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プロフィール
コメント数 2454
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1421.  その場所に女ありて 《ネタバレ》 
最近『悪の階段』を観るまでは恥ずかしながら鈴木英夫監督のことを全然知らなかったのですが、昭和30年代にこんなにハードボイルドでしかも女性が主人公のサラリーマン映画を撮っていたなんて、本作を観てさらにぶっ飛びました。昼は会議室や応接室、夜は酒席でビジネスが進む、営業系サラリーマンの仕事ぶりが実にリアルに描かれています。 そして司葉子のカッコいいことと言ったら、さすが昭和を代表する美人女優のひとりです。現在はすっかりふっくらしたおばあちゃん(失礼)ですが、この映画で見せるショートヘアのいかにも出来そうな営業ウーマン姿にはもうほれぼれとしてしまいます。それまでお嬢さん女優だった彼女にこういうシャープなキャラを演じさせるとは、『悪の階段』で団玲子に悪女を演らせた鈴木英夫ならではの手腕にもう脱帽です。 ライバル社の広告デザインをこっそり手掛けて報酬をもらう主任デザイナー(完全な背任です)、社内で金貸しをやって月三分の利子を取る女子社員(超高金利!)、こういったまだ生きてゆくのに精いっぱいだった時代のホワイトカラーの生態には考えさせられるものがあります。最近『ALWAYS 三丁目の夕日』なんかで昭和30年代が過剰に美化される風潮がありますが、高度経済成長前期までの日本はまだまだ喰うのに精いっぱいだったのです。司葉子が査問に懸けられてクビになりそうになるシーンでも、「私が生活し生きてゆくにはこの会社が必要なんです」と毅然とした態度で訴えます。現代で重要視される「やりがい」とか「自分らしさ」なんて御託を並べる余裕は誰にもなかったんです。 社長シリーズや無責任男シリーズを量産していた陰で、こんなリアルでカッコいいサラリーマン映画が東宝で撮られていたとはほんと驚きでした。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-12-02 23:44:44)
1422.  雨に唄えば
これぞまさしく“ザッツ・エンターテイメント”、やっぱ本作が史上最高のミュージカル映画と言うことになるんでしょうかね(個人的には『キャバレー』がトップなんですが)。“Singin’in the Rain”という曲は、『ザッツ・エンターテイメント』のオープニングを観ればMGMのミュージカルで何度も使われてきたことが判ります。でももちろんジーン・ケリーの躍動感あふれるダンスに勝るものはないし、本作以降のミュージカル映画でも彼のパフォーマンスは越え難い壁となって挑戦を跳ね返している気がします。コメディとしても秀逸ですし、「ミュージカル映画は苦手だ」とおっしゃるあなたも一度は観ておくべきですよ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-12-01 21:44:22)
1423.  俺は都会の山男 《ネタバレ》 
公開されたのが新東宝倒産の半年前ということもあってか、タイトルクレジットには大蔵貢の名前が消えています。この映画は“山”や“登山”とはいっさい関係がなく、吉田輝雄の演じる乱暴男のキャラが“山男”と言うわけです。 この男、就職面接で居眠りをした挙句人事部長をぶん殴ってとうぜん就活は失敗、チンピラと組んで“喧嘩商会”なる商売を始めます。要は腕っ節の強さを活かして喧嘩の仲裁(というか助っ人)でカネを稼ごうというわけですが、この“山男”が超硬派なのに女には滅茶苦茶モテて若いのから熟女まで七人もの女が金魚のフンみたいにまとわりついてきます。まあそこは“ハンサム・タワーズ”の吉田輝雄ですから納得しましょう。彼は菅原文太や宇津井健と違ってアクション演技にキレがあってボクサー役でも務まりそうな身のこなしです。 本作は新東宝には珍しいドライでC調なギャグが連発され、ひょっとして東宝の喜劇シリーズより可笑しいんじゃないかと思わせるところもあります。豪華と言うか、コロムビア・トップ・ライトや江戸家猫八といった当時のお笑いのスターたちがワン・シーンずつ登場する構成なのが新東宝にしては珍しく、中でも由利徹の裁判官と南利明の書記のギャグには笑ってしまいました。警察を徹底的にバカにしたり当時の池田政権の政策を名指しでおちょくったりするアナーキーなところもプログラム・ピクチャーとしては珍しいところです。 さて実はこの映画には奇妙な部分があります。留置場の担当警官というホントのチョイ役なんですけど、制帽をま深に被っていてアップショットもないので判りにくいのですがどうも丹波哲朗みたいなんです。その警官にむかって「お前最近トップ屋なんかして稼ぎやがって」なんて言う楽屋落ちなセリフがあったのでこれは丹波だと確信しちゃいました(彼は当時TVドラマ『トップ屋』で活躍してました)。とすれば、そのころは大蔵貢と喧嘩して丹波は新東宝をクビになってたはずで、大蔵貢に無断でノン・クレジット出演させたってことでしょうか。なんか新東宝末期の混乱が透けて見える様な気がします。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2013-11-29 20:40:17)
1424.  料理長(シェフ)殿、ご用心 《ネタバレ》 
料理がテーマの映画は出てくる皿が美味しそうに見えるかどうかが大きく映画の印象を左右しますが、この映画では偉大なるシェフであるポール・ボキューズが腕をふるった実物が撮影に使われており、どの料理も実に美味そうです。パリのマキシムなど超一流のレストランを使って撮影しているのもゴージャスです。ジャクリーン・ビセットが創る“爆弾ケーキ”はクリームを盛り上げて創ってゆくところはもう涎が出そうなほどですけど、オッパイの片割れみたいな完成形はちょっとねぇ(苦笑)。 スクリュー・ボール・コメディとしてはセリフ・音楽・テンポのバランスが絶妙で、文句なしに楽しめます。ジャクリーン・ビセットはうっとりさせられるほど美しいし、ドンフェルドの衣装がまた素晴らしいんですよ。ジョージ・シーガルはあまり好きな役者じゃないけど、コメディを演らせたらやっぱピカイチであるのは確かです。 シェフたちの殺されかたが、「料理とは食材を切り刻み火あぶりにすることである」と言うアイロニックなブラック・ユーモアとシンクロしていて、往年のイーリング・コメディに通じるところもある秀作だと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2013-11-26 23:50:26)
1425.  加藤隼戦闘隊 《ネタバレ》 
意外にも旧帝国陸軍は広報・プロパガンダに関しては海軍よりもはるかに熱心だったそうです。戦艦大和・武蔵やゼロ戦の存在は国民には秘密にされていたこともあり、実は戦時中に一般国民にもっとも知名度が高かった戦闘機は陸軍の一式戦闘機「隼」だったそうです。この映画はその一式戦闘機の部隊を指揮した軍神加藤建夫中佐の戦歴を描いた戦意高揚映画ですが、単なるプロパガンダ映画と斬って捨てるには惜しい詩情を持っているのは確かです。 この映画のどこが凄いかと言うと、陸軍省後援なんだから当然ですが本物の軍用機を惜しげもなく飛ばして撮影しているところです。そりゃ隼の飛行はたっぷり拝めますが、その他にも97式戦闘機や97式爆撃機、そして鹵獲したP-40やバッファローと言った敵側の戦闘機まで実機を使っているのには驚かされます。中でも眼を瞠るのはラングーン空襲のシークエンスで、隼に護衛された97式爆撃機に敵機が襲いかかるシーンは『空軍大戦略』でハインケルにスピットファイアが突っ込んでくる空撮シーンとそっくりなんです。私は『空軍大戦略』のスタッフもきっと本作を観ていて影響を受けたんじゃないかと推測しています。 藤田進の加藤中佐は彼の最大の当たり役だったことは間違いなく、九州訛りが抜けない独特のセリフ回しがいかにも部下思いで傑出した統率力の持ち主だった加藤建夫らしくて良いんです(もっとも加藤建夫は北海道出身なのであんな訛りはなかったでしょうけど)。 ラストはもちろん史実通り戦死して終わるわけですが、なんとそこは字幕一枚で説明してお終いと言う呆気なさ。その代わり最後の出撃にいたるまで、前夜の部下たちとの世間話や離陸直前まで還りの遅い部下を心配している様子などを10分以上見せるちょっと独特な撮り方をしています。でもそこには不思議な余韻があって、私としては気に入りました。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2013-11-24 21:41:42)(良:1票)
1426.  波止場の王者 《ネタバレ》 
新東宝が大蔵貢体制になる直前に撮られた一本です。なのでまだエログロ路線じゃないのですが、本来から新東宝という映画会社が持っていた弱点が良く見えるのです。新東宝は設立当初は文芸映画などに秀作が多いのですが、とにかくアクション映画が苦手だったみたいでろくなものがない。アクション映画にはヒーローが欠かせませんが、このヒーロー役者に魅力的なスターがいなかったこともアクション路線の出来の悪さに拍車をかけてしまったみたいです。 本作でも、宇津井健と中山昭二という新東宝が誇る二大へなちょこアクション・スターが共演です。中小企業の造船会社が密輸組織の妨害を受けながらも新型ジェット・エンジン船の開発に奮闘するという『プロジェクトX』チックなお話しです。石川島みたいな総合企業じゃないのに、一介のボロ企業がなんでジェット・エンジンの開発なんか出来るのかという突っ込みはまあ良しとしましょう。縮尺模型に花火みたいなエンジンを付けて実験、それが上手くいったからと言って「ジェット・エンジン船の開発に成功した!」と言い張るのも、まあ低予算なんだからしょうがないでしょう。 でも私が許せないのは、宇津井健が密輸組織のボス(中国人)と対決するクライマックスで、「そのへっぴり腰のアクションは映画を舐めとらんか!」と正座させて半日は説教してやりたいぐらいです。敵役のボスも変なカンフー技を使うし、ぴょーんと岩にジャンプするのには呆気にとられてしまいました(フィルムの逆回し撮りでした)。 そういや丹波哲朗も出てましたね、まあそれはどうでも良いとして、前田通子を使いながらなんでもっと露出シーンを撮らないんじゃ!これは致命的でした。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2013-11-23 22:49:49)
1427.  続・夕陽のガンマン/地獄の決斗 《ネタバレ》 
20年ぶりぐらいに観直しましましたが、南北戦争の戦闘シーンまであるし記憶に残っていた以上の超大作だったんだと再認識させられました。もっともカネかけてるのは判るけど、はっきり言ってあの戦闘シークエンスは不要だったんじゃないでしょうか。前作に続いて善玉・悪玉・卑劣漢の三すくみ対決ですが、ここまでこってりしていれば数ある三すくみ映画の完成形と言える存在で、このプロットはタランティーノが後年になって盛んに模倣していますが未だに本作を超える域にまでは達していないのです。 セルジオ・レオーネの映画では物語の進行があまりにゆったりし過ぎるのが欠点で、本作でも善玉・悪玉・卑劣漢の三人が一人ずつ紹介されるだけで冒頭30分も使うんですから恐れ入ります。さすがのリー・ヴァン・クリーフもイーライ・ウォラックには喰われっぱなしで可哀想でした。本作でのイーストウッドは“ドル三部作”の中でいちばん個性が薄かった気がしますが、まあこの“名無しのジョー”は『夕陽のガンマン』と合わせると莫大なカネを稼いだのだから良しとしなければ罰が当たりますよ(笑)。
[DVD(字幕)] 8点(2013-11-21 22:43:07)
1428.  徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑 《ネタバレ》 
思えば邦画の歴史の中でも60~70年代の東映で量産されたエログロ映画ほど、徹底して下品で扇情的なラインナップは無いんじゃなかろうか。時代が違うと言っても新東宝なんて子供騙しみたいなもんだし、日活ロマンポルノは比べるのが失礼なほど詩情に満ちた作品が多かったと思います。そんな東映エログロの中でもカルト中のカルトがついにDVD化されるという快挙を成し遂げました、世の中は成せばなるものなんですね(笑)。 だいたい、東大出のエリート社長が「次は牛裂きでいけ!」なんて指示をふつう出しますかね、さすがの牧口雄二監督も眼を白黒させたんじゃないでしょうか。というわけで社長の指令通り牛裂きで血みどろの極致を再現させた前半と、艶笑廓喜劇といった味わいの後半が見事に分離した怪作に仕上がったわけです。でも川谷拓三が絶品の後半パートはそれなりにエログロですが実に味わい深く、牧口雄二もほんとはこういう流れで全篇を撮りたかったんじゃないでしょうか。死んだ捨蔵の声が「これから気ぃつけて生きてゆくんよ」とおさとに語りかけるラストには思わず落涙でした。
[DVD(邦画)] 6点(2013-11-20 21:47:51)
1429.  夕陽のガンマン 《ネタバレ》 
“ドル三部作”も二作目からはいよいよセルジオ・レオーネらしさが目立ち始めました。のっけから超ロングショットで始まるところなんかからしてもう痺れます。冗長と紙一重なレオーネ節ですが、凡百のマカロニ・ウェスタンの監督が束になっても敵わない彼独特の構想力ですよ。 メイン・テーマ「さすらいの口笛」が一緒なので『荒野の用心棒』の続編みたいな印象を持たれがちですけど、イーストウッドはどちらかと言うと影が薄くリー・ヴァン・クリーフとジャン・マリア・ボロンテとの元祖三すくみ状態を堪能すべきでしょう。 この映画のリー・ヴァン・クリーフのカッコよさは尋常なものではなく、『夕陽のガンマン』の主役はリー・ヴァン・クリーフだと私は断言しちゃいます。彼が使っている銃(バントライン・スペシャル)もカッコ良かったしね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-11-19 20:35:43)(良:2票)
1430.  呪いの館 血を吸う眼 《ネタバレ》 
『血を吸う』シリーズも第二弾になってようやく真打ち岸田森が登場、ようやくヴァンパイア映画らしくなってきました。実はこの人設定では父親がドイツ人(大滝秀治がカツラ被って演じてますが、とても外人には見えない!)ということなので、論理的には白人かハーフと言うことになります。牙を剥いて獲物に襲いかかるところはなかなかの迫力で、さすが邦画界随一のヴァンパイア役者だけのことはあります。冒頭のシーンで映る能登半島の海岸の夕暮れ空は血の色を思い起こさせるどす黒いオレンジで、その幻想的な映像はハマー・プロのホラーに匹敵する水準かと思います。 物語は秋子と夏子と言う姉妹に秋子の恋人の医師が中心に展開しますが、妹の夏子は岸田森に血を吸われてお仲間になってしまいます。ヒロインは秋子なんですが、どこか由美かおるに似ているコケティッシュな妹の方に眼が行ってしまいます。この女優は江美早苗と言って、なんと由美かおると同じ西野バレエ団出身だったんですね。映画出演はたった五本で本作がいちばん大きな役ながらこの後すぐ引退。その後中里綴という名前で作詞家として活躍し南沙織や少年隊など多数の歌手に詞を提供しましたが、昭和63年に殺人事件に巻き込まれて非業の死を遂げるという数奇な運命をたどった人です。岸田森に血を吸われて呪われちゃったのかなぁ…
[CS・衛星(邦画)] 5点(2013-11-16 21:23:02)
1431.  反撥 《ネタバレ》 
カトリーヌ・ドヌーブのフィルモグラフィ中最高のセクシー&露出度(なんせこの人は映画でヌードを見せたことが今まで皆無だし、これからもないでしょう)、そりゃ出演シーンの半分以上はネグリジェ姿ですからね。このネグリジェがまた悩ましくて、陽光に透けると彼女のボディー・ラインが見えちゃうんですよね、直接ハダカを見せられるよりはるかに刺激が強いです。ドヌーブって女優はホントは演技力はけっこうあるのにしゃかりきに演技を見せるタイプないのでどっちかと言うと世間では大根のイメージが強いのですが、本作を観れば若いころから高度な表現力を持っていたことが良く判ります。なにがすごいと言えば彼女の眼で、タイトル・バックの目玉の大写しから始まるぐらいですから最後まで眼の演技で狂気を表現しきってしまいます。 そして何度観ても生理的に拒否感を覚えてしまうのが壁から腕がニョキニョキ生えてくるシーンで、こんなこと考えつくロマン・ポランスキーという人は天才なのかド変態なのか、たぶん後者なんでしょうね。でも姉貴の愛人に抱きかかえられて笑みを漏らすラストのショットを観たら、ウサギやらの色んなメタファーの意味が判って脚本の巧緻さには感心させられました。
[DVD(字幕)] 8点(2013-11-13 22:19:56)
1432.  女の防波堤 《ネタバレ》 
新東宝の映画の中では、『九十九本目の生娘』ほどではないけどかなりカルト的な存在なんだそうです、この映画。 太平洋戦争終戦直後、空襲で家族を失い焼け出された小畑絹子と親友の荒川さつきは、進駐軍相手の慰安所である特殊慰安施設協会(RAA)に採用されて慰安婦になります。同僚には戦争未亡人もいましたがほとんどはもともとその道のプロの女ばかりで、米兵相手に慰安所は大賑わいです。小畑絹子はNO.1の売れっ子になりますが上司の課長の愛人になったおかげで福生の進駐軍クラブの歌手になり、これはちょっと楽な仕事でした。ここで空軍将校と知り合いめでたく結婚、ところがここから波乱万丈の転落人生に拍車がかかってゆくのです。 お約束通り夫は生後間もない娘を残して戦死、次はギャングの情婦になってヤク中になり、中毒を治療するために入院したら主治医に惚れられて結婚、慰安婦の過去がばれて離婚され自棄になって有楽町のガード下にたむろする街娼にまで落ちぶれる、映画の後半40分はもうジェット・コースター状態です。 小畑絹子は新東宝にはもったいないほどの美人なんですが、裏社会でぐれているときの演技と時折おとずれる平穏な生活の時の淑女ぶりとの落差があまりに大きくて、笑ってしまいました。この映画の呼び物は三原葉子がリンチされる『肉体の門』に出てくるようなシーンだと思いますが、別にヌードを見せるわけじゃないけどなかなか迫力がある肢体です。もっとびっくりしたのは荒川さつきが脳梅毒で文字通り狂死するシーンで、あのリアルな死にざまは子供が観たらトラウマになること間違いなしです。あと特筆すべきはあの古賀政男が音楽を担当していることで、劇中流れるギターのメロディーも古賀政男がつま弾いています。 製作年代はちょうど売春防止法が施行された頃で、こういったことは大きな社会問題だった時代だったことを考えると、新東宝らしい題材であることは確かです。正統派の監督が取り組めばとてつもなく重くなりそうなテーマなのに、新東宝らしくエロを強調したおかげで単なるジェット・コースター・メロドラマに仕上がったという感じでしょうか。 ラストで「もう二度と戦争をしてはいけない」という小畑絹子のセリフがあるんですが、とってつけた様な白々しさが漂い偽善の極みでした。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2013-11-11 21:30:03)
1433.  女獣 《ネタバレ》 
それにしても、いくら新東宝だからと言っても、このタイトルもう少し何とかならなかったんですかね。雰囲気だけでストーリーとは無関係で意味不明、まあそんなことで新東宝プログラムピクチャーに難癖付けてもしょうがないのは判ってますけど。 いきなり現金を輸送する銀行の車が襲撃されて銀行員たちは皆殺し、おまけに共犯の女まで始末されてしまう、そんな非現実的ながらもハードな幕開けです。この事件の捜査のために警視庁は婦人警官をズべ公に変装させて女子少年院に潜入させるのですが、こんな危険なこと婦警にやらせますかね? 作戦は上手くいって新宿の組織にまで潜り込めますが、どうもこの組織は麻薬取引の元締めでもあるらしいと判ってきます。ここで同じく潜入していた麻薬Gメンの菅原文太が登場です。実はこの映画が思ったより観られたのは、文太が一応ヒーローであるがなぜかほとんどストーリーに絡んでなかったからだと思います。とにかく新東宝時代の文太は、主演するとただでさえひどい出来の映画にとどめを差す必殺ぶりを如何なく発揮してましたからね。 この映画、麻薬中毒者の悲惨な禁断症状や新宿の風俗などが予想外の丁寧さで描かれています。ジャズ喫茶のバンド演奏なんか、音楽担当があの『11PM』の有名なテーマ音楽で知られる三保敬太郎なので、なかなかの迫力です。女優陣も左京路子や星輝美といった個性派を使っているところがグッドです。またところどころで遊園地のアトラクションを効果的に使ったショットがあったりして、撮り方が普通の新東宝映画とはちょっと違うなと思わせるところもあります。 でもやっぱり所詮は新東宝の映画、ユルユルな脚本ではどうしようもありません。文太をあまり活躍させなかったことには敬意を表して、ここはプラス一点とさせていただきます(苦笑)。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2013-11-08 23:20:34)
1434.  地下室のメロディー 《ネタバレ》 
フランスのノワールには“仁義”“掟”“男同士の友情”といった臭みが目立つ映画が多いが、この映画には不思議とそういう要素が見られません。ジャン・ギャバンが出所して家に帰りつくと通りの名前が変わっていたという冒頭シークエンスには、そこはかとないユーモアすら感じさせてくれます。でも人物造形やその背景設定には粗と言うかポカが目立ちますね。だいいち、10億フランもの大金を強奪する計画を立てる切実感や成功させようとする高揚感といったものがこの犯人たちから欠けている様に思えます。アラン・ドロンがダクトを這ってゆく様な細部描写にはとても拘りを見せているのにね。でもこのシーンを甦らせた『ダイハード』よりもずっと面白い撮り方でした(ダクトの中にエアコンの空流が吹き抜けるところなんか、もう最高です)。ドロンがちょっかいを出す踊り子やギャバンの女房が伏線の様な存在なのかと思えば全然発展しないキャラでした、ってのも自分としては不満なところです。 と言うわけで、観ての通りでラスト・シーンがすべてというジャンルの映画でした、まあこれはこれで粋な5分間であることは確かです(でもあのカバンが水に沈むかなー、『あやしい伝説』でぜひ検証して欲しいです)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-11-05 23:53:58)
1435.  電送人間 《ネタバレ》 
東宝特撮映画の中では、監督・福田純、脚本・関沢新一のコンビの作品はろくでもないという良い見本です。この電送人間というやつもなかなか難儀な存在です。なんせ、テレポーテイションするためには目的地に必ずバカでかい機械がないといけないんですから、トラックやら貨物列車で装置を先送りしとく必要がある。電送人間自体は普通の体質で殺人を犯した後は警官やら新聞記者から走って逃げ回らないといけない、彼も内心では「こりゃ、透明人間の方が良かったな」と後悔してたんじゃないでしょうか(笑)。 そしてこの映画を語るときに避けて通れないのが、あの伝説のキャバレー“大本営”です。悪役たちが本業の密輸をカモフラージュするために経営してるみたいですが、派手なネオン出してるうえけっこう繁盛してるから税務署あたりに眼をつけられたりして逆効果になりゃしませんかね。ボーイやホステス(このセーラー服姿はちょっとイケてました)の格好もすごいけど、なんと金粉ダンサーまで登場します(ダンス自体は致命的にダサいけど)。「ゴールド・フィンガーを臆面なくパクリやがって」苦い目で観てしまいましたが、よく考えたらこっちの方が4年も前の映画なんですよね、恐るべし東宝特撮映画! ラストは突然の浅間山の大噴火で閉めるという東宝特撮映画ではときどき観られる投げやりさですが、その噴火特撮までもが『日本誕生』の使い回しとくれば、もう監督の志しの低さを嘆くばかりです。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2013-11-02 20:15:03)
1436.  荒野の用心棒 《ネタバレ》 
セルジオ・レオーネの映画は長尺というイメージがあるが、この映画は例外的にふつうの尺に収まっています。もっとも本作以降の彼の作品で2時間未満の上映時間は皆無ですけど。 ほんと良くここまでと感心するぐらい黒澤の『用心棒』をパクってますねえ。もっとも私らの世代では、『用心棒』より先にTVで本作を観たという人の方が多いことでしょう。でも『用心棒』自体がウェスタンを意識したプロットだったから、見事にレオーネは換骨奪胎して見せたわけです。 とにかく若くて渋いイーストウッドを愛で、モリコーネの口笛のメロディーに酔いしれるのが正解でしょう。ラストの鉄板を腹に仕込んでのガンファイト(これはイーストウッドがアイデアを出したそうです)は今観ればなんかバカバカしくて、素朴に子供のころはなんで頭を撃たないんだろうと不思議でした。西部劇で頭や顔を撃っちゃいけないという規制があったことは後に知りましたが、マカロニ・ウェスタンも初期の頃はそんな不自然なルールを踏襲してたんでしょうかね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-11-01 00:18:37)
1437.  からみ合い 《ネタバレ》 
ガンを患って余命幾ばくもない大企業のオーナー社長が、遺産を与えるかどうか判断するために三人の認知してない隠し子を部下や弁護士に捜して連れて来いと命令を下す、まるで戦国武将の跡目争いか『リア王』みたいなとても現代劇とは思えないプロットです。社長以下登場人物がみな腹黒くていわば“全員悪人”といった風情で遺産をめぐった暗闘を展開するわけですが、どう考えても社長役の山村聡がミスキャストだと思います。手当たり次第に女に手をつけて子種をまき散らす、おまけに胃を三分の二も切除して療養中なのに秘書の岸恵子を手篭めにする、と言う風に肉欲の化け物みたいな絶倫男が山村聡だなんてちょっと無理があります。ここはもっと下品で脂ぎった演技が出来る役者を使うべきだったでしょう(新東宝なら適役と言える俳優がゴロゴロいますが)。 結局三人の隠し子のうち本物だったのは一人だけだったのですが、この隠し子たちが意外なほどストーリーに絡まないところがこの映画の弱いところです。芳村真理のエピソードなぞは殺人事件に繋がってゆくんですが、これってそもそも仲代達矢の弁護士が人違いをしてしまったのが発端じゃないですか。でもその辺を上手く観客に伝えられないストーリー・テリングの拙さは観ていてもどかしくなるぐらいでした。 いかにも小林正樹らしい重厚な撮り方なんですけど、なんか物足りなさが残ってしまうんですよね。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2013-10-30 17:27:37)
1438.  どぶ鼠作戦 《ネタバレ》 
岡本喜八の愚連隊三部作シリーズの中でももっとも切れた脚本と言ってよいでしょう、この映画は。この三部作はそれぞれのプロットはバラバラですが、共通する登場人物はもちろん佐藤允で、とくに本作で彼は最高のキレ味を見せてくれます。彼と藤田進や加山雄三のやり取りは、粋で軽妙の極みで聞き惚れてしまいました。惜しむらくは、サミュエル・L・ジャクソンの決め台詞“Mother Fucker !”と並ぶインパクトがある「ちっきっしょー」が、前二作ほど聞けなかったことでしょう。 藤田進がまたいい味出してるんですよね。坊さんが召集されて中国戦線に派遣されてきたという、いかにもと言うキャラを大らかに演じております。婚礼シーンの火踊りを観ても判る通り、この映画は『隠し砦の三悪人』のパロディみたいなところが有り、その中で彼が嬉々としてセルフ・パロディに興じるとは微笑ましい限りです。ラストなんか、有名な「裏切り御免!」へのオマージュになってますからね。 加山雄三も結局意外な役どころだったわけですが、この人はヒーローよりも脇に絡む役の方が上手いんじゃないでしょうか。もっとも砂塚秀夫の抱腹絶倒ぶりには大負けしますが(パントマイムで見張りを翻弄するシーンはもう最高です)。 あと今さら言ってもしょうがないことですけど、中国人とはちゃんと中国語(たぶん)で話すのは善いんですが、昼のシーンなんかは白文字を使っているので字幕が全然読み取れないことです。これは当時の東宝映画に共通する欠点なんです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2013-10-27 19:51:22)
1439.  ドラム 《ネタバレ》 
あの怪作『マンディンゴ』と同じ原作者の小説を映画化。『マンディンゴ』の姉妹編と呼ばれていますが、あえて言えば『マンディンゴ』のパラレル・ワールドみたいなプロットであります。 ドラムとは主人公である奴隷の名前で、演じるのはケン・ノートンだが役柄は『マンディンゴ』で演じたのとは全然関係はなし。アフリカの高貴な血筋を引いているというのは似ているけど、こっちでは母親が地主の愛人だった白人女と言うところがちょっと捻っています。 ややこしいのがドラムのご主人さまになる奴隷商人で、『マンディンゴ』で最後はたしか死んだはずの長男と同じハモンド・マックスウェルという名前なんです。彼の乳母兼女中頭もルクレチアと同じ名前で、同じ女優が演じているとなると『マンディンゴ』を観た人には頭の中に?がいっぱい湧いてきます。そこら辺はパラレル・ワールドなんだと割り切るのが無難でしょう。 登場人物はみな一段とグロテスクな奴ばかりになっていて、エロ度もアップしております。見どころはウォーレン・オーツとイゼラ・ヴェガという『ガルシアの首』のゴールデン・カップルの再登場で、ヴェガも豪快な脱ぎっぷりでした。最後は奴隷の反乱でウォーレン・オーツとケン・ノートン以外はほぼ皆殺しという結末ですが、反乱奴隷が襲ってくるシーンはまるでゾンビ映画みたいでした。 冒頭の手抜きのナレーションから始まって雑な部分が目立つ映画で、はっきりいって『マンディンゴ』の方がずっとマシでした。
[ビデオ(字幕)] 4点(2013-10-25 21:13:32)
1440.  スリーパーズ 《ネタバレ》 
少年が性的虐待を受けてその出来事が運命を変えると言うと『ミスティック・リバー』をどうしても思いだしてしまいますが、この映画も負けず劣らずの後味悪い結末でした。だいたい神父が偽証することを肯定する様なストーリーはちょっとどうなんでしょうか。デ・ニーロが演じるこの神父は、もともとさんざん悪事を働いた不良だったみたいで主人公たちがマフィアの下働きをしてもあまり本気で怒らない。いわば破壊坊主みたいな本性を持った人物なのに、デ・ニーロの演技からはあまりそれが伝わってこないんです。ストーリー上は13年の時の隔たりがあるのにデ・ニーロの風貌が全然変わっていないというところもあり、デ・ニーロめこの映画に関しては手を抜きやがったな、と思わざるを得ませんでした。でもあんなに衆人環視の中で殺人を犯しておいて、いくら店の主人や客が裁判に協力しなかったと言ってもふつう無罪になりますかね、まあ証人が聖職者でそいつが偽証するんだからどうしようもないか。 この映画こそムダに豪華な配役と言うに相応しく、とくにあの弁護士役にダスティン・ホフマンが必要だったとは到底思えませんでした。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2013-10-24 23:10:13)
030.12%
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