味な、お手軽アクション・ロードムービー。おバカチンピラ三兄弟(+預かったターゲットの小僧)と迫り来る暗殺チームとの手に汗握る(と言うホドでもないグダグダマッタリな)バトルを思う存分楽しめる。三兄弟の次男および小僧が喋れないというキャラ被りをものともしない設定だが、この二人がどちらも中々イイ味を出している。暗殺チームも個性豊か(年増お色気軍団・黒人ヒャッハー軍団・あとメキシカン?ネイティブアメリカン?系のなんちゃら軍団)だが、揃って腕前はさほどでもないというごく暢気な物語。アクションもハッキリ言ってド初っ端が一番出来が好く、後は至極普通(ラストも意外なホドにアッサリ)。ただ、程好くコンパクトで前述どおりのマッタリさを含め、頭空っぽにしてノンビリ観るには地味に最適な映画。間違い無く有用な作品だとは断言できる。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-04-19 12:15:44) |
1339. フライト
《ネタバレ》 航空アクションな序盤、ジャンキーな中盤、法廷劇な終盤、人間性を発露するオーラスと、中々に変わった展開をする点は先が読めなくてまあまあ面白いが、中盤がだいぶん長いことダルいのが映画としては玉に瑕。ただ、デンゼル・ワシントンの演技はまずまずだし(アクション俳優の面目躍如な序盤の緊迫シーンや、ラストシーンとかは言うまでも無く)、中盤までの内容からすれば意外と言える様な爽やかな鑑賞後感が残るのも悪くはない。一風変わった作品として、観ておく価値は有る。 [DVD(字幕)] 6点(2020-04-19 01:08:06)(良:2票) |
1340. チャップリンの殺人狂時代
《ネタバレ》 随所にコメディ要素を織り交ぜつつも、普通にシリアスな話にもなる話である(残虐描写が皆無だから好い様なものの、犯行自体は結構極悪)。そこはチャップリン一流に全体としてもブラック・コメディな風に仕上げられているが、個人的にはこのアンマッチさは左程好みではないのと、前半は前述どおり犯罪場面のパンチが無い上にコメディにも微妙にキレが無く、割と辛かった。中盤以降はブラックコメディ面が尻上りに向上し、その意味ではそこそこ面白いのだが。 [DVD(字幕)] 6点(2020-04-18 14:15:02) |