1441. ミスター・グッドバーを探して
《ネタバレ》 D・キートン扮するテレサは心が壊れてる。メンヘラな彼女が生きたのが退廃感漂う70年代だというのが状況の酷さを加速しているよう。父権主義の強すぎな父親から逃げ出して、酷薄な教授、わが身可愛い生活保護課の男、ゆきずりの男たちに至ってはヒモに前科者に泥棒警官に、と手当たりしだい試してみたけど結局彼女は“グッドバー”氏には巡り会えなかった。 メンヘラであばずれではあってもそれは彼女の一面で、他方では他者への共感性が強く優しいテレサ。妹を理解し、聾の生徒たちには心を込めて接し、男の嘘八百な身の上話に胸を痛める。男との情交の合間に汚い部屋で授業用の資料を作る、先生テレサ。 彼女をめった刺しに追い込んだのは一体何なのか。婦人運動だの性の解放だのとかまびすしかった時代に、R・ブルックスが一石を投じたような衝撃作。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-11-10 01:11:14) |
1442. ヴェロニカ・ゲリン
《ネタバレ》 道端に注射器が落ちているような退廃した北アイルランド、そこへ立ち上がる女性ジャーナリスト。使命感を大きく抱き、ガッツに溢れて妥協せず、容赦せず。なにしろ組織の黒幕オヤジが女相手に攻撃性向を100%むき出しにしてくるほどの、ある種の厚かましさもある。このタイプの人を身近なPTAなどのオバサンに当てはめるとイヤな気持ちになってしまいそうですが、ケイトで良かった。クールな美貌でテンション高く突き進むその姿、りりしく美しい。実に映画的。彼女が亡くなった翌週に法が改正されたなんて。何なのよ、できるのならもっと早くやれって。実話ならではの、やりきれない思いでいっぱい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-11-10 00:47:35)(良:1票) |
1443. 或る殺人
展開がやけに冗長でだらだらで途中眠くなった。やっと始まった法廷シーンも今の時代に見るとずいぶん分かりきったことを繰り返すなあ、という感想を抱く。パンティパンティと繰り返すってのもどうなのこれ。下着じゃだめなの?「正確を期す」ためったって・・コメディじゃないですよね、これ?オープニングで醸したオシャレ感がほんとにオープニングだけで終わってます。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-11-10 00:26:39) |
1444. 張り込み(1987)
個人的にはエミリオ・エステベスがオジサンぽくて衝撃を受けた本作なのですが、中身は“脱力コメディー”とでも申せましょうか、ゆるくて楽しいです。後半のサスペンス部も手を抜かずに作っている感じで好感度高し。余白の遊びの部分が楽しいんですよ。張り込み班二組が、相手チームにケチくさい嫌がらせを互いに仕掛けてるトコ、大好きです。 [ビデオ(字幕)] 7点(2013-11-10 00:16:01) |
1445. マリリン 7日間の恋
俺さあ、マリリン・モンローとちょっと付き合いあってさ、いや仕事でだけどね、というスタッフの自慢話だった。邦題といい、マリリンがこの主人公と恋に落ちました的なストーリーといい、どこまで盛ってんだか。彼女の遅刻癖とか夫との不仲とかはとっくにゴシップネタとして世間に知れ渡っていることで、この映画からはマリリンの実像なんてさっぱり見えてこない。そしてこれは創作を観ているワタシの責任ではあるんだけど、M・ウィリアムズがマリリンじゃないんだ。精一杯演じているのはわかるんだけど。メイクや仕草を真似ても、スクリーンのマリリンをなぞっても、天然マリリンの自家発光とは決定的に何かが違ってる。私はマリリン・モンローに恋焦がれたこともあるので、ミシェルに想像力を効かせることができなかった。主人公の貴族の坊ちゃんはへらへらしてるだけだし、マリリン・モンローを観てた時のトキメキももらえないし、なんだかなあな映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-11-08 01:12:22) |
1446. めまい(1958)
《ネタバレ》 ネタを中盤でばらしてしまうのね、と随分驚いたものでした。メイクひとつで随分雰囲気を変えてくるキム・ノヴァクにも。映画全体に妙な妖気みたいのが漂っていて、(あのぐるぐるめまいの描写のせいかな)彼女に同じ格好をさせようとするJ・スチュワートの粘着ぶりや、身もふたも無い突き放したようなラストに至るまでなんか気持ちの悪さが忘れ難い映画です。 [地上波(字幕)] 7点(2013-11-08 00:55:02) |
1447. 華麗なるアリバイ
読んでないけど、きっと原作も大したことないんだろうなあ、というのが感想。だってトリックらしいトリック無いんだもん。酷い邦題だ。医者妻が貧相な容貌の女優でこれはこれでナイスキャスティングだ、とかモニカ・ベルッチに七割方似ている女優を見て、残り三割って大事なんだなあとか失礼な事ばかり頭に浮かぶ2時間弱でありました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-11-08 00:45:02) |
1448. シンプル・プラン
《ネタバレ》 やっぱり、肩入れしたくなるのはB・B・ソーントン演じる冴えない兄貴。自分でも負け人生を自覚していて、良心のとがめにふらふら優柔不断で危なっかしいねえ。ああ、こんなのが仲間にいたらうまく行きっこないぞう、と予想できちゃう。その弟夫婦、一見、世間的にはまっとうなこの人たちがかなりの曲者。けっこうな小ずるさを正論で糊塗するハンクも嫌いだけど、欲に遠慮の無い鬼嫁ブリジットが怖い。ことごとく裏目に出る彼女の計画ったら冷血だわー怖いわー。ついにはヨメよりはるかに小心の主人公、札束焼却にて証拠隠滅。しかしヨメとの溝はもはや埋め難く残ったであろう。手に入らなくとも大金とは人生を狂わせるものなのね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-11-08 00:30:37)(良:1票) |
1449. アルカトラズからの脱出
脱獄モノのジャンルでいえばやはり後年になってより洗練された“ショーシャンク”の方がドラマの広がりや深みでずっと優れているとは思うけど、こちらも先駆者として侮れない出来。ごついイーストウッドがちまちまと進める脱獄計画の緻密なこと、大胆なこと。精神破綻をきたした画家だとかねずみをペットにしている調達屋とか黒人の頭役とか、脇もバラエティに富んでいる。もう少しイーストウッドと絡んでほしかったけど。人形、ふつう気づくよな・・。いやきっと本物の牢獄はもっと暗いんだよきっとそうだ と自分に言い聞かせていた鑑賞後。 [ビデオ(字幕)] 7点(2013-11-08 00:13:14) |
1450. バンデットQ
《ネタバレ》 アイディアが突飛なら、奇想天外なら、お話が面白くなるかといったらそれはまた別のハナシなわけで。人を引きこむお話の力って一体なんだろう。“自分だったら”と思わせるリアリティとか共感を覚えやすいキャラが立っているかどうかかな。え、そうなるのか、という楽しい驚きもほしい。いずれの要素もちょっと大したことなくて、映像にも目が驚かないしで期待はずれといったところ。冒険して戻ってきただけなのに親を失うってのは一体何の因果が応報しているんだ? [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-11-04 01:34:46) |
1451. ドラゴン・タトゥーの女
《ネタバレ》 ぱっと見はオリジナルそっくりだなあ、というのが第一印象。ルーニー・マーラのリスベットは一瞬オリジナルの女優さんかと思うほどだし、鬼畜後見人への復讐場面や最後の地下監禁部屋の内装?などはほぼミレニアムのまま。でも映画を観終わってみると、こちらの方が滑らかにストーリー展開していたような感じを受ける。ここら辺は商業映画に長けた脚本家が上手いこと手を入れたんだろうな。ミカエルとリスベットの関係、心の通い方などはオリジナルより丁寧に描きこんである。ラストなんかね、リスベット、それまで抜群のIQの高さでもってミカエルを凌駕していたのが、突如恋する小娘に成り下がる。ミカエルにあっさり遊ばれてた感すらある。“大人の男”の一枚も二枚も上手な度量を見せつけて、ここにきてダニエル・クレイグが見事にこの役にはまる。リスベット、ますます男嫌いにならなきゃいいが。 [DVD(字幕)] 7点(2013-11-04 01:20:21) |
1452. キャリー(1976)
《ネタバレ》 これを観た後は翌日まで心がしくしくと泣いてしまう。ホラーをこんなに哀しい話の道具にするなんてとてつもない作品だ。何が哀しいって、余りのショックに理性がふっとんだキャリーの能力が暴走して、自分の手で大事な人たちまで葬ってしまったこと。キャリー、キャリー、落ち着いて。いつも願って観てしまう。赤い業火の中に立ち尽くす真っ赤なその姿は異形を成していて強烈だ。 シシー・スペイセクが哀れなこの少女を絶望的なまでに上手く演じている。自信無さげな立ち居振る舞いとプロムでの幸せに上気した表情、どれもこれもリアルで辛い。惨劇後にしょんぼりとお風呂に浸かって血を落としているキャリーがとても可哀相で、ああ彼女に超能力さえ無かったら、幸せな展開になったかなと詮無い想像をしてみる。プロムは台無しだけど、クリス達は停学くらいの処分になるだろうし、実際キャリーは意外にも可愛かったから、クラスメート達も「クリスやり過ぎ」とキャリーの味方になってくれるだろう。うん、そうだそうだと一人喜びかけてたんだが、プロムから帰ったらあの母親が包丁研いで待ってるんだった・・と気づく。ワタシの貧弱な想像力はここで思考停止してしまう。哀しい。 [ビデオ(字幕)] 9点(2013-11-02 00:40:01)(良:1票) |
1453. 遊星からの物体X
“エイリアン(’79)”の有名な場面、食事中に乗員の身体を突き破って“キキーッ”とエイリアンが飛び出す、あの「うわあぁぁっ」というぞくぞく感をきっとカーペンターは1回じゃ物足りなかったんでしょうな。この手の「おわーっ」とか「ひいぃーっ」とかを何通りものパターンで演出してみせました。閉鎖空間という条件も無線の通じない南極基地の設定でクリア。この作品が単なるエイリアンの二番煎じといったレベルとちょっと違うのは、相互不信に陥る人間ドラマをそれはそれは役者陣が見事に熱演していることと、グロテスクなクリーチャーの造形の立派なこと。なんというか、こういう方面への偏愛すら感じる。一生懸命、丁寧に作ったんだろうなあ、このぐちょぐちょしたのを。拍手。 [ビデオ(字幕)] 8点(2013-11-02 00:09:19) |
1454. 4ヶ月、3週と2日
チャウシェスク政権末期のルーマニア、病んだ国家で青春を生きる女の子のある一日。ぱっと見、国情は全く豊かでなく、補修を一切してなさそうなビル、滞りがちな物資、停電の頻繁に起こる街。薄暗くて汚い小路。官僚的でサービス精神ゼロのホテル受付の態度に共産圏の香りをびしびし感じる。国がきちんと運営されていなくとも人はそれなりに結託して生き抜くもので、学生寮にまで闇市まがいの流通はあるしバスの切符すら見知らぬ人に融通する助け合いの精神があるのに驚いた。主人公オティリアもまた、その「助けなきゃ精神」によって友人に翻弄される。だけど彼女の助け合いポリシーが揺ぎ無いんだ。胎児を処理(!)までして危険な街路を帰ってきたオティリアをけろりと食事して待つ友人。そんな相手を特になじるでなく疲れを漂わせながらも大変な一日を淡々と終えるオティリアの横顔。理不尽で厄介なことに慣れた、独裁国家の国民そのものを象徴するよう。だけどこの人たちは打ちひしがれたままでない、その後の経緯を知ってるからこそ、とても興味深く観賞できた。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-11-01 01:46:18) |
1455. アバウト・ア・ボーイ
ちょっとこの母親ダメだよなあ。コニ・トレット演じるエキセントリックな母ちゃん。別に変人でもベジタリアンでもいいんだけど、子供の心にあんなに負担をかけるなんて。自分の重荷を子供に負わせるなんて。子供が傷ついていることに全く気付いちゃいないなんて。もお腹が立って腹が立って。こういう話ではヒューが不誠実でヤな奴と相場が決まってるんだが、今回ウィルなんて小物に感じるぜ。ヒュー・グラント、ふらふらと落ち着かない男を演らせたら世界一だけども今回は意外と繊細な心遣いも見せる。ギター伴奏しながら助っ人としてステージに現われた時なんか生まれて初めてヒューに惚れそうになったぞ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-10-28 00:46:51)(良:2票) |
1456. 第十七捕虜収容所
収容所が舞台だと、陰惨だったりキツかったら嫌だなあと身構えてしまう私ですが、ビリー・ワイルダーは捕虜いじめに精を出すといったことをしないので、お気楽なコメディーになっててひと安心。ラスト手前までほんと楽しかったのだけど、スパイの処遇には突如として戦争のダークサイドが顕れてびびった。なんかリンチみたいじゃん。キツイなあ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-10-27 23:58:22)(良:2票) |
1457. チェ 39歳 別れの手紙
第一部で観かたのコツをつかんだ(?)ので、第二部は単調さに動揺せずに済んだ。ゲバラがついに力尽きる終幕に感傷点を1点プラス。 二部でもゲバラの人物像については詳しく語られないのだけれども、部下が落伍しそうな奴に言うんだ。「彼はキューバにいたら車を二台以上持てる暮らしができる。なのにここにいる。病院を造るために、子供に教育を与えるために。」この言葉で充分なのかもしれない。デルトロの寡黙だけど信念の強い眼差し、その演技で伝わるものは充分あったし。 キューバと勝手が違って、賛同の動きが鈍いボリビア国民。下がる隊員の士気、資金力で圧倒する政府軍。過酷なゲリラ戦を今回も淡々と描く。実際、本当にこんな風に黙々としているのだろうな。ただただ信念を腹にくくって、孤独に地味にゲリラ活動は行われるのだろう。ついに捕えられ、命を散らすチェ・ゲバラ。その瞬間の場面にはソダーバーグの、ゲバラに対する敬意が感じられて鼻の奥がつん、となった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-10-25 00:53:20) |
1458. 狼たちの午後
《ネタバレ》 アル・パチーノは本当に何をやらせてもちゃんと掴むなあと思う。髪形を変えるとか体重を増やす減らすとか頬に綿を詰めるとか、そういう外見変化に頼らずに見た目はアル・パチーノその人なまま、マフィアもチンピラも不良刑事etc・・も見事に演じ分ける。 今作ではこれまたコクのあるJ・カザールと駄目な銀行強盗犯役。なにしろ冒頭からライフルを構える手際の悪さぐだぐだで、一瞬コメディなのか?と思うがさにあらず。本人たちは実に必死で人生を賭けた大一番なのだった。しかし今ひとつ考えが足りなかったり行き当たりばったりで全く場をコントロールし切れない。一生懸命やっても上手くいかないこの釈然としない思い。人が皆抱くこの哀しさ、特にJ・カザールはもうそこにいるだけでダメ人生がにじみ出そうな佇まいでほんと他人事でなくどこか愛おしくもあり、ワタシもすでにストックホルム症候群に軽く罹患しているのを自覚する。 dog day、うだるような暑さ。タイトルそのままに暑さが、やり切れなさが画面から漂ってくる。当時のどん詰まった世相をも切り取った映像は重たくずっしり。名作。 [DVD(字幕)] 9点(2013-10-22 01:11:25)(良:1票) |
1459. キラーカーズ/パリを食べた車
《ネタバレ》 ピーター・ウィアーのデビュー作らしい。監督、これキャリアにしといていいんですかね?内緒にしときましょうか、と気を利かしたくなるようなヘンテコ映画。何が変ってうまく説明し難いんだけど・・、まず舞台が街ぐるみで追いはぎやってる犯罪タウンなんだ。ここに偶然たどりついた主人公、彼によってこの街の非道が暴かれ、裁かれるのかな?と思ったら、さにあらず。この彼がけっこうなぼんくらで、悪徳市長に言いくるめられるのみ。観てるこちらの正義はどこにも預けられないの。でもって凶悪な暴走族が登場、街を破壊するクライマックスなんですがここもハリネズミみたいな改造車でどかーんと建物に体当たり。迫力もあまり無い。正直住民が逃げ惑う姿に違和感あり。主人公はといえば人ひとり圧殺して“運転できるようになった♪”と嬉々として街を去るのだった。こらーっ。おまけに音楽が、こんなに変で異様な展開なのにリゾート地でかかる系のBGMだった。なんか色々と、映画を観るうえで初体験なこと多かったです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-10-21 00:45:20) |
1460. 300 <スリーハンドレッド>
スクリーンで見る漫画。かさっとした画像加工が施されている映像で、1ショットが美術画みたいな。なんか初めて見たぞこういうの。ぱあーっと飛び散る血しぶきが蝶々になって飛んでいくよう。あんなに死者累々なのでリアルに描写されてもむごいわな。色っぽい女王様はラブシーンの為だけに出演みたい。頭あんまり良くないし。造形に凝ってるのはクセルクセス王。若さと美しさを全面に押し出した残虐の王。日サロ焼けした肌に無数のピアス、闇の帝王みたい。極端に作り物めいた感じがコミックテイストにあふれてて本作にぴったりでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-10-21 00:24:09) |