1421. エトセトラ
《ネタバレ》 エトセトラ・・・ etc... つまり、「無限ループ」をテーマに、グロテスク・アニメの巨匠ヤン・シュヴァンクマイエルが、三つの短篇で綴ったオムニバス。 「無限ループ」という嫌な予感のするテーマが題材。 その予感的中、まさに悪夢。 “精神的な”グロテスクさ。 他のヤン・シュヴァンクマイエル作品とは異なり、「グロテスクさや悪夢」を映像で直接表現するのではなく、“精神的な部分”で「グロテスクさと悪夢」を描いた恐るべき掌編。 [インターネット(字幕)] 6点(2011-06-21 02:31:44) |
1422. マルタの鷹(1941)
《ネタバレ》 不満を挙げればきりがないので止めておくが、敢えて一つ挙げると、それは台詞の多さ。 小説をただ脚本に焼きなおし、それをハンフリー・ボガートが、さもカッコよさげにしゃべりまくる。 小説を読めば良いだけの話で、映画としての価値が希薄だ。 [ビデオ(字幕)] 3点(2011-06-20 00:58:12) |
1423. 家での静かな一週間
《ネタバレ》 静かというか無音な一週間。 穴を開けた後、その穴の内側を指で拭い取る動きなんか、ヤン・シュヴァンクマイエルっぽい。 その穴から覗いた、家での無音な一週間。 穴の向こうには、毎日グロテスクでバラエティに充ちた空間が拡がっている。 まさに爆破するに相応しいグロテスクさよ! 特に、舌肉が這いずり回り、自らミンチになってバラバラ大量に増殖するところなんぞ、ヤン・シュヴァンクマイエル流グロテスクの極致! 最後、ダイナマイトが爆発しようとしている中、わざわざ家の中に戻り、壁の線を消しに行く細かさというか神経質さが、妙な後味を残した。 [インターネット(字幕)] 6点(2011-06-18 22:57:06) |
1424. ミスター・グッドバーを探して
《ネタバレ》 昼間は教師という真面目な仕事をしていているのに、夜はバーで男を漁り、行きずりの男とベッドを共にする。 そんな二重生活。 人間の表と裏、陰と陽。 そんな感じのことを描いているのだが、今となっては別に斬新なテーマではない。 そんな人間なんて、都会には普通にいる。 ラストを殺しで締めるのも、ありふれた落とし方。 予想していただけに、余計に残念なラストだった。 [ビデオ(字幕)] 3点(2011-06-18 02:02:48) |
1425. ジャバウォッキー
《ネタバレ》 個人的にヤン・シュヴァンクマイエル作品の中でナンバー1な作品! とにかく気が狂いそうな悪夢的イマジネーションの世界爆発!! 迷路が出てきて、行き止まると猫が出てきてドボーン、そんでもって悪夢登場!って流れが何だかクセになるバッドテイスト。 果物が割れてウジが出てくるのには正直参ったが・・・汗 [インターネット(字幕)] 7点(2011-06-17 00:45:52)(良:1票) |
1426. 地下室の怪
《ネタバレ》 ヤン・シュヴァンクマイエルの得意とするグロテスクなアニメーションではなく、ほぼ実写でホラー映画という内容。 でもこれが意外と面白かった。 子供の時分に見るような悪夢を実写化したかの様な内容だ。 だが、最後のオチが更に意外。 あれほど奇怪で恐ろしい地下室に、少女がまた戻っていくとは・・・ これこそ“怪”である。 理解不能である。 やはり、ヤン・シュヴァンクマイエルの作品は、一筋縄ではいかなかった。 石ころのベッドで寝ているオッサンが、汚いベビーベッドに「来い来い」と、手招きしているシーンなんか特に印象的。 どこかロリコン臭と変態臭が漂っていると感じるのは私だけだろうか?! [インターネット(字幕)] 6点(2011-06-17 00:02:38) |
1427. アニー・ホール
同じくウディ・アレン監督作の『マンハッタン』がそれなりに良かったので、代表作である本作には相当の期待感を持って鑑賞にのぞんだ。 しかし技巧的な演出ばかりが目立ち、ダイアローグというよりアレンのモノローグの連続に顔をしかめるしかなかった。 アレンの独特の持ち味がふんだんに散りばめられた個性の強い作品ではあるが、アレンのモノローグ自体が肌に合わず楽しむことはできなかった。 [ビデオ(字幕)] 4点(2011-06-16 23:29:18) |
1428. 夢翔る人 色情男女
《ネタバレ》 純粋なラブストーリーを撮る監督というイメージのイー・トンシン監督が、実におふざけエロ映画を撮った。 エロ映画と言っても、主演のレスリー・チャンは脱ぐわけじゃあない。 そこが何だか微妙なわけだけど、更に迷走気味の作品内容にも、観ているこちらとしては困惑せざるを得ない。 ただ逆に言えば、掴み所の無い奇妙な面白さを持った作品かもしれない。 実名で香港映画界の人物が出てきたりするので、香港映画に精通している人なら更に楽しめるかもしれない。 カレン・モクも愛嬌あっていいが、どこか垢抜けない。 それに比べてスー・チーは抜群のスタイルで脱いでもスゴイので、目の保養になる。 レスリー・チャンは、初期作品の頃の様なコミカルな役を演じているが、やっぱり彼にはウォン・カーウァイ監督作品で見せるアンニュイで陰鬱な役どころが一番似合うし、そういう役どころを演じさせると、魅力を最大限に発揮できる名優だと思う。 なので、レスリー・チャン好きの私として本作を評価すれば、満足とはいかなかった。 [ビデオ(字幕)] 6点(2011-06-14 22:26:09) |
1429. 不安
《ネタバレ》 不倫に関わる、ややもすると単純になりそうな話を、見事なまでにサスペンス風味満載に仕上げた作品で、いつ殺人が起るとも分からない雰囲気が全編に渡り漂っていて、緊張感を持ったまま最後まで観ることができた。 ロベルト・ロッセリーニとイングリッド・バーグマンは実生活でも不倫関係にあったが、本作はその不倫関係をまるで鏡の様に映しこんだ内容である。 結果、ロッセリーニは、不倫というものを深くリアルに追究し過ぎ、本作をもってバーグマンとの不倫仲も終りを遂げる。 ロッセリーニが、自身のプライベートをさらけ出してでも撮ろうとしたその意気込みを評価したいが、その一方で、単にロッセリーニの女グセの悪さを見せられているだけの様な気がしなくもない。 不倫とはいかに不誠実で、リスクが高いか。 単純に言えば、そんなことを訴えている作品である。 そんな単純な題材を、ロッセリーニは独自のセンスで、サスペンス劇としても十分に楽しめる作品に仕上げてみせた。 ロッセリーニは、イタリア近代映画の草分け的存在の監督だけあって、その完成された演出手腕には、さすがの貫禄を感じた。 [ビデオ(字幕)] 7点(2011-06-12 01:21:37) |
1430. ヴァリエテ(1925)
《ネタバレ》 妻の浮気を知り、浮気相手との空中ブランコに臨む夫。 このシーンの緊張感がたまらない。 ラストで浮気相手に殺意を抱き、睨みつける夫の目つきに鬼気迫るものを感じた。 [ビデオ(字幕)] 6点(2011-06-11 09:16:42) |
1431. ビッグ・パレード
《ネタバレ》 『ビッグ・パレード』と言うから、さぞかし派手で楽しいパレードを予想したのだが、まるで反対だった。 『ビッグ・パレード』とは、戦時下における車や兵隊の“大行進”だったのだ。 でも、このビッグ・パレードの演出に凄みがあった。 大量の兵隊たちが敵陣に向って突き進んでいくが、敵方の機関銃にバッタバッタと倒れていく。 そんな仲間たちを尻目に、倒れるまで敵陣に突き進む兵隊たち。 死をも恐れぬビッグ・パレードに、戦争の狂気をも感じた。 サイレントの音楽付きだったが、音楽もそのビッグ・パレードを盛り立てる様に躍動。 何だか得たいのしれない迫力を感じた。 サイレント映画だからこその、独特の迫力だったのかもしれない。 [ビデオ(字幕)] 6点(2011-06-10 23:32:56) |
1432. 紅夢
中国製作映画としては、チェン・カイコーの『さらば、わが愛/覇王別姫』に匹敵する濃度を持った作品。 チャン・イーモウは、この頃、素晴らしい作品を撮った。 現在に関しては、敢えて語らず。 抜群の才能が、出世的野心と金によって摘まれることの損失の大きさ、本作を観てこれを感じずにはいられない。 主演のコン・リーは、完璧なまでの大陸美人。 チャイナ服をとっかえひっかえ着こなす。 そして、巨大なのに閉塞感たっぷりの大邸宅。 妾4人とは羨ましくもあるが、現代日本の感覚からすると、むしろ寂しい印象の方が勝るかも。 とにかく、あのお城の様な邸宅は冷たい感じがする。 大体、気味の悪い小屋が屋上にある時点で頂けない。 だが、中国ならではの文化、もちろん中国の中でも特殊な世界での文化だろうが、我々日本人からしたら、カルチャーショックの何物でもない。 同じアジア圏の私から見てもショックを受けたくらいなので、欧米人が本作を観たらどんな感想を持つんだろうか。 [ビデオ(字幕)] 7点(2011-06-05 01:52:59) |
1433. 激突!殺人拳
千葉真一の最高傑作にして、日本アクション映画の最高峰! “ブルース・リーに挑戦する!”と本作予告編で出ていた様に、素晴らしい内容。 綺麗な技術を披露するのではなく、相手の急所をガンガンやりまくる戦い方は、この映画ならではの凄み。 千葉真一が得意の「コホーーー、カァーーーーア」と地鳴りの様な(オッサンが痰を吐く様な)気合いを入れて、相手をバッタバッタと叩ききる。 これが爽快!残虐!グロテスク! 相手の金玉はもぎ取るは、眼は潰すは、ノド仏を引きちぎるは、とにかく喧嘩殺人拳! ストーリーの破綻が所々に散見されるが、そんなマイナスポイントは千葉真一の気合いと共にどこかに消し飛んでしまった。 中途半端な終り方も、本作ならば許される。 ラストは、あれはあれで面白い。 でも説得力はない。 ところで空手会館の館長が出てきたが、あの方は本物の空手家であろう。 妙にチンチクリンで、しかも映画的なかっこよさも無く、しゃべりがヘタクソ過ぎるのが、そう感じた要因。 千葉真一と、この短足館長との戦いも、大きな見せ場の一つであったりする。 [ビデオ(邦画)] 8点(2011-06-02 23:38:02) |
1434. 少女娼婦 けものみち
《ネタバレ》 ヤルか食うか。 ただそれだけの内容。 内田裕也だけは素晴らしい。 内田裕也の若い頃は実に魅力的。 あとはダメダメ。 あと、にっかつ独特の、口パクの様なつくりもダメダメ。 このにっかつ映画が、一部ファンの中で高く評価されている理由が分からないし、分かりたくもない。 [DVD(邦画)] 1点(2011-06-01 21:56:43) |
1435. ピョンヤン・ダイアリー 1994-1997
オーストラリア人が北朝鮮を旅した際に、手持ちカメラでもって、北朝鮮の実態を映像におさめようと、旅先の日々を綴ったドキュメンタリー映画。 日本のニュース映像で垣間見る北朝鮮の映像は、非常に限定、いや、人為的に偏った映像であり、それが日本人の北朝鮮という国に対する偏見を生んでいる。 アメリカ傘下の日本では、北朝鮮の実態そのままをニュースで報じることは現実的には不可能である。 そんな中で、オーストラリア人が北朝鮮を旅して、監視付きながらも北朝鮮の映像を中立的立場で撮って見せた本作はとても価値があり、有意義なものであると私は感じた。同じ人間である以上、日本人も北朝鮮も平和を願っているという点では共通である。 勿論、できれば戦争は避けたいと北朝鮮人も思っている。 だが、アメリカが世界を牛耳る世の中で、アメリカにおんぶにだっこである日本が、北朝鮮を正しく理解できるはずもない。 それはアメリカに影響を受けた報道規制の中でしか、我々日本人は北朝鮮の思想や実際の姿をニュースで見ることしかできないからだ。 北朝鮮は小国ながら、社会主義国としての立場を貫こうと奮闘している。 こういった北朝鮮の真っ直ぐな姿勢を、もっと日本人は客観的に評価すべではないか? もちろん、北朝鮮の全てを肯定しろという意味ではない(飢餓問題など)。 報道規制されたマスコミの情報だけで、北朝鮮を悪い国だと決め付けている日本人、アメリカにぶら下がり安穏としてアイディンティティを持ち得ない日本人は、北朝鮮のこういった真っ直ぐな姿勢にもっと興味を持ち、理解する努力すべきなのではないかと思う。 アメリカに抑圧され、操作された日本報道文化の中で、どうしたら我々日本人が、同じアジアの国で自国のアイデンティティを貫いている北朝鮮を理解できるのか。 中立的な本作を観ていると、そういった疑問や不満がわいてくる。 念のために書いておくが、本作は決して北朝鮮寄りに創られたドキュメンタリー映画ではない。 オーストラリア人が、極めて中立的な立場で創り上げたドキュメンタリー映画である。 極めて客観的で中立的な本作を観るにつき、アメリカ式資本主義に対立する、社会主義国に関する日本人の理解の低さ、そしてマスコミ報道を丸ごと無意識に信じ込んでいる日本人の愚かさを感じずにはいられない。 [DVD(字幕)] 7点(2011-05-31 03:21:42) |
1436. アリスの恋
母とその息子の二人が織り成す、典型的なロード・ムービー。 かのマーティン・スコセッシ監督が、その名を知らしめた記念すべき作品だが、その後の磐石過ぎる活躍を象徴するかの様に、本作も危なげない演出で卒が無い。 それだけに、また突き抜ける何かが無いとも感じる。 勿論、駄作という意味ではないが。 あのクソガキを可愛がる母親は、まさに母親ならではの母性を感じる。 普通なら、あんなクソガキは放っぽり捨てて当然なぐらいだ。 そういう意味では、ロード・ムービーの味わいと共に、親子愛を描いた作品としても評価されるべき作品だろう。 [ビデオ(字幕)] 6点(2011-05-29 23:06:53) |
1437. 自由を我等に
《ネタバレ》 ルネ・クレール監督と言えば『巴里祭』や『巴里の屋根の下』をイメージする私としては、本作も妙にハッピーな雰囲気のお祭り騒ぎ的な作品なのでは?と想像していた。 ところが良い意味で予想を裏切った。 本作は社会を風刺しながら、楽しさも健在で、それでいて友情に重きを置いた人間ドラマでもあった。 ルネ・クレールがこんな作品を撮っていたとは知らず、ずっと軽い監督のイメージを持っていた私としては、新たな発見をした作品にもなった。 チャップリンが『モダン・タイムス』を撮る際に参考にしたと言われるだけあって、どこかそのドタバタぶりが、チャップリン映画に通ずるところがあった。 序盤の脱獄から、最後に二人で去っていくシーンまで、見事なまでの仕上がり具合。 ルネ・クレールの最高傑作。 [ビデオ(字幕)] 7点(2011-05-28 22:08:14) |
1438. 盗まれた欲情
騒々しく猥雑で、暗めの映像から、今村昌平監督の息吹を既にこの頃から感じ取ることができる。 どちらかと言えば好みの監督ではないのだが、長門裕之と南田洋子二人の体当たりの演技に、吸い込まれるようにして画面に見入った。 二人の接吻は、それはそれは、心がこもっていた。 これ以上ない、極上の接吻シーンである。 この二人の役者がこの世を去り、亡くなる間際に老い衰えた姿をテレビなどで見ると、さすがにこの世の無常を感じざるを得ない。 しかしながら、この二人の役者、いや、人間には、確実に輝いていた時代があったのだと、一種の安堵感に似たようなものを感じる。 誰にでも素晴らしき頃があったのだと。 今村昌平監督は、既にこの作品から巨匠としての歩みを始めていたように思う。 本作には既に、今村昌平監督の個性と力量が十分に発揮されていたからだ。 [ビデオ(邦画)] 6点(2011-05-25 23:39:51) |
1439. 上海特急
北京から上海に向う特急列車“上海特急”。 実際に、私自身がこの区間の列車に乗ったことがあるので、時代を超えた不思議な臨場感というか、一体感を観ていて感じた。 マレーネ・ディートリッヒは、まさに妖艶な大人の美しさ。 モノクロの決して観やすい画像とは言えない本作の中でも、際立つ美しさとオーラを放っていた。 列車という閉鎖的な空間がいまいち活かされていないのが残念ではあるが、それは無いものねだりかもしれない。 謎の黒髪中国女の存在が、序盤からサスペンスな雰囲気を盛り上げてくれた。 [ビデオ(字幕)] 6点(2011-05-22 23:32:21) |
1440. ウィンダミア夫人の扇
サイレント映画特有のテンポのダルさはあるものの、サイレントにしては比較的見やすい作品。 内容の構成はいたってシンプル。 ウィンダミア夫妻と、その他二人が主要登場人物。 この4人の間に起るちょっとした恋愛劇が主軸となり、華やかなお金持ちの晩餐会などの見所もあり。 女優陣で気になったのは、そのボディライン。 ずん胴。 つまり、くびれなし。 そして、たるんだ二の腕。 この時代は、こういった女性が美しいとされていたんだろうか。 エルンスト・ルビッチ監督の作品はあまり見たことがないが、入り口としての感触はそんなに悪くなかったので、これを足がかりにして、今後も積極的にルビッチ監督作品を見ていきたいところだ。 [ビデオ(字幕)] 6点(2011-05-21 20:16:09) |