121. 真夜中の処刑ゲーム
《ネタバレ》 これはいいなあ。■なし崩し的にアパートを舞台にした攻城戦(Siege)になるのだけど、敵役の副リーダー格(グース)の、怒りに任せて奥さんの陶芸の作品を壊すクズっぷりや、味方の副リーダー格(チェスター)の、防犯のために吊り上げたバイクと一緒に自分も釣り上がる間抜けっぷりを、物語最初に見ているものだから。■見たこともない俳優さんであることも相まって、なんとなく一軍同士の戦いではなく、垢抜けないもの同士の戦いという風情があり。■でも、そこがたまらなくいいです。物語はどんどん凄惨になるんだけど、なんか人間臭い。■そんなことも計算済みなんじゃないかと思えるくらいしっかりしたシナリオ。■カッコ悪い邦題だとも思いますが、もしかしたらこれが正解なのかもしれないとも思ってしまいます。■作中のニュース番組に挿入されるインターブロック社の床石のCM、伏線でもなんでもないのがスゴイ。ていうか、ちょくちょく何となく変なんですよ。それが妙な味がある。 [DVD(字幕)] 9点(2022-12-01 21:54:55)(良:1票) |
122. 決戦は日曜日
《ネタバレ》 ■前半、公示日の前までのくだり。新人候補・川島有美の不慣れな感じや空回りするシーンが展開されるのだが、音楽を抑えた演出だからか、ドキュメンタリー的でよりいたたまれない。■しかし、物語が進むほど、本作の登場人物のなかで、政治家にふさわしいのは川島有美氏しかいないと気づくのだ。■本作の「選挙指導」のスタッフである渡辺強氏は、選挙コンサルタント等として20年以上の実績をもち、公職選挙法違反の逮捕歴もある強者。■リベラル候補の選挙活動や泡沫候補のそれはさまざまな映画(ドキュメンタリーだけど)で見てきたが、与党候補のものは初めて見たな。■毎度、なんでこんな選挙結果になるのってのがよく分かる(フィクション)映画です。■勝手知ったる魑魅魍魎がもうすぐその扉をあける、というところで終幕したのはカッコいい。シビれた。■観終わって時間が経つにつれ、だんだんこれは、相当いいぞ。 [DVD(邦画)] 9点(2022-11-28 15:10:49)(良:1票) |
123. 東京ウィンドオーケストラ
《ネタバレ》 曰く言いがたい映画でした。本作のツイッターでは、「ハートウォーミングコメディ」として紹介されていますが、そんな映画か?ユーモアを感じたり、和んだりするシーンあったか?■仕事に対する気持ちがちっともない職員(ヒロイン)が、巻き起こしたミスを隠蔽しようとして、どんどん事態を悪化させていく蟻地獄ドラマ。ヒロインがその過程でいろんなことを全方位的(田舎の人、役場で働く人、ガチなクラシックファン他)にじんわりディスリまくるもんだから暗い気持ちになっていく。■一曲演奏できて、イヤな課長に一杯食わせて、それで終幕に仕立てようとしているが、観ているこっちとしては別にだからどうしたという気持ちなんだよね。課長との関係なんて、とうに終わっていたものだろう。■最後の独白が象徴的だが、タカくくっちゃてて、世間へのリスペストがない一作。お前なんか、なれるか。屋久杉に。■年寄り臭くて、すみません。 [DVD(邦画)] 2点(2022-11-23 21:05:31) |
124. シン・ウルトラマン
《ネタバレ》 「ウルトラセブン」と「空想科学読本」と「とり・みき先生のSFマンガ」を混ぜたような「シン・ウルトラマン」。雑なCGのようなシーン(直立して話したりするウルトラマンなど)や、大事件が起きているのになんかこじんまりとした界隈で話が進んだりするのは、それがウルトラマンらしい趣きなんだと思っています。つまり、あえてそうしていると。よかった。【追記】もしかして、ブラウン管で見るのが最適な映画だったりして(困難)。テレビの画面にこそ、なじむんじゃないか。 [インターネット(邦画)] 9点(2022-11-18 20:43:28)(良:1票) |
125. パージ:アナーキー
《ネタバレ》 パージの世界はもう、身もふたもなくうんざりするような世界だから、ターニャの家で起きたこと(犯罪白書によれば、殺人の4割は身内)やエヴァの父親の取った行動がむしろしっくりくるワケで。■だから、裏切られた後も4人を護るレオにも、またいつまでも背信をしない5人組にも、何か納得がいかないものを抱え続けるわけで。■それ故、終幕近く、「英雄はナシだ」のシーンには血圧が上がったんだけど。しかし、その後が…。■腹くくって、極バッドエンドにしろよ、と思っているオレは、今日は早めに寝た方がいいかもしれない。 [DVD(字幕)] 4点(2022-10-31 19:39:41)(笑:1票) |
126. そして、バトンは渡された
《ネタバレ》 ■タイトルの意味がわかったとき、かなり高揚したのですが、ラスト近くで割と直接的に言ってしまうのね。■梨花の優子への愛情の質量が、ちょっと理解しがたい。水戸の口から語られた理由があるものの。梨花と幼い「みぃたん」との特別なエピソードがあれば、すんなり飲み込めたんでしょうけど。■親の子であったり、子の親であったりした自分のことを顧みて、親って、ホントもっとやっかいなもんだったんだけどなあって思うんだけど。■とはいえ、親にならなければ分からないこともあったかも知れない、とこの映画をみて思い至りました。ただもう、自分以外のひとを大事に思う気持ちとか行動とか、ねえ。■バージンロードを歩く前に嗚咽する田中圭と一緒にオレも、まんまと、泣かされていましたよ。■最新型の浪花節なんだと思います。 [DVD(邦画)] 8点(2022-10-29 15:22:27) |
127. トレマーズ
《ネタバレ》 地下から怪物が襲ってくるという趣向は、ワタシ初めてだったかも。お医者の先生がやられてしまうシーンでは、ビクッとしてしまいました。①複数いる、②意外とやっつけられる、③けっこう頭が良いという設定も好き。だけど、ドラマパートが弱い。怪物に対して、すぐに一致団結してますけど、もうちょっと面倒な要素(うらぎりとか)があっても良かったかも。■「たかおに」とか思い出しながら観てました。■ビクスビーの町まで、どうにか逃げおおせるんだけど、町では怪物によってもっとヒドいことになってるエンディングを予想していました。 [DVD(字幕)] 5点(2022-10-23 11:36:54) |
128. カナリア
《ネタバレ》 わからなかったです。光一もいわゆる2世信者なのだと思うのだが、それであればあんな環境に落とし込んだ母親(道子)のことを、その死により白髪になるほど慕い続けるとは思えない。ガチ信者の光一を引き取らず、朝子だけでも教団から引き剥がした祖父の判断が、そのことに関しては間違ってたとは思わない。祖父は道子の犯行により、住む家までも追われているのだ。祖父の横暴が道子を宗教に追いやったような描写があるものの、光一が満足に道子を扶養できると思えず、子ども3人でサバイバルに挑もうとしている終幕には、なんのカタルシスも覚えない。ただ不安なだけなんだ。 [DVD(字幕)] 2点(2022-10-12 21:49:44) |
129. トップガン マーヴェリック
《ネタバレ》 脱出したルースターに駆け寄るときの、イーサン・ハント(@ミッション・インポッシブル)走り。カワサキのバイクにノーヘルで乗って、フライトジャケットにジーンズ。トム・クルーズがいつものことをやっているという印象。■マーヴェリックという人間が分からないんだ。優秀な海軍パイロットwith Loveという人格一辺倒のように見える。オッサンががんばる映画は大概良いんだけど、50は過ぎた設定なんだから、50過ぎのなりの、偏屈な哲学とか、屈折した韜晦とか、狸おやじっぷりとかも、にじませて欲しい。何で、そんなに、さわやかなんだ。■「この年齢なのに、この身体能力!」ということではなく、年相応の魅力が欲しいので、教官として赴任すると分かったときには、ヨッシャと思いましたが、結局自分がキャプテンなのね。ふーん。□わかってます。偏屈なのはワタシだってことは。 [映画館(字幕)] 5点(2022-10-09 07:34:33)(良:2票) |
130. ポセイドン・アドベンチャー(1972)
《ネタバレ》 再見。めちゃくちゃ面白い。一番好きなシーンは、ベル夫人の潜水のシーン。胸のペンダントに触り出した時には、ああ、またビビり出していると思ったのですが、静かに覚悟を決めていたのですね。かっこいい。胸が熱くなりました。【追記】これで、ギリとはいえ2時間切っているのか、という驚きもあるな。もっと長い映画観たようだ。 [DVD(字幕)] 9点(2022-10-07 18:59:10)(良:2票) |
131. 楢山節考(1983)
《ネタバレ》 こんなプリミティヴな社会はイヤだなあと思ってみてましたが、だんだんと今の世の中と本質的には大差ないような気もしてくる。族長の悲哀というか、忍耐一本槍じゃないですか。辰平が背負っていたのは、母親だけじゃなくて、「根っこ」の一族郎党でしたもんね。対比されるのは、そこから逃げ出した父親。■「楢山まいり」の途中、一度母を見失うくだりでシビれた。まるで、いままで悪夢を見ていたとでもいいたいかのよう。■ルールが共有され、きちんと適用されるという意味では、今よりもマシな部分もあるんじゃないか。緊急時対応(馬の背から帰ってきても可)もあるのだしね。 [DVD(邦画)] 8点(2022-09-26 20:52:48) |
132. 牛久
《ネタバレ》 この映画を世に問うことでトーマス監督は何らかの刑事罰を受ける恐れ(それを狙っているようにも思えるが)があり、実名で登場する収容者の皆さんも、何らかのペナルティが予想される告発の映画であるにも関わらず。鑑賞したワタシのインパクトほどの波風は、世間にはそんなには立ってなくて。この程度の映画なら、ことさら騒ぐでもなく、なかったように処理できるとでもいいたげな。イヤな世の中になったもんです。おそらくこの映画には、B面があって。入管施設で働く人たちは、こんな収容者処遇のやり方にどれだけ誇りを傷つけられているだろうと思って。見たところ、若い職員もいるじゃないか。どなたか観ていただいて、感想を聞かせてほしいです。 [映画館(字幕)] 10点(2022-08-29 19:39:57) |
133. 教育と愛国
《ネタバレ》 斉加監督は、めちゃめちゃ怒っている。本作も、最近はやりの喜劇風ドキュメンタリーに仕上げようと思えば、そんな演出もあったはず。インタビュイーが素に戻った瞬間まで、油断するまでの尺を素材として使ったり。「歴史から学ぶものはない」とおっしゃった東大の歴史学者なんて、さわり方次第でどんな面白反応の引き出せたろうと思うが、そんなことはしない。混ぜっ返してアイマイにするのがイヤだから。また、冒頭の「正しいあいさつ」の問題も、なぜその答えが正解なのかという当局(?)の見解を示せば、映画の観客には親切だったと思うが、そんなことはしない。観客が自分で考えたり、解説を探すべきだから。硬派なドキュメンタリーでしたよ。現在進行中の、いわゆる「宗教と政治」問題で登場する政治家が、バンバン出てきます。どんな問題も、根っこは同じじゃないか。■最後に、平井美津子先生は本当にすばらしい。先生の教え子は幸せです。【追記】あいさつ問題。語先後礼、というそうです。理由を知ってみれば、確かにそっちの方が美しいかも。うーん。 [映画館(邦画)] 8点(2022-08-24 15:44:54) |
134. フラッド
《ネタバレ》 映画の最初から最後まで雨降りっぱなし。演者もほとんど水浸し。よくこんなの撮ったなというのが第一印象。保安官が突然悪者になってから、なんか物語が混沌というかグダグダになったなあとも思いましたが、よく最後までやりきったなあと、まあ感心しました。登場した時には、”きっと最初に死ぬ要員”だと思ったトムがヒーローだった意外性。まあ、面白かったです。しかし。終幕後につけたテレビのワイドショー。最近の全国的な我が国の大雨災害の様子。ああ。洪水って、こういう泥とかゴミとかが一緒くたに流れてくることだよなあって。もちろん彼我の国の河川の状況が全然違うんでしょうけど。なんか、急に冷めた感じになってしまいました。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-08-15 15:21:11) |
135. プラットフォーム
《ネタバレ》 階級闘争の暗喩だったのでしょうか。なんかピンとこない。■solidaridadという言葉が「連帯感」と訳されてたと思いますが、やっぱりピンとこない。しばらく前からよく聞く「絆」とかでどうでしょうか。「絆を利用している」とかのセリフだと、なんか腑に落ちそうです。「絆」って言葉、あんまり好きじゃないんで(意地悪)。■暴力シーンは当方ある程度免疫ができていますが、食べ物を汚らしく扱うシーンには耐性がなく、生理的にイヤ。やっぱりオラはこの映画好きじゃないなあ。■「子供が希望」みたいなラストシーンも、散々えげつないくせして、最後だけなんの帳尻合わせだよという気分です。 [インターネット(字幕)] 3点(2022-08-14 22:03:04) |
136. デッドゾーン
《ネタバレ》 ラストシーン。サラと抱き合ったとき、サラについての知るべきではなかった未来、または過去を、瀕死の状態で見てしまうという後味の悪い終幕はどうでしょうか?あっさり終わっちゃったときに、「なんでだ!」と声をだしてしまったオレは今、くたびれているかも知れない。でも、作中、サラに対して一度理解できない感じがありましたよね。それが、伏線かとも思ったもので。クリストファー・ウォーケンのナイーブな感じはよかったです。 [DVD(字幕)] 6点(2022-07-31 13:30:40) |
137. サブウェイ・パニック
《ネタバレ》 ウォルター・マッソーの役を田村正和がやれば、古畑任三郎の特別編みたいだと思いましたが、3rdシーズンの最終話(最も危険なゲーム・犯人江口洋介)がまさにそんな感じでしたもんね。体調のすぐれない犯人というのも、味があっていいなあと思っていたら、それがキーになるのですね。三谷幸喜テイストの好きなパニック映画です。【追記】皆さんのレビューをみてから、もう一度ラストシーンを見返しました。「なんだ、オマエかよ」って顔の代表みたいな表情です。なんか絵画的、とすら思います。 [DVD(字幕)] 7点(2022-07-26 21:14:07) |
138. 不意打ち
《ネタバレ》 面白い。やってくる悪党が、全く魅力を感じないというか、うんざりするような奴らなのがすごい。毒親設定、いなくなったセガレの安否を明らかにしないのもすごい。非常ベルを鳴らそうと、大声で叫ぼうと無反応だった世間が、自分の交通の妨げになるような事象が発生するとワラワラ集まってくるところもすごい。エレベーターからの脱出方法が、また荒っぽいのがすごい。どんどんすごいんだけど、ホントに嫌な映画だったよ。気持ちを寄せられるような人物が一人もいない。不意打ちって邦題が不明。 [DVD(字幕)] 7点(2022-07-23 14:49:27) |
139. 突破口!
《ネタバレ》 気になるところはあるけれど(①大事にしてた奥さんの止血を何故しないのか、②ラストシーン。周到なヴァリックが、なぜ自分の名前のついたつなぎを残していくのだ、足がつくだろ、③敵役のモリーががさつで魅力がない)、それを上回る良さがあります。ヴァリックに大きなオチはないんだけれど、追っ手が最速で迫ってくるところが好き。渋めのクライムアクションと思わせて、農薬散布用の飛行機対自動車なんてのもやるのね。トレーラーハウスのとなりに住んでるおばちゃんが良かった。乳製品を取りに家を出たら…のシーンがいいです。 [DVD(字幕)] 7点(2022-07-16 11:31:51) |
140. ジョジョ・ラビット
《ネタバレ》 なんかぼんやりした変な映画だなあと鑑賞しておりましたが、母親の死と市街戦のシーンで、物語とジョジョ自身の輪郭がはっきりする。これがしたかったのね、とようやく気づくのですが、この趣向(いきなりシリアス)はあんまり好きではない。内なるアドルフとの対決もなんか消化不良。最後のダンスで会話するかのシーンは好きです。こんなダンスができるのなら、それが疑似姉弟であろうとも、愛し合っていてはいたのだろう。お腹に蝶がいるって、ものすごい納得ワードだったんですが、オリジナルではなく、ヨーロッパじゃ一般的な比喩のよう。 [DVD(字幕)] 6点(2022-07-11 20:04:20) |