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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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121.  スターシップ・トゥルーパーズ
本作の企画は83年頃から存在していたものの予算や技術面での問題から一度頓挫し、技術の進んだ97年になってようやく製作が実現したようです。VFXに注ぎ込まれた予算は「タイタニック」をも上回る史上最高額の7000万ドル、総製作費は1億ドルという凄まじい超大作なのですが、これがお馴染みバーホーベン節炸裂の神経逆撫でムービーに仕上がっているのですから二度驚きます。ハリウッドの偉い人たちは脚本に目を通してから意思決定しているのだろうかと実に不思議になりました。。。完成した作品には素晴らしい部分もあればそうでもない部分もあって、個人的には好きなタイプの映画なのですが、傑作の部類には入らないと思います。バーホーベンの狙いは、戦争というものの本質を描き出すことにありました。このテーマを扱うにあたって歴史上の戦争を題材としてしまうと、どうしても当事者である国や国民が存在してしまって満足な描写ができない可能性がある。観客の側でフィルターがかかってしまう場合もある。だったら誰も文句を言ってこないSFでやってしまえという発想は大胆で面白いし、的を射ていると思います。本作の4年後、映画で描かれたことをアメリカ合衆国が現実世界でまんま後追いしたことからも、その狙いは当たっていたと評価できます。ただし、本作には不十分な面もあります。舞台となる未来の地球連邦の作り込みが甘く、また敵となるエイリアンと人類が歴史上どのように関わってきたのかが明示されないため、軍事政権が大衆を煽動して戦争へと雪崩れ込んでいく様について、観客がその良し悪しを十分に判断できません。主人公達が軍事に携わる前の学園ドラマの出来も良くないのですが、戦争と対比させるためならここも面白く作っておく必要があったでしょう。軍事政権や薄っぺらな学園ドラマなどバーホーベンが不得意としたり嫌っていたりするものについては、とりあえずブラックジョークでバカにするというスタンスで作られているのですが、この姿勢のためにテーマが一部死んでしまっています。映画の前半部分が猛烈に退屈する原因ともなっています。ここはある程度マジメにやっておくべきでした。。。一転していよいよ戦争に突入するとこれがめっぽう面白く、バーホーベンはスペクタクルの巨匠であることを再認識させらます。「好きなことやれてうれしいなぁ」というフィル・ティペットの満足げな表情まで見えてきました。
[DVD(字幕)] 7点(2010-09-05 00:41:06)(良:1票)
122.  スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス 《ネタバレ》 
全6作を通して鑑賞すると、このEPⅠだけがサーガから浮いていることが気になりました。宇宙戦争に巻き込まれた親子の物語において本作だけがサーガの本筋と直接関係のないことをやっており、EPⅠがなくても話が通じるのです。「ジェダイの復讐」から16年も待たされた挙句、ようやく出来たEPⅠがサーガと直接関係のない話ではファンもガッカリだったでしょう。中盤の山場であるポッドレースに至っては、サーガの本筋と直接関係のないEPⅠの本筋からもさらに外れており、観客を飽きさせないよう挿入した意味のない見せ場にしか思えません。いや、ルーカスにとってはアナキンのパイロットとしての才能を示す重要な場面のつもりだったのかもしれません。しかし、ラストにおいてアナキンは手違いから空中戦に参加し、訳も分からず飛び回っているうちにまぐれで勝利するという展開となっていて、彼が天性のパイロットであるようにはとても見えないのです。ポッドレースの際に見せた勘の良さや機転が空中戦においても活かされるという展開がなければ両者は結び付かないのですが、ポッドレースではアナキンの非凡さがそれほど伝わってこないし、空中戦ではポッドレースでの経験が活かされるような局面がないし、ポッドレースがなくてもラストの空中戦は成立してしまいます。本作は万事この調子で、映画全体が必要のない物語、必要のない見せ場で構成されており、仮にルーカスの頭の中では必然性ある場面のつもりだったとしても、完成した映画からはその意図が伝わってこないという有様。完全に失敗作だと思います。VFXは当時としては最高のものが用いられています。ルーカスが「スターウォーズ」を作るために設立したILMにとって、本作は会社のアイデンティティの根幹をなす重要な作品。世界最高のVFXスタジオが最高のスタッフを惜しげもなく動員して製作したのですから(本作から漏れたスタッフは「ハムナプトラ」に回されたとか)、VFXは凄くて当然。公開前、本作はVFXの新たな可能性を示す作品になるだろうと期待されていました。しかし、フタを開けるとVFXの限界を露呈した作品となったのが皮肉でした。CGで描かれたエイリアンとドロイドが戦争をしても何とも感じないし、いくらVFXにお金をかけても、レイ・パークというひとりのスタントマンによるダース・モールのアクションには勝てなかったのです。
[レーザーディスク(字幕)] 2点(2010-09-02 00:18:00)(良:2票)
123.  ウォーターワールド
90年代を代表する大コケ映画と言われていますが、1億7500万ドルの製作費に対して興行成績は全世界で2億6400万ドル(1995年の公開作中第9位)とそこそこのヒットとなっており、コケ方で言えば同年の「カットスロート・アイランド」の方が遥かに上。にも関わらずこの映画が(悪い意味で)私達の心を掴んで離さないのは、その出来があまりに惨たらしいからでしょう。。。作品を見る限り、脚本の出来はそれほど悪くありません。問題は監督とプロデューサーの腹が座っていなかったことで、本来はエッジが立っていたであろう脚本の良さをことごとく潰しています。破滅後の世界を扱った本作はダークに描かれるべきであり、その点、女性が物々交換の対象となっていたり、ミュータントに凄惨なリンチが加えられたりと、脚本上はきちんと毒が描かれています。しかしベラボーな製作費にビビったのか、監督とプロデューサーは観客に嫌悪感を抱かせかねないこれらの描写を中途半端に終わらせてしまい、そのために全体が締まらない印象となっています。また前半と後半でまったく別の映画となっていることにも違和感を覚えたのですが、これも主人公を観客から好まれるキャラクターにしようと後半で方向転換してしまったプロデューサーの判断ミスであり、前半の冷たいキャラクターで通すべきだったと思います。この方向転換を巡っては監督のレイノルズとコスナーが対立してレイノルズは途中降板、後半部分をコスナーが監督したことも後半が浮いてしまった原因となっています。。。さらに本作の足を引っ張っているのがSF感覚の欠如で、これも脚本レベルではそれほど悪くなかったにも関わらず、監督がSFオンチだったことが問題でした。衣装や小道具がとにかくカッコ悪く、そのために映画全体がダサくなっています。この手の映画はカッコ良いことがポイントなのに、そこで観客の心を掴めなかったのでは、いかにスペクタクルにお金を注いでも映画は良くなりません。コスナーが突貫工事で手を入れはじめた後半になると設定にも矛盾が発生しはじめますが(紙は高値で取引されていたはずなのに、後半ではまとまった量の雑誌が出てくる。前半では「俺達の先祖が世界をこんな風にした」と言っているのに、後半では過去の文明を知らないことになっているetc…)、SFにおいて細部に矛盾が発生するような雑な作りでは、観客に見透かされてしまいます。
[DVD(字幕)] 4点(2010-08-17 22:06:33)(良:1票)
124.  13ウォーリアーズ
ジョン・マクティアナンは途中で降板し、後半部分はマイケル・クライトンが監督しているようなのですが、監督が途中で交代する映画はたいていロクでもないもの。例に漏れず本作も映画としての出来は芳しくありません。まず戦士達の区別がつかず、誰かが死んでも、自己犠牲の勇気を見せられても、特に何とも感じさせられません。確かに13人という大人数、しかも全員が金髪のロン毛では見た目の判別も厳しいため、13人全員を描くのではなく主要キャラを絞り込むという方法は間違ってはいないのですが、印象に残るのが気さくなヒゲのバイキング(役名不明)だけでは寂しすぎます。首領であるブルヴァイすらカリスマ性を示すエピソードに乏しいのでは話になりません。戦士達の特技や役割分担もはっきりしないため、集団アクションとしての面白さも半減しています。これらについては、ドラマ部分を大幅にカットして上映時間を短縮させた映画会社の判断ミスであり、より長かったというディレクターズ版の出来が気になるところです。ビジュアルについては、画面が暗過ぎて何が何だか分からないという致命的な欠点が。リアリティにこだわってたいまつの光のみで撮影されたようなのですが、リアリティとは映像を効果的に見せる手段のひとつであって、リアリティにこだわって何も見えなくなったのでは本末転倒です。製作陣もこの映像ではさすがにマズイと感じていたのか、洞穴に住まい、暗闇を好むというヴェンドルの設定を無視して、クライマックスには白昼の決戦が準備されています。いよいよ満足な形で戦闘を見られると期待したのですが、これが驚きのダイジェスト処理。監督交代等の混乱の中で予算が浪費され、クライマックスにはお金が残っていなかったのでしょうか。この肩すかしには驚きました。。。とまぁ欠点だらけの映画なのですが、駄作と切って捨てられない魅力も持っている愛すべき映画でもあります。オープンセットの作り込みは凄まじく、衣装や甲冑にも徹底的にこだわっています。スタントマンによる生身のアクションも大迫力で(これで画面が見やすければ…)、「グラディエーター」をも超える130億円の製作費はダテではありません。どんなことが起こっても余裕のバカ笑い、いざとなればベラボーに強いバイキング達もかっこよく(これで一人一人のキャラが立っていれば…)、男の男による男のための燃える映画としてはなかなかのものです。
[DVD(字幕)] 7点(2010-08-13 17:16:06)(良:1票)
125.  マトリックス 《ネタバレ》 
公開当時、一方には本作の斬新さに対する称賛があって、もう一方には既存の要素をシャッフルしただけじゃないかという批判がありました。現在になってあらためて鑑賞すると確かに本作のテーマは目新しいものではないのですが、哲学的なテーマを娯楽アクションでやろうとした試みは非常に斬新であり、かつこの試みを成功させてしまったウォシャウスキー兄弟の監督及び脚本家としての能力の高さは並外れています。それまでの映画界では、一方に「スターウォーズ」のような娯楽大作があって、もう一方に「2001年宇宙の旅」のような難解な作品があって、これらは水と油だったわけですが、「マトリックス」は難解さと面白さの融合を成功させてしまったわけです。また、きちんと作り込めば難解なテーマであっても観客は付いてくることを本作が証明し、ハリウッドのマーケット観や意思決定のあり方も大きく変えてしまいました。もし本作がなければ、ノーラン版バットマンなどは登場していなかったでしょう。とにかく脚本の完成度が高く、「信仰と哲学」という難解なテーマを一般の観客にも分かる形で提示し、かつそれを刺激的なビジュアルと燃えるアクションに絡めて物語を構築しています。隠喩に満ちたセリフは禅問答のようで一見すると不親切なのですが、一般の観客が付いて来られるギリギリのところで難解さを留めておいたサジ加減は絶妙であり、理解可能な節度を保ちつつ観客に考える喜びを与えたという意味では最高のサービス精神が感じられます。また、アクション映画としても本作の脚本は際立っています。象徴的なのがエージェントの扱いで、「エージェントは圧倒的に強く、もし彼らと鉢合わせると殺される」というセリフがしつこい程に繰り返されるおかげで、エージェントが登場するだけで画面に緊張感が漂います。ネオを逃がすためエージェントに挑んだモーフィアスの自己犠牲も、エージェント・スミスとの戦いを決意したネオの確信も、クライマックスのチェイスの緊張感も、「エージェントに追いつかれる=死」という擦り込みが徹底されていたからこそ、それぞれの意味が際立つ形となっています。一方で、公開当時絶賛されたビジュアルについては、現在見返すと多少のアラが気になります。ネブカデネザル号や人体発電所のCGは本編から浮いてしまっているし、カンフーやワイヤーアクションは役者が慣れていないためかヘタクソです。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2010-08-07 02:20:57)(良:1票)
126.  イベント・ホライゾン
製作側が意図しているほど高尚な作品に仕上がっているわけではありませんが、かといってB級と切って捨てられない魅力も放っており、ポール・W・S・アンダーソン監督作品においては、現時点における最高傑作だと思います。宇宙に行って気が狂うという物語は現在からするとありふれた題材ですが、本作の公開当時、エイリアンではなく精神世界を敵とするというアイデアは斬新であると評価されていました(本作の最初の脚本では、エイリアンが登場するはずだった)。また、それを表現するビジュアルは非常に秀逸で、船内の日用品がプカプカと浮く無重力の表現や、宗教的イメージと科学的合理性を両立したイベント・ホライゾン号のデザイン、死を連想させる炎の表現等はかなり目を引きます。生身で宇宙空間に放り出された人体の描写や、超高速での航行からクルーを保護するための水槽の存在等は、文系の私にはどれほどリアルなものかの判断はつかないものの、ともかく「リアルっぽい」雰囲気を出すことには成功しています。SF映画において「リアルっぽい」と感じさせることは重要であり、これに成功している時点で、本作は一定の完成度に達していると言えるでしょう。「ミッション・トゥ・マーズ」「レッド・プラネット」「サンシャイン2057」等、後に製作される宇宙映画には本作との類似点が多く指摘できる点でも、本作がSF映画史に残した功績は大きいものと評価できます。また、SFホラーであるにも関わらず地味な演技派を配置したキャスティングも当時としては異例でしたが、彼らの演技力がムダになっていない点も評価できます。製作当時若干31歳であり、代表作が「モータル・コンバット」だったアンダーソン監督が、よくぞ大人の俳優陣を使いこなしたものだと感心します。。。と、部分評価はできるものの(明確な欠点を指摘することの方が難しいほど)、全体としてそれほど面白い映画になっているわけでもないのが本作の問題点。物語は終始単調で、「いざクライマックス!」という煽りに欠けるために、不完全燃焼な印象を受けます。SFホラーなのですから、もっと爆発的な盛り上げが必要でした。
[DVD(吹替)] 7点(2010-08-03 20:34:19)(良:1票)
127.  スクリーマーズ 《ネタバレ》 
フィリップ・K・ディック原作映画といえば「ブレードランナー」と「トータル・リコール」の二作しか存在しなかった時代に製作され、潤沢な予算を与えられた先輩達と比較するとあまりに地味だった為に注目すらされなかった作品ですが、意外にもよくできています。核戦争により荒廃したシリウス6Bの自然風景、破壊され無人となった都市、生き残った少数の兵士達が立て篭もっている要塞など、作品の世界観を形成する舞台はしっかりと作り込まれており、予算の少なさがハンデになっていません。また、細かいところでは軍服や銃火器等もかっこよく、SF好きが注目する部分には適切に労力を割いているようです。監督は低予算専門ながら「B級」と切って捨てられない作品を放つクリスチャン・デュゲイですが、本作では彼のビジュアルセンスや、予算のやりくりなどの技術が総動員されています。世界を支配する絶望的な空気、要塞に長く立て篭もっている兵士達の焦燥感の描写は見事だし、いまいちパッとしないピーター・ウェラーが本作ではこの上なくかっこよく映っており、俳優の魅力を引き出すことにも成功しています。さらに、ホラー映画出身だけあって恐怖演出も手慣れたもので、攻撃型スクリーマーが迫ってくる描写や、潜入型スクリーマーが突如本性を現す描写のインパクトは絶大です。スクリーマーとは言え、子供に向かって銃を乱射し、火炎放射器で子供を焼き払うという衝撃的な見せ場も臆せず作っており(この描写のせいで予算が下りなかったのでしょうか?)、やるべきことはきっちりやれる男ぶりもアピール。デュゲイなくして本作なしと言い切れるほど良い仕事をしています。ただし残念だったのがラスト10分で、最後の最後に本作は極めてディックらしい展開を迎えます。潜入型スクリーマーが進化した結果、最新型のタイプ4は人間の感情に等しい感覚を持つに至ります。そしてタイプ4は破壊のために生まれた自分自身の出自を忌み嫌い、愛する人間のために戦い始めるというロイ・バッティもかくやという展開を迎えるのですが、この部分があまりに唐突で驚いてしまいました。もう少しうまく伏線を張り、丁寧に描写をすれば感動的な展開となりえただけに、この部分のぞんざいな扱いが残念で仕方ありません。
[レーザーディスク(字幕)] 7点(2010-07-27 00:46:08)(良:1票)
128.  プレデター2
完璧な映画ではありませんが、B級映画の傑作だった第一作の続編としては十分すぎるほどの仕上がりです。前作は正体不明の敵に対して特殊部隊がドンパチ撃ちまくるだけの映画でした。プレデター初登場作品なのでそれだけでよかったのですが、さすがに二作目においても同じような単純な映画にすることはできない。そこでいくつかの点でパワーアップが図られています。まず、舞台をジャングルからLAに移すという大風呂敷が広げられましたが、大都会で好戦的宇宙人が暴れるという設定だけで燃えてしまいます。しかも、大都会を活かした見せ場が作り込まれており、設定に負けないビジュアルがきちんと準備されていることには感心します。物語も、プレデターと刑事の戦いに、麻薬組織間の抗争や、プレデター捕獲を目的とする政府組織までを絡めるという大盤振る舞い。こちらも設定を出して終わりではなく、設定が物語の中できちんと活かされているのですから大したものです。さらにプレデターの設定もより深化させており、武器のバリエーションを増やしたり、彼らの生態や性格に関する追加情報を適度に付加。「AVP」から「プレデターズ」まで現在のプレデター像は本作が基礎となっていることからも、本作におけるキャラクターの深化は正しかったと評価できます。。。と、決して悪くない出来であるにも関わらず本作の評判が芳しくないのは、主演がシュワではないため。私も、「この出来で主演がシュワであれば」と残念で仕方ありません。ダニー・グローバーも悪くはなかったのですが、シュワと比較するとやはり見劣りします。ただしこの主役交代も、「プレデター」というシリーズ全体として見るとあながち悪くなかったようです。というのも、「プレデターさえ出ていれば人間側の主人公は誰でもよい」という自由が生まれたため、一方でシガニー・ウィーバーが主演し続けたために物語の自由度がどんどん制限されていった「エイリアン」シリーズと比較すると、シリーズの続行が格段に楽になりました。「AVP」シリーズがプレデターシリーズを基礎としていることからも、プレデターの世界を広げるために本作における主役交代が効果を発揮していることが伺えます。
[DVD(字幕)] 7点(2010-07-19 12:42:35)
129.  スピード(1994)
よくもまぁここまでネタを詰め込んだなぁと、その密度に圧倒された作品です。その割に見せ場を作るための強引さをさほど感じず、論理的に破綻していない辺りがこの映画の凄いところ。最初から最後まできっちり楽しませてくれます。ジャック、アニーをはじめとしたキャラクターの作り込みも良く、バスの乗客は一言もセリフがない人物に至るまで個性が感じられます。個人的なお気に入りはマクマホン隊長で、この人は最初から最後まで何もせず、ただ偉そうなことを言ってるだけの人なのですが、それでもこのキャラクターには隊長としての威厳や信頼感がきちんと宿っています。ここまでキャラクターが作り込まれているアクション映画って、実は貴重です。唯一、犯人のハワード・ペインについては犯行に至る動機や狂い方がちょっと弱いかなと感じたのですが、この役柄を怪優デニス・ホッパーに演じさせたことで脚本レベルの弱点がうまく補強されています。こちらもお見事。キャスティング面で言えば、ジャックをキアヌ・リーブスに演じさせたことも驚きです。キアヌ・リーブスと言えば「ハート・ブルー」でホモっぽい刑事を、「ドラキュラ」でドラキュラ伯爵に恋人を奪われる弁護士をやり、弱い主人公を演じるイメージのあった人物です。またスターとしてのネームバリューがあったわけでもないのに、突如従来のイメージとは正反対のジャック・トラヴェンを演じさせ、これがピタっとハマっていたのですから、このキャスティングは神がかっています。さらに、このキャスティングはアクション映画史をも変えてしまいました。それまでのアクションと言えば筋肉隆々のアクション俳優が大暴れするものが主流でした。むさ苦しい見た目や演技の拙さには目をつむり、彼らが暴れる様をひたすら鑑賞するのがアクション映画の作法。しかし線の細いイケメンのキアヌ・リーブスがアクション映画の看板を務め、これを大成功させたことで、アクション俳優に付き合う必要がなくなりました。以降、アクションはニコラス刑事やマット・デイモンら演技のできる人間が演じるようになり、アクション俳優は見事なまでに消え去りました。
[DVD(字幕)] 8点(2010-07-06 21:00:20)(良:1票)
130.  THE END OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に 《ネタバレ》 
【2010/06/20レビューを書き直しました】前のレビューでは「大風呂敷広げ過ぎてオチが浮かばず、不快な描写でファンを煙に巻いて終わらせた」と評価していたのですが、あらためて見ると私の認識は完全に誤っていました。生理的な不快感を伴う劇中の表現は監督の逃げではなく必然性のあるものだし、結末もテレビシリーズとの整合性を保ちつつ、予定調和ではない突き抜けたもので、「エヴァらしさ」という意味では最良の終わらせ方だったと思います。。。本作はサードインパクトの様子がひたすら描かれるのみで、内容は至ってシンプル。サードインパクトの行方はシンジに委ねられ、彼は「人類の心が補完され、誰からも傷つけられない世界」か「他人から傷つけられる恐怖と、他人と触れ合う喜びが同居する世界」かの決断を迫られます。シンジは他人から傷つけられることを極度に恐れ、他人のいない世界を常に望んでいましたが、そうした恐れは人と触れ合いたいという欲求の裏返しであることに気付き(ラストでアスカの首を絞めたのは、好きであるが故に拒絶されることが怖かった為)、そしてサードインパクトを途中で終わらせ、再び他人と共に生きることにします。ひとつオトナに成長した息子を見て安心したのか、母親ユイの魂が込められたエヴァ初号機は、地球を離れ宇宙へと旅立っていきます。エヴァという永遠の寿命を持つ箱舟に乗り込み、50億年後に地球が滅んだ後にも人類が生きた痕跡を残すために。。。本作の内容はこれだけで、大して難しい話ではありません。本作を難解にしている最大の要因は、監督が描きたいことと、ファンが見たいものの齟齬にあると思います。私を含めた当時のエヴァファン達はSF的な設定や入り組んだ謎、作り込まれたアクションや美少女キャラ達には惹かれていたものの、このシリーズが重く扱っていた心のドラマには特に関心を示していませんでした。一方で監督はキャラクター達の内面を描写することに重きを置いており、キャラクターの内面に注目すればシンプルな話だったにも関わらず、入り組んだ設定に注目したためにそれがノイズとなって理解を難しくしていました。また、私を含め多くのファンが本作で裏切られたと感じたのも、自分達の見たいエヴァと監督のエヴァとが違っていたため。監督が「ファンの見たいエヴァ」を目指した新劇場版を見た今になると、本作の意図がパっと見えるようになりました。
[DVD(邦画)] 7点(2010-06-21 06:30:22)
131.  新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生 《ネタバレ》 
【2010/06/20レビューを書き直しました】前回のレビューではDEATH編が不要だと書いたのですが、今になって見返すと印象が変わりました。この総集編は、公開までの製作スケジュールが逼迫した監督による時間稼ぎだったという批判をしばしば受けます。私もそう思っていましたが、実際には物語のクライマックスに突入する準備として必要な情報の整理がなされています。続く「Air」「まごころを、君に」ではサードインパクトという地球規模の壮大なイベントが結末を迎えると同時に、シリーズで描かれてきた主人公達の心のドラマにもついに結論が出ます。アスカは「他人から評価されないと生きていけない」という強迫観念から解放され、レイは他人からの要求を拒否するという自我を獲得し、シンジは他人が存在する世界を受け入れます。彼らはそれぞれの抱える心の問題を乗り越え、大きく成長した姿を披露することとなるのですが、以降に控えるこのダイナミックなドラマの前提として、これまでの登場人物達の感情の推移を整理するDEATH編は必要でした。なぜなら、当時の私を含めたエヴァファン達はSF的な設定や入り組んだ謎、作り込まれたアクションや美少女キャラ達には惹かれていたものの、このシリーズが重く扱っていた心のドラマには特に関心を示していなかったからです。エヴァは多くのファンから舐めるように鑑賞され、また普段はアニメなど扱わない媒体からも取り上げられるほどの人気を獲得しましたが、監督はそれに浮かれず、ファンが付いて来ていない部分があることを冷静に認識していたようです。もしかしたら、「こいつら、俺の言ってること分かってないじゃん」という苛立ちもあったのかもしれませんが、ともかくクライマックスの理解を助けるために今一度ドラマ面を提示しなおす必要があり、そこでDEATH編を作ったように思えます。事実、DEATH編を丁寧に見てから「まごころを、君に」を鑑賞すると、意味不明と言われたクライマックスを意外なほどすんなりと理解できます。。。同時にDEATH編からは、監督がファンを信頼していることも伺えます。これはただのダイジェストではなくシリーズをバラバラに分解して再構築したものであり、ワンシーンを見ただけでどのエピソードからの出展であるかがピンとくるようなレベルの高い観客のみを想定した作りになっています。多くのファンはそのレベルに達しているはずだと監督は考えていたようです。
[DVD(邦画)] 7点(2010-06-20 20:47:37)(良:1票)
132.  暗殺者
ウォシャウスキー兄弟がオリジナルを作り、それをブライアン・ヘルゲランドが手直ししたという、今となっては驚くようなメンバーによって書かれた脚本はかなり魅力的です。ただドンパチ撃ち合うだけのアクションではなく、タクシー車内の防弾ガラスを挟んでの銃撃戦や、部屋にある日用品を利用したマンション室内での銃撃戦など、すべての見せ場には他の映画にはない一工夫がなされており、なかなか丁寧に考えられています。暗殺者という泥臭そうな仕事でありながら、当時まだ珍しかったEメールによってその指示がなされるというアイデアはウォシャウスキー兄弟ならではですが、いくつもの修羅場をくぐりぬけてきたベテラン暗殺者が、パソコンの前でぶつくさ文句言いながら愛想のいい返信をする辺りの捻り方もなかなか面白いと思いました。彼と組むこととなる女性ハッカーのキャラクターもよく出来ています。隣人の生活を覗き見ることを趣味としており、唯一の生き甲斐はネコを溺愛することというかなり危ない人なのですが、そんなエキセントリックな彼女が魅力的に描けているというギリギリのバランス感覚は、やはり脚本家がうまかったおかげでしょう。。。残念だったのは、新人脚本家達によるエッジの立った脚本を任されたベテラン監督の腕前が、あまりに安定しすぎていたことでしょうか。脚本のとんがった部分のほとんどが監督の安定した手腕のために丸く削られてしまい、人物像の作り込みや設定の面白さがほとんど伝わってきません。中年のベテラン暗殺者と若い女性ハッカーという、特殊な専門能力は持つものの社会性ゼロの二人が、お互いに弱みを補完しあいながら危機を乗り切ることが物語の骨子であったはずなのに、二人の人間的な弱みの描写が決定的に欠けているため、よくあるバディ映画にしか見えません。二人とも、暗殺者やハッカーであることを除けば常識的な普通の人にしか見えないのです。二人の病的な部分や、人間的な衝突をもっと描くべきでした(ブライアン・ヘルゲランドが参加している以上、オリジナルの脚本にはそのような描写があったはず)。そこに来て、アントニオ・バンデラス演じる明らかに危ない若手暗殺者のキャラだけが異常に立っており、この辺りのバランスの悪さも映画の出来を残念なものにしています。
[DVD(字幕)] 5点(2010-05-26 22:19:41)
133.  エニイ・ギブン・サンデー
オリバー・ストーン監督とあってはアメフト界の内幕を暴くような作品になるのかと思いきや、なんと直球勝負のスポ根映画でした(DVDジャケットに書いてあった「大逆転の謀略!!」なんてものは一切出てきません)。21世紀に入ってからはすっかり腕前の鈍った感のあるストーンですが、本作では圧倒的な演出力を披露。そのビジュアルはアメフトの迫力を見事に表現しているし、2時間31分の長丁場にも関わらず中弛みなしの熱い熱いドラマは見ごたえ十分です。私はアメフトのルールにそれほど詳しくないのですが、そんな私でも十分に楽しめる仕上がりになっているのですから、余程よく出来た映画なのでしょう。選手達の一挙手一投足がスローモーションで映し出され、「この一撃で勝つ!」というみんなの思いがボールに託されるラスト10秒はスポーツ映画の定番ですが、そんなお決まりのクライマックスをこの映画は血がたぎるような名場面にしてみせます。この辺りの演出の巧さは本当に突出しています。キャスティングも見事なもので、アル・パチーノやジェームズ・ウッズといった定評あるベテランをいとも簡単に使いこなしてみせる一方で、映画への出演経験のほとんどなかったジェイミー・フォックスを物語の中心に据え、10年以上キャリアが低迷し忘れ去られていたデニス・クェイドを掘り起こし、当時はお人形さん扱いだったキャメロン・ディアスに演技力が要求される役を任せています。キャメロン・ディアスについては、すべての出演作中本作がもっとも彼女を美人に撮影しているし、同時に「こんなに演技力あったの?」と驚かされました。俳優の魅力や才能を引き出すことも監督の重要な仕事だとすれば、本作でのオリバー・ストーンの仕事は百点満点だったと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2010-05-26 21:40:15)
134.  氷の微笑 《ネタバレ》 
中学時代に見た時にはエロしか印象に残らず、どんな話だったかはまるで覚えていなかったのですが、あらためて見るとかなり面白い映画でした。史上最高額で落札されたという脚本の出来はさすがのもので、前半は完全にノーマークだったジーン・トリプルホーンが後半にキーパーソンとなってくるという構成は、サスペンス映画としてなかなか巧いのではないでしょうか。キャサリン・トラメルという強烈な人物はよく作り込まれているし、これに対するニック・カラン刑事も一筋縄ではいかない人物像で、魅力的なキャラクターに溢れています。さらに、この脚本を引き受けたのがポール・バーホーベンであったことも幸運でした。この映画の要は言うまでもなくキャサリン・トラメルですが、このエキセントリックな人物を描き切るのは並みの監督では難しいところだと思います。「訳の分からん魅力を放つ悪人」を描ける監督というのはそう多くありません。そこにきて、バーホーベンは当時無名に等しかったシャロン・ストーンを見つけ出し、キャサリンという人物を完全に作り上げてしまったのだから驚異的な仕事をしたと言えます。シャロン・ストーンの後の出演作を見ても彼女の強烈な個性を活かせている作品は本作が唯一であり、バーホーベンの監督としてのカンや手腕は大いに評価すべきでしょう。さらに、その相手役に演技の出来る大スター、マイケル・ダグラスを持ってくるという卒のないキャスティングも絶妙です。ストーリーテリングも巧いもので、前半でキャサリンの怪しい魅力をじっくりと見せつつ、後半謎解きが急展開を迎える辺りからはアクション映画並みのテンションを作ってくるという緩急の付け方は本当に手慣れています。エロ以外にも見るべきところの多い作品だと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2010-05-25 20:52:30)
135.  ストレンジ・デイズ/1999年12月31日 《ネタバレ》 
今年の賞レースを盛り上げているジェームズ・キャメロンとキャスリン・ビグローが夫婦の頃に製作した作品ですが、このネタで145分はちょっと長すぎ。もっとコンパクトにまとめるべきでした。トム・サイズモアが犯人でしたという最後のドンデンなどはまったくの不要で、ドンデンに対する驚きよりも、「そんなバカな」という落胆が先に来ました。あの一歩手前で止めておけば、物語にムリは少なくなったし、上映時間もよりスッキリしたはずです。また、元警官とは思えないほど弱々しかったレイフ・ファインズがクライマックスで突然強くなったり、殺人の揉み消しをしようと主人公達を追ってるはずの警官が群衆に向けて発砲をはじめたりと、それまで丁寧に作り上げてきた物語がクライマックスで一気に引っ繰り返されていく辺りも理解に苦しみました。そして本作最大の問題はジュリエット・ルイス演じるフェイスのキャラクターで、彼女の行動原理がまったく理解不能。キャメロンもビグローもこのキャラクターに感情移入して作っていないのが丸出しで、かなり適当な描写がなされています。救いはこの役柄を引き受けたのがジュリエット・ルイスだったことで、カリスマ女優だった彼女の魅力と演技力で何とか持ち堪えています。「ナチュラル・ボーン・キラーズ」ですらヌードを披露しなかった彼女が本作では脱ぎまくって大熱演。ありがたい熱演ではありますが、同時にもったいない熱演でした。脱ぎどころを完全に間違えています。。。と、アラの目立つ作品なのですが、才能あるクリエイターの作品だけあって良い部分も多くあります。ありがちな未来像ながら社会・風俗はよく作り込まれているし、ビグローのアクション演出は相変わらずキレと美しさがあります。アンジェラ・バセットがいよいよ追い込まれるクライマックスのアクションなどはキャメロンらしい興奮の展開を見せてくれます。本来、ポテンシャルはかなり高い作品なのです。だからこそ、前述の欠点が悔やまれるところです。
[DVD(吹替)] 6点(2010-02-21 19:57:42)
136.  ペイバック
身震いするほどかっこいいイントロにはじまって、すべてを失ったヤクザが大暴れをはじめる前半部分は最高。ポーターを裏切った後悔からヤク中になった妻は、死んだと思っていた夫が生きて帰ってきたショックから致死量のクスリをやって命を落とします。そして、妻の死体と一晩添い寝したポーターは復讐を決意。「俺はもう生きてる必要がないんだ」と言わんばかりに、どんなヤバイ連中を相手にしてもまったくひるまず、ただひたすら復讐のために突き進む。これぞ復讐映画の醍醐味です。これまで悪人役をほとんどやってこなかったメル・ギブソンが、恐ろしいほどよくハマっています。そして、仇役のグレッグ・ヘンリーはそれ以上のハマり方で、卑怯で変態で恐ろしくむかつく小物ヤクザを完璧に熱演。画面に映るだけで心底イラっとくる素晴らしい悪役ぶりは、仮に作品自体が評価されていればオスカー候補にでもなりえたのではと思うほどです。しかし、グレッグ・ヘンリーを殺して以降は、作品がガラっと変わってしまいます。映画の軸が復讐からロマンスへと移り、前半の殺伐とした空気が突然なくなります。ポーターなどまるで別人で、「リーサル・ウェポン」のマーティン・リッグスのような人格になってしまいます。アクションも突如として派手になり、爆破あり、銃撃ありの普通のアクション映画に。当時流行っていた二丁拳銃まで披露するサービスぶりで、もはや同一の映画とは思えないほど。これは製作時のゴタゴタが原因で、ブライアン・ヘルゲランドの脚本が気に入らなかったメル・ギブソンが「マッドマックス2」のテリー・ヘイズを呼び寄せて脚本を書き変え、実質的に監督権も奪ってしまったため、前半と後半でまったく別の映画になってしまったのです。そのために発生したのが「7万ドル」問題で、どれだけ金額を吊り上げられても7万ドルに固執するポーターがバカにしか見えないという問題は、後半の方向転換により発生しました。前半における「7万ドル」はあくまで復讐の口実のような意味合いで使われていたのに対し(だから金額は重要ではなかった)、復讐の意味合いが薄まった後半においても7万ドルという数字にこだわると、妙な違和感が残ったのです。。。前半の殺伐とした復讐劇のまま続けていればバイオレンスの佳作にはなったはずなのに、どうして後半を変えてしまったのか、不思議で仕方ありません。
[DVD(吹替)] 7点(2010-02-19 22:29:55)
137.  レインメーカー
豪華メンバーの割にほぼ忘れ去られた感のある本作ですが、私は「ゴッドファーザー」や「地獄の黙示録」よりも好きです。本作のような小さめの映画をきっちり面白く作ってみせることは、重厚な大作以上にコッポラの映画監督としての腕前を表しているように思います。DVに白血病とかなり重いテーマを扱う一方で、新米弁護士の爽やかな成長物語や恋愛要素をぶち込み、かつ両者を水と油にしていないのですから、並みの監督の仕事ではありません。大岡越前か、遠山の金さんかというダニー・グローバー判事の登場シーンや、ジョン・ボイト弁護士からの嫌がらせ、有力な証言者を捕まえてきたマット・デイモンの反撃等々、娯楽的な盛り上げ方も手慣れたもので、最後まできっちり楽しませてくれます。特に、困り果てたところでミッキー・ロークから助けが入る件は最高でした。クライマックス直前に意外な支援が入ることは娯楽映画の基本中の基本なのですが、こうした基本をきっちり見せてくれる映画って実はあまり多くありません。また適材適所のキャスティングもバッチリ決まっており、役者選びのセンスもさすがです。若手でもっとも注目されていたマット・デイモンとクレア・デーンズをカップルにする一方で、ミッキー・ロークやロイ・シャイダーなど「あの人は今」状態の俳優を引っ張り出して一緒に演技させる。枯れたとはいえ、かつてはハリウッドの頂点にいた彼らの存在感は抜群で、作品の重要なアクセントになっています。さらにダニー・デビート、ジョン・ボイト、ダニー・グローバーといった安定した俳優で彼らをグルっと取り囲み、鉄壁の布陣を作り上げています。ここまで見事に俳優を使いこなしている映画って他にはありません。まさに教科書のような映画です。
[DVD(吹替)] 8点(2010-02-14 20:38:03)(良:1票)
138.  今そこにある危機
脚本が弱かった「パトリオット・ゲーム」の反省からか、スティーブン・ザイリアンとジョン・ミリアスというトップクラスの脚本家を二人も配置したおかげで、脚本の出来は格段に上がっています。登場人物が多く、複雑な話がいくつも同時進行で展開されるというややこしい物語ながら、驚くほど綺麗にまとまっています。俳優陣も細かい役に至るまで全員よくハマっており、キャスティング面も上々。問題なのは監督の演出力が追い付いていないことで、脚本を追いかけることにいっぱいいっぱいで、色気やこだわりのない作りとなっています。特にクライマックスのアクションは酷いもので、何の緊張感もなくダラダラと撃ち合い、殴り合い、本当に退屈でした。52歳のハリソン・フォードが体を張ったアクションを披露しているものの、あまりに監督がダメダメなので頑張り損になっています。「パトリオット・ゲーム」のアクションも酷いものでしたが、その反省がまったくなされていません。
[DVD(字幕)] 5点(2010-02-07 23:35:16)
139.  パトリオット・ゲーム
序盤は素晴らしかったんですよ。余計な説明をテキパキと片付け、一気に襲撃へと持って行くテンポの良さ。主演がアレック・ボールドウィンからハリソン・フォードにグレードアップしたことで画面に華が出たし、初の大作に抜擢されたショーン・ビーンも、登場した瞬間に悪のカリスマとしての魅力をムンムンに漂わせます。しかし、本筋に入ると物語は一気に失速し、最後までダメダメなままでした。最大の問題は、テロリストの行動や警察の対応の描写があまりに雑だったことです。ロイヤル・ファミリーの一員を狙い、殺す寸前までいった重要犯罪人がいとも簡単に脱走してしまうわ、楽々と国外へ脱出し、平然とアメリカに入国できてしまうわというお手軽さ。そして、元CIAにして海軍兵学校の教官にして、ロイヤルファミリーを救った英雄として新聞の一面を飾った重要人物であるライアンに難なく接近してしまえる身の軽さ。ジャック・ライアンシリーズに求められることは知的さの延長にあるアクションなのですが、肝心の論理の部分があまりに雑すぎます。原作を有する作品においては、生身の役者に演じさせ、時間軸などがより立体的に伝わる媒体にシフトした結果として、本で読む分には感じなかった不自然さや論理の不整合性などが往々にして生じるものです。それをうまく料理するのが脚本家や監督の仕事なのですが、本作はそうした映画向けの補強作業を怠っているため、ご都合主義が横行する雑なアクション映画に終わっています。それに加えて見せ場の作り方もイマイチで、ホームパーティーを襲われるラストのアクションなどは、見づらいし、つまらないし、無駄に長いしと良いとこなしでした。一方、中盤において特殊部隊が砂漠のアジトに襲撃をかけるシーンこそがジャック・ライアンに期待される見せ場だったのですが、こういうものに限ってほとんど盛り上げずにスルーしてしまうという選択のまずさ。これは完全に失敗作です。不思議なことは、当時無名だったフィリップ・ノイスが、ヒット作「レッド・オクトーバーを追え」の続編をなぜ任されることになったのか?そして本作を失敗させたにも関わらず、なぜ「今そこにある危機」で続投できたのか?トム・クランシーは「せっかくの原作をB級アクションにしやがった」と嫌っているようですが。
[DVD(字幕)] 3点(2010-02-06 21:38:14)
140.  ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク
カラーパープルで挫折を味わった後、スピルバーグは自身のキャリアを意識的にコントロールするようになりました。勝負作に挑む時には、自身の才能をもっとも活かせる娯楽作を抱き合わせて保険をかけるようになったのです。この方針に従い、シンドラーのリストにはジュラシック・パーク、ミュンヘンには宇宙戦争、そしてプライベート・ライアンには本作ロストワールドが抱き合わせで製作されました。特にプライベート・ライアンは同時期にアミスタッドもあって3本連続撮影という尋常ではないスケジュールで製作されているため、その中で最もお仕事感の強いロストワールドの品質が悪くなってしまったのも、当然と言えば当然の話です。ここまで登場人物に感情移入できない映画も珍しく、「恐竜が出てくればそれでいい」という製作陣の投げやりな姿勢が丸見えになっています。第一作当時、スピルバーグが「もっとも気に入っている」と言っていたマルコム博士がまるで別人になっているのが良い証拠。荒れた私生活を送る変人だったマルコム博士が、続編では子供と彼女に振り回される常識人になっていて、むしろ対照的だったグラント博士に近い人格となっています。好みのキャラが続編で別人格になっていて黙っている監督がどこにいるでしょうか。スピルバーグが脚本にほとんどダメを出さず、やっつけで撮影したことが伺えます。その他の登場人物はさらに酷く、ギャンギャン騒いで目障りなだけのジュリアン・ムーア、恐竜を檻から出して大勢の死人を出す直接の原因を作りながら、なお綺麗事を言うのをやめないヴィンス・ヴォーン、ただひたすら鬱陶しいマルコムの娘などは、まとめてT-REXに食われて欲しいと願うほどでした。あまりにムカつき過ぎて、こんなありえないキャラクターを出すには、何か伝えたいメッセージでもあったのではと裏の意味を考えてしまったほどです。目的が正しければ他人に迷惑かけてもかまわないと考えてる連中はロクなもんじゃない。「自分達が自然を守る」と考えるのは、「自然をコントロールできる」と思ってる連中と根は変わらないじゃないかと。恐竜をどうする、自然をどうすると上から目線で島を眺めず、このサバイバルは人と恐竜との殺し合いであるとの覚悟を決めているローランドが本作中唯一かっこよく描かれているのも、そんなスピなりの思想を反映しているような気もします。私の考えすぎのような気もします。
[レーザーディスク(字幕)] 2点(2009-12-30 14:26:33)(良:1票)
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