1461. 姿三四郎(1943)
黒澤映画ならではの、水彩画の様な美しいモノクロ映像。 華奢な月形龍之介が柔道家というのも、少々ミスキャストにも感じたが、淡いモノクロの映像美を活かしたシンプルなストーリーには、嫌味も感じず、すっきりとした後味が残った。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-04-29 14:56:47) |
1462. 絞死刑
冒頭に“絞死刑”という文字が長い時間ズドーンと出てくる。 冴え渡るモノクロ画像。 そして、絞死刑の様子が生々しく厳かに再現される。 ところが、途中からコメディタッチな展開へシフトする。 そして最後まで、その悪ふざけ。 だけど、大島渚監督の言わんとしていることは終始一貫している。 「死刑制度」の是非を、観る者に問うているのである。 強姦殺人事件を2件犯した朝鮮人の若者が、法により死刑される。 法をやぶったのだから死刑で当然だという考え方に対し、どんな残酷なことをした人間だとしても、人間が人間を殺してはいけないのではないか?という命題を叩きつけてくる。 死刑を行うのは誰か? 死刑執行作業を行う者でもなく、それを指示する上官でもない。 ならば、国家か? 国家といっても、目に見えない。 国家が定めた法律だから、人間を処刑(殺す)ことができる。 そうは言っても、処刑を行うのは人間の手によるものである以上、死刑が広義の殺人として考えられなくもない。 大島渚は、終盤でこのような内容を、ふざけた調子でガンガンと主張してくる。 私はと言えば、死刑制度には反対でも賛成でもない。 ただし、殺害された被害者の親族などの立場になったら、どうなるだろう。 本作は、そういったことを考えさせられる至極真面目な映画であるが、その反面、表現方法としては、大の大人がふざけまくるという演出手法を採用している。 そこが実験映画的であり、ATGとしての主張とこだわりを強く感じることができた。 [ビデオ(邦画)] 6点(2011-04-28 20:50:34) |
1463. イースター・パレード
フレッド・アステアが嫌い、アメリカミュージカル映画が嫌いで観てみたが、予想より楽しめたから、やっぱり名作と言われるだけの魅力がある作品なのだろう。 アステアのタップ、これはとにかく凄い。 映画的に凄いのではなく、単にアステアのタップが凄いというだけ。 1940年代に、これだけ鮮やかなカラー映画を作れるのはアメリカだけだろう。 それだけに、アステアを含め、戦勝国としての優位さと得意気な感じがハナにつく。 [ビデオ(字幕)] 4点(2011-04-27 15:54:32) |
1464. 日本誕生
とにかく物凄い出演陣。 オープニングで出演者の名前が出てくるところなんか、まさに豪華な連続打ち上げ花火の様! 次から次へと、大物役者の名前が出ては消える。 これはまったくもって爽快だった。 その役者陣の中でも、先頭をきるのが三船敏郎。 最初から最後まで出ずっぱり。 他の豪華な出演者達は、カメオを出演程度という内容で、不満を感じた。 東宝映画1000本記念作品ならば、一つのカットにこれだけの出演者達を一堂に並べて欲しかった。 細切れで別々のカットに色んな大物役者が出てきても、いまいちその豪華さを実感できない。 話はヤマトタケルの物語で、ヤマタノオロチとかお馴染みの名前が出てくる。 特撮にかなり偏った構成で、まるで円谷映画を観ているかの様だった。 これが普通に現代劇で、先に書いた様に、豪華出演者達が一堂に会するシーンが一つでもあったら、本当の意味で物凄い作品になったに違いない。 [ビデオ(邦画)] 5点(2011-04-25 18:49:26) |
1465. 42丁目のワーニャ
舞台劇の練習中をそのまま撮影して映画化したという、何とも不思議な味わいのする作品。 会話が中心だが、この会話がまた面白い。 理屈っぽいけど、分かりやすく、そして興味ひかれる会話の数々。 特にドクターとワーニャの語りは面白かった。 名匠ルイ・マル監督の遺作であるが、遺作として申し分ない出来ではないだろうか。 様々なジャンルの映画に常に挑戦し続けてきたルイ・マル。 その最後を結ぶ作品が、これまた斬新な設定内容で、最後まで守りに入らないルイ・マルの、映画作家としてのチャレンジマインドに敬服する思いである。 [ビデオ(字幕)] 7点(2011-04-22 19:39:31) |
1466. ピアニストを撃て
《ネタバレ》 フランソワ・トリュフォー監督作品、23本目の鑑賞。 残るはあと1本。 さて、ストーリーの展開としては、決してつまらなくはない。 トリュフォーがアルフレッド・ヒッチコックに傾倒して、本作を撮るに到ったという話だが、やはりトリュフォーにクライムサスペンスを撮らせると少し苦しい。 トリュフォーには洒脱で悲哀に満ちた青春映画が向いている。 その時分に撮ってみたいジャンルの映画を撮れたという意味では、トリュフォーにとってはさぞかし満足だっただろう。 有名ピアニストが、過去の辛い経験を経て、場末の酒場でピアノを奏でる。 そうした締め方は、それなりの味わいがある。 でも、それはサスペンスとしての味わいというより、トリュフォーが得意とした、人間の悲哀を描いたラストだったからだろう。 [ビデオ(字幕)] 6点(2011-04-18 23:41:06) |
1467. 第十七捕虜収容所
捕虜達はあんなに楽しく過ごしていたのか?! ナチスはあんなに優しいのか? もの凄く驚いたわけだが、実はナチスの残酷さを皮肉ったものだったりするのか?! まあ、それはいい、どっちでも。 そんなことより、終盤でいきなりシリアスになり、簡単に真のスパイを見抜くくだり・・・ やっぱり解せない。 都合よすぎ!! そして、見事に復讐し過ぎ! ハッピーエンドすぎ!! 好みの問題だが、やっぱりこんなご都合主義的な映画はダメだ。 アメリカはダメだ。 [ビデオ(字幕)] 4点(2011-04-18 01:03:00)(笑:1票) |
1468. キートンの大列車追跡
これってそんなに良いかなぁ。 キートンのスタントは完全になりを潜め、ひたすら凍った無表情がキャラとして固定。 確かに、器用に列車を使ったアクションは凄いし、面白いけど。 キートンの初期短篇映画を沢山観すぎたせいか、冗長で危険なスタントの欠ける内容には違和感をおぼえた。 [ビデオ(字幕)] 5点(2011-04-17 00:41:49) |
1469. 三文オペラ(1931)
《ネタバレ》 警察、貧乏人、盗人が、ラストで仲間になり、大円団・・・というお話なんだが、とにかくつまらない。 訴えたいことは、至極真面目だと思うが、楽しむことはできなかった。 やはり映画は観ていて楽しくないとダメだ。 「金持ちが貧乏人を作るのに、金持ちは貧乏人を嫌う」 劇中のこのセリフだけが、印象に残っている。 [ビデオ(字幕)] 2点(2011-04-16 13:28:33) |
1470. カルメン故郷に帰る
日本初の長編カラー映画。 つまりは、国の威信をもかけた作品で、木下惠介がその職人技と安定した技量で、無難に作り上げた人情喜劇という感じ。 日本初のカラー映画だと思って観ているので、なんだか当時の興奮が伝わってくる。 高峰秀子が、今までになく体を露わにし、太ももなんて露出し放題! だけど太い(笑)。 でも、まあいい。 この時代の世相を反映していて、とても興味深く楽しむことができた。 [ビデオ(邦画)] 6点(2011-04-10 23:22:27) |
1471. Love Letter(1995)
《ネタバレ》 大好きだった頃の酒井美紀が出ているだけで、もう嬉しいわけで、この頃がやっぱり一番透明感があって、瞳が綺麗で可愛かった。 松井秀喜と付き合ってから、瞳がくすみ、顔にブツブツができた。 だから、この頃の、白線流しより更に以前の酒井美紀が、何といっても魅力的! ラストシーン近く、柏原崇が「ご愁傷様です」と言ったことに対し、微笑んでみせる酒井美紀の可愛らしさと透明感ときたら、たまらない。 彼女のファンだったあの頃の自分を想い出す。 さて内容だが、似顔絵が裏に描いてある図書カードで中山美穂が涙するラストシーンが無かったら、多分、自分にとっては駄作の一言で終わらせてしまったであろう作品。 何がひどいって、まず豊川悦司。 彼の話す関西弁がとても気色が悪く、生理的に受け付けなかった。 豊川悦司が出ていなければ、もっと好きになれたかもしれない作品。 それと、中山美穂が一人二役をやっているのもダメ。 いくら映画とは言え、似ている設定だからといって、同じ役者が演じるのは、どうもなぁ。 おかげで、素敵な恋愛ドラマではなく、ファンタジーのような現実離れした話に感じてしまった。 異なる人間設定だとしても、同じ役者がお互いに文通をやりあうという流れが、自分のこの映画に対する感情移入を邪魔した。 それと、岩井俊二の書く脚本と台詞が、これまた肌に合わず。 狙いすぎの感が大有りの台詞、そしてあざとい演出の数々。 臭くて観てられない。 音楽も大げさ。 だけど~、やっぱり、あのラストシーンは良い。 悔しいけど、良いなぁ。 [ビデオ(邦画)] 4点(2011-04-09 23:07:42)(良:2票) |
1472. カリガリ博士
《ネタバレ》 博士が夢遊病者を操って、自らの隠れた欲望を果たすという設定は、一種のエロスも感じて面白い。 だが、同時代のムルナウやシュトロハイム、グリフィスといった監督達の代表作と比べると、「面白さ」という点において決定的に劣る。 [ビデオ(字幕)] 2点(2011-04-05 23:14:54) |
1473. 人間の條件 第六部 曠野の彷徨
《ネタバレ》 何ていうか、これは凄まじいという他、言い様がない。 仲代達矢はただでさえ目を剥いている顔つきだというのに、それを更に鬼気迫る勢いで目を剥かせているから、背筋が凍る様な迫力を感じる。 はっきり言って、後味は悪い。 あそこまで愚直にタフに頑張ってきたのに、妻の幻影を見ながら力尽きなくても・・・と思う。 11時間も見せておいたら、生はんかな落とし方では、落とし前がつかないのかもしれないけど、あの終わらせ方は虚しすぎる。 虚しい、悲しい、惨め。 それが全てのラストだ。 戦争の酷さを伝える映画として、これ以上うってつけの日本映画は他には無いであろう。 だが、それだけに、観た後の虚しさは計り知れないものがある。 ぐったりと日曜の午後に見終えた。 明日から元気に働けるかな? いや、きっと働ける! 私には、「雨風をしのげる我が家がある」のだから。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-04-03 17:58:15) |
1474. 人間の條件 第五部 死の脱出
敗残兵の生き残りをかけた脱出劇。 雄大な自然をバックに、緻密な人間の内側を見せる。 最終部へとつなぐ第5部なので、一つの作品としてみると物足りなさも感じるが、それでも十分楽しめた。 戦争ものとしても秀作であるし、人間ドラマとしても良くできている。 生き残るためには、非情なこともせざるを得ない状況下で、少しでも人間らしさを維持しようと悩み続ける、仲代達矢の姿が痛々しい。 それにしても、本作の仲代達矢は超人的にタフだ。 肉体的なタフさ。 いくらでも歩けるし、飢えや渇きにも強いし、喧嘩も強い。 戦時下ならなお更のこと、平和な世の中でも、これだけタフなら何でもできるだろう。 特に、男にとっては、これだけの肉体的頑強さというものは宝である。 そんなタフに対する羨望を本作の仲代達矢に感じ、そして、その男としてのタフさに魅力を感じた。 それを違和感なく演じる仲代達矢は、やはりもの凄い俳優だ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-04-03 00:53:37) |
1475. マンハッタン
俗物的な動きを見せるニューヨーカーたちが面白い。 風景も実に美しい。 だけど、ウディ・アレン自身は醜い。 てっぺんハゲ、ちんちくりんおっさんだ。 だけどモテる。 というか、モテる設定にしている。 そりゃあ、ウディ・アレンが監督だし。 でもこの人物設定は、ウディ・アレンの自身過剰による勘違いではなく、彼のユーモアによる狙いだと思う。 劇中の台詞に、「こんな髪の毛の薄い~」的な自虐的・自覚的な台詞もあったし。 外見の話を個人の好みで言わせて頂けば、本作にはほとんど魅力的な男女が出てこなかった。 劇中で、自分のことを「美人、美人」と連呼しているダイアン・キートンも、おばさんパーマでちっとも好きくないし。 だけど、居た! 若かりし頃のメリル・ストリープ! スレンダーで、何となく荒んだ感じの若さと美しさがたまらない。 ニューヨーカーのインテリたちが、皆あんな風に理屈をこねまわして、その場の欲求で動く俗物ばかりなのかは分からないが、もしそれが本当なら、なんて疲れる街なんだろうと思う。 都会は好きだが、そんな街には住みたくないなぁ。 [ビデオ(字幕)] 6点(2011-04-02 05:10:19) |
1476. 救命艇
《ネタバレ》 反ナチ映画と思って観ていたので、一人救命艇に居たドイツ人が、皆を収容所送りにするバッドエンドだと予想していた。 しかし予想は当たらず、そのドイツ人を、全員でなぶり殺しにするという残酷な展開にアングリ。 最後は少し納得いかずのハッピーエンドっぽい仕上がりで、不満も残るが、それまでの救命艇での生死に瀕した登場人物たちのやりあいが面白く、楽しむことができた。 それにしても、あのドイツ人はタフだ。 いくら水と栄養剤を隠し持っていたとはいえ、徹夜でボートをこぎ続ける。 あれは凄い。 私も、男として、あんなタフな男に憧れる。 [ビデオ(字幕)] 7点(2011-03-31 22:21:01) |
1477. サンセット大通り
《ネタバレ》 さすがの名作! 最初から最後まで退屈しない。 サスペンスにみちた雰囲気も終始損なわれず、ほんと楽しむことができた。 冒頭で主人公がプールに浮かび死んでいるところを見せておいて、その説明に入るという手順、ありがちかもしれないが、とても分かりやすい仕立てになっている。 バスター・キートン、エリッヒ・フォン・シュトロハイムが出てくるのも、映画ファンとしては、嬉しい限り。 サイレントからトーキーへ、時代の移り変わりについていけなかった元大女優。 栄光の日々が忘れられない。 それは、大成功を成し遂げ、名を馳せた人間にしか分からないであろう哀しさ。 人生の悲喜こもごもが素晴らしく巧く描かれている。 名作の名に相応しい、穴のない永遠の名作! [ビデオ(字幕)] 7点(2011-03-28 00:53:52) |
1478. 忍ぶ川
《ネタバレ》 ストーリー自体は単調で、とりわけ特筆すべきものはない。 しかし、モノクロ映像がそのストーリーと世界観を巧みに増幅しており、モノクロ映像が十二分に良い影響を与えている。 単なる男女の恋愛ドラマの域にとどまらず、例えば加藤剛の兄弟たちの多くが自殺をしているという設定が、ちょっとした猟奇めいた独特の雰囲気を醸し出している。 そして実家の田舎に暮すサングラスをかけた目の不自由な姉。 この人の存在が、前半からずっと不気味に描かれているが、意外にも嫁いできた栗原小巻に優しかったり、サングラスを外して弟の加藤剛に泣きつくシーンなどで、不気味に見えた姉が、実はとても人間的で普通の優しい人だった、と分かるくだりも素晴らしい。 それと、東京の木場や洲崎、浅草などの風景描写、東北の田舎の風景、こうしたその土地土地の描き方にも、観る者をモノクロ映像の世界に深く誘う効果を発揮している。 私は自宅で鑑賞したが、映画館で観たら、更に深くその世界の雰囲気にどっぷりと浸れたに違いない。 医学や自殺といったテーマとの絡みに、熊井啓監督ならではの個性も感じられ、ありがちな恋愛ドラマと一線を画す出来栄えである。 [ビデオ(邦画)] 7点(2011-03-27 03:40:21) |
1479. 魚からダイオキシン!!
《ネタバレ》 “内田裕也が主演”ただそれだけの理由で観た。 新興宗教で名を馳せた末に謎の焼死をした景山民夫、『その男、凶暴につき』のキャラそのままで銃を乱射するビートたけし、そして今や痩せこけてしまった在りし日の田代まさし、と錚々たるメンバー(笑)。 でもそのほとんどが前半から中盤部分に登場し、後半はずっとダレ気味。 前半の過激さとスピード感、内田裕也主演映画ならではのアブナイ感じが凄く良かっただけに、この尻すぼみは残念。 軍艦島をロケ先に選んだセンスも良い。 だけど、軍艦島であんなに派手に爆発シーンをやっちゃって大丈夫だったんだろうか? もし当時、それが普通に許されていたのなら、それだけで貴重なフィルムかも。 I'm Rock'n' Roll! Shake it up Baby!! (追記) っていうか、あの内田裕也にボコられたの長渕剛本人じゃなかったの?!(笑) [ビデオ(邦画)] 6点(2011-03-25 01:48:22) |
1480. 美女と野獣(1946)
寓話は寓話として割切って観たつもりだが、さすがに入り込むことはできなかった。 幼い頃に観ていたら、またその感じ方も大きく異なっていただろう。 まだ純粋な心を忘れていない少年少女たちに、是非観てもらいたい芸術作品の極み。 [ビデオ(字幕)] 5点(2011-03-24 14:29:26) |