1601. 8人の女たち
オープニングのいかにもセットな庭先の画で、ダメだこりゃモードで見始めました。画的には結局最初から最後まで見た目だけカラフルな色をまぶしただけの画で終わりました。でもプチミュージカルという設定がなんとか楽しく見させてくれました。サスペンスかと思いきや途中からは推理させてくれません。だって出るわ出るわ女のヒミツ。推理するだけ無駄。この展開はけっこう意表をつかれて良かったです。後半はもう「私、実は男なの」と言われても驚かないまでに、いや、「私、実はバンパイヤなの」と『フロムダスク~』ばりの告白があっても驚かないまでになっていた。この嘘だらけの展開、面白いと言えば面白いんだけどせっかくの女8人の嘘とヒミツが全くミステリアスじゃない。よって魅力を感じない。すごく面白くなりそうな要素が詰まっているのに、もうちょっと観客(私)をのせてくれよ!て感じの映画でした。 5点(2004-11-17 13:35:41) |
1602. 第七天国(1927)
この手の甘い甘いメロドラマに涙することは無いんですが、それでもやっぱりいい映画だと思います。私も印象に残るのは階段を上っていくシーンです。上から撮るのでもなく下から撮るのでもなく、真横から階段と二人を同時にとらえ階段を上っていく二人とともに床を通り越して上昇するカメラ。見事に二人にとっての天国へ続く階段を象徴するシーンとなっています。光の使い方も二人を見守る神の存在を感じさせます。愛だけであんなにも強くなれる女のストレートすぎる変貌ぶりも気持ち良い。 それにしてもそこのあなた!あなたにもあんな初々しい時代があったんですよ!嬉しそうに彼にコーヒー入れちゃって、ちょっとチュ-されただけであんなにときめいちゃって、それが今やもう見る影もなく..って誰に言ってんだ? 7点(2004-11-16 11:48:59)(良:1票) |
1603. 六月の蛇
最後の写真の、りん子の何かから解き放たれたような表情が印象的です。雨の映像も美しい。ラストで抱き合う二人のシーンでは涙が溢れました。でもあの激しい自慰シーンは..あれ、激しすぎないですか?まあ、実際に見たこと無いんでなんとも言えませんが..。レンタルビデオ鑑賞だったんですが、思わずボリュームを絞りました。オヤジたちが被らされてたあの覗き窓付きマスク、あれ面白い。どこ見てるのか一目瞭然で、その滑稽な様はまるでボリュームを下げてもしっかりと見ている自分を見ているようで..ハハハハッ..(ひきつり笑い)。 7点(2004-11-15 12:03:37)(笑:2票) |
1604. 五月のミル
五月革命の最中、母が亡くなり久しぶりに家族が集まるが話題は遺産のこと。なんとも不快な展開ではあるけども、ブルジョワのブルジョワゆえの身勝手さや楽観的な行いを見ているうちに不快感は薄れていく。その気楽さ、正直さにフランスの田舎町ののんびりとした美しい風景があいまって「なんだか楽しそう」と思うに至る。しかしドンチャン騒ぎの傍らで黙々と墓穴を掘る使用人の描写で再び不快感を呼び戻す。だからブルジョワ狩の噂に総出で逃げ出す場面はちょっと気分が良かったりする。結末はなんてことはない。五月革命と同じようにこの人達はなにも変わらずそれぞれの家に帰ってゆく。ミルの人格が素晴らしく、そしてそのミルだけがひとり寂しそうなエンディングを見ると、一貫したブルジョワ批判ではなさそうではある。ルイ・マル監督のブルジョワ階級への憧れと嫉妬が垣間見れたような気がする。 6点(2004-11-12 12:45:29) |
1605. 四月物語
ドキュメンタリータッチで描く入学式とクラスでの自己紹介、見ていて恥ずかしくなるくらいのリアルな初々しさが画面に溢れている。松たかこのプロモ?たしかにそうかもしれませんが、松たかこはちゃんと卯月という名の女の子になっていました。岩井監督の作品を見ていつも思うのは”綺麗で淡い映像”というのもありますが、それ以上に役者が映画の中の役にちゃんとなっている、綺麗な映像の世界にちゃんとはまっている、というところ。これは役者の力というよりも監督の演技指導という演出の力がやっぱり大きいのではと思う。そういう意味でもやっぱり「映画」してると思います。短くない短編映画って感じ。作中に卯月が見ていた白黒映画『生きていた信長』のキャストの方が豪華で、いかにも年季の入ったフィルムを丁寧に再現していたのも面白かった。 7点(2004-11-11 11:58:02)(良:1票) |
1606. 3人の逃亡者 銀行ギャングは天使を連れて
いろんな要素がギュギュっと詰まって程好く感動。二人のキャラが決して脱線しないのがいいです。ドパリュデューがコメディ路線にいかず徹底してシリアスにきめてたから良かった。笑うところはしっかり笑え、ドキドキもあり、ホロッと泣けるところもあり、最期もニッコリ終わる。いいねぇ。ストッキングが破れるシーンは爆笑しました。なんであんなにうまく破れるかなぁ(笑)。 7点(2004-11-10 09:52:44) |
1607. マルクスの二挺拳銃
ギャグ満載。かなりベタベタなギャグなんですけど、あれだけ連発されると笑わずにはおれません。ピアノとハープのシーンはそれを見せるために強引にもっていきますが、あれだけの妙技を見せられたらじゅうぶん満足です。あー面白かった! 7点(2004-11-09 12:14:08) |
1608. 一票のラブレター
イランのある島の夜が明けてから陽が沈もうとするまでをたかだか2時間足らずに収めているのに時間の流れがゆっくりに感じる。静かな情景と何も起こらないストーリーゆえにそう感じるのでしょう。島民の生活は誰にも頼らずに独自の風習のもと成され、また自らの生活で手いっぱい。民主主義だの選挙だのということにピンとこないのも仕方ない。でも少しだけ何かが変わっていってるんです。選挙管理人の女性のひたむきさに惹かれる兵士の最期の行動、そして女性もまたいつのまにか後部座席から兵士の隣に座っている。時間をかけてお互いを知ることでちょっとだけ心に変化を見せる二人。言いかえれば(国を動かすことに繋がる)民の心を動かすには時間と根気が必要ということ。焦りは禁物。ソコに銃はいらないのです。先進国のリズムを持ち込んじゃいけない。”ゆっくり根気良く”、我々も立ち返らねば。 6点(2004-11-08 13:02:42) |
1609. めまい(1958)
《ネタバレ》 ラストは小さい頃にシスターに叱られたトラウマでうろたえちゃって落ちたんだと思ってたんですが違うの?同僚を亡くしたトラウマからなる高所恐怖症に始まり、愛する女をそのトラウマのせいで失うという二重のトラウマを抱え、ラストで一気にトラウマを克服したとたんに女が自らのトラウマによって死ぬという構成に、巧い!と思ってたんですが..(誰も触れていないので不安になってきた..)。スコティの視点からマデリ-ン(ジュディ)の視点に切り替わるところも巧いなあ。ネタばらしのシーンです。真相を知ってしまったら、知らされていないスコティに感情移入するのは難しいし、反対にどう乗りきろうか、というジュディに感情移入しやすくなっている。スコティの変質的な愛は不安な心理にあるジュディの視点から描かれているのでことさらにスコティを異常に描いているんじゃないだろうか。 個人的にダメだった点を一つ。途中、スコティがどん底に落ちていくのを象徴するような映像は個人的にダメです。顔がくるくる回転していくやつ。もちろん不安を煽る演出のひとつなのでしょうがどうも苦手。また厄介なことにこの作品を思い出す時にその場面が一番最初に頭に浮かんでしまう。なので総合評価は「巧い!でもちょっとイヤ」 6点(2004-11-05 12:10:44)(良:1票) |
1610. 裏窓(1954)
身動きのとれない主人公同様に、部屋から一歩も出ないカメラが観る者に好奇心とジレンマをもたらす。双眼鏡や望遠レンズごしの人物がいつこちらを見るのかという緊張感を持続させながらサスペンスのクライマックスでとうとうこちらを見る。あ~、だから言わんこっちゃない!と誰に言うでもなく(きっと自分自身に)言ってしまう。ここで緊張は途切れない。電話が鳴り、足音が近づき、恐怖感まで伴う。しかしその後がちょっと不満。フラッシュで目を眩ませるという時間稼ぎがチトしつこい。相手の視点の眩む映像は巧いけど、視力が回復するのが早いし、回復したら駆け寄るとかすりゃあいいのにゆっくり歩み寄るし。イマイチ緊迫感を削がれた。技巧に走りすぎた感あり。まあ、それまでの演出の効果があまりにも素晴らしかったからこその不満であります。ジョークに対しジョークで返す軽快な会話のキャッチボールも楽しめます。 6点(2004-11-04 13:37:38)(良:1票) |
1611. バルカン超特急(1938)
《ネタバレ》 オープニングのミニチュアが年代を感じるとともにかわいらしくて味がある。おそらくは実際の情景を使いたかったのでしょうが、きっと予算の都合か、気に入ったロケーションが見つからなかったのでしょうね。この作品はヒッチコックの代表作と言われながらも私の中でのヒッチコックをイメージさせるところの心理的な不安を煽る演出がありません。それどころかロマンスコメディの色が濃い。よって後味も悪くないというヒッチコックにしては珍しいパターンで個人的には(物足りなさもあるが)好感が持てる。(ヒッチの作品は演出のアイディアは素晴らしいんですけど、心の奥のほうにイヤ~な感色が残るのがどうも苦手だったりする。でもやっぱりうまいとも思う。) ロマンスコメディと言ってもその後のハリウッドのソレとは違って女優をスター扱いせず、俳優それぞれが的確にストーリーに配される。事実私は冒頭のホテルのシーンではてっきり英国紳士の二人が主役だと思ってました。内容は列車を使った密室サスペンス。そんなややこしいトリック使わなくたってスパイ容疑で逮捕すりゃいいのに..とも思ったが、時代と題材を考えるとその時代特有の暗さが支配してもおかしくないのに、あえて明るく仕上げたところは素晴らしい。ユーモアとサスペンスが見事に融合した良作であることは間違いない。 7点(2004-11-02 15:06:11) |
1612. サイコ(1960)
《ネタバレ》 オープニングの二人の情事のシーンからは想像もつかない主役の交代。中盤からの展開を読ませないための構成なのですが、殺人鬼が主役の映画で殺される人間をただの被害者として描かずに十分に感情移入させといて殺すことでサスペンスで曖昧になりがちな殺人の本来のショッキングさを見事に再現している。排水溝に流れる血はモノクロなのにはっきりと赤い色が脳裏に焼き付く。女優のヌード厳禁が当たり前の当時のハリウッドにおいていかに裸を見せないシーンにするかという演出もかえって怖さを倍増させる。そしてなんと言ってもあの音楽!ヒャンヒャンヒャンってやつ。怖すぎます。公開前にはノーマンの母親役のオーデションのうわさを流すなどしていかにも母親が存在しているかのようにカモフラージュさせたらしい。個人的に私の嗜好にちょっとずれてるだけで、これぞ映像作家といえるヒッチの大傑作だと思います。 7点(2004-11-01 13:15:12)(良:2票) |
1613. ジョゼと虎と魚たち(2003)
ジョゼ(くみ子)の言葉がいちいちツボにはまって面白かった。こういう子、います。小さい子供に。ジョゼは本によって知識も豊富で肉体的にも精神的にも大人の女です。しかしコミュニケーションのとりかたが子供のようにストレート。でもちょっと違う。自分をさらけ出さない、かと言って装飾されない言葉。気遣わないけど感情の無い言葉。話すことでうちとけあうことを拒むような単刀直入な言葉。おばあちゃん以外の人との接触を遮断されていた女の子という特殊な設定ゆえのこの言葉のひとつひとつがとても印象的。本では知っている虎や海を実際に見た時の表情もすごくいい。そんなジョゼを見て初めて実感する世界観の違いに恒夫のセリフ無く心情を伝えるホテル、そして車中のシーンもなかなか良い。あっちにフラフラこっちにフラフラしていた恒夫が真剣に自分を見つめなおす。ジョゼとの出会いと別れのなかで成長していく恒夫の物語。良かったです。 7点(2004-10-29 11:20:40) |
1614. 女と女と井戸の中
全編を被う青い映像が最初の1~2分は綺麗な映像だと思ってたんですが、だんだんうっとうしくなってきました。が、井戸のシーンあたりからホラー色が漂ってきて青い映像がいっそうひんやりとした怖さをひきたてていてコレはコレで効果的だったと思います。それでもやっぱり「青」が濃すぎるかなぁ。もうちょっとだけ抑えてほしかった。少女に恋をする中年女性の心の揺れを丁寧に描いたドラマからホラー、サイコスリラーの様相へ、そしてそこからからまた一転するオチ、なかなか良かったです。この作品、主要キャラはもとより監督、脚本、それから原作者、製作者まで女性なんです。「ふーん」て思いました。いや、それだけなんスけど..。 6点(2004-10-28 11:34:46) |
1615. コックと泥棒、その妻と愛人
あのオッサン、このレストランのオーナーでしょ?なんであんなに下品な振る舞いを自分の店でするの?いやいや、これはストーリーを見てはいけない映画でした。ストーリーを追わなければ、人物を食材や調理器具を隔ててとらえる画といい、緑や赤の色使いといい、”美”を作れば同時に”汚”も生み出すという判っていても目をつぶってきたものを見せつけるこの作品の意図的な無神経さ(なんか日本語おかしいですね、、)といい惹かれるものはいたるところに散らばっている。でもいくらストーリーを追わないっていってもあのオチはどうかなぁ。コックが一度は断わっておきながら「それならば」と了承した、その「それならば」がよく解からん。てか、妻とコックの会話は無いほうが最期までストーリーを無視して鑑賞できたような気がする。 5点(2004-10-27 10:52:11) |
1616. 竜馬の妻とその夫と愛人
そこそこ楽しめましたが、中井貴一と木梨憲武のコミカルな演技のMAX時は度を超しているように感じてしまった(舞台劇なら面白いと思いますが)。中井貴一は某カード会社のCMキャラとかぶってます。竜馬に愛され竜馬を愛した女の竜馬亡き後の生き方をまじめに描いている点とオープニングのシリアス度からすれば、もう少し抑えたコミカル演技で笑わせてほしかった。それか、徹底的に三谷幸喜カラー全開のコメディにしちゃうか。うん、後者のほうがいいかな?あの(笑えない)オチで笑いをとるならやっぱり全編コメディでいっとかないと。 5点(2004-10-26 12:13:47) |
1617. セックスと嘘とビデオテープ
嘘で固められた自己の深層心理に迫るという小難しい題材でありながら、登場人物を4人に絞りシンプルでわかりやすく退屈しない作品に仕上がっている。ただ、【らふらんす】さんもご指摘しておられるように旦那のキャラが突出しすぎている。わかりやすすぎる。旦那の行く末もありきたり。ビデオに告白するシーンがなんとも言えぬエロスを感じさせ、謎めいた部分が徐々にあらわになっていく緊張感を見事に表現しているだけに、旦那のキャラの明快さは勿体無い。そんな観客に媚びなくても4人に絞った時点で十分わかりやすいのに。 5点(2004-10-25 11:22:30) |
1618. ピストルオペラ
夢や幻想の部分をあり得ない(現実感の無い)映像で見せる映画はいくらでもあるが、鈴木清順の映画は違う。すべてあり得ない世界。とくにこの作品は顕著。同じワンシーンなのにカットごとに登場人物の立ち位置が変わったり背景が変わったりする。前のカットの画は次のカットにはなくなっています。どんなに細かいカット割をしていてもこれは清順流ワンシーンワンカットなのです。(ワンシーンをワンカットで撮るのではなくワンカットがワンシーン。)そしてこれはどんな芸術分野においても出来ない、映画だからこそ出来る表現。従来の観客にやさしい映画文法をぶっ壊したのはゴダール。壊すことによって映画の表現方法の幅を広げ映画にしか出来ないことの可能性を提示した。清順映画はまさにその可能性を最大限に使いつつさらに「美」で被う。この「美」は監督のセンスそのものでまさに天才の技。これまでの作品でも奇天烈なカメラワーク、あり得ない編集、奇妙な演出に驚かされてきたが、仮に奇を衒うことを目的に作ったとしても毎回毎回あっと言わせるなんて凄すぎる。大正浪漫三部作がいかにも”芸術”って雰囲気を持っていますが、私はこの『ピストルオペラ』で気絶しそうになりました。 9点(2004-10-22 11:51:34)(良:1票) |
1619. 夢二
まずは着物や家具などに反映される清順監督の美術センスに一見の価値あり(花柄のアタッシュケース欲しい)。三部作の前ニ作同様に「生」と「死」を描きます。しかし前ニ作に登場する人達は皆生きながらに「生」を感じさせなかったが、この作品の登場人物達は皆生き生きとしている。生きている人間から発せられる感情や色気を感じる。原色の黄色も「生」を感じる。だから前ニ作と比べてどこか「軽さ」を感じるんだろうが、私は好きです。大正時代の風景をカメラが静かにとらえる、流れるようにカメラが移動していったと思ったら突然止まる、と思ったらまた動き出す。相変わらず挑発的なつくりにいちいち驚かされながら清順ワールドを堪能しましょう。10人の夢二のシーンはやっぱり参りました。 7点(2004-10-21 12:08:01) |
1620. 陽炎座
『ツィゴイネルワイゼン』では「生」と「死」の世界を一応分けてましたがこの作品では同居してます。なので摩訶不思議度はさらにアップ。さらにさらに、すぺるまさんのおっしゃるように繋がらないカットの応酬に観客は混乱必至。しかしやっぱりそそられる。この観客に不親切なカット割がなければここまで没頭できなかったかもしれない。そして圧倒されるのは絶妙なピンポイントで原色を配する色使い。特にラストシーンの「美」は参りましたとしか言い様がない。芝居小屋の一連のシーンは考えつくこと自体が凄すぎる。それにしても楠田枝里子はキンキンの横に立つとばかでかい女に見えるけど、相手が松田優作だときゃしゃに見えるから不思議だ。 7点(2004-10-20 11:53:30)(良:1票) |