121. ブラック・スワン
《ネタバレ》 あまり映画に意味とかテーマ性とかを求める方ではないのだが(面白けりゃいいじゃん!)、本作の鑑賞後に思ったことは、「で、結局何が言いたかったの?」である。要は舞台の主役を射止めた神経症気味のバレリーナが発狂して××するまでを描いたものだが、最後に「パーフェクト」とか言われてもねぇ…。この内容を扱うにしては、ダーレン・アロノフスキー監督はまとも過ぎるのではないかと思う。『レクイエム・フォー・ドリーム』を観た観客のほとんどは「麻薬って怖いね…」と思う筈だが、それこそがこの監督がまともである証だろう。本当はもっと狂った人が監督して、もっと狂った女優を起用すべきである。そういった観点からすれば、イザベル・アジャーニ×アンジェイ・ズラウスキー監督の『ポゼッション』は映画史上類を見ない狂人映画である。あれに比べれば本作は可愛いもの。 [映画館(字幕)] 6点(2012-02-04 14:35:19) |
122. ロボジー
《ネタバレ》 一緒に観に行った友人は、「微妙だな…」と言っていた。しかし、デビュー作の『裸足のピクニック』から矢口監督の作品を観ている自分にとっては、かなりツボだった(作中にわざわざ嘔吐シーンを入れる監督は信用できる)。正直、『ウォーターボーイズ』以降の作品は「らしくない」という印象だったが、今回はまさに本領発揮、矢口節全開だ。ロボットの中に爺さんを入れてしまおうという、そもそもの発想自体がいい加減。その爺さんを演じるのがミッキー・カーチス。周囲からは認知症と疑われ、家族からも若干疎まれ気味の孤独な老人だ。しかし、そんな彼が、ロボットを「演じる」ことで、ある種の生きがいを見出していく様は感動的でさえある。彼と共犯関係になる三人組のロボット開発者たち、そしてロボットに恋する女子大生。みんな不器用で孤独で、限りなく優しい。久し振りに良質の日本映画を観た。 [映画館(邦画)] 8点(2012-01-20 00:42:01)(良:2票) |
123. ジュリエットからの手紙
《ネタバレ》 あまり恋愛映画は観ない方なのだが、ここでの評価が高いので鑑賞。確かにヴァネッサ・レッドグレーブの「初恋の人探し」のくだりは、名女優の貫禄と相俟って素晴らしい。しかし、肝心のヒロインの恋愛模様が、「婚約者がいる身でありながら、旅先で会ったちょっといい男に恋をする」という手垢のついたネタでガッカリ…。そのために婚約者を自己中男に設定したのでは?と勘繰ってしまう。しかし、イタリアの情景と陽気なイタリアーノの人柄には心がほだされる。 [DVD(字幕)] 7点(2012-01-16 22:36:38) |
124. まほろ駅前多田便利軒
現代版「傷だらけの天使」のようなノリのバディ・ムービー。『探偵はBARにいる』でもそうだったが、松田龍平はこの手の相棒役をやるとハマる。 [DVD(邦画)] 7点(2012-01-16 22:31:00) |
125. スーパー!
《ネタバレ》 おっさん版『キック・アス』という感じ。しかし、未成年者に銃を持たせたあちらに対し、本作ではきちんと成人した男女がギャング相手に奮闘するという内容で、そこらへんのモラルは守っている(むろん本作の主人公は、トラビス並みの狂人であることに間違いはないが、映画的には遥かにこちらの方が正しい)。また、無自覚に殺人を楽しむエレン・ペイジ(いい女優さんだよな)の顛末は当然の結果であり、この作品に暴力礼賛というメッセージは感じられなかった。それにしても、この手の映画にケビン・ベーコンが出ていると、それだけで得した気分になってしまう(笑) [DVD(吹替)] 7点(2012-01-09 22:48:05) |
126. モールス
《ネタバレ》 オリジナルの『ぼくのエリ』には満点をつけている。今回のリメイクも非常に楽しみにしていたし、おおまかなラインはオリジナルにほぼ忠実に作られている。ヒロインが『キック・アス』のクロエ・モレッツということで、美少女度も高い。しかし…何故だろう、オリジナルを観た時に感じた、胸を締め付けられるような切なさが、本作には決定的に欠けているのだ。よって、究極のラブストーリーとして10点評価だったオリジナルに比べ、リメイク版はよく出来たジュブナイル・ホラーという観点で、7点までしかつけられない。 [DVD(吹替)] 7点(2012-01-09 22:34:52)(良:1票) |
127. 世界侵略:ロサンゼルス決戦
《ネタバレ》 現代のハリウッドの映像技術ならば、この程度のことは出来るだろうという想定内の範囲のことしか起こらない。地球外生命体による大規模な侵略というプロットは『インデペンデンス・デイ』や『宇宙戦争』を思わせるが、その文法は『プライベート・ライアン』以降の戦争映画のそれで、終始エイリアンとの白兵戦に描写が絞られている。暴力や戦争に対する鋭い考察なんてものも一切ない。「米軍最高!ヒャッホー!!」という、もろ体育会系のノリ。ミシェル・ロドリゲスが出ていなければ観なかったかな。 [DVD(吹替)] 5点(2012-01-09 22:27:21) |
128. キッズ・オールライト
もっとドタバタコメディを想像していたが、意外とシリアスに家族のあり方を描いており、そこは好みの分かれるところだろう。精子提供者のマーク・ラファロがいかにも軽薄そうなおっさんを好演。娘役のミア・ワシコウスカは『アリス・イン・ワンダーランド』の少女だが、色白の綺麗な子だな~とつくづく思った。もっと映画に出て欲しいものだ。 [DVD(字幕)] 6点(2011-12-22 09:20:11) |
129. トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン
《ネタバレ》 映像10点、ストーリー0点という出来。はっきり言って90分過ぎたあたりからのシカゴ決戦だけを観れば良いと思う。アポロ計画だの新しい彼女だの就職活動だのはどうでも良い。途中ウトウトしてストーリーが判らなくなったが、全く何の問題もなかった。圧倒的なビルの倒壊以上に、脚本が決定的に崩壊している。しかしそれでも良いのだろう。監督がマイケル・ベイなのだから。 [DVD(吹替)] 7点(2011-12-17 19:40:44)(笑:1票) (良:1票) |
130. ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
《ネタバレ》 いつの間にかシリーズも4作目。監督はピクサーアニメのブラッド・バード。実写でもイケルことを証明した。前作に引き続き、サイモン・ペッグが続投してくれたのは嬉しい限り。コメディリリーフとして良い味を出していた。全体的にハラハラドキドキで飽きさせない出来。今回の悪役は核戦争を起こして世界平和を願う(?)というトンデモキャラで、ちょっと昔の007を思い出した。トム・クルーズは若干お年を召した印象で、アクションも疲れ気味か? [映画館(字幕)] 7点(2011-12-16 22:06:50)(良:1票) |
131. マイ・バック・ページ
《ネタバレ》 実体の伴わない「言葉遊び」をしているだけの学生運動家・松ケン、そんな彼の言動に翻弄されるジャーナリスト・妻夫木。やがては時代の波と共にのっぴきならない状況に追い込まれる(あるいは自らはまり込む)彼ら。70年代初頭を生きた二人の若者の苦い青春を描いた、山下監督渾身の一作。ざらついた映像に、当時を再現した美術、衣装、そして脇を固める「大人たち」の自然体の演技は圧巻。当時をよく知らなくても、そのリアルさには目を見張る。虚を突かれた時の松ケンの歪んだ口元が印象的。そして、もちろんラストの妻夫木の涙。あの瞬間のためにそれまでの長い2時間があったのだろう。 [DVD(邦画)] 8点(2011-12-16 21:54:26)(良:1票) |
132. ハンナ
《ネタバレ》 『ラブリーボーン』の愛くるしい幽霊シアーシャ・ローナンが、殺しのテクニックを身につけた殺人少女に変貌。彼女の今後に期待できる。内容は『ニキータ』のようなものか?と思いつつも、父親とCIAの女エージェントの目的がさっぱり判らず、ハンナが『ラン・ローラ・ラン』ばりにただ全速力で突っ走っている印象。もうちょっとハードでストイックな作品を期待していたが、ちょっと当てが外れた。『HANNA』のタイトルが出るオープニングとエンディングは格好良いのだが。 [DVD(吹替)] 6点(2011-12-16 01:10:21) |
133. SUPER8/スーパーエイト(2011)
《ネタバレ》 子供の頃に観ていたらもっと素直に楽しめただろう。自分はスピルバーグの『E.T.』よりも、スティーヴン・キングの『IT』を思い出した。ジュブナイルSFとしてはそれなりに面白いが、皆さん仰っているように、エイリアンに感情移入できないというのがそもそも問題(←人を喰うなよ!)。エンドロールのゾンビ映画がいちばん面白かったというのは何とも皮肉。 [DVD(吹替)] 6点(2011-12-05 21:54:44) |
134. 復讐捜査線
《ネタバレ》 『ワンス・アンド・フォーエバー』を最後に俳優業を退いていた<怒れる男>メル・ギブソンが遂に復活!最愛の娘を奪われた初老の刑事が巨大な陰謀に立ち向かう!監督は『007/カジノ・ロワイヤル』のマーティン・キャンベル!…と、ここまで聞けば、物凄いアクション大作を思い起こさせるが、実のところアクションは控え目、サスペンス・ドラマが主眼になっている。『リーサル・ウェポン』のようなハード・アクションを期待するとガックリ感があるが、命を賭して娘の復讐に燃える男のドラマとしてはかなり見応えがある。また、敵方であるフィクサーの男がかなり良い味を出していた。それにしてもこのダサい邦題は何とかならんのか?『エッジ・オブ・ダークネス』という原題をそのまま使った方が良かったと思う。 [DVD(吹替)] 6点(2011-12-05 21:47:32) |
135. コンテイジョン
《ネタバレ》 95年の『アウトブレイク』はやや大味なサスペンス・アクションという感じだったが、本作はかなりリアルなシュミレーション映画となっている。エンターテインメント性を求めるなら先の『アウトブレイク』を勧めるが、個人的にはじわじわと恐怖が忍び寄ってくる本作の方が好みか。アカデミー賞女優を開巻早々に退場させる(しかも解剖シーンでは頭皮がデロンと剥がれる。ギャ~!!)とは、流石ソダーバーグ。淡々とストーリーが進み、ドキュメンタリータッチなので、観る人によっては退屈と感じるだろうが、『トラフィック』のようなリアル路線が好きならハマれるはず。それにしても、マット・デイモン太ったな(役作りだろうか?)。 [映画館(字幕)] 7点(2011-11-13 22:20:55) |
136. わたしを離さないで
《ネタバレ》 内容をよく知らないで観たのだが、こんなSF的な映画だとは思わなかった。やや突飛な印象を受ける設定だが、この独特の世界観には魅かれるものがある。これはもうひとつの『ブレードランナー』とでも言うべき作品ではないだろうか?レプリカントたちは叛乱を起こしたが、本作の少年少女たちはただただ運命を受け入れることしかできない。「私たちが救う命と私たちと何が違うのか?」そんな問いを発しつつも、それは虚しく波の音に吸い込まれてしまう。こんな哀しくて美しい映画は観たことがない。カズオ・イシグロの原作も読みたくなった。 [DVD(字幕)] 7点(2011-11-09 23:31:32) |
137. ステキな金縛り ONCE IN A BLUE MOON
《ネタバレ》 大いに笑わせてもらった。ただね~。監督デビュー作の『ラヂオの時間』は傑作だと思うが、それ以降はどうにもスケールが大きいだけで、笑いの取り方が雑になっているような気がする。今回も、『ザ・マジックアワー』とのリンクネタなどあるが、ああいう「分かる人には分かる」シーンに尺を取りすぎ。あと、豪華俳優陣なのは良いが、みんなに見せ場を作ろうとして全体のバランスが悪くなっている。『ラヂオの時間』や『12人の優しい日本人』(脚本のみ)、TV『古畑任三郎』が何故傑作だったのかと言うと、「時間、空間、人物」が限定されていたからだと思う。所謂「密室劇」にこそ三谷幸喜の面白さがあると思うので、次回は予算や役者に気を遣わずに思いっきり面白い密室コメディを作ってほしい。 [映画館(邦画)] 7点(2011-11-06 17:41:08)(良:2票) |
138. パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉
《ネタバレ》 監督が変わったところで、中身カラッポの騒々しい映画であることに変わりはなく、緊張感の欠片もないアクションと滑りまくりのギャグに辟易させられた。キャプテン・ジャック・スパロウはキャラクターが固定されており、人間的に成長する見込みはないので、見ていてもあまりワクワクしない。前回までのように、常識人の若者に絡む形で変人ぶりを披露してくれた方がキャラが立ったと思う。バルボッサも前作の方が格好良かったな。 [DVD(吹替)] 4点(2011-11-04 15:15:56) |
139. マイティ・ソー
《ネタバレ》 あまり期待はしていなかったが、思ったよりは面白かった。80年代のSFアドベンチャーのような脳天気な展開に思わず頬が緩む。地球に落ちてきた筋肉バカの王子と天体学者たちとの交流が愉快(ナタリー・ポートマンも良いが、アンジェラ・アキ似のメガネっ娘が気になった)。こんなCGバリバリのアメコミ映画をケネス・ブラナーが監督しているというのも不思議。 [DVD(吹替)] 6点(2011-11-04 15:06:01) |
140. ラスト・ターゲット(2010)
《ネタバレ》 原題は「ジ・アメリカン」。イタリアの古都を訪れたアメリカ人の主人公=異邦人を表したタイトルだ。邦題のセンスのなさには唖然とさせられる。「退屈」「眠くなる」という評価も分かるが、たまにはこんな大人の映画も良いのではないか?60年~70年代のヨーロッパ産の犯罪映画を思わせ、冒頭のスウェーデンからイタリアの要塞都市まで、ロケーションの全てが一枚の絵画のように決まっている。ジョージ・クルーニーは『オーシャンズ11』のようなお洒落な伊達男の役がお似合いだと思うが、本作は製作にも参加しているだけあって、相当な入れ込みようだったのだろう。この時代錯誤なハードボイルドに陶酔したい。 [DVD(吹替)] 8点(2011-11-04 10:34:02)(良:1票) |