1501. 女が階段を上る時
《ネタバレ》 やっぱり成瀬巳喜男作品の森雅之はカッコよすぎる・・・究極のダンディズムだ! さて、脚本に成瀬巳喜男が参画せず、あとはお馴染みのキャストとスタッフで作られた、微妙な異色作。 そこの辺りの影響は、ほんの少しだが出ていたようにも思う。 全体的に漂う退廃的なムードは、一見、その他の成瀬巳喜男作品と同じようにも感じられるが、人間と人間との交錯の深さがやや浅かった気がしなくもない。 成瀬巳喜男作品と言えば、切っても切れない男女の仲、深いつながりみたいなものを感じさせる作品が多いが、本作は沢山の人間が交錯するものの、それ以上の深みがない。 別につまらないわけではないが、作品に引っぱられ、のめり込む吸引力が少し劣る気がした。 その影響か、最初から最後まで淡々とし過ぎた感は否めない。 一方で、高峰秀子のラストの笑顔。 これはとても印象的だった。 “真冬を耐え忍び、春の芽をじっと育てる銀座の街路樹のように”、きっとまた復活するに違いない笑顔を、彼女は最後に見せてくれた。 当時の銀座の風景描写も印象的だった。 現在の銀座と言えば、一流外国ブランドのビルが建ち並び、路地裏もそれほどの淫靡さを感じさせない。 どんどん綺麗になり、浄化作戦とやらで変わっていく東京の風景。 そんな郷愁も、本作を観て感じずにはいられなかった。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-02-27 17:20:02) |
1502. 四季(1969)
本作は、ユーリ・ノルシュテインがアニメーション監督として参加した作品。 無言劇で、一切セリフがない。 ユーモラスでいて幻想的なユーリ・ノルシュテイン作品とは異なり、本作はただひたすら芸術作品的なアニメーションである。 セリフがない分、あの愛くるしい登場人物たちの声を聞けないのが残念! 四季折々の景色の中を、流れるように進んでいく展開は、確かに美しいことは美しいが、ノルシュテインのユーモラスさと独特の寂寥感みたいなものが感じられないのは少々不満かなぁ。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2011-02-26 02:32:07) |
1503. 愛しの青いワニ
監督デビュー前のユーリ・ノルシュテインが、アニメーターとして参加した作品らしい。 作品全体の雰囲気は、ユーリ・ノルシュテインの監督作品と似ている。 だけど、何だか切ない気持ちというか、侘しささえもおぼえる後味。 コーヒーの苦味の様な、まさに大人の香り漂うアニメだ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-02-25 01:53:29) |
1504. 霧につつまれたハリネズミ
ストーリーをメインに主張するのではなく、あくまでアニメーションとしての特徴を活かし、幻想的な映像を全面に押し出して表現しているのが素晴らしい! ハリネズミの表情や声色が、これまた愛嬌とミステリアスな雰囲気を醸していて、味わい深い。 本作で立ち込めるその幻想的な霧たるや、アニメ版『雨月物語』と評したい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-02-24 01:51:08) |
1505. 遠くの空に消えた
よくぞここまで器用に「ヒット作っぽい失敗作」を創ったなぁ、という印象。 行定勲というヒットメーカーが、ヒットしそうな感じで時間たっぷりに創ってみたけど、実際は観客からすると、ただ時間を浪費するだけの薄っぺらい作品になっていた、というオチ。 それ以前に、主要キャストの面々が、個人的にあまり好きでないメンツで固められていたのが致命傷だった。 数少ない本作のプラスポイントは、ほんの少しだがノスタルジックな気分に浸れたのと、Coccoのエンディングソング「甘い香り」が良かったところかな。 器用な監督の失敗作って、こんな感じなのかな、と妙に納得してしまった次第。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2011-02-24 00:57:41) |
1506. 女たちは二度遊ぶ
この手のオムニバス映画は好きで、ツタヤとかで発見してしまうと、何も下調べもせずレンタルしてしまう。 当たりハズレも多いのが、この手のオムニバス映画の特徴で、それが何だかスリルだったりするわけで・・・ さて、ラブストーリーというくくりで、5本の短篇映画が収録されている。 その中で印象に残った作品が、相武紗季・柏原崇主演の「どしゃぶりの女」と、長谷川京子・ユースケ・サンタマリア主演の「つまらない女」の二つ。 「どしゃぶりの女」は、主演二人の人物造形が秀逸。 最後まで性格を掴みきれない面白さがある。 「つまらない女」は、ユースケ・サンタマリアの素に近い演技が功を奏した作品。 彼の人間臭さが、良い方向に出た面白い作品。 万人にオススメはしないが、もし私と同じようなオムニバス映画好きがいたら、是非オススメしたい一本! [DVD(邦画)] 7点(2011-02-19 18:17:05) |
1507. 夜の大捜査線
都会の刑事と、所轄内におけるその所轄警察官との力関係に興味をそそられた。 話の内容に関してはそれなりに理解できたが、うまく犯人が見つかりすぎという印象はぬぐえない。 しかも、都合よく犯人の目星が二転三転し過ぎ。 その分、二時間ドラマを観るような飽きにくさと、卒のない面白さは感じられた。 黒人を刑事を演じたシドニー・ポワチエは、地味ながら確かな実力を感じさせた。 警察署長役のロッド・スタイガーの演技も負けず劣らずに良い。 二人の確かな演技が土台にある、安定感を感じる作品でもあった。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-02-19 18:08:38) |
1508. 女王蜂と大学の竜
石井輝男、吉田輝雄コンビによるお馴染みの新東宝映画。 今回は、アラカンがアカンかった。 元々苦手な俳優だが、どうにも演技としゃべりが好きになれない。 おまけに、三原葉子のグラマーぶりも苦手(笑)。 路線というか、作品自体に関して言えば、石井輝男のエネルギッシュさと新東宝の良い意味でのチープさが出ていて、大いに好きなタイプの作品。 吉田輝雄が暴れん坊的なキャラ設定だったのだが、このキャラ設定も合っているとは思えず。 吉田輝雄と言えば、“異常性愛シリーズ”の数々の作品で魅せてくれた、あの妙ちくりんな真面目演技が、個人的には大好きだ。 石井監督の創り出す、ふざけた作品設定の中にあって、浮きに浮きまくった“あまりに真面目すぎる空気読めない男”的なキャラの吉田輝雄を、私はもっと観てみたい! [CS・衛星(邦画)] 5点(2011-02-18 06:21:14) |
1509. トゥルー・ヌーン
《ネタバレ》 初めて観るタジキスタン映画。 変に気取ったり捻りすぎたりするところがなく、真っ直ぐな映画作りの姿勢に感心させられた。 話としては、やや物足りなさも感じるが、婚礼という儀式の重要性を思わせる丁寧な描写が、とても印象的であった。 最後で、地雷の犠牲になるところは評価の分かれどころかもしれない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-02-13 22:51:09) |
1510. アオサギとツル
《ネタバレ》 切ないねぇ~。 男女のすれ違いの話。 素直になれない、嫌いになれない。 色恋はタイミングが全ての鍵を握っている。 ラストも、ほろ苦く切ない。 だけど、こんなことを延々とかけ合っている相手が居るだけでマシなのかも! 真の孤独よりはマシなんじゃないかな? [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-02-12 02:16:47) |
1511. キツネとウサギ
紙芝居を観るような面白さ! ほんわかとした気持ちになれるラストが良い。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-02-12 02:00:08) |
1512. スパルタカス(1960)
《ネタバレ》 奴隷解放者を善、帝政ローマを悪とする、勧善懲悪なお話。 そしてスケールの大きい映像と音楽、沢山のエキストラ。 まさにアメリカ映画の極みである。 話の中身としては、3時間半という長い尺のわりには薄い。 要するに、善人たる奴隷解放運動者たちが頑張るが、結局、既得権益を持った権力者たちに封じ込められてしまうという流れで、面白くもなければ、かといってつまらないわけでもなく、ただ「長い」という印象ばかりが残った。 あ、あと、ヒロインが特に美しくないというのも印象に残った。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-02-11 00:47:17) |
1513. 獣人
ジャン・ルノワール監督にジャン・ギャバン主演という黄金の組み合わせ。 はっきり言って、この組み合わせで駄作なんてことは有り得ないんだけど、少し淡々と進み過ぎの感はあった。 だけど、やっぱりギャバンの存在感は凄い! スーツを着させても、作業着を着させても、いずれも似合ってしまうから凄い! 最後はこの時代のフランス映画らしい、哀愁にみちた終わらせ方。 むやみなハッピーエンドまみれのハリウッド映画より、断然マシだ。 それにしても、汽車が疾走し、それを汽車の上から捉えた映像は、迫力十分だ。 線路がカーブし、トンネルに入ってトンネルを抜け、鉄橋を渡る。 幼い頃に、電車の先頭車両に乗って、流れていく景色を見て楽しんでいた頃の、それと同じ興奮を味わうことができた。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-02-01 23:24:17) |
1514. 女獄門帖 引き裂かれた尼僧
《ネタバレ》 待ちに待って、ラピュタ阿佐ヶ谷にて鑑賞成功。 いきなりネタバレなのだが、「引き裂かれた尼僧」なんて、結局最後まで出てこねーじゃねぇかバカヤロウ!って感じ(笑)。 だって、実際、誰も引き裂かれてないし。 エロ・グロ・ナンセンスを、とことん突き詰めた内容で、グロいシーンなのに、ゲラゲラと笑えてしまうところなんか、まさに石井輝男テイストを感じた。 ここだけの話、あの少女に一番ゾクっときてしまった、、ヤバイヽ( ´ー`)ノ [映画館(邦画)] 7点(2011-01-30 01:09:22) |
1515. スイートリトルライズ
《ネタバレ》 矢崎仁司監督目当てで鑑賞。 やっぱりこの監督の最近の作品は映像が素晴らしい。 何気ない映像だけど、透明感がある。 そして、どこか一歩ひいたような冷たい映像がまた良い。 中谷美紀があまり好みでないので、そもそも入り込みづらかったが、それでも大森南朋の相変わらずな疲れたクマ顔(目の下にクマがあるという意)に、なんとなく引き込まれてしまった。 まさか、テディベアの「クマ」と「クマ」顔をかけた訳じゃないだろうけど・・・ 大森南朋はやっぱりオヤジ(まろあかじ)には似ていない! 中谷美紀の不倫相手を演じた俳優さんは、アップだと顔の皮膚が汚い。 こんなのと不倫する女性の気がしれない! 池脇千鶴は、妻子持ちの男を誘惑し過ぎ! 何が「先輩♪先輩♪」だ。 歳、離れ過ぎだろ! 以上は、文句や不満でなく、結局楽しめたというところのブツ切れ感想です。 やっぱり矢崎仁司監督の作品は良かった。 寡作なのが非常に残念。 あ、大島優子が、妙にエロカワでドキドキした。 最後に内容について触れるのも何なのだが、冷え切った喧嘩もロクにしない夫婦って、まさにこんな感じなんだろう。 喧嘩しない、ではなくて、正確には喧嘩できない、なんだろうけど。 夫が部屋に鍵をかけてとじこもり、一人でゲームをする。 それで寂しがる妻。 それを露骨に拒否はしないが、明らかに一人にしてくれ、と言わんばかりの夫。 非常に身をもって分かってしまうこの構図が怖い。 お互いに不倫し合うけど、結局元のさやに戻る夫婦。 意外と実際こんなもんなのかもしれない。 だって、お互い過去に「この人と一生一緒に過ごしたい」と思った仲だからこそ、夫婦になったわけだから。 一時の刺激だけを求める不倫に、本当の安らぎはない。 だからこそ、良いとは言い切れないまでも、夫婦という元のさやに戻ったんだと思う。 そういう意味では、極めて現実的で、最後まで冷え切った内容で押し通された一貫性を感じた。 矢崎色というより、江國色がより濃く出た作品だったんじゃないだろうか。 [DVD(邦画)] 7点(2011-01-30 00:49:38) |
1516. アウトレイジ(2010)
北野武監督作品の中では、『座頭市』と並ぶ完成度の高い娯楽作品。 現在の日本人監督の中で、単純に楽しめる作品を撮らせたら、最近の北野武監督に勝る者はいないのではないか、というくらい良くできている。 ストーリーの顛末よし、音楽よし、映像よし。 特に、ヤクザものを撮らせたら、間違いなく現在においてはナンバー1の監督だろう。 北野武が、ただ撮りたいものを撮っていた初期の頃と比べて、“職人監督”と呼ぶべきに相応しい、監督しての巧さを感じさせる。 ただし、それが良いか悪いか。 個人的には、少し残念だと感ずる。 初期の頃に感じた、心に深く突き刺さるものが感じられない。 何か、角がとれて丸くなった印象。 監督としての総合的技量は、年数を経るにつれ、格段にアップしていると感じるが、逆に初期作品の頃に感じられた、鋭利なナイフのような切れ味がなくなっている気がする。 だが、それは北野武の計算なのかもしれない。 何故なら、比較的最近でも、『TAKESHIS’』の様な、自分の撮りたいものを好き勝手に撮っただけの作品も、撮ってはいるから。 商業的な作品と、自分の取りたい好き勝手作品とを、器用に撮り分ける北野武。 それはそれで凄い。 でもできれば、娯楽性が低く世間一般の評判は低くとも、初期の頃の様な作品や、最近で言えば『TAKESHIS’』の様な自分勝手な作品を、もっと撮って欲しい。 [DVD(邦画)] 7点(2011-01-26 01:00:36)(良:2票) |
1517. 毒婦お伝と首斬り浅
《ネタバレ》 待望の牧口雄二監督特集がラピュタ阿佐ヶ谷で組まれ、感激もひとしお。 期待してのぞんだ本作だが、序盤は何だか石井輝男ワールドをスケールダウンしたような内容で、ガッカリもした。 しかし終盤の展開が凄い! それまでワイワイガチャガチャやっていたのに、お伝の首斬りシーンになると雰囲気が一変、辺り一面に雪が降り、無音となる。 それまで終始うるさい内容だっただけに、序盤とこのラストシーンの、“喧騒と静寂の対比”に思わず息をのんでしまった。 幕切れもまた素晴らしい。 首を斬られる直前は怖がって暴れていたお伝が、自分の命を救ってくれた男に首を斬られると知った瞬間、覚悟を決めておとなしくなる。 何とも人情深いお話。 ただのうるさい悪ふざけエロ映画かと思いきや、終盤での、この怒濤の盛り返し! 牧口雄二監督が、カルト映画界で一目置かれる所以を、存分に味わうことができた。 [映画館(邦画)] 7点(2011-01-23 00:00:40) |
1518. 劔岳 点の記
ムダに豪華俳優陣を使い、そして使いきれてない。 確かに雄大な自然を映した映像は素晴らしいが、映画としては何ら見所がない。 浅野忠信の良さも全く出ていない。 有名どころの俳優を沢山集めて、ただ撮ったという感じ。 撮影大変だったぞ、という主張ばかりが伝わってくるが、それと映画としての良さとは無関係。 そしてムダに尺が長いのが更なるマイナスポイント。 雄大なスケールを持った渾身の駄作。 [地上波(邦画)] 2点(2011-01-22 09:49:29) |
1519. さよならみどりちゃん
《ネタバレ》 ささくれ立った、ほろ苦めのラブストーリー。 女がダメ男を好きになってしまって、ひどいこともされて、それでも嫌いになれない女。 そんなダメ女を星野真里が熱演。 なかなかのハマリ役だったんじゃないだろうか。 貧乳をさらけ出しながら、「私のことを好きになって」と懇願し、男に無視をされて嗚咽する女。 だけど、その侘しい女の風情が、その貧乳がゆえにうまく表現されている。 貧乳をさらけ出しながら、ベッドの上で男に無視をされてベソをかく構図は、何とも表現し難く侘しい。 監督は、ここまで計算して星野真里を抜擢したんだろうか?? こういう男女のどうしようもないダラダラ関係っていうのは、現実的にもある話で、リアリティは十分に感じられた。 星野真里の薄幸な感じ、そして意外にもダメ男ぶりが自然に感じられた西島秀俊。 キャスティングはかなりマッチ度が高い。 だが、このささくれたお話を、楽しく観ることはできない。 最後のカラオケシーンで多少は気分が軽くなるが、とってつけたようなラストの感も否めず、なんだか自分までもが、どうにもならない窮屈な環境に居合わせた様で、気分は塞ぎ気味の降下気味となった。 色々書いたが、私が本作を観ようと思った理由は、他でもない「星野真里が脱いだ」なわけで、まあこんなもんでよろしいのではないか、とも思ったりした。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2011-01-19 00:55:47)(良:1票) |
1520. 明日ある限り
豊田四郎監督、香川京子主演の組み合わせ。 これが理由で本作を鑑賞した。 豊田四郎監督作品として観ても、それほど突出した作品ではないし、香川京子の魅力が出ているかといえば、そうでもない。 ただ、手堅い演出とストーリーで、それなりに満足できるレベルではある。 真面目すぎるストーリーと、香川京子がやたらに感情的になってばかりいる部分が難点で、決して楽しい気分になれる作品ではない。 しかし、家族としての絆がいかに大切であるかを感じることができるという点において、どこか小津安二郎作品に通ずるものも感じた。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-01-17 01:38:55) |