1421. ロスト・チルドレン
《ネタバレ》 世界観に圧倒されます。色使いも魅惑的。これはもう絶賛させてください。右脳が喜んでいるのが分かります。キャラクターも秀逸。心根の優しい大男に窃盗団の美少女。子供をさらうクローン軍団の面子もかなり濃い。自分の大好物、“世界観”と“キャラクター”の出来は文句なく10点級です。今まで本作をスルーしてきた自分に大後悔。ただ残念ながら満点ではありません。左脳の方は退屈したから。最初の20分が辛かった。我慢して観ていれば面白くなる事は経験上確信しているのに、観るのを止めようかと思ったほど。世界観を披露することに熱心で、脚本で観客を楽しませる作業が疎かになっていると感じます。ストーリーの輪郭が見えてからも“ファンタジーだから”でお茶を濁す展開が散見されます。惜しい。本当に惜しいです。「機雷の刺青男」、「一つ目族」、「窃盗団の男の子たち」等の味のあるアイテムが、有効活用されていません。各パーツが有機的に連動し、働いてこそ物語が魅力的なものに変わるのに。それでも、これだけ楽しめれば大満足です。スゴイ映画に出会えて幸せです。(余談)本作で興味を持ったので、ジェネ監督の『デリカテッセン』を観ようと行きつけのレンタルDVD屋へ。でも未入荷とのこと。結構著名な作品だと思うのですが残念。『死霊の盆踊り』は2本も仕入れられているのにね(苦笑)。 [DVD(字幕)] 9点(2008-12-31 17:44:48) |
1422. ヴィクティム
《ネタバレ》 【あらすじ】で記入したのが物語の導入部。なかなか面白そうな設定です。本作のウリとなる部分でもある。ここからどう物語を広げてゆくかお楽しみ。でも、あまりパッとしません。足枷となるのが、誘拐される“前”の男の状況が判然としないこと。それなりに説明はありますが、彼元来の“人となり”が具体的にイメージ出来ない。同棲相手が言う「彼は変わった」が、どの程度なのか掴めない。この不具合が後々まで尾を引きます。まずオカルト路線へのミスリード(あえてそう言いましょう)が効果を発揮しません。そもそも有名な心霊スポットが現場。怪しさ満点。そこで霊に憑かれたと言われても、逆に眉唾じゃないかと疑いたくなる。終盤、中核となるエピソードについても同様の理由から驚けない。男の狂気が如何ほどなのか分かりません。何だかんだ言いつつ霊云々は本作の目玉なので、その線が消えてしまうと求心力が失われます。後半はTVレベルの刑事ドラマのようでした。物足りないです。そんでもって最期の最期でちゃぶ台返し。もう観客の興味は其処に無いのでは。出だしで観客の気を引いたのはいいけど、後が続かなかったという印象です。 [DVD(字幕)] 3点(2008-12-30 23:29:43) |
1423. 椿三十郎(2007)
確か『美味しんぼ』で、「フグの白子」の代用食材探し対決がありました。山岡が用意したのはタラの白子。対して、海原雄山が持ってきたのは本物のフグの白子。タラはフグの偽者に過ぎないと指摘します。この勝負自体はアンフェアもいいところですが、本作を観ると雄山の言い分も頷けます。このリメイクもフグの代わり。最初からオリジナルに近づける事しか考えていない。これでは永遠に本物には届きません。でもフグがタラよりも劣っているなんて誰が決めたのでしょう。タラにはタラの持ち味がある。工夫次第では、フグの白子以上の満足を得られる料理が出来るかもしれないのに。新しい別の“本物”を目指さなかったらリメイクの価値は薄いと考えます。椿を「抜き身」と称するオリジナルの名台詞。でも織田三十郎は、そうは見えません。なら無理してその台詞を使わなくていいのでは?ラストの椿VS室戸のように、オリジナルと勝負しなくちゃ面白くありません。たとえ惨敗だとしても。体裁を保つ判定“負け”狙いでは、観客の心は掴めません。 [地上波(邦画)] 6点(2008-12-29 19:46:15) |
1424. やじきた道中 てれすこ
《ネタバレ》 小泉今日子と言えば、30代男性にとってある種のカリスマ的なアイドル。演技力や歌唱力ではなく、ビジュアル(それも顔のみ)でファンの心を鷲掴みにした王道のアイドルです。そんな彼女も今や四十路。もちろん、今でもその美貌は並ではありませんが、黒木瞳や吉永小百合といった怪物には及びません。“若さ”という輝きは失われました。「旬の過ぎたアイドル」。そんな彼女が演じたお喜乃も「薹が立った女郎」。失礼ながら現実の彼女と被る。何となく物悲しい。しかし腐っても鯛です。いや、熟成されたワインとでも申しましょうか。その深み、味わいは極上です。さすが一時代を築いただけの事はある。モノが違う。愁いを帯びた佇まいから漂う色香に惹きつけられます。お喜乃が魅力的であることが本作を成立させる上での最重要ポイント。小泉はベストキャスティングでした。加えて中村勘三郎に柄本明といった渋い旨みの出る役者を脇に揃えたのですから、もう間違いない。題材も落語や昔話で馴染みあり。予想どおり手堅く楽しめました。 [DVD(邦画)] 7点(2008-12-28 21:59:05)(良:1票) |
1425. 新幹線大爆破(1975)
《ネタバレ》 粗い脚本にまずビックリ。評価の高い作品という予備知識があったから尚更です。有り得ない、おバカと言っていい展開がチラホラ。人物の描き方も極端です。例えば千葉真一。ストレスのかかるポジションなのは分りますが、それにしてもテンパリ過ぎ。あれはプロの態度じゃない。新幹線乗務員もやるべき事をやってない。肝心の警察は問題外でした。観ていてじれったい。そんな中、魅力的だったのが宇津井健です。普通なら、無事に事態を収められた事で満足するところ。でも彼はそう思えなかった。爆破の可能性を払拭できないまま、新幹線を止めた選択が許せなかった。100%の安全は有り得ません。リスクは必ず付きまとう。最新のシステムを搭載した新幹線が凶器になり変わったように。でも100%に近づける努力はするべき。それが人命を預かる仕事の責務。1500人の命の重みを感じながら職務に当たっていた宇津井の感覚は正しい。ただ、最悪の事態を想定した「ゼロ地点」での停車という判断も誤りではありません。あの状況下ならやむを得ない。停車を指示した国鉄幹部はもっと大きな母数の命の重みを感じていたのかもしれない。それぞれの立場で、「最善」の捉え方が違うのは興味深いです。豪華スター競演の熱気ある映画でしたが、完成度は今一歩と感じました。「さよなら0系新幹線記念」で1点加算させていただきます。 [DVD(邦画)] 7点(2008-12-27 19:57:07) |
1426. モーテル
《ネタバレ》 『スクリーム』が既存のホラー映画のパロディならば、本作はアンチテーゼと見て取れます。「おや?」と思う設定や展開は、全て“お馴染みのホラー”と比べた場合の違和感に起因するもの。殺人犯は醜悪な見た目の大男ではなく、ダサいメガネの華奢な風体。エロ場面ゼロ。あっさり風味の終盤戦にしてもそうです。ホラー通の方ほど、典型例との違いに目が行くと思います。個人的には良いところ半分、悪いところ半分と感じました。様式美という言い方は適切ではないかもしれませんが、よくあるパターンにはそれなりに長所があると気づきました。ただ、無闇にグロくて後味の悪い映画に胸焼けしていたところなので、このくらい上品な方が個人的には好みです。とくに結末。これを“すかし”と感じてしまうのは、如何に今まで強引な脚本に慣れてきたかということ。お腹を何発も撃たれたら人間は絶命するんですね、普通は。ちなみにDVD特典のもう一つのオープニングについては、カットして正解だと思います。わざわざエンディングの選択肢を狭める必要はないです。クレジットがシンプルでセンスが良いのも○。点数はちょっとオマケしています。 [DVD(字幕)] 7点(2008-12-26 20:21:13)(良:1票) |
1427. アリーナロマンス
《ネタバレ》 主人公のアイドルオタク。彼がアイドルのSTK(ストーカーの略だそうです)に堕ちたのは何故でしょう。校長(掟ポルシェ)にプライベートを詮索するのは良くないと注意されていたのに。ネットオークション詐欺を働いた理由は?そもそも自分だって詐欺の被害。辛い思いを知っているはず。それに何故詐欺をしてまでお金が必要だったのかも説明がない。美少女同級生の心情も謎です。オリキ(熱心なアイドルの追っかけのこと)を外れて、“やらかし”(ファンの仁義から外れる行為)をしたのは何故?アーティスト志望からアイドルに転進した理由は?主人公の事が好きなの?それとも追っかけをしている芸能人の方が好きなの?登場人物達が何を考えているのかよく分かりません。意図的に描いていないのか、描けていないのかも分からない。これはマズイ。感情移入が叶いません。2人のロマンスも彼女の芸能界入りで悲恋に変わるのかと思いきや、そうでも無さそうだし。う~んんんん。サッパリ分からない。ちなみに、オタクネタを扱うなら、オタ芸くらいは見たかったかな。 [DVD(邦画)] 3点(2008-12-25 22:56:42) |
1428. クローズド・ノート
《ネタバレ》 彼氏の名前のカラクリから、ノートの持ち主の秘密まで、予想を裏切らないオチが待っています。タネ明かしの爽快感は希薄。ミステリーの要素は高くはありません。でもだからと言って、ツマラナイ訳じゃない。顔の無い日記の中の「隆」。ビジュアルをイメージさせる為に、香恵お気に入り俳優を用意します。日記に感化された彼女の行動が物語に与える揺らぎ。細工が“確り”しているので、観ていて心地が良いです。ただ終盤30分がいけません。せっかく丁寧に物語を紡いできたのに、突如乱れます。日記の最後のページが破られていたという事実。香恵が先に気づいていてこそ、展開がスリリングになる。そもそも日記を破いて子供が大勢いる校庭に飛ばすって、そんなに竹内はバカじゃないはず。ラストの紙飛行機乱舞もドラマ的演出感が過ぎます。それまでが良かっただけに、最終コーナーを回ってからの大ブレーキは残念でした。さて、沢尻の演技について。彼女の出演作はあまり観ていませんが、自分が観たのは全て同じ演技プラン。女優オーラ出しまくりの「女王様」キャラです。名物演技はそれだけで客を呼べる場合がありますし、G馬場に叱られ続けたのに「オー」を止めなかったJ鶴田の例もある(コレは関係ないか)。一概に否定はしませんが、本作の演技には引っかかりました。例えばマンドリンの演奏シーン。失敗を咎められてどういう顔をするか。人間性を表現する大事な場面です。でも彼女は何もしなかった。あえて何もしないことで“強いキャラを印象付ける”というよりも、“どうするか決めていない”ように見えてしまった。彼女の中に“香恵がいない”のです。いつもの演技をやり易いようにやったように感じられてしまう。真偽はどうあれ、そう見えてしまうのは損です。一度、女王様ではない沢尻エリカを観てみたいと思いました(『パッチギ』はそうなのかな?)。7点に近い6点。 [DVD(邦画)] 6点(2008-12-24 18:54:57) |
1429. クライモリ デッド・エンド
《ネタバレ》 「脳天唐竹割り」と言えば、往年のスタープロレスラー、ジャイアント馬場の代名詞的プロレス技。本作では、この必殺技が文字通りの殺人技として炸裂します。のっけから。このインパクト!右半身と左半身が“別々”に引き摺られていく様が頭から離れません。この他にも思わず目を覆いたくなるような残虐かつ悪趣味な映像のオンパレード。でも本作が高評価を受けているのは、グロが好事家ウケしているからではありません。シナリオの出来がいいから。これは前作から引き継がれているシリーズの長所です。「お約束」と「裏切り」のバランスが良い。例えばエロってるカップル。案の定、殺されます。“腕に覚えあり”なキャラも死ぬ口。ホラー映画の定石は踏襲しつつ、“如何にも生き残りそうな”主役風キャラをあっさり殺したりもする。定番の安堵感の中に、予断を許さない展開が上手くブレンドされています。殺人鬼たちの力量もいい具合。並外れた耐久力はあるものの、決して不死身な訳じゃない。倒すチャンスは十分にある。結果、逃げ惑うだけでなく、「能動的な反撃」という選択肢が生まれてきます。“やられっ放し”じゃないホラーはスカッとしてイイですね。SEX・出産・家族愛?等、人食いファミリーを怪物ではなく、観客と同じ人間であると印象付ける描写が多いのも特徴。食事前のお祈り「アーメン」は皮肉が効いている。何処の神様が隣人の肉は食っていいって言ったんだ?嫌悪感・不快感は恐怖を引き立たせるスパイス。ただ、クセがあるのでダメな人は受け付けないと思います。自分もパクチーは苦手な方。でも前作より+評価です。 [DVD(字幕)] 7点(2008-12-23 17:20:17)(良:1票) |
1430. ビーチ・エンジェルズ!
《ネタバレ》 浅尾美和ってカワイイなぁ…。失礼しました。週刊誌のグラビアで白昼夢をみていました。日本ではアイドル選手の登場により一躍脚光を浴びたビーチバレー。本作はその本場アメリカが舞台。ストリッパーたちが砂上の格闘技ビーチバレーに挑戦します。そもそも同じような格好だし(!)、動きも(?)似てるってところがキッカケ。でもコレって結構タブーじゃないかと思う。確かにコスチュームは魅惑的(水着の面積についても規定があるそう)、鍛えられた乙女の肢体が砂にまみれる訳ですから、煩悩を抱いてしまう男性諸兄がいるのも仕方がないこと。でもそれは言わない約束です。どんなに熱視線を送ろうとも、あくまでスポーツ観戦を楽しんでいるだけなのです。間違いなく。でも本作は、その建て前を臆面もなく打ち破りました。流石アメリカ映画。遠慮が無いというか、デリカシーが無いというか。パーティにお呼ばれして「バレーごっこ」で大金を得る女たち。何のことはない、新手の出張風俗です。そもそもお金を稼ぐことが目的で始めた事ですし、本職の延長線上なので問題ない…はずでした。でも何だか彼女たちのプライドを刺激してしまったようで、本気で競技を始めちゃいます。この後の展開は、『がんばれ!ベアーズ』のビーチバレー版と思っていただければ間違いありません。おそらく本作で感動を期待している観客は少数派でしょうし、ヌルい展開や手抜きの試合シーンに文句を言うつもりはありません。こんなモノでしょう。ただ、浅尾美和が本作の宣伝役を買って出るようなことは無いはずです。ビーチバレーの魅力を伝える方向の映画ではありませんでした。ちなみにセクシー水着は拝めますが、それ以上は有りませんので過度な期待は厳禁です。 [DVD(字幕)] 5点(2008-12-22 18:58:16) |
1431. 地球の静止する日
《ネタバレ》 キアヌ主演のリメイクの前に、オリジナルをと思い鑑賞。名作古典という予備知識はありましたが、正直そんなに期待していませんでした。視覚効果が大きなウェイトを占めるSF作では、近年の作品に分があるのでは?という先入観があったためです。でも本作を観終えて、それが思い違いだった事に気づきました。自転車と自動車で、どちらが速いか比べるなんてナンセンス。比較すべきはスピードではなく乗り心地でした。先の例えを使うなら、本作は一級品のバイスクル。丁寧で品のある脚本。心地よくスイスイと進む。クラトゥ射殺後の流れ。本来であればロボット停止までの展開で盛り上げたいところ。でも『キングコング』の輸送の如くバッサリと省略。でも全体のテンポから、手抜きとは感じません。病院と飛行機の電力を止めなかった事も、ちゃんとツボを心得ている証拠。演出もお見事です。“タラップは出るのにつなぎ目が無い”というUFOの特性。これを再現するために、必ずそのシーン直後にカメラを切り替える。念の入った仕事ぶりに感心します。観客を楽しませるために必要な心配りのある映画を観ると嬉しくなります。さて話題のリメイクの出来は如何ほどか。 [DVD(字幕)] 8点(2008-12-21 18:18:44)(良:2票) |
1432. 魁!!男塾(2007)
《ネタバレ》 週刊少年ジャンプ黄金期を支えた名作(迷作)漫画『魁!!男塾』。30代男性の認知度は相当高いと思われます。かくいう自分も直撃世代。しかし「あらすじ」はほとんど知りません。忘れたのではなく、最初から知りません。でも結構読んだ記憶はあるのです。待合室で、本屋の立ち読みで、時間潰しに最適な漫画でした。“読み切りでもないのに一見さん大歓迎”。これが原作漫画の特徴と考えます。画の迫力と勢いだけで読ませてしまうパワーがありました。本作はそんな原作の特性と魅力を、見事に再現していると感じます。主演も務める監督をはじめとした、演者の“理解”が素晴らしいのでしょう。世界観がブレません。大真面目にバカをやる清々しさ。ある意味、厳粛とも取れるバカワールドです。その結果、狙ったネタは全てスベっている(注:正確には作品世界に同化している)のですが、そうでない部分で爆笑しました(例:急にリアルファイト風に様変わりする桃VS伊達戦。一号生の中に混じっているオッサンとか)。松尾率いる一号生応援団。本格的な振り付けで見栄えがします。要所を締めているのも好印象でした。本気具合が伝わってくるから、茶番劇が格別なものに変わるのです。ただし、着ぐるみは本物の熊に変わりませんけども(笑)。軸となる極小路の成長や、桃太郎との友情ドラマの処理が上手ければ、もうワンランク上の娯楽作品に化けた気がします。でも十二分に及第点でしょう。続編を希望です。それにしてもホームチームと瞬間メタルの相方って、何処に出てたんでしょうか? [DVD(邦画)] 7点(2008-12-20 18:44:06) |
1433. ヒートアイランド
《ネタバレ》 「偶然」は、ストーリーに新鮮な驚きを与えます。ドラマチックな展開を呼び込む魅惑の果実。でも禁断の実。乱発は禁物です。物語の品質が低下してしまうから。残念ながら本作にはその嫌いがある。偶然ではなく必然と思える流れなら大歓迎。でも都合重視では気持ちがノらない。この脚本で爽快感を得るのは厳しいと感じました。コメディパートにも問題あり。人殺しとコメディの共存は可能です。いわゆるブラックユーモア。でも本作の場合は、無闇に人が死に過ぎました。それも非悪人が簡単に死ぬ。このテンションを引きずったまま、(例えばBGMの切り替えだけで)ギャグに走られても観客は困惑してしまう。みんなが主人公を褒め称えます。器がデカイ。頭がキレる。でもそこまで優秀とは思えない。イケメンなのは認めます。へそ毛もセクシー。でも彼がスゴイというよりも、チームバランスが秀逸なのでは?手足となる手下を掌握する技術が長けているのであって、彼一人を窃盗団へヘッドハンティングしても、果たして意味があるのか疑問です。タイトルに偽り無く、みな汗だくで熱演していましたが、若手の演者は総じて低調と感じました。伊原、豊原といった脇を固める男優が上手いのが救い。採点は5.5点。今回は切捨てます。 [DVD(邦画)] 5点(2008-12-17 20:42:24) |
1434. ファイナル・デッド
《ネタバレ》 パニックホラーには、数多くの動物が題材に選ばれてきました。『JAWS』はホオジロザメ。ヒッチコックの『鳥』、『アナコンダ』はニシキヘビ。その他では、蜘蛛・蟻・蜂など昆虫系も人気ですね。さて本作の主役は「犬」でした。遺伝子組み換えを施された“ノラ戦闘犬”という設定です。私たちの最も身近なペット。だのに何故かホラー映画では、重用されて来なかった理由が分りました。だって怖くないから。哺乳類からは感情が伝わる。目から敵意の有無が分かります。爬虫類や昆虫の方が使い勝手が良いのも納得です。では、生きている犬を使ってどう「恐怖」を演出するか。要は“イヌと思わせなければいい”。顔の接写はアングルと範囲を工夫して表情を読み取らせないように。色はダークなものがいい。“得体が知れない何か”と観客に認知させれば良いのです。『オーメン』の黒犬は成功例に入るでしょう。本作は、残念ながらその配慮に欠けました。犬の目は優しかった。そしてもう一つ、重要なポイント。人間と犬を同じ土俵に立たせる事。そうしてやっと人は怯える。人間がその英知を使えば動物には負けません。だてに食物連鎖の頂点にいる訳じゃない。動物のポジションを上げるか、人間の方を弱体化させる作業が必要です。例えば動物を巨大化。数を増やすのも効果的です。人間からは文明の利器を取り上げるのが分り易い。本作でもこの調整がしてありますが、不十分です。人間が勝手にバカなだけでは、「自分ならこうする」と思ってしまう。これはどんなホラーにも当てはまります。シチュエーションで窮地に追い込まないとダメなのですね。脚本、演出共に改善の余地アリだと思います。それにしてもこの邦題、ある意味スゴイ。何処かで耳にしたような…。でも意味ワカランです。なのでキャッチフレーズを考えてみました。『ラッ●ーよりも狡猾で、パ●ラッシュよりも荒々しく、AIB●よりも血を好む、アイフ●犬よりもややタチが悪い、そんな奴らがやって来た。高橋先生ごめんなさい。今度の敵は人間だ!』でいかがでしょう。って、怒られるわ! [DVD(字幕)] 4点(2008-12-14 23:02:20)(良:1票) |
1435. 冷静と情熱のあいだ
《ネタバレ》 行きつけのレンタルDVD店の旧作半額デー。根が貧乏性なのでこの日は外せない。体調は悪かったのですが、少し無理して出かけました。風邪の引き始め。悪寒で震えます。発熱していくのが分る。鼻水と咳で朦朧として来たところ、目に飛び込んできたのが本作のタイトル。嗚呼これは自分の映画だ…(このときのBGMはエンヤでお願いします)既に手にしていた『プリキュア5』(注:自分の趣味ではありません!)と『サイボーグ2』(パッケージが妙にエロいアンジー。弱っているとき、男は“欲しくなる”のだ!)と『クローズド・ノート』(エリカ女王様に苛められたいのだ!ウソなのだ!)と一緒に借りてきました。…ごめんなさい。おフザケが過ぎました。本題へ入ります。原作のイメージカラー赤と青に拘った画作りは面白い。音楽は格調高いというよりも気取っていると感じます。肝心の物語の方は、残念ながら自分には合いませんでした。恋愛モノは登場人物と自分を重ねられるかが鍵。そこで躓きました。主人公たちの余裕に共感出来ませんでした。失うことを恐れていないから。でも一つ良かった点を。ケリー・チャンをよく知らない者にとっては、単に日本語が下手な素人に見える彼女。しかし再会後の演奏会でのキスシーンが抜群に上手かった。少し“突っ掛ける”感じが、彼女の心の有り様を表しているよう。えーと、感想は以上です。冒頭のネタを書きたくて借りたようなものなので、コレくらいで勘弁してください。 [DVD(邦画)] 5点(2008-12-11 20:24:47) |
1436. 崖の上のポニョ
《ネタバレ》 難解な映画は勝手に解釈して楽しむのが自分の流儀。でも本作の場合は、どうしても監督の考えが知りたくなりました。今までの宮崎監督作品とは趣向が違うから。ワケが解らなかった。でも魅力的な映画でした。「5歳児が直感的に分かる映画」。探し当てた監督のインタビューを聞いて納得しました。“そういうつもり”なら、“こういう映画”になる。無数のチビポニョは命の源。その移り行く姿の神々しさ。「世界に穴が開いた」等の説明放棄にも合点がいく。どれも理屈ではなく感覚の方が理解し易い。ちなみに個人的に印象に残ったのは、ポニョのしたたかさです。一途なヒロイン像は宮崎アニメのオハコですが、ポニョの強さは際立っています。母親を探して涙する宗介のもとへ歩み寄るポニョ。その佇まいにハッとする。宗介は大人びていますが子供。(注:親を呼び捨てにしているのも在る意味幼稚さの表れ。)ポニョは幼く見えても大人です。2人は立っている場所が違う。女性の持って生まれた強さに男は到底敵わない。これも理屈ではありませんね。ただし監督が言うように、5歳児が本作を直感で理解できるとは思えません。結局は監督の経験則からくる思い込みじゃないかと思う。振り返ってみれば『ハウルの動く城』もそんな作品でした。大衆の支持を得る映画製作は、公約数を見つけるのと同じ。かつての宮崎駿は最大公約数を見つける達人でした。でも本作も含め、近年の作品は其処に意識が向いているとは思えない。タレント声優の起用にしてもそうです。でも、でも、でも、それでいい。本作を観終えてそう思いました。おさかなの波を駆けるポニョ。その極上の躍動感。これが宮崎アニメの真骨頂です。このワクワクを味わえる幸せを噛み締めました。これは大人も子供も関係ありません。やっぱり宮崎駿は天才アニメーターでした。本作が引退作でも自分は納得して拍手を送れます。むしろ、そう願う自分がいる。それほど「楽しむ余白の多い映画」だと思いました。『カリオストロの城』が在る頂とは、別の頂に在る作品。自分は死ぬまで本作で楽しめるでしょう。かつて『未来少年コナン』に心を奪われた元5歳児の感想でした。 [映画館(邦画)] 10点(2008-12-08 18:36:47)(良:2票) |
1437. サウスバウンド
《ネタバレ》 日本に居ながらにして日本人を辞める?義務は果たさないけど、国防やインフラの恩恵は受け続けるつもりでしょうか。学校なんか意味がないから行かなくていい?自分は立派な思想を持てるくらいの高等教育を受けてきたのに、子供には受けさせないつもりでしょうか。トヨエツはそれが出来ない事を知っている。知っているのにあえて言っている。だからタチが悪い。そして痛々しい。彼は何故無邪気に笑っていられるのでしょうか。全共闘時代を自らの中で消化(昇華)して社会に適応していった大多数の同志。でも彼はいまだに当時を引き摺っているのだと思う。心の時計は止まったまま。信念を持つことは素晴らしい。純粋であることも素敵です。でもそれ以上に、前に進むことが大事だと思います。頑なではもったいない。心を成長させてこそ人生の醍醐味がある。意に沿わないことは「ナンセンス!」で片付け、自分の正義以外は認めない。それってカッコイイ生き方とは思えない。ただ楽な思考に逃げ込んでいるように見えます。結局、日本を逃げ出す羽目になったトヨエツ夫妻。小学生の子供2人を残してどうするの。でも彼の中では「こちらからオサラバしてやった」くらいに変換されているのでしょう。あんなに清々しく笑えるトヨエツを羨ましいと思います。それはホントにそう思う。人生はたくさん笑った者の勝ちです。でもそれだけじゃツマラナイ。 [DVD(邦画)] 4点(2008-12-05 19:53:00)(良:1票) |
1438. 1408号室
《ネタバレ》 (新作映画につきネタバレご注意ください。以下私的解釈です。) 『泊まると死ぬ』いわくつきの部屋、1408号室の取材をしたいオカルトライターとホテル支配人のやり取り。ここが序盤の見せ場であり、また物語を理解する上でのポイントと感じました。なんとか宿泊を思い留まらせたい支配人。おぞましい死に方をした者たちのスクラップまで見せて、主人公を脅しにかかります。でも違和感がある。支配人の「これ以上犠牲者を出したくない」は、果たして本心か。オカルトでメシを食っている相手を怖がらせるのは、取材意欲に油を注ぐようなもの。それにダメと言われる事ほどしてみたいのが人間の性です。ワイロ(高級酒)の提供も見え透いている。もし本当に彼を救いたいなら、嘘をついてダミーの部屋にでも宿泊させればいい。(1408号室と同じ間取りの部屋もある。)どうも支配人は、彼を巧妙に宿泊へ誘導しているように見えます。そうだとすると辻褄が合う。主人公の元に届いた1枚のハガキ。好奇心旺盛な作家をおびき寄せる撒き餌。人間心理を理解している者の仕業です。そして手馴れている。最大の謎は何故56人も死んだのかということ。死ぬと分っている客を泊め続けてきたのは、“生け贄”が必要だったと考えれば納得。火事が原因でホテルが廃業に追い込まれたところを見ると、1408号室の存在がホテル自体を支えていたのかも。でなきゃ、どんな理由であれ次々と客が死ぬようなホテルが流行るわけがない。誘客を約束する代わりに貢物を要求する福の神、いや死神があの部屋だと思いました。遂に部屋を抹殺した主人公。そのときの支配人の達観したような表情!最期の台詞「上出来だ」がトドメです。支配人が負ってきた役目とその想いに届くと物語は深くなります。1408号室は無間地獄。人生が辛くなってチェックアウトしたくなったら、もうあの部屋に入室しているのかもしれない。 [映画館(字幕)] 7点(2008-12-02 18:57:00)(良:2票) |
1439. 怪談新耳袋 劇場版 幽霊マンション
ある賃貸マンションに引っ越してきた父娘。引越し荷物のダンボールが明らかに空箱です。こりゃリアリティ無視のダメ映画なのかな。同シリーズの『ノブヒロさん』もイマイチだったし。序盤で自分の中の満足のハードルを下げました。これが功を奏したのか、意外や意外、結構楽しめました。“門限を破ると呪い殺される”という時間的制約を、きちんと活かしたエピソード作りに感心。“本当に怖いのは幽霊よりも生身の人間だ”というアプローチも定番だけど悪くない。役者も芸達者揃いです。ただ大筋が良いだけに、もっと面白く出来たという気もする。伏線の張り方を工夫したらオチの効果は倍増したと思うし、主人公の名前や“日差しを気にする”等一連の前フリをスルーしたのも勿体無いです。それでも邦画ホラーとしては上々の部類に入るでしょう。 [DVD(邦画)] 7点(2008-11-29 21:58:32) |
1440. トウキョウ・守護天使
主演は神楽坂恵。バスト100cm超のⅠカップ爆乳グラビアアイドル。2006年に女優宣言をしたそうで、本作はグラドルではなく、女優として出演されているそうです。でも残念ながら本作の彼女の演技からは、女優の素養は感じ取れませんでした。(個人的には肩書きに意味があるとは思いませんが)どうせならグラドル魂全開で、豊満ボディをアピールしてくれた方が好印象だった気がします。徹底した厚着、肌蹴たジャケットを直す等、意図的に(?)胸の豊かさを隠していたような。そういうことが「女優」の要件だとしたら安っぽい。もっとも彼女に限らず、多くの演者は芳しくありませんでした。脚本も演出も稚拙と感じます。作品登録の際に見つけた専用サイト。『孤高な異空間群像劇の全貌を眼の当たりにした観客は、賞賛か批判かの選択を瞬時に迫られる事だろう』との煽りがありましたが、何を言いたいのかサッパリ分からないです。なお、これら不満は「グラドル出演を売りにしているのに、お色気シーン全く無しかよ!」といった下衆な心根から述べている訳ではありません。信じてもらえないかもしれませんが、“今回は”本当にそう思ったのですよ。 [DVD(邦画)] 3点(2008-11-26 21:34:33) |