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自己紹介 現在の技術で作られた映画を観る目線で過去の映画を見下すようなことは邪道と思っている。できるだけ製作当時の目線で鑑賞するよう心掛けている。

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141.  ゼロ・ダーク・サーティ
 ドラマ的な演出を排し、優れた「再現ドキュメント」に徹した映画。そのためプラスアルファ(メッセージなり喜怒哀楽や葛藤等の“人間”を描く)が乏しい。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2018-07-08 15:47:56)
142.  生きる 《ネタバレ》 
 かつては「遅れず休まず働かず」、これ小役人の鉄則。プラス「大過なく過ごして定年退職」。「デカンショ役人」「○○一暇な役所」なんて言葉もあったな。  公務員の仕事は文書のひと文字ひと文字、数字のひとつひとつがその証となる(だから改ざんなんかいけねえよ)。こつこつ働いて課長になり、稟議で「ハンコ押すだけ」の役割も仕事の一つ。生活のためもあり割り切れるかどうかだが、役人は組織で仕事をするものだから、主人公の無気力は一面的であり説得力をあまり感じない。とはいえ通夜の席での同僚たちによる会話は、勤め人の本質を突く優れた展開。  余命宣告を受けた後、主人公のはじけっぷりが尋常でない。「それほど変わるか?」が素直な感想。役所の部下だった女性の若さを吸収するがごとき行動は面白いが、このシークエンスは少々違和感がある。彼女の“おもちゃを作る”仕事に衝撃を受け、それまでの無気力から一転、“公園をつくる”(=生きた証を残す)行動に出る。その奮闘ぶりから、人生において「何かを成し遂げる価値」は十分伝わる。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-06-24 14:17:14)
143.  グレートレース
 ドルーピーの「スピード狂」を観る感覚で先を読める展開がいくつかあったけど、アニメを実写に移したようなスラップスティックが楽しい。J・レモンの高笑いや「マーックス」の奇声が愉快。P・フォークのおとぼけ調、T・カーティスのにやけた二枚目ぶり(時々“光る”のがいいね)もグッド。N・ウッドのコメディエンヌも意外にイケる。  冒頭でサイレントのドタバタ劇へのオマージュを謳っているとおり、前半はサービス精神たっぷりでハリウッドのお家芸をふんだんに盛り込んでおり、さまざまな乗り物を登場させながら笑いを誘う。西部劇調の殴り合いも痛快。パイ投げは素直に笑えないが。  ロシアに着いてからは中だるみ気味。もっとレース中心のナンセンスに徹してもよかったのでは?   女性解放の時流をうまく取り入れながら皮肉交じりの展開で、ラストのギャグもフランス人の自負心をからかい気味で面白い。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-06-10 09:24:57)
144.  グッドナイト&グッドラック
 1950年代に全米を揺るがしたマッカーシズムと闘うジャーナリストたちの物語。表層的な再現ドラマの域を出ない印象。タバコ燻らせ上目遣いのマロー役は、ハリウッドお得意の“そっくりさん芝居”。  古い時代の空気を醸成する技法として、モノクロ映像による表現が効果的だと長らく思っていた。しかし、この手法はあくまで特定のテーマに限ると最近思うようになった。カラー化以前、映像は白黒でも現実は色彩豊かな風景なのだから、と。本作を観て特に感じるのは、記録映像の活用にこだわるあまり、マッカーシーの動きが見えないこと。カラー撮影で彼の行動をもっと掘り下げれば、歴史を学ぶだけでなく現代を学ぶことにも繋がるのではないか。硬派な題材はジャーナリズムに対する昨今の風潮にも警句を発する価値があるだけに、突っ込み不足が惜しい。  テレビの理想を語る場面は示唆に富むが、M・バール、E・サリヴァン、S・アレン等の番組、良かれ悪しかれそれらもひっくるめてテレビなのだ。まあ、テレビの現状(特に地上波)を見るにつけ「娯楽と逃避のためだけの道具」になりつつあるとは思うが……。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2018-05-27 13:51:36)
145.  シェーン
 ワイオミングの雄大な自然を舞台に、父・母・息子・流れ者それぞれの繊細な思いを描く。人間の物語と大自然を融合した音楽は印象深い。  親子の情愛・夫婦愛を中心に据え、ジョーイのシェーンに対する思慕、マリアンのシェーンへの複雑な思い、それに気づくジョーの葛藤、牧場主と農耕民の軋轢、少年の精神的な成長等…さまざまな要素が詰まった叙情豊かな名作。  時代遅れになりつつある放牧と、畑作中心で定着する農耕という新旧二項対立の図式は、普遍的な問題意識の提示でもある。  一度は捨てた銃でトラブルを解決したシェーンだが、自身も農民の前では時代遅れであり居場所がないことを自覚し立ち去って行く。拳銃の音を意図的に大音量で表現し、その怖さ・暴力性を訴えている。  J・ウェインのような偉丈夫とは対照的な優男A・ラッドの起用は理にかなっており、作品の内容に相応しい。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-05-06 15:04:05)(良:1票)
146.  マッケンナの黄金 《ネタバレ》 
 先住民の伝説を地でいく黄金探しの冒険譚で、何度観ても面白いアドベンチャー西部劇。  雄大な大峡谷の描写は見事の一語に尽きる。朝日が輝いて巨岩の影が伸び、やがて金鉱が出現するときのワクワク感。地割れとともに岩壁が崩壊し金鉱が姿を隠すまで、飽くことなく楽しめる。実直そうな保安官を演じるG・ペックははまり役で、欲に目がくらむインガ(C・スパーヴ)も俗物的な庶民感覚を活写している。惜しむらくは、E・G・ロビンソン、A・クエイル等、名優陣の出演場面が少ないこと。彼らの絡みにもうひと工夫欲しかった  「黄金」「オーシャンと11人の仲間」「地下室のメロディー」等、多くの映画が描いた“悪銭身につかず”に通じる展開。最後は御多分に洩れずインガの砂金を捨て去るが、本人はちゃっかり金塊を持ち帰るとは意外。痛快なラストだった
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-04-22 15:31:58)
147.  アウトブレイク
 パンデミックを題材とした社会性にスリルとサスペンスを織り込んだ娯楽作。  細菌兵器のため町民を犠牲にするという軍の暗部も描かれ、国家の非情さ、冷徹さをマクリントックの行動が体現する。猿を捜す件は面白いが、現実に発見できるかは疑問。  為政者は常に情報を隠したがる習性がある。危機にあたっては「パニックを防ぐため」を口実に隠蔽し、理屈は後からつける。  ヘリの追跡中に人事評価する少将の姿は、保身と功名心、硬直した思考への痛烈な皮肉。追われる2人の会話は脚本が練れている。猿を撃つときのじらし演出やダニエルズが搭乗するヘリの爆撃回避も見ごたえがあった。ただし、終盤のヒーロー演出はちょっと違和感。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-04-08 14:17:16)
148.  大魔神
 民話が底流にあり、日本的な、実に日本的な特撮時代劇で見事な出来。東宝の円谷特撮に対する大映京都人の意気込みを感じる。  大魔神の重量感の表現や、左馬之助を成敗し見得を切るシーンにおける目力の迫力は特筆モノ。スーツアクター・橋本力の眼力をそのまま活かしたことが成功の大きな要因といえる。  穏やかな埴輪顔から荒ぶる武神へと変貌するコントラストの妙。音楽は、わかっちゃいるけど「ゴジラ」だねえ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2018-03-25 13:59:19)(良:1票)
149.  ひまわり(1970)
 油彩画のような色使いで、奥行きのある重厚な画作り。特に前半はフィルムの質感が活かされた陰影に富む映像美。  たくましい生活感と愛にあふれる女性像は、家族愛を描くイタリア映画らしさを感じる。さらに、戦争が引き裂く愛にネオレアリズモの一端をみた。  S・ローレンとM・マストロヤンニの演技は喜怒哀楽が程よい表現。他の出演者ではL・サヴェーリェワが愛らしく適役。出演場面がわずかながらアントニオの母役A・カレーナも忘れ難い。  一面に咲き誇るヒマワリ畑は戦没者の墓標でもあろう。冷静に搾油・食用目的と考えれば景観美は感じないが、印象的でいい場面だ。情感たっぷりの音楽も心に残る。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-03-11 12:52:14)
150.  蒲田行進曲
 カツドウ屋魂あふれる展開でテンポが良く、銀四郎とヤスのはじけっぷりが楽しい。小夏の愛しさ・一途な女心も花を添える。騒々しいのが玉にキズ。   人生においては一瞬であれ長期間であれ誰でも場の主役になる時がある。その意味ではひとつの人生讃歌と言える。階段落ちは見ごたえがあり劇中劇の面白さも味わった。ラストの大団円は爽快で後味が良い。主題歌もいいね。
[映画館(邦画)] 7点(2018-02-25 12:40:49)
151.  Kids Return キッズ・リターン
 物言えぬ多くの人を泣かせて“キッズがリターン”は虫のいい話。オイラだったら泣かされた側に心を寄せる。二人の主人公に共感はない。  青春期の苛立ちや迷いを軸に、無軌道→居場所探し→成長・成り上がり→挫折→再生のお定まりパターン。ボクシングと不良の組み合わせもステレオタイプで新味なし。つまらないネタを繰り返す漫才コンビの青春は逆に引き立つ(引き立たせたい?)。  最後の「まだ始まっちゃいねえよ」・・・強引な成り上がりで兄貴分のシマを分捕り、半殺しにされた奴が振出しに戻れるとでも?のうのうと自転車に乗るラストの展開は大甘。序盤の校庭シーンのリフレインで映画の主題に沿った場面だが、半殺しから立ち直りまでに脈絡が感じられない。     by く○屋の店員
[CS・衛星(邦画)] 2点(2018-02-12 11:39:12)
152.  駅馬車(1939)
 J・ウェインの登場シーンが印象深い。駅馬車はさまざまな人生の交差点とも言え、グランドホテル形式の人間模様が見ごたえあり。加えて、馬に飛び乗るシーンに代表される躍動的なアクションは、西部劇にダイナミズムをもたらした。アメリカ民主主義の原型を思わせる議論も面白い。  駅馬車の通過を下から撮影する構図は、「民族の祭典」のロー・アングルと関連なかったかな?
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-02-04 13:49:24)
153.  ウォーターワールド
 冒険譚としてはまずまずだが、製作の狙いや観客層のターゲットが曖昧で絞り込まれていない。ファミリー向けにしてはバイオレンス過剰だし、コメディ・タッチも中途半端。何より主人公に魅力がない。  劇中に登場する乗り物(船、飛行機、気球、ジェットスキー)の魅力をうまく活かしており、特に三胴船トリマランは装備が工夫されてカッコいい。ディーコンは憎らしいというよりマヌケで笑いを誘う。  クライマックスのバンジー救出場面におけるジェットスキー衝突は、長い間珍場面と思っていた。あれじゃあ少女を奪おうが失敗しようがどっちみち3台衝突は不可避でしょ、と。でもよくよく考えると、あくまでギャグと解釈すれば納得。要は「おバカな3人」なんだね。  弱点だらけだが妙に気になる映画。
[ビデオ(字幕)] 3点(2018-01-21 10:49:50)(良:1票)
154.  忠臣蔵(1958)
 親子・夫婦・主従等の人間関係を描き分け、よく知られたエピソードを散りばめたオーソドックスな作り。豪華な出演陣を観るのも一興で、遊興で舞い踊る大石は通俗的だが雪中の討ち入りは見ごたえがあった。史実どおりにリアリズムで描くのはどだい無理なんだから、ある程度講談調になるのはやむを得ない。   別れの場で大石を抱きしめる母。主君の仇を討つとともに、幕府の理不尽な処分に対する異議申し立てという一大プロジェクトを成し遂げる大石とてひとりの人間、普遍的な母親の情愛は心にしみる。  赤穂藩の四十七士に加え、その家族・協力者(理解者)・市井の人々、さらに吉良方と上杉藩の動き等、多くの物語を取捨選択して一定の時間(166分)に手堅くまとめた。  憎々しい吉良、毅然とした態度の多門伝八郎が印象深い。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-01-07 17:49:37)
155.  無宿
 いい映画だが、その印象の多くは「冒険者たち」に負っている。良くも悪くも勝新は勝新らしく、健さんは健さんらしく、いずれも無難なキャラ設定。3人の中では梶芽衣子が一番心に残る。「『女囚さそり』の梶芽衣子」というより、「日活・太田雅子のその後」として受け止めた。  宝探しはしょぼい感じだが海辺の映像美と情感あふれる音楽はお見事。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2017-12-17 14:46:24)
156.  大空港
 パニック映画の原型という要素はあるもののパニック映画に非ず。今風の派手な爆発に頼らないところは拍子抜けですらあるが、主眼は「グランド・ホテル」形式の“人生の縮図”であり、空港に交差する各人各様の人生模様が描かれる。不倫が絡むのは安易な感じだが。  画面分割はカットの切り替えより刻一刻と進行する危機の動きが分かりやすく、緊迫感の醸成という点でもこの手法は成功。  神父は騒ぐ乗客に対しグッジョブ。老女エイダの無賃搭乗は出来過ぎの感ありで、ちょっと弱点。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-03 19:34:53)(良:1票)
157.  死の棘
 こんな演出も“あり”かな。劇中、わずかな時間に現れるハマユウの群落………花言葉が語る主人公のピュアな愛。  歌の歌詞に似た感想が偶然思い浮かぶ。   これも愛 たぶん愛 きっと愛 
[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-11-12 18:53:31)
158.  龍三と七人の子分たち 《ネタバレ》 
 ヤクザの生態と年寄りの生態を掛け合わせたコメディ。出演者の顔ぶれに興味津々だったが、内容は薄い。  先を読めるギャグが多く、ジュウシマツの焼き鳥はもちろんのこと、そばかうどんかの賭けも飯物(カツ丼)ってオチがバレバレ。パロディ精神はいいが、全体的に「内輪受けを狙ったトークネタ」レベルで、映像としては面白みに欠ける。  モキチの死体は山田洋次映画の“死人のかっぽれ“に遠く及ばず。おまけにヤスの行動が消化不良で、飛行機で空母に着艦は肩すかし。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2017-10-29 12:42:27)
159.  キャット・バルー
 愉快な西部劇だ。音楽も含めスラップスティック・アニメを実写化したようなドタバタが面白い。N・キング・コールとS・ケイの狂言回しもユーモラス。何よりL・マーヴィンの酔いっぷりがケッ作で、千変万化の表情が楽しい。決闘に備えたマーヴィンのマジメな顔がなおさら可笑しく、徐々に対決モードになるところは秀逸。酔いどれ乗馬はスタントマンと分かっていても見ごたえがある。  映画全体の流れからすると、皮肉にもシリアスなシーンが浮いた感あり。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2017-10-15 13:28:57)
160.  ソナチネ(1993) 《ネタバレ》 
 静謐な画面の連続が暴力を際立たせる。印象的な場面はいくつかあれど、“死”への態度がウソっぽい。乾いた暴力と、青を基調とした絵画の細切れのような画作りがかみ合わない感じ。音楽は映像とよく合っている。  随所にある遊び心は童心を感じさせるものの、花火の水平打ちは悪ガキどものバカ騒ぎを連想して不快。終始無言の殺し屋(南方英二)は間抜けで甘い展開。アニキ分の前でケンだけを殺せば復讐されるのは自明でしょ。  沖縄の青い空と海、マシンガン片手の敵方乗り込みも定型的。最後は「気狂いピエロ」を想起させる。一貫してフェルメール調かと思ったら、最後の最後はゴッホの「ひまわり」かい。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2017-10-01 17:03:40)(良:1票)
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